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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023153613
(43)【公開日】2023-10-18
(54)【発明の名称】配電盤用防食装置、配電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/28 20060101AFI20231011BHJP
【FI】
H02B1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062984
(22)【出願日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】加藤 輝美
【テーマコード(参考)】
5G016
【Fターム(参考)】
5G016AA04
5G016CG21
(57)【要約】
【課題】腐食性ガスが配電盤本体部内に流入することを抑制することができ、且つ、仮に腐食性ガスが配電盤本体部内に流入したとしても当該腐食性ガスの外部への排出を促進することができる配電盤用防食装置、および、当該配電盤用防食装置を備えた配電盤を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る配電盤用防食装置は、配電盤本体部に設けられる防食装置であって、前記配電盤本体部の下部に設けられ、下面が開放した外枠部と、前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第1筒状部と、前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第2筒状部と、を備え、前記第1筒状部は、内部にガス吸着部を備え、前記第2筒状部は、内部にガス吸着部および前記配電盤本体部内の空気を外部に排出する排気部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電盤本体部に設けられる防食装置であって、
前記配電盤本体部の下部に設けられ、下面が開放した外枠部と、
前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第1筒状部と、
前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第2筒状部と、
を備え、
前記第1筒状部は、内部にガス吸着部を備え、
前記第2筒状部は、内部にガス吸着部および前記配電盤本体部内の空気を外部に排出する排気部を備える配電盤用防食装置。
【請求項2】
前記外枠部に設けられた発電部と、
前記発電部が発生した電力を蓄積する蓄電部と、
を備える請求項1に記載の配電盤用防食装置。
【請求項3】
前記第1筒状部は、下端が前記外枠部内に突出し、
前記外枠部は、前記第1筒状部の下端よりも高い位置に排気口を備える請求項1に記載の配電盤用防食装置。
【請求項4】
前記第2筒状部の上端に、前記配電盤本体部を支持する管状の脚部内の空間を連通する連通口を備える請求項1に記載の配電盤用防食装置。
【請求項5】
前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第3筒状部を備え、
前記第3筒状部は、内部にガス検知部を備え、
前記第3筒状部の上端は、前記配電盤本体部の下端に接続されている請求項1に記載の配電盤用防食装置。
【請求項6】
前記外枠部に発光部を備える請求項1に記載の配電盤用防食装置。
【請求項7】
複数の前記第2筒状部と、
複数の前記第2筒状部内にそれぞれ備えられている前記排気部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、複数の前記排気部を選択し、且つ、選択した前記排気部の動作を連動して制御する請求項1に記載の配電盤用防食装置。
【請求項8】
配電盤本体部と、
前記配電盤本体部に設けられる配電盤用防食装置と、
を備え、
前記配電盤用防食装置は、
前記配電盤本体部の下部に設けられ、下面が開放した外枠部と、
前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第1筒状部と、
前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第2筒状部と、
を備え、
前記第1筒状部は、内部にガス吸着部を備え、
前記第2筒状部は、内部にガス吸着部および前記配電盤本体部内の空気を外部に排出する排気部を備える配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配電盤用防食装置、および、当該配電盤用防食装置を備えた配電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤は、その本体部の内部あるいは表面に、例えば制御用や計測用の各種の電気機器類を備えている。この種の配電盤は、例えば工業地帯、地熱発電所、水処理センター、ごみ処理センターなどといった環境、つまり、例えば硫化水素などといった腐食性ガスが発生しやすい環境に設置されることが多い。そのため、長年の運用により配電盤本体部内の電気機器類が腐食性ガスによって腐食し、例えば配電盤の機能低下や機能停止などといった不適合を招くという懸念がある。
【0003】
このような背景を有する配電盤の技術分野においては、例えば特許文献1に開示されているように、配電盤本体部を、例えばスタンドなどと称される長尺な脚部によって下方から支持するようにした構成が考えられている。ここで、例えば硫化水素などといった腐食性ガスは、通常の空気よりも重く、従って、自然沈下しやすいという特徴がある。そのため、配電盤本体部を長尺な脚部によって下方から支持する構成の配電盤、いわゆるスタンド型の配電盤によれば、配電盤本体部が比較的高い位置に維持されていることから、自然沈下しやすい腐食性ガスが配電盤本体部内に流入しにくくなる。これにより、配電盤本体部内の電気機器類を腐食しにくくする効果を期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59-100858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようなスタンド型の配電盤であっても、腐食性ガスが配電盤本体部内に流入してしまう場合がある。例えば、配電盤本体部内の電気機器類の操作や点検などを行う場合には、配電盤本体部の扉を開放するため、配電盤本体部内への腐食性ガスの流入を回避しにくくなる。また、配電盤本体部内を密閉するパッキン類の経年変化や経年劣化が進むと、配電盤本体部内への腐食性ガスの流入を回避しにくくなる。また、例えば、日中の比較的気温が高い状態において配電盤本体部内の空気が膨張して外部に排出され、その後、夜間の比較的気温が低い状態において配電盤本体部内の空気が収縮すると、配電盤本体部内が減圧状態となり、配電盤の周辺を漂流している腐食性ガスが配電盤本体部内に吸い込まれてしまう現象も起こり得る。
【0006】
そこで、本実施形態は、腐食性ガスが配電盤本体部内に流入することを抑制することができ、且つ、仮に腐食性ガスが配電盤本体部内に流入したとしても当該腐食性ガスの外部への排出を促進することができる配電盤用防食装置、および、当該配電盤用防食装置を備えた配電盤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る配電盤用防食装置は、配電盤本体部に設けられる防食装置であって、前記配電盤本体部の下部に設けられ、下面が開放した外枠部と、前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第1筒状部と、前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第2筒状部と、を備え、前記第1筒状部は、内部にガス吸着部を備え、前記第2筒状部は、内部にガス吸着部および前記配電盤本体部内の空気を外部に排出する排気部を備える。
【0008】
本実施形態に係る配電盤は、配電盤本体部と、前記配電盤本体部の下部に設けられる配電盤用防食装置と、を備え、前記配電盤用防食装置は、前記配電盤本体部の下部に設けられ、下面が開放した外枠部と、前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第1筒状部と、前記外枠部に設けられ、前記配電盤本体部内に連通する第2筒状部と、を備え、前記第1筒状部は、内部にガス吸着部を備え、前記第2筒状部は、内部にガス吸着部および前記配電盤本体部内の空気を外部に排出する排気部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る配電盤の構成例を概略的に示す正面図
図2】第1実施形態に係る配電盤の構成例を概略的に示す縦断側面図
図3】第1実施形態に係る配電盤用防食装置の構成例を概略的に示す縦断面図
図4】第1実施形態の変形例に係る外枠部の構成例を概略的に示す平面図
図5】第2実施形態に係る配電盤用防食装置の構成例を概略的に示す縦断面図
図6】第3実施形態に係る配電盤用防食装置の構成例を概略的に示す縦断面図
図7】第4実施形態に係る配電盤用防食装置の構成例を概略的に示す縦断面図
図8】第5実施形態に係る配電盤用防食装置の構成例を概略的に示す縦断面図
図9】第6実施形態に係る配電盤用防食装置の構成例を概略的に示す底面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の配電盤用防食装置および配電盤に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に例示する配電盤1は、例えば屋内環境あるいは屋外環境に設置されるものであり、この場合、外観構成として屋内用のものを例示している。配電盤1は、配電盤本体部2を備えている。配電盤本体部2は、この場合、矩形箱状に設けられている。また、配電盤本体部2は、上下方向に沿って直線状に延びる長尺なスタンド3によって下方から支持されている。スタンド3は、脚部の一例であり、上端部に上側支持板3aを備え、下端部に下側支持板3bを備えている。
【0012】
上側支持板3aは、配電盤本体部2の下面に例えば図示しないボルトなどにより固定されている。この場合、上側支持板3aは、円板状に形成されている。一方、下側支持板3bは、台部4の上面に例えば図示しないボルトなどにより固定されている。この場合、下側支持板3bは、円板状に形成されている。台部4は、例えばコンクリート製であり、屋内の床面あるいは屋外の地面に設けられている。なお、上側支持板3aおよび下側支持板3bは、円形状に限られるものではなく、例えば矩形状や楕円形状などといった円形状以外の形状であってもよい。
【0013】
図2に例示するように、配電盤本体部2内には、例えば各種の電気機器類5や端子台6などが備えられている。また、配電盤本体部2は、その一側面である正面に開口部2aを有しており、この開口部2aは、扉7によって開閉可能となっている。扉7は、図示しない蝶番によって横方向に回動可能となっている。なお、扉7は、縦方向に回動可能であってもよいし、横方向あるいは縦方向にスライド移動可能であってもよい。扉7の裏面にはパッキン7aが設けられている。これにより、扉7が配電盤本体部2の開口部2aを閉じた閉状態においては、配電盤本体部2内の密閉性が確保されるようになっている。
【0014】
また、扉7の表面には、名称板7bが設けられている。名称板7bには、例えば配電盤1の名称や識別番号などが表記されている。また、扉7には、例えば計器7c、表示灯7d、操作ハンドル7e、扉開閉ハンドル7fなどが当該扉7を貫通するようにして備えられている。このように扉7を貫通するようにして備えられる各種の構成要素は、例えば貫装部品などと称することができる。
【0015】
このような貫装部品が扉7を貫通するようにして備えられた構成においては、当該貫装部品が貫通する部分あるいはその周辺部分に隙間が形成されることが懸念される。そのため、例えば貫装部品を強固に締め付けることにより隙間を極力小さくしたり、図示しないワッシャなどといった閉塞部材を用いて隙間を塞いだりするとよい。これにより、扉7に貫装部品を備えながらも、配電盤本体部2内の密閉性を維持することができる。
【0016】
また、スタンド3は、内部が空洞となった管状あるいは筒状の部材であり、台部4を上下方向に貫通する貫通孔4aに連通している。台部4の貫通孔4aには電源ケーブル8が引き込まれている。電源ケーブル8は、その基端部が端子台6に接続されており、配電盤本体部2内からスタンド3内を通って貫通孔4a内に導出されている。また、電源ケーブル8は、配電盤本体部2内において仕切板9を貫通している。そして、電源ケーブル8が仕切板9を貫通する部分およびその周辺部分には封止材10が塗布されており、気密性が確保されている。
【0017】
さらに、配電盤1は、配電盤本体部2の下部に配電盤用防食装置100を備えている。以下、この配電盤用防食装置100を単に「防食装置100」と称する場合がある。次に、この防食装置100の構成例について詳細に説明する。
【0018】
図3に例示するように、防食装置100は、その外郭を構成する外枠部101を備えている。外枠部101は、例えば金属製であるが、非金属材料によって構成されていてもよい。外枠部101は、配電盤本体部2の下部に固定されているスタンド3の上側支持板3aの下部に例えば図示しないボルトなどにより固定されている。なお、外枠部101とスタンド3の上側支持板3aとの間には、図示しないパッキンなどといったシール部材を設けてもよい。また、外枠部101は、例えばスタンド3の外周面に設けた図示しないクランプなどによって締め付けることにより固定してもよい。
【0019】
また、外枠部101は、配電盤1の上下方向に見て、スタンド3の上側支持板3aと同等あるいは若干小さい大きさとなっている。なお、外枠部101は、配電盤1の上下方向に見て、少なくとも配電盤本体部2と同等あるいは小さい大きさであればよい。
【0020】
外枠部101は、円筒状の側面部101aおよび円板状の上面部101bを備えている。また、外枠部101の下面、より詳細には、側面部101aの下面は、その全体が開放している。上面部101bの中央部には、当該上面部101bを貫通する貫通孔101cが設けられている。この貫通孔101c内にはスタンド3の上端部が挿通されている。
【0021】
防食装置100は、外枠部101の内部、より詳細には、側面部101aよりも内側に吸気筒部102および排気筒部103を備えている。吸気筒部102および排気筒部103は、例えば金属製であるが、非金属材料によって構成されていてもよい。また、吸気筒部102および排気筒部103は、軸方向の寸法や径方向の寸法を同一の寸法とし、部品としての共用化を図るようにするとよい。
【0022】
吸気筒部102は、第1筒状部の一例であり、長尺な円筒状に形成され、配電盤本体部2内に連通している。吸気筒部102は、外枠部101の上面部101bから上方に向かって直線状に延出している。また、吸気筒部102の下端面は、外枠部101の上面部101bの下面と概ねあるいは完全に面一となっている。また、吸気筒部102は、スタンド3の上側支持板3aおよび配電盤本体部2の下面を貫通する貫通孔104内に挿通されている。そして、吸気筒部102の上端部は、配電盤本体部2内に突出している。なお、吸気筒部102の上端部が配電盤本体部2内に突出する突出量は、例えば、吸気筒部102が配電盤本体部2内の各構成要素に干渉しない程度の突出量とすることが好ましい。
【0023】
そして、吸気筒部102は、その内部に、腐食性ガスを吸着可能なガス吸着剤102aを備えている。ガス吸着剤102aは、ガス吸着部の一例であり、この場合、吸気筒部102の下端部内に備えられている。
【0024】
外枠部101の上面部101bに対する吸気筒部102の下端部の接続は、例えば、周知のねじ構造により行われている。即ち、吸気筒部102は、その下端部を上面部101bの貫通孔にねじ込むことにより固定されている。なお、外枠部101の上面部101bに対する吸気筒部102の下端部の接続は、例えば溶接などによって行ってもよい。また、外枠部101の上面部101bと吸気筒部102の下端部との接続部分には、図示しないシール部材を設けてもよい。
【0025】
排気筒部103は、第2筒状部の一例であり、長尺な円筒状に形成され、配電盤本体部2内に連通している。排気筒部103は、外枠部101の上面部101bから下方に向かって直線状に延出している。また、排気筒部103の上端面は、外枠部101の上面部101bの上面と概ねあるいは完全に面一となっている。また、排気筒部103の上端部は、スタンド3の上側支持板3aおよび配電盤本体部2の下面を貫通する貫通孔105内に対向している。そして、排気筒部103の下端部は、防食装置100内、より詳細には外枠部101内に突出している。また、排気筒部103の下端面は、外枠部101の側面部101aの下面と概ねあるいは完全に面一となっている。なお、排気筒部103の下端面は、外枠部101の側面部101aの下面よりも上方まで延びる構成としてもよいし、外枠部101の側面部101aの下面よりも下方に突出していてもよい。但し、排気筒部103の下端面が外枠部101の側面部101aの下面よりも下方に突出する突出量は、極力小さくすることが好ましい。
【0026】
そして、排気筒部103は、その内部に、腐食性ガスを吸着可能なガス吸着剤103aを備えている。ガス吸着剤103aは、ガス吸着部の一例であり、この場合、排気筒部103の下端部内に備えられている。
【0027】
また、排気筒部103は、その内部に、排風扇103bを備えている。排風扇103bは、排気部の一例であり、複数の羽根状部材を排気筒部103の軸心回りに回転させることによって、配電盤本体部2内の空気を外部に排出可能に構成されている。
【0028】
外枠部101の上面部101bに対する排気筒部103の上端部の接続は、例えば、周知のねじ構造により行われている。即ち、排気筒部103は、その上端部を上面部101bの貫通孔にねじ込むことにより固定されている。なお、外枠部101の上面部101bに対する排気筒部103の上端部の接続は、例えば溶接などによって行ってもよい。また、外枠部101の上面部101bと排気筒部103の上端部との接続部分には、図示しないシール部材を設けてもよい。
【0029】
また、ガス吸着剤102aは、吸気筒部102内に着脱可能に設け、ガス吸着剤103aは、排気筒部103内に着脱可能に設けるとよい。これにより、ガス吸着剤102a,103aへの腐食性ガスの吸着量が多くなった場合には、つまり、ガス吸着剤102a,103aが腐食性ガスで飽和した場合あるいは飽和に近い状態になった場合には、ガス吸着剤102a,103aを適宜交換することができる。また、ガス吸着剤102a,103aの寸法や形状を同一とすることにより、部品としての共用化を図ることができる。また、ガス吸着剤102a,103aは、その本体部分が通気性を有する構造、例えば、多数の孔や溝などを有する構造、いわゆる多孔質構造とするとよい。これにより、吸気筒部102内および排気筒部103内の通気性を確保することができ、ガス吸着剤102a,103aを設けながらも気体の一例である空気を流れやすくすることができる。
【0030】
また、防食装置100は、さらに太陽光発電フィルム110を備えている。太陽光発電フィルム110は、発電部の一例であり、この場合、外枠部101の側面部101aの外面に設けられている。太陽光発電フィルム110は、例えば太陽光などといった光を受光することにより電力を生成する周知の構成である。なお、太陽光発電フィルム110は、いわゆる色素増感素子を有する色素増感型の太陽光発電フィルムであってもよいし、色素増感素子を有さない標準的な太陽光発電フィルムであってもよい。色素増感素子は、透明導電膜が形成された基板に多孔質の酸化チタンが成膜され、その酸化チタンの表面に色素が吸着された周知の構成である。また、発電部は、太陽光発電フィルムに限られるものではなく、光エネルギーを電気エネルギーに変換可能な構成のものであれば、種々の構成のものを適用することができる。
【0031】
また、防食装置100は、いわゆるバッテリーとして機能する蓄電装置111を備えている。蓄電装置111は、蓄電部の一例であり、太陽光発電フィルム110が発生した電力を蓄積可能に構成されている。この場合、蓄電装置111は、外枠部101の上面部101bの下面に設けられている。蓄電装置111に蓄積された電力は、例えば排風扇103bなどといった防食装置100や配電盤1が備える各種の駆動系の構成要素を駆動するための電源として活用することができる。なお、例えば排風扇103bなどといった駆動系の構成要素への電力の供給は、蓄電装置111を介さず、太陽光発電フィルム110から直接行うことも可能である。
【0032】
以上のように構成された防食装置100によれば、排風扇103bが駆動されると、図2および図3に矢印A1で例示するように、配電盤本体部2内の空気が排気筒部103を介して配電盤本体部2の外部に排出されるようになる。これにより、仮に配電盤本体部2内の空気に腐食性ガスが含まれていたとしても、その腐食性ガスを配電盤本体部2内から外部に排出することができる。
【0033】
ここで、仮に配電盤本体部2内の空気に腐食性ガスが含まれている場合、その腐食性ガスは、その自重による自然沈下により配電盤本体部2内の下部領域に集中している可能性が高い。そのため、防食装置100によれば、腐食性ガスを配電盤本体部2の下部領域に連通する排気筒部103から円滑に排出させることができる。また、排気筒部103内に流入した腐食性ガスは、当該排気筒部103内に設けられているガス吸着剤103aによって吸着することができる。これにより、防食装置100の外部周辺や配電盤1の外部周辺に腐食性ガスが放散されてしまうことを抑制することができる。
【0034】
また、例えば扉7が配電盤本体部2の開口部2aを開いた開状態においては、排風扇103bを連続駆動するように設定するとよい。これにより、仮に腐食性ガスが開口部2aから配電盤本体部2内に流入したとしても、その腐食性ガスを直ちに排気筒部103から排出することができる。
【0035】
また、排風扇103bの駆動により配電盤本体部2内の空気が排気筒部103を介して外部に排出されることに伴い、図2および図3に矢印A2で例示するように、外部の空気が吸気筒部102を介して配電盤本体部2内に流入するようになる。ここで、腐食性ガスは、その自重により自然沈下しやすいという特徴を有している。そのため、配電盤本体部2の下方領域、特に、配電盤本体部2の下部近傍領域においては、腐食性ガスが自然沈下したことにより、その残存量が少なくなりやすく、従って、腐食性ガスの含有量が少ない比較的清浄な空気が存在している可能性が高い。そのため、このような比較的清浄な空気を、吸気筒部102を介して配電盤本体部2内に吸い込むことができる。
【0036】
また、防食装置100は、配電盤1の上下方向に見て、少なくとも配電盤本体部2と同等あるいは小さい大きさで設けられている。ここで、配電盤本体部2の側面に沿って自然沈下する腐食性ガスは、配電盤本体部2の下端に到達すると、その殆どが、そのまま下方に沈下していく。しかし、配電盤本体部2の下端に到達した腐食性ガスの一部は、配電盤本体部2の下側に回り込んでしまう可能性がある。防食装置100によれば、配電盤1の上下方向に見て、少なくとも配電盤本体部2と同等あるいは小さい大きさで設けられている。そのため、仮に配電盤本体部2の下端に到達した腐食性ガスの一部が配電盤本体部2の下側に回り込んでしまったとしても、その腐食性ガスが防食装置100まで到達してしまうことを抑制することができる。また、配電盤本体部2の下部近傍領域においては腐食性ガスの存在量が多くなりにくく、従って、吸気筒部102からの腐食性ガスの流入を一層抑制することができる。
【0037】
また、仮に吸気筒部102内に流入した空気に腐食性ガスが含まれていたとしても、吸気筒部102内に流入した腐食性ガスは、吸気筒部102内に設けられているガス吸着剤102aによって吸着することができる。これにより、配電盤本体部2内に腐食性ガスが流入してしまうことを一層抑制することができる。
【0038】
また、吸気筒部102の上端部が配電盤本体部2内に突出しているため、仮に配電盤本体部2内の下部領域に腐食性ガスが滞留していたとしても、その腐食性ガスが吸気筒部102の上端部から配電盤本体部2内に流入する空気によって拡散されてしまうことを抑制することができる。
【0039】
また、例えば排風扇103bを昼夜連続稼働して配電盤本体部2内の循環換気を継続することにより、配電盤本体部2内を外気に比べ少なくとも若干の負圧状態に維持することができる。これにより、例えば日中の比較的気温が高い状態において配電盤本体部2内の空気が膨張したとしても、その空気が外部に排出されてしまうことを吸収あるいは緩和することができる。
【0040】
また、例えば夜間の比較的気温が低い状態において配電盤本体部2内の空気が収縮したとしても、通気性がある吸気筒部102を介して外気が補給される。このとき配電盤本体部2内に吸い込まれる空気は、腐食性ガスの含有量が少ない比較的清浄な空気である。そのため、配電盤本体部2内に腐食性ガスが混入することを抑制することができる。
【0041】
また、防食装置100によれば、配電盤本体部2内の空気に含まれる腐食性ガスを外部に排出できるとともに、配電盤本体部2内の熱、湿気、塵埃なども外部に排出できる。そのため、配電盤本体部2内の温度上昇や湿度上昇を抑制することができ、また、例えば塵埃などといった異物の混入量が少ない比較的清浄な空気で配電盤本体部2内を満たすことができる。これにより、配電盤本体部2内に設けられている各種の電気機器類5や端子台6などにとって好適な環境を形成することができる。
【0042】
以上に例示した実施形態によれば、配電盤本体部2に設けられる防食装置100は、配電盤本体部2の下部に設けられ下面が開放した外枠部101と、外枠部101内に設けられ配電盤本体部2内に連通する吸気筒部102と、外枠部101内に設けられ配電盤本体部2内に連通する排気筒部103と、を備えている。そして、吸気筒部102は、内部にガス吸着剤102aを備えている。また、排気筒部103は、内部にガス吸着剤103aおよび配電盤本体部2内の空気を外部に排出する排風扇103bを備えている。この構成例によれば、腐食性ガスが配電盤本体部2内に流入することを抑制することができ、且つ、仮に腐食性ガスが配電盤本体部2内に流入したとしても当該腐食性ガスの外部への排出を促進することができる。即ち、仮に腐食性ガスが配電盤本体部2内に流入したとしても、排風扇103bを稼働することにより当該腐食性ガスを外部に排出することができ、また、この排出に伴って、吸気筒部102を介して腐食性ガスの少ない比較的清浄な空気の流入を促進することができる。
【0043】
また、防食装置100は、さらに、外枠部101の外面に設けられた太陽光発電フィルム110と、太陽光発電フィルム110が発生した電力を蓄積する蓄電装置111と、を備えている。この構成例によれば、例えば排風扇103bを駆動するための電力を、自然エネルギーである太陽光を活用して賄うことができる。また、例えば屋外に配電盤1が設置された場合には、十分な量の太陽光を太陽光発電フィルム110によって受光することができ、例えば排風扇103bを駆動するための電力が不足してしまうことを抑制することができる。また、例えば日中の天候が悪い場合や日没以降の場合などにより十分な量の太陽光を太陽光発電フィルム110によって受光できない場合であっても、それまでに蓄電装置111に蓄電した電力によって排風扇103bを駆動することができる。なお、屋内に配電盤1を設置する場合には、例えば日射を直接受けない低照度域や波長の長い可視光の多い室内照明域であっても比較的高い発電効率を発揮する太陽光発電フィルムを使用するとよい。
【0044】
なお、防食装置100の外枠部101の大きさは、例えば排風扇103bの単位時間当たりの送風性能、排風扇103bを駆動する頻度、太陽光発電フィルム110による発電性能、蓄電装置111の蓄電性能などに応じて適宜変更して実施することができる。
【0045】
また、太陽光発電フィルム110は、側面部101aの外周面の全周にわたって設けてもよいし、側面部101aの外周面の一部に設けてもよい。太陽光発電フィルム110を側面部101aの外周面の一部に設ける場合には、複数の太陽光発電フィルム110を側面部101aの外周面の周方向に沿って分散して設けてもよいし、側面部101aの外周面の軸方向に沿って分散して設けてもよい。
【0046】
また、外枠部101内における吸気筒部102および排気筒部103の位置や数は、例えば排風扇103bの単位時間当たりの送風性能、排風扇103bを駆動する頻度、太陽光発電フィルム110による発電性能、蓄電装置111の蓄電性能などに応じて適宜変更して実施することができる。また、吸気筒部102の数と排気筒部103の数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
また、図4に例示するように、防食装置100は、スタンド3を挟む複数の部材101-A,101-Bを組み合わせることによって外枠部101全体を形成する構成としてもよい。
【0048】
(第2実施形態)
図5に例示する防食装置100によれば、吸気筒部102は、その下端部が外枠部101内に突出している。つまり、吸気筒部102の下端面は、外枠部101の上面部101bの下面と概ねあるいは完全に面一となっておらず、外枠部101の上面部101bの下面よりも下側に位置している。但し、吸気筒部102の下端面は、外枠部101の側面部101aの下端面よりも上側に位置している。
【0049】
また、外枠部101は、吸気筒部102の下端面よりも高い位置に排気口120を備えている。この場合、排気口120は、外枠部101の側壁部101aのうち吸気筒部102の下端面よりも高い位置に設けられている。なお、排気口120は、側壁部101aだけでなく太陽光発電フィルム110も貫通している。太陽光発電フィルム110は、排気口120を塞がないように設けるとよい。
【0050】
ここで、腐食性ガスとしては、例えばアンモニアなどといった空気よりも軽いガスも知られており、このような空気よりも軽い腐食性ガスには自然沈下を期待できないが、自然上昇を期待することができる。図5に例示する構成例によれば、仮に、このような空気よりも軽い腐食性ガスが外枠部101内に存在していたとしても、当該腐食性ガスが自然上昇することにより排気口120から外部に排出することができる。これにより、このような空気よりも軽い腐食性ガスが吸気筒部102の下端面から配電盤本体部2内に流入することを抑制することができる。
【0051】
なお、防食装置100は、外枠部101内のうち排気口120の近傍部分あるいは排気口120内にガス吸着剤を備える構成としてもよい。これにより、腐食性ガスが排気口120から外部に放出されてしまうことを一層抑制することができる。なお、排気口120内にガス吸着剤を備える場合には、十分な通気性を有するガス吸着剤を用いるとよい。
【0052】
また、蓄電装置111は、排気口120の近傍部分に配置してもよい。この構成例によれば、蓄電装置111から発生する熱により外枠部101内の空気を加熱することができる。これにより、外枠部101内の空気に含まれる腐食性ガスを加熱して一層上昇しやすくすることができ、排気口120からの排気を促進することができる。
【0053】
(第3実施形態)
図6に例示する防食装置100は、複数、この場合、2つの排気筒部103を備えている。また、防食装置100は、連通口130を備えている。連通口130は、2つの排気筒部103のうち一方の上端部に、配電盤本体部2を下方から支持する管状のスタンド3内の空間を、貫通孔205を介して連通している。貫通孔205は、スタンド3の上側支持部3aを板厚方向に貫通するように加工することで実現されており、排気筒部103の上端部に対向している。連通口130は、例えば、配電盤本体部2の下面のうち上側支持板3aと仕切板9との間に挟まれている部分に切り欠き、溝、スリットなどを形成することにより実現することができる。なお、連通口130を設ける部分においては、十分な気密性を確保して気体の漏れを抑制する構成とするとよい。
【0054】
図6に例示する構成例によれば、矢印A3で例示するように、仮にスタンド3内の空間において、腐食性ガス、特に、空気よりも軽い腐食性ガスが上昇してきたとしても、連通口130に連通する一方の排気筒部103内の排風扇103bを駆動することにより、その腐食性ガスを、配電盤本体部2ではなく、連通口130および排気筒部103に向けて導出することができる。また、排気筒部103内にはガス吸着剤103aが備えられているから、連通口130を通過した腐食性ガスをガス吸着剤103aによって吸着することができ、腐食性ガスが外部に放出されてしまうことを抑制することができる。また、仮にスタンド3内の空間に空気よりも重い腐食性ガスが存在していたとしても、その腐食性ガスを排風扇103bの吸引力によって連通口130内、さらには排気筒部103内に引き込むことができ、最終的にはガス吸着剤103aによって吸着することができる。
【0055】
(第4実施形態)
図7に例示する防食装置100は、さらに吸気筒部142を備えている。吸気筒部142は、第3筒状部の一例であり、長尺な円筒状に形成され、配電盤本体部2内に連通している。吸気筒部142は、外枠部101の上面部101bから下方に向かって直線状に延出している。また、吸気筒部142の上端面は、外枠部101の上面部101bの上面と概ねあるいは完全に面一となっている。また、吸気筒部142の上端部は、スタンド3の上側支持板3aおよび配電盤本体部2の下面を貫通する貫通孔305内に対向している。そして、吸気筒部142の下端部は、防食装置100内、より詳細には外枠部101内に突出している。また、吸気筒部142の下端面は、外枠部101の側面部101aの下面と概ねあるいは完全に面一となっている。なお、吸気筒部142の下端面は、外枠部101の側面部101aの下面よりも上方まで延びる構成としてもよいし、外枠部101の側面部101aの下面よりも下方に突出していてもよい。但し、吸気筒部142の下端面が外枠部101の側面部101aの下面よりも下方に突出する突出量は、極力小さくすることが好ましい。
【0056】
そして、吸気筒部142は、その内部に、腐食性ガスを吸着可能なガス吸着剤142aを備えている。ガス吸着剤142aは、ガス吸着部の一例であり、この場合、吸気筒部142の下端部内に備えられている。
【0057】
また、吸気筒部142は、その内部に、腐食性ガスを検知可能なガス検知センサー142bを備えている。ガス検知センサー142bは、ガス検知部の一例であり、例えば、所定のガス、この場合、少なくとも所定の腐食性ガスを接触することに応じてオン状態およびオフ状態が切り換わる周知のガス検知機能を備えた構成である。なお、ガス検知センサー142bは、腐食性ガスが接触することに応じて、オフ状態からオン状態に切り換わる構成であってもよいし、オン状態からオフ状態に切り換わる構成であってもよい。
【0058】
外枠部101の上面部101bに対する吸気筒部142の上端部の接続は、例えば、周知のねじ構造により行われている。即ち、吸気筒部142は、その上端部を上面部101bの貫通孔にねじ込むことにより固定されている。なお、外枠部101の上面部101bに対する吸気筒部142の上端部の接続は、例えば溶接などによって行ってもよい。また、外枠部101の上面部101bと吸気筒部142の上端部との接続部分には、図示しないシール部材を設けてもよい。
【0059】
また、ガス吸着剤142aは、吸気筒部142内に着脱可能に設け、適宜交換可能な構成とするとよい。また、ガス吸着剤142aの寸法や形状も、ガス吸着剤102a,103aの寸法や形状と同一とすることにより、部品としての共用化を図ることができる。また、ガス吸着剤142aも、その本体部分を例えば多孔質構造とし、吸気筒部142内の通気性を確保するようにするとよい。また、ガス吸着剤142aは、その通気性が、ガス吸着剤102a,103aの通気性に比べて低い特性のものを選択するとよい。
【0060】
図7に例示する構成例によれば、内部にガス検知センサー142bを備える吸気筒部142は、上端部が配電盤本体部2の下端部に接続され、下端部が吸気筒部102の下端部よりも低くなっている。この構成例によれば、排風扇103bの駆動中においては、通気性の高いガス吸着剤102aを備えた吸気筒部102を介して、腐食性ガスの少ない比較的清浄な空気を配電盤本体部2内に効率良く流入させることができ、他方、通気性の高くないガス吸着剤142aを備えた吸気筒部142を介する外気の流入は抑制することができる。また、例えば、空気よりも重い腐食性ガスが強風などによって舞い上がったりした場合や、空気よりも軽い腐食性ガスが突発的に上昇した場合などにおいては、配電盤本体部2内に流入しようとする腐食性ガスは、吸気筒部102の下端部よりも低い吸気筒部142の下端部から、少量ではあるものの早めに流入しやすい。そのため、吸気筒部142を介して配電盤本体部2内に流入する空気に腐食性ガスが含まれている場合には、その腐食性ガスをガス検知センサー142bにより早めに検知することができる。これにより、仮にガス検知センサー142bによって腐食性ガスが検知された場合には、直ちに排風扇103bの駆動を停止することで、配電盤本体部2内に腐食性ガスが吸気筒部102を介して多量に流入してしまうことを阻止することができる。また、ガス検知センサー142bによって腐食性ガスが検知されたことに応じて排風扇103bの駆動を直ちに停止することにより、腐食性ガスが吸気筒部102の下端部に到達する頃までには排風扇103bの駆動が完全に停止された状態を形成することができる。そのため、配電盤本体部2内に腐食性ガスが吸気筒部102を介して流入してしまうことを一層阻止することができる。
【0061】
また、ガス検知センサー142bは、吸気筒部142の下端部つまり空気の入口部の内部に設けられている。この構成例によれば、吸気筒部142内に空気が流入した時点で腐食性ガスの有無をガス検知センサー142bにより判定することができ、腐食性ガスの有無を早期に発見することができる。
【0062】
また、内部にガス検知センサー142bを備える吸気筒部142の上端が配電盤本体部2の下端部に接続されているため、排風扇103bが駆動されていない状態つまり空気の循環換気が行われていない状態では、配電盤本体部2内の空気、特に下部領域の空気が吸気筒部142内に充満しやすい。そして、配電盤本体部2内から吸気筒部142内に流入した空気に空気よりも重い腐食性ガスが含まれている場合には、その腐食性ガスが自然沈下して、配電盤本体部2の下部領域において窪地状に形成されている吸気筒部142内のガス検知センサー142bによって検知される。そのため、排風扇103bが駆動されていない状態においてガス検知センサー142bが腐食性ガスを検知した場合には、配電盤本体部2内の空気に腐食性ガスが含まれていると判定することができ、直ちに排風扇103bの駆動を開始して配電盤本体部2内の空気および吸気筒部142内の腐食性ガスを含む空気の換気を行うことができる。また、吸気筒部142内の腐食性ガスを含む空気が換気されてガス検知センサー142bが非検知状態となり、且つ、排風扇103bの排風機能による配電盤本体部2内および吸気筒部102内,142内の大部分あるいは全体の空気を換気するために必要な十分な時間が経過した後に、排風扇103bの駆動を停止するように構成するとよい。これにより、排風扇103bの駆動を必要最小限に抑えることができ、排風扇103bの稼働寿命を延長することができ、また、蓄電装置111に蓄電されている電力が無用に消費されてしまうことを抑制して有効に利用することができる。
【0063】
(第5実施形態)
図8に例示する防食装置100は、さらに発光フィルム150を備えている。発光フィルム150は、発光部の一例であり、例えばLED(Light-emitting Diode)を格子状に配列させた周知のLEDフィルムなどによって構成されている。また、発光フィルム150は、外枠部101の内面、この場合、外枠部101の側面部101aの内面に設けられている。防食装置100は、発光フィルム150への給電を、蓄電装置111あるいは太陽光発電フィルム110から行うことができる。
【0064】
発光フィルム150は、側面部101aの内周面の全周にわたって設けてもよいし、側面部101aの内周面の一部に設けてもよい。発光フィルム150を側面部101aの内周面の一部に設ける場合には、複数の発光フィルム150を側面部101aの内周面の周方向に沿って分散して設けてもよいし、側面部101aの内周面の軸方向に沿って分散して設けてもよい。
【0065】
また、防食装置100は、制御装置151を備えている。制御装置151は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、防食装置100が備える各種の駆動系の構成要素、例えば、排風扇103bの動作を制御する。また、制御装置151は、発光フィルム150の動作、例えば、点灯、点滅、消灯、光色の切り替えなどといった動作を制御する。この場合、制御装置151は、外枠部101の上面部101bの下面に設けられている。
【0066】
図8に例示する構成例によれば、例えば防食装置100の動作状態に応じて、発光フィルム150の動作を適宜切り替えることにより、例えば作業者に防食装置100の動作状態を視覚的に示すことができる。
【0067】
また、例えば夜間など低照度の状況においては、発光フィルム150を発光させることにより、防食装置100ひいては配電盤1を視認しやすくでき、配電盤1の設置位置の明確化を図ることができる。
【0068】
また、発光フィルム150の発光動作によれば、例えば次に示すような多種の表示を行うことができる。例えば、発光フィルム150から所定の第1色の光、例えば赤色光を連続照射つまり点灯することにより、排風扇103bが例えば定時的に正常稼働中であることを示すことができる。また、発光フィルム150から所定の第2色の光、例えば青色光を連続照射つまり点灯することにより、排風扇103bが正常停止中であることを示すことができる。また、発光フィルム150から赤色光を断続照射つまり点滅することにより、排風扇103bが正常稼働中であり、且つ、腐食性ガスが検知されたことを示すことができる。また、発光フィルム150から青色光を断続照射つまり点滅することにより、排風扇103bが正常停止中あるいは待機中であり、且つ、腐食性ガスが検知され、その後に腐食性ガスの排出が完了したことを示すことができる。また、発光フィルム150から異なる複数種類の色の光、例えば赤色光および青色光を交互に照射することにより、防食装置100に何らかの不適合、例えば太陽光発電フィルム110や蓄電装置111などに故障等が発生していることを示すことができる。なお、これらの発光態様は、あくまでも一例であり、例えば防食装置100の動作状態に応じて種々の発光態様を適用することができる。
【0069】
また、側面部101aの外周面において複数の太陽光発電フィルム110を分散して配置した場合には、これら太陽光発電フィルム110の間に発光フィルム150を備える構成としてもよい。この構成例によれば、発光フィルム150が外枠部101の外周面に設けられていることから、発光フィルム150からの発光を外部から一層視認しやすくできる。また、発光フィルム150から発生する光を太陽光発電フィルム110によって受光することで、太陽光発電フィルム110による発電を誘発することができる。
【0070】
(第6実施形態)
図9に例示する防食装置100は、複数の排気筒部103を備えている。この場合、複数の排気筒部103は、外枠部101の周方向に沿って円弧状に配列されている。なお、防食装置100は、複数の吸気筒部102が外枠部101の周方向に沿って円弧状に配列された構成としてもよい。即ち、防食装置100は、複数の吸気筒部102および複数の排気筒部103を組み合わせた構成とすることができる。また、防食装置100は、制御部の一例である制御装置161を備えている。制御装置161は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、防食装置100が備える各種の駆動系の構成要素の動作を制御可能である。また、制御装置161は、複数の排気筒部103内にそれぞれ備えられている排風扇103bの動作を制御可能に構成されている。この場合、制御装置161は、複数の排風扇103bのうちから駆動する排風扇103bを適宜選択する。また、制御装置161は、選択した排風扇103bが複数である場合には、それら複数の排風扇103bの動作を連動して制御する。
【0071】
例えば、制御装置161は、複数の排風扇103bを、それぞれ駆動開始時間および駆動終了時間を順次あるいはランダムにずらしながら駆動する。この場合、制御装置161は、外枠部101の周方向に沿って配列されている複数の排気筒部103内の排風扇103bを、配電盤1の上方から見て、時計回りに順次駆動してもよいし、反時計回りに順次駆動してもよい。このような連動制御を行うことにより、単一の排風扇103bを駆動する場合あるいは複数の排風扇103bを同時に駆動する場合に比べ、配電盤本体部2内の空気の流れに例えば捻りや渦巻などといった乱流を発生させることが可能となる。これにより、配電盤本体部2内に滞留する重い腐食性ガスや軽い腐食性ガスを撹拌しながら排気することができ、配電盤本体部2内の換気効率の向上を図ることができる。
【0072】
(その他の実施形態)
なお、本開示は、上述した複数の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形や拡張を行うことができる。例えば、配電盤用防食装置100は、上述した複数の実施形態を適宜選択して組み合わせた構成としてもよい。
【0073】
また、防食装置100を構成する各種の構成要素、例えば、外枠部101、吸気筒部102、排気筒部103などは、アルミニウムや硬質樹脂などといった比較的軽量で、柔らかく、加工しやすく、錆びにくく、耐候性に優れ、信頼性を長期で保持できる材料により構成するとよい。また、例えば外枠部101を透明な材料で構成した場合には、太陽光発電フィルム110を外枠部101の内面に設けることができ、外枠部101によって太陽光発電フィルム110を保護することができる。また、例えば排気筒部103を透明な材料で構成した場合には、内部の排風扇103bの動作状態を外部から目視で確認することができる。
【0074】
また、吸気筒部102内や排気筒部103内には、それぞれ複数のガス吸着剤を備えてもよい。この場合、ガス吸着剤の本体部は、例えば多孔質部材などといった十分に通気性を有する部材により構成するとよい。また、複数のガス吸着剤は、吸気筒部102や排気筒部103の軸方向に沿って配置してもよいし、吸気筒部102や排気筒部103の径方向に沿って配置してもよい。また、複数のガス吸着剤は、相互に接触していてもよいし、離間していてもよい。また、複数のガス吸着剤は、それぞれ異なる種類の腐食性ガスを吸着するものであってもよいし、同種の腐食性ガスを吸着するものであってもよい。
【0075】
以上、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、あくまでも例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
図面において、1は配電盤、2は配電盤本体部、3はスタンド(脚部)、100は配電盤用防食装置、101は外枠部、102は吸気筒部(第1筒状部)、102aはガス吸着部、103は排気筒部(第2筒状部)、103aはガス吸着部、103bは排風扇(排気部)、110は太陽光発電フィルム(発電部)、111は蓄電装置(蓄電部)、120は排気口、130は連通口、142は吸気筒部(第3筒状部)、142aはガス吸着部(通気性が抑制されたもの)、142bはガス検知センサー(ガス検知部)、150は発光フィルム(発光部)、161は制御装置(制御部)、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9