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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023155546
(43)【公開日】2023-10-23
(54)【発明の名称】分割コイル構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
H02K3/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064932
(22)【出願日】2022-04-11
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】和田 章吾
(72)【発明者】
【氏名】吉地 輝朗
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603BB13
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CB24
5H603CC05
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD01
5H603CD21
5H603CE02
5H603CE14
5H603EE06
(57)【要約】
【課題】平角線又は板状線を用いる場合に、簡単にステータのスロット内に装着できる手段を提供する。
【解決手段】ステータ1Aの突出磁極3a、3Aの外周40に分割コイルA、Bを設けた構成からなる分割コイル構造において、分割コイルA、Bは、平角線2又は板状線よりなり、平角線2の面方向Cは、突出磁極3a、3Aの突出方向P1に対して直交している構造であり、また、突出磁極3a、3Aに隣接する隣接突出磁極3Aに設けた隣接分割コイルBの第1側部B1と分割コイルA、Bの第2側部A1との間には間隙G1、G2が形成され、前記間隙G1、G2には流体が流れるようにした構造である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(1A)の突出磁極(3a,3A)の外周(40)に分割コイル(A,B)を設けた構成からなる分割コイル構造において、
前記分割コイル(A,B)は、平角線(2)又は板状線よりなり、前記平角線(2) 又は板状線の面方向(C)は、前記突出磁極(3a,3A)の突出方向(P1)に対して直交していることを特徴とする分割コイル構造。
【請求項2】
前記突出磁極(3a,3A)に隣接する隣接突出磁極(3A)に設けた隣接分割コイル(B)の第1側部(B1)と前記分割コイル(A,B)の第2側部(A1)との間には間隙(G1,G2)が形成され、前記間隙(G1,G2)には流体(21)が流れるようにしたことを特徴とする請求項1記載の分割コイル構造。
【請求項3】
前記間隙(G1,G2)には、絶縁された状態のねじ(20)が挿入され、前記ねじ(20)とナットによって前記隣接分割コイル(B)と前記分割コイル(A)間の絶縁が維持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の分割コイル構造。
【請求項4】
前記分割コイル(A)は、アルミニウムよりなり、前記絶縁はアルマイトとすることを特徴とする請求項3記載の分割コイル構造。
【請求項5】
前記ステータ(1A)は、分割コアよりなることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか1項に記載の分割コイル構造。
【請求項6】
前記各突出磁極(3a,3A)に設けられた前記分割コイル(A,B)は、1層巻であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5の何れか1項に記載の分割コイル構造。
【請求項7】
前記分割コイル(A,B)のコイルエンド部(30)とスロット(S)内で分割コイル(A,B)のコイル片(Ao)の厚さ(T,Tn)を変えることで、前記コイルエンド部(30)のコイル片(Ao)が薄くなり、前記分割コイル(A,B)間の間隙(G1,G2)が増えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか1項に記載の分割コイル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割コイル構造に関し、特に、コイルを分割コイルとし、かつ、この分割コイルを平角線又は板状線とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の分割コアに巻き込んだコイルとしては、例えば、図6に示されるように、表面が絶縁状態となるように特殊処理がされた平角線2をステータ1Aの分割コア1の突出磁極3に用いた第1従来構造と、図7に示されるように、ステータ1Aの各突出磁極3に、平角型のステータコイルとしての平角線2を設け、各ステータコイルを形成する前記平角線2に、一対の第1、第2端子12、13を設けた第2従来構造とがある。
尚、前記平角線2は、種々多様であり、この平角線2は、実際には、板状又は線状の平角絶縁銅線が積み重ねられ、その平角線2の絶縁材は、前述のモータ、各種機械溶接機等のピーク時の電流でも、絶縁性が耐えられるような材料で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-184832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の分割コイル構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図6の第1従来構造においては、成形機(図示せず)から吐出された平角線は、太いマグネットワイヤを成形したものであり、突出磁極に巻き付けることは、巻付機を用いても極めて困難であった。
また、この平角線を巻き付ける相手がモータのステータであった場合には、多数本を並列巻線すると、並列回路による循環電流等の問題が発生していた。
また、図7の第2従来構造においては、各突出磁極3に対して、太いマグネットワイヤを成形しつつ巻き込む(エッジワイズ巻線)ことは極めて困難であった。
また、モータの場合、周知の多本並列巻線すると、並列回路による循環電流等の問題が発生していた。
また、コアを分割して平角線を巻き付けた場合には、分割面での損失が大きく、組立て精度が出にくいため、トルクリップルが基準よりも多く発生していた。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、従来のように、ステータを分割コアとする代わりに、ステータコイルを分割コイルとし、各突出磁極のスロットに配置される複数の板状の分割コイルを平角線又は板状線で形成した構造とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による分割コイル構造は、ステータの突出磁極の外周に分割コイルを設けた構成からなる分割コイル構造において、前記分割コイルは、平角線又は板状線よりなり、前記平角線又は板状線の面方向は、前記突出磁極の突出方向に対して直交している構造であり、また、前記突出磁極に隣接する隣接突出磁極に設けた隣接分割コイルの第1側部と前記分割コイルの第2側部との間には間隙が形成され、前記間隙には流体が流れるようにした構造であり、また、前記間隙には、絶縁された状態のねじが挿入され、前記ねじとナットによって前記隣接分割コイルと前記分割コイル間の絶縁が維持されている構造であり、また、前記分割コイルは、アルミニウムよりなり、前記絶縁はアルマイトとする構造であり、また、前記ステータは、分割コアよりなる構造であり、また、前記各突出磁極に設けられた前記分割コイルは、1層巻である構造であり、また、前記分割コイルのコイルエンド部とスロット内で分割コイルのコイル片の厚さを変えることで、前記コイルエンド部のコイル片が薄くなり、前記分割コイル間の間隙が増える構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による分割コイル構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ステータの突出磁極の外周に分割コイルを設けた構成からなる分割コイル構造において、前記分割コイルは、平角線又は板状線よりなり、前記平角線又は板状線の面方向は、前記突出磁極の突出方向に対して直交していることにより、コイルの占有率を上げ、コイルの放熱面積を上げることができる。
また、前記突出磁極に隣接する隣接突出磁極に設けた隣接分割コイルの第1側部と前記分割コイルの第2側部との間には間隙が形成され、前記間隙には流体が流れるようにしたことにより、冷却等の効果を上げることができる。
また、前記間隙には、絶縁された状態のねじが挿入され、前記ねじとナットによって前記隣接分割コイルと前記分割コイル間の絶縁が維持されていることにより、大電流印加が可能となる。
また、前記分割コイルは、アルミニウムよりなり、前記絶縁はアルマイトとすることにより、耐電流効果を大幅に上げることができる。
また、前記ステータは、分割コアよりなることにより、組立てが大幅に容易となる。
また、前記各突出磁極に設けられた前記分割コイルは、1層巻であることにより、巻線としての組立ては容易となる。
また、前記分割コイルのコイルエンド部とスロット内で分割コイルのコイル片の厚さを変えることで、前記コイルエンド部のコイル片が薄くなり、前記分割コイル間の間隙が増えることにより、隙間を広く保つことができ、電気的な特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態による分割コイル構造を示す要部の平面図である。
図2図1の要部の斜視図である。
図3図1の要部の拡大図である。
図4図2の要部の平面のボルトによる締結を示す平面図である。
図5図4の右側面図である。
図6】従来の突出磁極への平角線の取付けを示す断面図である。
図7】従来の突出磁極への平角線の他の取付けを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、コイルを分割コイルとし、かつ、この分割コイルを平角線又は板状線として、コイル占積率を向上させ、かつ、耐電流性を向上させることである。
【実施例0010】
以下、図面と共に本発明による分割コイル構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号1Aで示されるものは、輪状をなし、所定角度間隔で外方へ向けて突出する複数の突出磁極3aを有するステータである。
【0011】
前記各突出磁極3aの外端には、前記突出磁極3aと一体の幅広形状からなるコイル止め体3Bが設けられ、前記突出磁極3aの周囲、すなわち外周40に装着された複数の分割コイルAが、前記突出磁極3aを囲むように設けられている。
前記各突出磁極3aの各外周40には、前述の分割コイルAが前述のように設けられているため、図1で示されるように、前記突出磁極3aの外周40には、分割コイルAが装着されている。
【0012】
前記突出磁極3aの時計(CW)方向又は反時計(CCW)方向すなわち左右位置には、隣接突出磁極3Aが設けられ、前記各隣接突出磁極3Aには、前述の突出磁極3aと同様の構造にて、前記分割コイルAと同様の隣接分割コイルBが設けられている。
【0013】
前記突出磁極3aに装着された分割コイルAの第2側部A1と、図1で見て左側に位置する隣接突出磁極3Aに装着された隣接分割コイルBの第1側部B1とは互いに離れていることにより、同一幅Wからなる第1間隙G1が形成されている。同様に、前記突出磁極3aに装着された分割コイルAの第2側部A1と、図1で見て右側に位置する隣接突出磁極3Aに装着された隣接分割コイルBの第1側部B1とは互いに離れていることにより、同一幅Wからなる第2間隙G2が形成されている。
前記突出磁極3aに設けられた前記分割コイルA及び隣接突出磁極3Aに設けられた隣接分割コイルBは、何れも、各板状線又は平角線からなり、その形状は1枚1枚の板状体を積層した積層体の構造である。
【0014】
前記各分割コイルA及び各隣接分割コイルBは、全体の個々の面方向Cが全て各突出磁極3a及び隣接突出磁極3Aの突出方向P1に対して直交していると共に、前記各間隙G1、G2は、前記ステータ1Aの半径方向Rに沿って直線状に形成されている。
前記各分割コイルA及び各隣接分割コイルBの第1厚さTと第2厚さTnとは、前記ステータ1Aの各スロットSの底部S1側に位置する分割コイルAの方が厚さが厚く形成され、第1厚さTよりも第2厚さTnの方が厚い構造であることによって、全ての分割コイルA、Bは、同一の容積で、かつ、同一の電流値を流せるように構成されている。尚、前記分割コイルA及び隣接分割コイルBは、例えば、アルミニウムよりなり、絶縁としては、アルマイトが用いられている。
前記各間隙G1、G2には、図4及び図5で示されるように、全体が絶縁体か又は絶縁処理された状態で用いられる。
【0015】
図4及び図5に示すように、突出磁極3aの各分割コイルAと隣接突出磁極3Aの隣接分割コイルBとの間の第1間隙G1内には、絶縁された状態のねじ20が螺入され、一対の分割コイルAと隣接分割コイルBとを互いに導通させることなく、絶縁状態で組立てることができるように構成されている。
尚、図4に限らず、全てのスロットSにおける各間隙G1、G2には、外部から空気等の気体又は水等からなる流体21を流通させることによって、各分割コイルA及び隣接分割コイルBの通電中の高温化を防止又は抑えることができる構造である。
【0016】
前記突出磁極3aに設けられた前記分割コイルA及び前記隣接突出磁極3Aに設けられた前記隣接分割コイルBは、1層巻で形成されている。
また、前記分割コイルA及び隣接分割コイルBのコイルエンド部30と前記スロットS内とで前記分割コイルA及び隣接分割コイルBの厚さT、Tnを変えることで、前記コイルエンド部30のコイル片Aoの厚さToが薄くなり、前記各分割コイルA及び隣接分割コイルB間の各間隙G1、G2が増える。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明による分割コイル構造は、ステータ側のスロット内に設けられた一対の分割コイル間に形成された間隙内にねじを挿入することによって、各分割コイルの絶縁性が確保され、各分割コイルの厚さを変えて積層することができ、板状をなす各分割コイルのコイル片の厚さを変えて各コイル片に対する励磁力を安定させ、大電流駆動の回転機の性能と信頼性を安定させることができる。
【符号の説明】
【0018】
1A ステータ
2 平角線
3A 隣接突出磁極
3a 突出磁極
3B コイル止め体
20 ねじ
21 流体
30 コイルエンド部
40 外周
A 分割コイル
A1 第2側部
Ao コイル片
B 隣接分割コイル
B1 第1側部
C 面方向
G1 第1間隙
G2 第2間隙
P1、P2 突出方向
R 半径方向
S スロット
S1 底部
T 第1厚さ
To 厚さ
Tn 第2厚さ
W 同一幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7