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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156855
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ダンパー装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20231018BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 451
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066472
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】小栗 崇嘉
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB06
2C056EB21
2C056EB34
2C056KB35
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】貯留室内の圧力、インク残量を高精度で検出することができるダンパー装置を提供すること。
【解決手段】ノズル15からインクを吐出可能なインクヘッド14と共に移動可能であって、前記インクヘッド14に供給する前記インクを貯留可能な少なくとも1つの貯留室60,70が形成されているとともに、前記貯留室60,70に通じる開口55,55を有しているダンパーケース50と、前記開口55,55を閉鎖しており、前記貯留室60,70内のインクの貯留量に従って弾性変形可能なダンパー膜81,81と、前記ダンパーケース50の外面に取り外し可能に取り付けられており、前記貯留室60,70の内部圧力を直接に検出して検出信号を発する少なくとも1つの圧力検出部110,120と、を備えたダンパー装置40である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからインクを吐出可能なインクヘッドと共に移動可能であって、前記インクヘッドに供給する前記インクを貯留可能な少なくとも1つの貯留室が形成されているとともに、前記貯留室に通じる開口を有しているダンパーケースと、
前記開口を閉鎖しており、前記貯留室内の前記インクの貯留量に従って弾性変形可能なダンパー膜と、
前記ダンパーケースの外面に取り外し可能に取り付けられており、前記貯留室の内部圧力を直接に検出して検出信号を発する少なくとも1つの圧力検出部と、を備えたダンパー装置。
【請求項2】
前記圧力検出部の感圧面は、前記ダンパーケースの移動方向に対して垂直に位置している、ことを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
前記圧力検出部の感圧面は、前記ダンパーケースに対して重力方向と平行に位置している、ことを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項4】
前記ダンパーケースの外方から前記ダンパー膜を覆っている遮光性のカバーを、更に備え、
前記圧力検出部は、前記ダンパーケースに前記カバーによって取り付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項5】
前記ダンパーケースは、内部を縦板状の仕切り壁によって水平方向に2つに仕切られることで、前記貯留室を2つ有しており、
前記圧力検出部は、前記2つの貯留室の内部圧力を個別に検出可能に2つ備え、
前記2つの圧力検出部は、前記ダンパーケースの上下方向に一直線上に配列されている、ことを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項6】
前記2つの圧力検出部は、単一の基板に実装されている、ことを特徴とする請求項5に記載のダンパー装置。
【請求項7】
前記2つの圧力検出部は、それぞれ独立した基板に実装されている、ことを特徴とする請求項5に記載のダンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパー装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの機能を複合させて備えた画像形成装置には、ダンパー装置が設けられている。このダンパー装置は、インク供給ラインからインクヘッドに供給されるインクの圧力変動を緩和させることによって、インクヘッドから吐出されるインクの吐出動作を安定させるためのものである。このようなダンパー装置に関する従来技術として、例えば特許文献1(図7図15参照)に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示されるダンパー装置は、インクヘッドに供給するインクを貯留する貯留室と、この貯留室の側面に有する開口を閉鎖して貯留室内のインクの貯留量に従い弾性変形可能なダンパー膜と、この貯留室内のインク残量を検知するフロート式液面検出センサと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5348575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、貯留室内のインクの貯留量に従って、ダンパー膜が弾性変形をする場合、ダンパー膜がインクによる変形、貯留室自体の寸法変化の影響を受けるため、精度の高い測定を行うことができないという問題があった。また、貯留室自体の寸法精度や、この貯留室内の部品の寸法精度の影響もあり得る。
【0006】
本発明は、貯留室内のインク残量を高精度で検出することができるダンパー装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ノズルからインクを吐出可能なインクヘッドと共に移動可能であって、前記インクヘッドに供給する前記インクを貯留可能な少なくとも1つの貯留室が形成されているとともに、前記貯留室に通じる開口を有しているダンパーケースと、前記開口を閉鎖しており、前記貯留室内の前記インクの貯留量に従って弾性変形可能なダンパー膜と、前記ダンパーケースの外面に取り外し可能に取り付けられており、前記貯留室の内部圧力を直接に検出して検出信号を発する少なくとも1つの圧力検出部と、を備えたダンパー装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、貯留室内の圧力、インク残量を高精度で検出することができるダンパー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1によるダンパー装置を備えた画像形成装置の斜視図である。
図2】実施例1によるキャリッジ及びインク供給系統の模式図である。
図3図2に示されるダンパー装置の斜視図である。
図4図3に示されるダンパー装置のカバーを開いた状態の斜視図である。
図5図3の矢視線5-5方向の断面図である。
図6図4に示されるダンパー装置からダンパー膜及びカバーを外した側面図である。
図7図3に示されるカバー及び圧力検出ユニットの分解した斜視図である。
図8図3に示されるダンパーケース及び圧力検出ユニットの分解した斜視図である。
図9図6の9部を拡大した斜視図である。
図10図9に示される第1包囲部と第1圧力検出部との関係を下方から見た斜視図である。
図11図4の矢視線11方向から見た第2包囲部と第2圧力検出部との関係の斜視図である。
図12】実施例2による画像形成装置のダンパー装置をカバーの開放端部側から見て一部を省略した斜視図である。
図13図12に示される圧力検出ユニットの斜視図である。
図14】実施例3による画像形成装置のキャリッジ及びインク供給系統の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。説明中、左右とはメディアの幅方向を基準として左右を指し、前後とはメディアの送り方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0011】
<実施例1>
図1図11を参照しつつ、実施例1のダンパー装置40及びこのダンパー装置40を備えた画像形成装置10を説明する。
【0012】
図1に示されるように、画像形成装置10は、メディアMeにカラー画像を形成可能なインクジェット式プリンタの構成である。この画像形成装置10は、例えば、大型の看板、ポスターの印刷を行うことができる。
【0013】
ここで、画像形成装置10の搬送装置(図示せず)によって送られたメディアMeの送り方向S2を基準として、メディアMeの幅方向S1のことを、適宜「主走査方向S1」ということがある。また、メディアMeの送り方向S2のことを、適宜「副走査方向S2」ということがある。画像形成装置10を上から見て、副走査方向S2は主走査方向S1に対して直交した方向である。
【0014】
印刷対象としてのメディアMeは、例えば、ロールに巻かれたロールメディアである。メディアMeの材質としては、普通紙などの紙類であってもよく、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂類であってもよく、アルミニウム材、鉄材等の金属類であってもよく、様々な材料によって構成可能である。
【0015】
図1及び図2に示されるように、画像形成装置10は、基台11の主走査方向S1へ延びているレール12と、このレール12に主走査方向S1へ移動可能に設けられているキャリッジ13と、このキャリッジ13に設けられている複数のインクヘッド14(プリントヘッド14)及び複数のダンパー装置40とを備えている。キャリッジ13が主走査方向S1へ移動することによって、複数のインクヘッド14及び複数のダンパー装置40は、共に主走査方向S1へ移動する。
【0016】
図2に示されるように、各インクヘッド14は、種々のインクの液滴を吐出可能な複数のノズル15を有する。複数のノズル15は、主走査方向S1へ並ぶとともに、副走査方向S2(図1参照)へも並んでいる。ここで、インクヘッド14に対して、副走査方向S2へ整列している複数のノズル15から成るノズル群の一方16を「第1ノズル群16」といい、他方17を「第2ノズル群17」という。
【0017】
図2に示されるように、1つのダンパー装置40は、1つのインクヘッド14に対応している。このダンパー装置40は、インクの圧力変動を緩和させて、複数のノズル15からのインク吐出動作を安定させるものである。このダンパー装置40は、1つのダンパーケース50を備えている。このダンパーケース50には、2つの貯留室60,70が形成されている。つまり、ダンパーケース50は、内部を縦板状の仕切り壁56によって水平方向に2つに仕切られることで、2つの貯留室60,70を有している。2つの貯留室60,70の一方60を「第1貯留室60」といい、他方70を「第2貯留室70」という。
【0018】
第1ノズル群16の各ノズル15には、第1インク供給系統20からインクが供給される。この第1インク供給系統20は、インクを貯留可能な第1インクタンク21と、この第1インクタンク21の供給口に対して入口を接続された第1供給制御弁22と、この第1供給制御弁22の出口に対して吸入口を接続された第1供給ポンプ23と、この第1供給ポンプ23の吐出口に対して流入口61を接続された第1貯留室60と、この第1貯留室60の吐出口62に接続された第1ノズル群16の各ノズル15と、第1貯留室60の戻り口63から第1戻り制御弁24を介して第1供給ポンプ23の吸入口へ接続された第1循環路25と、を備えている。インクに比重の大きい顔料が含有している場合に、第1循環路25によって、第1貯留室60内のインクを循環させることにより、第1貯留室60内への顔料の沈降を防ぐことができる。
【0019】
第1貯留室60の内部圧力は、第1圧力検出部110によって検出される。この第1圧力検出部110は、第1貯留室60の内部圧力を直接に検出して、電気的な検出信号を制御部26に発する。制御部26は、第1圧力検出部110から検出信号を受けて、第1貯留室60の内部圧力に対する第1貯留室60内のインク残量を演算や換算マップによって求め、第1供給制御弁22と第1供給ポンプ23と第1戻り制御弁24とを制御する。
【0020】
第2ノズル群17の各ノズル15には、第2インク供給系統30からインクが供給される。この第2インク供給系統30は、インクを貯留可能な第2インクタンク31と、この第2インクタンク31の供給口に対して入口を接続された第2供給制御弁32と、この第2供給制御弁32の出口に対して吸入口を接続された第2供給ポンプ33と、この第2供給ポンプ33の吐出口に対して流入口71を接続された第2貯留室70と、この第2貯留室70の吐出口72に接続された第2ノズル群17の各ノズル15と、第2貯留室70の戻り口73から第2戻り制御弁34を介して第2供給ポンプ33の吸入口へ接続された第2循環路35と、を備えている。インクに比重の大きい顔料が含有している場合に、第2循環路35によって、第2貯留室70内のインクを循環させることにより、第1貯留室60内への顔料の沈降を防ぐことができる。
【0021】
第2貯留室70の内部圧力は、第2圧力検出部120によって検出される。この第2圧力検出部120は、第2貯留室70の内部圧力を直接に検出して、電気的な検出信号を制御部26に発する。制御部26は、第2圧力検出部120から検出信号を受けて、第2貯留室70の内部圧力に対する第2貯留室70内のインク残量を演算や換算マップによって求め、第2供給制御弁32と第2供給ポンプ33と第2戻り制御弁34とを制御する。
【0022】
次に、ダンパー装置40について、図2図7を参照しつつ詳しく説明する。ダンパー装置40は、1つのダンパーケース50と2つのカバー90,90とを備えている。
【0023】
ダンパーケース50は、平面視矩形状且つ側面視矩形状の構成であって、遮光性を有し且つ不透明な、樹脂等の材料によって構成されている。図6に示されるように、このダンパーケース50は、横板状の底板51と、この底板51の副走査方向S2の一端から起立した縦板状の第1側板52と、この底板51の副走査方向S2の他端から起立した縦板状の第2側板53と、第1側板52と第2側板53との上端間を繋いだ横板状の天板54と、によって一体に構成されている。さらに、図5に示されるように、ダンパーケース50は、主走査方向S1の側面55,55の全体にわたって開放されている。以下、開放された主走査方向S1の側面55,55のことを、「開口55,55」ということがある。
【0024】
上述の仕切り壁56は、ダンパーケース50の内部の、開口55,55間の中央に一体に構成されることによって、ダンパーケース50の内部を主走査方向S1に第1貯留室60と第2貯留室70とに仕切っている。
【0025】
図3及び図6に示されるように、各貯留室60,70の流入口61,71は、第1側板52寄りに位置するとともに、天板54から底板51近くまで延びている。各貯留室60,70の吐出口62,72は、底板51に位置している。各貯留室60,70の戻り口63,73は、第2側板53寄り且つ天板54寄りに位置している。
【0026】
以上の説明をまとめると、図5に示されるように、この2つの貯留室60,70は、互いに分離、独立した空間であって、互いに反対側を開放されている。つまり、ダンパーケース50は、主走査方向S1の両面に、全体にわたって開放された開口55,55を有している。これらの開口55,55は、それぞれダンパー膜81,81によって閉鎖されている。この結果、2つの貯留室60,70は密閉されている。
【0027】
ダンパー膜81,81は、各貯留室60,70内のインクの貯留量や各貯留室60,70の圧力に従って弾性変形可能なシート(フィルムを含む)により、構成されている。例えば、ダンパー膜81,81は、透明または半透明の樹脂材料によって構成されることが好ましい。ダンパー膜81,81は、各貯留室60,70の内側及び外側へそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ダンパーケース50に取り付けられている。
【0028】
図4及び図5に示されるように、仕切り壁56の壁面と各ダンパー膜81,81の膜面(シート面)との間には、ダンパー膜81,81を外方へ付勢する付勢部材82,82がそれぞれ介在している。これらの付勢部材82,82は、例えば圧縮コイルばねによって構成される。各ダンパー膜81,81と付勢部材82,82との間には、板状の押圧体83,83を介在することが好ましい。
【0029】
図3図5に示されるように、2つのカバー90,90は、遮光性を有し且つ不透明な、樹脂等の材料によって構成されている。これらのカバー90,90は、開口55,55を閉じることによって、ダンパーケース50の外方(貯留室60,70とは反対側)からダンパー膜81,81を覆っている。
【0030】
各カバー90,90の側方の基端部91,91は、ヒンジ機構92,92によって主走査方向S1へ開閉可能に支持されている。ダンパー装置40を上から見て、これらのヒンジ機構92,92は、ダンパーケース50において主走査方向S1の角、例えば第1側板52の角に位置している。
【0031】
図3図6及び図7に示されるように、各カバー90,90の開放端部93,93には、互いに向かい合うカバー延長部94,94が一体に設けられている。各カバー延長部94,94は、各カバー90,90の開放端部93,93からヒンジ機構92,92とは反対側へ延びており、互いに向かい合う平面視L字状の構成である。
【0032】
より具体的に説明すると、各カバー延長部94,94は、各カバー90,90の開放端部93,93からヒンジ機構92,92とは反対側へ延びた縦板状の第1延長板95,95と、これらの第1延長板95,95の先端から互いに向かい合う方へ延びた縦板状の第2延長板96,96と、によって構成されている。
【0033】
ダンパー装置40は、ダンパーケース50の第2側板53と、各カバー延長部94,94とによって囲まれた空間部Sp(図6参照)を有している。この空間部Spのことを、「圧力検出部配置スペースSp」ということがある。この圧力検出部配置スペースSpを設けるために、ダンパーケース50の第2側板53の外面と、第2延長板96,96の内面との間には、予め設定された一定の間隔を有している。
【0034】
第2延長板96,96の先端同士を突き合わせる(略合わせる構成を含む)ことにより、各カバー90,90によってダンパーケース50の開口55,55を密閉にするとともに、ダンパー膜81,81を覆うことが可能である(図5参照)。
【0035】
図3及び図7に示されるように、各カバー90,90の開放端部93,93同士は、掛け止め機構97によって取り外し可能に掛け止められている。掛け止め機構97は、例えば、一方の第2延長板96に一体に設けられている掛け止め爪97aと、他方の第2延長板96に一体に設けられている掛け止め孔97bと、によって構成されている。掛け止め孔97bに掛け止め爪97aを引っ掛けることによって、互いに掛け止めることができる。
【0036】
次に、各圧力検出部110,120及び各圧力検出部110,120の取付構造について、詳しく説明する。
【0037】
図3図6図8に示されるように、2つの圧力検出部110,120は、ダンパーケース50の外面に取り外し可能に取り付けられている。詳しくは、各圧力検出部110,120は、ダンパーケース50にカバー90,90によって取り付けられている。
【0038】
より具体的に説明すると、2つの圧力検出部110,120は、ダンパーケース50の上下方向一直線上に配列されているとともに、単一の基板130の第1基板面131に実装されている。基板130の第2基板面132(第1基板面131とは反対側の面132)の、上端部または下端部には、単一のコネクタ140が実装されている。このコネクタ140には、2つの圧力検出部110,120が基板130を介して電気的に接続されている。基板130は、2つの圧力検出部110,120とコネクタ140とを上下方向一直線上に配列して実装しているので、ダンパーケース50の上下方向に長い。このように、2つの圧力検出部110,120と単一の基板130と単一のコネクタ140とによって、単一の圧力検出ユニット150が構成されている。
【0039】
この圧力検出ユニット150は、圧力検出部配置スペースSpに配置されるとともに、コネクタ140のみを圧力検出部配置スペースSpから露出している。基板130の第1基板面131は、ダンパーケース50の第2側板53の外面に向かい合っている。
【0040】
さらに、図3図6及び図8に示されるように、この基板130は、互いに閉じた状態の各カバー90,90の第1延長板95,95に向かい合っている両縁133,133を有する。この両縁133,133には、第1延長板95,95へ向かって突出した嵌め込み凸部134,134を有している。これらの嵌め込み凸部134,134は、第1延長板95,95に形成されている嵌め込み凹部98,98に嵌め込み可能である。嵌め込み凹部98,98は、第1延長板95,95の板面方向に貫通した孔、または、板面方向に窪んだ構成である。嵌め込み凹部98,98に嵌め込み凸部134,134を嵌め込むとともに、各カバー90,90を閉じて、掛け止め機構97を掛け止めることによって、圧力検出ユニット150はダンパーケース50の外面に取り外し可能に取り付けられている。
【0041】
図8に示されるように、各圧力検出部110,120は、例えば半導体圧力センサによって構成される。これらの圧力検出部110,120は、それぞれ、ケース本体111,121と、このケース本体111,121に一体に構成されているパイプ状のノズル112,122と、このケース本体111,121の内部に設けられている歪ゲージ等の圧力センサチップ113,123と、この圧力センサチップ113,123からケース本体111,121の外方へ延びて基板130に実装されるリード114,124と、を備えている。
【0042】
各圧力検出部110,120の感圧面、つまり圧力センサチップ113,123の感圧面は、ノズル112,122の孔112a,122a(ポート孔112a,122a)を向いている。圧力センサチップ113,123は、外部からポート孔112a,122aを通じて感圧面に伝わった圧力に応じて、電圧等の電気信号を発する。この電気信号が、圧力検出部110,120の検出信号となる。ポート孔112a,122aが、圧力センサチップ113,123の感圧面と同じ方向を向いているので、以下、ポート孔112a,122aのことを「圧力センサチップ113,123の感圧面112a,122a」ということがある。
【0043】
各圧力検出部110,120のノズル112,122は、ダンパーケース50の第2側板53に形成されている貫通した圧力検出孔57,57に挿入されている。圧力検出孔57,57とノズル112,122との間は、オーリング等のシール部材115,125によってシールされている。
【0044】
図6に示されるように、ポート孔112a,122a、つまり、各圧力検出部110,120の感圧面112a,122aは、第2側板53の内面53aに直交し、且つ、各貯留室60,70(図5参照)に連通している。従って、各圧力検出部110,120の感圧面112a,122a(ポート孔112a,122a)は、ダンパーケース50の移動方向S1(主走査方向S1)に対して垂直に位置している。さらに、各圧力検出部110,120の感圧面112a,122a(ポート孔112a,122a)は、ダンパーケース50に対して重力方向(上下方向)と平行に位置している。
【0045】
図9及び図10に示されるように、第1貯留室60は、第1圧力検出部110のポート孔112a周りを囲う第1包囲部64を有している。この第1包囲部64は、第2側板53と、仕切り壁56から窪んだ第1凹部65とによって構成されている。仕切り壁56に第1凹部65を有することによって、第1圧力検出部110のポート孔122aを、ダンパーケース50の幅方向中央(主走査方向S1の中央)に配置することができる。この第1凹部65は、仕切り壁56の一部が第2貯留室70(図5参照)側へ膨出することによって形成されている。
【0046】
第1貯留室60の戻り口63は、第1凹部65の上面65aに連通している。第1凹部65の下面65bは、この第1凹部65の奥面65cから第1貯留室60へ向かって下り傾斜している。インクの種類によっては、金属成分のように比重の大きい成分が含まれるものもある。第1貯留室60から第1凹部65を通って戻り口63へ流出するインクが沈降しても、第1凹部65の下面65bが下り傾斜面なので、この下面65bへの堆積を防止することができる。従って、堆積したインクによってポート孔112aが塞がれることはない。
【0047】
図11に示されるように、第2貯留室70は、第2圧力検出部120のポート孔122a周りを囲う第2包囲部74を有している。この第2包囲部74は、上記第1包囲部64(図9参照)の真下に位置しており、第2側板53と、仕切り壁56から窪んだ第2凹部75とによって構成されている。仕切り壁56に第2凹部75を有することによって、第2圧力検出部120のポート孔122aを、ダンパーケース50の幅方向中央(主走査方向S1の中央)に配置することができる。この第2凹部75は、仕切り壁56の一部が第1貯留室60側へ膨出することによって形成されている。
【0048】
第2貯留室70の戻り口73は、第2凹部75の上面75aに連通している。第2凹部75の下面75bは、この第2凹部75の奥面75cから第2貯留室70へ向かって下り傾斜している。インクの種類によっては、金属成分のように比重の大きい成分が含まれるものもある。第2貯留室70から第2凹部75を通って戻り口73へ流出するインクが沈降しても、第2第2凹部75の下面75bが下り傾斜面なので、この下面75bへの堆積を防止することができる。従って、堆積したインクによってポート孔122aが塞がれることはない。
【0049】
このようにして、図8に示されるように、ダンパーケース50の上下方向へ一直線上に、第1凹部65と第2凹部75とが配列されることによって、ダンパーケース50の幅方向中央(主走査方向S1の中央)に、2つの圧力検出部110,120をダンパーケースの上下方向一直線上に配列することができる。
【0050】
以上の実施例1の説明をまとめると、次の通りである。
図2及び図5に示されるように、ダンパー装置40は、ダンパーケース50とダンパー膜81,81と少なくとも1つの圧力検出部110,120とを備えている。図2に示されるように、ダンパーケース50は、ノズル15からインクを吐出可能なインクヘッド14と共に移動可能であって、このインクヘッド14に供給するインクを貯留可能な少なくとも1つの貯留室60,70が形成されているとともに、貯留室60,70に通じる開口55,55を有している。図5に示されるダンパー膜81,81は、開口55,55を閉鎖しており、貯留室60,70内のインクの貯留量に従って弾性変形可能である。図2及び図6に示されるように、圧力検出部110,120は、ダンパーケース50の外面に取り外し可能に取り付けられており、貯留室60,70の内部圧力を直接に検出して検出信号を発する。
【0051】
このように、貯留室60,70の内部圧力を直接に検出する構成としたので、貯留室60,70自体の寸法精度やこの貯留室60,70内の部品の寸法精度の影響、インクによる経時変化の影響を極力抑制することができる。従って、貯留室60,70内の圧力を高精度で検出することができる。この高精度で検出された圧力の値を、貯留室60,70内のインク残量の値に、制御部26(図2参照)によって変換することにより、貯留室60,70内のインク残量を高精度で検出する(得る)ことができる、ダンパー装置40を提供することができる。
【0052】
しかも、各インク供給系統20,30(図2参照)のうち、圧力変動を低減するためのダンパー装置40の貯留室60,70自体の内部圧力を直接に検出するので、他の部位の圧力を検出する場合よりも、精度よく検出することができる。
【0053】
さらには、図6及び図8に示されるように、圧力検出部110,120の感圧面112a,122aは、ダンパーケース50の移動方向S1(主走査方向S1)に対して垂直に位置している。
【0054】
メディアMe(図1参照)に印刷をする際には、ダンパーケース50は、インクヘッド14(図2参照)と共にメディアMeの幅方向S1へ移動する。このときに、貯留室60,70内のインクの動きに伴う動圧の変動が発生し得る。これに対して、感圧面112a,122aはダンパーケース50の移動方向S1に対して垂直に位置しているので、動圧の変動を受けにくい。このため、圧力検出部110,120によって安定した圧力を検出することができる。
【0055】
さらには、図6及び図8に示されるように、圧力検出部110,120の感圧面112a,122aは、ダンパーケース50に対して重力方向と平行に位置している。
【0056】
このため、貯留室60,70に貯留されているインクの顔料が沈降することによる影響(例えば感圧面112a,122aへの顔料の付着)を、極力抑制することができる。また、貯留室60,70には、微量の空気が混入することがあり得るが、この空気による影響を、極力抑制することができる。従って、圧力検出部110,120によって安定した圧力を検出することができる。
【0057】
さらには、図3図5及び図6に示されるように、ダンパー装置40は、ダンパーケース50の外方からダンパー膜81,81を覆っている遮光性のカバー90,90を備えている。圧力検出部110,120は、ダンパーケース50にカバー90,90によって取り付けられている。
【0058】
このため、カバー90,90を開閉することによって、ダンパーケース50に対する圧力検出部110,120の着脱を容易に行うことができる。ダンパーケース50に対して圧力検出部110,120を取り付けるのに、ダンパー膜81,81を覆っている遮光性のカバー90,90を有効活用するので、別部材からなる取り付け部材を設ける必要はない。しかも、貯留室60,70内の圧力が増した際に、ダンパーケース50から圧力検出部110,120が外れないように、カバー90,90によって抑えることもできる。
【0059】
さらには、図2図5及び図8に示されるように、ダンパーケース50は、内部を縦板状の仕切り壁56によって水平方向に2つに仕切られることで、貯留室60,70を2つ有している。圧力検出部110,120は、2つの貯留室60,70の内部圧力を個別に検出可能に2つ備えている。2つの圧力検出部110,120は、ダンパーケース50の上下方向に一直線上に配列されている。
【0060】
このように、水平方向に仕切られている2つの貯留室60,70に対して、2つの圧力検出部110,120を上下方向に一直線上に配列することによって、ダンパーケース50の小型化をはかることができる。
【0061】
さらには、図8に示されるように、2つの圧力検出部110,120は、単一の基板130に実装されている。
【0062】
このため、圧力検出部110,120を1つのユニットに集約する(例えば圧力検出ユニット150にまとめる)ことができるので、ダンパーケース50に対する組み付け性が高まる。
【0063】
<実施例2>
次に、図12及び図13を参照しつつ実施例2のダンパー装置240及びこのダンパー装置240を備えた画像形成装置210について説明する。
【0064】
図12は、実施例2のダンパー装置240を説明する斜視図であって、上記実施例1のダンパー装置40を説明する図3に対応している。図13は、実施例2のダンパー装置40の圧力検出ユニット250を説明する斜視図であって、上記実施例1のダンパー装置40の圧力検出ユニット150を説明する図8に対応している。
【0065】
実施例2の圧力検出ユニット250は、第1圧力検出ユニット251と第2圧力検出ユニット252とに、上下に2分割されていることを特徴とする。その他の基本的な構成については、実施例1のダンパー装置40及びこのダンパー装置40を備えた画像形成装置10と共通する。実施例1のダンパー装置40及びこのダンパー装置40を備えた画像形成装置10と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。
【0066】
第1圧力検出ユニット251は、第1圧力検出部110と第1基板231と第1コネクタ241とによって構成されている。第1コネクタ241には、第1圧力検出部110の端子(リード114)が第1基板231を介して電気的に接続されている。同様に、第2圧力検出ユニット252は、第2圧力検出部120と第2基板232と第2コネクタ242とによって構成されている。第2コネクタ242には、第2圧力検出部120の端子(リード124)が第2基板232を介して電気的に接続されている。
【0067】
このように、2つの圧力検出部110,120は、それぞれ独立した基板231,232に実装されている。各基板231,232は、それぞれ嵌め込み凸部234,234を2つずつ有している。各コネクタ241,242は、それぞれ嵌め込み凸部234,234に実装されている。一方、これらの嵌め込み凸部234,234を嵌め込むための嵌め込み凹部298,298が、第1延長板95,95に形成されている。実施例2の嵌め込み凹部298,298は、各第1延長板95,95の板面方向に貫通した切り欠き孔によって構成されている。このため、各コネクタ241,242が実装されている嵌め込み凸部234,234を、嵌め込み凹部298,298に容易に嵌め込むことができる。
【0068】
以上の説明から明らかなように、実施例2では、2つの圧力検出部110,120は、それぞれ独立した基板231,232に実装されている。このため、単一の基板に実装される場合に比べて、各圧力検出部110,210のノズル112,212間のピッチの精度や、ダンパーケース50の各圧力検出孔57,57(図8参照)間のピッチの精度を、高精度にする必要がなく、生産管理が容易である。従って、ダンパー装置240の生産性を高めることができる。
【0069】
その他の作用、効果については、上記図1図11に示される実施例1のダンパー装置40及びこのダンパー装置40を備えた画像形成装置10と同じである。
【0070】
<実施例3>
次に、図14を参照しつつ実施例3のダンパー装置340及びこのダンパー装置340を備えた画像形成装置310について説明する。
【0071】
図14は実施例3のダンパー装置340を含む第1、第2インク供給系統320,330を説明する模式図であって、上記実施例1の第1、第2インク供給系統20,30を説明する図2に対応している。
【0072】
実施例3の第1、第2インク供給系統320,330は、図2に示される上記実施例1の第1、第2インク供給系統20,30に対して、第1循環路25及び第2循環路35を備えていないことを特徴とする。実施例3のダンパー装置340は、上記図2に示される第1貯留室60の戻り口63と第2貯留室70の戻り口73とを有していない。
【0073】
その他の基本的な構成については、実施例1のダンパー装置40及びこのダンパー装置40を備えた画像形成装置10と共通する。実施例1のダンパー装置40及びこのダンパー装置40を備えた画像形成装置10と共通する部分については、符号を流用すると共に、詳細な説明を省略する。また、実施例3のダンパー装置340は、実施例2のダンパー装置240の構成を採用してもよい。
【0074】
このように、第1、第2インク供給系統320,330が第1循環路25及び第2循環路35を備えていない場合であっても、実施例1のダンパー装置40及び画像形成装置10や、実施例2のダンパー装置240及び画像形成装置210に適用することができる。
【0075】
なお、本発明によるダンパー装置40,240,340及びこのダンパー装置40,240,340を備えた画像形成装置10,210,310は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、上記実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のダンパー装置40,240,340及びこのダンパー装置40,240,340を備えた画像形成装置10,210,310は、インクジェット式のプリンタに好適である。
【符号の説明】
【0077】
10 画像形成装置
12 レール
13 キャリッジ
14 インクヘッド
15 ノズル
40 ダンパー装置
50 ダンパーケース
55 開口
56 仕切り壁
60 第1貯留室
70 第2貯留室
81 ダンパー膜
90 カバー
110 第1圧力検出部
112a 第1圧力検出部の感圧面(ポート孔)
120 第2圧力検出部
122a 第2圧力検出部の感圧面(ポート孔)
130 基板
210 画像形成装置
231 第1基板
232 第2基板
240 ダンパー装置
310 画像形成装置
340 ダンパー装置
S1 ダンパーケースの移動方向(主走査方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
第2ノズル群17の各ノズル15には、第2インク供給系統30からインクが供給される。この第2インク供給系統30は、インクを貯留可能な第2インクタンク31と、この第2インクタンク31の供給口に対して入口を接続された第2供給制御弁32と、この第2供給制御弁32の出口に対して吸入口を接続された第2供給ポンプ33と、この第2供給ポンプ33の吐出口に対して流入口71を接続された第2貯留室70と、この第2貯留室70の吐出口72に接続された第2ノズル群17の各ノズル15と、第2貯留室70の戻り口73から第2戻り制御弁34を介して第2供給ポンプ33の吸入口へ接続された第2循環路35と、を備えている。インクに比重の大きい顔料が含有している場合に、第2循環路35によって、第2貯留室70内のインクを循環させることにより、第2貯留室70内への顔料の沈降を防ぐことができる。