(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157159
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】洗浄剤、洗浄方法、および補給液
(51)【国際特許分類】
C23G 1/10 20060101AFI20231019BHJP
C11D 7/18 20060101ALI20231019BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C23G1/10
C11D7/18
C11D7/26
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066892
(22)【出願日】2022-04-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000114488
【氏名又は名称】メック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貞永 晃佑
(72)【発明者】
【氏名】林崎 将大
(72)【発明者】
【氏名】安隨 ももこ
(72)【発明者】
【氏名】東嶋 真美
【テーマコード(参考)】
4H003
4K053
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003BA12
4H003DA09
4H003DA12
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA20
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB22
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA28
4K053PA06
4K053PA13
4K053QA01
4K053QA04
4K053RA13
4K053RA45
4K053SA06
4K053SA18
(57)【要約】
【課題】銅のエッチングを抑制しながら、銅配線表面に付着した有機物や銅酸化物を除去することができる洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
洗浄剤は、水溶性カルボン酸と、過酸化水素とを含み、前記過酸化水素の濃度が0.75重量%未満であり、pHが2.5未満である。水溶性カルボン酸によって、銅配線表面から銅酸化物を除去することができる。過酸化水素によって、銅配線表面に付着した有機物を除去することができる。これは、洗浄剤中で、過酸化水素が水溶性カルボン酸と反応し、それによって過カルボン酸が生成するためである、と考えられる。銅配線のエッチングを抑制することもできる。これは、水溶性カルボン酸が銅表面に吸着するためである、と考えられる。0.75重量%未満であるためエッチングをいっそう抑制することができる。pHが2.5未満であるため、銅酸化物をいっそう除去することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性カルボン酸と、
過酸化水素とを含み、
前記過酸化水素の濃度が0.75重量%未満であり、
pHが2.5未満である、
銅配線を含む基板の洗浄剤。
【請求項2】
含窒素複素環式化合物を実質的に含まない、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項3】
含窒素複素環式化合物を含まない、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項4】
前記水溶性カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン、α-アラニン、およびβ-アラニンからなる群より選ばれた少なくとも1種のカルボン酸である、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項5】
前記水溶性カルボン酸の濃度が0.2重量%以上である、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項6】
前記過酸化水素の濃度が0.05重量%以上である、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項7】
塩化物イオン濃度が0.05ppm以上である、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項8】
前記銅配線と樹脂部材との密着性を向上するための被膜を前記銅配線の表面に形成する前に前記基板を洗浄するために使用される、請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の洗浄剤で、銅配線を含む基板を洗浄する工程を含む、洗浄方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の洗浄剤を連続または繰り返し使用する際に、前記洗浄剤に添加する補給液であって
水溶性カルボン酸と、
過酸化水素とを含み、
pHが2.5未満である、
補給液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤、洗浄方法、および補給液に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造過程において、銅配線の表面に、樹脂のスカムや、指紋状の油分といった有機物が付着し残留することがある。プリント配線板をセミアディティブ法で製造する際のフラッシュエッチング液、すなわち、不要な導体間のシード層をエッチングするためのエッチング液は含窒素複素環式化合物を含むところ(たとえば特許文献1~3参照)、フラッシュエッチング液に含まれていた含窒素複素環式化合物が銅配線の表面に残留することもある。いっぽう、銅配線の表面には、たとえばベーキングによって、銅酸化物の被膜が生成することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-9122号公報
【特許文献2】特許5576525号公報
【特許文献3】特開2015-120970号公報
【特許文献4】特許6779557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような有機物や銅酸化物が銅配線の表面に残留したまま、銅配線と樹脂部材との密着性(これは、接着性とも言いうる。)を向上するための被膜(以下、「密着性向上被膜」と言うことがある。たとえば特許文献4参照)を銅配線の表面に形成したとすると、密着性が、効果的に向上しないおそれがある。いっぽう、このような有機物や銅酸化物が銅配線の表面に残留したまま、銅配線をマイクロエッチング液(すなわち、銅配線の表面を粗化するためのエッチング液)で粗面化したとすると、粗面化が効果的になされないおそれがある。
【0005】
銅表面の洗浄方法として、銅表面に付着した油分をアルカリ洗浄剤で取り除いたうえで、酸系のマイクロエッチング液で銅酸化物を取り除く方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、マイクロエッチング液は、銅酸化物だけでなく、銅自身(たとえば、銅酸化物の被膜で被覆されていた銅)も積極的に溶解させるため、マイクロエッチング液を用いた洗浄は、今後も進むであろう銅配線の微細化に対応できなくなるおそれがある。つまり、今後の微細化の進展を考慮すると、マイクロエッチング液を洗浄用途で使用することが難しくなるおそれがある。
【0007】
これに加えて、上述の洗浄方法(すなわち、アルカリ洗浄剤による洗浄をおこなったうえで、酸系のマイクロエッチング液による洗浄もおこなう)は、油分の除去と、銅酸化物の除去とが個別になされるため、手間がかかる。
【0008】
本発明は、銅のエッチングを抑制しながら、銅配線表面に付着した有機物(以下、「有機物残渣」ということがある。)や銅酸化物を除去することができる洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、下記[1]の構成を備える。
【0010】
[1]
水溶性カルボン酸と、
過酸化水素とを含み、
前記過酸化水素の濃度が0.75重量%未満であり、
pHが2.5未満である、
銅配線を含む基板の洗浄剤。
ここで、「銅配線を含む基板の洗浄剤」は、銅配線を含む基板を洗浄するための水溶液を意味する。
「銅配線」の「銅」は、銅自体であってもよく、銅合金であってもよい。つまり、「銅配線」は、銅からなる配線であってもよく、銅合金からなる配線であってもよい。
【0011】
本発明は、下記[2]以降の構成をさらに備えることが好ましい。
【0012】
[2]
含窒素複素環式化合物を実質的に含まない、[1]に記載の洗浄剤。
【0013】
[3]
含窒素複素環式化合物を含まない、[1]に記載の洗浄剤。
【0014】
[4]
前記水溶性カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン、α-アラニン、およびβ-アラニンからなる群より選ばれた少なくとも1種のカルボン酸である、[1]~[3]のいずれかに記載の洗浄剤。
【0015】
[5]
前記水溶性カルボン酸の濃度が0.2重量%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の洗浄剤。
【0016】
[6]
前記過酸化水素の濃度が0.05重量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の洗浄剤。
【0017】
[7]
塩化物イオン濃度が0.05ppm以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の洗浄剤。
【0018】
[8]
前記銅配線と樹脂部材との密着性を向上するための被膜を前記銅配線の表面に形成する前に前記基板を洗浄するために使用される、[1]~[7]のいずれかに記載の洗浄剤。
【0019】
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の洗浄剤で、銅配線を含む基板を洗浄する工程を含む、洗浄方法。
【0020】
[10]
[1]~[8]のいずれかに記載の洗浄剤を連続または繰り返し使用する際に、前記洗浄剤に添加する補給液であって
水溶性カルボン酸と、
過酸化水素とを含み、
pHが2.5未満である、
補給液。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<1.はじめに>
本実施形態の洗浄剤、すなわち、銅配線を含む基板の洗浄剤は、
水溶性カルボン酸と、
過酸化水素とを含み、
過酸化水素の濃度が0.75重量%未満であり、
pHが2.5未満である。
【0022】
本実施形態の洗浄剤は水溶性カルボン酸を含むため、銅配線表面の銅酸化物(すなわち、銅配線表面の銅酸化物の被膜)を溶解させることができる。したがって、銅配線表面から銅酸化物を除去することができる。
【0023】
しかも、本実施形態の洗浄剤が過酸化水素をさらに含むため、銅配線表面に付着した有機物を除去することができる。これは、洗浄剤中で、過酸化水素が水溶性カルボン酸と反応し、それによって強い酸化剤である過カルボン酸が生成し、過カルボン酸によって有機物が分解されるためである、と考えられる。
【0024】
そのうえ、本実施形態の洗浄剤は、銅配線の銅(たとえば、銅酸化物の被膜で被覆されていた銅)の溶解を抑制することができる。つまり、銅配線のエッチングを抑制することができる。これは、過酸化水素によって銅が酸化され得るものの、水溶性カルボン酸が銅表面に吸着し、それによって過酸化水素による銅の酸化を抑制する(すなわち、銅酸化物の生成を抑制する)ためである、と考えられる。
【0025】
さらに、過酸化水素の濃度が0.75重量%未満であるため、過酸化水素による銅の溶解(すなわちエッチング)をいっそう抑制することができる。
【0026】
これに加えて、本実施形態の洗浄剤のpHが2.5未満であるため、銅酸化物をいっそう除去することができる。
【0027】
以下、本発明の実施形態について、より詳しく説明する。
【0028】
<2.洗浄剤>
本実施形態の洗浄剤、すなわち、銅配線を含む基板を洗浄するための洗浄剤は水溶性カルボン酸を含む。水溶性カルボン酸を含むため、銅配線表面の銅酸化物(すなわち、銅配線表面の銅酸化物の被膜)を溶解させることができる。したがって、銅配線表面から銅酸化物を除去することができる。水溶性カルボン酸によって、銅配線の銅(たとえば、銅酸化物の被膜で被覆されていた銅)の溶解を抑制することもできる。つまり、銅配線のエッチングを抑制することができる。これは、過酸化水素によって銅が酸化され得るものの、水溶性カルボン酸が銅表面に吸着し、それによって過酸化水素による銅の酸化を抑制する(すなわち、銅酸化物の生成を抑制する)ためである、と考えられる。
【0029】
水溶性カルボン酸として、たとえば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン、α-アラニン、β-アラニンを挙げることができる。なかでも、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシンがより好ましく、リンゴ酸、酢酸がさらに好ましい。
【0030】
水溶性カルボン酸の溶解度、具体的には、20℃の水100gに対する水溶性カルボン酸の溶解度は、たとえば、0.5g以上が好ましく、5g以上がより好ましく、10g以上がさらに好ましく、15g以上がさらに好ましい。
【0031】
水溶性カルボン酸の濃度は0.2重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、1.0重量%以上がさらに好ましい。0.5重量%以上であると、銅配線表面から銅酸化物をいっそう除去することができるとともに、銅配線表面に付着した有機物残渣をいっそう除去することができる。水溶性カルボン酸の濃度は1.5重量%以上であってもよく、2.0重量%以上であってもよく、3.0重量%以上であってもよい。いっぽう、水溶性カルボン酸の濃度は、40重量%以下であってもよく、30重量%以下であってもよく、20重量%以下であってもよく、15重量%以下であってもよく、14重量%以下であってもよい。
【0032】
本実施形態の洗浄剤は過酸化水素をさらに含む。本実施形態の洗浄剤が過酸化水素をさらに含むため、銅配線表面に付着した有機物を除去することができる。これは、洗浄剤中で、過酸化水素が水溶性カルボン酸と反応し、それによって強い酸化剤である過カルボン酸が生成し、過カルボン酸によって有機物が分解されるためである、と考えられる。
【0033】
過酸化水素の濃度は0.05重量%以上が好ましく、0.07重量%以上がより好ましく、0.10重量%以上がさらに好ましい。0.05重量%以上であると、銅配線表面に付着した有機物残渣をいっそう除去することができる。過酸化水素の濃度は0.20重量%以上であってもよく、0.30重量%以上であってもよい。
【0034】
いっぽう、過酸化水素の濃度は0.75重量%未満である。過酸化水素の濃度が0.75重量%未満であるため、過酸化水素による銅の溶解(すなわちエッチング)をいっそう抑制することができる。過酸化水素の濃度は0.70重量%以下であってもよく、0.65重量%以下であってもよく、0.60重量%以下であってもよい。
【0035】
本実施形態の洗浄剤は、過酸化水素の分解を防止するための添加剤、すなわち、過酸化水素分解防止剤を含むことが好ましい。過酸化水素分解防止剤として、たとえばクレゾールスルホン酸を挙げることができる。過酸化水素分解防止剤の濃度は、0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましい。いっぽう、過酸化水素分解防止剤の濃度は、6重量%以下が好ましく、4重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましい。
【0036】
本実施形態の洗浄剤は塩化物イオンを含んでいてもよい。塩化物イオン濃度は0.05ppm以上が好ましい。本実施形態の洗浄剤が塩化物イオンを、それなりの量(たとえば0.05ppm以上)含んでいると、銅配線から溶出し得る塩化物イオンが、洗浄剤の性能に与える影響を軽減できる。これについて説明する。銅配線を形成するための銅めっき液が塩化物イオンを含む場合がある。そのような銅めっき液で形成された銅配線を含む基板を洗浄すると、塩化物イオンが洗浄剤に溶出することがある。本実施形態の洗浄剤が塩化物イオンを、あらかじめ、それなりの量(たとえば0.05ppm以上)含んでいると、銅配線から溶出した塩化物イオンが、洗浄剤の性能に与える影響を軽減できる。塩化物イオン濃度は0.1ppm以上であってもよく、0.5ppm以上であってもよく、1ppm以上であってもよい。いっぽう、塩化物イオン濃度は30ppm以下が好ましい。塩化物イオン濃度は20ppm以下であってもよく、10ppm以下であってもよく、5ppm以下であってもよい。なお、塩化物イオンのイオン源として、たとえば、塩酸、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウムなどを挙げることができる。なかでも塩化ナトリウムが好ましい。なお、イオン源は、たとえば水溶液として使用してもよいことはもちろんである。たとえば、塩化ナトリウムは、塩化ナトリウム水溶液として使用してもよい。なお、塩化ナトリウム水溶液として、イオンクロマトグラフィ用の塩化物イオン標準液(1000mg/L)を使用してもよい。
【0037】
本実施形態の洗浄剤は、無機酸を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。無機酸として、たとえば、硫酸、硝酸、ホウフッ化水素酸、リン酸、スルファミン酸、塩酸を挙げることができる。pH調整を目的として無機酸を添加する場合、ここで例示した無機酸のうち塩酸以外が好ましい。なぜなら、塩酸は、塩化物イオン濃度に影響するためである。とりわけ、硫酸、硝酸が好ましい。
【0038】
本実施形態の洗浄剤は、界面活性剤、銅イオンといった他の成分を含んでいてもよい。ただし、本実施形態の洗浄剤は、界面活性剤を含まないことが好ましい。本実施形態の洗浄剤は、銅イオンを含まないことが好ましい。
【0039】
本実施形態の洗浄剤は含窒素複素環式化合物を実質的に含まないことが好ましい。なぜなら、含窒素複素環式化合物は、銅配線に吸着し、その結果、基板(すなわち、銅配線を含む基板)と樹脂部材(たとえばビルドアップフィルム)との密着性を低下させることがあるためである。ここで、「含窒素複素環式化合物を実質的に含まない」とは、含窒素複素環式化合物の濃度が0重量%以上0.0001重量%以下であることを意味する。
【0040】
本実施形態の洗浄剤は含窒素複素環式化合物を含まないことがより好ましい。なぜなら、窒素複素環式化合物により生じ得る密着性の低下を回避できるためである。
【0041】
含窒素複素環式化合物は、環を構成する原子として窒素原子を含む複素環式化合物である。なお、含窒素複素環式化合物は、環を構成する原子として、他のヘテロ原子を含んでいてもよい。このようなヘテロ原子として、たとえば酸素原子、硫黄原子を挙げることができる。
【0042】
含窒素複素環式化合物として、たとえば、アゾール類、ピリジン類およびモルホリン類を挙げることができる。アゾール類として、たとえば、イミダゾール類、ピラゾール類、トリアゾール類、テトラゾール類、これらの誘導体などを挙げることができる。具体的には、たとえば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ベンズトリアゾールなどを挙げることができる。これに加えて、2-アミノイミダゾール、3-アミノピラゾール、4-アミノピラゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、5-アミノテトラゾールといったアミノ基含有アゾールを挙げることもできる。ピリジン類として、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、2,3-ジアミノピリジン、2,6-ジアミノピリジン、2,3,6-トリアミノピリジン、2,4,6-トリアミノピリジン、4,5,6-トリアミノピリジンといったアミノピリジンを挙げることができる。モルホリン類として、4-メチルモルホリン、4-エチルモルホリン、4-プロピルモルホリン、4-イソプロピルモルホリン4-イソブチルモルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、4-(2-アミノエチル)モルホリン、4-アセチルモルホリン、N-(2-シクロヘキシルカルボニルオキシエチル)モルホリン、3-モルホリノ-1,2-プロパンジオール、モルホリノアセトニトリル、N-(2-シアノエチル)モルホリン、3-(モルホリノ)プロピオン酸エチル、4-(2-アミノエチル)モルホリン、N-シアノメチルモルホリン、N-(3-アミノプロピル)モルホリン、4-(3-クロロプロピル)モルホリン、N-(2-ヒドロキシプロピル)モルホリン、4-(3-ヒドロキシプロピル)モルホリン、1-モルホリノ-1-シクロヘキセンといったN-置換モルホリンを挙げることができる。
【0043】
本実施形態の洗浄剤は水溶液であり、水を含む。水としては、イオン性物質や不純物を除去した水が好ましく、たとえばイオン交換水、純水、超純水などが好ましい。なお、本実施形態の洗浄剤は、上述の成分を水に溶解させることにより調製することができる。
【0044】
本実施形態の洗浄剤のpHは2.5未満である。pHが2.5未満であるため、銅酸化物をいっそう除去することができる。pHは、2.3以下であってもよく、2.0以下であってもよく、1.8以下であってもよく、1.6以下であってもよい。いっぽう、pHは0.2以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上がより好ましい。pHは0.7以上であってもよく、0.9以上であってもよく、1.0以上であってもよい。
【0045】
本実施形態の洗浄剤において、電解銅めっき層に対するエッチングレートは低いほど好ましい。電解銅めっき層に対するエッチングレートは、0.19μm/min以下が好ましく、0.15μm/min以下がより好ましく、0.12μm/min以下がさらに好ましく、0.10μm/min以下がさらに好ましく、0.08μm/min以下がさらに好ましく、0.06μm/min以下がさらに好ましく、0.05μm/min以下がさらに好ましい。電解銅めっき層に対するエッチングレートは、電解銅めっき基板を、30℃の洗浄剤に浸漬した状態で60秒間揺動する、という洗浄処理の前後の重量変化を測定したうえで算出される値である。具体的には、電解銅めっき層に対するエッチングレートは、後述の実施例によって測定され、算出される値である。
【0046】
本実施形態の洗浄剤において、銅スパッタ層に対するエッチングレートも低いほど好ましい。銅スパッタ層に対するエッチングレートは、170nm/min以下が好ましく、140nm/min以下がより好ましく、120nm/min以下がさらに好ましく、100nm/min以下がさらに好ましく、80nm/min以下がさらに好ましく、70nm/min以下がさらに好ましい。銅スパッタ層に対するエッチングレートは、シリコンウェハーと銅スパッタ層とを有する基板を、30℃の洗浄剤に浸漬した状態で60秒間揺動する、という洗浄処理の前後の厚み(具体的には銅スパッタ層の厚み)に基づいて算出される値である。具体的には、銅スパッタ層に対するエッチングレートは、後述の実施例によって測定され、算出される値である。
【0047】
本実施形態の洗浄剤は、銅配線の銅(たとえば、銅酸化物の被膜で被覆されていた銅)の溶解を抑制することができるため、本実施形態の洗浄剤は、銅配線の微細化の今後の進展によらず使用することができる。本実施形態の洗浄剤は、銅配線の銅の溶解を抑制することができるため、優れた信号伝送性能が要求されるプリント配線板(たとえば、高周波デバイス向けのプリント配線板)を製造する際に、とりわけ有用であり得るかもしれない。
【0048】
<3.洗浄方法>
本実施形態の洗浄剤は、銅配線を含む基板を洗浄するために使用できる。なかでも、セミアディティブ法でプリント配線板を製造する際に、不要な導体間のシード層を除去する(すなわち、非回路部をエッチング液で除去する)ことによって形成された銅配線を含む基板を洗浄するために好適に使用できる。つまり、フラッシュエッチングで形成された銅配線を含む基板を洗浄するために好適に使用できる。ここで、セミアディティブ法は、いわゆるモディファイドセミアディティブ法(MSAP法)であってもよい。
【0049】
とりわけ、本実施形態の洗浄剤は、フラッシュエッチング後、かつマイクロエッチング前の基板を洗浄するために好適に使用できる。すなわち、銅配線(具体的には、フラッシュエッチングで形成された銅配線)の表面をマイクロエッチング液で粗化する前の基板を洗浄するために好適に使用できる。本実施形態の洗浄剤を、この用途で使用することによって(すなわち、フラッシュエッチング後、かつマイクロエッチング前の基板を洗浄するために使用することによって)、銅配線表面から有機物と銅酸化物とを除去することができ、それによって、銅配線を効果的に粗面化することが可能となる。その結果、基板と樹脂部材(たとえばビルドアップフィルム)との密着性を向上できる。
【0050】
本実施形態の洗浄剤は、フラッシュエッチング後、かつ被膜(すなわち密着性向上被膜)形成前の基板を洗浄するためにも好適に使用できる。言い換えると、銅配線と樹脂部材との密着性を向上するための被膜(すなわち密着性向上被膜)を銅配線の表面に形成する前に、基板を洗浄するために好適に使用できる。本実施形態の洗浄剤を、この用途で使用することによって(すなわち、フラッシュエッチング後、かつ密着性向上被膜形成前の基板を洗浄するために使用することによって)、銅配線表面から有機物と銅酸化物とを除去することができ、それによって、銅配線表面に密着性向上被膜を効果的に形成することが可能となる。その結果、基板と樹脂部材(たとえばビルドアップフィルム)との密着性を向上できる。
【0051】
なお、「フラッシュエッチング後(の基板)」は、フラッシュエッチング液が水洗などで落とされ、必要に応じて乾燥させた基板であることが好ましいものの、フラッシュエッチング液が付着したままの基板であってもよい。
【0052】
本実施形態の洗浄剤で銅配線を含む基板を洗浄するためには、本実施形態の洗浄剤を、少なくとも銅配線に接触させる。本実施形態の洗浄剤を銅配線に接触させるために、たとえば、基板を洗浄剤に浸漬してもよく、基板に洗浄剤を噴霧してもよい。基板を洗浄剤に浸漬して洗浄する場合、基板を洗浄剤に浸漬した状態で揺動することが好ましい。なお、洗浄剤の温度は、たとえば5℃以上50℃以下である。10℃以上であってもよく、15℃以上であってもよく、20℃以上であってもよい。45℃以下であってもよく、40℃以下であってもよく、35℃以下であってもよく、30℃以下であってもよい。なお、浸漬時間、基板が洗浄剤に浸っている時間は、たとえば3秒以上であることができ、10秒以上が好ましく、20秒以上がより好ましい。浸漬時間は、30秒以上であってもよく、40秒以上であってもよい。いっぽう、浸漬時間は、600秒以下であってもよく、300秒以下であってもよい。なお、洗浄剤に浸漬された基板は、必要に応じて洗浄剤を洗い流し(たとえば水洗し)、必要に応じて乾燥させてもよい。
【0053】
<4.プリント配線板の製造方法>
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、銅配線を含む基板を洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ということがある。)を含む。
【0054】
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、洗浄された基板に樹脂部材を接合する工程(以下、「接合工程」ということがある。)をさらに含むことができる。樹脂部材は樹脂を含む。樹脂として、たとえば、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリプロピレン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、シアネートエステル等の熱硬化性樹脂、あるいは紫外線硬化性エポキシ樹脂、紫外線硬化性アクリル樹脂等の紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は官能基によって変性されていてもよく、ガラス繊維、アラミド繊維、その他の繊維等で強化されていてもよい。樹脂部材の具体例として、味の素ファインテクノ製のビルドアップフィルム「ABF」を挙げることができる。接合方法として、積層プレス、ラミネート、塗布、射出成形、トランスファーモールド成形などを挙げることができる。必要に応じて、加熱や活性光線の照射をおこない、樹脂を硬化させてもよい。
【0055】
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、洗浄工程と接合工程との間に、少なくとも銅配線の表面に被膜(すなわち密着性向上被膜)を形成する工程(以下、「被膜形成工程」ということがある。)をさらに含んでいてもよい。被膜形成工程では、たとえば、少なくとも銅配線の表面に被膜形成用組成物を接触させ、必要に応じて、被膜形成用組成物に含まれる溶媒を乾燥除去する、という手順で被膜(すなわち密着性向上被膜)を形成することができる。被膜形成用組成物は、シランカップリング剤、たとえば、第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有するシランカップリング剤を含む水溶液であることができる。このような被膜形成用組成物として、たとえば、特許文献4に記載の被膜形成用組成物を挙げることができる。
【0056】
ところで、本実施形態のプリント配線板の製造方法は、洗浄工程と接合工程との間に、洗浄された基板の銅配線の表面をマイクロエッチング液で粗化する工程(以下、「粗面化工程」ということがある。)を含んでいてもよい。
【0057】
本実施形態のプリント配線板の製造方法が、粗面化工程も被膜形成工程も含む場合、粗面化工程が、被膜形成工程よりも先におこなわれることが好ましい。
【0058】
なお、上述の各工程の前後で、必要に応じて水洗や乾燥など、任意の操作をおこなってもよい。
【0059】
<5.補給液>
本実施形態の補給液は、上述した本実施形態の洗浄剤を、連続または繰り返し使用する際に、洗浄剤に添加する補給液である。本実施形態の補給液は、水溶性カルボン酸と、過酸化水素とを含み、pHが2.5未満である。補給液の説明は、洗浄剤の説明と重複するため省略する。よって、洗浄剤の説明を、補給液の説明としても扱うことができる。念のため、補給液に特有な説明を追加する(ただし、この追加説明によって、洗浄剤の説明を、補給液の説明として扱うことが否定されるべきでない)。本実施形態の補給液の過酸化水素の濃度は、本実施形態の洗浄剤のそれよりも高いことが好ましい。よって、本実施形態の補給液の過酸化水素の濃度は0.75重量%以上であってもよい。たとえば、過酸化水素の濃度の上限は1.20重量%であってもよく、1.15重量%であってもよく、1.10重量%であってもよく、1.00重量%であってもよい。
【実施例0060】
次に、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるべきではない。なお、以下、「重量%」を、単に「%」と表記することがある。
【0061】
<洗浄液の調製>
表1~3にしたがって、これらの表に示された成分をイオン交換水に溶解することによって洗浄液を調製した。以下、いくつかの例を取り上げて、洗浄液の調製手順を説明する。
たとえば、実施例1では、リンゴ酸3重量%、過酸化水素0.53重量%となるように、リンゴ酸および35%過酸化水素水溶液をイオン交換水に溶解することによって洗浄液を調製した。
実施例3では、リンゴ酸1重量%、過酸化水素0.11重量%、クレゾールスルホン酸1重量%となるように、リンゴ酸、35%過酸化水素水溶液およびクレゾールスルホン酸をイオン交換水に溶解することによって洗浄液を調製した。
実施例9では、リンゴ酸3重量%、過酸化水素0.53重量%、クレゾールスルホン酸1重量%、塩化物イオン濃度1ppmとなるように、リンゴ酸、35%過酸化水素水溶液、クレゾールスルホン酸および塩化ナトリウム水溶液(具体的には、イオンクロマトグラフィ用の塩化物イオン標準液(1000mg/L))をイオン交換水に溶解することによって洗浄液を調製した。
実施例16では、リンゴ酸3重量%、過酸化水素0.53重量%、pH0.6となるように、リンゴ酸、35%過酸化水素水溶液および62.5%硫酸をイオン交換水に溶解することによって洗浄液を調製した。
比較例1では、リンゴ酸5重量%となるように、リンゴ酸をイオン交換水に溶解することによって洗浄液を調製した。
比較例2では、過酸化水素0.70重量%となるように、35%過酸化水素水溶液をイオン交換水に溶解することによって洗浄液を調製した。
比較例3では、リンゴ酸3重量%、過酸化水素0.53重量%、pH3.9となるように、リンゴ酸、35%過酸化水素水溶液および24%水酸化ナトリウム水溶液をイオン交換水に溶解することによって洗浄液を調製した。
【0062】
<エッチングレート 重量法>
電解銅めっき基板から100mm×100mmの試験片を切り出した。試験片を、6.25重量%硫酸水溶液に浸漬した状態で30秒間揺動した(すなわち揺り動かした)後、水洗乾燥した。つまり、試験片に除錆処理をおこなった。これを、エッチングレートを確認するための試験片(以下、「エッチングレート確認試験片」と言う。)として使用した。エッチングレート確認試験片の重量(以下、「洗浄前重量」という)を、小数点以下4桁の精密天秤を用いて測定した。
エッチングレート確認試験片を、30℃の洗浄液に浸漬した状態で60秒間揺動し、洗浄液から取り出した直後に水洗し、ドライヤーで乾燥させた。次いで、エッチングレート確認試験片の重量(以下、「洗浄後重量」という)を、小数点以下4桁の精密天秤を用いて測定した。
洗浄前重量と洗浄後重量との差、すなわち、洗浄前後の重量変化量を求めた。重量変化量、エッチングレート確認試験片の面積、および銅の密度に基づいて、エッチング深さを求めた。具体的には、次の式で、エッチング深さを求めた。
エッチング深さ(cm)=重量変化量(g)÷面積(cm2)÷密度(g/cm3)
なお、銅の密度は8.92g/cm3であるとしてエッチング深さを求めた。エッチングレート確認試験片の面積は、電解銅めっき基板が両面板であるため200cm2であるとしてエッチング深さを求めた。
エッチング深さに基づいて、エッチングレート(μm/min)を求めた。
【0063】
<エッチングレート 銅ウェハー 蛍光X線分析>
シリコンウェハー上に2000オングストロームの厚みの銅スパッタ層が形成された基板を準備した。すなわち、シリコンウェハーと、厚み2000オングストロームの銅スパッタ層とを有する基板を準備した。この基板から、約10mm×約10mmの試験片を切り出した。試験片を、30℃の洗浄液に浸漬した状態で60秒間揺動し、洗浄液から取り出した直後に水洗し、ドライヤーで乾燥させた。この試験片について、蛍光X線分析装置(日立ハイテク製)を用いて銅の強度測定をおこない、銅スパッタ層の厚みを計算した。この計算結果から、エッチングレート(nm/min)を算出した。
【0064】
<銅酸化物の除去性>
電解銅めっき基板を150℃で1時間加熱した(つまりベーキングをおこなった)うえで、50mm×50mmの試験片を切り出した。この試験片を、30℃の洗浄液に浸漬した状態で60秒間揺動し、洗浄液から取り出した直後に水洗し、ドライヤーで乾燥させた。この試験片について、色彩色差計(コニカミノルタ製CR-10 Plus)を用いてL*(以下、「L値」と言うことがある。)を測定した。L値が高いほど、酸化銅が除去されていることを示す。なお、予備実験の結果から、L値を78以上とすることができた洗浄液は、6.25重量%硫酸と同等以上の洗浄作用(具体的には、錆の除去作用)を有すると考えられる。この試験片に錆残りがないかを目視でも評価した。なお、錆が残留した箇所(すなわち錆残り箇所)は暗いため、色合いにムラが出る。ムラが出た場合、錆残りありと判定した。錆残りありと判定した場合を×、錆残りなしと判定した場合を〇として表に示す。
【0065】
<有機物の洗浄性>
硫酸6.25重量%、過酸化水素3.5重量%、5-アミノテトラゾール0.1重量%となるように、これらをイオン交換水に溶解することによって溶液(以下、「FE液」と言う。)を調製した。いっぽう、電解銅めっき基板から300mm×300mmの試験片を切り出した。試験片を、25℃のFE液に30秒浸漬した後、水洗乾燥した。この試験片(すなわち、FE液処理済み試験片)を50mm×50mmに裁断し、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて反射吸収法(RAS法)で赤外線吸収スペクトルを測定した(測定条件は後述する)。FE液処理済み試験片を、30℃の洗浄液に浸漬した状態で60秒間揺動し、洗浄液から取り出した直後に水洗し、ドライヤーで乾燥させた(つまり、FE液処理済み試験片を洗浄した)。次いで、この試験片(すなわち、洗浄後試験片)についてもFT-IRを用いてRAS法で赤外線吸収スペクトルを測定した。洗浄前赤外線吸収スペクトルにおける3350cm-1付近のピーク面積と、洗浄後赤外線吸収スペクトルにおける3350cm-1付近のピーク面積とから、次の式で、洗浄度合いを算出した。洗浄度合いの値が大きいほど、有機物残渣の除去性に優れることを示す。
洗浄度合い
={(洗浄前のピーク面積-洗浄後のピーク面積)/洗浄前のピーク面積}×100
赤外線吸収スペクトル(具体的には、洗浄前赤外線吸収スペクトルおよび洗浄後赤外線吸収スペクトルの両者)は、サーモフィッシャーサイエンティフィック製「NICOLET380」を用い、反射吸収法(RAS法)により、検出器:DLaTGS/KBr、アクセサリー:RAS、分解能:8cm-1、積算回数:16回、入射角:75度の条件で測定した。
ピーク面積(すなわち3350cm-1付近のピーク面積)の算出に関しては、波数を横軸、吸光度を縦軸とする赤外線吸収スペクトルにおいて、波数3263cm-1の測定点と、波数3529cm-1の測定点とを結ぶ直線をベースラインとして、このベースラインと、赤外線吸収スペクトルの曲線とで囲まれた領域の面積を、有機物残渣のピーク面積(すなわち3350cm-1付近のピーク面積)として算出した。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
リンゴ酸あり、かつ過酸化水素なしの洗浄液を用いた比較例1では、銅酸化物の除去性が良好であったものの、有機物の洗浄性は良好ではなかった。リンゴ酸なし、かつ過酸化水素ありの洗浄液を用いた比較例2では、銅酸化物の除去性や、有機物の洗浄性が悪かった。リンゴ酸あり、かつ過酸化水素ありのpH3.9の洗浄液を用いた比較例3では、銅酸化物の除去性が良好ではなかった。リンゴ酸あり、かつ過酸化水素1.00重量%の洗浄液を用いた比較例6では、銅酸化物の除去性や、有機物の洗浄性が良好であったものの、エッチングレートが過度に大きかった。リンゴ酸あり、かつ過酸化水素4.00重量%の洗浄液を用いた比較例7でも、銅酸化物の除去性や、有機物の洗浄性が良好であったものの、エッチングレートが過度に大きかった。
【0070】
いっぽう、実施例1~54では、銅酸化物の除去性や、有機物の洗浄性が良好であったとともに、エッチングレートが過度に大きくはなかった。
【0071】
<樹脂接着性>
電解めっき銅箔から100mm×100mmのテストピースを切り出し、テストピースをメック株式会社のフラッシュエッチング液で表面を処理した後、水洗して乾燥させた。なお、このフラッシュエッチング液は、含窒素複素環式化合物を含有する。
このテストピース、すなわち、フラッシュエッチング済みテストピースを、30℃の洗浄液(具体的には、実施例11、52、53、54、および比較例1で作製した洗浄液)に浸漬した状態で60秒間揺動し、洗浄液から取り出した直後に、水洗し、ドライヤーで乾燥させた。
このテストピース、すなわち、洗浄済みテストピースを、25℃の被膜形成液(作製方法は後述する)に浸漬した状態で60秒間揺動し、被膜形成液から取り出した直後に、水洗し、ドライヤーで乾燥させた。このテストピース、すなわち、被膜形成処理済みテストピースについて、赤外線吸収スペクトルにおける1100cm-1付近のSi-Oのピーク面積を算出した(測定条件は後述する)。
被膜形成処理済みテストピースを、大気下で130℃60分間加熱することによって熱劣化させた後、このテストピース(すなわち、熱劣化後のテストピース)にビルドアップフィルム(味の素ファインテクノ製「ABF」)を真空ラミネートしたうえで、推奨条件で加熱した。これによってビルドアップフィルムを熱硬化させた。このような手順で、被膜形成処理済みの銅箔の一方の面上に樹脂層(すなわち、硬化されたビルドアップフィルム)を形成した。樹脂層が形成された面とは反対側から銅箔に幅10mmの切り込みを入れ、銅箔の先端をつかみ具で把持して、JIS C6481に準拠して50mm/分の剥離速度で6mmの長さにわたって90°剥離試験をおこない、剥離強度を測定した。
なお、被膜形成液は、特許第6779557号公報の実施例5に記載された方法で作製した。具体的には、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.4重量%、CuSO4・5H2O 0.2重量%、KBr 0.3重量%となるように、これらをイオン交換水に溶解した後、pHを5.0に調整することによって被膜形成液を作製した。
赤外線吸収スペクトルは、サーモフィッシャーサイエンティフィック製「NICOLET380」を用い、反射吸収法(RAS法)により、検出器:DLaTGS/KBr、アクセサリー:RAS、分解能:8cm-1、積算回数:16回、入射角:75度の条件で測定した。
Si-Oのピーク面積の算出に関しては、波数を横軸、吸光度を縦軸とする赤外線吸収スペクトルにおいて、波数1070cm-1の測定点と、波数1180cm-1の測定点とを結ぶ直線をベースラインとして、このベースラインと、赤外線吸収スペクトルの曲線とで囲まれた領域の面積を、Si-Oのピーク面積として算出した。
【0072】
【0073】
銅酸化物の除去性や、有機物の洗浄性が良好であった洗浄液(具体的には、実施例11、52、53および54で作製した洗浄液)で洗浄する、という処理をおこなった場合、剥離強度が優れていた。いっぽう、これらの例(具体的には、実施例11、52、53および54)で作製した洗浄液よりも、有機物の洗浄性に劣った洗浄液(具体的には、比較例1で作製した洗浄液)で洗浄する、という処理をおこなった場合、剥離強度が劣っていた。なお、実施例11、52、53、54、および比較例1で、Si-Oのピークが確認されたため、被膜形成液によって被膜が形成されたと判断した。
前記水溶性カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン、α-アラニン、およびβ-アラニンからなる群より選ばれた少なくとも1種のカルボン酸である、請求項1に記載の洗浄剤。