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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157314
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231019BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20231019BHJP
   B41J 2/15 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 123
B41J2/01 213
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/21
B41J2/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067136
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 慶成
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EA11
2C056EB26
2C056EB30
2C056EB31
2C056EC03
2C056EC28
2C056EC37
2C056EC69
2C056EE10
2C056FA02
2C056FA10
2C056HA42
2C056HA47
2C057AF27
2C057AG11
2C057AL26
2C057AL30
2C057AL31
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】画質の変化を抑制しつつ乾燥期間を適切な長さに調整する。
【解決手段】本開示に係る印刷装置は、第1液体を吐出可能な複数の第1ノズルが第1方向に並ぶ第1ノズル列を有する第1ヘッドと、前記第1液体の上に吐出される第2液体を吐出可能な複数の第2ノズルが前記第1方向に並ぶ第2ノズル列を有する第2ヘッドと、前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドと媒体とを前記第1方向に相対的に移動させる第1移動ユニットと、前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に移動させる第2移動ユニットと、を備え、前記第1ノズル列の使用範囲と前記第2ノズル列の使用範囲のそれぞれの前記第1方向の長さを維持しつつ、前記第1ノズル列の使用範囲と前記第2ノズル列の使用範囲との前記第1方向の間隔を変更する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体を吐出可能な複数の第1ノズルが第1方向に並ぶ第1ノズル列を有する第1ヘッドと、
前記第1液体の上に吐出される第2液体を吐出可能な複数の第2ノズルが前記第1方向に並ぶ第2ノズル列を有する第2ヘッドと、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドと媒体とを前記第1方向に相対的に移動させる第1移動ユニットと、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に移動させる第2移動ユニットと、
を備え、
前記第1ノズル列の使用範囲と前記第2ノズル列の使用範囲のそれぞれの前記第1方向の長さを維持しつつ、前記第1ノズル列の使用範囲と前記第2ノズル列の使用範囲との前記第1方向の間隔を変更する、
印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1液体は処理液である、
印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
温度及び湿度の少なくとも一方の情報を取得する取得部を更に備え、
前記情報に基づいて、前記間隔を変更する、
印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記取得部は、前記温度及び前記湿度の少なくとも一方を計測するセンサである、
印刷装置。
【請求項5】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記取得部は、ユーザーが入力した前記情報を取得する、
印刷装置。
【請求項6】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記取得部は、加熱装置を制御する制御信号を取得することによって、前記情報を取得する、
印刷装置。
【請求項7】
請求項3~6のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記取得部の取得した前記温度が高いほど、又は前記取得部の取得した前記湿度が低いほど、前記間隔を狭める、
印刷装置。
【請求項8】
請求項3~6のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記取得部の取得した前記温度が低いほど、又は前記取得部の取得した前記湿度が高いほど、前記間隔を広げる、
印刷装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
前記第1移動ユニットによる第1移動動作の1回分の移動量に相当する幅の前記媒体の領域に形成すべきドットを、前記第2移動ユニットによる複数回の第2移動動作を行うことによって完成させる、印刷装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
印刷中に前記間隔を変更する、
印刷装置。
【請求項11】
請求項10に記載の印刷装置であって、
印刷中に前記間隔を変更する際に、前記第1ノズル列の前記使用範囲の前記第1方向の長さを一時的に変更した後、前記第1ノズル列の前記使用範囲の前記第1方向の長さを、前記間隔を変更する前の長さに戻す、
印刷装置。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の印刷装置であって、
前記第1ノズル列は、前記第2ノズル列よりも前記第1方向の上流側に位置する、
印刷装置。
【請求項13】
第1液体を吐出可能な複数の第1ノズルが第1方向に並ぶ第1ノズル列を有する第1ヘッドと、
前記第1液体の上に吐出される第2液体を吐出可能な複数の第2ノズルが前記第1方向に並ぶ第2ノズル列を有する第2ヘッドと、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドと媒体とを前記第1方向に相対的に移動させる第1移動ユニットと、
前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に移動させる第2移動ユニットと、
を備え、
前記第1移動ユニットが前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドと媒体とを前記第1方向に相対的に移動させるときの移動量を維持しつつ、前記第1ノズル列の使用範囲と前記第2ノズル列の使用範囲との前記第1方向の間隔を変更する、
印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1液体の吐出により記録媒体に形成された第1画像上に第2液体を吐出して第2画像を形成すること装置が記載されている。また、特許文献1では、記録媒体に付着させる第2液体の量に基づき、第1液体を吐出させるノズル数、又は第2液体を吐出させるノズル数の少なくとも一方を変化させることによって、第1画像の形成後から第2画像の形成までの時間間隔(乾燥時間)を変化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-66165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のように液体を吐出するノズル数を変化させた場合、画質が変化するおそれがある。
【0005】
本発明は、画質の変化を抑制しつつ乾燥期間を適切な長さに調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる第1の発明は、第1液体を吐出可能な複数の第1ノズルが第1方向に並ぶ第1ノズル列を有する第1ヘッドと、前記第1液体の上に吐出される第2液体を吐出可能な複数の第2ノズルが前記第1方向に並ぶ第2ノズル列を有する第2ヘッドと、前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドと媒体とを前記第1方向に相対的に移動させる第1移動ユニットと、前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に移動させる第2移動ユニットと、を備え、前記第1ノズル列の使用範囲と前記第2ノズル列の使用範囲のそれぞれの前記第1方向の長さを維持しつつ、前記第1ノズル列の使用範囲と前記第2ノズル列の使用範囲との前記第1方向の間隔を変更する、印刷装置である。
また、上記目的を達成するための主たる第2の発明は、第1液体を吐出可能な複数の第1ノズルが第1方向に並ぶ第1ノズル列を有する第1ヘッドと、前記第1液体の上に吐出される第2液体を吐出可能な複数の第2ノズルが前記第1方向に並ぶ第2ノズル列を有する第2ヘッドと、前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドと媒体とを前記第1方向に相対的に移動させる第1移動ユニットと、前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドを前記第1方向と交差する第2方向に移動させる第2移動ユニットと、を備え、前記第1移動ユニットが前記第1ヘッド及び前記第2ヘッドと媒体とを前記第1方向に相対的に移動させるときの移動量を維持しつつ、前記第1ノズル列の使用範囲と前記第2ノズル列の使用範囲との前記第1方向の間隔を変更する、印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画質の変化を抑制しつつ乾燥期間を適切な長さに調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A及び図1Bは、印刷装置1の基本構成の説明図である。
図2図2は、ヘッドユニット40の構成の説明図である。
図3図3A図3Fは、ノズル列44によるドット形成の様子の説明図である。
図4図4Aは、図3A図3Fのドット形成の様子を別の表記方法で示した説明図である。図4Bは、マルチパス印刷の説明図である。
図5図5は、ノズル列44の使用範囲を狭めて4パス印刷を行った場合の説明図である。
図6図6は、画像のレイヤの説明図である。
図7図7は、処理液ノズル列44Aとインクノズル列44Bを用いた印刷方法(ドット形成方法)の説明図である。
図8図8は、乾燥期間を設けたドット形成方法の説明図である。
図9図9は、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔の調整の説明図である。
図10図10は、温度が高い場合又は湿度が低い場合のドット形成方法の説明図である。
図11図11は、温度が低い場合又は湿度が高い場合のドット形成方法の説明図である。
図12図12は、印刷中に温度が高くなった場合又は湿度が低くなった場合のドット形成方法の説明図である。
図13図13は、印刷中に温度が低くなった場合又は湿度が高くなった場合のドット形成方法の説明図である。
図14図14A及び図14Bは、第1変形例の説明図である。
図15図15A及び図15Bは、第2変形例の説明図である。
図16図16A及び図16Bは、第3変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
===第1実施形態===
<構成>
図1A及び図1Bは、印刷装置1の構成の一例の説明図である。図1Aは、印刷装置1の外観の概略説明図である。図1Bは、印刷装置1のブロック図である。図2は、ヘッドユニット40の構成の説明図である。
【0011】
以下の説明では、ノズル列44を構成する複数のノズル45が並ぶ方向を「第1方向」と呼ぶことがある。図1Aに示す印刷装置1の場合、第1方向は、媒体Mの移動方向に相当するため、「搬送方向」と呼ばれることがある。ノズル列から見て媒体Mの未使用の領域の側のことを「上流(上流側)」と呼び、逆側を「下流(下流側)」と呼ぶことがある。図1Aに示す印刷装置1の場合、媒体Mの供給側を「上流(上流側)」と呼び、媒体Mの排出側を「下流(下流側)」と呼ぶことになる。なお、第1方向は「副走査方向」と呼ばれることもある。また、キャリッジ31(又はヘッド41)が移動する方向を「第2方向」と呼ぶことがある。第2方向は、第1方向と交差する方向になる。第2方向は、「走査方向」又は「主走査方向」と呼ばれることがある。
【0012】
印刷装置1は、媒体M(印刷用紙、印刷フィルムなど)に画像を印刷する装置である。具体的には、印刷装置1は、インクジェットプリンタである。印刷装置1は、第1移動ユニット20と、第2移動ユニット30と、ヘッドユニット40と、加熱装置50と、取得部60と、コントローラー70と、を有する。
【0013】
第1移動ユニット20は、ヘッド41(41A,41B)と媒体Mとを第1方向に相対移動させるユニットである。ここでは、第1移動ユニット20は、媒体Mを第1方向(搬送方向)に移動させる搬送ユニットである。ここでは、第1移動ユニット20(搬送ユニット)は、例えば搬送ローラー21と搬送用モーター22とを有する。搬送ローラー21は、回転することによって媒体Mを搬送方向に搬送する部材である。搬送用モーター22は、搬送ローラー21を回転させるためのモーター(駆動部)である。なお、第1移動ユニット20は、搬送ローラー21を用いた構成に限られるものではない。例えば、第1移動ユニット20は、搬送台(フラットベッド)を有し、この搬送台を移動させることによって媒体Mを搬送方向に搬送するように構成されても良い。また、第1移動ユニット20は、媒体Mを第1方向(搬送方向)に移動させるものに限られるものではない。例えば、第1移動ユニット20は、第2移動ユニット30(キャリッジユニット)を第1方向に移動させることによって、ヘッド41(41A,41B)と媒体Mとを第1方向に相対移動させても良い。以下の説明では、第1移動ユニット20がヘッド41(41A,41B)と媒体Mとを第1方向に相対移動させることを「第1移動動作」と呼ぶことがある。媒体Mは、ロール紙のような長尺状の印刷媒体でも良いし、単票用紙でも良い。また、媒体Mは、紙に限られるものではなく、フィルムや布などでも良い。
【0014】
第2移動ユニット30は、ヘッド41(41A,41B)を第2方向に移動させるユニットである。第2移動ユニット30は、キャリッジ31を第2方向に移動させることによって、キャリッジ31に搭載されたヘッド41を第2方向に移動させる。言い換えると、第2移動ユニット30は、キャリッジ31を移動させるキャリッジユニットである。第2移動ユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジ用モーター32とを有する。キャリッジ31は、第2方向(走査方向)に往復移動する部材であり、ヘッド41(第1ヘッド41A及び第2ヘッド41B;後述)を搭載する。キャリッジ用モーター32は、キャリッジ31を走査方向に移動させるためのモーター(駆動部)である。以下の説明では、第2移動ユニット30がヘッド41(41A,41B)を第2方向に移動させることを「第2移動動作」と呼ぶことがある。
【0015】
ヘッドユニット40は、媒体Mに液体(インクや処理液)を吐出するためのユニットである。ヘッドユニット40は、第1ヘッド41Aと第2ヘッド41Bとを有する。
【0016】
第1ヘッド41Aは、第1液体を吐出するヘッドである。第1ヘッド41Aは、第1液体を吐出可能な複数の第1ノズル45Aが第1方向(搬送方向)に並ぶ第1ノズル列44Aを有する。第2ヘッド41Bは、第2液体を吐出するヘッドである。第2液体は、第1液体とは異なる液体であり、第1液体の上に吐出される液体である。第2ヘッド41Bは、第2液体を吐出可能な複数の第2ノズル45Bが第1方向(搬送方向)に並ぶ第2ノズル列45Bを有する。第1実施形態では、第1ヘッド41Aは、処理液(第1液体に相当)を吐出する処理液ヘッドであり、第2ヘッド41Bは、インク(第2液体に相当)を吐出するインクヘッドである。但し、後述するように、第1ヘッド41Aは処理液ヘッドでなくても良いし、第2ヘッド41Bはインクヘッドでなくても良い。なお、以下では、処理液ヘッド(第1ヘッドに相当)に符号41Aを付けるとともに、インクヘッド(第2ヘッドに相当)に符号41Bを付けて説明する。
【0017】
処理液ヘッド41Aは、処理液を吐出する複数のノズル(処理液ノズル45A;第1ノズルに相当)を有するヘッドである。処理液は、下地剤、オプティマイザ、前処理剤、調整剤、クリアインク、特殊インク、プライマーインクなどと呼ばれることもある液体である。処理液は、例えば、インクを増粘または色材を凝集・不溶化させて、インクを媒体Mに定着させる液体であっても良い。ここでは、処理液は透明な液体である。但し、処理液は透明で無くても良い。処理液ヘッド41Aは、複数のノズル列(処理液ノズル列44A;第1ノズル列に相当)を有する(ここでは、処理液ヘッド41Aは、4本の処理液ノズル列44Aを有する)。複数の処理液ノズル列44Aは、第2方向(走査方向)に並んで配置されている。それぞれの処理液ノズル列44Aは、第1方向(搬送方向)に並ぶ複数のノズル(処理液ノズル45A)から構成されている。ここでは、それぞれの処理液ノズル列44Aは、千鳥配置された複数のノズル(処理液ノズル45A)によって構成されている。つまり、それぞれの処理液ノズル列44Aは、2つのノズル群により構成されており、2つのノズル群は、第1方向(搬送方向)に所定ピッチで並ぶ複数のノズル(処理液ノズル45A)をそれぞれ有しており、一方のノズル群は、他方のノズル群のノズル(処理液ノズル45A)に対して搬送方向に半ピッチずれた状態で搬送方向に並ぶ複数のノズル(処理液ノズル45A)を有している。但し、それぞれの処理液ノズル列44Aは、搬送方向に1列に並ぶ複数の処理液ノズル45Aによって構成されても良い。また、処理液ヘッド41Aは、処理液ノズル列44Aを複数備えていなくても良く、処理液ヘッド41Aの処理液ノズル列44Aが1本でも良い。以下の説明では、千鳥配置された複数のノズル45(45A)によって構成されたノズル列44(44A)であっても、搬送方向に複数のノズルが1列に並んだノズル列として説明することがある。以下の説明では、処理液ノズル列44Aの第1方向(搬送方向)の長さをL1とする。
【0018】
インクヘッド41Bは、インクを吐出する複数のノズル(インクノズル45B;第2ノズルに相当)を有するヘッドである。インクは、画像(インク画像;カラー画像)を構成するドット(インクドット)を媒体Mに形成するための液体である。インクは、カラーインクやプロセスインクなどと呼ばれることもある液体である。インクヘッド41Bは、複数のノズル列(インクノズル列44B;第2ノズル列に相当)を有する。複数のインクノズル列44Bは、走査方向に並んで配置されている。例えば、インクヘッド41Bは、ブラックインクを吐出するブラックインクノズル列(Bk)と、シアンインクを吐出するシアンインクノズル列(C)と、マゼンタインクを吐出するマゼンタインクノズル列(M)と、イエローインクを吐出するイエローインクノズル列(Y)とを有しており、4色のインクノズル列44B(ブラックノズル列、シアンノズル列、マゼンタノズル列及びイエローノズル列)は走査方向に並んで配置されている。なお、インクの色は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローに限られるものでは無い。
【0019】
それぞれのインクノズル列44Bは、処理液ノズル列44Aと同様に、第1方向(搬送方向)に並ぶ複数のノズル(インクノズル45B)を有する。ここでは、それぞれのインクノズル列44Bは、処理液ヘッド41Aと同様に、千鳥配置された複数のノズル(インクノズル45B)によって構成されている。但し、それぞれのインクノズル列44Bは、搬送方向に1列に並ぶ複数のインクノズル45Bによって構成されても良い。また、インクヘッド41Bは、インクノズル列44Bを複数備えていなくても良い。以下の説明では、インクノズル列44Bの第1方向(搬送方向)の長さをL1とする。但し、インクノズル列44Bの搬送方向の長さは、処理液ノズル列44Aの長さと異なっていても良い。
【0020】
図2に示すように、処理液ヘッド41A(第1ヘッドに相当)は、インクヘッド41B(第2ヘッドに相当)よりも第1方向上流側(搬送方向上流側)に配置されており、処理液ノズル列44Aは、インクノズル列44Bよりも搬送方向上流側に配置されている。これにより、処理液(第1液体に相当)の上にインク(第2液体に相当)が吐出されることになる。また、これにより、後述するように、不使用のノズル45(45A,45B)の数を削減できる。但し、処理液ヘッド41Aとインクヘッド41Bとを第2方向(走査方向)に並べて配置し、処理液ノズル列44Aとインクノズル列44Bとを第1方向(搬送方向)の同じ位置に配置しても良い。また、処理液ノズル列44Aとインクノズル列44Bの一部が、第1方向(搬送方向)において重なる位置に配置されても良い。
【0021】
図1Bに示すように、ヘッドユニット40は、ヘッド駆動部42を有する。ヘッド駆動部42は、処理液ヘッド41A及びインクヘッド41Bの各ノズルからの液体(インク、処理液)の吐出/非吐出を行わせる駆動部である。ヘッド駆動部42は、例えばヘッドがピエゾ式であればピエゾ素子である。コントローラー70は、ヘッド駆動部42を制御することによって、それぞれのノズルからの液体の吐出/非吐出を制御することになる。コントローラー70は、ヘッド駆動部42を制御することによって、ノズル列44の使用範囲46(後述)を制御することになる。
【0022】
加熱装置50は、媒体M(又は液体)を加熱するための装置である。加熱装置50は、例えば、ヒーター51や送風装置52を備えている。ヒーター51は、媒体Mを支持する支持部材(プラテン;不図示)の下に設けられており、支持部材に支持された媒体Mを加熱する装置である。また、送風装置52は、媒体Mに温風を送風する装置である。なお、加熱装置50は、ヒーター51や送風装置52とは異なる装置を備えていても良い。また、印刷装置1が加熱装置50を備えていなくても良い。
【0023】
取得部60は、温度及び湿度の少なくとも一方の情報を取得する。ここでは、取得部60は、温度及び湿度の少なくとも一方を計測するセンサ61である。ここでは、センサ61は、温度及び湿度の両方を計測する環境センサである。但し、センサ61は、温度又は湿度の一方のみを計測するように構成されても良い。センサ61は、ヘッドが液体を吐出する媒体Mの近傍の環境(温度及び湿度の少なくとも一方)を計測する。例えば、センサ61は、キャリッジ31に搭載されても良いし、媒体Mを支持する支持部材(プラテン)に設けられても良い。センサ61は、計測結果(温度データや湿度データ)をコントローラー70に出力する。以下の説明では、取得部60がセンサ61である場合について説明するが、取得部60は、ユーザーによって温度及び湿度の少なくとも一方の情報が入力される入力部(例えば入力画面や入力ボタンなど)であってもよい。センサ61の代わりに入力部で取得部60が構成された場合、センサ61を設ける必要が無くなり、印刷装置1の構成を簡素にすることができる。また、取得部60は、加熱装置50を制御する制御信号を取得することによって、加熱装置50の温度(ヒーター51の温度や送風装置52から送風される温風の温度)の情報を取得しても良い。すなわち、取得部60は、コントローラー70から加熱装置50に出力される信号を取得する信号取得部で構成されても良い。なお、取得部60は、センサ61、入力部及び信号取得部に限られるものではなく、温度及び湿度の少なくとも一方の情報を取得できれば良い。
【0024】
コントローラー70は、印刷装置1の制御を司る制御部である。コントローラー70は、外部のコンピューターからの印刷指令に基づいて、印刷装置1の駆動部(搬送用モーター22、キャリッジ用モーター32、ヘッド駆動部42、加熱装置50など)を制御する。後述するように、コントローラー70は、センサ61の計測結果に基づいて、処理液ノズル列44Aから処理液を吐出する範囲(使用範囲46A;第1使用範囲に相当)や、インクノズル列44Bからインクを吐出する範囲(使用範囲46B;第2使用範囲に相当)を制御することになる。
【0025】
<参考説明1>
図3A図3Fは、ノズル列44によるドット形成の様子の説明図である。ここでは、説明の簡略化のため、1つのノズル列44のドットの形成を説明する。
【0026】
図3A及び図3Bに示すように、コントローラー70は、キャリッジ31を走査方向(第2方向に相当)に移動させることによって、ヘッド41(ノズル列44)を走査方向に移動させながらノズルから液体(インク又は処理液)を吐出させて、媒体Mにドットを形成する。以下の説明では、ヘッド41(ノズル列44)を走査方向に移動させる動作のことを「パス」(若しくは「第2移動動作」、「主走査」)と呼ぶことがある。また、n回目のパスのことを「パスn」と呼び、図中に「Pn」と表記することがある。図3Bには、1回のパスでドットを形成可能な領域(ドット形成領域)にハッチングが施されている。
【0027】
コントローラー70は、キャリッジ31を走査方向に移動させた後(媒体Mにドットを形成した後)、図3C及び図3Dに示すように、媒体Mを搬送方向に搬送させる。以下の説明では、この動作のことを「搬送動作」(若しくは、「第1移動動作」、「副走査」)と呼ぶことがある。搬送動作によって、直前のパスのドット形成領域の下流端は、次のパス(図3E及び図3F参照)のドット形成領域外に移動するとともに、媒体Mの未使用の領域が次のパスのドット形成領域の上流端に供給されることになる。
【0028】
コントローラー70は、搬送動作の後、図3E及び図3Fに示すように、次のパスを行わせる。このように、コントローラー70は、パスと搬送動作とを交互に繰り返し、媒体Mにドットを形成することになる。1回の搬送動作の搬送量(第1移動動作の移動量に相当)がドット形成領域の搬送方向の長さよりも短い場合には、図3Fに示すように、ドット形成領域は、前回のパスのドット形成領域の一部と重複する。図3Fには、2回のパスの重複したドット形成領域に濃いハッチングが施されている。
【0029】
図4Aは、図3A図3Fのドット形成の様子を別の表記方法で示した説明図である。図4Aには、媒体Mに対する各パスのノズル列44の相対的な位置関係が示されている。以下の説明では、図4Aに示すように、媒体Mに対するノズル列44の位置を変化させることによって(言い換えると、ノズル列44と媒体Mとの相対位置を変化させることによって)、各パスのドット形成の様子を示すことがある。図中の各パスのノズル列44の第1方向(搬送方向)の位置変化量L3は、各パスの間に行われる第1移動動作の移動量を示しており、ここでは搬送動作時の搬送量を示している。
【0030】
図4Bは、マルチパス印刷の説明図である。マルチパス印刷とは、媒体M上の所定領域(1回の搬送動作の搬送量に相当する幅の領域)に形成すべきドットを複数回のパスで完成させる印刷である。図4Bには、媒体Mの各領域に対して4回のパスを行う4パス印刷の様子が示されている。図中の「Pn」は、n回目のパス(パスn)におけるノズル列44の位置であることを示している。
【0031】
図4Bの領域A1は、4回分のパス(パス1~4)でドットが形成された領域である。領域A2は、3回分のパス(パス2~4)でドットが形成された領域である。領域A3は、2回分のパス(パス3、4)でドットが形成された領域である。領域A4は、1回分のパス(パス4)でドットが形成された領域である。4パス印刷の場合、領域A1には、形成すべきドットが全て形成されている。領域A2には、形成すべきドットのおよそ3/4のドットが形成されている。領域A3には、形成すべきドットのおよそ1/2のドットが形成されている。領域A4には、形成すべきドットのおよそ1/4のドットが形成されている。領域A4には、各パス(パス1~4)で形成されたドットが分散して配置されている。このようにマルチパス印刷では、各パスで形成されたドットが分散配置されるため、形成すべきドットを1回のパスで完成させる印刷方法(1パス印刷)と比べると、画質を向上させることができる。
【0032】
4パス印刷の場合、搬送動作時の搬送量L3は、液体(インク又は処理液)を吐出するノズルの範囲(ノズル列44の使用範囲)の約1/4となる。ノズル列44の全てのノズルからインクを吐出させて4パス印刷の場合、搬送動作時の搬送量L3は、ノズル列の長さL1の約1/4となる。
【0033】
図5は、ノズル列44の使用範囲を狭めて4パス印刷を行った場合の説明図である。
【0034】
図中には、矩形状に示されたノズル列44のうち、液体(インク又は処理液)を吐出するノズルが属する範囲にハッチングが施されている。なお、ハッチングの無い範囲に属するノズルは不使用であり、液体を吐出しないものとする。以下の説明では、矩形状に示されたノズル列44のうち、液体(インク又は処理液)を吐出するノズルが属する範囲(図中のハッチングが施された範囲)のことを「使用範囲」と呼び、液体を吐出しない不使用のノズルが属する範囲(図中のハッチングが施されていない範囲)のことを「不使用範囲」と呼ぶことがある。ここでは、ノズル列44のうち、搬送方向上流側の半分は使用範囲46であり、搬送方向下流側の半分は不使用範囲である。ここでは、使用範囲46の搬送方向の長さL2は、ノズル列の搬送方向の長さL1の半分である。
【0035】
ノズル列44の半分を用いて4パス印刷を行う場合においても、搬送動作時の搬送量L3は、ノズルの使用範囲46の搬送方向の長さL2の約1/4となる。なお、図5に示す搬送動作時の搬送量L3は、図4Bに示す搬送動作時の搬送量L3の半分となる。このように、同じパス数のマルチパス印刷(例えば4パス印刷)を行う場合であっても、ノズル列の使用範囲の搬送方向の長さが異なると、搬送動作時の搬送量が異なることになる。搬送動作時の搬送量が異なると、領域A1~A4の各領域の搬送方向の長さが異なることになるため(図4B及び図5参照)、同じパス数のマルチパス印刷(例えば4パス印刷)を行う場合であっても異なる画質になるおそれがある。
【0036】
<参考説明2>
図6は、画像のレイヤの説明図である。図中には、処理液画像91A(第1画像に相当)を示すレイヤと、インク画像91B(第2画像に相当)を示すレイヤと、媒体Mを示すレイヤがそれぞれ上下に分離しているが、実際には、処理液画像91Aやインク画像91Bは媒体M上に重ね合わされている。
【0037】
処理液画像91Aは、処理液によって形成されたドット(処理液ドット;第1ドット)によって構成される画像である。インク画像91Bは、インクによって形成されたドット(インクドット;第2ドット)によって構成される画像(カラー画像)である。インク画像91Bは、処理液画像91Aの上に形成される画像である。図に示すように、印刷装置1は、媒体M上に処理液ドットで構成された処理液画像91Aを形成するとともに、処理液画像91Aが形成された媒体M上にインクドットで構成されたインク画像91Bを形成することになる。処理液が塗布された媒体M上にインクドットが形成されることによって、インクドットを媒体Mに好適に定着させることができ、印刷画像の画質を向上させることができる。
【0038】
図7は、処理液ノズル列44Aとインクノズル列44Bを用いた印刷方法(ドット形成方法)の説明図である。図中には、媒体Mに対するパス1~11のインクノズル列44B及び処理液ノズル列44Aの位置関係が示されている。既に説明したように、処理液ノズル列44Aは、インクノズル列44Bよりも搬送方向上流側に配置されている。ここでは、処理液ノズル列44Aとインクノズル列44Bの走査方向の位置を合わせて表記している。
【0039】
領域A1には、4回分のパス(パス1~4)によって処理液ドットが全て形成されており、4回分のパス(パス5~8)によってインクドットが全て形成されている。同様に、領域A2~A4においても、4回分のパスによって処理液ドットが全て形成されており、4回分のパスによってインクドットが全て形成されている。なお、領域A5には、4回分のパス(パス5~8)によって処理液ドットが全て形成されており、3回分のパス(パス9~11)によってインクドットのおよそ3/4が形成されている。なお、不図示のパス12では、処理液ノズル列44Aは領域A9~A12(A12は不図示)に処理液ドットを形成し、インクノズル列44Bは領域A5~A8にインクドットを形成し、これにより、領域A5に形成すべきインクドットが全て形成されることになる。
【0040】
図7に示すドット形成方法では、或るパスによって処理液ドットが形成された後、その直後のパスによってインクドットが形成されることになる。例えば、図7の領域A1に着目すると、パス4によって処理液ドットが領域A1に形成された後、その直後のパス5によってインクドットが領域A1に形成されることになる。但し、このような印刷方法では、媒体Mに塗布されたばかりの処理液(第1液体)の上にインク(第2液体)が塗布されるため、インクドットが滲むおそれがあり、印刷画像の画質が低下するおそれがある。
【0041】
<乾燥期間について>
図8は、乾燥期間を設けたドット形成方法の説明図である。図中には、媒体Mに対するパス1~15の処理液ノズル列44A及びインクノズル列44Bの位置関係が示されている。
【0042】
図中の矩形状のノズル列のうち、ハッチングの施された範囲は使用範囲46(46A,46B)を示し、ハッチングの施されていない範囲は不使用範囲を示している。ここでは、使用範囲46(46A,46B)はノズル列の搬送方向中央部にあり、不使用範囲はノズル列の搬送方向両端部(上流端及び下流端)にある。なお、後述するように使用範囲46Aと使用範囲46Bとの間隔の広狭を調整可能にするため、使用範囲46(46A,46B)を搬送方向中央部に設けるとともに、ノズル列の不使用範囲をノズル列の搬送方向両端部(上流端及び下流端)に設けることが望ましい。但し、使用範囲46(46A,46B)は、搬送方向中央部でなくても良く、搬送方向の端部(上流端又は下流端)にすることも可能である。ここでは、処理液ノズル列44Aの長さはL1であり、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さL2は、処理液ノズル列44Aの搬送方向の長さL1の半分である。また、インクノズル列44Bの長さはL1であり、インクノズル列44Bの使用範囲46Bの搬送方向の長さL2は、インクノズル列44Bの搬送方向の長さL1の半分である。また、搬送動作時の搬送量L3は、長さL2(ノズル列44の使用範囲の搬送方向の長さ)の約1/4となる。なお、図中の各領域(A1~A15)の搬送方向の幅は長さL3に相当する。
【0043】
コントローラー70は、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に不使用のノズルを配置させ、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に間隔をあける。処理液ノズル列44Aの搬送方向下流側の端部のノズルを不使用とするとともに、インクノズル列44Bの搬送方向上流側の端部のノズルを不使用とすることによって、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に間隔をあけている。ここでは、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の搬送方向の長さL10は、4回分の搬送動作の搬送量に相当する。
【0044】
コントローラー70は、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に間隔をあけたパスと搬送動作とを交互に繰り返す。これにより、或るパスによって処理液ドットが形成された後、処理液の乾燥期間を経た後に、インクドットを形成することができる。例えば、図8の領域A1に着目すると、パス4によって処理液ドットが領域A1に形成された後、4回分のパス(パス5~8)に相当する乾燥期間を経て、乾燥期間後のパス9によってインクドットが領域A1に形成されることになる。このように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に間隔をあけることによって、媒体Mに塗布した処理液の乾燥期間を設けることができ、これにより、インクドットの滲みを抑制できる。
【0045】
<乾燥期間の調整について>
ところで、処理液の乾燥期間が短すぎると、インクドットが滲みやすくなり、印刷画像の画質が低下するおそれがある。一方、処理液の乾燥期間が長すぎると、媒体M上に塗布された処理液が凝集して不均一になり、その上に形成される印刷画像の画質が低下するおそれがある。このため、処理液の乾燥期間は、適切な長さにする必要がある。
一方、処理液に適切な乾燥期間は、環境によって変化する。例えば、温度が高い場合や湿度が低い場合には、処理液が乾燥し易いため、処理液の乾燥期間は短い方が望ましい。逆に、温度が低い場合や湿度が高い場合には、処理液の乾燥期間は長い方が望ましい。
そこで、コントローラー70は、次に説明するように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を調整することによって、処理液の乾燥期間を調整する。更に、コントローラー70は、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を調整する際に、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bのそれぞれの搬送方向の長さを維持することによって、言い換えると、搬送動作時の搬送量を維持することによって、乾燥期間の変更前後における各領域(図8の領域A1~A15のぞれぞれの領域)の搬送方向の長さを同じにし、画質が異なることを抑制する。
【0046】
図9は、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔の調整の説明図である。
【0047】
既に説明した通り、処理液ノズル列44A及びインクノズル列44Bの搬送方向の長さはL1である。また、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bのそれぞれの搬送方向の長さL2は、ノズル列44(処理液ノズル列44A及びインクノズル列44B)の搬送方向の長さL1の半分である。図9の上図に示すように、通常時(乾燥期間の変更前)には、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の搬送方向の長さL10は、4回分の搬送動作の搬送量に相当する。コントローラー70は、図9の上図に示すように処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に間隔L10をあけたパスと、搬送量L3の搬送動作とを交互に繰り返す。これにより、通常時には、図8に示すようなマルチパス印刷が行われ、4回分のパス(パス5~8)に相当する乾燥期間を設けることができる。
【0048】
図10は、温度が高い場合又は湿度が低い場合のドット形成方法の説明図である。言い換えると、図10は、乾燥期間を短くするためのドット形成方法の説明図である。
【0049】
図9の左下図及び図10に示すように、コントローラー70は、温度が高い場合又は湿度が低い場合(センサ61の計測結果が第1基準温度よりも高い場合、又はセンサ61の計測結果が第1基準湿度よりも低い場合)には、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を狭める。例えば、コントローラー70は、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を、4回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL10から、3回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL11に設定する。一方、コントローラー70は、処理液ノズル列44A及びインクノズル列44Bの搬送方向の長さをL2に設定し、通常時と同様の長さに維持する。また、コントローラー70は、搬送動作時の搬送量をL3(長さL2の約1/4)に設定し、通常時と同様の搬送量に維持する。そして、コントローラー70は、図9の左下図に示すように処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に間隔L11をあけたパスと、搬送量L3の搬送動作とを交互に繰り返す。これにより、図10に示すマルチパス印刷が行われる。
【0050】
図10の領域A1に着目すると、パス4によって処理液ドットが領域A1に形成された後、3回分のパス(パス5~7)の期間は領域A1にドットが形成されない乾燥期間となり、この乾燥期間を経た後のパス8によってインクドットが領域A1に形成されることになる。このように、図10に示すドット形成方法では、3回分のパスに相当する乾燥期間を設けることができる。つまり、図10に示すドット形成方法では、図8に示すドット形成方法と比べて、乾燥期間が1回分のパスの期間だけ短くなる。一方、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bのそれぞれの搬送方向の長さL2が通常時の長さに維持されているため、言い換えると、搬送動作時の搬送量L3が通常時の長さに維持されているため、乾燥期間の変更前後における各領域(図8及び図10の領域A1~A15のぞれぞれの領域)の搬送方向の長さを同じにすることができるので、乾燥期間の変更前後で画質が異なることを抑制できる。
【0051】
なお、コントローラー70は、温度が更に高くなった場合又は湿度が更に低くなった場合には、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を長さL11よりも更に短くしても良い。これにより、図10に示すドット形成方法よりも更に乾燥期間を短くすることができる。
【0052】
図11は、温度が低い場合又は湿度が高い場合のドット形成方法の説明図である。言い換えると、図11は、乾燥期間を長くするためのドット形成方法の説明図である。
【0053】
図9の右下図及び図11に示すように、コントローラー70は、温度が低い場合又は湿度が高い場合(センサ61の計測結果が第2基準温度よりも低い場合、又はセンサ61の計測結果が第2基準湿度よりも高い場合)には、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を広げる。例えば、コントローラー70は、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を、4回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL10から、5回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL12に設定する。一方、コントローラー70は、インクノズル列44B及び処理液ノズル列44Aの搬送方向の長さをL2に設定し、通常時と同様の長さに維持する。また、コントローラー70は、搬送動作時の搬送量をL3(長さL2の約1/4)に設定し、通常時と同様の搬送量に維持する。そして、コントローラー70は、図9の右下図に示すように処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に間隔L12をあけたパスと、搬送量L3の搬送動作とを交互に繰り返す。これにより、図11に示すマルチパス印刷が行われる。
【0054】
図11の領域A1に着目すると、パス4によって処理液ドットが領域A1に形成された後、5回分のパス(パス5~9)の期間は領域A1にドットが形成されない乾燥期間となり、この乾燥期間を経た後のパス10によってインクドットが領域A1に形成されることになる。このように、図11に示すドット形成方法では、5回分のパスに相当する乾燥期間を設けることができる。つまり、図11に示すドット形成方法では、図8に示すドット形成方法と比べて、乾燥期間が1回分のパスの期間だけ長くなる。一方、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bのそれぞれの搬送方向の長さL2が通常時の長さに維持されているため、言い換えると、搬送動作時の搬送量L3が通常時の長さに維持されているため、乾燥期間の変更前後における各領域(図8及び図11の領域A1~A15のぞれぞれの領域)の搬送方向の長さを同じにすることができるので、乾燥期間の変更前後で画質が異なることを抑制できる。
【0055】
なお、コントローラー70は、温度が更に低くなった場合又は湿度が更に高くなった場合には、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を長さL12よりも更に長くしても良い。これにより、図11に示すドット形成方法よりも更に乾燥期間を長くすることができる。
【0056】
上記の説明では、コントローラー70は、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aを変更することによって、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を変更している。但し、インクノズル列44Bの使用範囲46Bを変更することによって、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を変更することも可能である。この場合においても、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を調整する際に、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bのそれぞれの搬送方向の長さを維持することによって、言い換えると、搬送動作時の搬送量を維持することによって、乾燥期間の変更前後における各領域(図8の領域A1~A15のぞれぞれの領域)の搬送方向の長さを同じにすることでき、画質が異なることを抑制することができる。
【0057】
<印刷中の乾燥期間の調整について>
図8図10及び図11に示す印刷方法では、コントローラー70は、印刷開始前のセンサ61の計測結果を取得し、センサ61の計測結果に基づいて処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を設定している。このため、図8図10及び図11に示す印刷方法では、印刷時の各パスにおける処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔は一定である。これに対し、印刷中にセンサ61の計測結果を取得し、印刷中にセンサ61の計測結果に基づいて処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を変更しても良い。印刷中にユーザーが入力部(入力画面や入力ボタンなど)を操作して温度及び湿度の少なくとも一方の情報を印刷装置1に入力した場合においても同様に、入力部(取得部60に相当)に入力された温度及び湿度の少なくとも一方の情報に基づいて処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を変更しても良い。また、印刷中にコントローラー70が加熱装置50(ヒーター51や送風装置52)の温度を制御する場合においても同様に、コントローラー70から加熱装置50に出力される制御信号を信号取得部(取得部60に相当)が取得し、制御信号の示す温度の情報に基づいて処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を変更しても良い。
【0058】
図12は、印刷中に温度が高くなった場合又は湿度が低くなった場合のドット形成方法の説明図である。言い換えると、図12は、印刷中に乾燥期間を短くするためのドット形成方法の説明図である。
【0059】
図12に示すパス1~パス15は、図8に示すパス1~パス15と同様である。ここでは、パス16の前に、センサ61の計測結果が第1基準温度よりも高くなった場合、又はセンサ61の計測結果が第1基準湿度よりも低くなったものとする。
【0060】
コントローラー70は、センサ61の計測結果が第1基準温度よりも高い場合、又はセンサ61の計測結果が第1基準湿度よりも低い場合には、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を狭めることになる。但し、パス16において図9の左下図に示すように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を3回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL11に設定すると、既に領域A12に4回分のパス(パス12~15)によって全ての処理液ドットが形成されているにもかかわらず、パス16において領域A12に処理液が塗布されてしまい、領域A12に塗布される処理液の量が過剰になる。
【0061】
そこで、コントローラー70は、図9の左下図に示すように処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aを変更したパス(図12のパス20)を行う前に、移行パス(図12のパス16~19)を一時的に行う。移行パスでは、コントローラー70は、ノズル列44の使用範囲46の搬送方向の長さを、通常時の長さL2から長さL2’に一時的に変更する。具体的には、移行パスでは、コントローラー70は、図9の左下図に示す処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aのうち、搬送方向下流側の1/4の範囲(1回分の搬送動作の搬送量に相当する範囲;図12の×印の範囲)を不使用範囲に変更する。移行パスでは、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔は、通常時と同様に、4回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL10になる。移行パス(図12のパス16~19)における処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さL2’は、移行パス以外のパスにおける処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さL2よりも短くなるため、媒体Mに過剰な処理液が塗布されることを抑制できる。
【0062】
このような移行パスと搬送動作とを4回繰り返した後、コントローラー70は、図9の左下図に示すように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を3回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL11に設定する。また、コントローラー70は、図9の左下図に示すように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さをL2に戻す。この結果、移行パスの後のパス(パス20以降のパス)における処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さL2は、移行パスよりも前のパス(図12のパス15以前のパス)における処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さL2に維持される。そして、コントローラー70は、図9の左下図に示すように処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に間隔L11をあけたパス(図12のパス20参照)と、搬送動作とを交互に繰り返すことになる。これにより、乾燥期間を短くすることができ、温度や湿度に適した乾燥期間に調整することができる。
【0063】
なお、一時的な移行パス(図12のパス16~19)が行われる場合であっても、コントローラー70は、搬送動作時の搬送量をL3(長さL2の約1/4)に設定し、通常時と同様の搬送量に維持する。これにより、乾燥期間の変更前後における各領域(図12の領域A1~A19のぞれぞれの領域)の搬送方向の長さを同じにすることができるので、乾燥期間の変更前後で画質が異なることを抑制できる。
【0064】
図13は、印刷中に温度が低くなった場合又は湿度が高くなった場合のドット形成方法の説明図である。言い換えると、図13は、印刷中に乾燥期間を長くするためのドット形成方法の説明図である。
【0065】
図13に示すパス1~パス15は、図8に示すパス1~パス15と同様である。ここでは、パス16の前に、センサ61の計測結果が第2基準温度よりも低くなった場合、又はセンサ61の計測結果が第2基準湿度よりも高くなったものとする。
【0066】
コントローラー70は、センサ61の計測結果が第2基準温度よりも低い場合、又はセンサ61の計測結果が第2基準湿度よりも高い場合には、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を広げることになる。但し、パス16において図9の右下図に示すように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を5回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL12に設定すると、領域A13に塗布される処理液の量が不足する。
【0067】
そこで、コントローラー70は、図9の右下図に示すように処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aを変更したパス(図13のパス20)を行う前に、移行パス(図13のパス16~19)を一時的に行う。移行パスでは、コントローラー70は、ノズル列44の使用範囲46の搬送方向の長さを、通常時の長さL2から長さL2”に一時的に変更する。具体的には、移行パスでは、コントローラー70は、図9の右下図に示す処理液ノズル列44Aの下流側の不使用範囲のうち、搬送方向上流側の1/4の範囲(1回分の搬送動作の搬送量に相当する範囲;図13の濃いハッチングの範囲)を使用範囲46Aに変更する。移行パスでは、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔は、通常時と同様に、4回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL10になる。移行パス(図13のパス16~19)における処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さL2”は、移行パス以前の使用範囲46Aの搬送方向の長さL2よりも長くなるため、媒体Mに塗布する処理液を補うことができる(処理液の塗布量の不足を抑制できる)。
【0068】
このような移行パスと搬送動作とを4回繰り返した後、コントローラー70は、図9の右下図に示すように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を5回分の搬送動作の搬送量に相当する長さL12に設定する。また、コントローラー70は、図9の右下図に示すように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さをL2に戻す。この結果、移行パスの後のパス(パス20以降のパス)における処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さL2は、移行パスよりも前のパス(図13のパス15以前のパス)における処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さL2に維持される。そして、コントローラー70は、図9の右下図に示すように処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間に間隔L12をあけたパス(図12のパス20参照)と、搬送動作とを交互に繰り返すことになる。これにより、乾燥期間を長くすることができ、温度や湿度に適した乾燥期間に調整することができる。
【0069】
なお、一時的な移行パス(図13のパス16~19)が行われる場合であっても、コントローラー70は、搬送動作時の搬送量をL3(長さL2の約1/4)に設定し、通常時と同様の搬送量に維持する。これにより、乾燥期間の変更前後における各領域(図13の領域A1~A19のぞれぞれの領域)の搬送方向の長さを同じにすることができるので、乾燥期間の変更前後で画質が異なることを抑制できる。
【0070】
ところで、印刷中に処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を変更する場合においても、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aを変更する代わりに、インクノズル列44Bの使用範囲46Bを変更しても良い。但し、印刷中にインクノズル列44Bの使用範囲46Bを変更すると、インク画像91Bの画質が不均一になるおそれがある。このため、図9図11に示すように、印刷中に処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を変更する場合には、コントローラー70は、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aを変更することによって、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を変更することが望ましい。
【0071】
<変形例>
図14A及び図14Bは、第1変形例の説明図である。図14Aは、通常時のドット形成方法の説明図である。図14Bは、温度が高くなった場合又は湿度が低くなった場合のドット形成方法の説明図である。なお、ここでは、温度が低くなった場合又は湿度が高くなった場合のドット形成方法については説明を省略する。
第1変形例では、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さと、インクノズル列44Bの使用範囲46Bの搬送方向の長さとが異なっている。このように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aの搬送方向の長さと、インクノズル列44Bの使用範囲46Bの搬送方向の長さとが同じでなくても、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を調整することによって、乾燥期間を調整することが可能である。また、第1変形例においても、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を調整する際に、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bのそれぞれの搬送方向の長さを維持することによって、言い換えると、搬送動作時の搬送量を維持することによって、乾燥期間の変更前後における各領域(図8の領域A1~A15のぞれぞれの領域)の搬送方向の長さを同じにすることでき、画質が異なることを抑制することができる。
また、第1変形例では、処理液画像91Aは2パス印刷で形成され、インク画像91Bは4パス印刷で形成される。なお、図2に示すように、処理液ノズル列44Aの数(4本)は、インクノズル列44Bの数(色ごとに1本)よりも多いため、処理液画像91Aを完成させるパス数は、インク画像91Bを完成させるパス数よりも少なくすることが可能である。この第1変形例に示すように、マルチパス印刷によって処理液画像91Aとインク画像91Bを形成する場合であっても、媒体M上の各領域に処理液画像91Aを完成させるパス数と、媒体M上の各領域にインク画像91Bを完成させるパス数とが異なっていても良い。
【0072】
図15A及び図15Bは、第2変形例の説明図である。図15Aは、通常時のドット形成方法の説明図である。図15Bは、温度が高くなった場合又は湿度が低くなった場合のドット形成方法の説明図である。
図15A及び図15Bに示す第2変形例では、各領域に形成すべきドットは、1回のパスで完成する。この第2変形例に示すように、マルチパス印刷が行われなくても、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔L10を変更することによって、乾燥期間を調整することが可能である。また、第2変形例においても、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を調整する際に、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bのそれぞれの搬送方向の長さを維持することによって、言い換えると、搬送動作時の搬送量を維持することによって、乾燥期間の変更前後における各領域(図8の領域A1~A15のぞれぞれの領域)の搬送方向の長さを同じにすることでき、画質が異なることを抑制することができる。
【0073】
図16A及び図16Bは、第3変形例の説明図である。図16Aは、ヘッドユニット40の構成の説明図である。図16Bは、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bの説明図である。
第3変形例では、処理液ノズル列44Aとインクノズル列44Bが走査方向に並んでいる。このように、処理液ノズル列44Aがインクノズル列44Bよりも搬送方向上流側に配置されていなくても、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔L10を変更することによって、乾燥期間を調整することが可能である。但し、図9図16Bとを比較して理解できる通り、図9に示すように処理液ノズル列44Aがインクノズル列44Bよりも搬送方向上流側に配置されている方が、不使用となるノズルを減らすことができ、ノズルを有効に活用することができる。なお、処理液ノズル列44Aをインクノズル列44Bよりも搬送方向上流側に配置する場合、処理液ノズル列44Aの搬送方向下流側の一部の処理液ノズル45Aとインクノズル列44Bの搬送方向上流側の一部のインクノズル45Bとが走査方向に並んでいても良い。
【0074】
なお、上記の説明では、コントローラー70が処理液ノズル列44A及びインクノズル列44Bの不使用範囲を制御することによって、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔L10が変更されていた。但し、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔L10の変更方法は、これに限られるものではない。例えば、処理液ヘッド41A及びインクヘッド41Bのうちの少なくとも一方のヘッド41を搬送方向に移動可能に構成し、コントローラー70がセンサ61の計測結果に基づいて駆動部を制御してヘッド41の搬送方向の位置を変更することによって、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔L10が変更されても良い。このようにしても、不使用となるノズルを減らすことができ、ノズルを有効に活用することができる。但し、処理液ノズル列44A及びインクノズル列44Bの不使用範囲を制御する方が、ヘッド41を搬送方向に移動可能に構成するよりも、印刷装置1の構造が簡易になるため、望ましい。
【0075】
<別の変形例1>
上記の説明では、印刷装置1は、温度及び湿度の少なくとも一方の情報を取得する取得部60を備えている。但し、温度及び湿度の少なくとも一方の情報を取得する取得部60を印刷装置1が備えていなくても良い。例えば、コントローラー70は、温度及び湿度の少なくとも一方の情報に基づく代わりに、媒体Mに吐出されるインクの量に関する情報に基づいて、インク量に応じた乾燥時間が設定されるように、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの搬送方向の間隔を変更しても良い。この場合においても、乾燥期間を適切な長さに調整することができる。また、この場合においても、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bとの間の間隔を調整する際に、処理液ノズル列44Aの使用範囲46Aとインクノズル列44Bの使用範囲46Bのそれぞれの搬送方向の長さを維持することによって、言い換えると、搬送動作時の搬送量を維持することによって、乾燥期間の変更前後における各領域(図8の領域A1~A15のぞれぞれの領域)の搬送方向の長さを同じにすることでき、画質が異なることを抑制することができる。
【0076】
===別の実施形態===
上記の第1実施形態では、第1ヘッド41Aは、処理液(第1液体に相当)を吐出する処理液ヘッドであり、第2ヘッド41Bは、インク(第2液体に相当)を吐出するインクヘッドである。但し、第1ヘッド41Aは処理液ヘッドでなくても良いし、第2ヘッド41Bはインクヘッドでなくても良い。つまり、第1液体は処理液でなくても良いし、第2液体はインク(カラーインク)でなくても良い。
例えば、第1ヘッド41Aが白インク(第1液体に相当)を吐出するインクヘッドであり、第2ヘッド41Bがカラーインク(第2液体に相当する)を吐出するインクヘッドでも良い。この場合、白インクで形成された下地画像の上にカラーインクで形成されたカラー画像が形成されることになる。また、第1ヘッド41Aがカラーインク(第1液体に相当)を吐出するインクヘッドであり、第2ヘッド41Bがコート液(第2液体に相当する)を吐出するコーティングヘッドでも良い。この場合、インクで形成されたインク画像の上にコート液で形成されたコーティング画像(コーティング層)が形成されることになる。
【0077】
上記の第1実施形態では、第1移動ユニット20は、媒体Mを搬送方向(第1方向に相当)に移動させてるが、第1移動ユニット20は、媒体Mを第1方向(搬送方向)に移動させるものでなくても良い。例えば、第1移動ユニット20は、第2移動ユニット30(キャリッジユニット)を第1方向に移動させることによって、ヘッド41(41A,41B)と媒体Mとを第1方向に相対移動させても良い(いわゆるガントリータイプと呼ばれる印刷装置でも良い)。このようなガントリータイプの印刷装置の場合、第1移動ユニットによって第2移動ユニット(キャリッジユニット)を第1方向に移動させる第1移動動作と、第2移動ユニットによってヘッドを第2方向に移動させる第2移動動作(前述のパスに相当)と、を交互に繰り返すことによって、媒体Mにドットを形成することになる。この場合、第1移動ユニット20は、第1移動動作の際に、第2移動ユニット(キャリッジユニット)を第1移動方向の上流側に向かって移動させることになる。そして、ガントリータイプの印刷装置の場合においても、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとのそれぞれの第1方向の長さ(前述のL2に相当)を維持し、第1移動ユニット20が媒体Mとノズル列44とを第1方向に相対移動させるときの移動量(L3に相当)を維持しつつ、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとの第1方向の間隔(前述の間隔L10に相当)を変更する(図9参照)。これにより、画質の変化を抑制しつつ乾燥期間を適切な長さに調整することができる。
【0078】
===小括===
上記の印刷装置1は、第1ヘッド41Aと、第2ヘッド41Bと、第1移動ユニット20と、第2移動ユニット30とを備える。第1ヘッド41Aは、第1液体(例えば処理液)を吐出可能な第1ノズル45A(例えば処理液ノズル)が第1方向(例えば搬送方向)に並ぶ第1ノズル列44A(例えば処理液ノズル列)を有する(図2又は図16A参照)。また、第2ヘッド41B(例えばインクヘッド)は、第1液体の上に吐出される第2液体(例えばインク)を吐出可能な複数の第2ノズル45Bが第1方向に並ぶ第2ノズル列44Bを有する(図2又は図16A参照)。第1移動ユニット20は、ヘッド41(第1ヘッド41A及び第2ヘッド41B)と媒体Mとを第1方向に相対的に移動させる。第2移動ユニット30は、ヘッド41(第1ヘッド41A及び第2ヘッド41B)を第1方向と交差する第2方向に移動させる。本実施形態では、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとのそれぞれの第1方向の長さを維持しつつ、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとの第1方向の間隔(例えば間隔L10)を変更する(図9参照)。これにより、画質の変化を抑制しつつ乾燥期間を適切な長さに調整することができる。
【0079】
上記の印刷装置1では、第1液体が処理液であることが望ましい。これにより、第1液体の上に吐出される第2液体を媒体に好適に定着させることができ、画質を向上させることができる。
【0080】
上記の印刷装置1は、温度及び湿度の少なくとも一方の情報を取得する取得部60を更に備える。そして、取得部60の取得した情報(温度及び湿度の少なくとも一方の情報)に基づいて、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとの第1方向の間隔を変更する(図9参照)。これにより、乾燥期間を適切な長さに調整することができる。
【0081】
また、前述の取得部60は、温度及び前記湿度の少なくとも一方を計測するセンサ61である。そして、センサ61の温度や湿度の計測結果に基づいて、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとの第1方向の間隔を変更する(図9参照)。これにより、乾燥期間を適切な長さに調整することができる。
【0082】
なお、前述の取得部60は、ユーザーが入力した情報(温度及び湿度の少なくとも一方の情報)を取得しても良い。これにより、センサ61を設ける必要が無くなり、印刷装置1の構成を簡素にすることができる。
【0083】
また、前述の取得部60は、加熱装置50(例えばヒーター51や送風装置52)を制御する制御信号を取得することによって、温度及び湿度の少なくとも一方の情報を取得しても良い。これにより、加熱装置50によって調整される乾燥環境に適した乾燥時間の長さに調整することができる。
【0084】
また、上記の印刷装置1では、取得部60の取得した温度が高いほど、又は取得部60の取得した湿度が低いほど、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとの第1方向の間隔を狭めることが望ましい。これにより、処理液が乾燥し易い状況では、乾燥期間を短く調整することができる。
【0085】
また、上記の印刷装置1では、取得部60の取得した温度が低いほど、又は取得部60の取得した湿度が高いほど、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとの第1方向の間隔を広げることが望ましい。これにより、処理液が乾燥し難い状況では、乾燥期間を長く調整することができる。
【0086】
また、上記の印刷装置1では、マルチパス印刷を行うことが望ましい。すなわち、上記の印刷装置1では、第1移動ユニット20による第1移動動作の1回分の移動量(前述のL3に相当)に相当する幅の媒体Mの領域に形成すべきドットを、第2移動ユニット30による複数回の第2移動動作(前述のパスに相当)を行うことによって完成させることが望ましい。これにより、形成すべきドットを1回の第2移動動作(パスに相当)で完成させる印刷方法(1パス印刷)と比べると、画質を向上させることができる。
【0087】
また、上記の印刷装置では、印刷中に取得部60の取得した情報(温度及び湿度の少なくとも一方の情報)に基づいて、印刷中に第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとの第1方向の間隔を変更することが望ましい(図12図13参照)。これにより、印刷中の環境の変化に応じて、乾燥期間を適切な長さに調整することができる。
【0088】
また、印刷中に間隔を変更する際には、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aの第1方向の長さを一時的に変更した後、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aの第1方向の長さを戻すことが望ましい(図12図13のパス16~19参照)。これにより、媒体Mに塗布される第1液体の過不足を抑制できる。
【0089】
第1液体が処理液であり、第1ヘッド41Aが処理液ヘッドである場合、第1ノズル列44A(この場合処理液ノズル列44A)は、第2ノズル列44B(この場合インクノズル列)よりも第1方向の上流側に位置することが望ましい(図2参照)。これにより、図16Aのように第1ノズル列44Aと第2ノズル列44Bが第2方向に並んでいる場合と比べて、不使用となるノズルを減らすことができ、ノズルを有効に活用することができる。
【0090】
また、上記の印刷装置1は、第1移動ユニット20がヘッド41(第1ヘッド41A及び第2ヘッド41B)と媒体Mとを第1方向に相対的に移動させるときの移動量(前述のL3に相当)を維持しつつ、第1ノズル列44Aの使用範囲46Aと第2ノズル列44Bの使用範囲46Bとの第1方向の間隔(例えば間隔L10)を変更する(図9参照)。これにより、画質の変化を抑制しつつ乾燥期間を適切な長さに調整することができる。
【0091】
===その他の実施形態===
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 印刷装置、
20 第1移動ユニット(搬送ユニット)、21 搬送ローラー、
22 搬送用モーター、
30 第2移動ユニット(キャリッジユニット)、31 キャリッジ、
32 キャリッジ用モーター、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
41A 第1ヘッド(例えばインクヘッド)、
41B 第2ヘッド(例えば処理液ヘッド)、
42 ヘッド駆動部、
44 ノズル列、
44A 第1ノズル列(例えば処理液ノズル列)、
44B 第2ノズル列(例えばインクノズル列)、
45 ノズル、
45A 第1ノズル(例えば処理液ノズル)、
45B 第2ノズル(例えばインクノズル)、
46 使用範囲、
50 加熱装置、51 ヒーター、52 送風装置、
60 取得部、61 センサ、
70 コントローラー、
91A 第1画像(例えば処理液画像)、
91B 第2画像(例えばインク画像)、
M 媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2022-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記取得部の取得した前記温度が高いほど、又は前記取得部の取得した前記湿度が低いほど、前記間隔を狭める、
印刷装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記取得部の取得した前記温度が低いほど、又は前記取得部の取得した前記湿度が高いほど、前記間隔を広げる、
印刷装置。