IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ GE富士電機メーター株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図1
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図2
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図3
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図4
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図5
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図6
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図7
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図8
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図9
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図10
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図11
  • 特開-電流センサ及び電力量計 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157359
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】電流センサ及び電力量計
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
G01R15/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067225
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】311002034
【氏名又は名称】富士電機メーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 晋
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】原山 滋章
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA11
2G025AB05
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】低コストで、外部磁場の影響を受けず、位置ずれによる電流検出感度変動が少ない高精度な電流計測を行うことができる電流センサ及び電力量計を提供すること。
【解決手段】検出すべき電流が流れる電流バー2と、少なくとも4以上の磁気検出部3a~3dを有した基板3とを有し、磁気検出部3a~3dが検出した磁気検出結果をもとに電流バー2に流れる電流を検出する電流センサ1であって、電流バー2は、折り返し部2cを介し、それぞれ電流の向きが異なって平行に配置された第1導体バー2aと第2導体バー2bとを有し、第1導体バー2a及び第2導体バー2bには、基板3が挿入される貫通孔12a,12bがそれぞれ対向する位置に形成され、磁気検出部3a~3dは、第1導体バー2a及び第2導体バー2bの各貫通孔12a,12bを中心にそれぞれ各貫通孔12a,12bの両端側に均等配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出すべき電流が流れる電流バーと、少なくとも4以上の磁気検出部を有した基板とを有し、前記磁気検出部が検出した磁気検出結果をもとに前記電流バーに流れる電流を検出する電流センサであって、
前記電流バーは、折り返し部を介し、それぞれ電流の向きが異なって平行に配置された第1導体バーと第2導体バーとを有し、
前記第1導体バー及び前記第2導体バーには、前記基板が挿入される貫通孔がそれぞれ対向する位置に形成され、
前記磁気検出部は、前記第1導体バー及び前記第2導体バーの各貫通孔を中心にそれぞれ各貫通孔の両端側に均等配置されることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記磁気検出部は、前記基板に形成されたパターンコイルであることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記4以上の磁気検出部は、前記基板の同一平面上に形成されたパターンコイルであることを特徴とする請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記4以上の磁気検出部は、前記電流バーに電流が流れた際、各パターンコイルに生じる誘導電圧を強め合うように直列接続されることを特徴とする請求項3に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記基板は、前記第1導体バー及び前記第2導体バーが形成する平面に平行であり、前記基板の中心軸は、前記貫通孔の中心軸に一致するように位置決めされることを特徴とする請求項4に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記折り返し部にリレーを設けたことを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載した電流センサが検出した電流信号と電圧センサが検出した電圧信号とをもとに前記電流バーを流れる電力量を算出することを特徴とする電力量計。
【請求項8】
電流センサ及び電圧センサの対を2対以上用いて電力量を算出する場合、前記電流センサには、シャント抵抗を用いた電流センサが含まれることを特徴とする請求項7に記載の電力量計。
【請求項9】
単相2線式の各配線の電源側にそれぞれ前記電流センサを設けて盗電の有無を判定することを特徴とする請求項7に記載の電力量計。
【請求項10】
基準電位側の配線に設けられる電流センサは、シャント抵抗を用いた電流センサであることを特徴とする請求項9に記載の電力量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストで、外部磁場の影響を受けず、位置ずれによる電流検出感度変動が少ない高精度な電流計測を行うことができる電流センサ及び電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられている電流センサとしては、変流器(カレントトランス:CT)や、集磁コアのギャップ部にホール素子などの磁電変換素子を配置した構成や、集磁コアのギャップ部に、巻線コイルや誘電体基板上にコイルパターンを形成した素子をもつ構成などがある。さらに、集磁コアを用いず、直接ホール素子などを配置して、電流を検出する構成等もある。これらの電流センサは、測定対象である一次電流が流れる回路とは電気的に分離されているため、一次電流側の回路に影響を与えることなく、精度よく電流を計測可能な点で優れている。さらにコイルパターンを形成した素子を配置する方法は、直線性および温度特性に優れ、部品点数が少なく製造が容易となる特徴を有する(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された電流センサは、環状の集磁コアの中央開口部に電流バーを通し、集磁コアのギャップ部にコイルパターンが施された基板を配置するものである。電流バーに電流が流れると、電流路の周辺には、電流バーに流れる電流の大きさに比例する磁束が発生する。発生した磁束は、集磁コアによって集磁される。電流が周期的電流である場合、その周期に応じて発生する磁束も周期的に変化する。これにより、コイルパターンをもつ検出コイルには、電流の大きさ及び周波数に応じた誘導電圧が発生し、この誘導電圧を電流バーに流れる電流の検出信号として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-210406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、集磁コアのギャップ部に2つの磁電変換素子を配置する電流センサは、基板に対して垂直方向の外部磁場に対してシールドとしての効果があり、高精度な電流計測が可能である。ここで、電流センサを低コストで実現しようとする場合、集磁コアを使用せず、磁電変換素子のみで構成できることが望ましい。
【0006】
しかしながら、集磁コアを使用しない場合、集磁コアによるシールド効果が得られないため、外部磁場の影響を大きく受け、電流計測精度が大きく低下してしまうという課題がある。
【0007】
また、集磁コアを取り除いた電流センサは、基板の位置ずれ等により、電流バーと磁電変換素子との位置関係が変化しやすいため、電流検出感度に変動が生じやすく電流計測精度が低下してしまうという課題もある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストで、外部磁場の影響を受けず、位置ずれによる電流検出感度変動が少ない高精度な電流計測を行うことができる電流センサ及び電力量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電流センサは、検出すべき電流が流れる電流バーと、少なくとも4以上の磁気検出部を有した基板とを有し、前記磁気検出部が検出した磁気検出結果をもとに前記電流バーに流れる電流を検出する電流センサであって、前記電流バーは、折り返し部を介し、それぞれ電流の向きが異なって平行に配置された第1導体バーと第2導体バーとを有し、前記第1導体バー及び前記第2導体バーには、前記基板が挿入される貫通孔がそれぞれ対向する位置に形成され、前記磁気検出部は、前記第1導体バー及び前記第2導体バーの各貫通孔を中心にそれぞれ各貫通孔の両端側に均等配置されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、前記磁気検出部は、前記基板に形成されたパターンコイルであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、前記4以上の磁気検出部は、前記基板の同一平面上に形成されたパターンコイルであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、前記4以上の磁気検出部は、前記電流バーに電流が流れた際、各パターンコイルに生じる誘導電圧を強め合うように直列接続されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、前記基板は、前記第1導体バー及び前記第2導体バーが形成する平面に平行であり、前記基板の中心軸は、前記貫通孔の中心軸に一致するように位置決めされることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる電流センサは、上記の発明において、前記折り返し部にリレーを設けたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる電力量計は、上記の発明のいずれか一つに記載した電流センサが検出した電流信号と電圧センサが検出した電圧信号とをもとに前記電流バーを流れる電力量を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる電力量計は、上記の発明において、電流センサ及び電圧センサの対を2対以上用いて電力量を算出する場合、前記電流センサには、シャント抵抗を用いた電流センサが含まれることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる電力量計は、上記の発明において、単相2線式の各配線の電源側にそれぞれ前記電流センサを設けて盗電の有無を判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる電力量計は、上記の発明において、基準電位側の配線に設けられる電流センサは、シャント抵抗を用いた電流センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低コストで、外部磁場の影響を受けず、位置ずれによる電流検出感度変動が少ない高精度な電流計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施の形態である電流センサの構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した電流センサの平面図である。
図3図3は、図2に示した電流センサのA-A線断面図である。
図4図4は、磁気検出部の構成例を示す図である。
図5図5は、本実施の形態による電流検出原理を説明する説明図である。
図6図6は、本実施の形態による外部磁場低減の原理を説明する説明図である。
図7図7は、第1導体バー及び第2導体バーと基板との位置ずれによる電流検出感度の変動を説明する説明図である。
図8図8は、本実施の形態で示した電流センサを用いた電力量計の一例を示すブロック図である。
図9図9は、単相3線式による電力供給系統に電流センサを用いた電力量計の一例を示すブロック図である。
図10図10は、図9に示した構成にリレーを加えた電力量計の一例を示すブロック図である。
図11図11は、単相2線式による電力供給系統に実施の形態の電流センサに対応する電流センサとシャント抵抗を用いた電流センサとを用いた電力量計の一例を示すブロック図である。
図12図12は、図11に示した構成にリレーを加えた電力量計の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0022】
<全体構成>
図1は、本発明の実施の形態である電流センサ1の構成を示す斜視図である。また、図2は、図1に示した電流センサ1の平面図である。さらに、図3は、図2に示した電流センサ1のA-A線断面図である。図1図3に示すように、電流センサ1は、検出すべき電流Iが流れる電流バー2と、少なくとも4以上の磁気検出部3a~3dを有した基板3とを有し、磁気検出部3a~3dが検出した磁気検出結果をもとに電流バー2に流れる電流を検出する。
【0023】
電流バー2は、折り返し部2cを介し、それぞれ電流の向きが異なって平行に配置された第1導体バー2aと第2導体バー2bとを有する。折り返し部2cは、コの字型に折り曲げられている。なお、折り返し部2cの形状は任意であり、例えば、Uの字型であってもよい。
【0024】
第1導体バー2a及び第2導体バー2bには、基板3が挿入される貫通孔12a,12bがそれぞれ対向する位置に形成される。貫通孔12a,12bは、±X方向に開口し、基板3の断面に対応して、±Y方向に延びる矩形の長孔である。
【0025】
基板3は、XY平面を形成し、±X方向に延びる板状をなす。基板3は、第1導体バー2a及び第2導体バー2bが形成する平面に平行であり、基板3の中心軸は、貫通孔12a,12bの中心軸に一致するように位置決めされる。基板3と貫通孔12a,12bの内面との間は空気で絶縁されるが、位置決めも兼ねて絶縁部材のスペーサを設けてもよい。
【0026】
基板3上には、磁気検出部3a~3dが±X方向に等間隔Lbで配置される。磁気検出部3a,3bは、第1導体バー2aの貫通孔12aの中心軸C2aを中心に±X方向に等間隔に配置される。また、磁気検出部3c,3dは、第2導体バー2bの貫通孔12bの中心軸C2bを中心に±X方向に等間隔に配置される。
【0027】
磁気検出部3a~3dは、基板3に形成されたパターンコイルである。磁気検出部3a~3dは、電流バー2に電流Iが流れた際、各パターンコイルに生じる誘導電圧を強め合う(加算する)ように直列接続される。なお、磁気検出部3a~3dから出力された誘導電圧信号は、図示しない演算回路により電流信号に変換されて出力される。電流センサ1には、この演算回路も含まれ、演算回路は、基板3上に形成してもよいし、引き出し線を介して基板3の外部に設けてもよい。なお、本実施の形態では、パターンコイルの磁気検出部3a~3dは、辺の長さLaの正方形の渦巻き形状としているが、これに限らない。例えば、パターンコイルは円形の渦巻き形状であってもよい。
【0028】
なお、磁気検出部3a~3dは、磁気検出できるセンサであればよく、例えばホール素子であってもよい。
【0029】
<磁気検出部の構成例>
図4は、磁気検出部3a~3dの構成例を示す図である。図4に示すように、磁気検出部3a~3dは、基板3上に形成される。各磁気検出部3a~3dは、2層のパターンコイルとしている。磁気検出部3aは、第1導体バー2aに電流Iが+Y方向に流れた時点で、第1導体バー2aの-X方向に発生した上向き(+Z方向)の磁束φIによる誘導電圧を検出する。磁気検出部3bは、第1導体バー2aに電流Iが+Y方向に流れた時点で、第1導体バー2aの+X方向に発生した下向き(-Z方向)の磁束φIによる誘導電圧を検出する。磁気検出部3cは、第2導体バー2bに電流Iが-Y方向に流れた時点で、第2導体バー2bの-X方向に発生した下向き(-Z方向)の磁束φIによる誘導電圧を検出する。磁気検出部3dは、第2導体バー2bに電流Iが+Y方向に流れた時点で、第2導体バー2bの+X方向に発生した上向き(+Z方向)の磁束φIによる誘導電圧を検出する。そして、出力端子Ta,Tbから各磁気検出部3a~3dが検出した誘導電圧を加算して出力する。このため、上記のように、磁気検出部3a~3dは直列接続される。
【0030】
具体的に、出力端子Ta,Tbは、基板3の裏面に形成され、出力端子Taは裏面に延びる折り返し線L10を介してビアb1に接続し、磁気検出部3aに接続される。磁気検出部3aでは、表面側において時計回りの上層のパターンコイルに接続し、さらにビアa1を介して時計回りの下層のパターンコイルに接続される。この下層のパターンコイルはビアc1を介して上層の接続線L12に接続し、磁気検出部3bに接続される。
【0031】
磁気検出部3bでは、表面側において反時計回りの上層のパターンコイルに接続し、さらにビアa2を介して反時計回りの下層のパターンコイルに接続される。この下層のパターンコイルはビアc2を介して上層の接続線L23に接続し、磁気検出部3cに接続される。
【0032】
磁気検出部3cでは、表面側において時計回りの上層のパターンコイルに接続し、さらにビアa3を介して時計回りの下層のパターンコイルに接続される。この下層のパターンコイルはビアc3を介して上層の接続線L34に接続し、磁気検出部3dに接続される。
【0033】
磁気検出部3dでは、表面側において反時計回りの上層のパターンコイルに接続し、さらにビアa4を介して反時計回りの下層のパターンコイルに接続される。この下層のパターンコイルは下層の接続線L11を介して出力端子Tbに接続される。
【0034】
なお、図4では、磁気検出部3a~3dを2層のパターンコイルで形成していたが、パターンコイルは1層でも、多層であってもよい。層の数が多いほど、誘導電圧の検出値を大きくすることができる。また、磁気検出部3a~3dは、4つであったが、これに限らず、4つ以上であってもよい。例えば、各磁気検出部3a~3dの±X方向にさらに磁気検出部を設けてもよいし、第1導体バー2a及び第2導体バー2bに沿って磁気検出部を増設してもよい。そして、各磁気検出部は誘導電圧を加算するように直列接続されるようにする。
【0035】
<電流検出原理>
図5は、本実施の形態による電流検出原理を説明する説明図である。図5において、電流Iが磁気検出部に鎖交する上向き(+Z方向)の磁束φIをプラスとし、下向き(-Z方向)の磁束φIをマイナスとする。そうすると、磁気検出部3a,3dには、+φIが鎖交し、磁気検出部3b,3cには、-φIが鎖交する。
【0036】
したがって、磁気検出部3a~3dが検出する全磁束φは、次式(1)で表せる。
全磁束φ=磁気検出部3aの磁束(φI) - 磁気検出部3bの磁束(-φI)
- 磁気検出部3cの磁束(-φI) + 磁気検出部3dの磁束(φI)
=4×φI …(1)
したがって、第1導体バー2a及び第2導体バー2bを中心にして左右のパターンコイルが検出する磁束の差をとるように磁気検出部3a~3dを直列接続しておくことで、電流検出を効率良く行うことができる。
【0037】
<外部磁場の低減>
図6は、本実施の形態による外部磁場低減の原理を説明する説明図である。図6に示すように、外部磁場φN4~φN1が発生した場合、各磁気検出部3a~3dには、すべて下向きの磁束が鎖交する。この状態で電流バー2に流れる電流を検出する場合、全磁束φは、次式(2)で表せる。
全磁束φ= 磁気検出部3aの磁束(φI-φN4)
-磁気検出部3bの磁束(-φI-φN3)
-磁気検出部3cの磁束(-φI-φN2)
+磁気検出部3dの磁束(φI-φN1)
=4×φI-(φN4-φN3-φN2+φN1) …(2)
【0038】
ここで、外部磁場φN4~φN1は、次式(3)のような傾きのある外部磁場であるとする。
φN4=8×φN
φN3=7×φN
φN2=6×φN
φN1=5×φN …(3)
【0039】
すると、全磁束φは、次式(4)で表せる。
全磁束φ=4×φI-(φN4-φN3-φN2+φN1)
=4×φI-(8φN-7φN-6φN+5φN)
=4×φI …(4)
したがって、本実施の形態では、傾きのある外部磁場であっても、外部磁場による磁束の影響を打ち消すことができる。
【0040】
<位置ずれによる電流検出感度の変動>
図7は、第1導体バー2a及び第2導体バー2bと基板3との位置ずれによる電流検出感度の変動を説明する説明図である。図7(a)は、基板3に対して片側に第1導体バー2a´及び第2導体バー2b´が配置された場合を示しており、図7(b)は、本実施の形態における、基板3に対して両側に第1導体バー2a及び第2導体バー2bが配置される場合を示している。
【0041】
第1導体バー2a及び第2導体バー2bに流れる電流Iにより生じる磁界の強さHは、H=I/(2πr)で表され、磁界の強さHは、距離rにより変化する。このため、図7(a)に示すように、基板3に対して第1導体バー2a´及び第2導体バー2b´が片側に配置されている場合、基板3の位置が+Z方向にΔZだけずれた場合、各磁気検出部3a~3dと、第1導体バー2aあるいは第2導体バー2bとの距離も距離rから距離(r-a)に変動するため、磁気検出部3a~3dにおける電流検出感度が大きく変動してしまうことになる。
【0042】
これに対し、本実施の形態では、図7(b)に示すように、第1導体バー2a及び第2導体バー2bに貫通孔12a,12bをそれぞれ形成し、基板3に対して、第1導体バー2aと第2導体バー2bとを上下(±Z方向)に配置している。この結果、基板3の位置がΔZだけずれた場合、上側(+Z方向)の第1導体バー2a及び第2導体バー2bとの距離は、距離rから距離(r-a)に変動するが、下側(-Z方向)の第1導体バー2a及び第2導体バー2bとの距離は、距離rから距離(r+a)に変動するため、トータルの磁界の強さHは、変動分が上下で打ち消し合う方向に働くため、電流検出感度の変動を低減することができる。なお、貫通孔12a,12bに基板3が挿入されることにより、第1導体バー2a、第2導体バー2b、基板3の間の位置決めが容易になるとともに、基板3の変動を抑えることができる。
【0043】
これにより、本実施の形態では、外部磁場の影響を受けず、電流バー2の第1導体バー2a及び第2導体バー2bと磁気検出部3a~3dとの位置ずれによる電流検出感度の変動を低減して、高精度な電流センサを提供できる。しかも、集磁コアを用いないので低コストである。
【0044】
<電力量計>
図8は、本実施の形態で示した電流センサ1を用いた電力量計200の一例を示すブロック図である。この電力量計200は、三相3線式の電源SPと負荷LDとの間の三相電力量を計測するものであり、2電力計法により求めている。
【0045】
図8に示すように、電力量計200は、実施の形態で示した電流センサ1に対応する電流センサ103a,103b、電圧センサ201a,201b、電力量算出部202、出力部203を有する。電流センサ103aは、S相を基準電位とするR相の線間電流IRを検出する。電流センサ103bは、S相を基準電位とするT相の線間電流ITを検出する。また、電圧センサ201aは、S相を基準電位とするR相の線間電圧VRSを検出する。電圧センサ201bは、S相を基準電位とするT相の線間電圧VTSを検出する。
【0046】
電力量算出部202は、線間電流IRと線間電圧VRSと力率とによって求められたR相の電力と、線間電流ITと線間電圧VTSと力率とによって求められたT相の電力とを加算する2電力計法によって3相電力を算出している。出力部203は、この算出された電力量を表示出力あるいは外部出力する。
【0047】
図9は、単相3線式による電力供給系統に電流センサ1に対応する電流センサ103a,103bを用いた電力量計300の一例を示すブロック図である。図8に示した電力供給系統は三相3線式であったが、図9に示す電力供給系統は、電源SP2から負荷LD2に対する単相3線式である。単相3線式では、図9に示した中性線Nを基準電位として一方の線間電流I1を電流センサ103aによって検出し、一方の線間電圧V1を電圧センサ201aによって検出する。また、他方の線間電流I2は、電流センサ103bによって検出し、他方の線間電圧V2は、電圧センサ201bによって検出する。電力量算出部302は、一方と他方の各電力量を算出するとともに、一方と他方との合計電力量をも算出する。
【0048】
図10は、図9に示した構成にリレーを加えた電力量計の一例を示すブロック図である。図10に示すように、この電力量計400は、図9の電力量計300に対して、電流バーの折り返し部に対応する位置に電流バーの線をオンオフするリレーR1,R2が設けられる。このリレーR1,R2は外部からの制御信号を受けてスイッチングする。リレーR1,R2のスイッチングにより、メンテナンスが容易になるとともに、リレーR1,R2がオフされた場合、電流センサ103a,103bの外部磁場などによるノイズ信号や暗電流を算出することができ、電流センサ103a,103bの補正情報を得ることができる。
【0049】
図11は、単相2線式による電力供給系統に実施の形態の電流センサ1に対応する電流センサ103aとシャント抵抗を用いた電流センサ511とを用いた電力量計500の一例を示すブロック図である。図11に示す電力供給系統は、電源SP3から負荷LD3に対する単相2線式である。電流センサ511は、基準電位側の電流バー510にシャント抵抗を設け、このシャント抵抗の両端の電位差を計測し、この電位差をシャント抵抗の抵抗値で除算して電流値を求めるものである。なお、図11では、シャント抵抗を含む電流センサ511として示している。相関電圧は、電圧センサ201aが検出した電位V11と電圧センサ201bが検出した電位V12との差により求めている。図11では、単相に2つの電流センサ103a,511を配置しているが、電流センサ511は基準電位側に設け、電流センサ103aをメイン電流センサとし、電流センサ511をサブ電流センサとして用いている。また、電流センサ511と電流センサ103aとはそれぞれ電源SP3側に配置される。
【0050】
電流センサ511は、負荷LD3以外に、例えば、盗電目的で接地された外部負荷を検知するために配置されている。電力量算出部502は、電流センサ103aと電流センサ511とが検出する電流量をもとにそれぞれ電力量を算出してモニタし、電流センサ511が検出した電流量をもとに算出した電力量が、電流センサ103aが検知する電流量をもとに算出した電力量と比べて一定値以上の差が生じた場合、盗電されていると判定する。なお、電力量算出部502は、電力量ではなく、電流センサ511が検出する電流量と電流センサ103aが検出する電流量との比較により、盗電の有無を判定するようにしてもよい。
【0051】
図12は、図11に示した構成にリレーを加えた電力量計の一例を示すブロック図である。図12に示すように、この電力量計600は、図11の電力量計500に対して、電流センサ103aが設けられる電流バーの折り返し部に対応する位置に電流バーの線をオンオフするリレーR1が設けられる。このリレーR1は外部からの制御信号を受けてスイッチングする。リレーR1のスイッチングにより、メンテナンスが容易になるとともに、リレーR1がオフされた場合、電流センサ103aの外部磁場などによるノイズ信号や暗電流を算出することができ、電流センサ103aの補正情報を得ることができる。
【0052】
なお、電流センサと電圧センサとの対を2以上用いて電力量算出を行う場合、電流センサの全てを上記の磁気検出部を用いたものとする必要はなく、例えばシャント抵抗を用いた電流センサを組み合わせてもよい。シャント抵抗を用いた電流センサは、上記のように、シャント抵抗両端の電圧降下をシャント抵抗値で除算して電流値を求める。
【0053】
また、上記では、三相3線式、単相3線式、単相2線式の例を示したが、これに限らず、三相4線式などの電力量計にも、電流センサ1を適宜適用することができる。
【0054】
なお、上記の実施の形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置及び構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0055】
1,103a,103b,511 電流センサ
2,510 電流バー
2a 第1導体バー
2b 第2導体バー
2c 折り返し部
3 基板
3a~3d 磁気検出部
12a,12b 貫通孔
200,300,400,500,600 電力量計
201a,201b 電圧センサ
202,302,502 電力量算出部
203 出力部
a1~a4,b1,c1~c3 ビア
C2a,C2b 中心軸
I 電流
I1,I2,IR,IT 線間電流
L10 折り返し線
L11,L12,L23,L34 接続線
La 辺の長さ
Lb 等間隔
LD,LD2,LD3 負荷
N 中性線
r 距離
R1,R2 リレー
SP,SP2,SP3 電源
Ta,Tb 出力端子
V1,V2,VRS,VTS 線間電圧
V11,V12 電位
φ 全磁束
φI 磁束
φN1~φN4 外部磁場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12