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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157549
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 15/00 20230101AFI20231019BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H01L37/00
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067521
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】516230102
【氏名又は名称】株式会社illuminus
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博史
(72)【発明者】
【氏名】坂田 稔
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン ラーシュ マティアス
(57)【要約】
【課題】発電量の安定化を図ることができる発電装置を提供する。
【解決手段】温度差を不要とした熱電素子1を用いた発電装置100であって、筐体2と、前記筐体2の内部に設けられた1つ以上の前記熱電素子1と、前記熱電素子1と電気的に接続され、前記筐体2の内部から外部まで延在する配線3と、を備える。前記熱電素子1は、互いに異なる仕事関数を有する一対の電極を含み、前記筐体1の内部における環境は、前記筐体の外部における環境とは異なることを特徴とする。例えば、前記熱電素子1は、前記筐体2に接する第1面と、前記第1面に対向し、前記筐体の内部に晒された第2面と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度差を不要とした熱電素子を用いた発電装置であって、
筐体と、
前記筐体の内部に設けられた1つ以上の前記熱電素子と、
前記熱電素子と電気的に接続され、前記筐体の内部から外部まで延在する配線と、
を備え、
前記熱電素子は、互いに異なる仕事関数を有する一対の電極を含み、
前記筐体の内部における環境は、前記筐体の外部における環境とは異なること
を特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記筐体の内部における酸素濃度及び水分濃度の少なくとも何れかは、前記筐体の外部よりも低いこと
を特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記熱電素子は、
前記筐体に接する第1面と、
前記第1面に対向し、前記筐体の内部に晒された第2面と、
を含むこと
を特徴とする請求項2記載の発電装置。
【請求項4】
前記筐体の内部には、不活性ガスが充填されること
を特徴とする請求項3記載の発電装置。
【請求項5】
前記筐体の内部に設けられたゲッター材をさらに備えること
を特徴とする請求項3記載の発電装置。
【請求項6】
前記熱電素子は、
前記一対の電極の間に設けられた微粒子と、
前記微粒子と結合し、前記一対の電極の間に亘って設けられた被膜と、
を含むこと
を特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の発電装置。
【請求項7】
前記被膜の融点は、30℃以下であること
を特徴とする請求項6記載の発電装置。
【請求項8】
前記被膜は、前記一対の電極の少なくとも一部を覆うこと
を特徴とする請求項6記載の発電装置。
【請求項9】
前記筐体の内部に設けられ、前記熱電素子を覆う保護膜をさらに備えること
を特徴とする請求項1又は2記載の発電装置。
【請求項10】
前記一対の電極の少なくとも何れかは、表面に設けられた電極保護膜を含むこと
を特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温度差を不要とした熱電素子を用いた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温度差を不要とした熱電素子に関し、例えば特許文献1のような発電素子が提案されている。
【0003】
特許文献1では、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電素子であって、第1電極と、前記第1電極と対向して設けられ、前記第1電極とは異なる仕事関数を有する第2電極と、前記第1電極と、前記第2電極との間に設けられ、2種類以上の材料を含有するナノ粒子を含む中間部と、を備え、前記ナノ粒子は、20wt%以上100wt%未満の金を含有し、表面に設けられた硫黄原子を有する被膜を含むことを特徴とする発電素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6845521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に開示されたような発電素子は、経時に伴い発電量の低下が懸念として挙げられている。このため、温度差を不要とした熱電素子を用いた発電装置として、発電量の安定化が求められている。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、発電量の安定化を図ることができる発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る発電装置は、温度差を不要とした熱電素子を用いた発電装置であって、筐体と、前記筐体の内部に設けられた1つ以上の前記熱電素子と、前記熱電素子と電気的に接続され、前記筐体の内部から外部まで延在する配線と、を備え、前記熱電素子は、互いに異なる仕事関数を有する一対の電極を含み、前記筐体の内部における環境は、前記筐体の外部における環境とは異なることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る発電装置は、第1発明において、前記筐体の内部における酸素濃度及び水分濃度の少なくとも何れかは、前記筐体の外部よりも低いことを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る発電装置は、第2発明において、前記熱電素子は、前記筐体に接する第1面と、前記第1面に対向し、前記筐体の内部に晒された第2面と、を含むことを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る発電装置は、第3発明において、前記筐体の内部には、不活性ガスが充填されることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る発電装置は、第3発明において、前記筐体の内部に設けられたゲッター材をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る発電装置は、第1発明~第5発明の何れかにおいて、前記熱電素子は、前記一対の電極の間に設けられた微粒子と、前記微粒子と結合し、前記一対の電極の間に亘って設けられた被膜と、を含むことを特徴とする。
【0013】
第7発明に係る発電装置は、第6発明において、前記被膜の融点は、30℃以下であることを特徴とする。
【0014】
第8発明に係る発電装置は、第6発明において、前記被膜は、前記一対の電極の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0015】
第9発明に係る発電装置は、第1発明又は第2発明において、前記筐体の内部に設けられ、前記熱電素子を覆う保護膜をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
第10発明に係る発電装置は、第1発明~第5発明の何れかにおいて、前記一対の電極の少なくとも何れかは、表面に設けられた電極保護膜を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明~第10発明によれば、筐体の内部における環境は、筐体の外部における環境とは異なる。即ち、熱電素子の電極等に影響を与え得る分子(例えばO2、H2O、NOx、COx、H2等)を、筐体の内部において低減させた状態で、熱電素子を発電させることができる。このため、熱電素子が筐体の外部に設けられた場合に比べて、経時に伴う電極等の化学変化を抑制することができる。これにより、発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0018】
特に、第2発明によれば、筐体の内部における酸素濃度及び水分濃度の少なくとも何れかは、大気よりも低い。即ち、熱電素子の各電極が、酸素又は水との接触により酸化等の劣化を引き起こす可能性を低くすることができる。このため、熱電素子が筐体の外部に設けられた場合に比べて、経時に伴う各電極の劣化を抑制することができる。これにより、発電量のさらなる安定化を図ることが可能となる。
【0019】
特に、第3発明によれば、熱電素子は、筐体に接する第1面と、筐体の内部に晒された第2面とを含む。このため、複数の熱電素子を筐体の内部に設ける際、配置箇所に起因する発電量のバラつきを抑制することができる。これにより、さらなる発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0020】
特に、第4発明によれば、筐体の内部には、不活性ガスが充填される。このため、熱電素子の各電極の酸化を、さらに抑制することができる。これにより、さらなる発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0021】
特に、第5発明によれば、ゲッター材は、筐体の内部に設けられる。このため、経時に伴い筐体の外部から侵入する酸素等を、ゲッター材により捉えることができる。これにより、さらなる発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0022】
特に、第6発明によれば、熱電素子は、微粒子と結合し、一対の電極の間に亘って設けられた被膜を含む。即ち、各微粒子に結合した被膜が、一対の電極の間に連なって形成される。このため、一対の電極の間における空隙の発生を抑制することができる。これにより、空隙に起因する発電量の低下を抑制することが可能となる。
【0023】
特に、第8発明によれば、被膜は、一対の電極のうち少なくとも一部を覆う。このため、被膜に覆われた電極表面に対し、空隙の発生を抑制することができる。これにより、電極表面の空隙に起因する発電量の低下を抑制することが可能となる。
【0024】
特に、第9発明によれば、保護膜は、熱電素子を覆う。このため、熱電素子の各電極の酸化を、さらに抑制することができる。これにより、さらなる発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0025】
特に、第10発明によれば、一対の電極の少なくとも何れかは、表面に設けられた電極保護膜を含む。このため、電極の表面に電極保護膜を設けない場合に比べて、経時に伴う電極の酸化等の化学変化を抑制することができる。これにより、発電量のさらなる安定化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態における発電装置の一例を示す模式斜視図である。
図2図2は、図1におけるA-Aに沿った模式断面図である。
図3図3は、中間部の一例を示す模式断面図である。
図4図4は、中間部の変形例を示す模式断面図である。
図5図5(a)は、微粒子の粒径の一例を示すグラフであり、図5(b)は、微粒子の一例を示す模式図である。
図6図6は、実施形態における発電装置の第1変形例を示す模式断面図である。
図7図7は、実施形態における発電装置の第2変形例を示す模式断面図である。
図8図8は、熱電素子の変形例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態としての発電装置の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、熱電素子の各電極が積層される高さ方向を第1方向Zとし、第1方向Zと交差、例えば直交する1つの平面方向を第2方向Xとし、第1方向Z及び第2方向Xのそれぞれと交差、例えば直交する別の平面方向を第3方向Yとする。また、各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0028】
(発電装置100)
図1は、本実施形態における発電装置100の一例を示す模式斜視図である。図2は、図1におけるA-Aに沿った模式断面図である。
【0029】
図1及び図2に示すように、発電装置100は、1つ以上の熱電素子1と、筐体2と、配線3とを備える。発電装置100は、温度差を不要とした熱電素子1を用いる。熱電素子1は、筐体2の有する内部20に設けられる。なお、内部20に設けられる熱電素子1の数は、任意である。配線3は、熱電素子1と電気的に接続され、筐体2の内部20から外部まで延在する。
【0030】
熱電素子1は、互いに異なる仕事関数を有する一対の電極11、12を含み、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。このような熱電素子1を備えた発電装置100は、例えば、図示せぬ熱源や熱媒の近傍に搭載又は設置され、熱源や熱媒の熱エネルギーを元として、熱電素子1から発生した電気エネルギーを、配線3を介して負荷等へ出力する。負荷は、例えば電気的な機器を示す。負荷は、例えば発電装置100を主電源又は補助電源に用いて駆動される。
【0031】
発電装置100の熱源としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の電子デバイス又は電子部品、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子、自動車等のエンジン、工場の生産設備、人体、太陽光、及び環境温度等が挙げられる。熱媒としては、熱源に接する部材等のような、熱を伝達し得る構造が挙げられる。例えば、電子デバイス、電子部品、発光素子、エンジン、及び生産設備等は、人工熱源である。人体、太陽光、及び環境温度等は自然熱源である。発電装置100は、例えばIoT(Internet of Things)デバイス及びウェアラブル機器等のモバイル機器や自立型センサ端末の内部に設けることができ、電池の代替又は補助として用いることができる。さらに、発電装置100は、太陽光発電等のような、より大型の発電装置への応用も可能である。
【0032】
筐体2は、熱電素子1が配置された内部20を有する。筐体2の内部20における環境は、筐体2の外部における環境とは異なる。なお、「環境」とは、気体に含まれる特定分子の特徴を示し、例えば特定分子の濃度を示す。環境は、例えば気体中におけるO2、H2O、NOx、COx、及びH2の少なくとも何れかの濃度を示す。
【0033】
ここで、熱電素子1の各構成は、環境に応じて化学変化する可能性がある。特に、熱電素子1の発電に伴い各構成が化学変化することで、発電量が変化し得る。
【0034】
この点、本実施形態における発電装置100は、熱電素子1の電極11、12等の各構成に影響を与え得る分子(例えばO2、H2O、NOx、COx、H2等)を、筐体2の内部20において低減させた状態で、熱電素子1を発電させることができる。このため、熱電素子1が筐体2の外部に設けられた場合に比べて、経時に伴う電極11、12等の化学変化を抑制することができる。これにより、発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0035】
例えば筐体2の内部20における酸素濃度及び水分濃度の少なくとも何れかは、大気における各濃度よりも低い。筐体2の内部20は、例えば減圧された状態を示す。
【0036】
ここで、熱電素子1の各電極11、12は、周囲に存在する酸素や水の影響により、酸化等の劣化を引き起こす可能性がある。そして、各電極11、12の劣化に伴い、発電量の低下が懸念として挙げられる。特に、温度差を不要とした熱電素子1では、各電極11、12の仕事関数が発電量に大きく影響するため、各電極11、12の酸化等の劣化に伴う仕事関数の変動が、発電量の不安定化を引き起こし得る点を発明者は見出した。これに対し、本実施形態における発電装置100では、筐体2の内部20における酸素濃度及び水分濃度の少なくとも何れかは、大気よりも低い。即ち、熱電素子1の各電極11、12が、酸素又は水との接触により酸化等の劣化を引き起こす可能性を低くすることができる。このため、熱電素子1が筐体2の外部に設けられた場合に比べて、経時に伴う各電極11、12の劣化を抑制することができる。これにより、発電量のさらなる安定化を図ることが可能となる。
【0037】
熱電素子1は、例えば第1面1fと、第2面1sとを含む。第1面1fは、筐体2に接する。第2面1sは、第1面1fに対向し、筐体2の内部20に晒される。第2面1sを内部20に晒すことで、複数の熱電素子1を筐体2の内部20に設ける際、配置箇所に起因する発電量のバラつきを抑制することができる。
【0038】
以下、各構成についての詳細を説明する。
【0039】
(熱電素子1)
熱電素子1は、一対の電極(第1電極11、第2電極12)と、中間部14とを備える。熱電素子1は、例えば支持部13、第1基板15、及び第2基板16の少なくとも何れかを備えてもよい。
【0040】
<第1電極11、第2電極12>
第1電極11及び第2電極12は、互いに対向して設けられる。第1電極11及び第2電極12は、それぞれ異なる仕事関数を有する。各電極11、12の形状や配置する数は、用途に応じて任意である。
【0041】
第1電極11及び第2電極12の材料として、導電性を有する材料が用いられる。第1電極11及び第2電極12の材料として、例えばそれぞれ異なる仕事関数を有する材料が用いられる。なお、各電極11、12には、それぞれ同一の材料を用いてもよく、この場合、それぞれ異なる仕事関数を有していればよい。
【0042】
各電極11、12の材料として、例えば鉄、アルミニウム、銅、白金、ハフニウム等の単一元素からなる材料が用いられるほか、例えば2種類以上の元素からなる合金の材料が用いられてもよい。各電極11、12の材料として、例えば非金属導電物が用いられてもよい。非金属導電物の例としては、シリコン(Si:例えばp型Si、あるいはn型Si)、及びグラフェン等のカーボン系材料等を挙げることができる。
【0043】
第1電極11及び第2電極12の第1方向Zに沿った厚さは、例えば4nm以上1μm以下である。第1電極11及び第2電極12の第1方向Zに沿った厚さは、例えば4nm以上500nm以下でもよい。
【0044】
例えば図3に示すように、第1電極11と、第2電極12との間には、ギャップGが形成される。ギャップGは、例えば支持部13又は中間部14の厚さを変更することで任意に設定することができる。例えばギャップGを狭くすることで、各電極11、12の間に発生する電界を大きくすることができるため、熱電素子1の発電量を増加させることができる。また、例えばギャップGを狭くすることで、熱電素子1の第1方向Zに沿った厚さを薄くすることができる。
【0045】
ギャップGは、例えば500μm以下の有限値である。ギャップGは、例えば10nm以上1μm以下である。例えばギャップGが200nm以下の場合、第1電極11と第2電極12とが接触する可能性が高くなる。また、ギャップGが1μmよりも大きい場合、各電極11、12の間に発生する電界が弱まる可能性がある。これらのため、ギャップGは、200nmよりも大きく、1μm以下であることが好ましい。
【0046】
<中間部14>
中間部14は、第1電極11と、第2電極12との間(ギャップG)を含む空間140に設けられる。中間部14は、例えば第2方向X及び第3方向Yに沿った平面に延在する。中間部14は、各電極11、12の互いに対向する主面に接するほか、例えば各電極11、12の側面に接してもよい。
【0047】
中間部14は、微粒子141を含む。中間部14は、例えば微粒子141と結合し、一対の電極11、12に亘って設けられた被膜141aを含んでもよい。被膜141aは、例えばギャップG内に充填され、微粒子141毎の隙間に設けられてもよい。
【0048】
微粒子141の粒子径は、例えばギャップGよりも小さい。微粒子141の粒子径は、例えばギャップGの1/10以下の有限値である。例えば微粒子141の粒子径が、ギャップGの1/10以下の場合、空間140内に微粒子141を含む中間部14を、形成し易くすることができる。これにより、熱電素子1を生成する際、作業性を向上させることが可能となる。
【0049】
ここで、「微粒子」とは、複数の粒子を含んだものを示す。微粒子141は、例えば2nm以上1000nm以下の粒子径を有する粒子を含む。微粒子141は、例えば、メディアン径(中央径:D50)が3nm以上20nm以下の粒子径を有する粒子を含んでもよいほか、例えば平均粒径が3nm以上20nm以下の粒子径を有する粒子を含んでもよい。微粒子141の粒子数濃度は、例えば1.0×106~1.0×1012個/ml程度でもよく、用途に応じて任意に設定することができる。メディアン径又は平均粒径、及び粒子数濃度は、例えば粒度分布計測器を用いることで、測定することができる。粒度分布計測器としては、例えば、動的光散乱法を用いた粒度分布計測器(例えばMalvern Panalytical製ゼータサイザーUltra等)を用いればよい。
【0050】
微粒子141は、例えば導電物を含み、用途に応じて任意の材料が用いられる。微粒子141は、1種類の材料を含むほか、用途に応じて複数の材料を含んでもよい。
【0051】
微粒子141は、例えば金属を含む。微粒子141として、例えば金、銀等の1種類の材料を含有する粒子のほか、例えば2種類以上の材料を含有した合金の粒子が用いられてもよい。
【0052】
微粒子141は、例えば金属酸化物を含む。金属酸化物を含む微粒子141として、例えばジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化鉄(Fe23、Fe25)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、イットリア(Y23)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化タングステン(WO3)、酸化鉛(PbO)、酸化ビスマス(Bi23)、セリア(CeO2)、酸化アンチモン(Sb25、Sb23)などの、金属及びSiからなる群より選ばれる少なくとも何れか1つの元素の金属酸化物が用いられる。微粒子141は、例えば誘電体を含んでもよい。
【0053】
微粒子141は、例えば被膜141aと結合する。被膜141aを微粒子141の表面に結合させることで、例えば微粒子141の凝集を抑制することができる。また、被膜141aを微粒子141の表面に設けることで、微粒子141が各電極11、12に直接接触することを防止することが可能となる。
【0054】
例えば被膜141aは、微粒子141間に一体に形成される。この場合、微粒子141間に空隙が形成される可能性を低減することができる。これにより、発電量の向上を図ることが可能となる。
【0055】
例えば被膜141aは、各電極11、12の少なくとも一部を覆う。この場合、被膜141aに覆われた電極11、12の表面に対し、空隙の発生を抑制することができる。
【0056】
被膜141aとして、例えば高分子化合物や、脂肪酸類等が用いられる。高分子化合物として、例えばポリビニルピロリドン等が用いられる。脂肪酸類としては、例えばオレイン酸、リノール酸等が用いられる。
【0057】
被膜141aとして、例えば融点が30℃以下の材料が用いられ、例えばオレイン酸が用いられる。この場合、熱電素子1を形成する際、加熱処理等を実施せずに、被膜141aを各電極11、12の間に亘って容易に形成することができる。これにより、加熱処理に伴う各電極11、12の仕事関数の変動等を抑制することが可能となる。
【0058】
被膜141aは、例えば微粒子141に含まれる各粒子と結合し、それぞれ別体として設けられてもよい。この場合、被膜141aとして、例えばチオール基又はジスルフィド基を有する材料が用いられる。チオール基を有する材料として、例えばドデカンチオール等のアルカンチオールが用いられる。ジスルフィド基を有する材料として、例えばアルカンジスルフィド等が用いられる。
【0059】
なお、中間部14は、例えば図4に示すように、不導体層142を含んでもよい。この場合、中間部14は、被膜141aを含まなくてもよい。
【0060】
ここで、中間部14が溶媒を含む場合、筐体2の内部20を減圧すると、溶媒が空間140から出る可能性がある。これにより、発電量が低下する懸念が挙げられる。これに対し、中間部14が不導体層142を含むことで、筐体2の内部20を減圧する場合においても、中間部14の変動を抑制することができる。
【0061】
不導体層142は、微粒子141を内包し、第1電極11及び第2電極12を支持する。この場合、不導体層142により、ギャップGにおける微粒子141の移動が抑制される。このため、経時に伴い微粒子141が一方の電極11、12側に偏在し、電子の移動量が減少することを抑制することができる。これにより、発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0062】
不導体層142は、例えば不導体材料を硬化させて形成される。不導体層142は、例えば固体を示す。不導体層142は、例えば希釈剤の残渣や、不導体材料の未硬化部を含んでもよい。この場合においても、上記と同様に、発電量の安定化を図ることが可能となる。また、微粒子141は、例えば不導体層142に分散された状態で固定される。この場合においても、上記と同様に、発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0063】
不導体層142の厚さは、例えば500μm以下の有限値である。不導体層142の厚さは、上述したギャップGの値やバラつきに影響する。このため、例えば不導体層142の厚さが200nm以下の場合、第1電極11と第2電極12とが接触する可能性が高くなる。また、不導体層142の厚さが1μmよりも大きい場合、各電極11、12の間に発生する電界が弱まる可能性がある。これらのため、不導体層142の厚さは、200nmよりも大きく、1μm以下であることが好ましい。
【0064】
不導体層142は、例えば1種類の材料を含むほか、用途に応じて複数の材料を含んでもよい。不導体層142として、例えばISO1043-1、又はJIS K 6899-1に記載の材料が用いられてもよい。
【0065】
例えば図5(a)及び図5(b)に示すように、微粒子141は、第1微粒子141f、及び第2微粒子141sを含んでもよい。例えば図5(a)に示すように、第2微粒子141sの中央径D50sは、第1微粒子141fの中央径D50fよりも小さい。この場合、例えば図5(b)に示すように、第2微粒子141sが、第1微粒子141fの粒子間に入り込む可能性を高くすることができる。この際、各微粒子141f、141sは、何れか一方のみが中間部14に含まれる場合に比べて、変動可能な範囲が狭くなる。このため、微粒子141の変動を抑制することができる。これにより、発電量の低下の抑制を図ることが可能となる。
【0066】
また、例えば微粒子141が、各微粒子141f、141sを含むことで、大きい中央径D50fを有する第1微粒子141fのみを含む場合に比べて、各電極11、12に接する微粒子141の面積を大きくすることができる。このため、各電極11、12の間を移動する電子の量を増大させることができる。これにより、発電量の増加を図ることが可能となる。
【0067】
また、例えば微粒子141が、各微粒子141f、141sを含むことで、小さい中央径D50sを有する第2微粒子141sのみを含む場合に比べて、中間部14内における微粒子141の充填度合いを容易に向上させることができる。これにより、微粒子141間において電子の移動を円滑にすることができる。この点においても、発電量の増加を図ることが可能となる。
【0068】
なお、微粒子141に含まれる第1微粒子141f及び第2微粒子141sは、例えば上述した粒子径の範囲であれば、任意に選択することができる。また、第1微粒子141fの中央径D50fと、第2微粒子141sの中央径D50sとの差の度合いは、任意である。
【0069】
例えば、第1微粒子141fの粒子数濃度は、第2微粒子141sの粒子数濃度よりも低い。ここで、第1微粒子141fの粒子数濃度が、第2微粒子141sの粒子数濃度よりも高い場合、第1微粒子141fにおける粒子間に、第2微粒子141sが入り込む可能性が低くなる。このため、各電極11、12の間における微粒子141の充填度合いを高めることができず、微粒子141の偏在等を引き起こす懸念が挙げられる。これに対し、本実施形態によれば、例えば第1微粒子141fの粒子数濃度は、第2微粒子141sの粒子数濃度よりも低い。この場合、各電極11、12の間における微粒子141の充填度合いを高めることができる。このため、微粒子141の偏在等の抑制を図ることが可能となる。
【0070】
例えば、第1微粒子141fの仕事関数は、第2微粒子141sの仕事関数よりも低い。この場合、第1電極11及び第1微粒子141fから第2微粒子141sに向けて、電子が移動し易くなる。また、第2微粒子141sの粒子間距離は、第1微粒子141fの粒子間距離に比べて、短い傾向を示すため、中間部14内における電子の伝達経路が形成され易い。このため、第1電極11から第2微粒子141sを介して中間部14に電子が供給され易くなる。これにより、各電極11、12の間における電子の伝達を円滑に進めることができる。従って、発電量の増加を図ることが可能となる。
【0071】
<支持部13>
支持部13は、例えば図2に示すように、各電極11、12に接して支持する。支持部13は、例えば各電極11、12と離間し、各基板15、16に接して支持してもよい。
【0072】
支持部13として、例えば絶縁性を有する材料が用いられ、用途に応じて任意の材料が用いられる。例えば中間部14が不導体層142を含む場合、熱電素子1は支持部13を備えなくてもよい。
【0073】
<第1基板15、第2基板16>
第1基板15及び第2基板16は、例えば各電極11、12及び中間部14を挟み、第1方向Zに離間して設けられる。第1基板15は、例えば第1電極11と接し、第2電極12と離間する。第1基板15は、第1電極11を固定する。第2基板16は、第2電極12と接し、第1電極11と離間する。第2基板16は、第2電極12を固定する。
【0074】
各基板15、16の第1方向Zに沿った厚さは、例えば10μm以上2mm以下である。各基板15、16の厚さは、任意に設定することができる。各基板15、16の形状は、例えば正方形や長方形の四角形のほか、円盤状等でもよく、用途に応じて任意に設定することができる。
【0075】
各基板15、16として、例えば絶縁性を有する板状の部材を用いることができ、例えばシリコン、石英、パイレックス(登録商標)等の公知の部材を用いることができる。各基板15、16は、例えばフィルム状の部材が用いられてもよく、例えばPET(polyethylene terephthalate)、PC(polycarbonate)、及びポリイミド等の公知のフィルム状部材が用いられてもよい。
【0076】
各基板15、16として、例えば導電性を有する部材を用いることができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、又はアルミニウムと銅との合金等を挙げることができる。また、各基板15、16としては、例えばSi、GaN等の導電性を有する半導体の他、導電性高分子等の部材が用いられてもよい。各基板15、16に導電性を有する部材を用いる場合、各電極11、12に接続するための配線が不要となる。
【0077】
なお、熱電素子1は、例え第1基板15のみを備えるほか、第2基板16のみを備えてもよい。また、熱電素子1は、例えば各基板15、16を備えずに、第1電極11、中間部14、及び第2電極12の順に複数積層された積層構造を示すほか、例えば各基板15、16の少なくとも何れかを備えた積層構造を示してもよい。
【0078】
<筐体2>
筐体2は、内部20に設けられた熱電素子1を外部環境から隔離するために用いられる。筐体2として、例えば電子部品に用いられる公知の筐体が用いられる。
【0079】
筐体2の内部20は、例えば外部よりも減圧された状態を示すほか、例えば窒素やアルゴン等の不活性ガスが充填された状態を示してもよい。何れの場合においても、筐体2の内部20における環境は、筐体2の外部における環境とは異なる状態とすることができる。これらのような状態を維持するために、筐体2の構造は、内部20を密閉できる構造を有することが好ましい。
【0080】
筐体2は、例えば図1に示すように、上部2aと、下部2bとを含むほか、例えば内部20を有する一体型の構造を示してもよい。筐体2は、例えば上部2aと下部2bとを連接するための封止部材等を含んでもよい。
【0081】
上部2aは、1以上の熱電素子1を覆うことができれば、任意の大きさ、形状、材料を用いることができる。上部2aとして、例えば熱を内部20に伝達し易い熱伝導率の高い材料が用いられてもよい。
【0082】
下部2bは、1以上の熱電素子1を支持することができれば、任意の大きさ、形状、材料を用いることができる。下部2bとして、例えば配線3が予め設けられたプリント基板等が用いられてもよい。下部2bとして、例えば熱を内部20に伝達し易い熱伝導率の高い材料が用いられてもよい。
【0083】
例えば発電装置100は、筐体2の内部20に設けられたゲッター材を備えてもよい。ゲッター材は、例えば熱電素子1と同様に下部2bの上に設けられるほか、上部2aの内壁に設けられてもよい。
【0084】
ゲッター材は、内部20に存在する酸素等のような特定の分子を捕捉することがき、例えばチタン、酸化ルテニウム、ジルコニウム等のような公知のゲッタリング能力を有する材料が用いられる。ゲッター材を設けることで、経時に伴い筐体2の外部から侵入する酸素等を捕捉することができる。これにより、筐体2の内部20における酸素等のような特定の分子濃度を、大気における濃度よりも低くすることができる。
【0085】
<配線3>
配線3は、熱電素子1と、負荷等とを電気的に接続するために用いられる。配線3の材料、形状、配置する数は、用途に応じて任意である。なお、配線3は、少なくとも一部が筐体2に埋め込まれてもよい。
【0086】
配線3は、例えば正極3aと、負極3bとを含むほか、複数の熱電素子1の間に接続された接続配線を含んでもよい。配線3は、例えば複数の熱電素子1を並列に接続するほか、直列に接続してもよく、用途に応じて接続状態を任意に設定することができる。
【0087】
<熱電素子1の動作例>
例えば、熱エネルギーが熱電素子1に与えられると、第1電極11と第2電極12との間に電流が発生し、熱エネルギーが電気エネルギーに変換される。第1電極11と第2電極12との間に発生する電流量は、熱エネルギーに依存する他、第2電極12の仕事関数と、第1電極11の仕事関数との差に依存する。
【0088】
発生する電流量は、例えば第1電極11と第2電極12との仕事関数差を大きくすること、及びギャップGを小さくすることで、増やすことができる。例えば、熱電素子1が発生させる電気エネルギーの量は、上記仕事関数差を大きくすること、及び上記ギャップGを小さくすること、の少なくとも何れか1つを考慮することで、増加させることができる。また、各電極11、12の間に、微粒子141を設けることで、各電極11、12の間を移動する電子の量を増大させることができ、電流量の増加に繋げることが可能となる。
【0089】
なお、「仕事関数」とは、固体内にある電子を真空中に取出すために必要な最小限のエネルギーを示す。仕事関数は、例えば、紫外光電子分光法(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)やオージェ電子分光法(AES:Auger Electron Spectroscopy)を用いて測定することができる。なお、「仕事関数」として、熱電素子1の各構成を対象とした実測値が用いられるほか、例えば材料に対して計測された公知の値が用いられてもよい。
【0090】
本実施形態によれば、筐体2の内部20における環境は、筐体2の外部における環境とは異なる。即ち、熱電素子1の電極11、12等に影響を与え得る分子(例えばO2、H2O、NOx、COx、H2等)を、筐体2の内部20において低減させた状態で、熱電素子1を発電させることができる。このため、熱電素子1が筐体2の外部に設けられた場合に比べて、経時に伴う電極11、12等の化学変化を抑制することができる。これにより、発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0091】
また、本実施形態によれば、筐体2の内部20における酸素濃度及び水分濃度の少なくとも何れかは、大気よりも低い。即ち、熱電素子1の各電極11、12が、酸素又は水との接触により酸化等の劣化を引き起こす可能性を低くすることができる。このため、熱電素子1が筐体2の外部に設けられた場合に比べて、経時に伴う各電極11、12の劣化を抑制することができる。これにより、発電量のさらなる安定化を図ることが可能となる。
【0092】
また、本実施形態によれば、熱電素子1は、筐体2に接する第1面1fと、筐体2の内部20に晒された第2面1sとを含む。このため、複数の熱電素子1を筐体2の内部20に設ける際、配置箇所に起因する発電量のバラつきを抑制することができる。これにより、さらなる発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0093】
また、本実施形態によれば、筐体2の内部20には、不活性ガスが充填される。このため、熱電素子1の各電極11、12の酸化を、さらに抑制することができる。これにより、さらなる発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0094】
また、本実施形態によれば、ゲッター材は、筐体2の内部20に設けられる。このため、経時に伴い筐体2の外部から侵入する酸素等を、ゲッター材により捉えることができる。これにより、さらなる発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0095】
また、本実施形態によれば、熱電素子1は、微粒子141と結合し、一対の電極11、12の間に亘って設けられた被膜141aを含む。即ち、各微粒子141に結合した被膜141aが、一対の電極11、12の間に連なって形成される。このため、一対の電極11、12の間における空隙の発生を抑制することができる。これにより、空隙に起因する発電量の低下を抑制することが可能となる。
【0096】
また、本実施形態によれば、被膜141aは、一対の電極11、12のうち少なくとも一部を覆う。このため、被膜141aに覆われた電極表面に対し、空隙の発生を抑制することができる。これにより、電極表面の空隙に起因する発電量の低下を抑制することが可能となる。
【0097】
また、本実施形態によれば、例えば微粒子141は、第1微粒子141f、及び第1微粒子141fよりも小さい中央径D50sを有する第2微粒子141sを含んでもよい。この場合、第2微粒子141sが、第1微粒子141fの粒子間に入り込む可能性を高くすることができ、微粒子141の分散状態の変動を抑制することができる。これにより、発電量の低下の抑制を図ることが可能となる。
【0098】
また、本実施形態によれば、例えば第1微粒子141fの粒子数濃度は、第2微粒子141sの粒子数濃度よりも低くてもよい。即ち、電極11、12の間における微粒子141の充填度合いを高めることができる。このため、微粒子141の分散状態の変動をさらに抑制することが可能となる。これにより、発電量の低下のさらなる抑制を図ることが可能となる。
【0099】
(発電装置100:変形例)
次に、本実施形態における発電装置100の変形例について説明する。上述した実施形態と、変形例との違いは、保護膜4を備える点である。なお、上述した構成と同様の内容については、説明を省略する。
【0100】
本変形例における発電装置100は、例えば図6に示すように、保護膜4をさらに備える。保護膜4は、筐体2の内部20に設けられ、熱電素子1を覆う。保護膜4は、例えば複数の熱電素子1を一体に覆ってもよい。熱電素子1を覆う保護膜4を設けることで、熱電素子1の各電極11、12が酸化する可能性を、さらに抑制することができる。
【0101】
本変形例の場合、熱電素子1の第1面1fは、筐体2に接する。また、熱電素子1の第2面1s及び側面1tは、保護膜4に接する。保護膜4は、例えば熱電素子1の第2面1sから側面1tまで一体に設けられる。
【0102】
保護膜4として、絶縁性を有する材料が用いられる。保護膜4として、例えば絶縁性樹脂が用いられ、絶縁性樹脂の例としては、フッ素系絶縁性樹脂等の公知の材料を挙げることができる。なお、例えば保護膜4として、例えばアルミ等の金属が用いられてもよい。
【0103】
なお、例えば図7に示すように、保護膜4は、複数の熱電素子1毎に離間して設けられてもよい。例えばウェハレベルパッケージ技術を用いて複数の熱電素子1を形成する際、ウェハ上に形成された複数の熱電素子1に対して保護膜4を一体に形成する。その後、熱電素子1毎に分割したあと、筐体2に配置することで、熱電素子1毎に離間した保護膜4を形成することができる。
【0104】
本変形例によれば、保護膜4は、熱電素子1を覆う。このため、熱電素子1の各電極11、12の酸化を、さらに抑制することができる。これにより、さらなる発電量の安定化を図ることが可能となる。
【0105】
(熱電素子1:変形例)
次に、本実施形態における熱電素子1の変形例について説明する。上述した実施形態と、熱電素子1の変形例との違いは、電極保護膜が設けられる点である。なお、上述した構成と同様の内容については、説明を省略する。
【0106】
本変形例における熱電素子1では、一対の電極11、12の少なくとも何れかは、表面に設けられた電極保護膜を含む。電極保護膜は、例えば図8に示すように、第1電極保護膜11a及び第2電極保護膜12aの少なくとも何れかを含む。第1電極保護膜11aは、第1電極11の表面に設けられる。第2電極保護膜12aは、第2電極12の表面に設けられる。
【0107】
電極保護膜は、一対の電極11、12と、中間部14との間に設けられる。例えば電極保護膜が表面に設けられた電極11、12は、電極保護膜を介して中間部14と離間する。
【0108】
電極保護膜は、例えば0.1nm~1μm程度の厚みを有する。電極保護膜の厚みは、例えば0.1nm~500nmであることが好ましい。電極保護膜の厚みが0.1nm未満の場合、電極保護膜の形成が難しい。また、電極保護膜の厚みが500nmを超える場合、微粒子141と各電極11、12との間における電子の享受が困難となり得る。従って、電極保護膜の厚みが0.1nm~500nmであれば、微粒子141と各電極11、12との間における電子の享受に与える影響を抑えることができる。
【0109】
電極保護膜として、不導体材料が用いられる。不導体材料として、公知の高分子化合物が挙げられ、例えばポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸エステル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(メタクリル酸エステル)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、及びそれらの共重合体等が挙げられる。
【0110】
本変形例によれば、一対の電極11、12の少なくとも何れかは、表面に設けられた電極保護膜を含む。このため、電極11、12の表面に電極保護膜を設けない場合に比べて、経時に伴う電極11、12の酸化等の化学変化を抑制することができる。これにより、発電量のさらなる安定化を図ることが可能となる。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1 :熱電素子
1f :第1面
1s :第2面
1t :側面
2 :筐体
2a :上部
2b :下部
3 :配線
3a :正極
3b :負極
4 :保護膜
11 :第1電極
11a :第1電極保護膜
12 :第2電極
12a :第2電極保護膜
13 :支持部
14 :中間部
15 :第1基板
16 :第2基板
20 :内部
100 :発電装置
140 :空間
141 :微粒子
141a :被膜
141f :第1微粒子
141s :第2微粒子
142 :不導体層
X :第2方向
Y :第3方向
Z :第1方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8