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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157625
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】試験片の裁断装置と裁断方法
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/44 20060101AFI20231019BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20231019BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20231019BHJP
   B26D 7/20 20060101ALI20231019BHJP
   B26D 7/02 20060101ALN20231019BHJP
【FI】
B26F1/44 J
G01N1/28 B
G01N1/28 C
G01N1/04 X
B26D7/20
B26D7/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067650
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】522154674
【氏名又は名称】株式会社ハガタ屋
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜岡 達
【テーマコード(参考)】
2G052
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
2G052AD12
2G052AD32
2G052AD52
2G052BA15
2G052EC04
2G052EC22
3C021CA05
3C021GA01
3C060AA04
3C060AA06
3C060AA16
3C060AA20
3C060BA03
3C060BB05
3C060BB19
3C060BD01
3C060BE09
3C060BG03
3C060BG07
3C060BH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単かつ容易に、しかもタクトタイムを短縮して能率よく、高い寸法精度で試験片を裁断する。
【解決手段】受け台の弾性層50にセットされた試験材料6を、駆動機構で試験材料6に押圧する打抜き刃物1で試験片7に裁断する裁断装置で、裁断される試験材料6を弾性層50に押し付ける外側プッシャー2を備え、この外側プッシャー2でもって、試験片7の試験領域7Xを裁断する一対の平行裁断部の外側を押圧して試験材料6の位置ずれを阻止する状態で、試験材料6を試験片7に裁断する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を弾性層とする受け台と、
前記受け台の弾性層にセットされた試験材料を、試験領域を一定の横幅(W)とする試験片に裁断する打抜き刃物と、
前記打抜き刃物の刃先を、試験材料に押し付けて試験片に裁断する駆動機構と、
前記打抜き刃物で裁断される試験材料を前記弾性層に押し付ける外側プッシャーと、
前記外側プッシャーを試験材料の表面に押し付ける押圧機構とを備え、
前記打抜き刃物は、試験片の試験領域を裁断する一対の平行裁断部を含み、
前記外側プッシャーは、前記平行裁断部の外側に沿って試験材料を押圧する一対の試験領域押圧部を有し、
前記押圧機構が、前記外側プッシャーを試験材料の表面に押圧して、前記試験領域押圧部が前記一対の平行裁断部の外側の両側で試験材料を押圧し、
前記打抜き刃物が、前記受け台の前記弾性層にセットされた試験材料を試験片に裁断する試験片の裁断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試験片の裁断装置であって、
前記打抜き刃物が、試験領域を中央部に有するダンベル形状の試験片に試験材料を裁断する試験片の裁断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の試験片の裁断装置であって、
試験材料を前記弾性層に押し付ける前記試験領域押圧部の押圧面が、試験材料の表面に面接触状態で押圧する平面状である試験片の裁断装置。
【請求項4】
請求項1に記載の試験片の裁断装置であって、
前記打抜き刃物が外側刃面の片刃で、
前記外側プッシャーと、前記打抜き刃物の外側表面との間に、前記打抜き刃物と前記外側プッシャーとが相対的に往復運動できるガイド隙間を設けてなる試験片の裁断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の試験片の裁断装置であって、
前記ガイド隙間が、0.1mm以上であって5mm以下である試験片の裁断装置。
【請求項6】
請求項1に記載の試験片の裁断装置であって、
前記受け台の前記弾性層がゴム状弾性体である試験片の裁断装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の試験片の裁断装置であって、
前記打抜き刃物の前記駆動機構は、
前記打抜き刃物を固定してなる上下台と、
前記上下台を往復運動させる上下機構とを備え、
前記外側プッシャーの前記押圧機構が、
前記外側プッシャーを前記上下台から弾性的に押圧してなる弾性体と、
前記外側プッシャーが前記上下台から押し出される押出位置を特定するストッパ機構とを備え、
前記ストッパ機構の前記押出位置が、前記打抜き刃物の刃先面よりも突出位置である試験片の裁断装置。
【請求項8】
試験片に裁断する試験材料を受け台の表面の弾性層にセットするセット工程と、
前記セット工程で弾性層にセットされた試験材料を、試験領域を一定の横幅(W)とする試験片に裁断する打抜き工程とを含む試験片の裁断方法であって、
前記打抜き工程において、
試験領域を裁断する平行裁断部を有する打抜き刃物で試験材料を裁断すると共に、
前記打抜き刃物が試験材料を裁断するタイミングにおいて、
一対の前記平行裁断部の両方の外側を外側プッシャーの試験領域押圧部で前記弾性層に向けて押圧して、前記打抜き刃物で試験材料を試験片に裁断する試験片の裁断方法。
【請求項9】
請求項8に記載の試験片の裁断方法であって、
前記打抜き工程において、
外側刃面の片刃の前記打抜き刃物を使用し、前記打抜き刃物の外側表面と前記試験領域押圧部との間にガイド隙間を設けて、前記ガイド隙間を、0.1mm以上であって5mm以下として試験材料を裁断する試験片の裁断方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の試験片の裁断方法であって、
前記打抜き工程において、
前記打抜き刃物が、中央部を試験領域とするダンベル形状の試験片に試験材料を裁断する試験片の裁断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の試験材料を引張試験や衝撃試験等に使用する試験片に裁断する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の用途に使用される素材は、試験材料として試験片に裁断して、JISに基づいて引張試験や衝撃試験等の各種試験に使用される。たとえば、金属板、金属箔、プラスチック、ゴム状弾性体、異種素材の積層体等は、ダンベル形状や長方形の試験片に裁断して各種試験に使用される。裁断される試験片は、JIS規格に適合する寸法の外形に正確に裁断して引張試験等に使用される。
【0003】
試験材料をダンベル形状の試験片に裁断する裁断装置は開発されている。(特許文献1参照)
特許文献1に記載する裁断装置は、公開公報の[解決手段]に以下の構造として記載されている。
基台上に前後にスライド移動可能に配設されたスライドベースと、スライドベース上に水平回転可能に配設された回転ベースと、回転ベースの上に裁断される試験材料を固定保持するクランプ機構と、回転ベースの上方に位置して基台に取り付けられ、試験材料の打ち抜き加工を行うカッター装置とから試験片打ち抜き装置が構成される。カッター装置は、基台に固定されて下方に伸縮可能なシリンダロッドを有する昇降シリンダと、シリンダロッドの下端部に長手方向に延びて取り付けられた薄刃状の打抜き刃物とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-210899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の公報に記載される裁断装置は、直線状である1枚の打抜き刃物で試験材料を裁断するので、試験片の両側を別々に裁断する必要がある。ダンベル形状の試験片を裁断するには、試験材料又は打抜き刃物のいずれかを180度回転して2回に裁断する必要があるので、裁断装置は極めて複雑となり、さらにタクトタイムも長くなって能率よく多量生産できない。さらに、ダンベル形状の両側を別々に裁断するので、裁断されるダンベル形状の寸法誤差、とくに高い精度が要求される横幅を高い寸法精度で裁断することが難しく、また裁断装置にも高い精度が要求されて、装置コストが著しく高価となる欠点もある。
【0006】
さらに、従来の裁断装置は、直線状の打抜き刃物をダンベル形状の片側を裁断する形状に曲げ加工するために、打抜き刃物を薄い鋼板で製作するで寿命が短く、刃物交換などのメンテナンスに手間がかかる欠点もある。打抜き刃物を厚くして寿命を長くできるが、厚い打抜き刃物は、裁断時に刃先の切断面が試験片の幅方向にずれて、正確な寸法に裁断できなくなる。
【0007】
本発明は以上の欠点を解消することを目的として開発されたもので、本発明の大切な目的は、簡単な構造でタクトタイムを短縮しながら、高い寸法精度で試験片を裁断できる裁断装置と裁断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様に係る試験片の裁断装置は、表面を弾性層とする受け台と、受け台の弾性層にセットされた試験材料を、試験領域を一定の横幅(W)とする試験片に裁断する打抜き刃物と、打抜き刃物の刃先を、試験材料に押し付けて試験片に裁断する駆動機構と、打抜き刃物で裁断される試験材料を弾性層に押し付ける外側プッシャーと、外側プッシャーを試験材料の表面に押し付ける押圧機構とを備えている。打抜き刃物は、試験片の試験領域を裁断する一対の平行裁断部を含み、外側プッシャーは、平行裁断部の外側に沿って試験材料を押圧する一対の試験領域押圧部を有している。裁断装置は、押圧機構が外側プッシャーを試験材料の表面に押圧して、試験領域押圧部が一対の平行裁断部の外側の両側で試験材料を押圧し、打抜き刃物が受け台の弾性層にセットされた試験材料を試験片に裁断する。
【0009】
本発明のある態様に係る試験片の裁断方法は、試験片に裁断する試験材料を受け台の表面の弾性層にセットするセット工程と、セット工程で弾性層にセットされた試験材料を、試験領域を一定の横幅(W)とする試験片に裁断する打抜き工程とを含んでおり、打抜き工程において、試験領域を裁断する平行裁断部を有する打抜き刃物で試験材料を裁断すると共に、打抜き刃物が試験材料を裁断するタイミングにおいて、一対の平行裁断部の両方の外側を外側プッシャーの試験領域押圧部で弾性層に向けて押圧して、打抜き刃物で試験材料を試験片に裁断する。
【発明の効果】
【0010】
以上の裁断装置と裁断方法は、簡単な構造でタクトタイムを短縮しながら、高い寸法精度で試験片を裁断できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る裁断装置の概略正面図である。
図2図1に示す裁断装置の刃物ユニットを示す正面図である。
図3図2に示す刃物ユニットの底面図である。
図4図2に示す刃物ユニットの垂直縦断面図であって、図3のIV-IV線断面に相当する図である。
図5図2に示す刃物ユニットの垂直横断面図であって、図3のV-V線断面に相当する図である。
図6図2に示す刃物ユニットの垂直横断面図であって、図3のVI-VI線断面に相当する図である。
図7】外側プッシャーが試験材料を押圧する状態を示す要部拡大断面図である。
図8】打抜き刃物が試験材料を裁断する状態を示す要部拡大断面図である。
図9図1の裁断装置で裁断される試験片の一例を示す斜視図である。
図10】刃物ユニットの刃先部を研磨して先鋭な刃先に加工する状態を示す拡大断面図である。。
図11】刃物ユニットの他の一例を示す底面斜視図である。
図12】本発明の実施形態2に係る裁断装置の概略正面図である。
図13】従来の裁断装置の打抜き刃物がシート材を裁断する状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施態様に係る試験片の裁断装置は、以下の構成とすることができる。この実施形態の裁断装置は、表面を弾性層とする受け台と、受け台にセットされた試験材料を、試験領域を一定の横幅(W)とする試験片に裁断する打抜き刃物と、打抜き刃物を試験材料に押し付けて試験片に裁断する駆動機構と、打抜き刃物で裁断される試験材料を弾性層に押し付ける外側プッシャーと、外側プッシャーを試験材料の表面に押し付ける押圧機構とを備える。
【0013】
以上の裁断装置は、簡単な構造としながら、試験片を裁断するタクトタイムを短縮して、試験片の試験領域を高い寸法精度で裁断できる。それは、試験片の試験領域を裁断する打抜き刃物の平行裁断部が、試験領域の横幅(W)を高い寸法精度で裁断できるからである。試験領域を高い精度で試験片に裁断できるのは、打抜き刃物が試験材料を裁断する状態で、外側プッシャーが試験材料を押圧して裁断時の位置ずれを阻止するからである。裁断時に位置ずれしない試験材料は、裁断時に一対の平行裁断部の内側に引き込まれることがない。したがって、試験片の試験領域は、一対の平行裁断部の刃先間隔(D)と等しく高い寸法精度に裁断される。試験領域の横幅(W)の誤差は、試験片の引張強度の精度を低下させる原因となるので、試験領域の横幅(W)を高い精度で裁断できる以上の装置は、試験機でもって試験片の引張強度を高精度に測定できる特長を実現する。
【0014】
さらに、以上の裁断装置で裁断された試験片は、試験領域両側の残留応力による物性の変化も抑制できる。試験領域の残留応力は、試験片の引張試験において測定誤差の原因となるので、残留応力を抑制して裁断される試験片は、引張強度を正確に測定できる特長がある。
【0015】
図13は、打抜き刃物91で裁断される試験材料96が、試験片97の裁断時に一対の平行裁断部91Xの内側に引き込まれる状態を示す拡大断面図、図7及び図8は、試験材料6を外側プッシャー2で押圧して裁断する状態を示す拡大断面図である。外側プッシャーで押圧されない試験材料は、図13で示すように、刃先92が試験材料96を裁断する直前に、一対の平行裁断部91Xの内側に引き込まれて、刃先92の内側で上に突出するように変形する。打抜き刃物91は、試験材料96の表面を押す刃先92の接触圧が、裁断できる限界圧力を超えるタイミングで裁断が開始される。刃先92は、接触圧が限界圧力を超える位置まで降下して裁断を開始するが、このタイミングで受け台95の弾性層94が刃先92に押されて弾性変形する。弾性変形した弾性層94は試験材料96の表面を刃先92に押し付けて、刃先92と試験材料96との接触圧を強くする。刃先が試験材料の表面に接触した後、接触圧が限界圧力に増加するまでの間において、弾性層の弾性復元力が、打抜き刃物の内側領域の試験材料を押し上げる。弾性層の押し上げ力は、刃先が降下するに従って限界圧力に至るまで増加する。次第に増加する押し上げ力は、刃先と試験材料の表面を摺動させて、図13の矢印Aで示すように、試験材料96を打抜き刃物91の内側に移動して、打抜き刃物91の内側に突出させる。突出する試験材料96は、刃先92の内側において小さい曲率半径で湾曲して中央部を突出させる。この形状に変形して裁断される試験片97は、試験領域の実質的な横幅(W’)が一対の平行裁断部の刃先間隔(D)より広くなる。したがって、裁断された試験片は、試験領域の横幅が広くなって寸法精度が低下する。さらに、突出形状で裁断されるので、小さい曲率半径で湾曲する試験領域の両側に残留応力が発生する。さらに、金属板のように変形するが復元しない試験材料は、裁断された状態で試験領域の両側を平面状に維持できず、湾曲形状が残存する。
【0016】
外側プッシャーで押圧されて裁断される試験材料は、図7に示すように、外側プッシャー2が試験材料6の位置ずれを阻止するので、平行裁断部1Xの内側に移動することなく裁断される。内側に位置ずれしない試験材料6は、試験領域7Xの横幅(W)が、一対の平行裁断部1Xの刃先間隔(D)に等しくなる(図8参照)。さらに、位置ずれしない試験材料6は、平行裁断部1Xの内側で弾性層50が突出するのを、それ自体の張力Tで抑制する。平行裁断部1Xの間で、突出形状に変形しない状態で裁断される試験片7は、試験領域7Xの両側が湾曲されて発生する残留応力を抑制する。
【0017】
図13は、外側プッシャーで押圧されない試験材料が試験片に裁断される拡大断面図を示している。この図は、表面に弾性層94のある受け台95に載せた試験材料96を打抜き刃物91で裁断する状態を示している。さらにこの図は、打抜き刃物91が試験材料96の裁断を開始する直前の状態を示している。打抜き刃物91は、刃先92が試験材料96の表面に接触したタイミングからは裁断を開始しない。
【0018】
さらに、変形するが復元しない金属板などの試験材料は、図13の状態で裁断されると、裁断された試験片の両側縁が湾曲して平面状に裁断できない問題も発生する。さらにまた、刃先の接触圧が限界圧力まで増加して裁断される試験材料は、限界圧力において試験片の両側を小さい曲率半径で湾曲して裁断するので、この領域で残留応力が存在して、裁断された試験片の物性を変化させる原因となる。残留応力は強度に影響を与えるので、両側縁の残留応力は、試験片の引張試験などにおいて、測定誤差の原因となる。
【0019】
これに対して、本発明の裁断装置は、打抜き刃物が試験片の試験領域を裁断する一対の平行裁断部の外側に沿って試験材料を押圧する一対の試験領域押圧部を外側プッシャーに設けている。この裁断装置は、図7に示すように、打抜き刃物1が裁断するに先立って、一対の平行裁断部1Xの両側の領域を一対の試験領域押圧部2Xで押圧するので、試験材料6を両側を位置ずれしないように押さえて、試験材料6を両側方向にピンと張った状態とし、この状態で打抜き刃物1によって裁断できるので、試験領域の横幅(W)を高い寸法精度で裁断できる。
【0020】
本発明の他の実施態様に係る裁断装置は、打抜き刃物が、中央部を試験領域とするダンベル形状の試験片に試験材料を裁断することができる。
【0021】
以上の裁断装置は、ダンベル形状の試験片の試験領域を極めて高い寸法精度で、とくに試験領域の横幅の寸法精度を高くして裁断できる特長がある。試験領域の横幅の誤差は、引張強度の精度を低下させる原因となるので、試験領域の横幅を高い精度で裁断できる以上の裁断装置は、試験片の引張強度を高精度に測定できる特長を実現する。
【0022】
本発明の他の実施態様に係る裁断装置は、試験材料を弾性層に押し付ける試験領域押圧部の押圧面を、試験材料の表面に面接触状態で押圧する平面状とすることができる。
【0023】
以上の裁断装置は、外側プッシャーの試験領域押圧部が、平面状の押圧面でもって、試験材料の表面を面接触状態で受け台表面の弾性層に押し付けて試験材料の位置ずれを阻止するので、試験領域押圧部が試験材料を平面状に保持しながら広い面積で接触して効果的に位置ずれを阻止して、試験領域の横幅(W)を高い寸法精度で裁断できる。
【0024】
本発明の他の実施態様に係る裁断装置は、打抜き刃物を外側刃面の片刃として、外側プッシャーと打抜き刃物の平行裁断部の外側表面との間に、打抜き刃物と外側プッシャーとを相対的に往復運動できるガイド隙間を設けることができる。
【0025】
本発明の他の実施態様に係る裁断装置は、ガイド隙間を、0.1mm以上であって5mm以下とすることができる。
【0026】
本発明の他の実施態様に係る裁断装置は、受け台の弾性層をゴム状弾性体とすることができる。
【0027】
本発明の他の実施態様に係る裁断装置は、打抜き刃物の駆動機構が、打抜き刃物を固定してなる上下台と、上下台を往復運動させる上下機構とを備え、外側プッシャーの押圧機構が、外側プッシャーを上下台から弾性的に押圧してなる弾性体と、外側プッシャーが上下台から押し出される押出位置を特定するストッパ機構とを備え、ストッパ機構の押出位置が、打抜き刃物の刃先面よりも突出位置とすることができる。
【0028】
以上の裁断装置は、打抜き刃物が試験材料を裁断しない状態で、外側プッシャーを弾性体でもって打抜き刃物の刃先よりも突出位置に配置するので、打抜き刃物の刃先を外側プッシャーで被覆して刃先を保護できると共に、作業者が不意に刃先に触れるのを防止して安全に使用できる。
【0029】
本発明の一実施態様に係る試験片の裁断方法は、試験片に裁断する試験材料を受け台表面の弾性層にセットするセット工程と、セット工程で弾性層にセットされた試験材料を、試験領域を一定の横幅(W)とする試験片に裁断する打抜き工程とを含み、打抜き工程において、試験領域を裁断する平行裁断部を有する打抜き刃物で試験材料を裁断すると共に、打抜き刃物が試験材料を裁断するタイミングにおいて、一対の平行裁断部の両方の外側を外側プッシャーの試験領域押圧部で弾性層に向けて押圧して、打抜き刃物で試験材料を試験片に裁断する。
【0030】
以上の裁断方法は、試験片の試験領域の横幅(W)を高い寸法精度で裁断できる特長がある。それは、以上の裁断方法が、打抜き刃物が試験材料を裁断するタイミングにおいて、一対の平行裁断部の両方の外側を外側プッシャーの試験領域押圧部で弾性層に向けて押圧して、打抜き刃物で試験材料を試験片に裁断するからである。
この裁断方法は、外側プッシャーの試験領域押圧部が一対の平行裁断部の外側の両側で試験材料を押圧した状態で打抜き刃物で試験材料を裁断するので、裁断時の位置ずれを阻止して、試験領域の横幅(W)を高い寸法精度で裁断できる。
【0031】
本発明の他の実施態様に係る裁断方法は、打抜き工程において、外側刃面の片刃の打抜き刃物を使用し、打抜き刃物の外側表面と試験領域押圧部との間にガイド隙間を設けて、ガイド隙間を0.1mm以上であって5mm以下として試験材料を裁断することができる。
【0032】
本発明の他の実施態様に係る裁断方法は、打抜き工程ににおいて、打抜き刃物が、中央部を試験領域とするダンベル形状の試験片に試験材料を裁断することができる。
【0033】
以下、本発明の実施形態にかかる裁断装置と裁断方法を図面に基づいてより詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0034】
(実施形態1)
図1ないし図8に示す試験材料を試験片に裁断する裁断装置100は、試験材料6を載せて裁断する表面を弾性層50とする受け台5と、受け台5に向かって往復運動して試験材料6を、試験片7に裁断する打抜き刃物1と、打抜き刃物1を、受け台5の表面に向かって移動させる駆動機構4と、打抜き刃物1で裁断される試験材料6を打抜き刃物1の外側で受け台5の弾性層50に押し付ける外側プッシャー2と、外側プッシャー2を試験材料6に押圧する押圧機構8とを備える。
【0035】
(試験材料6)
本発明の裁断装置と裁断方法は、裁断する試験材料6の材質、厚さ、形状をなど特定するもでないが、例えばプラスチック、ゴム状弾性体、金属板、さらに異種材料の積層体などで、厚さは1mm以下の薄膜、1~3mmのシート状、3ないし50mmの板材である。ただ、本発明は裁断する試験材料を特定するものでなく、引張試験などに使用される全ての材質や厚さの試験材料を使用することができる。本発明は、種々の試験材料を高い寸法精度で裁断して、裁断された試験片の局所的な残留応力や歪みを防止することを目的とすることから、主として可撓性のある材質の試験材料を裁断するが、たとえば、セラミック等のようにほとんど可撓性のない無機材質の試験材料であっても破損を防止して裁断できるので、試験材料を可撓性のある材質に特定するものではない。
【0036】
(試験片7)
以下、試験材料をダンベル形状の試験片に裁断する具体例を例示するが、本発明は試験片の形状にダンベル形状に特定するものではない。図9に示す試験片7は、両端を掴んで材料の引張試験などに使用されるので、両端のチャッキング部7Yの間に一定の横幅(W)とする試験領域7Xを設けている。
試験片7は、試験領域7Xに作用する引張力などを測定するので、試験領域7Xには高い寸法精度が要求される。
試験片7は、チャッキング部7Yを試験機で掴んで試験領域7Xの強度を測定するので、横幅(W)の狭い試験片7は、両端に横幅の広いチャッキング部7Yを設けて、全体をダンベル形状としている。試験領域の幅が広くて、チャッキングできる試験片は、全体の形状を長方形として、両端部を試験領域と同じ横幅のチャッキング部とする。
【0037】
(受け台5)
受け台5は金属製で表面を弾性層50として上面を平滑な平面として水平姿勢に配置している。ただし、受け台5は、好ましくは表面を弾性層50とするが、全体を弾性体とすることもできる。金属製の受け台5は、図1に示すように、上面の裁断面に弾性層50を積層している。弾性層50は、裁断時に、試験材料6を通過した打抜き刃物1の刃先10を食い込ませて、打抜き刃物1の刃先10の損傷を防止して、試験片を完全に分離して裁断する。弾性層50は、好ましくは厚さを5~30mmとする弾性体である。表面を弾性層50とする受け台5は、完全には同一平面に配置されない刃先10の打抜き刃物1で、試験片を完全に試験材料から切り離しできる。打抜き刃物1は、刃先10が同一平面となるように、先端部を研磨して製作されるが、刃先10を完全に同一平面に配置しながら、理想的な刃先形状に研磨するには極めて高い加工精度が要求される。それは、打抜き刃物1は、刃先10となる先端部の表面を、外側刃面の打抜き片刃においては、外側表面を研磨して先端縁を先鋭な刃先10とするが、先鋭な刃先10を設けながら、刃先10を同一平面に加工するのは極めて難しいからである。
【0038】
図10の断面図は、同一平面の刃先部15を研磨して外側刃面11を設けて先鋭な刃先10に加工する状態を示している。この図において実線Aは、理想的な加工ラインを示している。実線Aは、先端面を研磨することなく、先鋭な刃先10を設けているが、現実の加工においては、実線Aでの研磨加工は現実にはほとんど不可能である。とくに、線状に伸びる刃先10全体を実線Aの状態で研磨して先鋭な刃先10を設けることはできない。先鋭な刃先10とするには、鎖線Bで示すように、先端縁を僅かに切除する状態で研磨する必要があるが、この位置まで研磨すると、刃先10が同一平面に加工された位置からずれる弊害がある。刃先10は、鎖線Cの位置まで研磨して、刃先10を同一平面に配置できるが、この位置までの研磨では、先鋭な刃先10に加工できない。以上のように、先鋭な刃先10を設けることと、刃先10を同一平面に配置することは互いに相反するので、両方を満足するのは極めて難しい。とくに、打抜き刃物1は試験材料を確実に裁断するために、先鋭な刃先10に加工する必要があるので、刃先10を同一平面に配置するのは現実的でない。
【0039】
表面を弾性層50とする受け台5は、刃先10を同一平面としない打抜き刃物1で試験材料6から試験片7を確実に切り離すことができる。それは、同一平面に配置されない刃先10の一部を弾性層50に食いませて、試験材料6を裁断できるからである。弾性層50は、刃先10を損傷させることなく表面から内部に向かって食い込む物性と、試験材料を平面状に維持して、打抜き刃物1で試験片7を確実に切り離す物性のゴム状弾性体が使用される。
【0040】
表面を以上の弾性層50とする受け台5は、打抜き刃物1で試験材料6を打ち抜きする状態で、打抜き刃物1の刃先10を弾性層50に密着させ、あるいは打抜き刃物1の刃先10を弾性層50の表面に食い込ませて、試験材料6から試験片7の全周を綺麗に裁断して切り離しできる。ただし、弾性層50のゴム状弾性体には、天然または合成ゴムや、プラスチック製のエスラストマーが使用できる。
【0041】
(打抜き刃物1)
打抜き刃物1は、図2図8に示すように、下端縁の刃先10で試験材料6を試験片7に裁断する筒状で、好ましくは厚さを2mm以上とする金属板で製作される。打抜き刃物1は、焼き入れできる鋼材で製作されるが、好ましくは、加工性に優れた炭素鋼が適している。炭素鋼は、要求される硬さと脆さとを考慮して炭素の含有量を最適値に調整する。打抜き刃物1の金属板は、炭素の含有量を多くして硬くできる。ただ、炭素の含有量が多くなると脆くなるので、刃物に加工される鋼材の炭素の含有量は、例えば0.4%以上であって1.4%以下、好ましくは0.45%以上であって0.7%以下とする。
【0042】
打抜き刃物1は、試験片7の試験領域7Xを裁断する部分に、一対の平行裁断部1Xを設けている。打抜き刃物1は、平行裁断部1Xの刃先間隔(D)を高い寸法精度で加工して、試験片7の試験領域7Xを正確な横幅(W)に裁断する。ダンベル形状の試験片7を裁断する打抜き刃物1は、試験領域7Xを裁断する平行裁断部1Xの両端に、チャッキング部7Yを裁断する端部裁断部1Yを設けている。ダンベル形状の試験片7は、試験領域7Xからチャッキング部7Yに向かって、横幅を次第に広くしているので、打抜き刃物1は、平行裁断部1Xから端部裁断部1Yに向かって刃先間隔(D)を次第に広くしている。筒状の打抜き刃物1は、試験材料6から試験片7を裁断して分離できる。この打抜き刃物1は、両側の端部裁断部1Yの端縁を刃先10で連結している。
【0043】
打抜き刃物1は、図7及び図8の拡大断面図に示すように、筒状の金属板の先端部を、砥石やヤスリで研磨して片刃の刃先10に加工している。片刃の刃先10は、筒状の金属板の下端部の外周面を研磨して外側刃面11を設けている。打抜き刃物1は、片刃の内周面も研削し研磨して修正刃面を設けることができる。打抜き刃物1は、外側刃面11のみの片刃、あるいは内側に僅かに修正刃面を設けた片刃で、先端縁を刃先10として、刃先10で、試験材料6を試験片7に裁断する。
【0044】
内側に修正刃面を設けている打抜き刃物は、図示しないが、片刃の刃先が、筒状内周面から外側に偏在する。この刃先は、筒状内周面と刃先の間隔である偏在間隔と、筒状外周面と刃先との間隔である片刃間隔とを調整する。修正刃面を設けている打抜き刃物は、厚い試験材料を裁断して、試験片の試験領域の横幅(W)を、厚さ方向に変化なく正確な寸法に裁断できるように、偏在間隔を設定する。ダンベル形状の試験片を裁断する打抜き刃物は、裁断される試験領域の横幅(W)が、厚さ方向にずれることなく正確な寸法で裁断できるように、平行裁断部に修正刃面を設けて、平行裁断部の刃先の偏在間隔を設定する。
【0045】
(駆動機構4)
駆動機構4は、図1に示すように、打抜き刃物1を垂直方向に往復運動させて受け台5の弾性層50に載せた試験材料6を裁断して試験片7に打ち抜きする。駆動機構4は、打抜き刃物1を固定している上下台41と、この上下台41を上下に往復運動させるシリンダ42とを備える。打抜き刃物1は、上下台41の下面に垂直姿勢に連結され、シリンダ42が上下台41を上下に往復運動して、受け台5にセットしている試験材料6を試験片7に打ち抜きする。打抜き刃物1が試験材料6を裁断する工程では、外側プッシャー2は、図7及び図8に示すように、試験材料6の表面を弾性層50に押圧している。
【0046】
図1に示す裁断装置100の駆動機構4は、ロッド42aを伸縮させるシリンダ42を、ロッド42aが下向きの垂直姿勢に配置して、ロッド42aの下端を上下台41の中央部に連結している。さらに、駆動機構4は、上下台41の両端部に対向して、一対のガイド機構43を備えており、ガイド筒部43bに挿通されたガイドロッド43aを垂直姿勢で配置して、ガイドロッド43aの下端を上下台41の両端部に連結している。以上の駆動機構4は、シリンダ42がロッド42aを伸縮する状態で、上下台41を水平姿勢に保持しながら上下に往復運動させる。
【0047】
上下台41は、打抜き刃物1と外側プッシャー2を連結しているベースプレート30と、このベースプレート30を脱着自在に連結している本体部45とを備える。ベースプレート30は平面状の金属板で、図2及び図4に示すように、本体部45に脱着自在に連結する連結部31を上面に固定して、打抜き刃物1と外側プッシャー2を下面に連結している。打抜き刃物1は、溶接してベースプレート30に固定され、外側プッシャー2は押圧機構8の弾性体20を介してベースプレート30に連結している。この構造は、打抜き刃物1と外側プッシャー2とをベースプレート30に連結して刃物ユニット3として、便利に交換できる構造としている。
【0048】
(刃物ユニット3)
図2図6の裁断装置100は、ベースプレート30に打抜き刃物1と外側プッシャー2を連結して刃物ユニット3として、刃物ユニット3をシリンダ42で上下に移動される上下台41の本体部45に脱着自在に連結している。図2は刃物ユニット3の正面図、図3は刃物ユニットの底面図、図4は刃物ユニットの垂直縦断面図、図5は試験片7の中央部の試験領域7Xにおける刃物ユニットの横断面図、図6は試験片7の端部のチャッキング領域7Yにおける刃物ユニットの横断面図をそれぞれ示している。これ等の図に示す刃物ユニット3は、連結部31を上面に固定してなるベースプレート30と、ベースプレート30の下面に固定してなる筒状の打抜き刃物1と、打抜き刃物1の筒状外周面13の外側に相対的に往復運動自在に配置してなる外側プッシャー2を備えている。外側プッシャー2は、弾性体20を介してベースプレート30に連結されており、外側プッシャー2を打抜き刃物1の刃先10から弾性的に突出させている。
【0049】
(外側プッシャー2)
外側プッシャー2は、打抜き刃物1が試験材料6を裁断するタイミングで、試験材料6が位置ずれしないように受け台5の弾性層50に押し付ける。打抜き刃物1で裁断される試験材料6は、裁断されるタイミングで打抜き刃物1の内側に移動する位置ずれ力が作用する。打抜き刃物1に設けている一対の平行裁断部1Xの内側で突出する弾性層50が、試験材料6を押し上げるからである。試験材料6の位置ずれは、裁断される試験片7の試験領域7Xの横幅(W)の寸法精度を低下させる。外側プッシャー2は、平行裁断部1Xの外側に沿って試験材料6を押圧する一対の試験領域押圧部2Xを有している。外側プッシャー2の一対の試験領域押圧部2Xは、一対の平行裁断部1Xの外側の両側で試験材料6の表面を弾性層50に押し付けて、裁断時の位置ずれを阻止して、試験領域7Xの寸法精度の低下を防止する。打抜き刃物1が試験材料6を裁断するタイミングで、外側プッシャー2は試験材料6の位置ずれを阻止するので、試験材料6が位置ずれしない押圧力で試験材料6の表面を弾性層50に押し付ける。平行裁断部1Xの外側領域で、上面が外側プッシャー2で弾性層50に押し付けられる試験材料6は、外側プッシャー2の表面との摩擦抵抗と、弾性層50の表面との摩擦抵抗で位置ずれが阻止される。摩擦抵抗は、表面の摩擦係数と押圧力の積に比例して増加するので、外側プッシャー2が試験材料6を押圧する力は、打抜き刃物1で裁断される試験材料6が摩擦抵抗で位置ずれしない押圧力に力に設定される。
【0050】
外側プッシャー2は、裁断される試験材料6の表面を平面状の押圧面2aで押圧する。外側プッシャー2は、上下方向に往復運動自在にベースプレート30に連結されている。ベースプレート30は、弾性体20を介して外側プッシャー2を試験材料6の表面に押圧する。この外側プッシャー2は、弾性体20の弾性復元力で試験材料6の表面を押圧するので、弾性体20のバネ定数で外側プッシャー2の押圧力を調整できる。弾性体20のバネ定数を大きくして、外側プッシャー2の押圧力を強くできる。また、弾性体20は変形量に比例して弾性復元力が増加するので、外側プッシャー2が試験材料6の表面を押圧する状態における、弾性体20の変形量を大きくして試験材料6の押圧力も強くできる。外側プッシャー2は、打抜き刃物1の刃先10が試験材料6の裁断を開始するタイミングでの位置ずれを阻止するので、刃先10が試験材料6の裁断を開始するタイミングにおける弾性体20の変形量を考慮して、弾性体20のバネ定数を最適値に設定して、試験材料6の位置ずれを阻止できる。
【0051】
図2図6に示す外側プッシャー2は、打抜き刃物1を内側に配置する枠形状であって、その内形を打抜き刃物1の筒状外周面13に沿う形状、具体的には、試験片7を裁断する打抜き刃物1の外形よりも僅かに大きい内形としている。外側プッシャー2は、下面を押圧面2aとしており、打抜き刃物1の外側にあって、打抜き刃物1に対して相対的に上下方向に往復運動する。外側プッシャー2は、打抜き刃物1の刃先10が試験材料6の表面に接触しない位置において、弾性体20に押し出されて、打抜き刃物1の刃先10から押圧面2aを突出位置に配置している。また、外側プッシャー2の内周面と打抜き刃物1の外周面との間には、外側プッシャー2を打抜き刃物1に対して往復運動させるためのガイド隙間34を設けている。
【0052】
枠形状の外側プッシャー2は、一対の縦枠2mと一対の横枠2nとを直角に連結している。両側の縦枠2mは、打抜き刃物1の平行裁断部1Xと対向する領域の横幅を広くしており、この部分の内周面を平行裁断部1Xの外側面に接近させて、一対の試験領域押圧部2Xとしている。両端の横枠2nは横幅を等しくしている。外側プッシャー2は、外形を長方形状とすると共に、四隅の角を削って湾曲部を設けることで、安全性を向上している。また、ベースプレート30についても、外側プッシャー2と同様に外形を長方形状として四隅の角を削って湾曲部を設けることで、安全性を向上している。図に示す刃物ユニット3は、ベースプレート30と外側プッシャー2の外形をほぼ等しくしている。
【0053】
図3に示す外側プッシャー2は、内形を打抜き刃物1の筒状外周面13に沿うダンベル形状として、打抜き刃物1の外周面との間にガイド隙間34を設けている。外側プッシャー2は、打抜き刃物1の平行裁断部1Xとの間のガイド隙間34を狭くして、試験領域7Xに裁断される領域において試験材料6の位置ずれを有効に阻止できるので、平行裁断部1Xとの間のガイド隙間34は、例えば5mm以下、好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下としている。ガイド隙間34が狭すぎると、打抜き刃物1と外側プッシャー2とが接触して、両者のスムーズな上下方向の相対運動が阻害されるので、平行裁断部1Xと外側プッシャー2との間のガイド隙間34は、例えば0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上とする。外側プッシャー2の内面を、打抜き刃物1の平行裁断部1Xの外側に接近して、平行裁断部1Xの外側に接近した領域において試験材料6の表面を押圧する外側プッシャー2は、試験領域7Xの横幅を高い寸法精度で裁断できる。
【0054】
外側プッシャー2は、例えば、プラスチック板や金属板が使用できる。プラスチック製の外側プッシャー2は、たとえば、エンジニアリングプラスチックを所定の厚さに成形した板材が使用できる。このようなプラスチック板として、高強度で汎用性が高いナイロン、例えばMCナイロンが使用できる。ただ、ナイロン以外のプラスチックも使用できる。とくにプラスチック製の外側プッシャー2とすることで、全体の厚さを厚くしながら軽量にできる。また、厚く成形された外側プッシャー2は、打抜き刃物1の刃先10から弾性的に突出させた状態で刃先10を確実に被覆できるので、作業者が刃先10に触れるのを防止して安全に使用できる。プラスチック製の外側プッシャー2は、刃先10からの突出量を考慮して、その厚さを5mm~20mm、好ましくは8mm~15mmとして強度を保証しながら、安全性を向上できる。
【0055】
外側プッシャー2は、打抜き刃物1を固定しているベースプレート30に連結されて、打抜き刃物1と一緒に上下に往復運動される。打抜き刃物1をベースプレート30に固定し、外側プッシャー2を上下に往復運動できるようにベースプレート30に連結して、打抜き刃物1とベースプレート30と外側プッシャー2とで刃物ユニット3としている。外側プッシャー2は、連結ロッド23と弾性体20からなる押圧機構8を介してベースプレート30に連結している。弾性体20は圧縮されて、外側プッシャー2を試験材料6の表面に押圧する。連結ロッド23は、外側プッシャー2の両端部と両側部をベースプレートに連結して、外側プッシャー2を水平姿勢で上下方向に往復運動させる。図3に示すように、外側プッシャー2の前後左右の4カ所を連結ロッド23でベースプレート30に連結することで、外側プッシャー2をぐらつかせることなく安定して水平姿勢で上下方向に往復運動できる。
【0056】
(押圧機構8)
外側プッシャー2を試験材料6の表面に押し付ける押圧機構8は、連結ロッド23と弾性体20を備える。連結ロッド23は、外側プッシャー2に下端を固定して、上端部をベースプレート30の貫通穴30aに往復運動自在に挿入している。連結ロッド23は上端にストッパ機構24を有し、このストッパ機構24がベースプレート30の上面に接触して、外側プッシャー2の刃先10からの突出位置を特定する。外側プッシャー2の突出位置は、例えば刃先10から約2mm以上であって10mm以下、好ましくは3mm以上であって8mm以下に設定する。
【0057】
連結ロッド23は先端部にネジ部23aを設けて、ストッパ機構24をネジ部23aにねじ込んでいるナット24aとして、外側プッシャー2とを簡単な構造でベースプレート30に連結し、さらに突出位置を簡単に最適位置に調整できる。連結ロッド23のネジ部23aは、外側プッシャー2に設けた挿通孔25に下から上に挿通して配置できる。連結ロッド23のネジ部23aは、ネジ頭23bが外側プッシャー2の下面から突出しないように、外側プッシャー2の下面に凹部26を設けて、凹部26にネジ頭23bを案内してしている。ストッパ機構24のナット24aは、ベースプレート30から突出する連結ロッド23のネジ部23aにねじ込まれている。ストッパ機構24は、複数のナット24aをねじ込んでダブルナットとして、往復運動して位置ずれしない構造にできる。この連結ロッド23は、ナット24aのねじ込み位置を調整して、外側プッシャー2の刃先10からの突出位置を最適値に設定できる。
【0058】
(弾性体20)
弾性体20は押しバネのコイルスプリング20aで、位置ずれしないように連結ロッド23を挿入して、ベースプレート30と、外側プッシャー2の間に配置される。弾性体20はコイルスプリング20aの押しバネで、外側プッシャー2を刃先10から弾性的に押し出している。弾性体20のコイルスプリング20aは、圧縮された状態で外側プッシャー2とベースプレート30との間に配設される。弾性体20はバネ定数を大きくして、外側プッシャー2が試験材料6を押圧する圧力を強くできる。例えば、外側プッシャー2が試験材料6を加圧して裁断する状態で、試験材料6の表面を平面状に押圧する圧力は、弾性体20のバネ定数と、ストッパ機構24が弾性体20を圧縮する位置を調整して最適値に設定できる。
【0059】
(外側プッシャー2の他の例)
以上の外側プッシャー2は、底面形状を枠形状として、一対の縦枠2mと一対の横枠2nとを直角に連結してなる構造としているが、外側プッシャーは、必ずしも枠形状とする必要はなく、一対の平行裁断部1Xの外側に沿う一対の外側プッシャー2として打抜き刃物1の両側に配置することもできる。図11に示す刃物ユニット3は、ベースプレート30に打抜き刃物1を固定すると共に、この打抜き刃物1の両側に一対の外側プッシャー2を配置している。各外側プッシャー2は、平行裁断部1Xと対向する領域に試験領域押圧部2Xを設けている。すなわち、図に示す刃物ユニット3は、打抜き刃物1の両側に一対の外側プッシャー2を設けて、一対の平行裁断部1Xの外側に沿う一対の試験領域押圧部2Xを設けている。図の外側プッシャー2は、平行裁断部1Xと対向する試験領域押圧部2Xの横幅を広くして、この部分の内周面を平行裁断部1Xの外側面に接近させている。
【0060】
一対の外側プッシャー2は、押圧機構8を介してベースプレート30に連結されている。図11の刃物ユニット3は、各外側プッシャー2が独立して試験材料6の表面を押圧できるように、それぞれ押圧機構8を介してベースプレート30に連結している。図の刃物ユニット3は、各外側プッシャー2の左右と中間の3カ所を連結ロッド23を介してベースプレート30に連結しており、各連結ロッド23に挿通したコイルスプリング20aを介して外側プッシャー2を弾性的に押圧している。外側プッシャー2の左右と中間の3カ所を連結する連結ロッド23は、底面視において三角形の頂点の位置に配置することで、外側プッシャー2をぐらつかせることなく安定して水平姿勢で上下方向に往復運動できる。ただ、図示しないが、一対の外側プッシャーは、打抜き刃物の外側に沿って配置される枠形状の移動プレートを介して打抜き刃物の対向する両側に配置することもできる。この構造は、枠形状の移動プレートを複数の連結ロッドを介してベースプレートに連結することで、枠体と一対の外側プッシャーとを一体構造として、打抜き刃物の外周に沿って平行移動させることができる。
【0061】
以上の構造の刃物ユニット3も、両側の外側プッシャー2が、打抜き刃物1の先端方向に押圧機構8で押し出される状態で配置される。この刃物ユニット3も試験材料を打抜き刃物1で裁断する際には、打抜き刃物1の刃先10に先立って、両側の外側プッシャー2が試験材料の表面を押圧する。試験材料は、一対の平行裁断部1Xの両側の領域が一対の試験領域押圧部2Xで押圧された状態で打抜き刃物1によって打ち抜かれて、高い寸法精度で裁断される。
【0062】
以上の裁断装置100は、以下の工程で試験材料6を打ち抜きして試験片7に裁断する。
(1)シリンダ42で上下台41を上昇位置に配置して刃物ユニット3を上下台41に連結する。
(2)受け台5の弾性層50に試験材料6をセットする。
(3)シリンダ42で上下台41を降下する。
(4)降下する上下台41は、図7に示すように、打抜き刃物1の刃先10が試験材料6に接近する位置で、外側プッシャー2が一対の平行裁断部1Xの外側で試験材料6の表面に接触する。
この状態でさらに上下台41が降下すると、弾性体20が圧縮されて、外側プッシャー2が試験材料6を弾性層50に押圧する。
外側プッシャー2は、打抜き刃物1の刃先10が試験材料6を裁断する状態で、試験材料6の位置ずれを阻止する圧力で試験材料6の表面を弾性層50に押圧する。
(5)この状態で、さらに上下台41が降下すると、図8に示すように、打抜き刃物1の刃先10が垂直方向に移動して試験材料6を裁断する。このタイミングで、外側プッシャー2は、試験材料6を押圧して位置ずれしない状態に保持する。刃先10は位置ずれしない試験材料6を裁断して、試験領域7Xの横幅(W)を正確な寸法で試験片7に裁断する。
【0063】
(実施形態2)
この実施形態の裁断装置は、打抜き刃物と外側プッシャーを別々の駆動機構で駆動する以外、実施形態1と同様の機構で試験材料を試験片に裁断する。この実施形態の裁断装置200は、図12に示すように、打抜き刃物1の駆動機構4と、外側プッシャー2の押圧機構8が、別々に独立して上下に往復運動して、打抜き刃物1と外側プッシャー2を上下に往復運動させる。外側プッシャー2の押圧機構8は、図7に示すように、外側プッシャー2を試験材料6の表面に押し付けて、試験材料6が位置ずれしない位置に保持する。押圧機構8が、外側プッシャー2をこの位置に停止する状態で、駆動機構4が打抜き刃物1を図8で示す位置まで降下して、試験材料6を試験片7に裁断する。裁断される試験材料6は、外側プッシャー2で位置ずれが阻止されているので、打抜き刃物1は、試験領域7Xの横幅を、正確に打抜き刃物1の刃先間隔(D)とする試験片7に裁断される。
【0064】
打抜き刃物1の駆動機構4のシリンダ42と、外側プッシャー2の押圧機構8のシリンダ46は、コントローラー47に制御されて、独立して外側プッシャー2と打抜き刃物1を上下方向に往復運動させる。コントローラー47は、駆動機構4のシリンダ42と押圧機構8のシリンダ46を制御して、以下の工程で試験材料6を試験片7に打ち抜きする。
【0065】
(1)駆動機構4のシリンダ42と押圧機構8のシリンダ46を上昇位置に配置する。刃物ユニット3は上下台41に連結されて、外側プッシャー2は押圧機構8のシリンダ46に連結されている。
(2)受け台5の弾性層50に試験材料6をセットする。
(3)押圧機構8のシリンダ46で外側プッシャー2を降下する。外側プッシャー2は、一対の平行裁断部1Xの外側で試験材料6の表面を押圧する。外側プッシャー2の降下位置は、図7で示すように、試験材料6を押圧して摩擦抵抗で位置ずれを阻止する位置とする。押圧機構8は、外側プッシャー2が試験材料6の表面を押圧する圧力を制御して位置ずれを阻止し、あるいは、試験材料6の表面を押圧する上下方向の位置を制御して、位置ずれを阻止することができる。圧力を制御する押圧機構8は、シリンダ46に供給する油圧や空気圧を制御して、外側プッシャー2が試験材料6の表面を押圧する圧力を制御できる。上下位置を制御する押圧機構8は、外側プッシャー2が降下位置を特定するストッパ(図示せず)を設けて、試験材料6の表面を押圧する位置を制御できる。
(4)外側プッシャー2が試験材料6の表面を押圧して位置ずれを阻止する状態に保持して、駆動機構4で打抜き刃物1を降下させる。降下する打抜き刃物1は、図8の拡大断面図に示すように、刃先10が試験材料6を裁断する。このタイミングで、外側プッシャー2が試験材料6を押圧して位置ずれしない状態に保持しているので、刃先10は位置ずれしない試験材料6を裁断して、試験領域7Xの横幅(W)を正確な寸法で試験片7に裁断する。
(5)試験材料を試験片に裁断した後、駆動機構4が打抜き刃物1を上昇し、押圧機構8が外側プッシャー2を上昇して、裁断された試験片7を打抜き刃物1から分離する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、種々の材質や厚さの試験材料を裁断して、引張試験や衝撃試験等に用いられる試験片に裁断する裁断装置及び裁断方法して好適に使用できる。
【符号の説明】
【0067】
100、200…裁断装置
1…打抜き刃物
1X…平行裁断部
1Y…端部裁断部
2…外側プッシャー
2X…試験領域押圧部
2a…押圧面
2m…縦枠
2n…横枠
3…刃物ユニット
4…駆動機構
5…受け台
6…試験材料
7…試験片
7X…試験領域
7Y…チャッキング部
8…押圧機構
10…刃先
11…外側刃面
13…筒状外周面
14…筒状内周面
15…刃先部
20…弾性体
20a…コイルスプリング
23…連結ロッド
23a…ネジ部
23b…ネジ頭
24…ストッパ機構
24a…ナット
25…挿通孔
26…凹部
30…ベースプレート
30a…貫通穴
31…連結部
34…ガイド隙間
41…上下台
42…シリンダ
42a…ロッド
43…ガイド機構
43a…ガイドロッド
43b…ガイド筒部
45…本体部
46…シリンダ
47…コントローラー
50…弾性層
91…打抜き刃物
91X…平行裁断部
92…刃先
93…外側刃面
94…弾性層
95…受け台
96…試験材料
97…試験片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13