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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157643
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸蔵還元型触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/58 20060101AFI20231019BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231019BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20231019BHJP
   C07C 1/22 20060101ALI20231019BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231019BHJP
【FI】
B01J23/58 Z
B01J35/10 301G
C07C9/04
C07C1/22
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067679
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 哲賜
(72)【発明者】
【氏名】松本 満
(72)【発明者】
【氏名】米倉 弘高
(72)【発明者】
【氏名】酒井 真利
(72)【発明者】
【氏名】菊川 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】青木 正和
(72)【発明者】
【氏名】平林 武史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 一伸
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BB04A
4G169BC01A
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169CB02
4G169CB62
4G169CC22
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EB18Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC07X
4G169EC08X
4G169EC14X
4G169EC15X
4G169EC15Y
4G169EC25
4H006AA02
4H006AC90
4H006BA02
4H006BA23
4H006BE20
4H006BE41
4H039CA11
4H039CB20
(57)【要約】
【課題】低温においても優れたCO吸蔵性能とメタン化触媒活性を発現するCO吸蔵還元型触媒を提供すること。
【解決手段】金属酸化物からなり、平均細孔径が3~50nmであり、細孔容積が0.3~1.5cm/gである多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されたルテニウムと、前記多孔質担体に担持されたアルカリ金属とを含有する触媒であり、
前記ルテニウムの含有量が、前記多孔質担体とルテニウムとの合計含有量100質量部に対して、1~5質量部であり、
前記アルカリ金属の含有量が、前記触媒全体に対して、酸化物換算で2.8~4.5質量%である
ことを特徴とする二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物からなり、平均細孔径が3~50nmであり、細孔容積が0.3~1.5cm/gである多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されたルテニウムと、前記多孔質担体に担持されたアルカリ金属とを含有する触媒であり、
前記ルテニウムの含有量が、前記多孔質担体とルテニウムとの合計含有量100質量部に対して、1~5質量部であり、
前記アルカリ金属の含有量が、前記触媒全体に対して、酸化物換算で2.8~4.5質量%である
ことを特徴とする二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【請求項2】
前記アルカリ金属がナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【請求項3】
X線回折パターンにおいて、前記アルカリ金属の酸化物の結晶子径が44nmに相当する回折ピークが存在しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化炭素吸蔵還元型触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO)吸蔵還元型触媒に関し、より詳しくは、アルカリ金属を含有するCO吸蔵還元型触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)を原料としたメタン化反応は、近年の地球温暖化抑制のためのCO排出量削減の観点から注目されている。このようなメタン化反応に用いられる触媒としては、CO吸蔵材としての酸化カルシウム(CaO)とメタン化触媒としてのルテニウム(Ru)とがアルミナ等の担体に担持されたCO吸蔵還元型触媒(例えば、特開2020-110769号公報(特許文献1)及びA.Bermejo-Lopezら、Applied Catalysis B:Environmental、2019年、第256巻、117845(非特許文献1))が知られている。このCO吸蔵還元型触媒は、COを含むガスを流通させることによってCOを吸蔵し、還元ガス(例えば、H)を流通させることによって吸蔵したCOを還元してメタン(CH)を生成する。
【0003】
しかしながら、CO吸蔵材としてCaOを用いたCO吸蔵還元型触媒においては、吸蔵/還元時の動作開始温度が320℃と高温であるため、CO吸蔵還元型触媒システムの作動時に熱エネルギーを過剰に投入する必要があり、システムのエネルギー効率が低下するという問題があった。
【0004】
また、A.Bermejo-Lopezら、Applied Catalysis B:Environmental、2019年、第256巻、117845(非特許文献1)には、CO吸蔵材としての酸化ナトリウム(NaO)とメタン化触媒としてのルテニウム(Ru)とがアルミナ等の担体に担持されたCO吸蔵還元型触媒が記載されている。このCO吸蔵還元型触媒においても、吸蔵/還元時の動作開始温度が370℃と高温であるため、CO吸蔵還元型触媒システムの作動時に熱エネルギーを過剰に投入する必要があり、システムのエネルギー効率が低下するという問題があった。また、非特許文献1には、NaOの含有量が少なくなるにつれて、メタンの生成量が少なくなることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-110769号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A.Bermejo-Lopezら、Applied Catalysis B:Environmental、2019年、第256巻、117845
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、低温においても優れたCO吸蔵性能とメタン化触媒活性を発現するCO吸蔵還元型触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、CO吸蔵材としてのアルカリ金属とメタン化触媒としてのルテニウム(Ru)とがアルミナ等の担体に担持されたCO吸蔵還元型触媒において、アルカリ金属の含有量を特定の範囲内とすることによって、低温においても優れたCO吸蔵性能とメタン化触媒活性とが発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のCO吸蔵還元型触媒は、金属酸化物からなり、平均細孔径が3~50nmであり、細孔容積が0.3~1.5cm/gである多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されたルテニウムと、前記多孔質担体に担持されたアルカリ金属とを含有する触媒であり、前記ルテニウムの含有量が、前記多孔質担体とルテニウムとの合計含有量100質量部に対して、1~5質量部であり、前記アルカリ金属の含有量が、前記触媒全体に対して、酸化物換算で2.8~4.5質量%であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のCO吸蔵還元型触媒においては、前記アルカリ金属がナトリウムであることが好ましく、また、X線回折パターンにおいて、前記アルカリ金属の酸化物の結晶子径が44nmに相当する回折ピークが存在しないことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低温においても優れたCO吸蔵性能とメタン化触媒活性を発現するCO吸蔵還元型触媒を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1~3及び比較例1~7で得られた触媒のCO転化率の温度特性を示すグラフである。
図2】実施例1~3及び比較例1~7で得られた触媒のCO転化率が50%となる温度T50とCO吸蔵材の含有量との関係を示すグラフである。
図3】実施例2~3及び比較例3~4で得られた触媒のX線回折パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
〔CO吸蔵還元型触媒〕
本発明の二酸化炭素(CO)吸蔵還元型触媒は、金属酸化物からなる多孔質担体と、前記多孔質担体に担持されたルテニウムと、前記多孔質担体に担持されたアルカリ金属とを含有する触媒である。
【0015】
本発明に用いられる担体は、金属酸化物からなる多孔質担体である。担体として多孔質のものを用いることによって、ガス成分が良好に拡散し、CO吸蔵性能及びメタン化触媒活性が向上する。前記金属酸化物としては、CO吸蔵還元型触媒の担体として用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)等の公知の金属酸化物が挙げられる。これらの金属酸化物のうち、メタン化触媒活性が高くなるという観点から、アルミナ、チタニアが好ましく、アルミナがより好ましい。また、このような金属酸化物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記多孔質担体の平均細孔径は、3~50nmであり、5~20nmであることが好ましい。多孔質担体の平均細孔径が前記下限未満になると、ガス成分が十分に拡散せず、CO吸蔵性能及びメタン化触媒活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、細孔構造の安定性が低下する傾向にある。
【0017】
また、前記多孔質担体の細孔容積は、0.3~1.5cm/gであり、0.3~1.0cm/gであることが好ましい。多孔質担体の細孔容積が前記下限未満になると、ガス成分が十分に拡散せず、CO吸蔵性能及びメタン化触媒活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、多孔質担体の熱的安定性が低下する傾向にある。
【0018】
本発明のCO吸蔵還元型触媒においては、前記多孔質担体にルテニウム(Ru)が担持されている。このRuは、メタン化触媒として作用するものであり、具体的には、CO吸蔵材に吸蔵されたCOが還元ガス(例えば、H)と反応して還元されることによってメタン(CH)が生成する際にCOの還元反応を促進するものである。
【0019】
本発明のCO吸蔵還元型触媒において、Ruの含有量は、前記多孔質担体とRuとの合計含有量100質量部に対して、1~5質量部である。Ruの含有量が前記範囲内にあると、COの還元反応が促進され、メタン化触媒活性が向上する。一方、Ruの含有量が前記下限未満になると、COの還元反応が十分に促進されず、メタン化触媒活性が低下する。他方、Ruの含有量が前記上限を超えると、前記多孔質担体の細孔が閉塞してCO吸蔵量が減少するため、CO吸蔵性能が低下したり、Ruが粒成長してメタン化触媒活性が低下したりする。
【0020】
また、本発明のCO吸蔵還元型触媒においては、前記多孔質担体にアルカリ金属が担持されている。このアルカリ金属は、CO吸蔵材として作用するものである。このようなアルカリ金属は、通常、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩の状態で前記多孔質担体に担持されている。
【0021】
前記アルカリ金属としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)が挙げられ、中でも、CO吸蔵性能が更に向上するという観点から、Naが好ましい。
【0022】
本発明のCO吸蔵還元型触媒において、前記アルカリ金属の含有量は、前記触媒全体に対して、酸化物換算で2.8~4.5質量%である。前記アルカリ金属の含有量が前記範囲内にあると、低温においても優れたCO吸蔵性能とメタン化触媒活性とが発現する。一方、前記アルカリ金属の含有量が前記下限未満になると、COの吸蔵サイトが少なくなり、CO吸蔵量が減少するため、CO吸蔵性能及びメタン化触媒活性が低下する。他方、前記アルカリ金属の含有量が前記上限を超えると、前記多孔質担体の細孔が閉塞してCO吸蔵量が減少するため、CO吸蔵性能及びメタン化触媒活性が低下する。また、前記アルカリ金属の酸化物の結晶子径が大きくなり、低温でのCO吸蔵性能とメタン化触媒活性とが低下する。前記アルカリ金属の含有量としては、低温でのCO吸蔵性能とメタン化触媒活性とが更に向上するという観点から、酸化物換算で2.8~4.2質量%が好ましく、3.0~4.0質量%がより好ましい。
【0023】
また、本発明のCO吸蔵還元型触媒は、そのX線回折パターンにおいて、前記アルカリ金属の酸化物の結晶子径が44nmに相当する回折ピークが存在しないこと、すなわち、結晶子径が粗大なアルカリ金属の酸化物を含有しないことが好ましい。前記アルカリ金属の酸化物の結晶子径が44nmに相当する回折ピークが存在する、すなわち、結晶子径が粗大なアルカリ金属の酸化物を含有すると、低温でのCO吸蔵性能とメタン化触媒活性とが低下する傾向にある。なお、このような結晶子径が粗大なアルカリ金属の酸化物は、アルカリ金属の含有量が前記上限を超えると、生成しやすくなる。
【0024】
〔CO吸蔵還元型触媒の調製方法〕
このような本発明のCO吸蔵還元型触媒は、例えば、以下のようにして調製することができる。すなわち、アルカリ金属塩を所定の質量比で含有する水溶液を調製し、この水溶液に、Ruを担持した金属酸化物からなる多孔質担体を所定量添加した後、乾燥、焼成することによって、前記金属酸化物からなる多孔質担体にアルカリ金属とRuとが担持したCO吸蔵還元型触媒を得ることができる。また、アルカリ金属塩を所定の質量比で含有する水溶液を調製し、この水溶液に、金属酸化物からなる多孔質担体を所定量添加した後、乾燥、焼成して、前記金属酸化物からなる多孔質担体にアルカリ金属酸化物が担持したCO吸蔵材を調製し、このCO吸蔵材を、所定量のRu塩が溶解した水溶液に添加した後、乾燥、焼成することによっても、前記金属酸化物からなる多孔質担体にアルカリ金属酸化物とRuとが担持したCO吸蔵還元型触媒を得ることができる。さらに、アルカリ金属塩及びRu塩を所定の質量比で含有する水溶液を調製し、この水溶液に、金属酸化物からなる多孔質担体を所定量添加した後、乾燥、焼成することによっても、前記金属酸化物からなる多孔質担体にアルカリ金属酸化物とRuとが担持したCO吸蔵還元型触媒を得ることができる。
【0025】
焼成条件としては、アルカリ金属塩が酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩の状態に、Ru塩がRuに変換される条件であれば特に制限はないが、例えば、焼成温度としては、400~600℃が好ましく、450~550℃がより好ましく、また、焼成時間としては、1~5時間が好ましく、2~4時間がより好ましい。
【0026】
前記アルカリ金属塩としては、例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)の硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩が挙げられる。また、Ru塩としては、例えば、ニトロシル硝酸ルテニウム、硝酸ルテニウム、塩化ルテニウム、ルテニウムカルボニルが挙げられる。
【0027】
〔COの吸蔵還元処理〕
このような本発明のCO吸蔵還元型触媒は、例えば、以下のようなCOの吸蔵還元処理に適用することができる。すなわち、本発明のCO吸蔵還元型触媒にCOを含むガスを接触させてCOを吸蔵させた後、このCOが吸蔵した前記CO吸蔵還元型触媒に還元ガス(例えば、H)を接触させることによって、吸蔵したCOが還元されてCHが生成する。また、本発明のCO吸蔵還元型触媒にCOとHとを含むガスを接触させてCOを吸蔵させながら、吸蔵したCOと還元ガス(例えば、H)とを反応させることによって、吸蔵したCOが還元されてCHが生成する。
【0028】
本発明のCO吸蔵還元型触媒は、低温においての優れたCO吸蔵性能とメタン化触媒活性を発現することから、上記のCOの吸蔵還元処理の開始時等の低温状態においても、過剰な熱エネルギーを供給せずに、COの還元とCHの生成を可能にする。
【実施例0029】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
イオン交換水に、硝酸ナトリウム(NaNO、富士フイルム和光純薬株式会社製、品番:192-02555)を溶解し、得られた水溶液に、ルテニウム担持アルミナ粉末(Ru/Al、エヌ・イーケムキャット株式会社製、品番:HYAc-5E N-Type、Ru含有量:5質量%、アルミナ含有量:95質量%、アルミナの平均細孔径:13nm、アルミナの細孔容積:0.38cm/g)を、得られる触媒においてNaOの含有量が触媒全体に対して2.8質量%となるように添加した。得られた分散液を約2時間攪拌した後、250℃に加熱して蒸発乾固させた。得られた乾固物を110℃で12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成した。得られた触媒粉末(約6g)を圧力1000kg/cmで1分間加圧した後、粉砕し、篩を用いて分級して、AlにNaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔NaO(2.8)/Ru(4.9)/Al(92.3)〕を得た。
【0031】
(実施例2)
得られる触媒においてNaOの含有量が触媒全体に対して3.7質量%となるように前記Ru/Al粉末を添加した以外は実施例1と同様にして、AlにNaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔NaO(3.7)/Ru(4.8)/Al(91.5)〕を得た。
【0032】
(実施例3)
得られる触媒においてNaOの含有量が触媒全体に対して4.5質量%となるように前記Ru/Al粉末を添加した以外は実施例1と同様にして、AlにNaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔NaO(4.5)/Ru(4.8)/Al(90.7)〕を得た。
【0033】
(比較例1)
得られる触媒においてNaOの含有量が触媒全体に対して1.0質量%となるように前記Ru/Al粉末を添加した以外は実施例1と同様にして、AlにNaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔NaO(1.0)/Ru(4.9)/Al(94.1)〕を得た。
【0034】
(比較例2)
得られる触媒においてNaOの含有量が触媒全体に対して5.4質量%となるように前記Ru/Al粉末を添加した以外は実施例1と同様にして、AlにNaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔NaO(5.4)/Ru(4.7)/Al(89.9)〕を得た。
【0035】
(比較例3)
得られる触媒においてNaOの含有量が触媒全体に対して8.7質量%となるように前記Ru/Al粉末を添加した以外は実施例1と同様にして、AlにNaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔NaO(8.7)/Ru(4.6)/Al(86.7)〕を得た。
【0036】
(比較例4)
得られる触媒においてNaOの含有量が触媒全体に対して12.5質量%となるように前記Ru/Al粉末を添加した以外は実施例1と同様にして、AlにNaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔NaO(12.5)/Ru(4.4)/Al(83.1)〕を得た。
【0037】
(比較例5)
硝酸ナトリウムの代わりに硝酸カルシウム(Ca(NO、富士フイルム和光純薬株式会社製、品番:039-00735)を用い、得られる触媒においてCaOの含有量が触媒全体に対して4.5質量%となるように前記Ru/Al粉末を添加した以外は実施例1と同様にして、AlにCaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔CaO(4.5)/Ru(4.8)/Al(90.7)〕を得た。
【0038】
(比較例6)
得られる触媒においてCaOの含有量が触媒全体に対して8.7質量%となるように前記Ru/Al粉末を添加した以外は比較例5と同様にして、AlにCaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔CaO(8.7)/Ru(4.6)/Al(86.7)〕を得た。
【0039】
(比較例7)
得られる触媒においてCaOの含有量が触媒全体に対して16.0質量%となるように前記Ru/Al粉末を添加した以外は比較例5と同様にして、AlにCaOとRuとが担持した、0.5~1.0mm径の触媒粉末〔CaO(16.0)/Ru(4.2)/Al(79.8)〕を得た。
【0040】
<COのメタン化温度特性の評価>
得られた触媒粉末を容積が2.4cmとなるようにステンレス鋼(SUS)製反応管(内径:6mm)に充填し、この反応管を昇温脱離分析装置(ヘンミ計算尺株式会社製「TP-5000」)に装着した。触媒床に、H(40%)+CO(10%)+He(残部)のH/CO含有ガスを1気圧下、流量40ml/minの条件で流通させながら、触媒床を50℃から350℃まで昇温速度5℃/minで昇温した。触媒床を50℃以下に降温した後、再度、上記の条件にて触媒床を50℃から350℃まで昇温速度5℃/minで昇温した。この2回目の昇温時において、触媒出ガス中のCO量を測定し、触媒入りガス中のCO量と触媒出ガス中のCO量とからCO転化率を求めた。その結果を図1に示す。図1に示した結果に基づいて、CO転化率が50%となる温度T50を求めた。その結果を表1に示す。また、CO吸蔵材(NaO又はCaO)の含有率に対してT50をプロットした結果を図2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1及び図2に示したように、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)を所定の範囲内とすることによって、T50が低く、低温において優れた触媒活性を発現するCO吸蔵還元型触媒(実施例1~3)が得られることが確認された。一方、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)が多くなりすぎると、T50が高くなり、低温での触媒活性が低下することがわかった(比較例2~4)。
【0043】
また、実施例3で得られたCO吸蔵還元型触媒は、アルカリ金属の含有量(酸化物換算)と同程度の含有量(酸化物換算)でアルカリ土類金属を含有する触媒(比較例5)に比べて、T50が低く、低温での触媒活性が優れていることがわかった。
【0044】
<X線回折測定>
得られた触媒粉末のX線回折パターンを、X線回折装置(株式会社リガク製「UltimaIV」)を用い、CuKαをX線源として使用して測定した。その結果を図3に示す。
【0045】
図3に示したように、NaOの含有量が8.7質量%以上の触媒(比較例3~4)においては、NaOの結晶子径が44nmに相当する回折ピークが観測されたが、NaOの含有量が4.5質量%以下のCO吸蔵還元型触媒(実施例2~3)においては、観測されなかった。この結果から、アルカリ金属の含有量が増加すると、結晶子径が44nm以上の粗大な粒子が生成するため、低温での触媒活性が低下すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、低温においても優れたCO吸蔵性能とメタン化触媒活性を発現するCO吸蔵還元型触媒を得ることが可能となる。したがって、本発明のCO吸蔵還元型触媒は、CO浄化システムの始動時等の低温状態においてもCOを効率よく吸蔵してCHに還元することが可能な触媒として有用である。
図1
図2
図3