(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023158733
(43)【公開日】2023-10-31
(54)【発明の名称】エネルギー輸送列車、エネルギー輸送システム、及びエネルギー輸送方法
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20231024BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231024BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20231024BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20231024BHJP
B61C 3/02 20060101ALI20231024BHJP
B61C 11/00 20060101ALI20231024BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231024BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B60L15/20 A
B60L50/60
B60L58/18
B60L1/00 A
B61C3/02
B61C11/00
H02J3/38 110
H02J3/38 170
H02J15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068685
(22)【出願日】2022-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】521191344
【氏名又は名称】株式会社パワーエックス
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正裕
【テーマコード(参考)】
5G066
5H125
【Fターム(参考)】
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5H125AA05
5H125AC07
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC21
5H125BC24
5H125BC25
(57)【要約】
【課題】列車によって電気等のエネルギー源を効率的に輸送及び供給する。
【解決手段】列車100は、動力を有する機関車10と、この機関車10により牽引される一又は複数の牽引車両を備える。牽引車両は、エネルギー源の保持手段を有する車両20を含み、保持手段を車両20に積んだままエネルギー源に基づく電気を電力系統又は他の電力設備に供給可能に構成されている。具体的には、牽引車両は、保持手段としてバッテリを有するバッテリ車両20と、このバッテリに蓄積された電気を変圧する変圧器を有する変圧器車両30を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を有する機関車と、前記機関車により牽引される一又は複数の牽引車両を備える列車であって、
前記牽引車両は、エネルギー源の保持手段を有する車両を含み、
前記保持手段を前記車両に積んだまま前記エネルギー源に基づく電気を電力系統又は他の電力設備に供給可能に構成された
列車。
【請求項2】
前記牽引車両は、
前記保持手段としてバッテリを有するバッテリ車両と、
前記バッテリに蓄積された電気を変圧する変圧器を有する変圧器車両を含む
請求項1に記載の列車。
【請求項3】
前記牽引車両は、前記バッテリ車両を複数含み、
前記変圧器車両の前記変圧器は、複数の前記バッテリ車両に接続されている
請求項2に記載の列車。
【請求項4】
前記バッテリ車両は、前記変圧器車両の変圧器を介さずに、前記バッテリに蓄積された電気を独立して電力系統又は他の電力設備に供給するためのパワーコンディショナをさらに有する
請求項2に記載の列車。
【請求項5】
前記牽引車両は、
前記保持手段として水素タンクを有する水素車両と、
前記水素タンク内の水素ガスを用いて発電する燃料電池を有する燃料電池車両を含む
請求項1に記載の列車。
【請求項6】
前記牽引車両は、前記保持手段としてのバッテリを有するバッテリ車両を含み、
前記バッテリ車両は、前記バッテリに蓄積された電気を放電可能なパンタグラフをさらに有する
請求項1に記載の列車。
【請求項7】
請求項1に記載の列車と、
前記列車外に配置され、前記保持手段からエネルギー源の供給を受ける受領設備を備えた
エネルギー輸送システム。
【請求項8】
請求項1に記載の列車の前記保持手段に前記エネルギー源を充填する工程と、
前記列車によって前記エネルギー源を輸送する工程と、
前記保持手段を前記車両に積んだまま前記エネルギー源に基づく電気を電力系統又は他の電力設備に供給する工程を含む
エネルギー輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー源の輸送を陸路にて行うための列車に関する。また、本発明は、この列車によりエネルギー源の輸送を行うシステムや方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、線路を走行する列車によってエネルギー貯蔵庫を輸送する方法が知られている(特許文献1)。具体的には、特許文献1には、発電所において蓄電池を充電し、この蓄電池を列車等の輸送手段で電力需要の高い別の場所へ輸送し、その場所で蓄電池から電気を放電することで、電気を消費者に届けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/042659号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法は、蓄電池(エネルギー貯蔵庫)を列車によって輸送した後、その輸送先にて蓄電池を列車から荷降ろしして、蓄電池内の電気を利用することが想定されていると考えられる。しかしこの場合、蓄電池を列車から荷降ろしする作業の負担が大きいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、電気等のエネルギー源を効率的に輸送及び供給することのできる列車を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面は、電気等のエネルギー源を輸送するための列車に関する。列車とは、予め敷設された線路の上を走行する複数の車両が連結されたものである。本発明に係る列車は、動力を有する機関車と、この機関車により牽引される一又は複数の牽引車両を備える。機関車は、例えば電気機関車、内燃機関車、これらのハイブリッド機関車、蒸気機関車など、公知の動力源を持つものを採用できる。ここで、牽引車両は、エネルギー源の保持手段を有する車両を含む。なお、本発明において、「エネルギー源」には、電気に加えて、電気と互換性を持つエネルギー源が含まれる。例えば、エネルギー源には、電気の他に、水素、熱、位置エネルギー、運動エネルギーなど、電気との互換性を持ち、現実的に運用可能な効率で一定期間保持できるものが含まれる。そして、本発明に係る列車は、保持手段を車両に積んだままエネルギー源に基づく電気を電力系統又は他の電力設備に供給可能に構成されている。これにより、車両からエネルギー源を荷降ろしする必要がなくなるため、エネルギー源から生成された電気を効率的に供給することができる。なお、電気の供給時において、機関車と牽引車両の連結は解除されていてもよい。また、本発明に係る列車は、少なくともエネルギー源の保持手段を車両に積んだまま電気を電力系統等に供給可能な構成を有している必要があるが、保持手段を車両から切り離すことができるものであってもよい。この意味で、本発明は、車両から保持手段を荷降ろし可能な構成を除外するものではない。
【0007】
本発明に係る列車において、牽引車両は、バッテリ(エネルギー源の保持手段)を有するバッテリ車両と、このバッテリに蓄積された電気を変圧する変圧器を有する変圧器車両を含むことが好ましい。バッテリに蓄積された電気は変圧器にて変圧された後に電力系統又は他の電力設備に供給される。このように列車自体に変圧器車両を設けることで、エネルギー源の輸送先に変圧設備がなくても電気の供給が可能となる。また、変圧器をバッテリ車両に搭載するのではなく、変圧器をバッテリ車両から独立した車両に搭載することで、バッテリ車両自体の構造を簡素化できる。このように、機関車、バッテリ車両、及び変圧器車両をそれぞれ個別に設けて、各車両を機能ごとにモジュール化することで、これらの車両をそれぞれ用途に応じて任意に組み合わせ易くなる。
【0008】
本発明に係る列車において、牽引車両は、バッテリ車両を複数含むことが好ましい。この場合に、変圧器車両の変圧器は、複数のバッテリ車両のバッテリに接続されている、すなわち一体多数で接続されていることが好ましい。これにより、一台の変圧器車両によって複数のバッテリ車両から一括して電気を供給することができる。また、一台の変圧器車両によって複数のバッテリ車両のバッテリに充電を行うこともできる。
【0009】
本発明に係る列車において、バッテリ車両は、変圧器を介さずに、バッテリに蓄積された電気を独立して電力系統又は他の電力設備に供給するためのパワーコンディショナをさらに有することとしてもよい。これにより、変圧器車両からバッテリ車両を切り離した状態でも、バッテリ車両から電気を独立して供給することができる。
【0010】
本発明に係る列車において、牽引車両は、水素タンク(エネルギー源の保持手段)を有する水素車両と、この水素タンク内の水素ガスを用いて発電する燃料電池を有する燃料電池車両を含むこととしてもよい。これにより、水素ガスをエネルギー源とした電力供給が可能となる。なお、牽引車両は、前記した変圧器車両、バッテリ車両、水素車両、及び燃料電池車両がすべて含まれていてもよい。
【0011】
本発明に係る列車において、牽引車両は、バッテリを有するバッテリ車両を含み、このバッテリ車両が、バッテリに蓄積された電気を放電可能なパンタグラフをさらに有することとしてもよい。パンタグラフは、バッテリ車両の屋根の上に取り付けられており、架空電車線(トロリー線)から電気を接触集電又は接触放電するための装置である。このように、バッテリ車両にパンタグラフを設け、電力系統又は他の電力設備に電気を直接供給できるようにしてもよい。なお、この場合、変圧器車両は省略することができる。
【0012】
本発明の第2の側面は、エネルギー輸送システムに関する。本発明に係るシステムは、前記した第1の側面に係る列車と、この列車外に配置されて保持手段からエネルギー源の供給を受ける受領設備を備える。「受領設備」は、列車からエネルギー源を受け取ることのできる設備であり、陸上の施設の他、列車から供給されたエネルギー源によって駆動する船舶や車両、航空機などを含む。例えば、エネルギー源が電気の場合、列車から供給を受けた電気を公共の電力系統へと送電する変電装置や送電装置などが、ここにいう受領設備に該当する。
【0013】
本発明の第3の側面は、エネルギー輸送方法に関する。本発明に係る方法は、前記した第1の側面に係る列車の保持手段にエネルギー源を充填する工程と、列車によってエネルギー源を輸送する工程と、保持手段を車両に積んだままエネルギー源に基づく電気を電力系統又は他の電力設備に供給する工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電気等のエネルギー源を効率的に輸送及び供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る列車の外観を模式的に示している。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る列車の構成用を示したブロック図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係る列車の構成用を示したブロック図である。
【
図4】
図4は、第3の実施形態に係る列車の外観を模式的に示している。
【
図5】
図5は、第3の実施形態に係る列車の構成用を示したブロック図である。
【0016】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0017】
図1及び
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る列車100について説明する。
図1及び
図2に示されるように、列車100は、機関車10と複数の牽引車両20,30が連結されることにより構成されている。また、本実施形態において牽引車両には、バッテリ車両20と変圧器車両30が含まれる。この列車100は、機関車10が複数の牽引車両20,30を牽引することにより、既存の線路の上を走行できる。
【0018】
機関車10としては、電気機関車や内燃機関車などの公知のものを採用できる。電気機関車は、その内部にバッテリ及びモータを備え、バッテリに蓄積された電気によってモータを駆動させることにより動力を得る。内燃機関車は、その内部に燃料タンクとエンジンを備え、エンジン内にて燃料(軽油やガソリン)を燃焼させることにより動力を得る。後述するとおり、本発明に係る列車100は、バッテリ車両20を含むものであるが、このバッテリ車両20に搭載されているバッテリは、輸送対象の電気を蓄積すること目的としたものである。このため、本発明では、このバッテリ車両20のバッテリから機関車10(具体的には電気機関車)に対して電気を動力として供給することを想定していない。つまり、機関車10が電気機関車である場合、バッテリ車両20とは別に、独自のバッテリを備えることが好ましい。
【0019】
牽引車両は、複数のバッテリ車両20を含む。バッテリ車両20は、機関車10が牽引可能な範囲で任意の数で連結することができる。
図2に示されるように、本実施形態において、バッテリ車両20は、バッテリセル21、変電装置22、熱管理装置23、及びPCS(Power Conditioning Subsystem)24を有する。
【0020】
バッテリセル21は、バッテリ車両20に搭載された蓄電池(二次電池)であり、充電及び放電が可能である。バッテリセル21は、各バッテリ車両20に複数搭載することも可能である。このため、バッテリセル21の搭載数に応じて、各バッテリ車両20に蓄電可能な電気容量を調整できる。また、バッテリセル21は、200kV~500kV程度の高電圧の直流電気(HVDC)が蓄積可能に構成されていることが好ましい。これにより、輸送中の電力ロスを抑えることができる。
【0021】
変電装置22は、バッテリセル21及び変圧器車両30の変圧器31に接続されており、バッテリセル21からの放電を行うとき及びバッテリセル21充電を行うときに必要な変電とその制御を行うための装置である。例えば、変電装置22は、電圧の調整、周波数変換、交流と直流との相互変換、直流の電圧変換など、電力の変換及び調整操作を行う。具体的には、電力系統の電気は交流であるのに対して、バッテリセル21には直流の電気が蓄積されることから、変電装置22では、この交流の電気を直流に変換してバッテリセル21を充電する。反対に、バッテリセル21から放電する際には、変電装置22は、バッテリセル21内の電気を直流から交流に変換する。
【0022】
熱管理装置23は、各バッテリセル21に接続されており、各バッテリセル21の温度を管理するための装置である。熱管理装置23は、バッテリセル21の温度を測定するためのセンサ機器や、バッテリセル21を冷却するためのファンなどを備える。熱管理装置23は、例えばバッテリセル21の温度が所定値を超えたときにファンを回転させることにより、バッテリセル21の温度を制御する。
【0023】
PCS24は、変圧器車両30を経由せずにバッテリセル21に蓄電された電気を電力系統又は他の電力設備へ供給したり、あるいは変圧器車両30を経由せずに電力系統や、発電機、別の蓄電池からバッテリセル21に電気を充電するためのシステムである。このため、PCS24を備えたバッテリ車両20は、個別に充放電が可能となる。PCS24としては、公知のものを用いればよい。例えば、PCS24は、インターフェース、充放電コントローラ、及びコンバータを含む。インターフェースは、ユーザに対して所定の情報を表示するディスプレイとユーザから操作を受け付ける操作装置(タッチパネルやキーボード)を含む。充放電コントローラは、PCS24に接続された電力設備や電力系統に対する放電動作を制御したり、別の蓄電池や、発電機、電力系統からの充電動作を制御したりする。具体的には、充放電コントローラにより充放電速度や充放電量を制御できる。コンバータ17は、バッテリセル21の充電時には電力系統等からの交流電気をバッテリセル21の仕様に応じた直流電力に変換し、またバッテリセル21の放電時にはバッテリセル21からの直流電力を電力系統等の仕様に応じた交流電力に変換する。このように、バッテリ車両20にPCS24を搭載しておくことで、このバッテリ車両20を一車両だけ個別に切り離した場合でも、このバッテリ車両20のバッテリセル21の充放電が可能となる。
【0024】
牽引車両は、さらに変圧器車両30を含む。本実施形態において、変圧器車両30は、列車100に少なくとも一台含まれていてればよい。なお、列車100に変圧器車両30を複数設けることも可能である。
図1に示されるように、一台の変圧器車両30には、複数のバッテリ車両20がケーブル等によって電気的に接続されている。そして、変圧器車両30は、送電ケーブル40を介して、電力系統200付近に設置された受領設備110と接続できるように構成されている。なお、この送電ケーブル40は取り外し可能である。このため、変圧器車両30は、複数のバッテリ車両20のバッテリセル21から電力系統200への放電や、電力系統200から複数のバッテリ車両20のバッテリセル21への充電を行う役割を担う。
【0025】
図2に示されるように、変圧器車両30は、変圧器31を有する。バッテリ車両20から電気を放電する際には、変圧器31は、主に、複数のバッテリ車両20から受け取った電気を変圧(主に昇圧)する。変圧器31は、電力系統200が要求する基準(例えば100~250V)まで電気を昇圧することとしてもよい。この場合、変圧器車両30の変圧器31から、電力系統200に直接電気を放電することができる。一方、電力系統200が要求する電圧基準が、変圧器車両30の変圧器31にて昇圧できる限度を超えている場合、
図1及び
図2に示したように、電力系統200の付近に変電装置111を有する受領設備110を設けることとしてもよい。この場合、列車100が受領設備110の設置された場所まで到達すると、変圧器車両30の変圧器31から受領設備110の変電装置111に電気を供給する。この場合には、受領設備110の変電装置111が、変圧器車両30から受け取った電気に対して必要な変電処理(変圧や、交流/直流の変換など)を行った後、変電装置111から電力系統200へと電気が放電される。
【0026】
また、バッテリ車両20へ電気を充電する際には、変圧器車両30の変圧器31は、電力系統200から受け取った電気を変圧(主に減圧)して複数のバッテリ車両20のそれぞれに配分する。この意味で、変圧器31は配電盤としても機能する。これにより、電力系統200から変圧器車両30に対して電力を供給すれば、複数のバッテリ車両20に搭載されたバッテリセル21を一括して充電することが可能となる。このため、変圧器車両30は、複数のバッテリ車両20の充電及び放電用のハブとして機能する。このように、本実施形態に係る列車100によれば、第1の場所にて複数のバッテリ車両20に充電した後、列車100を走行させることで電気を輸送し、第2の場所において電気を放電することができる。
【0027】
なお、
図1及び
図2に示した例では、変電装置111を有する受領設備110を電力系統200の付近に設置することとしているが、前述したように、変圧器車両30から電力系統200に直接電気を放電する場合には、受領設備110の変電装置111は省略することもできる。この場合、受領設備110は、変圧器車両30から受け取った電気を電力系統200へ送電したり、電力系統200から受け取った電気を変圧器車両30へと送電する単純な送電装置を有していればよい。
【0028】
図3は、本発明に係る列車100の第2の実施形態を示している。第2の実施形態では、前述した第1の実施形態のバッテリ車両20に代えて水素車両50を設けるとともに、変圧器車両30に代えて燃料電池車両60を設けている。第1の実施形態に係る列車100はエネルギー源として電気を輸送するものであったが、第2の実施形態に係る列車100はエネルギー源として水素ガスを輸送する。
【0029】
図3に示した例において、列車100は、機関車10(
図3においては不図示)と、水素タンク51を有する複数の水素車両50と、燃料電池61を有する少なくとも一台の燃料電池車両60を含む。各水素車両50の水素タンク51には、エネルギー源として水素ガスが充填されている。各水素タンク51内の水素ガスは、燃料電池車両60の燃料電池61に供給される。燃料電池61は、各水素車両50から供給を受けた水素ガスと空気中の酸素とを化学反応させることによって発電する。燃料電池61によって得られた電気は、受領設備110の変電装置111へと供給され、必要に応じて変電が行われた上で、電力系統200へ送電される。このように、列車100によって輸送した水素ガス(エネルギー源)を電力へ変換して電力系統200へと放電することができる。このように、本実施形態に係る列車100によれば、第1の場所にて複数の水素車両40に水素ガスを充填した後、列車100を走行させることで水素ガスを輸送し、第2の場所において水素ガスから変換された電気を放電することができる。
【0030】
図4及び
図5は、本発明に係る列車100の第3の実施形態を示している。
図4及び
図5に示されるように、第3の実施形態に係る列車100は、機関車10及び複数のバッテリ車両20を備えているが、第1の実施形態で説明した変圧器車両30は備えていない。その代わりに、各バッテリ車両20は、個別に充放電を行うためのパンタグラフ70を備える。パンタグラフ70は、バッテリ車両20の屋根の上に取り付けられており、架空電車線120(トロリー線)から電気を接触集電又は接触放電するための装置である。
【0031】
図5に示されるように、第3の実施形態においても、バッテリ車両20は、第1の実施形態(
図2参照)と同様に、バッテリセル21、変電装置22、熱管理装置23、及びPCS24を備える。バッテリセル21から放電を行う際には、バッテリセル21に蓄電された電気は、変電装置22により変電(主に直流から交流への変換)された後、個別のパンタグラフ70を介して架空電車線120へ送電される。その後、受領設備110の変電装置111は、バッテリ車両20のそれぞれから、架空電車線120を経由して電気を受け取る。変電装置111は、各バッテリ車両20から受け取った電気に対して昇圧等の変電を行った上で、電力系統200へと放電する。一方、バッテリセル21へ充電を行う際には、受領設備110の変電装置111が、電力系統200からの電気に対して減圧等の変電を行った上で、架空電車線120に送電する。各バッテリ車両20は、架空電車線120を流れている電気をパンタグラフ70によって集電し、変電装置22によって変電(主に交流から直流への変換)を行ってバッテリセル21に蓄電する。
【0032】
第3の実施形態に係る列車100は、第1の実施形態と対比すると、変圧器車両30を必要としないことから、その分一度に輸送する電力量を増やすことができる。一方で、第3の実施形態に係る列車100は、輸送先に必ず受領設備110が必要となる。このため、第1の実施形態と第3の実施形態とは、その用途に応じて使い分けることとすればよい。
【0033】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は列車を利用したエネルギー輸送技術に関する。例えば本発明は送電事業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0035】
10…機関車 20…バッテリ車両
21…バッテリセル 22…変電装置
23…熱管理装置 24…PCS
30…変圧器車両 31…変圧器
40…送電ケーブル 50…水素車両
51…水素タンク 60…燃料電池車両
61…燃料電池 70…パンタグラフ
100…列車 110…受領設備
111…変電装置 120…架空電車線
200…電力系統