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特開2023-163146パネル支持具、パネル支持具の固定構造、およびパネル支持具の固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163146
(43)【公開日】2023-11-09
(54)【発明の名称】パネル支持具、パネル支持具の固定構造、およびパネル支持具の固定方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/90 20060101AFI20231101BHJP
【FI】
E04B2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067195
(22)【出願日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2022073159
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆士
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002NA01
2E002NB01
2E002NB02
2E002PA04
2E002RA00
2E002WA19
2E002XA03
(57)【要約】
【課題】液状接着剤を用いて支持物とパネルとを高品質に接着可能なパネル支持具、パネル支持具の固定構造、およびパネル支持具の固定方法を提供する。
【解決手段】パネル支持具1は、パネルへの接着面31と前記パネルを支持する支持構造物に対する接合部21とを備える支持部材と、前記接着面の外縁部33に設けられるガスケット5と、を備え、前記支持部材には、厚さ方向に貫通して前記接着面に開口する接着剤注入口4を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルへの接着面と前記パネルを支持する支持構造物に対する接合部とを備える支持部材と、
前記接着面の外縁部に設けられるガスケットと、を備え、
前記支持部材には、厚さ方向に貫通して前記接着面に開口する接着剤注入口を備える
パネル支持具。
【請求項2】
前記支持部材は、厚さ方向に貫通して前記接着面に開口し、前記接着剤注入口から注入された接着剤の充填管理に用いる補助孔を備える
請求項1に記載のパネル支持具。
【請求項3】
前記支持部材には、前記接着剤注入口と前記補助孔がそれぞれ一つずつ形成されている請求項2に記載のパネル支持具。
【請求項4】
前記支持部材が正面視で円形に形成されており、
前記接着剤注入口と前記補助孔が前記支持部材の中心を挟んで対向する位置に形成されている請求項3に記載のパネル支持具。
【請求項5】
前記接着剤注入口および前記補助孔の中心と、前記接着剤の外縁部との距離が5mm以下である請求項4に記載のパネル支持具。
【請求項6】
前記接着剤注入口および前記補助孔は、ねじの呼びM3のネジ孔である請求項3に記載のパネル支持具。
【請求項7】
パネルへの接着面と前記パネルを支持する支持構造物に対する接合部とを備える支持部材と、前記接着面の外縁部に設けられるガスケットと、を備えるパネル支持具を前記パネルに固定するパネル支持具の固定構造であって、
前記ガスケットが前記パネルに当接し、前記接着面が前記パネルに対向して離間配置されることにより、前記接着面と前記パネルと前記ガスケットとに囲まれた閉空間が形成され、
前記閉空間に接着剤が充填されることにより、前記パネル支持具が前記パネルに固定される
パネル支持具の固定構造。
【請求項8】
パネルへの接着面と前記パネルを支持する支持構造物に対する接合部とを備える支持部材と、前記接着面の外縁部に設けられるガスケットと、を備え、前記支持部材には、厚さ方向に貫通して前記接着面に開口する接着剤注入口を備えるパネル支持具を前記パネルに接合させるパネル支持具の固定方法であって、
前記パネル支持具の前記外縁部に前記ガスケットを取り付ける工程と、
前記接着面を前記パネルに対向配置し、前記ガスケットを前記パネルに押し当てる工程と、
前記接着面と前記パネルと前記ガスケットとに囲まれた閉空間に前記接着剤注入口から接着剤を注入する工程と、
を含むパネル支持具の固定方法。
【請求項9】
前記接着剤注入口から接着剤を注入する工程において、前記支持部材に形成されている前記接着剤の充填管理に用いる補助孔から前記接着剤が流出するまで、前記接着剤を注入する
請求項8に記載のパネル支持具の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォールのパネル支持に用いられるパネル支持具、パネル支持具の固定構造、およびパネル支持具の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス、ホテル、集合住宅等の建物の外壁をガラス等のパネルで構成するカーテンウォール構法が知られている。例えば、特許文献1には、継手構造体を介して複数のガラスパネルが支持されたカーテンウォール構造が開示されている。カーテンウォール構法に用いられるガラス等のパネルを支持する方法として、金属製の支持部品とガラスの表面とを接着剤で接合して支持する点支持接着構法が知られている。このような点支持接着構法で用いられる接着剤としては、フィルム状接着剤や液状接着剤が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-208603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルム状接着剤は、平面ガラスに対する接着剤としては製造が容易であり、品質も安定するという利点がある。しかし、曲面パネルをカーテンウォールに用いる場合があり、フィルム状接着剤を曲面パネルに接着する際、接着剤の厚さの管理が難しく、品質を確保するために手間が掛かるという課題がある。これに対し、液状接着剤は、曲面パネルにも適用できるが、所定の位置に対して気泡の混入を防ぎながら所望の厚さに均一に充填する必要があり、製造が難しいという課題があった。
【0005】
上記事情を踏まえ、本発明は、液状接着剤を用いて支持物とパネルとを高品質に接着可能なパネル支持具、パネル支持具の固定構造、およびパネル支持具の固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るにパネル支持具は、パネルへの接着面と前記パネルを支持する支持構造物に対する接合部とを備える支持部材と、前記接着面の外縁部に設けられるガスケットと、を備え、前記支持部材には、厚さ方向に貫通して前記接着面に開口する接着剤注入口を備える。
【0007】
このように構成されたパネル支持具によれば、接着面の外縁部にガスケットが設けられることによって、接着面とパネルとガスケットとで囲まれた閉空間が形成される。支持部材に接着剤注入口を備えるため、接着剤注入口を通じて閉空間内に液状接着剤を充填することができる。このため、パネル支持具をパネルに当接させた状態で液状接着剤を容易に充填でき、パネル支持具をパネルに容易に固定できる。さらに、液状接着剤が閉空間内に充填される結果、ガスケットによって液状接着剤の充填領域および接着剤の厚さを所望の範囲で均一化できるため、液状接着剤を用いてパネル支持部とパネルとを高品質に接着できる。
【0008】
本発明に係るにパネル支持具では、前記支持部材は、厚さ方向に貫通して前記接着面に開口し、前記接着剤注入口から注入された接着剤の充填管理に用いる補助孔を備えてもよい。
【0009】
このように構成されたパネル支持具によれば、接着剤の充填管理用の補助孔を備える結果、接着剤注入口から接着剤が注入され、閉空間が接着剤で満たされると補助孔内にも接着剤が流入し接着剤が視認できる、あるいは補助孔から接着剤が溢れ出ることにより、閉空間内が接着剤で満たされたことが確認できる。
【0010】
また、本発明に係るパネル支持具は、前記支持部材には、前記接着剤注入口と前記補助孔がそれぞれ一つずつ形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明に係るパネル支持具は、前記支持部材が正面視で円形に形成されており、前記接着剤注入口と前記補助孔が前記支持部材の中心を挟んで対向する位置に形成されていてもよい。
【0012】
また、本発明に係るパネル支持具は、前記接着剤注入口および前記補助孔の中心と、前記接着剤の外縁部との距離が5mm以下であってもよい。
【0013】
また、本発明に係るパネル支持具では、前記接着剤注入口および前記補助孔は、ねじの呼びM3のネジ孔であってもよい。
【0014】
本発明に係るにパネル支持具の固定構造は、パネルへの接着面と前記パネルを支持する支持構造物に対する接合部とを備える支持部材と、前記接着面の外縁部に設けられるガスケットと、を備えるパネル支持具を前記パネルに固定するパネル支持具の固定構造であって、前記ガスケットが前記パネルに当接し、前記接着面が前記パネルに対向して離間配置されることにより、前記接着面と前記パネルと前記ガスケットとに囲まれた閉空間が形成され、前記閉空間に接着剤が充填されることにより、前記パネル支持具が前記パネルに固定される。
【0015】
このように構成されたパネル支持具の固定構造では、接着面とパネルとガスケットとで囲まれた閉空間が形成される。閉空間内に液状接着剤を充填することができ、パネル支持具をパネルに対して容易に固定できる。さらに、液状接着剤が閉空間内に充填される結果、ガスケットによって液状接着剤の充填領域および接着剤の厚さを所望の範囲で均一化できるため、液状接着剤を用いて支持物とパネルとを高品質に接着できる。
【0016】
本発明に係るパネル支持具の固定方法は、パネルへの接着面と前記パネルを支持する支持構造物に対する接合部とを備える支持部材と、前記接着面の外縁部に設けられるガスケットと、を備え、前記支持部材には、厚さ方向に貫通して前記接着面に開口する接着剤注入口を備えるパネル支持具を前記パネルに接合させるパネル支持具の固定方法であって、前記パネル支持具の前記外縁部に前記ガスケットを取り付ける工程と、前記接着面を前記パネルに対向配置し、前記ガスケットを前記パネルに押し当てる工程と、前記接着面と前記パネルと前記ガスケットとに囲まれた閉空間に前記接着剤注入口から接着剤を注入する工程と、を含む。
【0017】
上記パネル支持具の固定方法によれば、パネル支持具の接着面にガスケットを取り付ける工程と、接着面をパネルに対向配置し、ガスケットをパネルに押し当てる工程とによって、接着面とパネルとガスケットとで囲まれた閉空間が形成できる。閉空間に接着剤注入口から接着剤を注入する工程によって、接着剤注入口を通じて、閉空間内に液状接着剤を充填することができ、パネル支持具をパネルに対して容易に固定できる。さらに、液状接着剤が閉空間内に充填される結果、ガスケットによって液状接着剤の充填領域および接着剤の厚さを所望の範囲で均一化できるため、液状接着剤を用いてパネル支持部とパネルとを高品質に接着できる。
【0018】
本発明に係るパネル支持具の固定方法では、前記接着剤注入口から接着剤を注入する工程において、前記支持部材に形成されている前記接着剤の充填管理に用いる補助孔から前記接着剤が流出するまで、前記接着材を注入してもよい。
【0019】
上記パネル支持具の固定方法によれば、接着剤注入口から接着剤が注入され、閉空間が液状接着剤で満たされると接着剤の充填管理用の補助孔内にも液状接着剤が流入し接着剤が視認できる、あるいは補助孔から液状接着剤が溢れて流出することによって、閉空間内が接着剤で満たされたことが確認できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、液状接着剤を用いて支持物とガラスとを高品質に接着可能なパネル支持具、パネル支持具の固定構造、およびパネル支持具の固定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係るパネル支持具の使用例を示す斜視図である。
図2図1に示すA部の斜視図である。
図3】本実施形態に係るパネル支持具の固定構造の断面を含む斜視図である。
図4図2のB-B断面図であり、接着剤注入工程を示す図である。
図5図2のB-B断面図であり、パネル支持具を固定した状態を示す図である。
図6】本実施形態に係るパネル支持具の固定構造の縦断面図である。
図7】注入実験で用いた支持金物の斜視図であり、(a)は孔を2つ、(b)は孔を3つ、(c)は孔を4つ開けたものである。
図8】注入実験で用いた支持金物の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るパネル支持具、パネル支持具の固定構造、およびパネル支持具の固定方法について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るパネル支持具の固定構造の一例を示す斜視図である。パネル支持具の固定構造では、カーテンウォールを構成するパネル100の被支持面101に接着剤を用いてパネル支持具1が取り付けられる。カーテンウォールは、複数のパネル100が並べられて建物の外壁を構成する。パネル100は、金属製支持構造物がパネル支持具1に連結されることによって、パネル支持具1を介して、支持構造物に支持される。パネル100は、フレームを備えず、かつ、サッシを用いることなく、公知の金属製支持構造物がパネル100の平面に接触して支持される。パネル100は、パネル100の平面に取り付けられたパネル支持具1を介して金属製支持構造物に固定されて支持される。
【0023】
パネル100は、例えば、強化ガラス製、樹脂製の公知のカーテンウォール用パネルである。以下の説明において、パネルの厚さ方向をX方向と記載し、X方向のうち、パネル支持具1が取り付けられる面側をX1方向と記載し、X1方向の反対側をX2方向と記載する。カーテンウォールでは、X1方向が室内側であり、X2方向が室外側である。パネル100の厚さ方向Xの二面のうち、パネル支持具1が接着され、支持構造物に支持されるX1方向側の面を被支持面101と記載し、被支持面101と反対側の面を外装面102と記載する。
【0024】
パネル支持具1は、支持部材7とガスケット5とを備える。支持部材7は、基部3と、被支持部2とを備える。基部3は、平面である接着面31を有する。図示例では、厚さ方向における接着面31と反対側の露出面32も平面形状を有し、基部3が略円盤形状を有する例を示しているが、基部3の形状は図示例に限定されない。パネル支持具1は、例えば、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム等の金属や、これらを含む合金製である。
【0025】
基部3には、厚さ方向に貫通する注入口4(接着剤注入口)が形成されている。注入口4は接着剤6を注入するための開口である。注入口4は、基部3に少なくとも一箇所形成されている。注入口4は、ネジ孔としても機能するため、ネジ溝が形成されていてもよい。
【0026】
基部3には、注入口4の他に、1以上の補助孔4aが形成されていてもよい。補助孔4aは、基部3の厚さ方向Xに貫通して接着面31に開口している。補助孔4aは、注入口4から注入された接着剤の充填管理に用いる。すなわち、補助孔4aは、接着剤6の注入時の通気孔、および接着剤6の注入量を確認する管理孔として機能する。補助孔4aは、例えば、被支持部2の周囲に周方向に間隔を空けて2箇所形成されている。注入口4および補助孔4aは、基部3に貫通する貫通孔であればよい。例えば、同じ形状の貫通孔を複数設け、複数の貫通孔の一つを注入口4として使用し、他の孔を補助孔4aとして用いてもよい。
【0027】
基部3のX2側の面は接着面31を構成する。接着面31は、パネル100の被支持面101に対向配置されて接着剤6により被支持面101に接着される面である。図4に示すように、接着面31は平面である。接着面31の外縁部33の全周には段部34が形成されている。段部34は、外縁部33より内側がX2方向に突出するように全周に形成されている。段部34は必須の構成ではなく、接着面31は、全域において一平面であってもよい。
【0028】
被支持部2は、基部3の正面視中央部に露出面32からX1方向に突出して設けられている。被支持部2は、略円柱状に突出しており、突出端面に接合部21が形成されている。接合部21は、支持構造物と接合される部位である。接合部21は、例えば、接着面31側に窪む球面形状の凹部である。接合部21内に支持構造物の接合端が挿入され接合される。接合部21は球面形状を有するため、パネル100に対する支持構造物の取付角度の適用範囲が広い。
【0029】
ガスケット5は、接着面31の外縁部33に取り付けられる環状部材である。ガスケット5は、段部34に配置され、接着面31の外周部分を囲む。ガスケット5は、接着面31よりも下方に突出して設けられる。ガスケット5によって、接着面31とパネル100の被支持面101との間に閉空間Sが形成される。ガスケット5は、パネル100の被支持面101および接着面31に当接し、被支持面101と接着面31との間の隙間を塞ぐ。ガスケット5は軟性樹脂からなる。ガスケット5は、例えば、透明シリコーンゴムのOリングである。ガスケット5は、透明シリコーンゴムを用いることによって、対候性に優れ、かつ、パネル100とパネル支持具1との接着部分においてガスケット5が外観上目立ち難く、意匠性を妨げない。
【0030】
ガスケット5は、パネル100の被支持面101と接着面31との間に設けられる接着剤6の厚さに応じた太さを有するリングである。ガスケット5は、リングの中心軸方向(パネル100の厚さ方向Xに沿う方向)の寸法を接着剤6の厚さに応じて設定する。
【0031】
接着剤6は、液状接着剤である。接着剤6は、例えば、対候性に優れたシリコーン系接着剤やメタアクリレート接着剤等である。
【0032】
次に、パネル支持具の固定構造およびパネル支持部具の固定方法について説明する。
接着面31の外縁部33にガスケット5を取り付ける。本実施形態では、リング状のガスケット5を段部34に嵌めると、ガスケット5を基部3に取り付けられる。ガスケット5は、段部34に嵌められた状態で、接着面31よりもX2方向に突出している。
【0033】
次に、図3に示すように、パネル支持具1をパネル100の所定位置に取り付ける。ガスケット5をパネル100の被支持面101に押し当てると、接着面31と、被支持面101とガスケット5とで囲まれた閉空間Sが形成される。パネル支持具1をパネル100に取り付ける際、例えば、固定治具を用いてもよい。固定治具は、例えば、吸着力、粘着力等を用いてパネル100の被支持面101にパネル支持具1を当接させた状態に保つ治具である。
【0034】
次に、注入口4から閉空間S内に液状接着剤を注入する。例えば、固定治具によって、パネル100の被支持面101にパネル支持具1を当接させた状態を保持しながら、注入口4から液状接着剤を注入する。液体接着剤の注入と共に液状接着剤注入前の閉空間S内の空気が補助孔4aから排出される。この結果、閉空間S内の空気が液体接着剤と混ざり難く、接着剤への気泡の混入を防止しながら液体接着剤を充填できる。また、補助孔4aから液状接着剤の注入量が確認できる。すなわち、図4に示すように、注入口4に注入ノズル(不図示)を挿入して液体接着剤を注入するため、注入口4が塞がれる。そのため、作業者は注入口4から液体接着剤の注入量が視認できないが、注入口4と同じ向きに開口する補助孔4aから液体接着剤の注入量を確認できる。閉空間S内が液体接着剤で満たされると、補助孔4aから液体接着剤が溢れて流出する。全ての補助孔4aから液体接着剤が溢れ出ると、液状接着剤が十分に注入されたことが確認できる。
【0035】
閉空間S内を液体接着剤で満たした後、図5に示すように、注入口4および補助孔4aを介して、液体接着剤が硬化する前に、注入口4および補助孔4aにネジ9を挿入し、ネジ9によって、注入口4および補助孔4aが塞がれる。この状態で液体接着剤が硬化するまで養生を行う。
【0036】
図3に示すように、パネル支持具の固定構造は、ガスケット5がパネル100の被支持面101に当接し、パネル支持具1の接着面31と被支持面101とが対向して離間配置され、閉空間Sが形成される。閉空間S内に接着剤6が充填されることによって、パネル支持具1がパネル100に接着する。
【0037】
図示は省略するが、接合部21に支持構造物が挿入されて、パネル支持具1が接着されたパネル100は支持構造物に支持される。
【0038】
図6は、パネル支持構造の他の使用例の縦断面図である。図6に示すように、パネル支持具1は、パネル100の曲面に対しても好適に接着できる。すなわち、ガスケット5が接着面31よりもX2方向に突出して設けられているため、パネル100が曲面パネルの場合であっても、ガスケット5によって、接着面31と被支持面101との間が離間した状態を保ち、閉空間Sを形成できる。そのため、パネル支持具1は、平坦なパネルおよび曲面パネルの両方に固定でき、汎用性が高い。
【0039】
パネル支持具1およびパネル支持具の固定構造によれば、接着面31の外縁部33にガスケット5が設けられることによって、接着面31とパネル100の被支持面101とガスケット5とで囲まれた閉空間Sが形成される。支持部材7に注入口4を備えるため、注入口4を通じて閉空間S内に液状接着剤を充填することができる。このため、パネル支持具1をパネル100に当接させた状態で液状接着剤を充填して、パネル支持具1をパネル100に容易に固定できる。さらに、液状接着剤が閉空間S内に充填される結果、ガスケット5によって液状接着剤の充填領域および接着剤の厚さを所望の範囲で均一化できるため、液状接着剤を用いてパネル支持具1とパネル100とを高品質に接着できる。
【0040】
パネル支持具1によれば、さらに補助孔4aを備える結果、注入口4から液状接着剤が注入され、閉空間Sが液状接着剤で満たされると補助孔4a内から液状接着剤が視認できる、あるいは補助孔4aから液状接着剤が溢れ出ることにより、閉空間S内が接着剤で満たされたことが確認できる。
【0041】
パネル支持具の固定方法によれば、パネル支持具1の接着面31にガスケット5を取り付ける工程と、接着面31をパネル100の被支持面101に対向配置し、ガスケット5をパネル100に押し当てる工程とによって、接着面31と被支持面101とガスケット5とで囲まれた閉空間Sが形成できる。閉空間Sに注入口4から液状接着剤を注入する工程によって、注入口4を通じて、閉空間S内に液状接着剤を充填することができ、パネル支持具1をパネル100に対して容易に固定できる。さらに、液状接着剤が閉空間S内に充填される結果、ガスケットによって液状接着剤の充填領域および接着剤の厚さを所望の範囲で均一化できるため、液状接着剤を用いてパネル支持部とパネルとを高品質に接着できる。
【0042】
次に、注入口4および補助孔4aの個数や位置を変えたパネル支持具を用意して実験を行った結果について述べる。
【0043】
(注入実験1)
注入口4および補助孔4aの好適な数と位置を検証するため、図7(a)~(c)に示すように、呼びM3のネジ孔4(4a)を2つ、3つ、4つあけた支持金物7A,7B,7Cを作製し、注入実験を行った。支持金物7Aがネジ孔4(4a)を2つ形成したものであり、支持金物7Bがネジ孔4(4a)を3つ形成したものであり、支持金物7Cがネジ孔4(4a)を4つ形成したものである。ネジ孔4(4a)の中心から接着剤6の外縁部35(本実施形態では段部34の位置と略同一)までの距離L(図4参照)は5mmとした。また、ガスケット5は、直径2mmの円形断面を有するリング状のものを用いたが、形状はこだわらない。結果として、支持金物7B(3孔タイプ)では注入口4以外の2つの孔4a,4aの間に大きな未充填箇所が生じてしまうことがわかった。一方、支持金物7A(2孔タイプ)および支持金物7C(4孔タイプ)では、いずれも全体に充填できたが、注入口4とは反対側の孔4a周辺に直径1mm程度の気泡が残ってしまうことがわかった。この気泡は注入口4の位置をもう少し外周側に設置することで解決できる。以上の実験結果から、支持金物7Aのようにネジ孔4(4a)は互いに180°の位置に2つあれば十分であることがわかった。また、ネジ孔4(4a)の大きさは、呼びM3のネジ孔であれば、作業性を確保しながら接着剤を充填可能であることも検証された。接着剤の粘度にもよるが、呼びM3より小さくなると注入するために必要な圧力が大きくなるため作業性が悪化し、呼びM3より大きくなるとネジ孔4(4a)が目立ってしまい意匠性が悪くなる。
【0044】
(注入実験2)
次に、注入口4と接着面31の外縁部33の好適な位置関係を検証するための実験を行った。図8に示すように、注入口4の中心から接着剤6の外縁部35(本実施形態では段部34の位置と略同一)までの距離Lが7mm、5mm、3mmの3ケースについて注入試験を行った。また、ガスケット5は、直径2mmの円形断面を有するリング状のものを用いたが、形状はこだわらない。なお、ネジ孔4(4a)の数は、注入実験1の結果から2つ(互いの位置関係は180°)、孔の大きさは呼びM3とした。その結果、距離L=7mmのときは注入口4と反対側の補助孔4a周辺に性能上または外観上問題となる直径1mm程度の気泡残りが生じた。距離L=5mmのときは性能上問題にはならない程度の非常に微細な気泡残りが見られた。距離L=3mmの場合には、気泡残りは生じず完全に充填できた。以上の結果から、注入口4の中心と接着面31の外縁部33の距離Lは5mm以下とする必要があることがわかった。特に、注入口4の大きさが呼びM3の場合には、L=3mmが最適であり、気泡残りなく充填が可能であることが分かった。
【0045】
上記注入実験から、支持部材7は正面視で円形に形成されている場合、注入口4と補助孔4aが支持部材7の中心を挟んで対向する位置(正面視で180°離れた位置)に注入口4と補助孔4aがそれぞれ一つずつ形成されていると、加工も容易で、かつ、接着剤を注入しても気泡が発生するのを抑制することができる。
【0046】
また、上記注入実験から支持部材7の注入口4および補助孔4aの位置は、注入口4および補助孔4aの中心から接着剤6の外縁部35(本実施形態では段部34の位置と略同一)までの距離Lが5mm以下であると、接着剤を注入した際に、気泡の発生を抑制することができる。なお、注入口4および補助孔4aの直径をLhとすると、距離Lは、Lh<L≦5mmであり、距離Lは3mm以下であればさらに好ましい。
【0047】
さらに、上記注入実験から支持部材7の注入口4および補助孔4aは、ねじの呼びM3のネジ孔で形成すると、作業効率よく接着剤を注入でき、かつ、意匠的にも注入口4および補助孔4aが目立たないため望ましい。
【0048】
さらに、ねじの呼びM3のネジ孔(距離L=5mm)を2個形成した支持金物と、ねじの呼びM4のネジ孔(距離L=5mm)を2個形成した支持金物とで注入実験を行った。なお、ネジ孔の大きさ以外の条件は同じとした。その結果、いずれの支持金物においても、注入後に気泡の混入はなかった。また、接着剤の加熱硬化後においても気泡の発生はいずれの支持金物においてもなかった。なお、作業性はM4の方がよく、意匠性はM3の方がよいため、状況に応じて使い分ければよい。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。また、これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0050】
本実施形態のパネル支持具1は、図示例に限定されない。例えば、パネル支持具1は、パネルの支持形態や意匠性等を考慮し、露出面32や被支持部2等の形状を適宜変更できる。例えば、基部3の露出面32が曲面や凹凸面であってもよい。基部3の正面視形状は、円形の例に限らず、矩形や異形であってもよい。
【0051】
補助孔4aは、通気口としての機能、接着剤6が閉空間S内に満たされたことを確認する機能、および、ネジ孔として機能する例を示したが、補助孔4aの数、位置および形は図示例に限定されない。補助孔4aは、基部3に貫通して少なくとも一箇所形成されていればよく、注入口4と形や大きさが異なる開口であってもよい。
【0052】
本実施形態のパネル支持具1は、接着面31の外縁部33に段部34を形成し、ガスケット5を段部34に係止する例を示したが、段部34は必須の構成ではない。パネル支持具1の接着面31にガスケットが固定あるいは仮固定される構成であればよい。例えば、段部を有さず、ガスケット5は、接着剤や粘着テープにより接着面31に仮固定してもよい。例えば、段部34に代えて、接着面31の外周部分にガスケット5を配置可能な平面視環状の凹部を形成し、凹部内にガスケット5の一部を挿入して係止する構成であってもよい。
【0053】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に係る溶接装置は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0054】
1 パネル支持具
3 基部
4 注入口(接着剤注入口)
5 ガスケット
6 接着剤
7 支持部材
21 接合部
31 接着面
100 パネル
101 被支持面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8