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特開2023-165282顔料分散体、塗膜形成用組成物及び硬化膜
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  • 特開-顔料分散体、塗膜形成用組成物及び硬化膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165282
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】顔料分散体、塗膜形成用組成物及び硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/46 20060101AFI20231108BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20231108BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231108BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20231108BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231108BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20231108BHJP
   C09B 47/00 20060101ALN20231108BHJP
【FI】
C09B67/46 A
C09B67/20 L
C09D201/00
C09D17/00
C09D7/63
C09D7/65
C09B47/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076129
(22)【出願日】2022-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】山本 卓哉
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037CB19
4J037CB28
4J037CC16
4J037EE28
4J037FF02
4J037FF05
4J038CG141
4J038CG142
4J038GA06
4J038GA09
4J038GA14
4J038JA06
4J038JB25
4J038JC39
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038MA14
4J038NA19
(57)【要約】
【課題】分散性に優れる顔料分散体及び塗膜生成用組成物を提供すること、及び、近赤外線の遮蔽性に優れ、従来よりも耐熱性が良好な硬化膜を提供すること。
【解決手段】スズナフタロシアニン顔料、分散剤及び溶剤を含有し、前記分散剤が、リン酸基を有し、酸価が1~128mgKOH/g、アミン価が0mgKOH/gである樹脂型分散剤である顔料分散体、該顔料分散体及び塗膜形成成分を含む塗膜形成用組成物、並びに、該塗膜形成用組成物の硬化膜。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズナフタロシアニン顔料、分散剤及び溶剤を含有し、
前記分散剤が、リン酸基を有し、酸価が1~128mgKOH/g、アミン価が0mgKOH/gである樹脂型分散剤である、顔料分散体。
【請求項2】
前記分散剤が、主骨格がアクリル骨格であるアクリル系樹脂型分散剤である、請求項1に記載の顔料分散体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の顔料分散体及び塗膜形成成分を含む塗膜形成用組成物。
【請求項4】
波長780~950nmの近赤外線を吸収可能な請求項3記載の塗膜形成用組成物の硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散体、塗膜形成用組成物及び硬化膜に関し、特にスズナフタロシアニン顔料を含有する顔料分散体、塗膜形成用組成物及び硬化膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属ナフタロシアニン化合物、なかでも二塩化錫(スズ、Sn)ナフタロシアニン化合物(以下、スズナフタロシアニン顔料という)は、近赤外線領域に大きな吸収を有しているため、近赤外線吸収材として広く利用されている(例えば特許文献1、2など)。
【0003】
特許文献1には、750~950nmの近赤外線の波長領域でフラットな光吸収波形を有する二塩化スズナフタロシアニン化合物と、それを用いた近赤外線吸収材とが開示されている。
【0004】
特許文献2には、特定の結晶形を有する塩化スズナフタロシアニン化合物を含有する金属ナフタロシアニン顔料(スズナフタロシアニン顔料)、該顔料を含有する近赤外線吸収材などが記載されている。そして、このような特定のスズナフタロシアニン顔料は、高い分散性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-35583公報
【特許文献2】特開2008-202000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スズナフタロシアニン顔料などの金属ナフタロシアニン顔料は、一般に、安定して分散させることが困難であるとされている。
【0007】
また、スズナフタロシアニン顔料を含有する塗膜は、成膜加工時の加熱(熱履歴)に耐える必要があるとともに、センサ等の赤外線吸収材として利用される際も、日光等に晒されて温度が上昇する場合もある。すなわち、塗膜としての高い耐熱性も要求される。ここに改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、分散性に優れる顔料分散体及び塗膜生成用組成物を提供することにある。また、近赤外線の遮蔽性に優れ、従来よりも耐熱性が良好な硬化膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前述の課題解決のために、鋭意検討を行った。その結果、スズナフタロシアニン顔料と特定の樹脂型分散剤とを用いて顔料分散体を構成することにより、前述の課題を解決可能であることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0010】
(1)スズナフタロシアニン顔料、分散剤及び溶剤を含有し、
前記分散剤が、リン酸基を有し、酸価が1~128mgKOH/g、アミン価が0mgKOH/gである樹脂型分散剤である、顔料分散体。
(2)前記分散剤が、主骨格がアクリル骨格であるアクリル系樹脂型分散剤である、前項(1)に記載の顔料分散体。
(3)
前項(1)又は(2)に記載の顔料分散体及び塗膜形成成分を含む塗膜形成用組成物。
(4)
波長780~950nmの近赤外線を吸収可能な前項(3)記載の塗膜形成用組成物の硬化膜。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分散性に優れる顔料分散体及び塗膜生成用組成物を提供することができる。また、近赤外線の遮蔽性に優れ、従来よりも耐熱性が良好な硬化膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で用いたスズナフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルを示した図である。
図2】実施例1~3の顔料分散体を用いて作製した塗膜のプレベーク後の透過スペクトルを示した図である。
図3】実施例1~3の硬化膜のポストベーク後の透過スペクトルを示した図である。
図4】実施例1~3の硬化膜のアドベーク後の透過スペクトルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る顔料分散体は、スズナフタロシアニン顔料、分散剤及び溶剤を含有する。そして、前記分散剤は、リン酸基を有する樹脂型分散剤である。この樹脂型分散剤の酸価は1~128mgKOH/gであり、この樹脂型分散剤のアミン価は0mgKOH/gである。
【0014】
前記スズナフタロシアニン顔料は、下記式(1)で示されるものを用いることができる。
【0015】
【化1】
【0016】
式(1)中、R~R24はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有する若しくは無置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有する若しくは無置換の炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有する若しくは無置換の炭素原子数4~20の複素環基、-O-R25または-S-R26を表し、R25およびR26はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有する若しくは無置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換基を有する若しくは無置換の炭素原子数6~20のアリール基を表し、Mは、ジクロロ又は二塩化スズ(SnCl)を表す。
【0017】
式(1)中のR~R24は、水素原子であるのが好ましい。また、R~R24が水素原子であるスズナフタロシアニン顔料は、特に限定はないが、例えば、特開2008-202000号公報に記載の結晶形を有するものや、後述する実施例1で用いた結晶形を有するものなどが挙げられる。実施例1で用いた本発明のスズナフタロシアニン顔料は、図1に示すX線回折スペクトル(XRDチャート)を示し、X線回折スペクトルにおいてBragg angleブラッグ角2θ(±0.3°)が6.0°に最大回折ピークを示し、更に、11.9°、13.8°、14.7°、16.4°、17.2°、26.7°、27.2°に回折ピークを有する。
【0018】
スズナフタロシアニン顔料の粒子の平均一次粒子径は、10~40nmが好ましい。スズナフタロシアニン顔料の一次粒子径は、例えば、顔料を透過型電子顕微鏡にて倍率10万倍で撮影した画像から測定できる。また、平均一次粒子径については、例えば、100個の粒子の一次粒子径を測定し、その平均値を平均一次粒子径とすることができる。
【0019】
スズナフタロシアニン顔料は微細化処理されたものを用いることができる。微細化処理は湿式、乾式の何れでもよい。例えば、特開2008-202000号公報に記載の方法を採用することができる。
【0020】
スズナフタロシアニン顔料の顔料分散体中の含有量は、固形分基準で1~12重量%とすることができる。
【0021】
分散剤は、リン酸基を有し、酸価が1~128mgKOH/g、アミン価が0mgKOH/gである樹脂型分散剤であればよい。樹脂型分散剤の樹脂の構造は、分散性の観点から、主骨格がアクリル骨格、ポリエステル骨格及びポリエーテル骨格のものから選択される少なくとも一種である。アクリル骨格を有するのが好ましい。
【0022】
分散剤の酸価は、1~128mgKOH/gであればよいが、分散性の観点からは、20~100mgKOH/gが好ましく、30~75mgKOH/gがより好ましい。分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
【0023】
樹脂型分散剤の分子量は、特に限定はなく、例えば、重量平均分子量(M)が3000~40000であるものを採用することができる。
【0024】
顔料分散体中、分散剤の含有量は、分散性の観点から、スズナフタロシアニン顔料100重量部に対して、固形分基準で50~200重量部が好ましい。
【0025】
溶剤は、例えば、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系、アルコール系、脂肪族系等の各種の溶剤が挙げられる。塗膜形成性の観点からは、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系から選択される少なくとも1種が好ましく、エステル系が特に好ましい。エステル系としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMAまたはPGMEA)などが挙げられる。溶剤は、これらのうち1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
顔料分散体において、溶剤の含有量は、特に限定はない。例えば、顔料分散体中70~99重量%とすることができる。
【0027】
顔料分散体は、必要に応じて前述した成分以外に、他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤としては、顔料誘導体、分散樹脂、染料、スズナフタロシアニン顔料以外の顔料、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)等が挙げられる。
【0028】
顔料分散体は、例えば、前述の各成分をビーズミル、サンドミル、ディスパー、ペイントコンディショナー等の公知の分散機に添加し、分散することで調製することができる。また、必要に応じて、ろ過処理を行ってもよいし、顔料濃度を調整するため溶媒を添加し、撹拌処理を行ってもよい。
【0029】
顔料分散体は、分散性が良好である。このような分散性は、例えば、分散処理直後の顔料分散体の粘度及び顔料分散体に含まれる粒子の粒子径と、を確認することにより評価することができる。また、分散処理後所定期間、所定条件下で保存した後の同粘度及び同粒子径の変化の程度を確認することにより、分散安定性を見てもよい。
【0030】
より具体的には、分散処理直後の粘度(初期粘度A)及び粒子径(初期粒子径X)を測定し、評価とするすることができる。また、分散処理直後の粘度(初期粘度A)及び粒子径(初期粒子径X)と、分散処理後40℃で1週間保存後の粘度(保管後の粘度B)及び粒子径(保管後の粒子径Y)を測定し、初期粘度Aに対する保管後の粘度Bの比率(B/A×100)、初期粒子径Xに対する保管後の粒子径Yの比率(Y/X×100)から評価してもよい。
【0031】
分散安定性については、これらの比率が、顔料分散体の粘度では変化率60~120%、顔料分散体に含まれる粒子の粒子径では変化率70~140%であれば良好であると評価することができる。粘度及び粒子径は、例えば、後述する実施例に記載の測定装置を用いて測定することができる。
【0032】
本発明の実施形態に係る塗膜形成用組成物は、前述の顔料分散体及び塗膜形成成分を含む。すなわち、塗膜形成用組成物は、前述の顔料分散体を構成する各成分と塗膜形成成分とを含むともいえる。
【0033】
塗膜形成成分としては、例えば、重合性成分、重合体、これらの混合物等が挙げられる。
【0034】
重合体としては、例えば、熱可塑性ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレン・マレイン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン樹脂、カルド樹脂などが挙げられる。
【0035】
塗膜形成用組成物中における重合体の含有量としては、塗膜形成用組成物の全固形分中で、10~90重量%が好ましく、より好ましくは、30~70重量%である。塗膜形成用組成物中における重合体の含有量は、顔料分散体に分散樹脂が含まれる場合は、それとの合計量である。重合体の分子量は適宜決定することができる。また、塗膜形成用組成物の全固形分中、顔料の濃度が3~30重量%となるようにするのが好ましい。
【0036】
塗膜形成成分としての重合体のうち、アルカリ領域の溶液に溶解性を示すアルカリ可溶性樹脂が好ましい。このようなアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、特開2021-191846号公報や特開2009-179789号公報に記載の(メタ)アクリル系重合体が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、現像性の観点からは、5000~50000が好ましい。
【0037】
重合性成分としては、フォトリソグラフィまたは現像(ネガ現像)により、パターニングを施すことが容易であることから、感光性の重合性成分(光重合性成分)が好ましい。使用可能な光重合性成分としては、光重合性化合物及び光重合開始剤を含む。このような光重合性化合物及び光重合開始剤は、例えば、特開2009-179789号公報に記載のものを用いることができる。光重合性化合物は、塗膜形成用組成物中の全固形分に対して、好ましくは5~70重量%含まれる。また、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。光重合開始剤の塗膜形成用組成物中における含有量としては、塗膜形成用組成物の全固形分に対して、0.1~10重量%が好ましい。
【0038】
塗膜形成用組成物には、必要に応じて、増感剤(増感色素)、連鎖移動剤、フッ素系有機化合物、熱重合開始剤、熱重合成分、充填剤、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)等の各種の添加剤を添加しても良い。
【0039】
塗膜形成用組成物は、前述の各成分を、例えば、ディスパー、シェイカー等により撹拌することで得ることができる。顔料分散体を用いる場合は、塗膜形成用組成物中の固形分濃度を調整するため溶媒を添加してもよい。また、撹拌の際の塗膜形成用組成物中の固形分濃度は、例えば、5~30重量%とすることができる。得られた混合液は、必要に応じてろ過処理を行ってもよい。
【0040】
塗膜形成用組成物の硬化膜は、スピンコート等の公知の装置を用いて、所望の基材の表面に所望の厚みとなるように塗膜形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜形成成分を加熱等により硬化させることで形成することができる。この硬化膜は、波長780~950nmの近赤外線を吸収可能である。特に、耐熱性が良好で、例えば、後述する実施例の欄に記載の条件で加熱(ポストベーク)した後も波長780~950nmの近赤外線の吸収が実使用の範囲内とすることができる。このような硬化膜は、光学フィルタ、固体撮像素子、画像表示装置、赤外線センサなどに用いられる近赤外線吸収フィルタなどとして好適である。
【実施例0041】
以下、実施例に基づき本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0042】
(実施例1)
使用した顔料:スズナフタロシアニン顔料(山陽色素株式会社製、NC502)
式(1)中のR1~24が水素原子で、MがSnClである。X線回折スペクトルを図1に示す。前述のように所定の位置に回折ピークを有する。
組成:スズナフタロシアニン顔料(NC502) 6重量部、
樹脂型分散剤A(主骨格:アクリル骨格、顔料への吸着基:リン酸基、
固形分:56.4重量% 酸価:48mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)
10.6重量部、
溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:PMA又はPGMEA)
83.4重量部、
を配合しミルベースを得た。次に、そのミルベース100重量部に対し、直径0.1mmのジルコニアビーズを400重量部配合し、ペイントコンディショナーにより60分間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズを除去し、スズナフタロシアニン顔料の濃度が5重量%となるように、PMAを添加、撹拌して、実施例1の顔料分散体を得た。
【0043】
(実施例2)
組成:スズナフタロシアニン顔料(NC502) 6重量部、
樹脂型分散剤B(主骨格:ポリエステル骨格、顔料への吸着基:リン酸基、
固形分:100重量% 酸価:50mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)
6重量部、
溶剤(PMA) 88重量部、
を配合しミルベースを得た。次に、実施例1と同様の操作により、実施例2の顔料分散体を得た。
【0044】
(実施例3)
組成:スズナフタロシアニン顔料(NC502) 6重量部、
樹脂型分散剤C(主骨格:ポリエーテル骨格、顔料への吸着基:リン酸基、
固形分:50重量% 酸価:48mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)
12重量部、
溶剤(PMA) 82重量部、
を配合しミルベースを得た。次に、実施例1と同様の操作により、実施例3の顔料分散体を得た。
【0045】
(比較例1)
組成:スズナフタロシアニン顔料(NC502) 6重量部、
樹脂型分散剤D(主骨格:ポリエステル骨格、顔料への吸着基:リン酸基、
固形分:100重量% 酸価:129mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)
6重量部、
溶剤(PMA) 88重量部、
を配合しミルベースを得た。次に、実施例1と同様の操作により、分散処理を行ったが、ゲル化し顔料分散体を得ることができなかった。すなわち、比較例1の組成は、分散不良を起こした。
【0046】
(比較例2)
組成:スズナフタロシアニン顔料(NC502) 6重量部、
樹脂型分散剤E(主骨格:アクリル骨格、顔料への吸着基:アミノ基、
固形分:45.1重量% 酸価:19mgKOH/g、アミン価:29mgKOH/g) 13.3重量部、
溶剤(PMA) 80.7重量部、
を配合しミルベースを得た。次に、実施例1と同様の操作により、分散処理を行ったが、ゲル化し顔料分散体を得ることができなかった。すなわち、比較例2の組成は、分散不良を起こした。
【0047】
(比較例3)
組成:スズナフタロシアニン顔料(NC502) 6重量部、
樹脂型分散剤F(主骨格:アクリル骨格、顔料への吸着基:カルボキシル基、
固形分:100重量% 酸価:106mgKOH/g、アミン価:0mgKOH/g)
6重量部、
溶剤(PMA) 88重量部、
を配合しミルベースを得た。次に、実施例1と同様の操作により、分散処理を行ったが、ゲル化し顔料分散体を得ることができなかった。すなわち、比較例3の組成は、分散不良を起こした。
【0048】
(評価1)
<粘度>
実施例1~3で得られた顔料分散体について、「表1」に示すように、調製直後の初期粘度(A)により、顔料分散体の分散性を評価した。なお、初期粘度(A)が30mPa・s以下のものを「良」とした。また、40℃で1週間保管した後の粘度(B)を測定し、初期粘度(A)に対する保管後の粘度(B)の変化率(分散安定性)を下記式により算出した。なお、粘度の測定は、東機産業社製、TV-22型粘度計により行った。
粘度の変化率[%]=(保管後の粘度B/初期粘度A)×100
【0049】
<粒子径>
実施例1~3で得られた顔料分散体について、調製直後の初期粒子径(X)が180nm以下のものを「良」とした。また、40℃で1週間保管した後の粒子径(Y)を測定し、初期粒子径(X)に対する保管後の粒子径(Y)の変化率(分散安定性)を下記式により算出した。なお、粒子径の測定は、大塚電子社製、FPAR-1000により行った。
粒子径の変化率[%]=(保管後の粒子径Y/初期粒子径X)×100
【0050】
評価1の結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
(評価2)
<塗膜の耐熱性>
実施例1~3で得られた顔料分散体、塗膜形成成分(アクリル樹脂、重量平均分子量:7700、酸価:115mgKOH/g、アミン価なし、固形分:37.2重量%)、及び、溶剤(PMA)を混合、撹拌し、塗工液(本発明の塗膜形成用組成物)を調製した。この際、塗工液の固形分が12重量%、固形分基準で塗工液における顔料の濃度が25重量%となるように各成分を配合した。得られた実施例1、2、3の各塗工液を用い、スピンコートにより、基材(材質:ガラス)の表面に、膜厚が1μmの各塗膜を形成した。表面に各塗膜が形成された基材(塗板)を、常温(23℃)で3分間乾燥した後、90℃で2.5分間加熱(プレベーク:図2の状態)し、続いて230℃で30分間加熱(ポストベーク:図3の状態)して基材上に硬化膜を作製した。
【0053】
次いで、ポストベーク後、さらに230℃で3時間の追加加熱(アドベーク:図4の状態)を行った。プレベーク後、ポストベーク後及びアドベーク後の塗板について、分光光度計(日本分光社製、V-670)により、光透過スペクトルを測定した。測定結果を図2~4に示す。また、各実施例の波長900~950nm(赤外線領域)におけるプレべーク後、ポストベーク後、アドベーク後の光透過率(%)の代表値を「表2」に示す。なお、評価基準は、ポストベーク後の波長780~950nmの透過率が30%以下であれば実用上使用可能であり、透過率が0%に近いほど良好な近赤外線吸収特性を有するといえる。
【0054】
【表2】
【0055】
(評価結果)表1、表2、及び図2~4に示すように、スズナフタロシアニン顔料と、リン酸基を有する特定の樹脂型分散剤を含む本発明の顔料分散体は、一般に安定して分散させることが困難と言われるスズナフタロシアニン顔料であっても、良好に分散させることができる。そのため、塗膜形成用組成物も良好な分散性を有し得る。また、前記顔料分散体を含む塗膜形成用組成物を加熱硬化させた硬化膜は、耐熱性が良好で、良好な近赤外線光の遮蔽を維持できていることが分かる。なかでも、主骨格がアクリル骨格であるアクリル系樹脂型分散剤Aを用いた組成物からなる硬化膜は、成膜加工時の加熱に耐えるとともに、利用される際の日光の暴露等に伴う温度上昇にも耐える耐熱性を有する。
図1
図2
図3
図4