(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023165385
(43)【公開日】2023-11-15
(54)【発明の名称】CO2又はCOの分解方法及び分解装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20231108BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20231108BHJP
B01D 53/32 20060101ALI20231108BHJP
【FI】
C01B32/05
B01D53/62 ZAB
B01D53/62 100
B01D53/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109574
(22)【出願日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2022075639
(32)【優先日】2022-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502030271
【氏名又は名称】石川 泰男
(71)【出願人】
【識別番号】522157055
【氏名又は名称】株式会社イシカワLABO
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】伊東 昭典
【テーマコード(参考)】
4D002
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA08
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC04
4D002BA09
4G146AA01
4G146BA08
4G146BA09
4G146BC08
4G146BC15
4G146DA47
4G146DA50
(57)【要約】
【課題】エネルギーの大なる電磁波でCO
2のCとOとを分離し、CとOとを別々に排出する。
【解決手段】ケーシング1の内壁にカーボン層2を形成し、ケーシング1の外周面を加熱して複数の周波数からなる定常波を発生せしめ、この定常波によりケーシング1内に供給されるCO2をCとOとに分離し、このCとOとを電気的又は磁気的に分流化して排出装置6から別個に排出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の表面でCO2又はCOのCとOとを分離する分離空間を形成し、少なくとも導電性の表面の一部を加熱することにより複数の周波数を有する電極波を発生せしめ、前記導電性の表面を放射された電磁波が定常波となるように配置し、放射した電磁波のエネルギーが分離空間内に供給されたCとOとの結合エネルギーより大きくなるようにして、それらを電離した状態で分離し、この分離したCとOとを別個に排出するようにしたCO2又はCOの分解方法。
【請求項2】
導電性の表面で区画され、CO2又はCOが供給される分離空間と、少なくとも導電性の表面の一部を加熱する加熱装置と、前記分離空間内で電離状態で分離されたCプラスイオンとOマイナスイオンを電気的に分離して排出するようにした分離排出装置とを有し、前記導電性の表面は加熱により多数の周波数の混合した電磁波を放射するとともに定常波を生じるように配置され、これによりCとOとの結合エネルギーより大なるエネルギーを放出するCO2又はCOの分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2又はCOをCとOとに分解し、無害化するための分解方法及び分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素又は二酸化炭素の分解については、誘導結合プラズマ発生用高周波コイルによりプラズマを発生させて分解し分離した後に、一組の電極でCとOとを別々に排出するようにしたもの(特公平7-51215号)あるいは、棒状の陽極と陰極を対向配置してプラズマ雰囲気を形成し、両極間でCO2のCとOとを分離するものが知られている(特表2011-500309号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7-51215号
【特許文献2】特表2011-500309号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1には、電磁波でCO又はCO2を分解し、分解したCとOとを分離させ、それぞれ別個に電気的に分離して取出すという概念は開示されているが、電磁波の発生手段が高周波コイルであり、特許文献2では電磁波の発生手段が棒状の電極であり、いずれもこのような定まった周波数の電流からは、多数の周波数が混在した電磁波は発生せず、反応空間内で定常波が発生するような考慮がなされておらず、このような手段により発生した電磁波のエネルギーは大きくないので、CとOとの分離は十分行われていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のCO又はCO2の分解方法は、導電性の表面でCとOとを分離する分離空間を形成し、少なくとも導電性の表面の一部を加熱することにより複数の周波数を有する電極波を発生せしめ、前記導電性の表面を放射された電磁波が定常波となるように配置し、放射した電磁波のエネルギーが分離空間内に供給されたCとOとの結合エネルギーより大になるようにしてCとOとを電離した状態で分離し、この分離した各元素を別個に取出すようにした。
【0006】
更に、本発明のCO2又はCOの分解装置は導電性の表面で区画され、CO2又はCOが供給される分離空間と、少なくとも導電性の表面の一部を加熱する加熱装置と、前記分離空間内で分離されて電離したCプラスイオンとOマイナスイオンを電気的に分離して排出するようにした分離排出装置とを有し、前記導電性の表面は加熱により多数の周波数の混合した電磁波を放射するとともに定常波を生じるように配置され、これによりCとOとの結合エネルギーより大きなエネルギーを発生せしめる。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、エネルギーの大きな電磁波を発生させるための工夫がなされている。すなわち、電磁波のエネルギーを大きくするためには、多数の周波数を含む波束を生じるものである必要があり、そのためには加熱により結晶格子内の元素の原子核、電子(電荷を備える)を熱振動させて多数の周波数を有する電磁波を発生させている。分離空間の表面の配置が、発生した電磁波が対向する分離空間の表面で表面の電子を振動させて同一経路を反射進行して往路波と復路波が重なって定常波を生じるように形成されているので、エネルギーの大きな電磁波を生じさせ、CO2、COのCとOとを確実に切離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のCO
2(CO)の分解装置の縦断面である。
【
図2】電磁波の波束がパルス波を発生することの説明図である。
【
図5】電気的分流装置の他の実施例を示す図である。
【
図7】カーボン層からの電磁波の放射状態を示す図である。
【
図8】カーボン層での電磁波の反射状態説明図である。
【
図9】本発明のCO
2の分解装置の他の実施例を示す縦断面図である。
【
図10】
図9のCO
2の分離装置の横断面図である。
【
図11】炭化水素ガス製造装置の概略構成図である。
【
図12】回収箱内の活性炭粒子とその周面に付着された原子状炭素との付着状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1において、本発明のCO
2(CO)の分解装置Mは、筒状のSUS304製のケーシング1を有し、このケーシング1内にはカーボン材からなるカーボン層2が付着形成されている。前記ケーシング1の外周には電気ヒータ3が設けられ、この電気ヒータ3によりケーシング1及びカーボン層2が200~600℃に加熱され、ケーシング1及びカーボン層2からは加熱によって電磁波が放射され、この電磁波によりCO又はCO
2のCとOとを分離する分離空間Pが100~300℃に加熱される。前記分離空間P内においては、その中に供給されるCO又はCO
2のCとOとが分離空間P内で電磁波により分離されるが、電磁波のエネルギーを大きくするためには開発者による10年以上の実験の結果、以下の条件が必要となることが判明している。
【0011】
1.結晶格子を有する材料であって、加熱することにより結晶格子が振動し、これとともに格子を構成する各原子も振動する。すなわち、電荷を有する原子内の電子、原子核をも振動させて電磁波を発生させると、種々の周波数を備えた電磁波が放射され、これらが波束を形成し、この波束がエネルギーの大なるパルスを生じさせる(
図2)。
【0012】
2.導電性の材料であって、電磁波を放射し易く放射された電磁波が当たったときに、そのエネルギーを吸収した電子が振動し、これにより放射された電磁波に対応した電磁波を放射すること。
【0013】
図3において定常波とは、カーボン層2間の直径D内において、電磁波rの両端がカーボン層2内壁の一点に固定され、往路の電磁波と復路のそれとが重なり、それら半波長の整数倍が直径Dに等しくなるものをいい、そのエネルギーは量子力学上周波数の二乗に等しくなる。
【0014】
3.電磁波を放射する放射部分と放射された電磁波を吸収して反射する反射部分間で定常波が生じるように構成されていること(
図3)。
【0015】
これらの条件を満足する材料としては、ステンレス材、鉄材、カーボン材が好ましくケーシング2としては、ステンレス材(SUS304)、鉄材が使用される。
【0016】
前記ケーシング1の周面側壁には、
図4に示すように直径方向に対向して細長の永久磁石からなる磁気的分流装置4(4a、4b)が固着され、図において左側にはN極磁石4aが右側にはS極磁石4bが固着され、磁石線mがN極からS極に放射されている。
【0017】
前記ケーシング(
図1)の左側には処理すべき気体、例えば、空気(N
2、O
2)の中に混入しているCO
2が混入せしめる流入口5が形成され、前記ケーシング1の出口側には処理気体に含まれる原子の電気的性質に応じて分離された分流を別個に排出するための排出装置6が形成されている。前記処理気体は、分離空間P内において、前記永久磁石4からなる磁気的分流装置によって、上下に分けられ上分流Uと下分流Dは仕切板7によって分けられ、上分流Uは上分岐排出管8を通って、下分流Dは下分流排出管9を通って外部に排出される。
【0018】
前記分離空間P内には、処理気体の原子の電離を助長するための放電装置10の電極10a、10bが臨まされ、電極10a、10bの先端には高電圧が付加されて、放電時に多数の電子e
-が分離空間P内に供給される。また、磁気的分流装置4の代わりに、
図5に示すように電気的分流装置20が形成されてもよい。
【0019】
前記電気的分流装置20において、ケーシング1の上側外側面には、+電極板21が、これに対向してその下側外側面には、-電極板22がケーシング1に絶縁状態で設けられ、前記両電極板21、22には、直流電源23によりそれぞれ電圧がかけられている。
【0020】
次に、空気とCO2とが混合している焼却炉等の排気ガスを処理するための分流作用について説明する。
【0021】
前記カーボン層2が200~600℃に加熱されると、その内壁からは温度に応じて
図6に示すように、同一周波数、例えば10
10HzのエネルギーE(光子数)は、加熱温度が高くなる程大きくなり、各温度におけるエネルギーEのピークPは、次第に周波数の大きい方に移動し、温度が高くなればなる程ピーク値における周波数は高くなる。前記カーボン層2はPlanckの黒体放射をなし、カーボン層2の内壁からは、
図7に示すように互いに直径方向に周波数の異なる多数の電磁波r
0が放射され、これらの電磁波r
0は、
図3に示すように円筒形のカーボン層2の直径D間を往復動する波の両端が固定され、半波長の整数倍(n倍…量子数n)が、その直径Dに等しい定常波である。一般に、カーボン材を200~500℃に加熱すると、
図6に示すように、低周波数のものから高周波数の無数の周波数を有する電磁波が形成され、すなわち、1、2…n次の定常波が形成されることとなる。
【0022】
なお、カーボン材2の表面は、導電性が維持され電子e
-が自由に振動できることが必要であり、放射された電磁波r
0は対向カーボン壁の電子e
-を振動せしめ、この振動が反射電磁波r
1を放射せしめ、もとの壁面の電子e
-を振動させて同一経路を電磁波が往復動して定常波が形成される(
図8)。
【0023】
また、
図12に示すように、周波数の異なる多数の電磁波が重なると波束w・bが生じ、出力の大きなパルス波p・wが形成されることも知られている。このように、円筒形のカーボン層を200~600℃に加熱すると、主としてマイクロ波から赤外線領域(10
9Hz~10
13Hz)の電磁波が発生し、しかもその電磁波は定常波であり波束も生じるので、CO
2のCとOとの結合エネルギーより大きなエネルギーを生じさせることも出来る。更に詳しく説明すると、O=C=O(CO
2)のC=O結合エネルギーは、173kcal/molである。また、CO
2の結合エネルギーは、C=O結合が2個であるので、2×173×1000×4.18J(1cal)であり、CO
2の1分子の結合エネルギーは、
346×1000×4.18÷6×10
23
≒2.4×10
-18J …(1)
であり、このエネルギー(E)は、どの程度の電磁波の周波数に相当するかを求めると電磁波のエネルギーは、
E=hν(h:プランク定数、ν:周波数)…(2)
であり、式(1)から
ν=2.4×10
-18J/h(6.63×10
-34)
≒3.6×10
15…(3)
であり、この周波数は紫外線領域に属する。前記カーボン層から放射される電磁波の中に
は、数は少ないが紫外線が含まれるのでCO
2のCとOへの分解は僅かながら生じ得る。
しかしながら定常波と波束を考慮すると、CO
2のCとOへの分解は容易に生じ得ること
となる。
【0024】
定常波のエネルギーについては、シュレジンが-の波動方程式の電子の物質波について
の式によれば量子数n次のエネルギーEnは、電子の質量をmとすると、
【0025】
【数1】
h:プランク定数 D:カーボン筒層の直径
となり、
【0026】
【数2】
であるので、
En=n
2E
1 …(5)
となり、エネルギーEnは量子数nの2乗、すなわち、周波数(ν)の2乗に比例するので、紫外線よりも周波数の少ない赤外線、マイクロ波でもCとOとの結合エネルギーの大なる電磁波となり得るし、これらの電磁波の波束により更にエネルギーが増大するので、確実にCO
2の結合エネルギーより大なる電磁波が発生し得る。
【0027】
次にケーシング1内にCO2を供給した場合のCO2の挙動について説明する。
【0028】
前記流入口5から分離空間P内に入ったCO
2は先ず、カーボン材から放射される電磁波によりCとOとOに分離され、次いで、分離したCとOに電磁波が当たり、電気的に陽性のCは帯電してプラスのイオン(C
1+、2
+、
3+…
n+)となる。すなわちC原子から弾き出される電子の数により電荷数の異なるプラスイオンの混合となる。また、電気的に陰性のOは、Cから弾き出された電子を吸収してマイナスに帯電してマイナスのイオン(O
2-…O
n-)となる。プラス電荷のCイオンとマイナス電荷のOイオンは、
図4に示す磁力線mによりフレミングの左手の法則により上下に分離され、Oは流路P内で上分流を形成し、Cは下分流を形成し、これらは仕切板7によって仕切られ、Oは上分岐排気管8を通って排気され、Cは下分岐排気管9を通ってその先端に取り付けられた回収箱40によって回収される。この回収箱40には、例えば活性炭が交換可能に設けられ、Cがこれに付着して回収される。なお、CO
2が空気と混合して供給された場合には、空気のNはプラスに、Oはマイナスに帯電し、この時CはNとともに下分流を形成する。また、
図3に示すように、ケーシング1の上側にプラス電極を下側にマイナス電極を設置すれば同様の作用をさせることが出来る。更に、流通路P内の電子不足を補うために放電装置10が作動される。更に、また、予備的にNaOH、Nacl、CaCO
3の粉体を入口5近くから混入させてCO
2の分離効率を向上させてもよい。
【0029】
前記Cの回収箱40は、
図11、12に示すように炭化水素ガス、例えばメタンCH
4、エタンC
2H
6、プロパンC
3H
8等の燃料ガスの製造に使われる。前記回収箱40内の活性炭の粒子41、41…41が多数収納され、これら粒子41の周面には多数の原子状の炭素42、42…42が付着されている。前記回収箱40はステンレス製であり、その壁面は多孔に形成されて気体が内部に流入し得るようになっている。
【0030】
前記回収箱40は炭化水素ガス製造装置42内に設置され、装置42はステンレス製のケーシング43を有し、このケーシング43の入口44からは、ここから水素ガスH2が供給され、その出口45からはメタン、プロパン、ブタン等の炭化水素ガスCXHYが取出される。前記ケーシング43内には、カーボン筒46が収納され、前記ケーシング43の外周壁にはヒータ46が設けられ、このヒータ46を300~500℃に加熱することにより、カーボン筒46からは、定常波からなる電磁波が放射され、このエネルギーの大なる電磁波が、前記回収箱40内の活性炭素粒子41の周面からの原子状の炭素42をカーボン筒内に飛散せしめ、この原子状炭素42とケーシング43内に供給された水素H2とが電磁波の雰囲気の中で結合してC原子1個のメタン(CH4)が先ず発生する。C原子が複数のエタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)の採集を希望する場合には、前記入口44の近傍から、所望の種ガスCXHYガスを供給すれば、この種ガスに応じたCXHYガスが得られる。なお、種ガスを流すときには、真空ポンプ47でケーシング43内を負圧状態に引きながら行えば、種ガスの流れがスムーズになり好ましい。
【0031】
次に、本発明の他の実施例について説明する。
【0032】
CO2(CO)の分解装置50は、ステンレス製の筒状ケーシング51を有し、このケーシング51内にはカーボン筒52が収納され、ケーシング51の中心部にはヒータ管53が収納され、このヒータ管53内には棒状のヒータ54が収納され、前記ヒータ管53からは定常波s・wが前記カーボン筒52に対して放射され、この定常波s・wはヒータ管53とカーボン筒52間で反射を繰り返す。
【0033】
前記ケーシング51の左側には、CO2入口55が取付けられ、ケーシング51の右側端にはその上方にO2出口56が、その下方にC出口57が設けられ、それら出口56、57間に斜めにアニオンからなるイオン交換膜58が設けられ、このイオン交換膜58は電気的にマイナスのO2-イオンのみを通過せしめ、電気的にプラスのC4+イオンはイオン交換膜58を通過できずにC出口57から外部に排出される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
CO2を多量に排出する火力発電、焼却炉分野に応用できる。
【符号の説明】
【0035】
1…ケーシング
2…カーボン層
3…電気ヒータ
4…磁気的分流装置
6…排出装置
7…仕切板
8…上分岐排出管
9…下分岐排出管
20…電気的分流装置
40…回収箱