(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023167679
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】調光シート、および調光シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20231116BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1343
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079031
(22)【出願日】2022-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福原 啓介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦弘
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
【Fターム(参考)】
2H088EA22
2H088EA33
2H088FA02
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA02
2H088MA20
2H092GA13
2H092HA04
2H092NA25
2H092RA10
(57)【要約】
【課題】調光シートの意匠性を高める。
【解決手段】第1透明導電層と、第2透明導電層と、前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、を備える調光シートであって、導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、第1透明導電層は、調光領域に位置する1つの第1電極部と、第1電極部の少なくとも一部を囲い、調光領域に位置する1つの第2電極部と、1つの第1電極部に別々に接続された2つ以上の狭窄電極部と、を備え、各狭窄電極部は、1つの第2電極部に接続されると共に、第1電極部と第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明導電層と、
第2透明導電層と、
前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、
を備える調光シートであって、
導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、
前記第1透明導電層は、
前記調光領域に位置する1つの第1電極部と、
前記第1電極部の少なくとも一部を囲い、前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、
1つの前記第1電極部に別々に接続された2つ以上の狭窄電極部と、を備え、
各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する
ことを特徴とする調光シート。
【請求項2】
第1透明導電層と、
第2透明導電層と、
前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、
を備える調光シートであって、
導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、
前記第1透明導電層は、
前記調光領域に位置する2つの第1電極部と、
前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、
各第1電極部に1つ以上ずつ接続された2つ以上の狭窄電極部と、を備え、
各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する
ことを特徴とする調光シート。
【請求項3】
前記狭窄電極部は、前記狭窄電極部を挟む2の溝によって前記第1透明導電層に区切られ、
前記溝は、前記第1電極部の縁から前記狭窄電極部を通じて前記第2電極部の縁まで延びる
請求項1または2に記載の調光シート。
【請求項4】
前記第1透明導電層を支持する第1透明支持層をさらに備え、
前記溝は、前記第1透明導電層を貫通し、かつ前記第1透明支持層に底部を備える
請求項3に記載の調光シート。
【請求項5】
前記第1透明導電層を支持する第1透明支持層をさらに備え、
前記溝は、前記第1透明導電層、および前記第1透明支持層を貫通する
請求項3に記載の調光シート。
【請求項6】
導電層間の電圧によって透過率を変えない領域が非調光領域であり、
前記非調光領域は、前記第1透明導電層のなかで前記溝に全体を囲まれた浮遊導電部を備える
請求項3に記載の調光シート。
【請求項7】
前記第2電極部は、図柄形状を有し、
前記第1電極部は、前記図柄形状を引き立たせる背景形状を有する
請求項6に記載の調光シート。
【請求項8】
前記第2電極部は、前記調光シートの外周部に位置する
請求項6に記載の調光シート。
【請求項9】
前記第1透明導電層は、前記調光領域に位置する電極端部を備え、
前記電極端部は、2つの辺が先端に向けて近づく先細り形状を有し、
前記2つの辺の間隔は、1mm以上であり、
前記2つの辺の形成する角度が10°以上である
請求項1または2に記載の調光シート。
【請求項10】
第1透明導電層と、
第2透明導電層と、
前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、
を備える調光シートの製造方法であって、
導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、
前記第1透明導電層に、
前記調光領域に位置する1つの第1電極部と、
前記第1電極部の少なくとも一部を囲い、前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、
1つの前記第1電極部に別々に接続された2つ以上の狭窄電極部と、
を区切る抵抗部を形成することを含み、
各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する
ことを特徴とする調光シートの製造方法。
【請求項11】
第1透明導電層と、
第2透明導電層と、
前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、
を備える調光シートの製造方法であって、
導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、
前記第1透明導電層に、
前記調光領域に位置する2つの第1電極部と、
前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、
各第1電極部に1つ以上ずつ接続された2つ以上の狭窄電極部と、
を区切る抵抗部を形成することを含み、
各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する
ことを特徴とする調光シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透過率を変更可能な調光シート、および調光シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、調光層を挟む透明導電層とを備えている。透明導電層間に印加される電圧の変更は、液晶化合物の配向状態を変え、これによって調光シートの透過率を変える。例えば、液晶化合物の長軸方向が調光層の厚さ方向に沿うとき、調光シートは透明である一方で、液晶化合物の長軸方向が無秩序であるとき、調光シートは不透明である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調光シートの適用対象は、パーティションや間仕切りなどの各種内装品から、移動体の窓ガラスやショウウインドウなどの各種外装品にまで、急速に拡大する一途である。調光シートによる文字や絵柄の表示は、調光シートに区切られた空間に新たな需要を創出する。このため、意匠性を高める調光シートの開発が強く要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための調光シートは、第1透明導電層と、第2透明導電層と、前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、を備える調光シートであって、導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、前記第1透明導電層は、前記調光領域に位置する1つの第1電極部と、前記第1電極部の少なくとも一部を囲い、前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、1つの前記第1電極部に別々に接続された2つ以上の狭窄電極部と、を備え、各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する。
【0006】
上記課題を解決するための調光シートは、第1透明導電層と、第2透明導電層と、前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、を備える調光シートであって、導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、前記第1透明導電層は、前記調光領域に位置する2つの第1電極部と、前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、各第1電極部に1つ以上ずつ接続された2つ以上の狭窄電極部と、を備え、各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する。
【0007】
上記課題を解決するための調光シートの製造方法は、第1透明導電層と、第2透明導電層と、前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、を備える調光シートの製造方法であって、導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、前記第1透明導電層に、前記調光領域に位置する1つの第1電極部と、前記第1電極部の少なくとも一部を囲い、前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、1つの前記第1電極部に別々に接続された2つ以上の狭窄電極部と、を区切る抵抗部を形成することを含み、各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する。
【0008】
上記課題を解決するための調光シートの製造方法は、第1透明導電層と、第2透明導電層と、前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、を備える調光シートの製造方法であって、導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、前記第1透明導電層に、前記調光領域に位置する2つの第1電極部と、前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、各第1電極部に1つ以上ずつ接続された2つ以上の狭窄電極部と、を区切る抵抗部を形成することを含み、各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する。
【0009】
上記各構成によれば、第1電極部に調光された領域が第2電極部に調光された領域と恰も別体であるように、透過率の相違による表示が調光シートに浮かび上がる。この際、狭窄電極部の幅が1mm以上である。このため、第1電極部に調光された領域と第2電極部に調光された領域との間で透過率差が視認されない程度に、第1電極部と第2電極部との間で電圧降下が抑制される。結果として、別体に視認される領域間で透過率差が抑えられるため、調光シートの意匠性が向上する。
【0010】
上記調光シートにおいて、前記狭窄電極部は、前記狭窄電極部を挟む2の溝によって前記第1透明導電層に区切られ、前記溝は、前記第1電極部の縁から前記狭窄電極部を通じて前記第2電極部の縁まで延びてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1電極部、第2電極部、および狭窄電極部が第1透明導電層のなかで溝に区切られる。これにより、第1電極部が狭窄電極部に接続されること、および第2電極部が狭窄電極部に接続されることの堅牢性が高まる。このため、第1電極部に調光された領域が第2電極部に調光された領域と恰も別体であるように視認させることの実効性が向上する。
【0012】
上記調光シートは、前記第1透明導電層を支持する第1透明支持層をさらに備え、前記溝は、前記第1透明導電層を貫通し、かつ前記第1透明支持層に底部を備えてもよい。
この構成によれば、第1電極部に調光された領域が第2電極部に調光された領域と恰も別体であるように視認させることの実効性がさらに向上する。
【0013】
上記調光シートは、前記第1透明導電層を支持する第1透明支持層をさらに備え、前記溝は、前記第1透明導電層、および前記第1透明支持層を貫通してもよい。
この構成によれば、第1電極部に調光された領域が第2電極部に調光された領域と恰も別体であるように視認させることの確実性が一層に向上する。
【0014】
上記調光シートにおいて、導電層間の電圧によって透過率を変えない領域が非調光領域であり、前記非調光領域は、前記第1透明導電層のなかで前記溝に全体を囲まれた浮遊導電部を備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、第1電極部に調光された領域の少なくとも一部と、第2電極部に調光された領域の少なくとも一部とが、非調光領域によって縁取られる。このため、第1電極部に調光された領域の鮮明さと、第2電極部に調光された領域の鮮明さとが向上する。
【0016】
上記調光シートにおいて、前記第2電極部は、図柄形状を有し、前記第1電極部は、前記図柄形状を引き立たせる背景形状を有してもよい。
この構成によれば、図柄が背景と恰も別体であるように、図柄と背景とが調光シートに浮かび上がる。この際、背景と図柄との間の透過率差が抑えられると共に、背景の浮かび上がりが図柄の浮かび上がりに連動する。結果として、背景と図柄との一体感が醸し出されるため、調光シートの意匠性がさらに向上する。
【0017】
上記調光シートにおいて、前記第2電極部は、前記調光シートの外周部に位置してもよい。この構成によれば、調光シートの外周部と内周部との間の透過率差が抑えられると共に、外周部の浮かび上がりが内周部の浮かび上がりに連動する。結果として、調光シートの全体において調光による演出の一体感が醸し出されるため、調光シートの意匠性がさらに向上する。
【0018】
上記調光シートにおいて、前記第1透明導電層は、前記調光領域に位置する電極端部を備え、前記電極端部は、1mm以上の幅を有する先端部を備え、前記先端部に向けて先細る形状を有し、かつ前記先端部で折り返される溝によって前記第1透明導電層に区切られ、前記先端部に繋がる2つの溝の形成する角度が10°以上でもよい。
【0019】
この構成によれば、図柄の一部が先細る形状を有する場合において、図柄における先細り形状の先端が調光シートに明りょうに浮かび上がる。結果として、調光シートの意匠性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0020】
本開示の調光シート、および調光シートの製造方法によれば、調光シートの意匠性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、ノーマル型の調光シートを示す平面図である。
【
図2】
図2は、調光シートの一部を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、調光シートの一部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、調光シートの一部を拡大して示す平面図である。
【
図5】
図5は、調光シートの製造方法を示す断面図である。
【
図6】
図6は、非駆動状態の調光シートを示す平面図である。
【
図7】
図7は、変更例の調光シートの一部を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8は、変更例の調光シートの一部を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9は、変更例の調光シートの一部を拡大して示す断面図である。
【
図10】
図10は、変更例の調光シートの一部を拡大して示す断面図である。
【
図11】
図11は、変更例の調光シートの一部を拡大して示す断面図である。
【
図12】
図12は、電気抵抗値を測定するための試験体を説明する平面図である。
【
図13】
図13は、実施例、および比較例の電気抵抗値を説明する表である。
【
図14】
図14は、実施例、および比較例の実効電圧を説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、調光シート、および調光シートの製造方法の一実施形態を説明する。
調光シート10は、透明状態と不透明状態とに遷移する。調光シート10は、透明状態から不透明状態に可逆的に変わる。不透明状態は、透過状態よりも入射光を散乱する。透明状態は、不透明状態よりも高い直線透過率(以下、単に透過率とも言う)を有する。透明状態は、不透明状態よりも低いヘイズを有する。透明状態は、不透明状態よりも高い全光線透過率を有してもよい。
【0023】
調光シート10の駆動態様は、ノーマル型でもよい。ノーマル型は、非駆動時に不透明状態である。ノーマル型は、駆動信号である電圧信号の供給によって不透明状態から透明状態に変わる。ノーマル型は、電圧信号の供給停止によって透明状態から不透明状態に変わる。
【0024】
調光シート10の駆動態様は、リバース型でもよい。リバース型は、非駆動時に透明状態である。リバース型は、駆動信号である電圧信号の供給によって透明状態から不透明状態に変わる。リバース型は、電圧信号の供給停止によって不透明状態から透明状態に変わる。リバース型の調光シート10は、非駆動時に透明状態を実現するため、液晶化合物を配向させる配向層を備える。
【0025】
調光シート10は、接着層を介して透明体に貼り付けられる。調光シート10は、1つの透明体の表面に貼り付けられてもよい。調光シート10は、1つの透明体の表面と他の透明体の裏面とに貼り付けられて2つの透明体に挟まれてもよい。透明体は、パーティションや間仕切りなどの各種内装品でもよい。透明体は、移動体の窓ガラスやショウウインドウなどの各種外装品でもよい。調光シート10の貼り付けられる面は、平面でもよいし、筒面や球面などの曲面でもよい。
【0026】
[調光領域20の構成]
図1が示すように、調光シート10は、第1面11Fと、第1面11Fとは反対側の面である第2面11Rとを備える。第1面11Fと対向する視点から見て、調光シート10は、調光領域20と非調光領域21とを備える。
図1は、調光領域20と非調光領域21とを説明する便宜上から、調光領域20にドットを付さず、非調光領域21のみにドットを付す。調光領域20は、電圧信号の供給によって透過率を変える。非調光領域21は、透過率を保つ。
【0027】
調光シート10は、2つの接続領域24を備える。接続領域24は、調光領域20に電圧信号を供給するための領域である。接続領域24は、調光シート10の外周部に配置される。接続領域24は、調光シート10の隅部に配置されてもよい。接続領域24は、外部配線25に接続される。
【0028】
駆動部50(
図2を参照)は、外部配線25と接続領域24とを介して調光領域20に電圧信号を供給する。電圧信号の供給は、調光領域20の透過率を変える一方、非調光領域21の透過率を変えない。調光領域20の透過率と非調光領域21の透過率との差は、調光シート10に図柄100を浮かび上がらせる。
【0029】
調光領域20は、調光電極部30(
図3を参照)を備える。調光電極部30は、第1透明導電層12A(
図3を参照)の一部である。調光電極部30の外形は、調光領域20の外形を画定する。調光領域20の外形は、調光電極部30の外形に追従する。調光電極部30の電位は、電圧信号の供給によって変わる。調光領域20の透過率は、調光電極部30の電位変動に追従する。
【0030】
非調光領域21は、浮遊導電部31(
図3を参照)を備える。浮遊導電部31は、第1透明導電層12A(
図3を参照)の一部である。浮遊導電部31の外形は、非調光領域21の外形に追従する。浮遊導電部31は、電圧信号を供給されない。非調光領域21の透過率は、浮遊導電部31の電位維持に追従する。
【0031】
調光電極部30は、図柄形状を有してもよい。調光電極部30は、背景形状を有してもよい。調光電極部30は、図柄形状と背景形状とを有してもよい。調光電極部30は、調光シート10の外周部に配置されてもよい。調光電極部30は、調光シート10の中央に配置されてもよい。調光電極部30は、調光シート10の外周部と中央とに配置されてもよい。
【0032】
図柄は、例えば、文字、数字、記号、図形、絵柄、模様からなる群から選択される少なくとも1つである。背景は、図柄の後方に恰も位置するような、例えば、文字、数字、記号、図形、絵柄、模様からなる群から選択される少なくとも1つである。背景は、図柄を引き立たせる形状を有してもよい。あるいは、背景は、調光シート10に区切られた空間内の視認性を抑えるための無地でもよい。
【0033】
調光領域20は、図柄形状を有してもよい。調光領域20は、背景形状を有してもよい。調光領域20は、図柄形状と背景形状とを有してもよい。調光領域20は、非調光領域21に縁取られてもよい。調光領域20は、非調光領域21に縁取られなくてもよい。調光領域20は、調光シート10の外周部に配置されてもよい。調光領域20は、調光シート10の中央に配置されてもよい。調光領域20は、調光シート10の外周部と中央とに配置されてもよい。
【0034】
調光領域20が図柄形状を有する場合、調光領域20が調光シート10に図柄を浮き上がらせる。図柄100のように、調光領域20が調光シート10の中央に円形状を有する場合、調光領域20が調光シート10に円を浮き上がらせる。調光領域20が背景形状を有する場合、調光領域20が調光シート10に背景を浮き上がらせる。例えば、調光領域20の外形が調光シート10の外形と一致する場合、調光領域20が調光シート10の外形を浮き上がらせる。
【0035】
浮遊導電部31は、図柄を縁取る線状を有してもよい。浮遊導電部31は、図柄形状そのものを有してもよい。浮遊導電部31は、背景を縁取る線状を有してもよい。浮遊導電部31は、背景形状そのものを有してもよい。浮遊導電部31は、調光シート10の外周部に配置されてもよい。浮遊導電部31は、調光シート10の中央に配置されてもよい。浮遊導電部31は、調光シート10の外周部と中央とに配置されてもよい。
【0036】
非調光領域21は、図柄を縁取る線状を有してもよい。非調光領域21は、図柄形状そのものを有してもよい。非調光領域21は、背景を縁取る線状を有してもよい。非調光領域21は、背景形状そのものを有してもよい。非調光領域21は、調光シート10の外周部に配置されてもよい。非調光領域21は、調光シート10の中央に配置されてもよい。非調光領域21は、調光シート10の外周部と中央とに配置されてもよい。
【0037】
非調光領域21が図柄形状の調光領域20を縁取る場合、非調光領域21が調光シート10に図柄の縁を明りょうに浮き上がらせる。図柄100のように、非調光領域21が円形状を縁取る場合、非調光領域21が調光シート10に円形の縁を明りょうに浮き上がらせる。
【0038】
非調光領域21が背景形状の調光領域20を縁取る場合、非調光領域21が調光シート10に背景を明りょうに浮き上がらせる。図柄100のように、非調光領域21が図柄と背景との境界線状を有する場合、非調光領域21が調光シート10に図柄と背景との境界を明りょうに浮き上がらせる。
【0039】
浮遊導電部31は、抵抗部の一例である溝120(
図3を参照)によって浮遊導電部31の全体を囲まれている。溝120は、浮遊導電部31の全体を1周にわたり囲ってもよいし、2周以上にわたり囲ってもよい。
【0040】
浮遊導電部31を囲う溝120は、浮遊導電部31の全周にわたり連続する直線状や折れ線状でもよい。浮遊導電部31を囲う溝120は、複数の線要素が1mm未満の間隔を空けて並ぶ破線状、鎖線状、あるいは点線状でもよい。溝120が破線状、鎖線状、点線状である場合、溝120は、浮遊導電部31の全体を囲う2周以上であり、かつ内周の溝120における線要素間は、周方向と直交する方向において、外周の溝120における線要素と対向してもよい。
【0041】
浮遊導電部31は、直線状や折れ線状の溝120を介して、調光電極部30と物理的に離間してもよい。浮遊導電部31は、電圧信号による調光電極部30の電位変動に追従しないように、1mm未満の線要素間を介して、調光電極部30と物理的に接続されてもよい。浮遊導電部31が線要素間を介して調光電極部30と接続される場合、浮遊導電部31の外形、ひいては調光領域20や非調光領域21の外形に曲がり具合の自由度を与えられる。
【0042】
[狭窄部分30Aの構成]
調光領域20は、2つ以上の調光部分20A~20Dと、狭窄部分30Aとを備える。
各調光部分20A~20Dは、観察者に視認される大きさを有する。各調光部分20A~20Dは、他の調光部分20A~20Dから独立した領域として視認されるように、各調光部分20A~20Dの全体にわたり、他の調光部分20A~20Dから離れている。
【0043】
各調光部分20A~20Dは、図柄形状を有してもよい。各調光部分20A~20Dは、他の各調光部分20A~20Dとの組み合わせによって、図柄形状を有してもよい。各調光部分20A~20Dは、背景形状を有してもよい。各調光部分20A~20Dは、他の調光部分20A~20Dとの組み合わせによって、背景形状を有してもよい。
【0044】
調光部分20A~20Dは、調光電極部30(
図3を参照)の一部である電極部30B~30Eを備える。調光部分20A~20Dを構成する電極部30B~30Eは、第1電極部、および第2電極部の一例である。電極部30B~30Eは、第1透明導電層12A(
図3を参照)を構成する。
【0045】
各調光部分20A~20Dは、1つ以上の狭窄部分30Aによって、他の調光部分20A~20Dに接続されている。調光領域20は、狭窄部分30Aから、狭窄部分30Aに接続される調光部分20A~20Dに向けて幅を広げる。狭窄部分30Aは、狭窄部分30Aに接続された2つの調光部分20A~20Dの間で括れている。なお、括れるとは、狭窄部分30Aが、狭窄部分30Aに接続された他の調光部分20A~20Dに比べて細いことを示し、狭窄部分30Aの幅が1mm以上であれば、括れる形状は、特に限定されるものではない。この際、括れる構造とは、他の調光部分20A~20Dから狭窄部分30Aに向けて徐々に細くなる構造でもよいし、他の調光部分20A~20Dから狭窄部分30Aに向けて急峻に細くなる構造でもよい。
【0046】
1つの狭窄部分30Aに接続された2つの調光部分20A~20Dにおいて、1つの調光部分20A~20Dの少なくとも一部分は、他の調光部分20A~20Dに囲まれてもよい。1つの狭窄部分30Aに接続された2つの調光部分20A~20Dにおいて、1つの調光部分20A~20Dは、他の調光部分20A~20Dと横並びに配置されてもよい。
【0047】
2つ以上の狭窄部分30Aは、1つの調光部分20A~20Dと、他の調光部分20A~20Dとに、並列接続されてもよい。狭窄部分30Aを介して連なる3つの調光部分20A~20Dは、2つの狭窄部分30Aを介して、直列接続されてもよい。なお、1つの調光部分20A~20Dと、他の調光部分20A~20Dとの間の透過率差を抑えることが要求される場合、調光電極部30の負荷電流を抑えるように、狭窄部分30Aが調光部分20A~20Dを直列接続することが好ましい。
【0048】
狭窄部分30Aは、狭窄電極部26(
図4を参照)を備える。狭窄電極部26は、第1透明導電層12A(
図3を参照)の一部であり、調光電極部30の一部である。狭窄電極部26は、狭窄部分30Aの外形を画定する。狭窄部分30Aの外形は、狭窄電極部26の外形に追従する。狭窄電極部26は、電圧信号の供給によって電位を変える。狭窄部分30Aの透過率は、狭窄電極部26の電位に追従して変わる。
【0049】
狭窄部分30Aに対し、当該狭窄部分30Aに接続された2つの調光部分20A~20Dの並ぶ方向は、調光部分20A~20Dの接続方向である。接続方向と直交する方向は、狭窄方向である。狭窄部分30Aは、2つの調光部分20A~20Dの間における電圧信号の伝送路である。狭窄方向は、2つの調光部分20A~20Dの伝送路における幅方向である。
【0050】
狭窄電極部26における狭窄方向の長さの最小値は、狭窄電極部26の幅L1(
図4を参照)である。狭窄電極部26の幅L1は、1mm以下である。1mm以上の幅L1は、1つの電極部30B~30Eと、他の電極部30B~30Eとの間で、透過率差が視認されない程度に、電圧降下が抑制される。そして、1つの調光部分20A~20Dが示す図柄などと、他の調光部分20A~20Dが示す背景などととの一体感が醸し出されるため、調光シート10の意匠性がさらに向上する。
【0051】
狭窄部分30Aの視認性を低めることは、1つの調光部分20A~20Dと他の調光部分20A~20Dとを区別する識別性を高める。調光部分20A~20Dを区別する識別性の向上がさらに要求される場合、狭窄電極部26の幅L1は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。また、調光部分20A~20Dを区別する識別性の向上がさらに要求される場合、狭窄電極部26の面積は、100mm2以上1000mm2以下であることが好ましく、100mm2以上500mm2以下であることがさらに好ましい。
【0052】
[並列接続例]
以下、調光シート10が2つの非調光領域21を有する例を示す。2つの非調光領域21が線対称となる線状を有し、かつ調光領域20の一部を縁取るように配置された、1つの図柄100を説明する。
【0053】
図1にドットを付したように、非調光領域21は、2つの端部21A,21Bを有した線状を有する。非調光領域21は、1つの端部21Aと他の端部21Bとの間で屈曲を繰り返す。1つの非調光領域21は、1つの端部21Aと他の端部21Bとの間で接触したり交差したりすることがなく、所定距離以上の間隔を有する。なお、非調光領域21は、1つの端部21Aと他の端部21Bとの間で、2つ以上の線分が交差する交差線状を有してもよい。
【0054】
調光領域20は、内側調光部分20Aと、外側調光部分20Bとを備える。1つの内側調光部分20Aのほぼ全体は、1つの非調光領域21に囲まれる。調光領域20は、左右に1つずつ内側調光部分20Aを備える。1つの外側調光部分20Bは、2つの内側調光部分20Aを囲む。
【0055】
外側調光部分20Bは、間隙調光部分20B1と、周辺調光部分20B2とを備える。間隙調光部分20B1は、調光シート10の中心に円形状を有する。1つの間隙調光部分20B1は、2つの非調光領域21に挟まれる。1つの周辺調光部分20B2は、間隙調光部分20B1、および2つの内側調光部分20Aを囲う枠状を有する。
【0056】
各内側調光部分20Aは、内側電極部30Eを備える。間隙調光部分20B1は、間隙電極部30B1を備える。周辺調光部分20B2は、周辺電極部30B2を備える。内側電極部30E、間隙電極部30B1、および周辺電極部30B2は、第1透明導電層12A(
図3を参照)を構成する。
【0057】
間隙調光部分20B1は、2つの狭窄部分30Aを介して、周辺調光部分20B2に接続されている。間隙調光部分20B1に周辺調光部分20B2を接続する2つの狭窄部分30Aは、各別に2つの非調光領域21に挟まれている。間隙調光部分20B1に周辺調光部分20B2を接続する2つの狭窄部分30Aは、それぞれ相互に対向する溝120に挟まれている。
【0058】
間隙調光部分20B1に周辺調光部分20B2を接続する2つの狭窄部分30Aは、狭窄部分30Aから間隙調光部分20B1に向けて幅を広げ、また狭窄部分30Aから周辺調光部分20B2に向けて幅を広げる。間隙調光部分20B1に周辺調光部分20B2を接続する2つの狭窄部分30Aは、間隙調光部分20B1と周辺調光部分20B2との間で括れている。
【0059】
内側調光部分20Aは、1つの狭窄部分30Aを介して、周辺調光部分20B2に接続されている。内側調光部分20Aに周辺調光部分20B2を接続する狭窄部分30Aは、1つの非調光領域21の端部21A,21Bに挟まれている。内側調光部分20Aに周辺調光部分20B2を接続する狭窄部分30Aは、それぞれ相互に対向する溝120に挟まれている。内側調光部分20Aに周辺調光部分20B2を接続する1つの狭窄部分30Aは、狭窄部分30Aから内側調光部分20Aに向けて膨大し、また狭窄部分30Aから周辺調光部分20B2に向けて膨大する。内側調光部分20Aに周辺調光部分20B2を接続する1つの狭窄部分30Aは、内側調光部分20Aと周辺調光部分20B2との間で括れている。
【0060】
このように、外側調光部分20Bは、間隙調光部分20B1と、間隙調光部分20B1のほぼ全体を囲う周辺調光部分20B2とを備える。外側調光部分20Bは、1つの間隙調光部分20B1に別々に接続された2つの狭窄部分30Aを備える。そして、外側調光部分20Bにおいて、1つの間隙調光部分20B1と、間隙調光部分20B1を囲む周辺調光部分20B2とが、2つの狭窄部分30Aによって並列接続されている。また、1つの間隙電極部30B1と、間隙電極部30B1を囲む周辺電極部30B2とが、2つの狭窄電極部26によって並列接続されている。
【0061】
周辺電極部30B2に間隙電極部30B1を接続する狭窄電極部26の幅L1は、1mm以上である。電圧信号が調光シート10に入力されるとき、電圧信号は周辺電極部30B2から2つの狭窄電極部26を通じて間隙電極部30B1に伝播する。1mm以上の幅L1は、間隙調光部分20B1と周辺調光部分20B2との間で透過率差が視認されない程度に、間隙電極部30B1と、周辺電極部30B2との電圧降下が抑制される。そして、間隙調光部分20B1が示す円形の図柄と、周辺調光部分20B2が示す枠状の背景との一体感が醸し出されるため、調光シート10の意匠性がさらに向上する。
【0062】
[直列接続例]
周辺調光部分20B2は、周辺調光部分20B2のなかに、1つの非調光領域21に挟まれた狭窄部分30Aを、左右に2つずつ備える。
【0063】
詳述すると、周辺調光部分20B2のなかで右側に位置する2つの狭窄部分30Aは、調光シート10の右辺近傍に位置する1つの狭窄部分30Aを含む。また、周辺調光部分20B2のなかで右側に位置する2つの狭窄部分30Aは、第1内包調光部分20Cと第2内包調光部分20Dとを接続する1つの狭窄部分30Aを含む。第1内包調光部分20Cは、右側の内側調光部分20Aに囲まれた小円形状を有する。第2内包調光部分20Dは、右側の内側調光部分20Aに囲まれた四角形状を有する。
【0064】
一方、周辺調光部分20B2のなかで左側に位置する2つの狭窄部分30Aは、調光シート10の左辺近傍に位置する1つの狭窄部分30Aを含む。また、周辺調光部分20B2のなかで左側に位置する2つの狭窄部分30Aは、第1内包調光部分20Cと第2内包調光部分20Dとを接続する1つの狭窄部分30Aを含む。第1内包調光部分20Cは、左側の内側調光部分20Aに囲まれた小円形状を有する。第2内包調光部分20Dは、左側の内側調光部分20Aに囲まれた四角形状を有する。
【0065】
第1内包調光部分20Cは、第1内包電極部30Cを備える。第2内包調光部分20Dは、第2内包電極部30Dを備える。第1内包電極部30C、および第2内包電極部30Dは、第1透明導電層12A(
図3を参照)を構成する。
【0066】
このように、周辺調光部分20B2において、内側調光部分20Aに囲まれた第1内包調光部分20Cと、内側調光部分20Aに囲まれた第2内包調光部分20Dとが、2つの狭窄部分30Aによって直列接続されている。また、第1内包電極部30C、第2内包電極部30D、および周辺電極部30B2が、2つの狭窄電極部26によって直列接続されている。
【0067】
なお、1つの内側調光部分20Aもまた、1つの狭窄部分30Aを備える。そして、内側調光部分20Aの狭窄部分30Aを挟む2つの調光部分と、周辺調光部分20B2とは、内側調光部分20Aの狭窄部分30Aと、内側調光部分20Aと周辺調光部分20B2とを接続する狭窄部分30Aとによって、直列接続されている。
【0068】
[調光シート10の断面構成]
図2は、
図1におけるII-II線に沿った断面図であり、調光領域20、および接続領域24の断面構造を示す。
図2、および
図3は、調光シート10を構成する各層の断面構成を説明する便宜上から、各層の相対的な厚さを変更して示す。
【0069】
図2が示すように、調光シート10は、調光層11、第1透明導電層12A、第2透明導電層12B、第1透明支持層13A、および第2透明支持層13Bを備える。調光層11は、第1透明導電層12Aと、第2透明導電層12Bとの間に位置する。
【0070】
第1透明支持層13Aは、支持面130を備える。支持面130は、第1透明導電層12Aが備える側面のうち、調光層11とは反対側の側面を支持する。第2透明支持層13Bは、第2透明導電層12Bが備える側面のうち、調光層11とは反対側の側面を支持する。
【0071】
調光層11は、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。多層構造体である調光層11は、調光機能を備える調光機能層と、調光機能層と第1透明導電層12Aとの間の密着性を高める層を備えてもよいし、調光機能層と第2透明導電層12Bとの間の密着性を高める層を備えてもよい。
【0072】
調光シート10は、保護層44を備えてもよい。保護層44は、第1透明支持層13Aが備える側面のうち、第1透明導電層12Aとは反対側の側面に支持される。保護層44は、第1透明支持層13Aに塗布形成されてもよいし、接着層を介して第1透明支持層13Aに固定されてもよい。
【0073】
調光シート10の第1面11Fは、保護層44が備える側面のうち、第1透明支持層13Aに向かい合う側面とは反対側の側面でもよい。調光シート10の第2面11Rは、第2透明支持層13Bが備える側面のうち、第2透明導電層12Bに向かい合う側面とは反対側の側面である。
【0074】
接続領域24は、第1接続領域24Aと、第2接続領域24Bとを備える。第1接続領域24Aは、第1透明導電層12Aに電圧信号を供給するための外部配線25に接続される。第2接続領域24Bは、第2透明導電層12Bに電圧信号を供給するための外部配線25に接続される。
【0075】
第1接続領域24Aは、第1透明導電層12Aのなかで、調光層11、第2透明導電層12B、および第2透明支持層13Bに覆われていない領域であり、第1透明導電層12Aの露出した領域である。第1端子部50Aは、第1透明導電層12Aに接続されている。調光電極部30は、第1接続領域24Aに接続されている。
【0076】
第2接続領域24Bは、第2透明導電層12Bのなかで、調光層11、第1透明導電層12A、第1透明支持層13A、および保護層44に覆われていない領域であり、第2透明導電層12Bの露出した領域である。第2端子部50Bは、第2接続領域24Bに接続されている。
【0077】
外部配線25は、第1端子部50Aに駆動部50を接続する。外部配線25は、第2端子部50Bに駆動部50を接続する。駆動部50は、第1端子部50Aを通じて、第1透明導電層12Aの調光電極部30に電圧信号を供給する。駆動部50は、第2端子部50Bを通じて、第2透明導電層12Bに電圧信号を供給する。これにより、駆動部50は、第1透明導電層12Aと第2透明導電層12Bとの間の電圧を制御する。調光装置は、調光シート10と駆動部50とから構成される。
【0078】
調光層11は、透明高分子層と、液晶組成物とを備えている。透明高分子層は、液晶組成物を充填するための空隙を区画する。透明高分子層が区画する空隙は、透明高分子層と液晶組成物との間の屈折率差によって、調光層11に入る可視光を散乱し、これによって調光層11を濁らせる大きさと数量とを備える。透明高分子層が区画する空隙は、孤立した閉空間でもよいし、相互に隣り合う他の空隙と結合してもよい。透明高分子層の一例は、イソボニルアクリレートやペンタエリスリトールトリアクリレートなどの紫外線硬化性化合物の重合体である。
【0079】
液晶組成物は、透明高分子層のなかの空隙に充填されている。液晶組成物は、液晶化合物を含む。液晶化合物の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、および、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0080】
液晶組成物の保持型式は、高分子分散型、高分子ネットワーク型、およびカプセル型からなる群から選択されるいずれか1つである。高分子分散型は、孤立した多数の空隙を透明高分子層のなかに備え、高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物を保持する。高分子ネットワーク型は、3次元の網目状を有した透明な高分子ネットワークを備え、相互に連通した網目状の空隙のなかに液晶組成物を保持する。高分子ネットワークは、透明高分子層の一例である。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を透明高分子層のなかに保持する。液晶組成物は、液晶化合物以外に、透明高分子層を形成するためのモノマー、二色性色素、可塑剤などを含有してもよい。調光層11は、調光層11の厚さを一定範囲に保つためのスペーサー15を含有してもよい。
【0081】
第1透明導電層12Aと第2透明導電層12Bとは、それぞれ導電性を有し、かつ可視光を透過する。第1透明導電層12Aを構成する材料と、第2透明導電層12Bを構成する材料との一例は、それぞれ酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択される1つである。
【0082】
第1透明支持層13Aと第2透明支持層13Bとは、それぞれ可視光を透過する。第1透明支持層13Aを構成する材料と、第2透明支持層13Bを構成する材料との一例は、それぞれ合成樹脂でもよいし、無機化合物でもよい。合成樹脂の一例は、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンからなる群から選択されるいずれか1つである。ポリエステルの一例は、ポリエチレンテレフタレート、あるいはポリエチレンナフタレートである。ポリアクリレートの一例は、ポリメチルメタクリレートである。無機化合物の一例は、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素からなる群から選択されるいずれか1つである。
【0083】
第1端子部50Aと第2端子部50Bとは、それぞれ導電性接着層と配線基板とを備えてもよい。第1端子部50Aと第2端子部50Bとは、導電性テープのような導電性材料と外部配線25とをはんだよって接合された構造でもよい。導電性接着層の一例は、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)、等方性導電フィルム(ICF:Isotropic Conductive Film)、等方性導電ペースト(ICP:Isotropic Conductive Paste)からなる群から選択されるいずれか1つである。配線基板の一例は、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)である。
【0084】
[非調光領域21の構成]
図3が示すように、非調光領域21は、内包領域22と、境界領域23とを備える。
境界領域23は、調光シート10のなかで溝120に画定される領域である。内包領域22は、調光シート10のなかで境界領域23に囲まれた領域である。内包領域22は、上述した浮遊導電部31を備える。内包領域22の外形は、浮遊導電部31の外形に追従する。
【0085】
調光領域20は、調光シート10のなかで狭窄電極部26を含む調光電極部30に画定される領域である。狭窄電極部26を含む調光電極部30、および浮遊導電部31は、第1透明支持層13Aの支持面130に沿って並ぶ別々の層状体である。
【0086】
調光電極部30は、溝120によって浮遊導電部31から物理的に離間してもよい。調光電極部30は、溝120の線要素によって浮遊導電部31から物理的に離間してもよい。浮遊導電部31は、溝120の介在によって、調光電極部30に伝播する電圧信号に追従しない。
【0087】
溝120は、第1透明導電層12Aのなかで調光層11と対向する面に、開口部122を備える。溝120は、第1透明導電層12Aを貫通すると共に、第1透明支持層13Aの厚さ方向の途中まで延びている。溝120は、第1透明支持層13Aに底面を備える。
【0088】
溝120の幅L2は、スペーサー15の平均直径よりも小さくてもよい。スペーサー15の平均直径よりも小さい幅L2は、スペーサー15の全体が溝120に入り込むことを抑制すると共に、第1透明導電層12Aと第2透明導電層12Bとの間の距離をスペーサー15の平均直径に保ちやすい。
【0089】
溝120は、透明高分子層に充填されてもよい。溝120は、液晶組成物に充填されてもよい。溝120は、透明高分子層と液晶組成物とに充填されてもよい。溝120は、溝120の一部を充填されてもよいし、溝120の全体を充填されてもよい。溝120に充填された充填物110は、第1面11Fと対向する位置、または第2面11Rと対向する位置から見て、溝120の視認性を抑える。
【0090】
[調光端部20AEの平面構成]
図4は、狭窄部分30Aを含む電極端領域101(
図1を参照)を拡大した図である。
図4が示すように、間隙調光部分20B1は、狭窄部分30Aを介して周辺調光部分20B2に接続される。狭窄電極部26の幅L1は、間隙調光部分20B1と周辺調光部分20B2との間における電圧降下を抑えるため、1mm以上である。
【0091】
非調光領域21は、図柄に応じて折り返された屈曲部102を有する。間隙調光部分20B1と周辺調光部分20B2とに接続される狭窄部分30Aは、狭窄方向において2つの屈曲部102に挟まれている。
【0092】
内側調光部分20Aは、調光端部20AEを備える。調光端部20AEは、内側調光部分20Aのなかで、1つの屈曲部102に囲まれる。調光端部20AEは、内側電極部30Eの一部である電極端部30AEを備える。電極端部30AEは、2つの辺が先端に向けて近づく先細り形状を有する。
【0093】
電極端部30AEは、直線状を有した先端線分102Lを備える。電極端部30AEは、先端線分102Lの一端で折れ曲がる1つの線分、および先端線分102Lの他端で折れ曲がる他の線分に区切られる。電極端部30AEの幅L3は、先端線分102Lの長さである。電極端部30AEの幅L3は、電極端部30AEを構成する1つの線分と他の線分との距離のなかの最小値である。電極端部30AEの幅L3は、1mm以上である。
【0094】
電極端部30AEの内角θ1は、電極端部30AEのなかで、先端線分102Lの一端に向けて延びる線分と、先端線分102Lの他端に向けて延びる線分との形成する角度である。電極端部30AEの先端線分102Lに接続される1つの線分が曲線である場合、当該線分と先端線分102Lとの接続箇所における線分の接線と、他の線分との形成する角度が、屈曲部102の内角θ1である。電極端部30AEの先端線分102Lに接続される2つの線分が曲線である場合、各線分と先端線分102Lとの接続箇所における線分の接線同士の形成する角度が、電極端部30AEの内角θ1である。電極端部30AEの内角θ1は、10°以上である。
【0095】
電極端部30AEの幅L3が1mm以上である場合、調光端部20AEと屈曲部102とのコントラストが高まる。さらに、電極端部30AEの内角θ1が10°以上であれば、調光端部20AEと屈曲部102とのコントラストがさらに高まる。調光端部20AEとその周辺との間の透明と不透明との明確化は、図柄100の鮮明化によって調光シート10の意匠性を高める。
【0096】
電極端部30AEの幅L3が1mm以上である場合、屈曲部102の周囲において第1透明支持層13Aから第1透明導電層12Aが剥離することが抑制される。さらに、電極端部30AEの内角θ1が10°以上であれば、第1透明支持層13Aから第1透明導電層12Aが剥離することがさらに抑制される。
【0097】
[調光シート10の製造方法]
図5を参照して、調光シート10の製造方法の一例について説明する。
まず、フィルム51Aとフィルム51Bとを準備する。フィルム51Aは、第1透明導電層12Aと第1透明支持層13Aとを備える。フィルム51Bは、第2透明導電層12Bと第2透明支持層13Bとを備える。次いで、カッティングプロッターを用い、フィルム51Aに対し、第1透明導電層12Aから溝120を形成する。ティングプロッターに接続された制御装置は、予め入力された図柄100に沿ってカッティングプロッターを動作させることによって、図柄100に沿った溝120を形成する。
【0098】
溝120の形成は、カッティングプロッター以外の装置を用いてもよい。例えば、溝120の形成は、カッティングプロッター以外の刃物を用いてもよいし、レーザー切断装置を用いてもよい。レーザー切断装置に用いられるレーザーの一例は、炭酸ガスレーザーである。レーザー切断装置は、レーザーの照射箇所を直接的に破壊することによって、溝120を形成する。
【0099】
次に、スペーサー塗工液を準備する。スペーサー塗工液は、スペーサー15と、スペーサー15を分散させるための分散媒とを含む。次いで、第1透明導電層12Aと第2透明導電層12Bとにそれぞれスペーサー塗工液を塗工する。そして、フィルム51Aとフィルム51Bとを加熱し、これによってスペーサー塗工液から分散媒を除去する。なお、スペーサー塗工液の塗工対象は、第1透明導電層12Aと第2透明導電層12Bとのいずれか一方でもよい。
【0100】
次に、調光層塗工液を準備する。調光層塗工液は、透明高分子層を形成するための紫外線硬化性化合物と液晶組成物とを含む。次いで、第1透明導電層12Aと第2透明導電層12Bとにそれぞれ調光層塗工液を塗工する。次いで、調光層塗工液に紫外線を照射してフィルム51Aに調光層11Aを形成し、フィルム51Bに調光層11Bを形成する。そして、調光層11Aに調光層11Bを積層し、所定の圧力を積層体に加えながら貼合する。これにより、調光層11の一部が溝120を埋める。
【0101】
なお、調光シート10は、ロールツーロール方式によって製造されてもよい。調光シート10は、枚葉式によって製造されてもよい。いずれの場合も、溝120を形成する工程は、フィルム51Aにフィルム51Bを貼り付ける前に行われる。調光層塗工液は、第1透明導電層12Aのみに塗工されてもよい。調光層塗工液は、第2透明導電層12Bのみに塗工されてもよい。調光層塗工液に紫外線を照射する工程は、フィルム51Aにフィルム51Bを積層した後に行われてもよい。
【0102】
次に、調光シート10の第2面11Rにおける隅部から、第2透明支持層13Bの隅部、第2透明導電層12Bの隅部、および調光層11の隅部を除去し、第1透明導電層12Aの隅部を露出させることによって、1つの接続領域24を形成する。また、調光シート10の第1面11Fにおける隅部から、第1透明支持層13Aの隅部、第1透明導電層12Aの隅部、および調光層11の隅部を除去し、第1透明導電層12Aの隅部を露出させることによって、他の接続領域24を形成する。
【0103】
次に、1つの接続領域24に第1端子部50Aを形成し、また他の接続領域24に第2端子部50Bを形成し、第1端子部50Aと第2端子部50Bとに、それぞれ接続領域24に接続する。さらに、エポキシ樹脂などの封止材によって接続領域24を封止する。
【0104】
[調光シート10の作用]
ノーマル型の調光シート10による図柄100の表示態様を以下に説明する。
図6は、ノーマル型の調光シート10による図柄100の非表示状態を模式的に示す。
図6は、調光シートのなかで濁っている部分にドットを付して示す。
【0105】
非駆動時の非調光領域21は、液晶化合物と透明高分子層との間の屈折率差によって光を散乱する。非駆動時の調光領域20もまた、液晶化合物と透明高分子層との間の屈折率差によって光を散乱する。これにより、
図6が示すように、非駆動時の調光シート10は、調光シート10の全体を均一に濁らせて、図柄100を非表示にする。
【0106】
駆動時の非調光領域21は、液晶化合物と透明高分子層との間の屈折率差によって光を散乱する。一方、駆動時の調光領域20は、液晶化合物と透明高分子層との間の屈折率差を抑えて光を透過する。これにより、
図1が示すように、駆動時の調光シート10は、調光領域20を通して空間を視認可能にすると共に、透明な下地に不透明な図柄100を表示する。
【0107】
リバース型の調光シート10による図柄100の表示態様を以下に説明する。
非駆動時の非調光領域21は、液晶化合物と透明高分子層との間の屈折率差を抑えて光を透過する。非駆動時の調光領域20もまた、液晶化合物と透明高分子層との間の屈折率差を抑えて光を散乱する。これにより、非駆動時の調光シート10は、調光シート10の全体に光を均一に透過させて、図柄100を非表示にする。
【0108】
駆動時の非調光領域21は、液晶化合物と透明高分子層との間の屈折率差を抑えて光を透過する。一方、駆動時の調光領域20は、液晶化合物と透明高分子層との間の屈折率差を高めて光を散乱する。これにより、駆動時の調光シート10は、調光領域20を通して空間を視認不能にすると共に、不透明な下地に透明な図柄100を表示する。
【0109】
なお、溝120の底面が第1透明支持層13Aに配置されると共に、透明高分子層が溝120に充填されている。そのため、溝120が空隙であることよる光の散乱が抑えられ、これによって溝120そのものの視認が抑えられる。
【0110】
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)1つの電極部30B~30Eが、他の1つの電極部30B~30Eに囲まれる。1つの調光部分20A~20Dが、他の1つの調光部分20A~20Dに囲まれる。そして、2つの調光部分20A~20Dが恰も別体であるように、透過率の相違による図柄100が調光シート10に浮かび上がる。
【0111】
この際、1つの電極部30B~30Eと他の1つの電極部30B~30Eとに、2つ以上の狭窄電極部26が並列接続される。2つ以上の狭窄電極部26の幅L1がそれぞれ1mm以上である。このため、1つの調光部分20A~20Dと他の調光部分20A~20Dとの間で透過率差が視認されない程度に、1つの電極部30B~30Eと他の電極部30B~30Eとの間で電圧降下が抑制される。結果として、別体に視認される調光部分20A~20Dの間で透過率差が抑えられるため、調光シート10の意匠性が向上する。
【0112】
(2)1つの電極部30B~30Eと他の2つの電極部30B~30Eとが、2つの狭窄電極部26を介して直列接続される。2つの狭窄電極部26の幅L1が1mm以上である。このため、1つの調光部分20A~20Dと他の2つの調光部分20A~20Dとの間で透過率差が視認されない程度に、1つの電極部30B~30Eと他の2つの電極部30B~30Eとの間で電圧降下が抑制される。結果として、別体に視認される調光部分20A~20Dの間で透過率差が抑えられるため、調光シート10の意匠性が向上する。
【0113】
(3)2つの調光部分20A~20Dが恰も別体であるように非調光領域21の分だけ離間する一方、2つの調光部分20A~20Dにおける透過率の変化が同期する。このため、位置次元で恰も別体に視認される2つの調光部分20A~20Dに、時間次元で一体感を醸し出させるという演出が可能ともなる。
【0114】
(4)電極部30B~30Eと狭窄電極部26とが相互に連なる溝120によって区切られるため、電極部30B~30Eが狭窄電極部26に接続されることの堅牢性が高まる。このため、2つの調光部分20A~20Dが恰も別体であるように視認させることの実効性が向上する。
【0115】
(5)2つの調光部分20A~20Dが非調光領域21によって縁取られる。非調光領域21が溝120に全体を囲まれた内包領域22を備えるため、調光部分20A~20Dの鮮明さとが向上する。
【0116】
(6)電極端部30AEの幅L3が1mm以上であるため、調光端部20AEと屈曲部102とのコントラストが高まる。さらに、電極端部30AEの内角θ1が10°以上であるため、調光端部20AEと屈曲部102とのコントラストがさらに高まる。調光端部20AEとその周辺との間の透明と不透明との明確化は、図柄100の鮮明化によって調光シート10の意匠性を高める。
【0117】
(7)電極端部30AEの幅L3が1mm以上であるため、屈曲部102の周囲において第1透明支持層13Aから第1透明導電層12Aが剥離することが抑制される。さらに、電極端部30AEの内角θ1が10°以上であるため、第1透明支持層13Aから第1透明導電層12Aが剥離することがさらに抑制される。
【0118】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
[溝120の深さ]
・溝120は、第1透明導電層12Aを貫通してもよい。例えば、
図7が示すように、溝120は、第1透明導電層12A、および第1透明支持層13Aの厚さ方向に延出し、第1透明導電層12A、および第1透明支持層13Aを貫通してもよい。溝120は、第1透明導電層12Aの調光層11側に位置する開口部122と、第1透明支持層13Aのうち第1透明導電層12Aの反対側に位置する開口部124とを有してもよい。
【0119】
この際、溝120の開口部124は、接着層45を介して保護層44によって封止される。接着層45は、保護層44と第1透明支持層13Aとを接合可能であって、第1透明支持層13Aと接着層45との間の屈折率差が小さい透明な材料であればよい。例えば、接着層45は、透明性接着フィルム(Optical Clear Adhesive Film)であり、第1透明支持層13Aと保護層44とを接合する。接着層45の一部は、溝120を埋めてもよい。
【0120】
上述した溝120を備える調光シート10の製造方法は、フィルム51Aとフィルム51Bとの積層体のうち、第1透明支持層13Aの支持面130とは反対側の表面131から調光層11に達するまで切り込みを入れて溝120を形成する。溝120の形成方法は、上記実施形態と同様である。その後、第1透明支持層13Aの表面131に、接着層45、および保護層44を重ねる。なお、溝120は、フィルム51Aにスペーサー15を散布する前に形成してもよい。
【0121】
(8)上記構成によれば、第1透明支持層13Aを貫通する深さを溝120が有するため、フィルム51Aとフィルム51Bとの積層体に溝120を形成することも、積層体を形成する途中に溝120を形成することも可能となる。このため、製造工程の自由度を高めることができる。
【0122】
・溝120は、調光電極部30B~30Eから浮遊導電部31に電圧信号を伝送しない深さであれば、第1透明導電層12Aを貫通しない深さでもよい。さらに、調光シート10は、調光電極部30B~30Eから浮遊導電部31に電圧信号を伝送しない抵抗値を有する構成であれば、溝120を割愛し、第1透明導電層12Aの一部を調光電極部30B~30Eよりも高い抵抗体に変質させる構成でもよい。
【0123】
[溝120の位置]
・
図8が示すように、調光シート10の調光層11が配向層112,113を備える場合、調光層11は、上述した透明樹脂層と液晶組成物とを備える液晶層111を備える。調光層11の1つの配向層112は、第1透明導電層12Aに対する液晶層111の側に位置し、溝120は配向層112を貫通すると共に、第1透明導電層12Aを貫通する。
【0124】
・調光シート10は、第1透明導電層12Aを貫通する溝120と、第2透明導電層12Bを貫通する溝120とを備えてもよい。例えば、
図1が示す図柄100は、左右方向の中央に線対称となる対象軸を有する。図柄100における左半分の図柄は、第1透明導電層12Aを貫通する溝120によって構成され、図柄100における右半分の図柄は、第2透明導電層12Bを貫通する溝120によって構成されてもよい。あるいは、図柄100の全体は、第1透明導電層12Aを貫通する溝120によって構成され、かつ第2透明導電層12Bを貫通する溝120によっても構成されてもよい。すなわち、第1透明導電層12Aを貫通する溝120は、第1面11Fと対向する視点から見て、第2透明導電層12Bを貫通する溝120と重なってもよい。
【0125】
例えば、
図9が示すように、1つの溝120Aは、第1透明支持層13A、および第1透明導電層12Aを貫通している。他の1つの溝120Bは、第2透明導電層12Bのみを貫通している。溝120Bは、第2透明導電層12Bに対するレーザー切断装置などの加工によって形成される。なお、調光層11の一部は、2つの溝120の少なくとも一方を埋めてもよい。
【0126】
例えば、
図10が示すように、1つの溝120Aは、第1透明支持層13A、および第1透明導電層12Aを貫通している。他の1つの溝120Bは、第1透明支持層13A、および第1透明導電層12Aに加え、調光層11、および第2透明導電層12Bを貫通している。なお、調光層11の一部は、2つの溝120の少なくとも一方を埋めてもよい。
【0127】
例えば、
図11が示すように、1つの溝120Aは、第1透明支持層13A、よび第1透明導電層12Aを貫通している。他の1つの溝120Bは、第2透明支持層13B、および第2透明導電層12Bを貫通している。なお、調光層11の一部は、2つの溝120の少なくとも一方を埋めてもよい。
【0128】
なお、上記各変形例において、第1面11Fと対向する視点から見て、または第2面11Rと対向する視点から見て、1つの溝120Aと、他の1つの溝120Bとは、相互に交差してもよいし、相互に交差しなくてもよい。第1面11Fと対向する視点から見て、溝120Aと溝120Bとの間の領域は、境界領域23である。また、複数の溝120A,120Bを互いに接近させて形成すると溝120A,120Bに挟まれた領域やその付近の強度が低下する傾向があるが、上記の例のように複数の溝120の各々を積層方向の異なる位置に形成することにより、複数の溝120A,120Bを互いに接近させて形成しても、調光シート10の強度の低下を抑えることができる。
【0129】
・溝120は、第1透明支持層13Aの支持面130に沿って延びる形状であればよく、浮遊導電部31を囲む閉じた枠線状を有していなくてもよい。例えば、溝120は、矩形状の調光シート10の四辺の一つである端部に位置する始点から、内包領域22の外周を通り、端部に位置する終点まで延びていてもよい。溝120の始点が位置する端部、および溝120の終点が位置する端部は、調光シート10の四辺のうち同じ辺に位置していてもよく、異なる辺に位置していてもよい。また、この態様において、調光シート10が矩形状以外であっても、溝120の始点、および終点が調光シート10の端部に位置していればよい。
【0130】
[実施例:狭窄電極部26の電気抵抗値]
上記実施形態における狭窄電極部26の一例における電気的抵抗値を具体的に説明する。まず、電気的抵抗値を測定するための測定サンプルの構成を説明する。次に、電気的抵抗値の測定結果を説明する。
【0131】
まず、厚さが0.05μmである酸化インジウムスズからなる測定用導電層140と、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる測定用支持層141と、を備えた基材を準備した。次いで、
図12が示すように、測定用導電層140から、2つの矩形状の測定電極部143と、2つの測定電極部143を接続する測定用狭窄部144とを形成し、これによって実施例1の測定サンプルを得た。
【0132】
測定電極部143の一辺の長さは、50mmである。測定電極部143の他辺の長さは、25mmである。測定用狭窄部144の幅L4は、50mmである。測定用狭窄部144の長さL5は100mmである。
【0133】
また、測定用狭窄部144の幅L4を30mmに変更し、それ以外を実施例1の測定サンプルと同様にして、実施例2の測定サンプルを得た。測定用狭窄部144の幅L4を10mmに変更し、それ以外を実施例1の測定サンプルと同様にして、実施例3の測定サンプルを得た。測定用狭窄部144の幅L4を5mmに変更し、それ以外を実施例1の測定サンプルと同様にして、実施例4の測定サンプルを得た。
【0134】
また、測定用狭窄部144の幅L4を2mmに変更し、それ以外を実施例1の測定サンプルと同様にして、実施例5の測定サンプルを得た。測定用狭窄部144の幅L4を1mmに変更し、それ以外を実施例1の測定サンプルと同様にして、実施例6の測定サンプルを得た。測定用狭窄部144の幅L4を0.5mmに変更し、それ以外を実施例1の測定サンプルと同様にして、比較例1の測定サンプルを得た。
【0135】
そして、デジタルマルチメータ(製品名:TY530、横河計測株式会社製)を用い、実施例1~実施例6、および比較例1の測定サンプルについて、各測定サンプルにおける2つの測定電極部143の間の電気抵抗値を測定した。
図13は、電気抵抗値の測定結果を示す。
【0136】
図13が示すように、実施例1の測定サンプルの電気抵抗値が494Ωであることが認められた。実施例6の測定サンプルの電気抵抗値が10900Ωであることが認められた。実施例1から実施例6の測定サンプルの電気抵抗値から、測定用狭窄部144の幅L4が小さいほど、測定サンプルの電気抵抗値が大きいことが認められた。そして、比較例1の測定サンプルの電気抵抗値が測定サンプルのなかで最大である26,800Ωであることが認められた。
【0137】
[実施例:調光領域20の実効電圧]
上記実施形態における調光領域20の一例における実効電圧を具体的に説明する。まず、実効電圧を測定するための調光シート10の構成を説明する。次に、実効電圧の測定結果を説明する。なお、実効電圧測定用の調光シート10は、
図3を参照して説明した構造を有する。
【0138】
まず、厚さが0.05μmである酸化インジウムスズからなる透明導電層12A,12Bと、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる透明支持層13A,13Bと、を備えた2つの基材を準備した。次いで、カッティングプロッターを用い、1つの基材における透明導電層12Aから、2つの矩形状の電極部30Eと、2つの電極部30Eを接続する狭窄電極部26とを形成し、これによって実施例7の電極部30Eを得た。2つの電極部30Eは、
図12を参照して説明した、
次いで、液晶化合物としてシアノビフェニル化合物を含有し、紫外線硬化性化合物としてイソボニルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ウレタンアクリレートを含有する調光層塗工液を準備した。そして、透明導電層12Aと透明導電層12Bとの間に調光層塗工液を塗工して紫外線を照射し、これによって15μmの厚さを有した高分子分散型の調光層11を形成し、実施例7の調光シート10を得た。
【0139】
電極部30Eの一辺の長さは、50mmである。電極部30Eの他辺の長さは、25mmである。狭窄電極部26の幅L1は、50mmである。狭窄電極部26の長さL5は100mmである。
【0140】
また、狭窄電極部26の幅L1を30mmに変更し、それ以外を実施例7の調光シート10と同様にして、実施例8の調光シート10を得た。狭窄電極部26の幅L1を10mmに変更し、それ以外を実施例7の調光シート10と同様にして、実施例9の調光シート10を得た。狭窄電極部26の幅L1を5mmに変更し、それ以外を実施例7の調光シート10と同様にして、実施例10の調光シート10を得た。
【0141】
また、狭窄電極部26の幅L1を2mmに変更し、それ以外を実施例7の調光シート10と同様にして、実施例11の調光シート10を得た。狭窄電極部26の幅L1を1mmに変更し、それ以外を実施例7の調光シート10と同様にして、実施例12の調光シート10を得た。狭窄電極部26の幅L1を0.5mmに変更し、それ以外を実施例7の調光シート10と同様にして、比較例1の調光シート10を得た。
【0142】
そして、実施例7~実施例12、および比較例2の調光シート10について、電源装置(製品名:LP1-RS232、凸版印刷株式会社製)を用い、第1透明導電層12Aにおける1つの矩形状の電極部30Eと、第2透明導電層12Bとの間に電圧信号を供給した。電圧信号における電圧の最大値は80Vである。電圧信号の周波数は40Hzである。電圧信号の波形は矩形波である。この際、実施例7~実施例12、および比較例2の調光シート10について、デジタルマルチメータ(製品名:TY530、横河計測株式会社製)を用い、第1透明導電層12Aにおける他の矩形状の電極部30Eと、第2透明導電層12Bとの間の実効電圧を測定した。
図14は、実効電圧の測定結果を示す。
【0143】
図14が示すように、実施例7の調光シート10の実効電圧が81.4Vであることが認められた。実施例12の調光シート10の実効電圧が79.9Vであることが認められた。実施例7から実施例12の調光シート10の実効電圧から、狭窄電極部26の幅L1が1mm以上50mm以下である場合、狭窄電極部26の電気抵抗値に関わらず、実効電圧の維持が認められた。一方、狭窄電極部26の幅L1が0.5mmである比較例2の実効電圧が7.9Vであることが認められた。これにより、狭窄電極部26の幅L1が0.5mmである構成は、狭窄電極部26の幅L1が1mm以上50mm以下の構成と比べて、大幅に低い実効電圧を示すことが認められた。なお、電圧信号の供給と停止とを繰り返すことによって、比較例2の調光シート10の狭窄電極部26が導通不良を発生させることが認められた。
【0144】
[付記]
上記実施形態、および実施例から想起される技術的思想を以下に付記する。
[付記1]
第1透明導電層と、第2透明導電層と、前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、を備える調光シートであって、
導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、
前記第1透明導電層は、前記調光領域に位置する1つの第1電極部と、前記第1電極部の少なくとも一部を囲い、前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、1つの前記第1電極部に別々に接続された2つ以上の狭窄電極部と、を備え、
各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する、ことを特徴とする調光シート。
【0145】
[付記2]
第1透明導電層と、第2透明導電層と、前記第1透明導電層と前記第2透明導電層との間に位置する調光層と、を備える調光シートであって、
導電層間の電圧によって透過率を変える領域が調光領域であり、
前記第1透明導電層は、前記調光領域に位置する2つの第1電極部と、前記調光領域に位置する1つの第2電極部と、各第1電極部に1つ以上ずつ接続された2つ以上の狭窄電極部と、を備え、
各狭窄電極部は、1つの前記第2電極部に接続されると共に、前記第1電極部と前記第2電極部との間で括れ、かつ1mm以上の幅を有する、
ことを特徴とする調光シート。
【0146】
[付記3]
前記狭窄電極部は、前記狭窄電極部を挟む2の溝によって前記第1透明導電層に区切られ、
前記溝は、前記第1電極部の縁から前記狭窄電極部を通じて前記第2電極部の縁まで延びる、
上記付記1または2に記載の調光シート。
【0147】
[付記4]
前記第1透明導電層を支持する第1透明支持層をさらに備え、
前記溝は、前記第1透明導電層を貫通し、かつ前記第1透明支持層に底部を備える、
上記付記3に記載の調光シート。
【0148】
[付記5]
前記第1透明導電層を支持する第1透明支持層をさらに備え、
前記溝は、前記第1透明導電層、および前記第1透明支持層を貫通する、
上記付記3に記載の調光シート。
【0149】
[付記6]
導電層間の電圧によって透過率を変えない領域が非調光領域であり、
前記非調光領域は、前記第1透明導電層のなかで前記溝に全体を囲まれた浮遊導電部を備える、
上記付記1から5のいずれか1つに記載の調光シート。
【0150】
[付記7]
前記第2電極部は、図柄形状を有し、
前記第1電極部は、前記図柄形状を引き立たせる背景形状を有する、
上記付記6に記載の調光シート。
【0151】
[付記8]
前記第2電極部は、前記調光シートの外周部に位置する、
上記付記6または7に記載の調光シート。
【0152】
[付記9]
前記第1透明導電層は、前記調光領域に位置する電極端部を備え、
前記電極端部は、2つの辺が先端に向けて近づく先細り形状を有し、
前記2つの辺の間隔は、1mm以上であり、
前記2つの辺の形成する角度が10°以上である、
上記付記1から付記8のいずれか1つに記載の調光シート。
【符号の説明】
【0153】
L1,L2,L3,L4…幅
10…調光シート
11,11A,11B…調光層
12A…第1透明導電層
12B…第2透明導電層
13A…第1透明支持層
13B…第2透明支持層
20…調光領域
21…非調光領域
20A~20D…調光部分
26…狭窄電極部
30…調光電極部
30A…狭窄部分
30AE…電極端部
30B~30E…電極部
31…浮遊導電部
100…図柄
120,120A,120B…溝