(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168848
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20231121BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D33/25 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080193
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕之
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA17
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA30
3E064FA01
3E064FA03
3E064HM03
3E064HN05
3E064HN11
3E064HP01
(57)【要約】
【課題】開封の開始が容易で、開始位置が明確であり、再開封時にきっかけを掴みやすい包装袋を提供すること。
【解決手段】少なくとも基材層、シーラント層を順次積層する表フィルムと裏フィルムのシーラント層同士を対向させ、前記表フィルムと前記裏フィルムの周縁部をシールした包装袋であって、
前記表フィルムの基材層には、トップシール部の下部に第一の再封止ファスナーが、前記裏フィルムのシーラント層には、トップシール部と前記第一の再封止ファスナーとの間の高さに、第二の再封止ファスナーが設けられ、
前記表フィルムには、幅方向に開封するための切断を誘導する開封誘導線が設けられ、
前記開封誘導線は、一対のサイドシール部にそれぞれ端部を有し、ボトムの方向に凸となる形状を成すことを特徴とする包装袋。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層、シーラント層を順次積層する表フィルムと裏フィルムのシーラント層同士を対向させ、前記表フィルムと前記裏フィルムの周縁部をシールした包装袋であって、
前記表フィルムの基材層には、トップシール部の下部に第一の再封止ファスナーが、前記裏フィルムのシーラント層には、トップシール部と前記第一の再封止ファスナーとの間の高さに、第二の再封止ファスナーが設けられ、
前記表フィルムには、幅方向に開封するための切断を誘導する開封誘導線が設けられ、
前記開封誘導線は、一対のサイドシール部にそれぞれ端部を有し、ボトムの方向に凸となる形状を成すことを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記開封誘導線は、左右それぞれのサイドシール部から幅方向に対して所定の角度で傾斜し、幅方向中央で交差することで、V字型形状となっていることを特徴とする、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記開封誘導線に沿って開封した後に、前記第一の再封止ファスナーおよび第二の再封止ファスナーの高さ方向の略中央で包装袋を折り、前記第一の再封止ファスナーおよび第二の再封止ファスナーを合わせて再封止した際、切断された凸形状部分が前記表フィルム面上に折返されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記基材層は、厚みが9~50μmであるポリエステル、もしくはポリアミド系樹脂から成り、前記開封誘導線は、前記基材層の80%以上の厚みまで形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項5】
前記シーラント層の厚みが30μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医療・医薬品などの分野において、内容物を一度に全ては使用せず、何回かに分けて内容物を取り出すための再封止手段を設けた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調味料、食品、医薬品等湿気を嫌う内容物を包装するために、水蒸気透過性の低い防湿性のプラスチックフィルム、ラミネートフィルムの単層又は積層材を貼り合わせて袋状とし、種々の形状、構造を有する包装袋が提案されている。このような包装袋には、サイドシール部にU字型やV字型、亀の甲型のノッチ等の開封開始部をきっかけとして、表裏の積層体を引き裂く手段が設けられているのが一般的である。さらにノッチの部分から包装袋の切り裂きが一直線状に進むように、表裏の積層フィルムにハーフカット加工や傷加工などによる開封誘導線を設けたりすることが広く行われている。
【0003】
また、内容物を何回かにわたって使用する用途の包装袋は、一般的にトップシール下部に合成樹脂製ファスナー等の再封止手段を配置し、トップシール部と再封止手段の間を水平に開封するように設計されており、開封した後も再封止が可能である。包装袋にこのような再封止手段を設けることによって、内容物が一度に全部消費されず、何回かに亘って消費される場合にも、内容物を繰り返し密封保管することができる。
【0004】
しかしながら、ノッチと開封誘導線を組み合わせた従来の包装袋では、容易に一直線状に引裂くことはできるが、包装袋の表裏を構成する積層フィルムが、重なったまま同位置で同形状に引裂かれるため、この重なった部位を指でつまみ開口させることが困難であった。特に、合成樹脂製ファスナーを持つ包装袋の場合は、ファスナーと引き裂かれた部分との距離が短く、指でつまみにくいため、開封部のきっかけが掴み難い問題があった。さらに、例えこのようにして引き剥がして開口させた後でも、ファスナーを再封した後に再度開口させるときに再び同様の問題が生じていた。
【0005】
特許文献1では、きっかけが掴み難いという問題を解消すべく、再封止手段の設けられた包装袋において、サイドシールから伸びる開封誘導線が、幅方向に向かって直線-半円-直線の形状を有し、表裏の積層体で半円の上下を反転させた形状に開封される包装袋を提案している。これにより開封後は半円部分を掴み、再封止および再開封することができる。しかし、この特許の開封誘導線では、開封誘導線が直線から半円の部分に切り替わる部分で、開封誘導線を逸脱して開封されることがあり、結果的に直線のまま開封され、上記問題を解決できない虞がある。
【0006】
また、特許文献2では、特許文献1の包装袋において、実際の開封が開封誘導線から逸脱することを防ぐため、開封誘導線を変更した包装袋を提案している。表面の積層体では上に凸の形状と、下に凸の形状の2本の開封誘導線を有し、裏面の積層体では直線のみの開封誘導線を有している。これにより、表面の一方の開封誘導線が逸脱したとしても、もう一方の開封誘導線に移行し開封できるため、表裏面の積層体の切り口に段差がつけられるので、開封が容易であるとしている。
【0007】
しかし上記開封誘導線では裏面の積層体が開封誘導線通りに開封できない場合、表面の積層体の開封誘導線に従い開封されることが懸念される。さらに、想定通りに開封できたとしても、裏面の積層体には掴めるきっかけが無いため、やはりユニバーサルデザインの包装袋とは言い難い。
【0008】
再封止手段を有した包装袋において、開封口を掴みやすくするべく、様々な形状の開封誘導線が提案されているが、開封時にその開封誘導線を逸脱した場合、開封口が揃ってしまい、開口部のきっかけが掴み難いという問題が共通している。また、包装袋のサイドシール部から開封するという開封方法が共通しているため、開封誘導線の形状を変えようとも、根本的な原因の解決には至っていない。つまり、再開封時のきっかけが掴み難いという問題は残ったままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-289396号公報
【特許文献2】特許第5958209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の様な問題の解決のためになされたもので、開封の開始が容易で、開始位置が明確であり、再開封時にきっかけを掴みやすい包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の第1の態様は、
少なくとも基材層、シーラント層を順次積層する表フィルムと裏フィルムのシーラント層同士を対向させ、前記表フィルムと前記裏フィルムの周縁部をシールした包装袋であって、
前記表フィルムの基材層には、トップシール部の下部に第一の再封止ファスナーが、前記裏フィルムのシーラント層には、トップシール部と前記第一の再封止ファスナーとの間の高さに、第二の再封止ファスナーが設けられ、
前記表フィルムには、幅方向に開封するための切断を誘導する開封誘導線が設けられ、
前記開封誘導線は、一対のサイドシール部にそれぞれ端部を有し、ボトムの方向に凸となる形状を成すことを特徴とする包装袋である。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、
前記開封誘導線は、左右それぞれのサイドシール部から幅方向に対して所定の角度で傾斜し、幅方向中央で交差することで、V字型形状となっていてもよい。
【0013】
また、本発明の第3の態様は、
前記開封誘導線に沿って開封した後に、前記第一の再封止ファスナーおよび第二の再封止ファスナーの高さ方向の略中央で包装袋を折り、前記第一の再封止ファスナーおよび第二の再封止ファスナーを合わせて再封止した際、切断された凸形状部分が前記表フィルム面上に折返されていてもよい。
【0014】
また、本発明の第4の態様は、
前記基材層は、厚みが9~50μmであるポリエステル、もしくはポリアミド系樹脂から成り、前記開封誘導線は、前記基材層の80%以上の厚みまで形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明の第5の態様は、
前記シーラント層の厚みが30μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
開封の開始が容易で、開始位置が明確であり、また開封後の切り口の開口が左右どちら
の手でも容易に行え、再開封時にきっかけを掴みやすい包装袋を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の包装袋の一実施形態の平面模式図である。
【
図2】本発明の包装袋の開封誘導線にしたがって、表フィルムを開封した平面模式図である。
【
図3】本発明の包装袋の再封止した平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。なお、本発明の実施の形態は、以下に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0019】
図1は、本発明の包装袋の一実施形態の平面模式図である。
包装袋1は、表側と裏側をなす2枚の略矩形の積層フィルムを、略矩形の周縁の3辺をシールしてサイドシール部9、11、ボトムシール部10とし、内側の非シール部に収納部を設けて袋状としたもので、略矩形の残りの1辺である上部は開口部とされて内容物の充填口とすることができ、内容物の充填後に同様にトップシール8して密封することができる。収容部には、例えば食料品等の内容物が封入される。
【0020】
本発明の包装袋1には、表フィルム7に、幅方向に開封するための切断を誘導する開封誘導線5が設けられ、開封誘導線5は、一対のサイドシール部にそれぞれ端部4を有し、両端部から幅方向に対して所定の角度で傾斜し、幅方向中央で交差することで、ボトムの方向に凸となるV字型形状を成している。このV字型形状の頂点部分が開封開始点6となり、この開封開始点6から切断が始まり、開封誘導線5に沿って表フィルム7が開封される。なお、ボトムの方向に凸となる開封誘導線の形状としては、U字型形状など他の形状であってもよい。
【0021】
本実施形態では、上記のように表フィルム7の中央部から開封できる様、表フィルム7表面の積層体20にレーザーにて開封誘導線5を施している。形状はボトムの方向に凸となるV字型であり、開封開始および再開封の際、きっかけを掴みやすくするため、V字型の形状が望ましい。
【0022】
基材層21は、厚みが9~50μmであるポリエステル、もしくはポリアミド系樹脂から成り、開封誘導線5は、レーザー加工、またはミシン刃(形状がボトムの方向に凸となるV字型の場合は、開封誘導線の加工方法は、ミシン刃では直線加工しかできないため、レーザー加工に限定される)により形成された加工深さが、基材層の厚みの80%以上であると、開封開始後の切り口の開口が容易に行えるので望ましい。加工深さが、基材層21の厚みの80%より浅いと、開封開始後の切り口の開口が容易に行えず、その開封誘導線5を逸脱してしまう虞がある。
【0023】
図4は、表フィルム7に用いられた積層体20の概略断面図である。表フィルム7は、例えば袋の内側から、シーラント層22、中間層23および基材層21がこの順に積層された積層構造とすることができる。図示するように基材層21には、基材層21の厚みの80%以上のレーザー加工25が形成されている。
【0024】
また、
図1を見てわかるように、表フィルム7の基材層21には、トップシール部8下部に第一の再封止ファスナーを備え、また、
図2のように裏フィルム13のシーラント層
22には、トップシール部と第一の再封止ファスナー3との間の高さに、第二の再封止ファスナー14が設けられ、第一の再封止ファスナー3と合わさって、収容部を再封止することが可能である。第一の再封止ファスナー3および第二の再封止ファスナー14は、開封と密封とを繰り返して行うことが可能な公知の構造を適宜採用することができる。例えば、帯状の突起部と帯状の溝部が嵌合することによって繰り返し密封することが可能な合成樹脂製のファスナーであってもよく、粘着シールであってもよい。
【0025】
シーラント層22としては、例えば、フィルム状のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。より具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体等のエチレン系樹脂;ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂;ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。シーラント層22は、上述の樹脂の1つを単独で、又は2つ以上を組み合わせて形成されていてもよい。
【0026】
シーラント層22は、厚みが30μm以下のシーラントフィルムが望ましい。基材層21、または中間層23までが、レーザー照射により加工が行える。よって包装袋の開封時の引き裂き強度は、シーラント層22の厚みに依存するため、上記30μm以下の厚みのシーラントフィルムが望ましい。
【0027】
次に、
図2を参照して開封方法の詳細を説明する。
図2は、開封開始部6から開封誘導線5に沿って包装袋1の表フィルム7を切り裂き、開封した状態の平面模式図である。
(1)
図2に示す開封誘導線5は、表フィルム7のみに形成されており、開封誘導線5の幅方向中央にある開封開始点6を押し込んでから折り曲げるようにして指でつまみ、包装袋の表フィルム7のみをトップシールの方向に開封誘導線5に沿って引き裂くようにして開封する。開封開始点はV字型の頂点なので押し込んだ時に破れやすく開口させることができ、指をかけるなどしてその先端をつまみやすい。
【0028】
(2)表フィルム7を開封誘導線5に沿って開封すると、表フィルム7によって隠れていた、裏フィルム13のシーラント層22に形成された第二の再封止ファスナー14が現れる。次に、
図3のように、第一の再封止ファスナー3および第二の再封止ファスナー14の高さ方向の略中央で包装袋を横に折り、第一の再封止ファスナー3および第二の再封止ファスナー14を篏合させ再封止することによって再度密閉することができる。その際、切断されたV字型形状部15が表フィルム7面上に折返される。
【0029】
(3)再開封時は、表フィルム7面上に折返されたV字型形状部15をつまみにして容易に開封することが可能である。開封開始点6を残して開封する方が、再開封時の場合でもきっかけが掴みやすく望ましいが、開封開始点6が剥がれても再開封時に折り返したトップシール8を掴めるため問題ない。
【実施例0030】
下記例のような10cm×10cmの積層フィルムを2枚(表フィルム、裏フィルム)用意し、表フィルムの積層体には
図2のような開封誘導線をレーザー照射により設ける。また表フィルムの積層体の基材層表面と、裏フィルムの積層体のシーラント層表面に
図2のように再封止ファスナーを設ける。その後袋形状になるよう4辺をシールし、レーザー加工深さ、開封性について評価実施した。
<実施例1>
(基材層)ポリエチレンテレフタラート(PET)12μm
(接着層)
1.アンカーコート剤
主剤A3210(エステル系) 三井化学製
硬化剤A3075(芳香族イソシアネート系) 三井化学 製
配合比 主剤:硬化剤:溶剤=15:5:205
配合後固形分濃度 5.0%
乾燥後塗布量 0.1g/m
2
2.接着性樹脂
LDPE LC600A 日本ポリエチレン製 13μm
(中間層:バリア層)
アルミニウム(AL) 9μm
(シーラント層)
LLDPE VE-7 30μm タマポリ製
基材層に施すレーザー加工深さ 基材層の厚みの80%以上
<実施例2>
基材層がONY(ポリアミド樹脂) 15μmであること以外は実施例1と同様。
<実施例3>
シーラント層の厚みが20μmであること以外は実施例1と同様。
<実施例4>
開封誘導線をミシン刃により作成。
図2のような形状はミシン刃で作成できないため、包装袋横方向の直線でミシン目を作成。
<比較例1>
基材層が延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム 20μmであること以外は実施例1と同様。
<比較例2>
レーザー加工深さが基材層の厚みの50%であること以外は実施例1と同様。
<比較例3>
シーラント層の厚みが50μmであること以外は実施例1と同様。
【0031】
<評価方法>
加工深さ・・・レーザー加工、もしくはミシン刃加工を行った表フィルムの積層体について、株式会社キーエンス社製のVHXデジタル光学顕微鏡を用いて、加工深さを測定。
開封性評価・・・開封誘導線に従い、手で表フィルムの積層体が引き裂けるか評価。
【0032】
<結果>
実施例、比較例の評価結果を表1にまとめた。
【0033】
【0034】
判定合格基準(判定が〇になる範囲)
加工深さ:基材層の厚みの80%以上
開封性:官能性評価
【0035】
表1から分かるように、本発明の構成の包装袋では、開封の開始が容易で、開始位置が明確であり、また開封誘導線に沿った切り裂きが容易に行え、さらに再開封時にきっかけを掴みやすかったが、比較例では、開封性が悪く、切り裂きをきれいに進めることができなかった。