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特開2023-169フィッティング、配管接続構造および液体クロマトグラフ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000169
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】フィッティング、配管接続構造および液体クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20221222BHJP
   F16L 19/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G01N30/26 N
F16L19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100829
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】柳林 潤
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014DA01
(57)【要約】
【課題】 接続構造の大型化を抑制しつつ配管の確実な接続を可能にするフィッティング、それを備えた配管接続構造およびそれを備えた液体クロマトグラフを提供する。
【解決手段】 フィッティング100は、一方向に延びる軸の周りで回転可能なネジ部100Aと、ネジ部100Aに軸の周りのトルクを与える操作部100Bと、操作部100Bに係合可能に構成された回転補助部材6とを備える。回転補助部材6には、第1の端部から第2の端部へ延びるスロット60dが設けられるとともに、外方へ突出する第1の突起が設けられる。回転補助部材6が操作部100Bに係合した状態で第1の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合、スロット60dの幅が変化することにより回転補助部材6と操作部100Bとの係合力が増加するように第1の突起の位置関係が設定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフの配管の接続に用いられるフィッティングであって、
一方向に延びる軸の周りで回転可能なネジ部と、
前記ネジ部に前記軸の周りのトルクを与える操作部と、
前記一方向において互いに反対側の第1および第2の端部を有し、前記操作部に係合可能に構成された回転補助部材とを備え、
前記操作部は、前記ネジ部を締め付ける第1の回転方向および前記ネジ部の締め付けを緩める第2の回転方向に回転可能に設けられ、
前記回転補助部材には、前記第1の端部から前記第2の端部へ延びるスロットが設けられるとともに、外方へ突出する第1の突起が設けられ、
前記回転補助部材が前記操作部に係合した状態で前記第1の突起に対して前記第1の回転方向に力が加えられた場合に、前記スロットの幅が変化することにより前記回転補助部材と前記操作部との係合力が増加するように前記第1の突起と前記スロットとの位置関係が設定された、フィッティング。
【請求項2】
前記操作部は、第1の係合面を有し、
前記回転補助部材は、前記第1の係合面と係合することにより前記第1および第2の回転方向における前記操作部に対する相対的な回転を阻止する第2の係合面を有し、
前記第1の係合面と前記第2の係合面とが互いに係合した状態で前記第1の突起に対して前記第1の回転方向に力が加えられた場合に、前記スロットの幅が変化することにより前記第1の係合面と前記第2の係合面との係合力が増加するように前記第1の突起と前記スロットとの位置関係が設定された、請求項1記載のフィッティング。
【請求項3】
前記操作部は、前記第1の係合面を含む外周面を有し、
前記回転補助部材は、前記第2の係合面を含む内周面を有しかつ前記第1の突起を有する外周面を有し、
前記第1の係合面と前記第2の係合面とが互いに係合した状態で前記第1の突起に対して前記第1の回転方向に力が加えられた場合に、前記スロットの幅が縮小することにより前記第1の係合面と前記第2の係合面との係合力が増加するように、前記第1の突起が前記スロットから前記第2の回転方向において90度の角度範囲以内に配置された、請求項2記載のフィッティング。
【請求項4】
前記操作部は、前記第1の係合面を含む内周面を有し、
前記回転補助部材は、前記第2の係合面を含みかつ前記第1の突起を有する外周面を有し、
前記第1の係合面と前記第2の係合面とが互いに係合した状態で前記第1の突起に対して前記第1の回転方向に力が加えられた場合に、前記スロットの幅が拡大することにより前記第1の係合面と前記第2の係合面との係合力が増加するように、前記第1の突起が前記スロットから前記第1の回転方向において90度の角度範囲以内に配置された、請求項2記載のフィッティング。
【請求項5】
前記回転補助部材には、第2の突起がさらに設けられ、
前記第1の突起と前記スロットとの間の距離は、前記スロットと前記第2の突起との間の距離よりも小さい、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィッティング。
【請求項6】
前記回転補助部材は、前記第1の端部および前記第2の端部にそれぞれ前端面および後端面と、前記前端面側に開口部とを有し、
前記開口部は、前記第2の係合面を含む前記内周面を有し、
前記回転補助部材には、第2の突起がさらに設けられ、
前記第1の突起と前記スロットとの間の距離は、前記スロットと前記第2の突起との間の距離よりも小さく、
前記第2の突起は、前記第1の突起に対して前記スロットの反対側に設けられる、請求項3記載のフィッティング。
【請求項7】
前記回転補助部材は、
前記第1の端部および前記第2の端部にそれぞれ前端面および後端面と、
前記前端面から前方に突出する突出部とを有し、
前記突出部は、前記第2の係合面を含む前記外周面を有し、
前記回転補助部材には、第2の突起がさらに設けられ、
前記第1の突起と前記スロットとの間の距離は、前記スロットと前記第2の突起との間の距離よりも小さく、
前記第2の突起は、前記第1の突起に対して前記スロットの反対側に設けられる、請求項4記載のフィッティング。
【請求項8】
前記第1の係合面は、前記一方向に交差する断面において非円形状を有し、
前記第2の係合面は、前記一方向に交差する断面において前記第1の係合面と係合可能な非円形状を有する、請求項2~7のいずれか一項に記載のフィッティング。
【請求項9】
クロマトグラフの配管と、
請求項1~8のいずれか一項に記載のフィッティングと、
前記フィッティングにより前記配管が接続される配管接続部とを備えた、配管接続構造。
【請求項10】
複数の構成要素を備え、
請求項9に記載の前記配管接続部により配管が前記複数の構成要素のいずれかに接続される、液体クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッティング、配管接続構造および液体クロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体クロマトグラフ等のポートに配管を接続するためにフィッティングが用いられる。特許文献1には、管をポートに接続するための流体接続システムが記載される。流体接続システムは、アクチュエータナットを含む。アクチュエータナットは、ローレット部分および雄ねじ部分を有する。アクチュエータナットの雄ねじ部分は、筐体本体の雌ねじ部分に係合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-531805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアクチュエータナットは、ローレット部分を有するので、使用者は指で回しやすい。使用者が小さな力で雄ねじ部分を手で確実に締め付けるためには、ローレット部分が大きい径を有することが望ましい。
【0005】
一方、狭い空間で配管を被接続部に接続するためには、フィッティングの外径は、小さいことが望ましい。
【0006】
このように、フィッティングの雄ねじ部を小さい力で確実に締め付けることを可能にすることと、狭い空間において配管を被接続部に接続することを可能にすることとは相反する。これらを両立させることは、容易でない。
【0007】
本発明の目的は、接続構造の大型化を抑制しつつ配管の確実な接続を可能にするフィッティング、それを備えた配管接続構造およびそれを備えた液体クロマトグラフを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従うフィッティングは、クロマトグラフの配管の接続に用いられるフィッティングであって、一方向に延びる軸の周りで回転可能なネジ部と、ネジ部に軸の周りのトルクを与える操作部と、一方向において互いに反対側の第1および第2の端部を有し、操作部に係合可能に構成された回転補助部材とを備え、操作部は、ネジ部を締め付ける第1の回転方向およびネジ部の締め付けを緩める第2の回転方向に回転可能に設けられ、回転補助部材には、第1の端部から第2の端部へ延びるスロットが設けられるとともに、外方へ突出する突起第1の突起が設けられ、回転補助部材が操作部に係合した状態で突起第1の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合に、スロットの幅が変化することにより回転補助部材と操作部との係合力が増加するように突起第1の突起とスロットとの位置関係が設定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接続構造の大型化を抑制しつつ配管の確実な接続を可能にするフィッティング、それを備えた配管接続構造およびそれを備えた液体クロマトグラフが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態に係るフィッティングの斜視図である。
図2図1のフィッティングが分解された状態を斜め後方に見た斜視図である。
図3図1のフィッティングが分解された状態を斜め前方から見た図である。
図4図2および3の本体部およびスプリングの拡大斜視図である。
図5図4の本体部の拡大斜視図である。
図6図4の本体部内に収容されたスプリングを表す平面図である。
図7図2および図3のスプリングおよびヘッドの拡大斜視図である。
図8図7のヘッドに嵌合されたスプリングを表す平面図である。
図9図2および3のヘッドに回転補助部材が装着された状態を示す平面図である。
図10図1のフィッティングによる配管の接続構造を示す断面図である。
図11】他の実施の形態に係るフィッティングが分解された状態を斜め後方に見た斜視図である。
図12図11の回転補助部材を前方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るフィッティングについて図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施の形態では、フィッティングの一例として、ラチェットフィッティングについて説明する。
【0012】
(1)フィッティングの構成
図1は、一実施の形態に係るフィッティングの斜視図である。図2は、図1のフィッティングが分解された状態を斜め後方に見た斜視図である。図3は、図1のフィッティングが分解された状態を斜め前方から見た図である。図1図2および図3には、前方Fおよび後方Rがそれぞれ矢印で示される。
【0013】
図1のフィッティング100は、メイルナット1、本体部2、スプリング3(図2および図3参照)、ヘッド4、固定板5および回転補助部材6を備える。メイルナット1、本体部2および固定板5がネジ部100Aを構成し、スプリング3およびヘッド4が操作部100Bを構成する。
【0014】
図2および図3に示すように、メイルナット1は、雄ねじ部1a、円筒部1b,1c、係合部1dおよび円筒部1eをこの順に有する。本実施の形態では、雄ねじ部1a、円筒部1b,1c、係合部1dおよび円筒部1eは、ステンレス鋼により一体的に形成される。なお、メイルナット1は、アルミニウム等の他の金属または硬質の樹脂材料等により形成されてもよい。雄ねじ部1a、円筒部1b,1c、係合部1dおよび円筒部1eの内部には、互いに連通する直線状の連通孔10aが形成される。以下、連通孔の中心軸を軸AXと呼ぶ。軸AXの方向を軸方向と呼ぶ。連通孔10aには、図1に一点鎖線で示すように、配管110が挿入される。本実施の形態において、図1図3のフィッティング100は、液体クロマトグラフに用いられる。図1図3のフィッティング100は、超臨界流体液体クロマトグラフ等の他のクロマトグラフで用いられてもよい。
【0015】
雄ねじ部1aは、円筒形状を有する。雄ねじ部1aの外周面には、雄ねじが形成される。以下、雄ねじ部を締め付けるための回転方向を締付方向Tと呼ぶ。本実施の形態では、円筒部1bは、円筒部1cより小さな外径を有する。係合部1dは、六角形状の断面を有する。本実施の形態では、円筒部1eは、円筒部1cよりも小さな外径を有する。円筒部1cの外周面の後端近傍には、環状の溝部11eが形成される。
【0016】
本体部2は、テーパ部2aおよび円筒部2bを含む。テーパ部2aは、円筒部2bから前方Fに漸次減少する外径を有する。図3に示すように、テーパ部2aには、前方Fに開口する開口部21aが形成される。開口部21aには、メイルナット1の係合部1dの六角形状の断面に対応する六角形状の断面を有する内周面22aが形成される。
【0017】
図2に示すように、円筒部2bには、後方Rに開口する開口部21bが形成される。開口部21bは、断面円形状の内周面22bを有する。開口部21bの内周面22bには、複数の突起210,220,230,240がそれぞれ軸方向に延びるように設けられる。複数の突起210,220,230,240は、軸AXを中心として等角度間隔で配置されている。本実施の形態では、4つの突起210,220,230,240が設けられている。円筒部2bは、開口部21bを取り囲む環状の当接面23bを有する。テーパ部2aの開口部21aおよび円筒部2bの開口部21bとは、貫通孔20aにより互いに連通する。
【0018】
本体部2のテーパ部2aおよび円筒部2bは、樹脂により一体的に形成される。本実施の形態において、本体部2は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)により形成される。なお、本体部2は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の他の樹脂により形成されてもよい。
【0019】
スプリング3は、環状部300、複数の突出部310,320および複数の凸部330,340を有する。環状部300は、略円形または略楕円形の断面を有する。環状部300は、貫通孔30aを有する。複数の突出部310,320は、環状部300の外方に延びるように、環状部300の外周面に形成されている。また、複数の突出部310,320は、軸AXを中心として等角度間隔で配置されている。本実施の形態では、2つの突出部310,320が軸AXを中心として互いに対称な位置に形成されている。
【0020】
複数の凸部330,340は、環状部300の後端面から後方かつ軸方向に延びるように形成されている。また、複数の凸部330,340は、軸AXを中心として等角度間隔で配置されている。本実施の形態では、2つの凸部330,340が軸AXを中心として互いに対称な位置に形成されている。
【0021】
スプリング3は、変形可能でかつ復元力を有する弾性材料により形成される。本実施の形態では、スプリング3の環状部300、複数の突出部310,320および複数の凸部330,340は、樹脂により一体的に形成される。本実施の形態において、スプリング3は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)により形成される。スプリング3は、メイルナット1より軟質のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の他の樹脂により形成されてもよい。
【0022】
ヘッド4は、図3に示される前端面4aおよび図2に示される後端面4bを有するとともに、軸方向に平行な外周面を有する。ヘッド4の外周面は、六角形状の断面を有する。以下、ヘッド4の外周面を係合面41と呼ぶ。ヘッド4の中央部には、貫通孔40aが設けられる。図3に示すように、ヘッド4の前端面4aには、複数の凹部410,420が形成されている。複数の凹部410,420は、スプリング3の複数の凸部330,340に対応するように、貫通孔40aの周囲の位置に等角度間隔で配置されている。複数の凹部410,420には、複数の凸部330,340が嵌合可能である。本実施の形態では、2つの凹部410,420が軸AXを中心として対称な位置に形成されている。
【0023】
ヘッド4は、樹脂により形成される。本実施の形態において、ヘッド4は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)により形成される。ヘッド4は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の他の樹脂により形成されてもよい。
【0024】
固定板5は、円弧形状を有する。固定板5には、内方に向かって突出する突出部51,52,53が形成される。突出部51,52,53は、メイルナット1の円筒部1eの溝部11eに取り付け可能に形成される。
【0025】
回転補助部材6は、図3に示される前端面60aおよび図2に示される後端面60bを有する。回転補助部材6は、前端面60aと後端面60bとの間にテーパ部6aおよび締付部6bを含む。テーパ部6aは、締付部6bから前端面60aまで前方Fに漸次減少する外径を有する。回転補助部材6は、ノブと呼ばれる。
【0026】
図3に示すように、テーパ部6aには、前方Fに開口する開口部61aが形成される。開口部61aの内周面には、ヘッド4の係合面41に対応する六角形状の断面を有する被係合面62aが形成される。締付部6bには、後端面60bからテーパ部6aの開口部61aに連通する貫通孔60cが設けられる。回転補助部材6のテーパ部6aおよび締付部6bには、前端面60aから後端面60bに延びるスロット60dが設けられる。スロット60dは、回転補助部材6の外周面から軸AXまで形成される。本実施の形態において、回転補助部材6の締付部6bの外周面には、外方へ突出しかつ軸方向に延びるように複数の突起610,620,630,640が設けられる。突起610,620,630,640の外方への突出高さは、少なくとも1mm以上であることが望ましい。本実施の形態においては、突起610,620,630,640の外方への突出高さは2mmである。本実施の形態では、4つの突起610,620,630,640が等角度で設けられる。回転補助部材6の締付部6bの外周面の4つの突起610,620,630,640の間には、より高さの低い補助的なローレットが設けられる。
【0027】
回転補助部材6は、樹脂成型加工により容易に作製可能である。本実施の形態において、回転補助部材6は、PA(ポリアミド)により形成される。回転補助部材6は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の他の樹脂により形成されてもよい。回転補助部材6は樹脂により形成されるため、金属により形成される場合と比べて剛性が小さい。そのため、回転補助部材6のスロット60dの幅が縮小および拡大し易い。この回転補助部材6は、操作部100Bに取り付け可能および取り外し可能に構成される。
【0028】
図2および図3に示すように、フィッティング100の組み立ての際には、メイルナット1の円筒部1eが本体部2、スプリング3およびヘッド4に嵌め込まれる。この状態で、本体部2のテーパ部2aの開口部21aの六角形状の内周面がメイルナット1の六角形状の係合部1dに係合する。それにより、本体部2がメイルナット1に回転不可能に固定される。本体部2の円筒部2bの開口部21b内には、スプリング3が収容される。また、スプリング3の凸部330,340がヘッド4の凹部410,420に嵌め込まれる。ヘッド4の前端面4aは、本体部2の後端面に回転可能に接触する。メイルナット1の円筒部1eの後端は、ヘッド4の貫通孔40aから後方Rに突出する。図1に示すように、ヘッド4から突出した円筒部1eの溝部11eに固定板5の突出部51~53が嵌め込まれる。それにより、スプリング3およびヘッド4がメイルナット1および本体部2に対して回転可能に取り付けられる。
【0029】
(2)本体部2およびスプリング3の係合
図4は、図2および3の本体部2およびスプリング3の拡大斜視図である。図5は、図4の本体部2の拡大斜視図である。図6は、図4の本体部2内に収容されたスプリング3を表す平面図である。図6には、本体部2およびスプリング3の後方視(後ろから軸方向に見た場合)が示される。
【0030】
本体部2の突起210~240の各々は、被係合面f1,f2および中間面f3を有する。被係合面f1は、締付方向Tにおいて円筒部2bの内周面22bから内方に傾斜するように形成される。被係合面f2は、締付方向Tと逆の方向(以下、解除方向Uと呼ぶ。)において円筒部2bの内周面22bから内方に傾斜するように形成される。中間面f3は、軸AXを中心とする円形の断面を有し、被係合面f1と被係合面f2とをつなぐように形成される。
【0031】
図5に示すように、締付方向Tにおいて、被係合面f1と内周面22bとがなす角度a1は、解除方向において被係合面f2と内周面22bとがなす角度a2よりも小さい。円周方向における被係合面f1の長さL1は、円周方向における被係合面f2の長さL2よりも大きい。
【0032】
図6に示すように、スプリング3の突出部310,320の各々は、係合面F1,F2および中間面F3を有する。係合面F1は、平面状に形成され、解除方向Uにおいて環状部300の外周面3aから中間面F3まで延びる。係合面F2は、僅かに凹状に湾曲するように形成され、締付方向Tにおいて環状部300の外周面3aから中間面F3まで延びる。中間面F3は、僅かに凸状に湾曲するように形成される。ここで、図6の後方視において、突出部310,320の中間面F3の中心を通る軸を軸A1と呼ぶ。軸A1に直交する軸を軸A2と呼ぶ。軸A1,A2は軸AXに直交する。
【0033】
軸A1の方向におけるスプリング3の長さ(突出部310の中間面F3の中心と突出部320の中間面F3の中心との間の長さ)は、軸A2の方向におけるスプリング3の長さよりも長い。すなわち、軸AXから突出部310の中間面F3までの長さは、軸A2の方向における軸AXから環状部300の一方の外周面までの長さよりも大きい。軸AXから突出部320の中間面F3までの長さは、軸A2の方向における軸AXから環状部300の他方の外周面までの長さよりも大きい。
【0034】
スプリング3が軸AXを中心に締付方向Tに予め定められたトルク(以下、設定トルクと呼ぶ。)よりも小さいトルクで回転する場合、スプリング3の突出部310の係合面F1が本体部2の突起210の被係合面f1に接触するとともに、スプリング3の突出部320の係合面F1が本体部2の突起230の被係合面f1に接触する。それにより、スプリング3が本体部2に係合する。その結果、本体部2がスプリング3とともに締付方向Tに回転する。
【0035】
この状態で、スプリング3が軸AXを中心に締付方向Tに予め定められたトルク規定値以下のトルクで回転すると、突起210,230の被係合面f1に働く反力が突出部310,320に与えられる。それにより、突出部310,320が矢印S1,S2で示すように軸AXに近づくように内方に向かってそれぞれ変形する。これに伴い、スプリング3の突出部310,320間の環状部300が矢印S3,S4で示すように軸AXから遠ざかるように外方に向かって変形する。このように、スプリング3は、軸A1の方向において圧縮され、軸A2の方向において伸張される。この場合、スプリング3の突出部310,320が本体部2の突起210~240を乗り越えることが可能となる。それにより、スプリング3と本体部2との係合が外れる。その結果、スプリング3が本体部2に対して空転する。
【0036】
このような構成により、締付方向Tにおいてスプリング3にトルク規定値よりも大きなトルクが与えられても、本体部2にトルク規定値よりも大きなトルクが与えられない。
【0037】
一方、スプリング3が軸AXを中心に解除方向Uに任意のトルクで回転する場合、スプリング3の突出部310の係合面F2が本体部2の突起210の被係合面f2に接触するとともに、スプリング3の突出部320の係合面F2が本体部2の突起230の被係合面f2に接触する。それにより、スプリング3が本体部2に係合する。その結果、本体部2がスプリング3とともに解除方向Uに回転する。
【0038】
この場合、本体部2の突起210~240の被係合面f2の角度a2が被係合面f1の角度a1よりも大きく、かつスプリング3の突出部310,320の係合面F2が凹状に形成されている。したがって、スプリング3と本体部2との係合が外れにくい。そのため、解除方向Uにおいてスプリング3にトルク規定値よりも大きなトルクが与えられた場合、本体部2がスプリング3とともに解除方向Uに回転する。
【0039】
(3)スプリング3およびヘッド4の嵌合
図7は、図2および図3のスプリング3およびヘッド4の拡大斜視図である。図8は、図7のヘッド4に嵌合されたスプリング3を表す平面図である。図8には、スプリング3およびヘッド4の前方視(前から軸方向に見た場合)が示される。
【0040】
スプリング3の凸部330,340の各々は、当接面cおよび接触面e1,e2を有する。各凸部330,340の接触面e1,e2は、軸方向に延びるように形成される。各凸部330,340の当接面cは、接触面e1と接触面e2軸とをつなぐように軸AXに垂直に形成される。本実施の形態において、図6に示すように、後方視において、各凸部330,340の接触面e1は、内方に変形する突出部310,320の中間面F3の中心と、外方に変形する環状部300の中心との中間に位置する。各接触面e1が軸A1と軸A2との間の角度を2等分する位置に形成されることが好ましい。
【0041】
ヘッド4の凹部410,420の各々は、被当接面Cおよび被接触面E1,E2を有する。被接触面E1,E2は、軸方向に平行かつ軸AXを中心とする半径方向に延びるように形成される。各凸部330,340の被当接面Cは、被接触面E1と被接触面E2とをつなぐように軸AXに垂直に形成される。
【0042】
ヘッド4の凹部410,420内にスプリング3の凸部330,340が嵌合される。この状態で、図8に示すように、ヘッド4が軸AXを中心に締付方向Tに回転すると、凹部410の被接触面E1が凸部330の接触面e1に接触するとともに凹部420の被接触面E1が凸部340の接触面e1に接触する。それにより、スプリング3がヘッド4とともに締付方向Tに一体的に回転する。
【0043】
また、ヘッド4が軸AXを中心に解除方向Uに回転すると、凹部410の被接触面E2が凸部330の接触面e2に接触するとともに凹部420の被接触面E2が凸部340の接触面e2に接触する。それにより、スプリング3がヘッド4とともに解除方向Uに一体的に回転する。
【0044】
(4)ヘッド4への回転補助部材6の装着
図9は、図2および3のヘッド4に回転補助部材6が装着された状態を示す平面図である。図9には、ヘッド4および回転補助部材6の前方視(前から軸方向に見た場合)が示される。
【0045】
回転補助部材6の開口部61aには、被係合面62aとヘッド4の係合面41とが互いに係合するようにヘッド4が嵌め込まれる。本実施の形態において、回転補助部材6の被係合面62aおよびヘッド4の係合面41は六角形の形状を備える。回転補助部材6の被係合面62aとヘッド4の係合面41との間には、寸法公差を考慮して僅かな隙間(例えば、0.1mm)が設けられる。ここで、図9の前方視において、スロット60dの幅方向の中心および軸AXを通る軸を軸A3と呼ぶ。なお、軸A3と軸AXとは、互いに直交する。
【0046】
以下、回転補助部材6の締付部6bの複数の突起610~640のうち、スロット60dに最も近い突起610を第1の突起610と呼ぶ。また、スロット60dに関して第1の突起610と反対側の突起620を第2の突起620と呼ぶ。本実施の形態では、第1の突起610は、スロット60dに対して解除方向U側に設けられる。ここで、図9の前方視において、第1の突起610の円周方向の中心および軸AXを通る軸を軸A4と呼ぶ。なお、軸A4と軸AXとは、互いに直交する。
【0047】
第1の突起610は、当該第1の突起610に締付方向Tの力が加えられた場合に、ヘッド4の係合面41と回転補助部材6の被係合面62aとの係合力が増加するように配置される。具体的には、第1の突起610は、軸A3と軸A4とのなす角a3が45度以下となるように設けられる。軸A3と軸A4とのなす角a3は30度以下であることが好ましく、20度以下であることがより好ましく、10度以下であることがさらに好ましい。締付方向Tにおいて、第1の突起610からスロット60dまでの距離は、スロット60dから第2の突起620までの距離よりも小さい。
【0048】
図9に示すように、回転補助部材6の第1の突起610に手で締付方向Tの力を加えると、回転補助部材6が軸AXを中心に締付方向Tに回転し、回転補助部材6の被係合面62aがヘッド4の係合面41に接触する。それにより、回転補助部材6がヘッド4に係合する。その結果、ヘッド4が回転補助部材6とともに締付方向Tに回転する。それにより、締付方向Tの力に対する反作用により、スロット60dの円周方向における幅が拡大しようとする。この場合、第1の突起610とスロット60dとの間の距離が小さいので、スロット60dの幅が縮小するように締付部6bが変形する。その結果、ヘッド4の係合面41と回転補助部材6の被係合面62aとの隙間が縮小されることにより、ヘッド4と回転補助部材6との係合力が増加する。
【0049】
フィッティング100による配管110の接続後には、作業者は、回転補助部材6を後方Rに移動させることにより回転補助部材6をヘッド4から取り外す。次いで、作業者は、配管110がスロット60dを通過するように回転補助部材6を移動させる。それにより、回転補助部材6がヘッド4および配管110から取り外される。
【0050】
フィッティング100により接続された配管110を取り外すとき場合には、作業者は、配管110がスロット60dを通過するように回転補助部材6を移動させることにより回転補助部材6を配管110に嵌め込む。次に、作業者は、回転補助部材6を前方Fに移動させることにより回転補助部材6をヘッド4に嵌め込む。それにより、回転補助部材6がヘッド4および配管110に装着される。
【0051】
この状態で、作業者が回転補助部材6の第2の突起620に手で解除方向Uの力を加えると、回転補助部材6が軸AXを中心に解除方向Uに回転し、回転補助部材6の被係合面62aがヘッド4の係合面41に接触する。それにより、回転補助部材6がヘッド4に係合する。その結果、ヘッド4が回転補助部材6とともに解除方向Uに回転する。
【0052】
(4)フィッティング100による配管の接続例
図10は、図1のフィッティング100による配管の接続構造を示す断面図である。
【0053】
被接続部材700は、被接続孔710および流路720を含む。被接続孔710は、被接続部材700の後端面700aに設けられる。被接続孔710は、雌ねじ部711、テーパ部712および円筒部713を含む。雌ねじ部711、テーパ部712および円筒部713は、後端面700aから前方Fにこの順に形成される。雌ねじ部711の内周面には、フィッティング100のメイルナット1の雄ねじ部1aに対応する雌ねじが形成される。雌ねじ部711および円筒部713は、円筒形状を有する。雌ねじ部711の内径は、円筒部713の内径より大きい。テーパ部712の内周面は、雌ねじ部711から円筒部713に漸次減少する内径を有する。流路720は、円筒部713から軸AXを中心に前方Fに延びるように形成される。フィッティング100には、配管110が挿入される。本例では、フィッティング100の雄ねじ部1aから前方に突出する配管110の外周面にフェルール800が取り付けられる。
【0054】
被接続部材700の被接続孔710には、フィッティング100のメイルナット1が挿入される。フェルール800は、テーパ部712内に充填される。被接続孔710の雌ねじ部711にメイルナット1の雄ねじ部1aが螺合される。それにより、フィッティング100により被接続部材700に配管110が接続される。この構成によれば、フィッティング100が締め付けられると、フェルール800の後端面が雄ねじ部1aの前端面により前方に押圧される。それにより、被接続孔710と配管110とがフェルール800により封止される。本実施の形態のフィッティング100では、締付トルクが高い精度で与えられるので、フェルール800の後端面を押圧する力のばらつきが低減される。したがって、被接続孔710と配管110との封止が安定する。
【0055】
(6)実施の形態の効果
本実施の形態に係るフィッティング100によれば、回転補助部材6が操作部100Bに係合した状態で、例えば、作業者の手により突起610に対して締付方向Tに力が加えられると、操作部100Bからネジ部100Aに締付方向Tのトルクが与えられる。それにより、ネジ部100Aが被接続部材700に対して締め付けられる。この場合、突起610とスロット60dとの間の距離が小さいので、突起610に対して締付方向Tに力が加えられた場合に、回転補助部材6のスロット60dの幅が縮小するように回転補助部材6が変形する。その結果、ヘッド4の係合面41と回転補助部材6の被係合面62aとの係合力が増加する。そのため、回転補助部材6から操作部100Bに確実に力が伝達される。この場合、突起610は外方へ突出しているので、小さな力で操作部100Bを回転させることができる。
【0056】
また、ネジ部100Aの締め付けによる被接続部材700に対する配管110の接続後にスロット60dを通して回転補助部材6を配管110および操作部100Bから取り外すことができる。したがって、配管110の接続構造が大型化しない。これらの結果、接続構造の大型化を抑制しつつ配管110の確実な接続が可能になる。それにより、狭い空間において配管110を接続することができる。
【0057】
また、突起620に対して締付方向Tに力が加えられた場合には、スロット60dの幅が拡大する。本実施の形態の構成では、突起610および突起620に対して締付方向Tに力が加えられた場合、突起620とスロット60dとの間の距離が突起610とスロット60dとの間の距離よりも大きいので、スロット60dの幅を拡大させる作用は相対的に小さくなる。ここで、相対的とは、突起620とスロット60dとの間の距離を突起610とスロット60dとの間の距離と同等とした場合、または突起620とスロット60dとの間の距離を突起610とスロット60dとの間の距離よりも小さくした場合との比較を意味する。それにより、ヘッド4の係合面41と回転補助部材6の被係合面62aとの係合力の低下が抑制される。したがって、突起610および突起620に力を加えることにより、回転補助部材6を回し易くなる。
【0058】
さらに、突起610に対して締付方向Tに力を加えずに、突起620に対して締付方向Tのみに力を加えることにより、スロット60dの幅を拡大させることができる。それにより、回転補助部材6の被係合面62aをヘッド4の係合面41から容易に離すことが可能となる。その結果、回転補助部材6を操作部100Bから容易に取り外すことができる。
【0059】
また、操作部100Bの係合面41および回転補助部材6の被係合面62aが軸方向に垂直な断面において円形状を有する場合には、操作部100Bの係合面41と回転補助部材6の被係合面62aとは摩擦力で係合する。これに対して、操作部100Bの係合面41および回転補助部材6の被係合面62aが軸方向に垂直な断面において非円形状を有する場合には、操作部100Bの係合面41と回転補助部材6の被係合面62aとが、摩擦力に加えて係合面41および被係合面62aの形状による係止で互いに係合する。それにより、回転補助部材6と操作部100Bとの相対的な回転が抑制される。
【0060】
(7)他の実施の形態
(7-1)図11は、他の実施の形態に係るフィッティングが分解された状態を斜め後方に見た斜視図である。図11には、前方Fおよび後方Rがそれぞれ矢印で示される。図12は、図11の回転補助部材60を前方から見た平面図である。
【0061】
図11のフィッティング100aは、メイルナット10、本体部20、スプリング30、ヘッド40、固定板50および回転補助部材60を備える。メイルナット10、本体部20、スプリング30および固定板50の構成は、図2および3のメイルナット1、本体部2、スプリング3および固定板5の構成と同様である。ヘッド40の前端面4aの構成は、図2および図3のヘッド4の前端面4aの構成と同様である。ヘッド40の後端面4bには、開口部41bが形成される。開口部41bの内周面には、八角形状の断面を有する被係合面42bが形成される。
【0062】
回転補助部材60の前端面60aには、前方に突出する係合部650が設けられる。係合部650の外周面には、係合面65aが形成される。係合面65aは、ヘッド4の被係合面42bに対応する八角形状の断面を有する。ヘッド4の開口部41bには、回転補助部材60の係合部650が嵌め込まれる。回転補助部材60の係合面65aとヘッド40の被係合面42bとの間には、寸法公差を考慮して僅かな隙間(例えば0.1mm)が設けられる。
【0063】
本実施の形態において、回転補助部材60の締付部6bの外周面には、外方へ突出しかつ軸方向に延びるように複数の突起611,621,631,641が設けられる。突起611,621,631,641の外方への突出高さは1mm以上であることが望ましい。本実施の形態において、突起611,621,631,641の外方への突出高さは2mmである。本実施の形態では、4つの突起611,621,631,641が等角度で設けられる。回転補助部材6の締付部6bの外周面の4つの突起611,621,631,641の間には、より高さの低い補助的なローレットが設けられる。
【0064】
以下、回転補助部材60の締付部6bの複数の突起611~641のうち、スロット60dに最も近い突起611を第1の突起611と呼ぶ。また、スロット60dに関して第1の突起610と反対側の突起621を第2の突起621と呼ぶ。本実施の形態では、第1の突起611は、スロット60dに対して締付方向T側に設けられる。ここで、図12の前方視において、第1の突起611の円周方向の中心および軸AXを通る軸を軸A5と呼ぶ。なお、軸A5と軸AXとは、互いに直交する。
【0065】
図12に示すように、第1の突起611は、当該第1の突起611に締付方向Tの力が加えられた場合に、ヘッド40の被係合面42bと回転補助部材60の係合面65aとの係合力が増加するように配置される。具体的には、第1の突起611は、軸A3と軸A5とのなす角a4が45度以下となるように設けられる。軸A3と軸A5とのなす角a3は30度以下であることが好ましく、20度以下であることがより好ましく、10度以下であることがさらに好ましい。解除方向Uにおいて、第1の突起611からスロット60dまでの距離は、スロット60dから第2の突起621までの距離よりも小さい。
【0066】
図11に示すように、回転補助部材60の第1の突起611に手で締付方向Tの力を加えると、回転補助部材60が軸AXを中心に締付方向Tに回転し、回転補助部材60の係合面65aがヘッド40の被係合面42bに接触する。それにより、回転補助部材60がヘッド40に係合する。その結果、ヘッド40が回転補助部材60とともに締付方向Tに回転する。それにより、締付方向Tの力に対する反作用により、スロット60dの円周方向における幅が縮小しようとする。この場合、第1の突起611とスロット60dとの間の距離が小さいので、スロット60dの幅が拡大するように締付部6bが変形する。その結果、ヘッド40の被係合面42bと回転補助部材60の係合面65aとの隙間が縮小されることにより、ヘッド40と回転補助部材60との係合力が増加する。
【0067】
フィッティング100aによる配管110の接続後には、作業者は、回転補助部材60を後方Rに移動させることにより回転補助部材60をヘッド40から取り外す。次いで、作業者は、配管110がスロット60dを通過するように回転補助部材60を移動させる。それにより、回転補助部材60がヘッド40および配管110から取り外される。
【0068】
フィッティング100により接続された配管110を取り外すとき場合には、作業者は、配管110がスロット60dを通過するように回転補助部材60を移動させることにより回転補助部材60を配管110に嵌め込む。次に、作業者は、回転補助部材60を前方Fに移動させることにより回転補助部材60をヘッド40に嵌め込む。それにより、回転補助部材60がヘッド40および配管110に装着される。
【0069】
この状態で、作業者が回転補助部材60の第2の突起621に手で解除方向Uの力を加えると、回転補助部材60が軸AXを中心に解除方向Uに回転し、回転補助部材60の係合面65aがヘッド40の被係合面42bに接触する。それにより、回転補助部材60がヘッド40に係合する。その結果、ヘッド40が回転補助部材60とともに解除方向Uに回転する。
【0070】
(7-2)図1図9の実施の形態において、回転補助部材6の締付部6bには、複数の突起610~640が設けられるが、複数の突起610~640の数はこれに限定されない。回転補助部材6の締付部6bに単一の突起610のみが設けられてもよい。この場合、回転補助部材6における突起610の位置は、図1図9の実施の形態における第1の突起610と同様である。
【0071】
図11図12の実施の形態において、回転補助部材60の締付部6bには、複数の突起611~641が設けられるが、本発明はこれに限定されない。回転補助部材60の締付部6bに単一の突起611のみが設けられてもよい。この場合、回転補助部材60における突起611の位置は、図11および図12の実施の形態における第1の突起611と同様である。
【0072】
(8)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、前端面60aが第1の端部の例であり、後端面60bが第2の端部の例であり、突起610,611が第1の突起の例である。突起620,621が第2の突起の例であり、係合面41または被係合面42bが第1の係合面の例であり、被係合面62aおよび係合面65aが第2の係合面の例である。締付方向Tが第1の回転方向の例であり、解除方向Uが第2の回転方向の例である。
【0073】
(9)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0074】
(第1項) 一態様に係るフィッティングは、
クロマトグラフの配管の接続に用いられるフィッティングであって、
一方向に延びる軸の周りで回転可能なネジ部と、
ネジ部に軸の周りのトルクを与える操作部と、
一方向において互いに反対側の第1および第2の端部を有し、操作部に係合可能に構成された回転補助部材とを備え、
操作部は、ネジ部を締め付ける第1の回転方向およびネジ部の締め付けを緩める第2の回転方向に回転可能に設けられ、
回転補助部材には、第1の端部から第2の端部へ延びるスロットが設けられるとともに、外方へ突出する第1の突起が設けられ、
回転補助部材が操作部に係合した状態で第1の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合に、スロットの幅が変化することにより回転補助部材と操作部との係合力が増加するように第1の突起とスロットとの位置関係が設定される。
【0075】
第1項に記載のフィッティングによれば、回転補助部材が操作部に係合した状態で、突起に対して第1の回転方向に力が加えられると、操作部からネジ部に第1の回転方向のトルクが与えられる。それにより、ネジ部が締め付けられる。上記の構成によれば、突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合に、回転補助部材のスロットの幅が変化することにより回転補助部材と操作部との係合力が増加する。そのため、回転補助部材が空転することなく回転補助部材から操作部に確実に力が伝達される。この場合、突起は外方へ突出しているので、小さな力で操作部を回転させることができる。
【0076】
また、ネジ部の締め付けによる配管の接続後にスロットを通して回転補助部材を配管および操作部から取り外すことができる。したがって、配管の接続構造が大型化しない。これらの結果、接続構造の大型化を抑制しつつ配管の確実な接続が可能になる。
【0077】
(第2項) 第1項に記載のフィッティングにおいて、
操作部は、第1の係合面を有し、
回転補助部材は、第1の係合面と係合することにより第1および第2の回転方向における操作部に対する相対的な回転を阻止する第2の係合面を有し、
第1の係合面と第2の係合面とが互いに係合した状態で第1の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合に、スロットの幅が変化することにより第1の係合面と第2の係合面との係合力が増加するように第1の突起とスロットとの位置関係が設定されてもよい。
【0078】
第2項に記載のフィッティングによれば、突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合に第1の係合面と第2の係合面との係合力が増加することにより、回転補助部材から操作部に確実に力が伝達される。
【0079】
(第3項) 第2項に記載のフィッティングにおいて、
操作部は、第1の係合面を含む外周面を有し、
回転補助部材は、第2の係合面を含む内周面を有しかつ第1の突起を有する外周面を有し、
第1の係合面と第2の係合面とが互いに係合した状態で第1の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合に、スロットの幅が縮小することにより第1の係合面と第2の係合面との係合力が増加するように、第1の突起がスロットから第2の回転方向において90度の角度範囲以内に配置されてもよい。
【0080】
第3項に記載のフィッティングによれば、操作部の外周面の第1の係合面に回転補助部材の内周面の第2の係合面が接触する。この場合、突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合に、スロットの幅が縮小する。それにより、第1の係合面と第2の係合面との係合力が増加する。
【0081】
(第4項) 第2項に記載のフィッティングにおいて、
操作部は、第1の係合面を含む内周面を有し、
回転補助部材は、第2の係合面を含みかつ第1の突起を有する外周面を有し、
第1の係合面と第2の係合面とが互いに係合した状態で第1の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合に、スロットの幅が拡大することにより第1の係合面と第2の係合面との係合力が増加するように、第1の突起がスロットから第1の回転方向において90度の角度範囲以内に配置されてもよい。
【0082】
第4項に記載のフィッティングによれば、操作部の内周面の第1の係合面に回転補助部材の外周面の第2の係合面が接触する。この場合、突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合に、スロットの幅が拡大する。それにより、第1の係合面と第2の係合面との係合力が増加する。
【0083】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか一項に記載のフィッティングにおいて、
前記回転補助部材には、第2の突起がさらに設けられ、
前記第1の突起と前記スロットとの間の距離は、前記スロットと前記第2の突起との間の距離よりも小さくてもよい。
【0084】
第5項に記載のフィッティングによれば、第1の突起および第2の突起に力を加えることにより、回転補助部材を回し易くなる。
【0085】
(第6項) 第3項に記載のフィッティングにおいて、
回転補助部材は、第1の端部および第2の端部にそれぞれ前端面および後端面と、前端面側に開口部とを有し、
開口部は、第2の係合面を含む内周面を有し、
回転補助部材には、第2の突起がさらに設けられ、
第1の突起とスロットとの間の距離は、スロットと第2の突起との間の距離よりも小さく、
第2の突起は、第1の突起に対してスロットの反対側に設けられてもよい。
【0086】
第6項に記載のフィッティングによれば、第2の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合には、スロットの幅が拡大する。上記の構成では、第1の突起および第2の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合、スロットと第2の突起との間の距離が第1の突起とスロットとの間の距離よりも大きいので、スロットの幅を拡大させる作用は相対的に小さくなる。それにより、第1の係合面と第2の係合面との係合力の低下が抑制される。したがって、第1の突起および第2の突起に力を加えることにより、回転補助部材を回し易くなる。
【0087】
また、第1の突起に対して第1の回転方向に力を加えずに、第2の突起に対して第1の回転方向に力を加えることにより、スロットの幅を拡大させることができる。それにより、回転補助部材の第2の係合面を操作部の第1の係合面から容易に離すことができる。その結果、回転補助部材を操作部から容易に取り外すことができる。
【0088】
(第7項) 第4項に記載のフィッティングにおいて、
回転補助部材は、
第1の端部および第2の端部にそれぞれ前端面および後端面と、
前端面から前方に突出する突出部とを有し、
突出部は、第2の係合面を含む外周面を有し、
回転補助部材には、第2の突起がさらに設けられ、
第1の突起とスロットとの間の距離は、スロットと第2の突起との間の距離よりも小さく、
第2の突起は、第1の突起に対してスロットの反対側に設けられてもよい。
【0089】
第7項に記載のフィッティングによれば、第2の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合には、スロットの幅が縮小する。上記の構成では、第1の突起および第2の突起に対して第1の回転方向に力が加えられた場合、スロットと第2の突起との間の距離が第1の突起とスロットとの間の距離よりも大きいので、スロットの幅を縮小させる作用は相対的に小さくなる。それにより、第1の係合面と第2の係合面との係合力の低下が抑制される。したがって、第1の突起および第2の突起に力を加えることにより、回転補助部材を回し易くなる。
【0090】
また、第1の突起に対して第1の回転方向に力を加えずに、第2の突起に対して第1の回転方向に力を加えることにより、スロットの幅を縮小させることができる。それにより、回転補助部材の第2の係合面を操作部の第1の係合面から容易に離すことができる。その結果、回転補助部材を操作部から容易に取り外すことができる。
【0091】
(第8項) 第2~7項のいずれか一項に記載のフィッティングにおいて、
第1の係合面は、一方向に交差する断面において非円形状を有し、
第2の係合面は、一方向に交差する断面において第1の係合面と係合可能な非円形状を有してもよい。
【0092】
第8項に記載のフィッティングによれば、一方向に交差する断面において非円形状を有する第1の係合面と一方向に交差する断面において非円形状を有する第2の係合面とが係合することにより、操作部の第1の係合面と回転補助部材の第2の係合面とが摩擦力に加えて第1および第2の係合面の形状による係止で互いに係合する。それにより、回転補助部材と操作部との相対的な回転が抑制される。
【0093】
(第9項) 他の態様に係る配管接続構造は、
クロマトグラフの配管と、
第1~8項のいずれか一項に記載のフィッティングと、
フィッティングにより配管が接続される配管接続部とを備えてもよい。
【0094】
第9項に記載の配管接続構造によれば、接続構造の大型化を抑制しつつ配管の確実な接続が可能になる。
【0095】
(第10項) 他の態様に係る液体クロマトグラフは、
複数の構成要素を備え、
第9項に記載の配管接続部により配管が複数の構成要素のいずれかに接続されてもよい。
【0096】
第10項に記載の液体クロマトグラフによれば、接続構造の大型化を抑制しつつ配管の確実な接続が可能になる。
【符号の説明】
【0097】
1,10…メイルナット,1a…雄ねじ部,1b,1c,1e…円筒部,1d…係合部,10a…連通孔,110…配管,11e…溝部,2,20…本体部,2a…テーパ部,2b…円筒部,20a…貫通孔,21a,21b…開口部,22a,22b…内周面,23b…当接面,210,220,230,240…突起,3,30…スプリング,3a…外周面,30a…貫通孔,300…環状部,310,320…突出部,330,340…凸部,4,40…ヘッド,4a…前端面,4b…後端面,40a…貫通孔,41…係合面,41b…開口部,42b…被係合面,410,420…凹部,5,50…固定板,51,52,53…突出部,6,60…回転補助部材,6a…テーパ部,6b…締付部,60a…前端面,60b…後端面,60c…貫通孔,60d…スロット,61a…開口部,62a…被係合面,65a…係合面,610,611…第1の突起,620,621…第2の突起,630,631,640,641…突起,650…係合部,700…被接続部材,700a…後端面,710…被接続孔,711…円筒部,712…テーパ部,713…雌ねじ部,720…流路,100,100a…フィッティング,100A…ネジ部,100B…操作部,A1~A5…軸,C…被当接面,E1,E2…被接触面,F1,F2…係合面,F3…中間面,T…締付方向,U…解除方向,c…当接面,e1,e2…接触面,f1,f2…被係合面,f3…中間面
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図12