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特開2023-170201チップ用の先端部品、切削工具用チップ及び切削工具用チップの製造方法
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  • 特開-チップ用の先端部品、切削工具用チップ及び切削工具用チップの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170201
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】チップ用の先端部品、切削工具用チップ及び切削工具用チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/18 20060101AFI20231124BHJP
   B23K 20/02 20060101ALI20231124BHJP
   B23P 15/30 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B23B27/18
B23K20/02
B23P15/30
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081762
(22)【出願日】2022-05-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(71)【出願人】
【識別番号】521265151
【氏名又は名称】株式会社フォーカス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 博信
(72)【発明者】
【氏名】角谷 康雄
(72)【発明者】
【氏名】押野 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】松下 滋
【テーマコード(参考)】
3C046
4E167
【Fターム(参考)】
3C046PP00
4E167AA15
4E167DB05
(57)【要約】
【課題】ろう付けを用いずに台座に接合することが可能なチップ用の先端部品、切削工具用チップ及び切削工具用チップの製造方法を提供する。
【解決手段】先端部品12は、少なくとも一部が台座13に直接接合される基部材21と、切れ刃を有する高硬度素材体24とを備える。先端部品12は、接合面25と開放面26とを有し、台座13に直接接合される基部材21の部分は接合面25に設けられており、開放面26には高硬度素材体24及び基部材21が表れている。台座13に直接接合される基部材の部分22と開放面26に表れる基部材23とは連続的に形成されている。切削工具用チップ10は、先端部品12が窪み31に嵌め込まれた状態で、接合面25の少なくとも一部と台座13とが直接接合されている。チップの製法は、台座13を供給し、窪み31の複数箇所に先端部品12を嵌め込み、先端部品12の複数を台座13に同時に押圧しながら電流を流す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具に取り付けられるチップの構成部品である台座に形成された窪みに取り付けられる、前記チップの構成部品である先端部品であって、
少なくとも一部が前記台座に直接接合される基部材と、
切削対象物を切削する切れ刃を有する高硬度素材体と、を備え、
前記先端部品は、接合面と、前記接合面の反対側の開放面と、を有し、
前記台座に直接接合される前記基部材の部分は、前記接合面に設けられており、
前記開放面には、前記高硬度素材体及び前記基部材が表れており、
前記台座に直接接合される前記基部材の部分と前記開放面に表れる前記基部材とが連続的に形成されている、
チップ用の先端部品。
【請求項2】
前記開放面において、前記基部材の周囲全体が前記高硬度素材体に囲まれている、
請求項1に記載のチップ用の先端部品。
【請求項3】
前記台座に直接接合される前記基部材の部分と前記開放面における前記基部材とが仮想直線上に存在するように配置されており、
前記仮想直線は押圧方向に対して平行に延びており、
前記押圧方向は、前記先端部品と前記台座とを直接接合する際に前記先端部品を前記台座に対して相対的に押圧する方向である、
請求項1に記載のチップ用の先端部品。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のチップ用の先端部品と、
前記先端部品が嵌め込まれる窪みが形成された台座と、を備え、
前記先端部品が前記窪みに嵌め込まれた状態で、前記接合面の少なくとも一部と前記台座とが直接接合されている、
切削工具用チップ。
【請求項5】
前記台座は、前記接合面に対向する前記窪みにおける面に設けられたプロジェクションが塑性変形して前記先端部品に直接接合している、
請求項4に記載の切削工具用チップ。
【請求項6】
複数箇所に窪みが形成された台座を供給する工程と、
前記窪みの複数箇所に、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のチップ用の先端部品を嵌め込む工程と、
前記窪みに嵌め込まれた前記先端部品の複数を、前記台座に対して同時に押圧する工程と、
前記窪みに嵌め込まれた前記先端部品の複数を前記台座に対して同時に押圧しながら、複数の前記先端部品と前記台座とにまたがって電流を流す工程と、を備える、
切削工具用チップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はチップ用の先端部品、切削工具用チップ及び切削工具用チップの製造方法に関し、特に刃先交換式切削工具用のチップに適用されるチップ用の先端部品、切削工具用チップ及び切削工具用チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削加工に用いられる切削工具として、刃先を有するチップを交換することができる刃先交換式切削工具がある。刃先交換式切削工具に対して交換可能に取り付けられるチップ(スローアウェイチップ)は、一例として、超硬合金よりなる本体(台座)に、CBNやダイヤモンド焼結体等の超高硬度焼結体よりなる切刃チップが接合されて構成されている。このようなチップは、本体に、切刃チップが、ろう付けで接合されるのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-326111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本体に切刃チップがろう付けで接合されている一般的なチップには、例えば次のような問題点がある。一般的なチップでは、本体に切刃チップをろう付けする際に、ろう付けに熟練した作業員が必要となる。また、本体に切刃チップをろう付けするのに相当の時間を要する。また、本体への切刃チップのろう付け作業の自動化が困難である。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、ろう付けを用いずに台座(本体)に接合することが可能なチップ用の先端部品、切削工具用チップ及び切削工具用チップの製造方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係るチップ用の先端部品は、切削工具に取り付けられるチップの構成部品である台座に形成された窪みに取り付けられる、前記チップの構成部品である先端部品であって、少なくとも一部が前記台座に直接接合される基部材と、切削対象物を切削する切れ刃を有する高硬度素材体と、を備え、前記先端部品は、接合面と、前記接合面の反対側の開放面と、を有し、前記台座に直接接合される前記基部材の部分は、前記接合面に設けられており、前記開放面には、前記高硬度素材体及び前記基部材が表れており、前記台座に直接接合される前記基部材の部分と前記開放面に表れる前記基部材とが連続的に形成されている。
【0007】
このように構成すると、開放面の基部材が表れている部分から接合面に適切に電流を流すことができ、先端部品を台座に取り付ける際に適切に直接接合することができる。ここで、直接接合とは、先端部品と台座とが圧接等の溶接により行われる接合であって、接着剤層等の中間材を介さずに行われる接合であり、固相接合は含まれるが、ろう付けは含まれない。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係るチップ用の先端部品は、上記本開示の第1の態様に係るチップ用の先端部品において、前記開放面において、前記基部材の周囲全体が前記高硬度素材体に囲まれている。
【0009】
このように構成すると、切れ刃全体を高硬度素材体で構成することができる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係るチップ用の先端部品は、上記本開示の第1の態様又は第2の態様に係るチップ用の先端部品において、前記台座に直接接合される前記基部材の部分と前記開放面における前記基部材とが仮想直線上に存在するように配置されており、前記仮想直線は押圧方向に対して平行に延びており、前記押圧方向は、前記先端部品と前記台座とを直接接合する際に前記先端部品を前記台座に対して相対的に押圧する方向である。
【0011】
このように構成すると、先端部品を台座に接合する際に流れる電流の抵抗の増大を抑制することができる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る切削工具用チップは、上記本開示の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係るチップ用の先端部品と、前記先端部品が嵌め込まれる窪みが形成された台座と、を備え、前記先端部品が前記窪みに嵌め込まれた状態で、前記接合面の少なくとも一部と前記台座とが直接接合されている。
【0013】
このように構成すると、先端部品と台座とが直接接合された切削工具用チップを得ることができる。先端部品と台座とが直接接合されていると、製造の際に、ろう付け時には必要となる熟練した作業員による作業が不要となるため、先端部品と台座との接合の自動化を図ることが可能になる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係る切削工具用チップは、上記本開示の第4の態様に係る切削工具用チップにおいて、前記台座は、前記接合面に対向する前記窪みにおける面に設けられたプロジェクションが塑性変形して前記先端部品に直接接合している。
【0015】
このように構成すると、先端部品と台座とがプロジェクション接合されることとなり、先端部品と台座とを強固に接合することができる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る切削工具用チップの製造方法は、複数箇所に窪みが形成された台座を供給する工程と、上記本開示の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係るチップ用の先端部品を嵌め込む工程と、前記窪みに嵌め込まれた前記先端部品の複数を、前記台座に対して同時に押圧する工程と、前記窪みに嵌め込まれた前記先端部品の複数を前記台座に対して同時に押圧しながら、複数の前記先端部品と前記台座とにまたがって電流を流す工程と、を備える。
【0017】
このように構成すると、複数の先端部品を台座に同時に接合することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、開放面の基部材が表れている部分から接合面に適切に電流を流すことができ、先端部品を台座に取り付ける際に適切に直接接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)は一実施の形態に係る切削工具用チップの斜視図、(B)は(A)に示すチップの部分側面断面図である。
図2】(A)~(C)は先端部品の製造過程の状態の概略斜視図である。
図3】例示のチップ製造装置の概略構成を示す断面図である。
図4】一実施の形態に係るチップの製造の手順を示すフローチャートである。
図5】例示の別のチップ製造装置の概略構成を示す断面図である。
図6図5に示すチップ製造装置の電極まわりの斜視図である。
図7】(A)は一実施の形態の変形例に係る切削工具用チップの斜視図、(B)は(A)に示すチップの部分側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
まず図1(A)を参照して、一実施の形態に係る切削工具用チップ(以下、単に「チップ」という。)10を説明する。図1(A)は、チップ10の斜視図である。チップ10は、一実施の形態に係る先端部品12と、台座13とを備えている。チップ10は、典型的には、切削加工を行う旋盤に用いられるバイトのシャンク(不図示)に対して脱着可能に取り付けられる部品であり、スローアウェイチップと呼ばれることもある。チップ10の先端部品12は、切削加工の際に、切削対象物(ワーク)に接する切れ刃を有する部分となる。台座13には、貫通孔19が形成されている。貫通孔19は、チップ10をバイトのシャンク(不図示)に取り付ける際に、ボルト等の締結部材を通過させるための孔である。チップ10は、先端部品12と台座13とが直接接合していることを特徴としている。ここで、直接接合とは、先端部品12と台座13とが圧接等の溶接により行われた接合であって、接着剤層等の中間材(例えばろう材)を介さずに行われる接合である。したがって、直接接合には、接合対象部材を液相にせずに固相のまま接合する固相接合は含まれるが、ろう付けは含まれない。
【0022】
チップ10は、本実施の形態では、外観形状が直方体に形成されている。外観が直方体のチップ10は、一対の面が正方形に形成されている。この正方形の一対の面について、一方を表面15とし、表面15の裏側の面を裏面16とする。表面15と裏面16とは、合同になっている。表面15と裏面16との間には、4つの側面17が存在する。4つの側面17のそれぞれは、本実施の形態では表面15よりも小さい面積の長方形に形成されている。また、4つの側面17のそれぞれは、表面15及び裏面16に対して直交している。台座13に形成された貫通孔19は、表面15から裏面16へ貫いている。貫通孔19は、表面15及び裏面16それぞれの図心を通っている。チップ10は、表面15の側の4つの角部に、先端部品12が設けられている。以下、図1(B)を併せて参照して、チップ10の構成をより詳しく説明する。図1(B)は、チップ10の部分側面断面図である。図1(B)の部分側面断面図は、表面15の正方形の対角を結ぶ直線を、裏面16の方に延ばして切断した際に表れる断面における、1つの窪み31まわりを表している。
【0023】
先端部品12は、切削時に切削対象物に食い込むために、切削対象物よりも硬い材料が用いられる。また、先端部品12には、適切な靱性を有する材料が用いられる。さらに、先端部品12は、台座13への直接接合が良好に行われる材料が用いられる。これらの観点をふまえ、先端部品12は、複数の材料が組み合わせられて構成されている。先端部品12は、基部材21と、高硬度素材体24とを有しており、これらは異なる材料で形成されている。基部材21と高硬度素材体24とが組み合わせられて構成された先端部品12は、本実施の形態では、全体として三角柱状に形成されている。三角柱状に形成された先端部品12の一対の三角形の面について、一方を接合面25といい、他方を開放面26ということとする。接合面25及び開放面26は、本実施の形態では、それぞれ、二等辺三角形に形成されている。接合面25と開放面26との間には、3つの側面が存在する。3つの側面のそれぞれは、長方形に形成されている。
【0024】
基部材21は、台座13に直接接合する部分である。基部材21は、先端部品12の接合面25の側の三角柱状の部分であるベース22と、ベース22から開放面26に延びる柱状の埋設突起23とを含んでいる。ベース22は、先端部品12全体の三角柱状に対して、高さ(接合面25と開放面26との距離)が概ね1/3~2/3(1/2でもよい)になったものである。埋設突起23が設けられた側とは逆側のベース22の三角形の面(三角柱の底面)は、接合面25となっている。したがって、先端部品12の接合面25の全体は、基部材21が表れている。埋設突起23は、本実施の形態では円柱状に形成されているが、四角柱状、三角柱状、その他の断面形状が多角形の柱状に形成されていてもよい。埋設突起23は、平面視において、接合面25に対応するベース22の面の三角形に内包されている。埋設突起23は、典型的には、その円柱形状の軸線27が、ベース22の面の三角形の図心を通っている。軸線27は、接合面25及び開放面26に対して垂線となっている。ベース22と埋設突起23とは、連続的に形成されている。ここでいう連続的とは、ベース22と埋設突起23との間で電気伝導を生じさせることができるようにひとまとまりになっていることである。したがって、ベース22と埋設突起23とは、本実施の形態では一体成形されているが、分割して成形されたものが接続されたものであってもよい。ベース22及び埋設突起23を含む基部材21は、典型的には超硬合金が用いられている。超硬合金は、典型的には、主として、タングステンカーバイドにコバルトが含有した合金(WC-Co)である。基部材21は、本実施の形態では、台座13への直接接合を良好にする観点から、コバルトを多めに含有することとしている。コバルトの含有量は、例えば0.5wt%~20wt%((A/(A+B))×100。以下同じ。)とするとよい。基部材21は、良好な導電性を有している。
【0025】
高硬度素材体24は、切削対象物(ワーク)に接する切れ刃となる部分である。このような用途から、高硬度素材体24は、基部材21よりも硬い材料で構成されている。高硬度素材体24の材料として、典型的には、CBN(立方晶窒化ホウ素)、PCD(多結晶ダイヤモンド)、又は人工若しくは天然の単結晶ダイヤモンドが用いられる。なお、切削対象物(ワーク)の種類によっては、高硬度素材体24の材料として、セラミック又はサーメットが用いられることとしてもよい。高硬度素材体24は、典型的には絶縁体の性質を有している。なお、高硬度素材体24は、金属系のバインダーを混合することでいくらかは通電させることが可能であるが、この場合でも、導電率は基部材21よりも小さい。高硬度素材体24は、本実施の形態では、先端部品12の開放面26の側の三角柱状の部分を占めている。高硬度素材体24は、埋設突起23の側面全体を覆っている。このような構成により、先端部品12は、開放面26と開放面26に隣接する側面とが交わる稜線全体が、高硬度素材体24となっている。開放面26と開放面26に隣接する側面とが交わる稜線は、切削対象物(ワーク)に接する切れ刃となるため、本実施の形態では、切れ刃全体が高硬度素材体24で構成されていることになる。本実施の形態では、開放面26がすくい面となり、開放面26に隣接する側面が逃げ面となることを予定している。先端部品12は、高硬度素材体24の使用を、切れ刃まわりに制限することで、高硬度素材体24の原料の使用量を削減することができる。比較的高価な高硬度素材体24の原料の使用量を削減することにより、先端部品12の製造コストを抑制することができる。
【0026】
先端部品12の開放面26は、主として高硬度素材体24が表れており、開放面26の三角形の内部に基部材21(埋設突起23)が表れている。つまり、本実施の形態では、開放面26において、基部材21の周囲全体が高硬度素材体24に囲まれている。開放面26に表れる埋設突起23の面積は、開放面26全体の面積に対して、本実施の形態では25%~30%程度とするとよく、開放面26に表れる埋設突起23の形状を円以外にした場合は40%や50%程度としてもよい。開放面26に表れる埋設突起23の面積は、開放面26と接合面25との間を流れる電流の抵抗を小さくする観点から、可能な範囲で大きい方が好ましい。先端部品12は、側面視において、接合面25と開放面26との間に表れる境界よりも接合面25の側に基部材21が表れており、開放面26の側に高硬度素材体24が表れている。側面に表れる境界線は、典型的には接合面25及び開放面26に平行であるが、平行でなくてもよい。本実施の形態では、先端部品12は、基部材21と高硬度素材体24とで形成されており、両者は隣接していることになる。先端部品12は、以下の要領で製造することができる。
【0027】
図2(A)~図2(C)は、先端部品12の製造過程の状態の概略斜視図である。まず、図2(A)に示すように、基部材21を成形する。基部材21の成形は、原料を型に入れ、焼結することで行う。成形された基部材21は、円板状の一方の面から複数の突起が突き出た形状になっている。円板状の部分は後にベース22(図1(B)参照)となる部分であり、複数の突起は後に埋設突起23(図1(B)参照)となる部分である。円板状の部分から突き出た突起の数だけ、先端部品12が製造されることとなる。基部材21を成形したら、図2(B)に示すように、基部材21の上に高硬度素材体24を成形する。高硬度素材体24の成形は、原料を焼結することで行う。高硬度素材体24は、基部材21の各突起の頂面と高硬度素材体24とが面一になるように、各突起の周囲に充填して焼結する。高硬度素材体24を各突起の周囲に充填する際は、型を用いてもよい。基部材21に高硬度素材体24を成形すると、全体として円板状になる。基部材21に高硬度素材体24を成形したら、図2(C)に示すように、円板状のものを切り分けて、個別の先端部品12とする。円板状のものは、ワイヤー放電加工によって切断することができる。このようにして、先端部品12を製造することができる。
【0028】
再び図1(A)及び図1(B)に戻り、チップ10の構成の説明を続ける。台座13は、切削時の負荷に耐え得るため、硬く、靱性を有する材料が用いられる。また、台座13は、先端部品12の基部材21の直接接合が良好に行われる材料が用いられる。これらの観点をふまえ、台座13の材料として、典型的には超硬合金が用いられている。台座13の材料は、基部材21と同じであってもよく、基部材21よりもコバルトの含有量が多くてもよい。例えば、コバルトの含有量を、0.5wt%~20wt%とするとよい。台座13は、本実施の形態では、概ね、平面視が矩形で全体として四角柱状に形成されており、基本形状が四角柱の8つの角部のうちの表面15の側の4つの角部がそれぞれ切り欠かれて、窪み31が形成されている。窪み31は、先端部品12が適合するように、先端部品12と合同な三角柱状に切り欠かれて形成されている。窪み31の部分には、先端部品12が嵌め込まれたときに接合面25が向かい合う平行面32と、平行面32に直交する直交面33と、が形成されている。平行面32は、表面15から一段下がった表面15に平行な面である。また、平行面32は、先端部品12を台座13に接合するときに、先端部品12を押圧する方向(以下「押圧方向R」という。)に対して垂直になっている。直交面33は、表面15と平行面32との間に存在し、両者に直交する面である。本実施の形態では、直交面33は平坦な面になっているが、平行面32にはプロジェクション35が設けられている。プロジェクション35は、平行面32から窪み31の側に突き出た突起である。プロジェクション35は、典型的には、窪み31に先端部品12が嵌め込まれたときの軸線27の位置に設けられている。プロジェクション35は、先端部品12の基部材21に直接接合する部分である。なお、プロジェクション35の周囲に、平行面32よりも下がった溝(不図示)を形成してもよい。この溝(不図示)は、先端部品12を台座13に接合したときにプロジェクション35が塑性変形したものを収容することができる。溝(不図示)は、プロジェクション35の周囲の全体に形成されていてもよく、間隔をあけて形成されていてもよい。
【0029】
前述の先端部品12を、上述の台座13に、直接接合することで、チップ10を製造することができる。台座13への先端部品12の直接接合は、例えば以下の装置で行うことができる。
【0030】
図3は、例示のチップ製造装置50の概略構成を示す断面図である。チップ製造装置50は、本実施の形態では、抵抗溶接を行う装置である。チップ製造装置50は、第1の電極(以下「下電極」という)51と、第2の電極(以下「上電極」という)55と、電源61と、移動装置63と、制御装置65とを備えている。チップ製造装置50は、本実施の形態では、下電極51の鉛直上方に上電極55が配置されて使用される仕様になっている。図3は、切断面が鉛直方向に延びる断面を表している。以下の説明において、チップ10並びに先端部品12及び台座13に言及しているときは、適宜図1(A)及び図1(B)を参照することとする。
【0031】
下電極51は、上面に、台座13が接触する接触面52が形成されている。接触面52は、典型的には台座13の平面形状を包含する大きさに形成されている。接触面52は、典型的には平坦に形成されている。下電極51は、接触面52が水平になるように設けられている。上電極55は、下電極51の上方に配置されており、下面に、先端部品12が接触する接触面56が形成されている。接触面56は、典型的には平坦に形成されている。接触面56は、本実施の形態では、適切に配置された4つの先端部品12のすべてを包含するように、台座13の平面形状を包含する大きさに形成されている。上電極55は、典型的には、接触面56が水平になるようにして、移動装置63に支持されている。上電極55及び下電極51は、電流が流れやすい材料が用いられ、典型的には金属で形成されている。
【0032】
電源61は、下電極51及び上電極55に電流を供給する装置である。電源61は、下電極51及び上電極55と電気的に接続されている。電源61は、下電極51と上電極55とに挟まれた台座13及び先端部品12を介して下電極51と上電極55との間に流す電流を発生させるように構成されている。電源61は、典型的にはパルス状の直流電流を発生させるように構成されている。電源61は、本実施の形態では、図示は省略するが、電源ユニットと、コンデンサと、トランスと、スイッチ部品とを有している。電源ユニットは、商用交流電源や交流発電機等の交流電源から受電した交流電力を昇圧し整流するものである。コンデンサは、電気エネルギーを蓄電及び放電するものである。トランスは、電源ユニット及びコンデンサから供給される電流を大電流に変換するものである。スイッチ部品は、トランスの上流側に設けられた、典型的にはスイッチング素子等の半導体部品である。電源61は、コンデンサに充電したエネルギーを瞬時に放電することができるように構成されている。このため、電源61を用いた接合では、短時間で大電流を得ることができ、熱影響の少ない接合が可能となっている。また、電源61では、入力電源(交流電源)が比較的小さい容量で足りる。なお、電源61は、コンデンサを用いたコンデンサ式のものに限らず、インバータ式やその他の方式のものであってもよい。電源61は、下電極51及び上電極55に供給する電流の大きさを適宜設定することができるように構成されている。
【0033】
移動装置63は、本実施の形態では、上電極55を押圧方向Rに移動させる装置である。本実施の形態では、押圧方向Rを鉛直下向きにしている。したがって、下電極51の接触面52及び上電極55の接触面56は、押圧方向Rに対して直交することとなる。移動装置63は、本実施の形態では、上電極55を支持していて上電極55を上下に移動させることができるように構成されている。移動装置63は、例えば、上電極55を保持しているブロックを、流体圧(典型的には空気圧又は油圧)で移動させることができるように構成されていてもよい。この構成により、上電極55を押圧方向Rに移動させることができる。下電極51は、本実施の形態では、静止した台に載置されている。しかしながら、装置構成によっては、上電極55が固定されていて移動装置が下電極51を移動させるように構成されていてもよく、移動装置が下電極51及び上電極55の双方を移動させるように構成されていてもよい。つまり、移動装置は、上電極55及び下電極51を押圧方向に相対的に近づけるように移動させることができればよい。
【0034】
制御装置65は、チップ製造装置50の動作を制御する装置である。制御装置65は、電源61と有線又は無線で接続されており、下電極51及び上電極55への電流の供給の有無及び供給する電流の大きさを制御することができるよう構成されている。また、制御装置65は、移動装置63と有線又は無線で接続されており、上電極55を上下に移動させることができるように構成されている。また、制御装置65には、後述するチップ10の製造方法を実行するプログラムが内蔵されている。
【0035】
次に図4を参照して、チップ10の製造方法を説明する。図4は、チップ10の製造の手順を示すフローチャートである。以下に説明するチップ10の製造方法は、上述したチップ製造装置50で行われることとする。以下のチップ10の製法の説明において、チップ10、先端部品12、台座13、及びチップ製造装置50の構成に言及しているときは、適宜図1(A)及び図1(B)並びに図3を参照することとする。
【0036】
チップ10の製造開始に先立って、下電極51を作業台に配置しておく。チップ10の製造を開始したら、まず、下電極51に台座13を配置する(S1)。下電極51への台座13の配置は、台座13の窪み31が上方(接触面52の反対側)を向くようにして、台座13を接触面52に載置することで行われる。なお、配置は供給の一形態である。
【0037】
次に、下電極51に配置された台座13の各窪み31に、先端部品12を配置する(S2)。本実施の形態では、台座13に4つの窪み31があるので、4つの先端部品12を配置する。このとき、本製法では先端部品12を台座13にろう付けすることを予定していないので、先端部品12が接合される台座13の面(平行面32)にフラックスを塗布する等の事前処理を行う必要が無い。各窪み31には、先端部品12の接合面25が台座13の平行面32に対向し、先端部品12の開放面26が上方(上電極55の方)を向くように、先端部品12を配置する。このとき、先端部品12は、軸線27が鉛直方向に延びるように配置される。このため、軸線27は、仮想直線に相当する。
【0038】
先端部品12を各窪み31に配置したら、すべての先端部品12を覆うようにして上電極55をセットする(S3)。このとき、上電極55の接触面56がすべての先端部品12に接するように、上電極55をセットする。すると、上電極55の接触面56には、先端部品12の開放面26全体が接触することとなる。これにより、上電極55には、開放面26に表れている埋設突起23(基部材21)と高硬度素材体24とが接触することとなる。上電極55の上には、移動装置63が配置されている。
【0039】
下電極51と上電極55との間に台座13及び先端部品12を配置したら、移動装置63を押圧方向Rに移動させて、台座13に対する先端部品12の加圧を開始する(S4)。移動装置63の移動は、本実施の形態では、装置の操作者からの指令(入力)に基づいて、制御装置65が行う。本実施の形態では、押圧方向Rを鉛直方向にしているので、治具を兼ねる電極51、55の構成が複雑になることを回避することができる。このような加圧が行われているときに、制御装置65は、下電極51及び上電極55が接続された電源61のスイッチを適宜入れて、下電極51と上電極55との間に台座13及び先端部品12を介して電流を流す(通電工程:S5)。このとき、典型的には絶縁体で形成された高硬度素材体24が先端部品12の開放面26に設けられているが、電流は、基部材21及び台座13を介して上電極55と下電極51との間を良好に流れる。それは、上電極55に接する先端部品12の開放面26には埋設突起23が表れており、埋設突起23はベース22と一体になって基部材21を構成しており、ベース22は台座13に接触しており、基部材21及び台座13は良好な導電性を有しているためである。先端部品12は、開放面26に所定の面積の埋設突起23(基部材21)が表れているので、通電経路が確保され、電流のロスを小さくすることができる。電流効率がよくなると、溶接機を小さくすることが可能になり、高硬度素材体24への過剰な入熱を抑制することができる。
【0040】
通電工程(S5)においては、先端部品12によって台座13のプロジェクション35の先端に圧力をかけた状態で電流を流すことにより、先端部品12とプロジェクション35との間に加圧力と電流とが集中する。そして、この加圧力と電流とが集中した部分が、ジュール熱によって、本実施の形態では、溶融はしないが軟化して、塑性変形する。本実施の形態では、先端部品12よりも面積が小さいプロジェクション35に加圧力が集中するため、プロジェクション35がより軟化して塑性変形する。プロジェクション35は、塑性変形しながら先端部品12との接触部分が徐々に拡大していって、先端部品12と接合する面に原子の拡散が生じて接合が達成される。このように、本実施の形態では、先端部品12と台座13との接触部分は、固相接合が行われる。なお、通電は、典型的には、制御装置65により、1又は複数のパルス状の電流が状況に応じて連続して又は間欠的に流されることで行われる。
【0041】
先端部品12及び台座13を加圧しながら適宜通電し、先端部品12が窪み31の所定の位置に嵌め込まれたら、制御装置65は、移動装置63を押圧方向Rに動かすことを止める。これにより、台座13に対する先端部品12の加圧が終了する(S6)。なお、台座13に対する先端部品12の加圧を開始する工程(S4)から、台座13に対する先端部品12の加圧を終了する工程(S6)まで、加圧は継続している。台座13に対する先端部品12の加圧が終了するまでに、軟化して塑性変形したプロジェクション35は、プロジェクション35の周囲に溝(不図示)が形成されている場合は、その溝に流れ込んで収容される。加圧が終了したら、上電極55を退避させ、製造されたチップ10を取り出す(S7)。このようにして、チップ10が製造される。本実施の形態では、4つの先端部品12を同時に台座13に接合することができるので、量産効率が上がることとなる。1つのチップ10の製造が完了した後にチップ10の製造を継続する場合は、上述のフローを繰り返せばよい。
【0042】
以上で説明したように、本実施の形態によれば、先端部品12が、軸線27に沿って接合面25から開放面26まで一体に形成され基部材21を有しているので、溶接電流を接合面25と開放面26との間で適切に流すことができる。これにより、先端部品12の開放面26の周囲が高硬度素材体24で形成されていながら、先端部品12を台座13に直接接合することができる。また、先端部品12の開放面26の周囲が高硬度素材体24で形成されていることで、切れ刃全体を高硬度素材体24で構成することができる。また、先端部品12が接合する台座13の面にプロジェクション35が設けられているので、先端部品12と台座13とを強固に接合することができる。また、先端部品12の軸線27が押圧方向Rに延びる状態で、複数の先端部品12を同時に押圧しながら通電することができるので、複数の先端部品12を台座13に同時に直接接合することができ、チップ10の生産効率を向上させることができる。
【0043】
次に、図5及び図6を参照して、別の形態の例示のチップ製造装置150を説明する。図5は、チップ製造装置150の概略構成を示す断面図である。図6は、チップ製造装置150の電極まわりの斜視図である。チップ製造装置150は、下電極151と、上電極155と、電源61と、移動装置63と、制御装置65とを備えている。チップ製造装置150は、下電極151及び上電極155の形状が、チップ製造装置50(図3参照)の下電極51及び上電極55とは異なっている。他方、チップ製造装置150の電源61、移動装置63、及び制御装置65は、チップ製造装置50(図3参照)のそれらと同様である。図6は、主として下電極151及び上電極155まわりを示し、電源61、移動装置63、及び制御装置65を省略している。チップ製造装置150による先端部品12と台座13との接合では、軸線27が押圧方向Rに対して傾いていることが特徴となっている。また、チップ製造装置150では、台座13の4つの窪み31に対し、先端部品12を4つ同時に接合するのではなく、1つずつ接合することを前提にしている。
【0044】
下電極151は、概ね、基本形状が円柱状である部材に対して、台座13を載置する部分が切り欠かれた外観を呈している。下電極151は、基本形状の円柱状から切り欠かれた内部に、載置面152、153が形成されている。一方の載置面152は、裏面16となる側の台座13の面(以下「底面」という)が接する面となっている。下電極151が使用時の向きで設置されたときに、載置面152は、水平でも鉛直でもなく、仮想鉛直面(法線が水平となる仮想の平面)VFに対して傾いている。下電極151では、載置面152が仮想鉛直面VFに対して約30度傾いているが、この傾きは、25度~35度、あるいは45度等、30度以外の角度であってもよい。もう一方の載置面153は、側面17となる台座13の面(以下「側面」という)が接する面となっている。載置面153は、台座13の底面を載置面152に載置したときに、台座13の側面が接する角度で傾いている。下電極151では、台座13の底面と側面とが直交しているので、載置面152に対して載置面153が直交している。下電極151では、載置面152、153は、仮想鉛直面VFに対して傾いているから、押圧方向Rに対しても傾いていることとなる。なお、台座13は、載置面152、153に載置される際、窪み31の1つが最上部に位置するように載置され、最下部には先端部品12を接合済又は未接合の窪み31を有する台座13の角部が位置することとなる。このため、図5には現れていないが、載置面153は、正面から(図5の紙面において左から)見ると、V字状に延びる2面が形成されている。
【0045】
上電極155は、概ね、基本形状が円柱状である部材に対して、先端部品12が嵌め込まれる部分が切り欠かれた外観を呈している。上電極155は、基本形状の円柱状から切り欠かれた内部に、第1の接触部分(以下「第1接触部」という)156と、第2の接触部分(以下「第2接触部」という)157とを有している。第1接触部156は、先端部品12の開放面26が接触する部分である。第1接触部156は、先端部品12が接触する部分が平坦に形成されている。第2接触部157は、先端部品12の接合面25と開放面26との間の3つの側面のうちの直交する2つの側面が接触する部分である。第2接触部157も、先端部品12が接触する部分が平坦に形成されている。また、第1接触部156の先端部品12が接する平坦面と、第2接触部157の先端部品12が接する平坦面とのなす角が、90度になっている。この両平坦面のなす角は、接する先端部品12の形状に合わせるように適宜変更するとよい。なお、上電極155は、第1接触部156を有するブロックと第2接触部157を有するブロックとを別体としてこれらを組み合わせて構成することとしてもよく、一体に構成されていてもよい。第1接触部156を有するブロックと第2接触部157を有するブロックとを別体とした場合、両者は異なる材料で形成されていてもよいが、両方とも導電性を有する材料で構成されているとよい。
【0046】
チップ製造装置150では、下電極151と上電極155とにまたがって、ガイド158が設けられている。ガイド158は、上電極155を押圧方向Rに移動させる際に、押圧方向Rに対して交差する方向へ動いてしまうことを防ぐためのものである。ガイド158は、チップ製造装置150では、下電極151の側面に固定されており、上電極155に対しては摺動可能となっている。また、チップ製造装置150では、下電極151に、固定具159が付属している。固定具159は、載置面152、153に載置された台座13を、下電極151との間に挟むことで、下電極151に固定するものである。固定具159は、典型的には、ボルトを用いて下電極151に固定することができるように構成されている。
【0047】
上述のように構成されたチップ製造装置150でチップ10を製造する手順は、概ねチップ製造装置50(図3参照)を用いる場合と同様である。したがって、図4のフローチャートを、チップ製造装置150を用いる場合にも適用することができる。その上で、チップ製造装置50(図3参照)を用いる場合に対する細部の相違点について以下に言及する。チップ製造装置150を用いる場合は、下電極151に台座13を配置する工程(S1)において、先端部品12を嵌め込む窪み31が上部手前(上部で載置面152から遠い側)に来るようにして、台座13を載置面152、153に載置する。また、台座13を載置面152、153に載置した後、固定具159を下電極151に取り付けることで、台座13を下電極151に固定するとよい。下電極151に設置された台座13は、先端部品12を嵌め込む窪み31の平行面32及び直交面33が共に水平でも鉛直でもなく、平行面32と直交面33との交線が窪み31の最下部に位置するようになっている。
【0048】
台座13の窪み31に先端部品12を配置する工程(S2)においては、台座13に形成されている複数の窪み31のうち、最上部の窪み31にのみ先端部品12を配置する。先端部品12を配置する窪み31は、平行面32と直交面33との交線が窪み31の最下部に位置するようになっているので、先端部品12を窪み31に載置するだけで、先端部品12を窪み31に配置することができる。上電極155をセットする工程(S3)においては、上電極155の第1接触部156が先端部品12の開放面26に接し、第2接触部157が接合面25と開放面26との間の側面に接するようにする。このとき、少なくとも、第1接触部156が埋設突起23に接し、第2接触部157がベース22に接するようにするとよい。チップ製造装置150では、押圧方向Rが鉛直方向である一方で、窪み31の平行面32及び直交面33並びに上電極155の第1接触部156及び第2接触部157の平坦面が水平面及び鉛直面に対して傾いている。このため、加圧を開始(S4)すると、上電極155から先端部品12に対して鉛直方向(押圧方向R)に印加された力(加圧力)が、平行面32及び直交面33に直角な分力として、平行面32及び直交面33に作用することとなる。したがって、上電極155を押圧方向Rに移動させるだけで、先端部品12を平行面32及び直交面33の両面に向けて加圧することができる。
【0049】
通電工程(S5)においては、下電極151と上電極155との間に台座13及び先端部品12を介して電流を流すと、上電極155から下電極151へと電流が流れる場合は以下のようになる。上電極155の第1接触部156からは埋設突起23を介して、第2接触部157からはベース22を介して、基部材21に電流が入る。基部材21に入った電流は、その後、台座13の平行面32及び直交面33の双方を介して台座13に入る。台座13に入った電流は、載置面152、153から下電極151に至る。このように電流が流れることで、台座13に押圧された先端部品12は、台座13の平行面32及び直交面33の双方に直接接合する。なお、チップ製造装置150を用いる場合は、台座13の直交面33にも、平行面32と同様のプロジェクション35を形成してもよい。この場合、直交面33におけるプロジェクション35が形成される位置は、接合される先端部品12の側面に表れるベース22に接する位置にするとよい。加圧の終了(S6)及び製造されたチップ10の取り出し(S7)は、チップ製造装置50(図3参照)を用いる場合と同様である。
【0050】
上述のように、チップ製造装置150を用いてチップ10を製造した場合は、先端部品12を、台座13の窪み31の平行面32及び直交面33の2つの面で直接接合することができ、先端部品12と台座13との接合力を高めることができる。
【0051】
以上の説明では、先端部品12の構成が、開放面26に正対して見た場合に、基部材21の周囲全体が高硬度素材体24に囲まれていることとした。しかしながら、例えば図7(A)及び図7(B)に示すように、高硬度素材体124と基部材121とが左右及び/又は上下に隣り合う2分割に区分された先端部品112としてもよい。図7(A)及び図7(B)に示す先端部品112では、基本形状が三角柱状の基部材121の1つの角部を切り欠いて、その切り欠いた部分に三角柱状の高硬度素材体124を設けている。高硬度素材体124が嵌まる部分を切り欠く前の基本形状の状態の基部材121と、高硬度素材体124とは、相似形であってもよい。先端部品112においても、接合面25と開放面26とに直交する仮想直線127に沿って基部材121が連続して構成されている。
【0052】
以上の説明では、先端部品12が三角柱状に形成されていることとした。しかしながら、先端部品12の外観形状は、用途等の事情に応じて好適な形状とすることができ、例えば、平面視が菱形、矩形、五角形や六角形等の多角形、の形状を有する柱状に形成されていてもよい。
【0053】
以上の説明では、先端部品12の基部材21を形成する超硬合金が、主として、タングステンカーバイドにコバルトが含有した合金(WC-Co)であるとしたが、コバルトに代えて又はコバルトと共に鉄やニッケルなどの鉄系金属を用いる場合もあり得る。
【0054】
以上の説明では、先端部品12の基部材21と台座13とが直接接合した部分が固相接合であることとした。しかしながら、台座13及び/又は基部材21の特性(材質や形状など)によっては、台座13及び/又は基部材21が溶融して接合されたものであってもよい。
【0055】
以上の説明では、先端部品12と台座13とを接合する際に加圧力が集中するプロジェクションが台座13に形成されていることとしたが、台座13に代えて、又は台座13と共に、先端部品12の基部材21の方に形成されていてもよい。また、プロジェクションが軟化し塑性変形したものが流入する溝(不図示)が台座13に形成されていてもよいことを言及したが、台座13に代えて、又は台座13と共に、先端部品12の方に溝(不図示)が形成されていてもよい。
【0056】
以上の説明では、例示の実施の形態として、チップ用の先端部品、切削工具用チップ、切削工具用チップの製造方法を、各図を用いて説明した。当該説明における各部の構成、構造、数、配置、形状、材質などに関しては、上記具体例に限定されず、当業者が適宜選択的に採用したものも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
10 チップ
12 先端部品
13 台座
21 基部材
24 高硬度素材体
25 接合面
26 開放面
27 軸線(仮想直線)
31 窪み
35 プロジェクション
112 先端部品
121 基部材
124 高硬度素材体
127 仮想直線
R 押圧方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
切削工具に取り付けられるチップの構成部品である台座に形成された窪みに取り付けられる、前記チップの構成部品である先端部品であって、
溶接によって少なくとも一部が前記台座に直接接合される基部材と、
切削対象物を切削する切れ刃を有する高硬度素材体と、を備え、
前記先端部品は、接合面と、前記接合面の反対側の開放面と、を有し、
前記台座に直接接合される前記基部材の部分は、前記接合面に設けられており、
前記開放面には、前記高硬度素材体及び前記基部材が表れており、
前記台座に直接接合される前記基部材の部分と前記開放面に表れる前記基部材とが連続的に形成されている、
チップ用の先端部品。