(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170870
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】液体乾燥剤システム
(51)【国際特許分類】
B60H 3/00 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B60H3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082940
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】秋田 智行
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA04
3L211BA42
3L211DA72
3L211GA63
3L211GA72
(57)【要約】
【課題】自動車に搭載されて、自動車の車室内を連続的に除湿することを目的とする。
【解決手段】自動車用の液体乾燥剤システムは、空気中の水分の着脱が可能な液体調湿剤と、液体調湿剤に自動車の車室内の水分を吸着させる除湿側気液接触器と、液体調湿剤に吸着された水分を空気中へと脱離させる再生用気液接触器と、除湿側気液接触器と再生用気液接触器との間で液体除湿器を循環させる流路を形成する流路形成部と、流路形成部に設けられた送液ポンプと、熱媒を循環させる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部と、熱媒流路形成部に設けられ、熱媒の冷却と加熱とを行うヒートポンプと、熱媒と、液体調湿剤との間で熱交換とを行う熱交換器と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の液体乾燥剤システムであって、
空気中の水分の着脱が可能な液体調湿剤と、
前記液体調湿剤に前記自動車の車室内の水分を吸着させる除湿側気液接触器と、
前記液体調湿剤に吸着された水分を空気中へと脱離させる再生用気液接触器と、
前記除湿側気液接触器と前記再生用気液接触器との間で前記液体除湿器を循環させる流路を形成する流路形成部と、
前記流路形成部に設けられた送液ポンプと、
熱媒を循環させる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部と、
前記熱媒流路形成部に設けられ、前記熱媒の冷却と加熱とを行うヒートポンプと、
前記熱媒と、前記液体調湿剤との間で熱交換とを行う熱交換器と、
を備える、液体乾燥剤システム。
【請求項2】
請求項1に記載の液体乾燥剤システムであって、
前記除湿側気液接触器は、前記車室内に配置された部品内と部品上との少なくとも一方に配置される、液体乾燥剤システム。
【請求項3】
請求項2に記載の液体乾燥剤システムであって、
前記除湿側気液接触器は、インスツルメンツパネルと、ピラーとの少なくとも一方に配置される、液体乾燥剤システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の液体乾燥剤システムであって、
前記除湿側気液接触器は、シートバック内に配置される、液体乾燥剤システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の液体乾燥剤システムであって、
前記再生用気液接触器は、前記自動車のエンジンルームに配置され、
前記熱媒流路形成部は、
前記除湿側気液接触器側に位置する前記流路形成部と接続された第1熱媒流路形成部と、
前記再生用気液接触器側に位置する前記流路形成部と接続された第2熱媒流路形成部と、を有し、
前記第1熱媒流路形成部に設けられた前記ヒートポンプは、前記自動車のラジエータにより前記熱媒を冷却し、
前記第2熱媒流路形成部に設けられた前記ヒートポンプは、前記自動車の排熱により前記熱媒を加熱する、液体乾燥剤システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体乾燥剤システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内の空気を除湿する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、車室内のインスツルメンツパネルの上に除湿材が配置されている。除湿材が乗員の呼気に含まれる水蒸気を吸着することにより、フロントガラスが曇ることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された除湿材は、水蒸気を飽和するまで吸着してしまうと、運転中に再生できない。そのため、除湿剤は、再生した直後しか機能しない。一方で、除湿材の再生について、特許文献1には、運転の停車後に除湿材を加熱することにより再生し、車の始動直後の除湿について記載されている。しかしながら、除湿材の再生後に、除湿剤が、停車中の車室内に放置されると、車室内の水蒸気を吸着してしまうおそれがある。また、加熱手段により除湿材が再生されると、除湿材が吸着していた水蒸気が車室内に放出され、車室内の空気が再び高湿度になるおそれがある。
【0005】
密閉された空間を除湿するシステムとして、液体調湿剤の水蒸気の着脱を利用したリキッドデシカントが知られている。このようなリキッドデシカントとして、ビルの空調設備などに用いられた大型で高価なシステムが知られている。空調設備としてのリキッドデシカントは、夏季にビル室内の除湿を行い、冬季にビル室内の加湿を行う。このリキッドデシカントでは、気液接触器に散布される液体調湿剤の冷却および加熱を行う熱媒に対して、ヒートポンプが外気を利用することにより冷却および加熱を行う。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、自動車に搭載されて、自動車の車室内を連続的に除湿することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、自動車用の液体乾燥剤システムが提供される。この液体乾燥剤システムは、空気中の水分の着脱が可能な液体調湿剤と、前記液体調湿剤に前記自動車の車室内の水分を吸着させる除湿側気液接触器と、前記液体調湿剤に吸着された水分を空気中へと脱離させる再生用気液接触器と、前記除湿側気液接触器と前記再生用気液接触器との間で前記液体除湿器を循環させる流路を形成する流路形成部と、前記流路形成部に設けられた送液ポンプと、熱媒を循環させる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部と、前記熱媒流路形成部に設けられ、前記熱媒の冷却と加熱とを行うヒートポンプと、前記熱媒と、前記液体調湿剤との間で熱交換とを行う熱交換器と、を備える。
【0009】
この構成によれば、除湿側気液接触器により自動車の車室内が除湿される。車室の水蒸気を吸着した液体調湿剤は、除湿側気液接触器から送液ポンプにより流路を通って熱交換器を通過する。液体調湿剤は、熱交換器の通過時に、ヒートポンプにより加熱された熱媒と熱交換を行い、加熱されて再生用気液接触器に流入して再生される。再生された液体調湿剤は、再度除湿側気液接触器へと送られて、自動車の車室内を除湿する。すなわち、液体調湿剤を用いた除湿側気液接触器による車室内の除湿と、再生用気液接触器による液体調湿剤の再生とが同時に行われる。そのため、自動車の車室内を連続的に除湿できる。また、本構成では、車室内を除湿するために、車室内または車室付近に除湿側気液接触器が配置されればよく、再生用気液接触器やヒートポンプは、車室外に配置されてもよい。そのため、液体乾燥剤システムが備える構成が車室内を占有する体積を減らすことができる。また、液体乾燥剤システムは、季節にかかわらず、車室内を除湿するために用いられる。例えば、外気温度が低い冬季であっても、車室内のフロントガラスが曇ることを防止するために車室内が除湿されることが好ましく、車室内の加湿は行われない。冬季の車室内の除湿では、外気温度が低いため、除湿側気液接触器は、液体調湿剤による除湿を効率的に行うことができる。
【0010】
(2)上記態様の液体乾燥剤システムにおいて、前記除湿側気液接触器は、前記車室内に配置された部品内と部品上との少なくとも一方に配置されてもよい。
この構成によれば、車室内に配置された部品内または部品上に、除湿側気液接触器が配置されればよい。そのため、本構成が車室内で占有する体積をさらに抑制できる。
【0011】
(3)上記態様の液体乾燥剤システムにおいて、前記除湿側気液接触器は、インスツルメンツパネルと、ピラーとの少なくとも一方に配置されてもよい。
この構成によれば、除湿側気液接触器が、乗員の呼気が集中するインスツルメンツパネルやピラーに配置されるため、乗員の呼気を集中的に吸い込むことができる。乗員の呼気は車室内の空気よりも絶対湿度が高いため、液体調湿剤が効率良く水蒸気を吸着できる。この結果、液体調湿剤の送液量が減少するため、送液ポンプの動力を低減できる。
【0012】
(4)上記態様の液体乾燥剤システムにおいて、前記除湿側気液接触器は、シートバック内に配置されてもよい。
この構成によれば、乗員が着座するシートの背もたれの内部に除湿側気液接触器が配置されるため、液体調湿剤が、乗員の体表から発散される汗による水蒸気を吸着できる。これにより、シートに着座している乗員と、シートバックとの間の湿度が下がり、乗員の皮膚の蒸れ感を軽減できる。
【0013】
(5)上記態様の液体乾燥剤システムにおいて、前記再生用気液接触器は、前記自動車のエンジンルームに配置され、前記熱媒流路形成部は、前記除湿側気液接触器側に位置する前記流路形成部と接続された第1熱媒流路形成部と、前記再生用気液接触器側に位置する前記流路形成部と接続された第2熱媒流路形成部と、を有し、前記第1熱媒流路形成部に設けられた前記ヒートポンプは、前記自動車のラジエータにより前記熱媒を冷却し、前記第2熱媒流路形成部に設けられた前記ヒートポンプは、前記自動車の排熱により前記熱媒を加熱してもよい。
この構成によれば、第1熱媒流路形成部により形成された流路を流れる熱媒は、ラジエータにより冷却され、熱交換器における熱交換により除湿側気液接触器に流入する液体調湿剤を冷却する。一方で、第2熱媒流路形成部により形成された流路を流れる熱媒は、自動車の排熱により加熱され、熱交換器における熱交換により再生用気液接触器に流入する液体調湿剤を加熱する。すなわち、ヒートポンプの加熱機能として自動車の排熱が利用され、ヒートポンプの冷却機能としてラジエータによる冷却が利用される。ヒートポンプとしての機能は、自動車に予め備わっている設備が利用されている。さらに、除湿のために車内に外気を導入する必要がなく、低温の外気を加熱する必要がない。再生用気液接触器がエンジンルームに配置されているため、再生により発生する水蒸気が車室内に戻る吹き戻しがない。この結果、本構成の稼働に必要なエネルギーが減少し、燃費が向上する。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、除湿材、リキッドデシカント、液体乾燥剤システム及びこれらの装置を備えるシステム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態としてのリキッドデシカントを備える自動車の概略図である。
【
図2】リキッドデシカントの概略ブロック図である。
【
図4】第2実施形態のリキッドデシカントの概略図である。
【
図5】第2実施形態のリキッドデシカントの概略図である。
【
図6】第3実施形態のリキッドデシカントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としてのリキッドデシカント(液体乾燥剤システム)100を備える自動車CAの概略図である。本実施形態のリキッドデシカント100は、処理機(処理用気液接触器)20を用いて自動車CAの車室内の水蒸気を、空気中の水分を着脱可能な液体調湿剤10に吸着させて除湿し、水分を含んだ液体調湿剤10を再生機30(再生用気液接触器)により再生する。処理機20による液体調湿剤10の除湿では、ヒートポンプとして機能する自動車CAのラジエータにより液体調湿剤10が冷却される。再生機30による液体調湿剤10の再生では、ヒートポンプとして機能する自動車CAのエンジン等の排熱により液体調湿剤10が加熱されて、吸着された水分が脱離される。すなわち、ヒートポンプの加熱・冷却を利用して、液体調湿剤10による除湿と再生とが同時に行われるため、自動車CAの車室内を連続的に除湿できる。
【0017】
図1に示されるように、リキッドデシカント100は、助手席の足下に配置された処理機20と、エンジンルーム内に配置された再生機30と、処理機20と再生機30とを循環する液体調湿剤10と、ヒートポンプ40と、熱交換器50と、を備えている。処理機20は、処理機20内を流れる液体調湿剤10に車室内の水分を吸着させる。再生機30は、再生機30内を流れる液体調湿剤10が吸着している水分を空気中へと脱離させる。本実施形態の液体調湿剤10は、腐食性を有する塩化リチウムである。塩化リチウムは、温度に応じて気液平衡蒸気圧が変化するため、温度変化に応じて水を着脱する。
【0018】
図2は、リキッドデシカント100の概略ブロック図である。
図2には、リキッドデシカント100が備える各部の自動車CA内における配置を考慮しないブロック図が示されている。本実施形態では、処理機20と再生機30とは、同じ構造を有する。そのため、処理機20について説明し、再生機30の説明を省略する。
図2に示されるように、処理機20は、2つの通気口24,25が形成されたケーシング22と、ケーシング22内に配置された散布充填材21と、ケーシング22内の空気を通気口25から排気するためのファン23と、を備えている。
図1,2に示されるように、通気口24を介してケーシング22内に給気された車室内の空気は、散布充填材21を通って通気口25から排気される。散布充填材21は、ケーシング22内において鉛直上方から散布された液体調湿剤10と気液接触を行うための部材である。液体調湿剤10と車室内の空気との気液接触により、給気された車室内の空気が除湿される。気液接触により除湿された空気は、通気口25を介して車室内に排気される。すなわち、処理機20により、車室内の空気が除湿される。
【0019】
図2に示されるように、本実施形態のリキッドデシカント100は、さらに、液体調湿剤10が流れる流路FP1,FP2を形成する流路形成部81,82と、送液ポンプ61,62と、熱媒が流れる第1熱媒流路FP3を形成する第1熱媒流路形成部91と、熱媒が流れる第2熱媒流路FP4を形成する第2熱媒流路形成部92と、処理機20と再生機30との間で循環する熱媒71,72と、を備えている。流路形成部81により形成される流路FP1は、処理機20の下方から再生機30の上方までを結ぶ流路である。流路形成部82により形成される流路FP2は、再生機30の下方から処理機20の上方までを結ぶ流路である。なお、
図2では、液体調湿剤10の流れが実線で示され、熱媒71,72の流れが破線で示されている。
【0020】
送液ポンプ61は、流路形成部81の途中に設けられている。送液ポンプ61は、ケーシング22内において散布充填材21を通過して鉛直下方に流れ落ちた液体の液体調湿剤10を、再生機30が備える散布充填材31の上方へと送る。送液ポンプ62は、流路形成部82の途中に設けられている。送液ポンプ62は、再生機30が備えるケーシング32内において鉛直下方に流れ落ちた液体調湿剤10を処理機20の散布充填材21の上方へと送る。
【0021】
図2に示されるように、処理機20側に位置する第1熱媒流路形成部91と、再生機30側に位置する第2熱媒流路形成部92とは、互いに独立している。第1熱媒流路FP3を流れる熱媒71は、第1熱媒流路形成部91の途中に設けられたラジエータ41により冷却されて、処理機20へと送られる液体調湿剤10を冷却する。熱媒ポンプ42は、ラジエータ41により冷却された熱媒71を、第1熱媒流路FP3内で循環させる。第2熱媒流路FP4を流れる熱媒72は、第2熱媒流路形成部92の途中に設けられたエンジン43の排熱により加熱されて、再生機30へと送られる液体調湿剤10を加熱する。熱媒ポンプ42は、エンジン43の排熱により加熱された熱媒72を、第2熱媒流路FP4内で循環させる。本実施形態では、ヒートポンプ40として、熱媒71を冷却するラジエータ41と、熱媒71を循環させるための熱媒ポンプ42と、熱媒72を加熱するエンジン43と、熱媒72を循環させるための熱媒ポンプ44とが機能する。
【0022】
本実施形態の熱交換器50は、
図2に示されるように、第1熱交換器51と、第2熱交換器52と、第3熱交換器53と、を備えている。第1熱交換器51は、処理機20から再生機30へと送られる液体調湿剤10と、再生機30から第3熱交換器53を介して処理機20へと送られる液体調湿剤10との間で熱交換を行う。これにより、再生機30へと送られる液体調湿剤10は加熱され、処理機20へと送られる液体調湿剤10は冷却される。
【0023】
第2熱交換器52は、流路形成部81と第1熱媒流路形成部91とを接続し、流路FP1を流れる液体調湿剤10と、第1熱媒流路FP3を流れる熱媒71との間で熱交換を行う。これにより、第1熱交換器51で冷却された液体調湿剤10は、更に冷却されて処理機20内に散布される。第3熱交換器53は、流路形成部82と第2熱媒流路形成部92とを接続し、流路FP2を流れる液体調湿剤10と、第2熱媒流路FP4を流れる熱媒72との間で熱交換を行う。これにより、第1熱交換器51で加熱された液体調湿剤10は、更に加熱されて再生機30内に散布される。
【0024】
図3は、比較例のデシカントローラ101の説明図である。
図3に示されるデシカントローラ101は、乾燥剤を含浸させたハニカム形状のロータに空気を通すことで除湿する。ロータのうち、一部が除湿を行う除湿部として機能し、その他の部分が加熱されて再生する再生部として機能する。
図3に示されるデシカントローラ101は、円板状の形状を有しており、上半分が除湿部20xとして機能し、下半分が再生部30xとして機能する。なお、デシカントローラ101に含浸される乾燥剤としては、シリカゲルやゼオライトが用いられる。
【0025】
除湿部20xにはハッチングで施された矢印DR1に沿って、車室の空気が供給されて、除湿部20xを通過したハッチングが施されていない矢印DR2に沿って除湿された空気が車室に提供される。一方、再生部30xにはハッチングが施されていない矢印DR3に沿って空気が供給されて、再生部30xを通過したハッチングが施された矢印DR4に沿って加湿された空気が排出される。
【0026】
比較例では、除湿部20xが所定量の水分を吸着すると、デシカントローラ101が回転することにより、除湿部20xと再生部30xとの位置が入れ替わる。デシカントローラ101のうち、除湿部20xとして機能する部分が車室に露出する。再生部30xとして機能する部分が車室とは隔離されるように、デシカントローラ101が自動車CAに配置される。デシカントローラ101は、除湿部20xと再生部30xとが一体で形成されている。除湿部20xに車室の空気が供給されると共に、再生部30xから排気される水分を含んだ空気が車室に排気されないようにするために、デシカントローラ101が配置される位置には制限がある。そのため、デシカントローラ101が、自動車CAに配置される場合には、インスツルメンツパネル等には配置されづらい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のリキッドデシカント100では、処理機20は、処理機20内を流れる液体調湿剤10に車室内の水分を吸着させる。再生機30は、再生機30内を流れる液体調湿剤10が吸着している水分を空気中へと脱離させる。ラジエータ41およびエンジン43を含むヒートポンプ40は、熱媒71を冷却し、熱媒72を加熱する。第2熱交換器52は、流路FP1を流れる液体調湿剤10と、第1熱媒流路FP3を流れる冷却された熱媒71との間で熱交換を行う。第3熱交換器53は、流路FP2を流れる液体調湿剤10と、第2熱媒流路FP4を流れる加熱された熱媒72との間で熱交換を行う。そのため、本実施形態では、処理機20により自動車CAの車室内が除湿される。車室の水蒸気を吸着した液体調湿剤10は、処理機20から送液ポンプ61により流路FP1を通って第3熱交換器53を通過する。液体調湿剤10は、第3熱交換器53の通過時に、エンジン43により加熱された熱媒72と熱交換を行い、加熱されて再生機30に流入して再生される。再生された液体調湿剤10は、再度処理機20へと送られて、自動車CAの車室内を除湿する。すなわち、液体調湿剤10を用いた処理機20による車室内の除湿と、再生機30による液体調湿剤10の再生とが同時に行われる。そのため、自動車CAの車室内を連続的に除湿できる。また、本実施形態のリキッドデシカント100では、車室内を除湿するために、車室内の助手席の足元などに処理機20が配置されればよく、再生機30やヒートポンプ40は、車室外に配置されてもよい。そのため、比較例のデシカントローラ101とは異なり、設置場所の条件が少なく、リキッドデシカント100が備える構成が車室内を占有する体積を減らすことができる。また、本実施形態のリキッドデシカント100は、季節にかかわらず、自動車CAの車室内を除湿するために用いられる。例えば、外気温度が低い冬季であっても、車室内のフロントガラスが曇ることを防止するために車室内が除湿されると好ましく、車室内の加湿は行われない。車室内の除湿では、外気温度が低いため、処理機20は、散布充填材21における液体調湿剤10による除湿を効率的に行うことができる。
【0028】
また、本実施形態の再生機30は、エンジンルーム内に配置されている。熱媒71を冷却するラジエータ41と、熱媒71を循環させるための熱媒ポンプ42と、熱媒72を加熱するエンジン43と、熱媒72を循環させるための熱媒ポンプ44とがヒートポンプ40として機能する。そのため、本実施形態では、第1熱媒流路形成部91により形成された第1熱媒流路FP3を流れる熱媒71は、ラジエータ41により冷却され、第2熱交換器52における熱交換により処理機20に流入する液体調湿剤10を冷却する。一方で、第2熱媒流路形成部92により形成された第2熱媒流路FP4を流れる熱媒72は、自動車CAの排熱により加熱され、第3熱交換器53における熱交換により再生機30に流入する液体調湿剤10を加熱する。すなわち、ヒートポンプ40の加熱機能として自動車CAのエンジン43の排熱が利用され、ヒートポンプ40の冷却機能としてラジエータ41による冷却が利用される。ヒートポンプ40としての機能は、自動車に予め備わっている設備が利用されている。さらに、除湿のために車内に外気を導入する必要がなく、低温の外気を加熱する必要がない。再生機30がエンジンルームに配置されているため、再生により発生する水蒸気が車室内に戻る吹き戻しがない。この結果、本実施形態のリキッドデシカント100の稼働に必要なエネルギーが減少し、燃費が向上する。
【0029】
<第2実施形態>
図4および
図5は、第2実施形態のリキッドデシカント100aの概略図である。第2実施形態のリキッドデシカント100aでは、Aピラー(ピラー)APと、処理機20aがインスツルメンツパネル(以降、単に「インパネ」とも呼ぶ)IPとに内蔵されている点が第1実施形態のリキッドデシカント100と異なる。そのため、第2実施形態では、第1実施形態と異なる処理機20aの配置について説明し、第1実施形態と同じ各構成の配置および各構成の構造等についての説明を省略する。
【0030】
図5には、自動車CAの運転席に座っている運転手の視野の一部が示されている。
図5に示されるように、インパネIPのうち、運転席の前方に位置するハンドルHDよりも前方の部分には、複数の吸込口SH2が形成されている。また、AピラーAPの一部には、複数の吸込口SH1が形成されている。第2実施形態の処理機20aは、吸込口SH2のインパネIPの内部と、吸込口SH1のAピラーAPの内部とに配置されている。
【0031】
以上説明したように、第2実施形態の処理機20aは、インパネIPの内部およびAピラーAPの内部に配置されている。そのため、第2実施形態では、処理機20aが車室内で占有する体積をさらに抑制できる。また、処理機20aが、
図5に示される矢印DR5,DR6に沿って流れる乗員の呼気が集中するインパネIP内およびAピラーAP内に配置されるため、乗員の呼気を集中的に吸い込むことができる。乗員の呼気は車室内の空気よりも絶対湿度が高いため、液体調湿剤10が効率良く水蒸気を吸着できる。この結果、液体調湿剤10の送液量が減少するため、送液ポンプ61,62の動力を低減できる。
【0032】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態のリキッドデシカント100bの概略図である。
図6には、シートに座っている運転手DRのシートバックSB内に処理機20bが内蔵されている。第3実施形態では、処理機20bがシートバックSB内に内蔵されている点が、第1実施形態のリキッドデシカント100と異なる。
【0033】
第3実施形態では、処理機20bがシートバックSB内に配置されているため、液体調湿剤10が、乗員の体表から発散される汗による水蒸気を吸着できる。これにより、シートに着座している運転手DRと、シートバックSBとの間の湿度が下がり、運転手DRの皮膚の蒸れ感を軽減できる。
【0034】
<上記実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0035】
上記実施形態のリキッドデシカント100,100a,100bは一例であって、液体乾燥剤システムとしてのリキッドデシカントは、除湿側気液接触器としての処理機が自動車CAの車室内の空気を除湿する範囲で変形可能である。例えば、処理機は、助手席の足元、インパネIP内部、AピラーAPの内部、およびシートバックSB内のいずれとも異なる場所に配置されていてもよく、後部座席やBピラーなどに配置されてもよい。また、処理機以外の構成である、例えば第1熱交換器51や第2熱交換器52等についても、エンジンルーム以外に配置されてもよい。また、リキッドデシカント100は、第1熱交換器51を備えていなくてもよい。
【0036】
液体調湿剤10が流れる流路FP1,FP2は、例えば、熱交換器50と、処理機20と、再生機30とが1つの構成として一体で形成されている場合には、一体の構成内であっても液体調湿剤10が流れる流路のことをいう。また、当該流路を形成する構成が流路形成部であり、流路形成部が、例えば、熱交換器50に内蔵されていてもよい。同じように、熱媒71が流れる第1熱媒流路FP3と、熱媒72が流れる第2熱媒流路FP4とは、ある構成内であっても熱媒71,72が流れる流路のことをいう。また、当該熱媒流路を形成する構成が熱媒流路形成部であり、熱媒流路形成部が、例えば、ヒートポンプ40に内蔵されていてもよい。
【0037】
処理機20側を循環する熱媒71と、再生機30側を循環する熱媒72とは、第1熱媒流路FP3と第2熱媒流路FP4とによって独立していたが、ヒートポンプ40を介して処理機20側と再生機30側とを循環する構成であってもよい。熱媒71は、液体調湿剤10に加えて、処理機20の散布充填材21を冷却してもよい。熱媒72は、再生機30の散布充填材31を加熱してもよい。処理機20と、再生機30とは、同じ構造を有していなくてもよい。例えば、散布充填材21,31に用いられる構造および材質については周知技術を適用できる。また、液体調湿剤10は、塩化リチウム以外の材質で形成されていてもよく、周知の材料を適用できる。
【0038】
本明細書におけるヒートポンプとは、少ない投入エネルギーや排熱を熱エネルギーとして利用するシステムのことをいう。そのため、ヒートポンプが1つの装置として構成されていてもよいし、上記実施形態のように複数の装置を含む1つのシステムとして構成されていてもよい。上記実施形態では、ヒートポンプは、ラジエータ41と、エンジン43と、を含んでいる。エンジン43は、熱媒72を加熱するための熱を生じさせる自動車CAが備える構成の一例である。そのため、自動車CAが備えるエンジン43以外の構成の排熱により、熱媒72が加熱されてもよい。
【0039】
上記実施形態では、再生機30がエンジンルーム内に配置されたが、それ以外の場所に配置されてもよい。再生機30は、再生により散布充填材31から脱離される水蒸気が車室内に吹き戻らない位置に配置されることが好ましい。また、上記実施形態では、エンジンを備える自動車CAのエンジンルームに、リキッドデシカント100の構成の一部が配置される構成について説明したが、電気自動車の電気モータやインバータの排熱を利用して再生機30が再生されてもよい。
【0040】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0041】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
自動車用の液体乾燥剤システムであって、
空気中の水分の着脱が可能な液体調湿剤と、
前記液体調湿剤に前記自動車の車室内の水分を吸着させる除湿側気液接触器と、
前記液体調湿剤に吸着された水分を空気中へと脱離させる再生用気液接触器と、
前記除湿側気液接触器と前記再生用気液接触器との間で前記液体除湿器を循環させる流路を形成する流路形成部と、
前記流路形成部に設けられた送液ポンプと、
熱媒を循環させる熱媒流路を形成する熱媒流路形成部と、
前記熱媒流路形成部に設けられ、前記熱媒の冷却と加熱とを行うヒートポンプと、
前記熱媒と、前記液体調湿剤との間で熱交換とを行う熱交換器と、
を備える、液体乾燥剤システム。
[適用例2]
適用例1に記載の液体乾燥剤システムであって、
前記除湿側気液接触器は、前記車室内に配置された部品内と部品上との少なくとも一方に配置される、液体乾燥剤システム。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の液体乾燥剤システムであって、
前記除湿側気液接触器は、インスツルメンツパネルと、ピラーとの少なくとも一方に配置される、液体乾燥剤システム。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載の液体乾燥剤システムであって、
前記除湿側気液接触器は、シートバック内に配置される、液体乾燥剤システム。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれか一項に記載の液体乾燥剤システムであって、
前記再生用気液接触器は、前記自動車のエンジンルームに配置され、
前記熱媒流路形成部は、
前記除湿側気液接触器側に位置する前記流路形成部と接続された第1熱媒流路形成部と、
前記再生用気液接触器側に位置する前記流路形成部と接続された第2熱媒流路形成部と、を有し、
前記第1熱媒流路形成部に設けられた前記ヒートポンプは、前記自動車のラジエータにより前記熱媒を冷却し、
前記第2熱媒流路形成部に設けられた前記ヒートポンプは、前記自動車の排熱により前記熱媒を加熱する、液体乾燥剤システム。
【符号の説明】
【0042】
10…液体調湿剤
20,20a,20b…処理機(除湿側気液接触器)
20x…除湿部
21,31…散布充填材
23,33…ファン
22,32…ケーシング
24,25,34,35…通気口
30…再生機(再生用気液接触器)
30x…再生部
40…ヒートポンプ
41…ラジエータ
42,44…熱媒ポンプ
43…エンジン
50…熱交換器
51…第1熱交換器
52…第2熱交換器
53…第3熱交換器
61,62…送液ポンプ
71,72…熱媒
81,82…流路形成部
91…第1熱媒流路形成部
92…第2熱媒流路形成部
100,100a,100b…リキッドデシカント(液体乾燥剤システム)
101…デシカントローラ
AP…Aピラー
CA…自動車
DR…運転手
DR1~DR6…矢印
FP1,FP2…流路
FP3…第1熱媒流路
FP4…第2熱媒流路
HD…ハンドル
IP…インスツルメンツパネル(インパネ)
SB…シートバック
SH1,SH2…吸込口