(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017149
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】車両用ベンチレーター
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20060101AFI20230131BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
B60H1/34 651B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121178
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 勝宏
(72)【発明者】
【氏名】江口 晃弘
【テーマコード(参考)】
3D344
3L211
【Fターム(参考)】
3D344AA12
3D344AA14
3D344AA16
3D344AB01
3D344AD11
3L211BA43
3L211BA52
3L211DA14
3L211DA96
(57)【要約】
【課題】部材の寸法のばらつきを吸収して組み付け時の作業性を向上させるとともに、良好な操作感を維持することができる車両用ベンチレーターを提供する。
【解決手段】車両用ベンチレーター100は、インストルメントパネル102の送風口104に挿入され乗員側へ空調風を通過させるケース体106と、ケース体の側面部123に陥没して形成され側面視で矩形状の凹部122と、凹部に嵌め込まれ側面視で矩形状の弾性を有するブッシュ108と、送風口の側壁に固定されケース体とブッシュを車幅方向の回転軸周りに回転自在に支持する軸部材110とを備え、ブッシュは、凹部に直接保持される矩形状の外枠部124と、外枠部の内側に位置し軸部材が挿入される円筒形の内筒部126と、外枠部と内筒部を放射状につないで外枠部と内筒部の間の空間を複数の開口138、140、142、144に区画するスポーク部128、130、132、134とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネルの送風口に挿入され該インストルメントパネルの内部から乗員側へ空調風を通過させるケース体を備える車両用ベンチレーターであって、
当該車両用ベンチレーターはさらに、
前記ケース体の側面部に陥没して形成された側面視で矩形状の凹部と、
前記凹部に嵌め込まれた側面視で矩形状の弾性を有するブッシュと、
前記送風口の側壁に固定され前記ケース体およびブッシュを車幅方向の回転軸周りに回転自在に支持する軸部材とを備え、
前記ブッシュは、
前記凹部に直接保持される矩形状の外枠部と、
前記外枠部の内側に位置する円筒形の内筒部であって、前記軸部材が挿入される内筒部と、
前記外枠部と前記内筒部とを放射状につなぐことによって該外枠部と該内筒部との間の空間を複数の開口に区画する複数のスポーク部とを有することを特徴とする車両用ベンチレーター。
【請求項2】
前記ブッシュの外枠部および前記凹部は、側面視で正方形であることを特徴とする請求項1に記載の車両用ベンチレーター。
【請求項3】
前記凹部は、内側に向かって突出した複数の突出部を有し、
前記複数の突出部はそれぞれ、前記ブッシュの前記複数の開口の外側を形成する前記外枠部に沿った一辺の各々に重なる位置に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ベンチレーター。
【請求項4】
前記軸部材は、
基部と、
前記基部から延び前記ブッシュの内筒部に挿入される回転軸部と、
前記基部から延び前記ブッシュの複数の開口の1つに挿入されるストッパーとを有し、
前記凹部の複数の突出部は、前記ブッシュの外枠部を内側に押し付けて変形させ、前記複数の開口の内側に隆起した複数の凸部を出現させ、
前記軸部材のストッパーは、前記ケース体が回転すると、前記複数の開口の1つに出現した前記複数の凸部の1つに接しこれを乗り越えて前記複数のスポーク部の1つまで移動することを特徴とする請求項3に記載の車両用ベンチレーター。
【請求項5】
前記凹部の複数の突出部はそれぞれ、前記ブッシュの複数の開口の各々のうち外枠部に沿った一辺の中央に重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両用ベンチレーター。
【請求項6】
前記軸部材は、
基部と、
前記基部から延び前記ブッシュの内筒部に挿入される回転軸部と、
前記基部から延び前記ブッシュの複数の開口の1つに挿入されるストッパーとを有し、
前記ブッシュはさらに、前記複数の開口の内側に隆起した複数の隆起部を有し、
前記軸部材のストッパーは、前記ケース体が回転すると、前記ブッシュの複数の開口の1つに位置する前記複数の隆起部の1つに接しこれを乗り越えて前記複数のスポーク部の1つまで移動することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ベンチレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ベンチレーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のインストルメントパネルには、車両用ベンチレーターが設置されている。車両用ベンチレーターは、インストルメントパネルの送風口に取付けられ、インストルメントパネルの内部から乗員側へ空調風を吹き出す。また車両用ベンチレーターは、その姿勢を例えば上下方向に傾けることで、空調風の風向を変えることができる。
【0003】
特許文献1には、ケース体と、箱形状の吹出筒とを備えた自動車用ベンチレーターが記載されている。ケース体の両側壁には、取付孔と円弧状長孔とが設けられている。吹出筒の両外側面には、支軸とストッパーとが設けられている。
【0004】
自動車用ベンチレーターでは、ケース体の取付孔に軸受片を装着し、さらに吹出筒の支軸を軸受片に嵌合することにより、ケース体内に吹出筒を垂直面内で回転可能に支持している。吹出筒のストッパーは、ケース体の円弧状長孔に挿入され、回転時に吹出筒の回転範囲を制限している。また軸受片は、合成樹脂からなり、回転時に吹出筒の支軸に適度な摩擦抵抗がかかるようにして、操作性を良好に保つために設けられている。
【0005】
これにより特許文献1の自動車用ベンチレーターでは、吹出筒の支軸を支点として吹出筒を回転させてその傾斜角度を適宜設定することにより風向を上下に調節可能である、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の自動車用ベンチレーターでは、ケース体内に吹出筒を回転可能に支持するためには、ケース体の取付孔に軸受片を装着した上で、吹出筒の支軸を軸受片に嵌合する必要がある。しかし、ケース体の取付孔や合成樹脂からなる軸受片の寸法にばらつきがあった場合、軸受片のがたつきが発生し、吹出筒を回転させる操作を行うとき良好な操作感を得ることが困難となる。
【0008】
またケース体の取付孔、軸受片および吹出筒の支軸など各部材の寸法にばらつきがあった場合、これらの部材を組み付けることが困難となり、作業性が損なわれてしまう。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、部材の寸法のばらつきを吸収して組み付け時の作業性を向上させるとともに、良好な操作感を維持することができる車両用ベンチレーターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用ベンチレーターの代表的な構成は、車両のインストルメントパネルの送風口に挿入されインストルメントパネルの内部から乗員側へ空調風を通過させるケース体を備える車両用ベンチレーターであって、車両用ベンチレーターはさらに、ケース体の側面部に陥没して形成された側面視で矩形状の凹部と、凹部に嵌め込まれた側面視で矩形状の弾性を有するブッシュと、送風口の側壁に固定されケース体およびブッシュを車幅方向の回転軸周りに回転自在に支持する軸部材とを備え、ブッシュは、凹部に直接保持される矩形状の外枠部と、外枠部の内側に位置する円筒形の内筒部であって、軸部材が挿入される内筒部と、外枠部と内筒部とを放射状につなぐことによって外枠部と内筒部との間の空間を複数の開口に区画する複数のスポーク部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部材の寸法のばらつきを吸収して組み付け時の作業性を向上させるとともに、良好な操作感を維持することができる車両用ベンチレーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用ベンチレーターをインストルメントパネルとともに概略的に示す図である。
【
図2】
図1の車両用ベンチレーターの要部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2の車両用ベンチレーターのブッシュおよびケース体の凹部を示す図である。
【
図4】
図2の車両用ベンチレーターの軸部材を示す図である。
【
図5】
図2の車両用ベンチレーターのケース体、ブッシュおよび軸部材を組み付けた状態を示す図である。
【
図6】
図5の車両用ベンチレーターの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る車両用ベンチレーターの代表的な構成は、車両のインストルメントパネルの送風口に挿入されインストルメントパネルの内部から乗員側へ空調風を通過させるケース体を備える車両用ベンチレーターであって、車両用ベンチレーターはさらに、ケース体の側面部に陥没して形成された側面視で矩形状の凹部と、凹部に嵌め込まれた側面視で矩形状の弾性を有するブッシュと、送風口の側壁に固定されケース体およびブッシュを車幅方向の回転軸周りに回転自在に支持する軸部材とを備え、ブッシュは、凹部に直接保持される矩形状の外枠部と、外枠部の内側に位置する円筒形の内筒部であって、軸部材が挿入される内筒部と、外枠部と内筒部とを放射状につなぐことによって外枠部と内筒部との間の空間を複数の開口に区画する複数のスポーク部とを有することを特徴とする。
【0014】
上記構成では、弾性を有する矩形状のブッシュをケース体の矩形状の凹部に嵌め込むと、ブッシュの外枠部がケース体の凹部に接して保持される。このとき、ケース体の凹部の寸法やブッシュの外枠部の寸法にばらつきがあった場合、ブッシュの外枠部は、ケース体の凹部によって外側から内側に向かって押し付けられて変形する。これにより、ブッシュの外枠部が変形し開口が潰れることで、ケース体の凹部やブッシュの外枠部の寸法のばらつきを吸収することができる。したがって上記構成によれば、ブッシュをケース体の凹部により確実に組み付けることができ、作業性が向上する。
【0015】
また、ブッシュの内筒部は、スポーク部を介して外枠部から内側に離間している。このため、ブッシュがケース体の凹部に嵌め込まれてブッシュの外枠部やスポーク部が変形しても、ブッシュの内筒部は変形することがない。すなわちブッシュの内筒部の挿入孔は変形しない。そのため、挿入孔に挿入された軸部材の回転や摺動は妨げられない。したがって上記構成によれば、ケース体を軸部材の軸周りに回転させて、ケース体の姿勢を上下方向に傾ける操作を行う際、操作力がばらつきにくくなり、良好な操作感を維持することができる。
【0016】
上記のブッシュの外枠部および凹部は、側面視で正方形である。
【0017】
これにより、ブッシュは、正方形の外枠部により上下左右対称となり、ケース体の正方形の凹部に対して位置合わせし易くなる。このため、ブッシュをケース体の凹部に組み付ける際の作業性をより向上させることができる。
【0018】
上記の凹部は、内側に向かって突出した複数の突出部を有し、複数の突出部はそれぞれ、ブッシュの複数の開口の外側を形成する外枠部に沿った一辺の各々に重なる位置に形成されている。
【0019】
これにより、ブッシュをケース体の凹部に嵌め込むと、ケース体の凹部の突出部によってブッシュの外枠部が内側に押し付けられて開口が確実に変形する。このため、ブッシュがケース体の凹部から外れ難くなる。また、ブッシュの外枠部が変形しても、内筒部は変形しないため、内筒部の挿入孔に挿入された軸部材の回転や摺動は妨げられない。
【0020】
上記の軸部材は、基部と、基部から延びブッシュの内筒部に挿入される回転軸部と、基部から延びブッシュの複数の開口の1つに挿入されるストッパーとを有し、凹部の複数の突出部は、ブッシュの外枠部を内側に押し付けて変形させ、複数の開口の内側に隆起した複数の凸部を出現させ、軸部材のストッパーは、ケース体が回転すると、複数の開口の1つに出現した複数の凸部の1つに接しこれを乗り越えて複数のスポーク部まで移動する。
【0021】
これにより、軸部材の回転軸部の軸周りにケース体を回転させる操作を行うとき、軸部材のストッパーがブッシュの開口に出現した凸部に接しながらスポーク部まで移動し当接する。このため、軸部材のストッパーとブッシュの開口の凸部とによって、操作時の操作感(クリック感)を得ることができ、さらに操作時に軸部材とブッシュとが当たるときの音を和らげることもできる。またブッシュの開口の凸部の高さは、ケース体の凹部の突出部の高さを変更することで容易に調整可能である。このため、ケース体の凹部の突出部の高さを変更することにより、軸部材の回転軸部の軸周りにケース体を回転させるときの操作感を容易に調整することができる。
【0022】
上記の凹部の複数の突出部はそれぞれ、ブッシュの複数の開口の各々のうち外枠部に沿った一辺の中央に重なる位置に設けられている。
【0023】
これにより、ブッシュをケース体の凹部に嵌め込むと、ブッシュの外枠部が変形して、開口のうち外枠部に沿った一辺の中央に凸部を所定間隔で規則的に出現させることができる。このため、軸部材の回転軸部の軸周りにケース体を回転させる操作を行うとき、軸部材のストッパーは、ブッシュの開口に出現した凸部に規則的に接することになる。このため、操作時の操作感を均一にすることができる。また、ブッシュでは、複数の開口の各々のうち外枠部に沿った一辺の中央に凸部を出現させるように、外枠部が確実に変形する。このため、ケース体の凹部やブッシュの外枠部の寸法のばらつきを吸収して、ブッシュをケース体の凹部に確実に組み付けることができるため、作業性が向上する。
【0024】
上記の軸部材は、基部と、基部から延びブッシュの内筒部に挿入される回転軸部と、基部から延びブッシュの複数の開口の1つに挿入されるストッパーとを有し、ブッシュはさらに、複数の開口の内側に隆起した複数の隆起部を有し、軸部材のストッパーは、ケース体が回転すると、ブッシュの複数の開口の1つに位置する複数の隆起部の1つに接しこれを乗り越えて複数のスポーク部の1つまで移動する。
【0025】
これにより、軸部材の回転軸部の軸周りにケース体を回転させる操作を行うとき、軸部材のストッパーがブッシュの開口に設けられた隆起部に接しながらスポーク部まで移動し当接する。このため、軸部材のストッパーとブッシュの開口の隆起部とによって、操作時の操作感を得ることができ、さらに操作時に軸部材とブッシュとが当たるときの音を和らげることもできる。また、ブッシュの開口の隆起部の高さは、容易に調整可能である。このため、ブッシュの開口の隆起部の高さを変更することにより、軸部材の回転軸部の軸周りにケース体を回転させるときの操作感を容易に調整することができる。
【実施例0026】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施例に係る車両用ベンチレーター100をインストルメントパネル102とともに概略的に示す図である。なお以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0028】
車両のインストルメントパネル102には、不図示の空調装置からの空調風が吹き出る送風口104が設けられている。車両用ベンチレーター100は、送風口104に取り付けられ、空調風の風向を調整する。
【0029】
図2は、
図1の車両用ベンチレーター100の要部を示す分解斜視図である。車両用ベンチレーター100は、ケース体106と、ブッシュ108と、軸部材110とを備える。ケース体106は、車両前後方向が開口したトンネル状となっていて、インストルメントパネル102の送風口104(
図1参照)に挿入され、インストルメントパネル102の内部から乗員側へ空調風を通過させる。
【0030】
ケース体106の内側には、薄板状の横板フィン112と縦板フィン114が差し渡されている。横板フィン112は、ケース体106の乗員側に配置されていて、ケース体106の側面部116から車幅方向に延びている。縦板フィン114は、横板フィン112の奥側すなわち車両前側に配置されていて、ケース体106の上面118と下面120の間で上下方向に延びている。
【0031】
ケース体106は、側面視で矩形状(ここでは正方形)の凹部122を有する。凹部122は、ケース体106の側面部116に陥没して形成されている。ブッシュ108は、弾性を有する例えばゴム製の部材であり、側面視で矩形状(ここでは正方形)となっていて、ケース本体106の凹部122に嵌め込まれる(
図5参照)。このため、ブッシュ108の車幅方向の厚さとケース体106の凹部122の車幅方向の深さは、ほぼ同じ寸法となっている。また軸部材110は、
図1に示すインストルメントパネル102の送風口104の側壁123に固定され、ケース体106およびブッシュ108を車幅方向の回転軸周りに回転自在に支持する。
【0032】
図3は、
図2の車両用ベンチレーター100のブッシュ108およびケース体106の凹部122を示す図である。
図3(a)は、ブッシュ108の側面図である。
図3(b)は、
図2のケース体106の凹部122を拡大して示す図である。
【0033】
ブッシュ108は、
図3(a)に示すように正方形の外枠部124と、円筒形の内筒部126と、複数(ここでは4つ)のスポーク部128、130、132、134とを有し、これら各部位が例えば一体成形されている。ブッシュ108は、ケース体106の凹部122に嵌め込まれた状態で、外枠部124が凹部122に直接保持される。内筒部126は、外枠部124の内側に位置し、その内側には挿入孔136が形成されている。
【0034】
スポーク部128、130、132、134はそれぞれ、外枠部124と内筒部126とを放射状につなぐように直線状に延びていて、外枠部124と内筒部126との間の空間を複数(ここでは4つ)の開口138、140、142、144に区画する。また、これらの開口138、140、142、144はそれぞれ、外枠部124に沿った一辺145、146と、一辺148、150と、一辺152、154と、一辺156、158とを有する。なお、スポーク部128、130、132、134は、同じ長さを有する。各一辺145、146、148、150、152、154、156、158は、同じ長さを有する。
【0035】
ここでブッシュ108において、内筒部126の挿入孔136の半径すなわち中心Oからの長さを寸法La、内筒部126の厚みを寸法Lb、代表的に示すスポーク部130の長さを寸法Lcとする。この場合、一例として各寸法La、Lb、Lbの長さは同じである(すなわち、La:Lb:Lc=1:1:1)。また、ブッシュ108の代表的に示す開口138の一辺146の長さを寸法Ldとする。この場合、一例として寸法Ldは、寸法Lcの3倍の長さを有する(すなわち、Ld:Lc=3:1)。
【0036】
ケース体106の凹部122は、
図3(b)に示すように内側に向かって突出した複数(ここでは8つ)の突出部160、162、164、166、168、170、172、174を有する。突出部160、174は、凹部122の上壁176から下方に向かって突出している。突出部162、164は、凹部122の後壁178から前方に向かって突出している。突出部166、168は、凹部122の下壁180から上方に向かって突出している。突出部170、172は、凹部122の前壁182から後方に向かって突出している。
【0037】
図4は、
図2の車両用ベンチレーター100の軸部材110を示す図である。
図4(a)は、軸部材110がインストルメントパネル102の送風口104の側壁123に固定された状態を示す図である。
図4(b)は、
図4(a)のA矢視図であって、軸部材110のみを示す図である。
【0038】
軸部材110は、基部184と、回転軸部186と、ストッパー188とを有する。回転軸部186は、
図2に示すように基部184からブッシュ108に向かって延びていて、ブッシュ108の内筒部126の挿入孔136に挿入され(
図5参照)、挿入孔136に対して回転自在になっている。ストッパー188は、基部184からブッシュ108に向かって延びていて、ブッシュ108の複数の開口138、140、142、144のうちの1つ(ここでは、開口138)に挿入される(
図5参照)。なおストッパー188は、
図4(b)に示すように回転軸部186から離間している。
【0039】
軸部材110はさらに、
図2に示すように固定部190を有する。固定部190は、基部184からブッシュ108の反対側に向かって延びている。そして
図4(a)に示すように、固定部190は、インストルメントパネル102の送風口104の側壁123に形成された固定孔191に挿入されて固定される。このようにして軸部材110は、送風口104の側壁123に固定され、ケース体106およびブッシュ108を車幅方向の回転軸周りに回転自在に支持することができる。
【0040】
車両用ベンチレーター100では、一例として、ブッシュ108をケース体106の凹部122に嵌め込み、さらに軸部材110によってケース体106およびブッシュ108を回転自在に支持するように部組した状態で、軸受部材110の固定部190を、送風口104の側壁123の固定孔191に挿入して固定する。このようにして車両用ベンチレーター100は、インストルメントパネル102の送風口104に取り付けられる。
【0041】
図5は、
図2の車両用ベンチレーター100のケース体106、ブッシュ108および軸部材110を組み付けた状態を示す図である。
【0042】
ケース体106の凹部122の突出部160、162、164、166、168、170、172、174はそれぞれ、図示のようにブッシュ108の複数の開口138、140、142、144の外側を形成する外枠部124に沿った一辺の各々に重なる位置に形成されている。
【0043】
すなわち突出部160、162は、ブッシュ108の開口138のうち外枠部124に沿った一辺145、146の中央B、Cに重なる位置にそれぞれ設けられている。突出部164、166は、開口140のうち外枠部124に沿った一辺148、150の中央D、Eに重なる位置にそれぞれ設けられている。
【0044】
さらに突出部168、170は、開口142のうち外枠部124に沿った一辺152、154の中央F、Gに重なる位置にそれぞれ設けられている。突出部172、174は、開口144のうち外枠部124に沿った一辺156、158の中央H、Iに重なる位置にそれぞれ設けられている。
【0045】
車両用ベンチレーター100では、弾性を有する正方形のブッシュ108をケース体106の正方形の凹部122に嵌め込むと、ブッシュ108の外枠部124がケース体106の凹部122に接して保持される。このとき、ケース体106の凹部122の寸法やブッシュ108の外枠部124の寸法にばらつきがあった場合、ブッシュ108の外枠部124は、ケース体106の凹部122によって外側から内側に向かって押し付けられて変形する。ここでは、凹部122の突出部160、162、164、166、168、170、172、174が、ブッシュ108の外枠部124を内側に押し付けて変形させる。
【0046】
そして突出部160、162は、開口138のうち外枠部124に沿った一辺145、146の中央B、Cから内側に隆起した凸部192、193を出現させる。突出部164、166は、開口140のうち外枠部124に沿った一辺148、150の中央D、Eから内側に隆起した凸部194、195を出現させる。
【0047】
また突出部168、170は、開口142のうち外枠部124に沿った一辺152、154の中央F、Gから内側に隆起した凸部196、197を出現させる。突出部172、174は、開口144のうち外枠部124に沿った一辺156、158の中央H、Iから内側に隆起した凸部198、199を出現させる。
【0048】
このようにブッシュ108の外枠部124が変形し開口138、140、142、144が確実に変形することで、ケース体106の凹部122やブッシュ108の外枠部124の寸法のばらつきを吸収することができる。したがって車両用ベンチレーター100では、ブッシュ108をケース体106の凹部122により確実に組み付けることができ、作業性が向上する。
【0049】
またケース体106の凹部122の突出部160、162、164、166、168、170、172、174によって、ブッシュ108の開口138、140、142、144が確実に変形するため、ブッシュ108がケース体106の凹部122から外れ難くなる。
【0050】
さらにブッシュ108の内筒部126は、スポーク部128、130、132、134を介して外枠部124から内側に離間している。このため、ブッシュ108がケース体106の凹部122に嵌め込まれて、外枠部124やスポーク部128、130、132、134が変形しても、内筒部126は変形することがない。すなわちブッシュ108の内筒部126の挿入孔136は変形しない。そのため、挿入孔136に挿入された軸部材110の回転や摺動は妨げられない。
【0051】
したがって車両用ベンチレーター100によれば、ケース体106を軸部材110の軸周りに回転させて、ケース体106の姿勢を上下方向に傾ける操作を行う際、操作力がばらつきにくくなり、良好な操作感を維持することができる。
【0052】
ブッシュ108の外枠部124およびケース体106の凹部122は、側面視で正方形である。このため、ブッシュ108は、正方形の外枠部124により上下左右対称となり、ケース体106の正方形の凹部122に対して位置合わせし易くなる。したがって、ブッシュ108をケース体106の凹部122に組み付ける際の作業性をより向上させることができる。
【0053】
また軸部材110のストッパー188は、
図5に示すようにブッシュ108の開口138に挿入されている。このため車両用ベンチレーター100では、軸部材110の回転軸部186の軸周りにケース体106を回転させる操作を行うとき、ストッパー188がブッシュ108の開口138に出現した凸部192、193に接する。そしてストッパー188は、凸部192、193を乗り越えてスポーク部128、130間を移動して、スポーク部128、130に当接する(矢印J参照)。
【0054】
このため、軸部材110のストッパー188とブッシュ108の開口138に出現した凸部192、193とによって、操作時の操作感(クリック感)を得ることができ、さらに操作時に軸部材110とブッシュ108とが当たるときの音を和らげることもできる。
【0055】
また凸部192、193は、開口138のうち外枠部124に沿った一辺145、146の中央B、Cから内側に隆起したものであるため、その位置には規則性がある。これにより、ケース体106を回転させる操作時に、軸部材110のストッパー188は、ブッシュ108の開口138に出現した凸部192、193に規則的に接することになる。このため、操作時の操作感を均一にすることができる。
【0056】
さらにブッシュ108の開口138の凸部192、193の高さは、ケース体106の凹部122の突出部160、162の高さを変更することで容易に調整可能である。このため、ケース体106の凹部122の突出部160、162の高さを変更することにより、軸部材110の回転軸部186の軸周りにケース体106を回転させるときの操作感を容易に調整することができる。
【0057】
なお、上記車両用ベンチレーター100では、軸部材110のストッパー188をブッシュ108の開口138に挿入するようにしたが、これに限定されない。一例として、正方形の外枠部124を有するブッシュ108の姿勢を90度回転させるなどした後、ブッシュ108をケース体106の凹部122に嵌め込んで、さらに軸部材110のストッパー188を他の開口140、142、144のうちの1つに挿入するようにしてもよい。このような場合であっても、ストッパー188は、他の開口140、142、144の凸部194、195、196、197、198、199に接しながらスポーク部130、132間、スポーク部132、134間、スポーク部128、134間を移動し当接する。これにより、ケース体106を回転させる操作時に良好な操作感を得ることができる。
【0058】
図6は、
図5の車両用ベンチレーター100の変形例を示す図である。変形例の車両用ベンチレーター100Aは、以下の点で上記の車両用ベンチレーター100と異なる。まず、ケース体106Aの凹部122Aの上壁176A、後壁178A、下壁180Aおよび前壁182Aには、上記の突出部160、162、164、166、168、170、172、174が形成されていない。
【0059】
つぎに、ブッシュ108Aには、上記の突出部160、162、164、166、168、170、172、174によって出現する複数の凸部192、193、194、195、196、197、198、199に代えて、複数の隆起部192A、193A、194A、195A、196A、197A、198A、199Aが設けられている。
【0060】
このような車両用ベンチレーター100Aにおいて、隆起部192A、193Aは、開口138Aのうち外枠部124Aに沿った一辺145A、146Aの中央B、Cから内側に隆起したものである。隆起部194A、195Aは、開口140Aのうち外枠部124Aに沿った一辺148A、150Aの中央D、Eから内側に隆起したものである。
【0061】
また隆起部196A、197Aは、開口142Aのうち外枠部124Aに沿った一辺152A、154Aの中央F、Gから内側に隆起したものである。隆起部198A、199Aは、開口144Aのうち外枠部124Aに沿った一辺156A、158Aの中央H、Iから内側に隆起したものである。
【0062】
車両用ベンチレーター100Aでは、軸部材110の回転軸部186の軸周りにケース体106Aを回転させる操作を行うとき、ストッパー188がブッシュ108Aの開口138Aに設けられた隆起部192A、193Aに接する。そしてストッパー188は、隆起部192A、193Aを乗り越えてスポーク部128、130間を移動して、スポーク部128、130に当接する(矢印J参照)。
【0063】
このため、軸部材110のストッパー188とブッシュ108Aの開口138Aに設けられた隆起部192A、193Aとによって、操作時のクリック感を得ることができ、さらに操作時に軸部材110とブッシュ108Aとが当たるときの音を和らげることもできる。
【0064】
また隆起部192A、193Aは、開口138Aのうち外枠部124Aに沿った一辺145A、146Aの中央B、Cから内側に隆起したものであるため、その位置には規則性がある。これにより、ケース体106Aを回転させる操作時に、軸部材110のストッパー188は、ブッシュ108Aの開口138Aに設けられた隆起部192A、193Aに規則的に接することになる。このため、操作時の操作感を均一にすることができる。
【0065】
さらにブッシュ108Aの開口138Aに設けられた隆起部192A、193Aの高さは、容易に調整可能である。このため、ブッシュ108Aの開口138Aの隆起部192A、193Aの高さを変更することにより、軸部材110の回転軸部186の軸周りにケース体106Aを回転させるときの操作感を容易に調整することができる。
【0066】
さらに車両用ベンチレーター100Aでは、弾性を有するブッシュ108Aをケース体106Aの凹部122Aに嵌め込むと、ブッシュ108Aの外枠部124Aがケース体106Aの凹部122Aに接して保持される。このとき、ケース体106Aの凹部122Aの寸法やブッシュ108Aの外枠部124Aの寸法にばらつきがあった場合、ブッシュ108Aの外枠部124Aは、ケース体106Aの凹部122Aによって外側から内側に向かって押し付けられて変形する。
【0067】
このため車両用ベンチレーター100Aでは、ケース体106Aの凹部122Aやブッシュ108Aの外枠部124Aの寸法のばらつきを吸収することができ、さらに、ブッシュ108Aをケース体106Aの凹部122Aに確実に組み付けることができる。このため、組み付けの作業性が向上する。
【0068】
さらに車両用ベンチレーター100Aでは、ブッシュ108Aがケース体106Aの凹部122Aに嵌め込まれて、外枠部124Aやスポーク部128、130、132、134が変形しても、内筒部126は変形することがない。すなわちブッシュ108Aの内筒部126の挿入孔136は変形しない。そのため、挿入孔136に挿入された軸部材110の回転や摺動は妨げられない。
【0069】
したがって車両用ベンチレーター100Aによれば、ケース体106Aを軸部材110の軸周りに回転させて、ケース体106Aの姿勢を上下方向に傾ける操作を行う際、操作力がばらつきにくくなり、良好な操作感を維持することができる。
【0070】
なお上記車両用ベンチレーター100、100Aでは、ブッシュ108、108Aの外枠部124、124Aおよびケース体106、106Aの凹部122、122Aは、側面視で正方形であるとしたが、これに限定されない。すなわち凹部122、122Aにブッシュ108、108Aを嵌め込んだ状態で、外枠部124、124Aが凹部122、122Aに直接保持され、さらにブッシュ108、108Aの内筒部126を適切な位置に設定すれば、外枠部124、124Aおよび凹部122、122Aは、正方形に限らず、長方形などであってもよい。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
100、100A…車両用ベンチレーター、102…インストルメントパネル、104…送風口、106、106A…ケース体、108、108A…ブッシュ、110…軸部材、112…横板フィン、114…縦板フィン、116…ケース体の側面部、118…ケース体の上面、120…ケース体の下面、122、122A…凹部、123…送風口の側壁、124、124A…外枠部、126…内筒部、128、130、132、134…スポーク部、136…内筒部の挿入孔、138、138A、140、140A、142、142A、144、144A…ブッシュの開口、145、145A、146、146A、148、148A、150、150A、152、152A、154、154A、156、156A、158、158A…開口の一辺、160、162、164、166、168、170、172、174…凹部の突出部、176、176A…凹部の上壁、178、178A…凹部の後壁、180、180A…凹部の下壁、182、182A…凹部の前壁、184…軸部材の基部、186…回転軸部、188…ストッパー、190…軸部材の固定部、191…送風口の側壁の固定孔、192、193、194、195、196、197、198、199…凸部、192A、193A、194A、195A、196A、197A、198A、199A…隆起部