(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017154
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/356 20060101AFI20230131BHJP
F04C 23/00 20060101ALI20230131BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
F04C18/356 E
F04C18/356 Z
F04C23/00 F
F04C29/02 311C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121184
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 秀斗
(72)【発明者】
【氏名】片山 大輝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇洋
(72)【発明者】
【氏名】古川 基信
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA09
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB02
3H129BB01
3H129BB42
3H129CC16
3H129CC17
3H129CC34
(57)【要約】
【課題】駆動軸と軸受けのクリアランスに潤滑油を適切に供給する。
【解決手段】駆動軸15は、主軸部分153と、中間軸部分154と、主軸部分153と中間軸部分154との間に配置される上偏心軸部分152Tとを備えている。駆動軸15には、回転軸に沿って形成される給油縦孔と、上偏心軸部分152Tのうちの上ピストン125Tに形成される孔の内周面に対向する偏心部外周面に形成されて上偏心軸部分給油横孔45に接続される偏心縦溝部分44と、主軸部分153の外周面に形成されて偏心縦溝部分44の一端に接続される縦溝上端部分42と、中間軸部分154の外周面に形成されて偏心縦溝部分44の他端に接続される縦溝下端部分43と、給油縦孔と偏心縦溝部分44とを接続する上偏心軸部分給油横孔45とが形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機筐体と、
前記圧縮機筐体の内部に配置される駆動軸と、
回転軸を中心に前記駆動軸を回転させるモータと、
前記駆動軸が回転することにより冷媒を圧縮する圧縮部とを備え、
前記駆動軸は、
第1軸部分と、
第2軸部分と、
前記第1軸部分と前記第2軸部分との間に配置される偏心軸部分とを有し、
前記圧縮部は、
シリンダと、
前記偏心軸部分に嵌合する孔が形成され前記駆動軸が回転することにより前記シリンダの内部に形成されるシリンダ室の内部で公転するピストンとを有し、
前記駆動軸には、
前記偏心軸部分のうちの前記ピストンに形成される孔の内周面に対向する外周面に形成される偏心縦溝部分と、
前記第1軸部分の外周面に形成され前記偏心縦溝部分の一端に接続される第1軸縦溝部分と、
前記第2軸部分の外周面に形成され前記偏心縦溝部分の他端に接続される第2軸縦溝部分と、
前記回転軸に沿って形成される給油縦孔と、
前記給油縦孔と前記偏心縦溝部分とを接続する給油横孔とが形成される
ロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記回転軸に直交する平面に前記偏心縦溝部分が交差する断面の面積を、前記給油横孔が沿う直線に直交する平面に前記給油横孔が交差する断面の面積により除算した比B/Aは、次式:
0.4≦B/A≦1
を満たす
請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記偏心軸部分の外周面のうちの前記回転軸から最も離れた最大偏心位置点と交差して前記回転軸を始点とする始線から、前記偏心縦溝部分に交差して前記回転軸を始点とする動径まで、前記回転軸を中心に前記駆動軸の回転方向に回転する角度は、-180度より大きく、かつ、0度より小さい
請求項1または請求項2に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】
前記駆動軸は、
第3軸部分と、
前記第2軸部分と前記第3軸部分との間に配置される他の偏心軸部分とをさらに有し、
前記圧縮部は、
他のシリンダと、
前記他の偏心軸部分に嵌合する孔が形成され前記駆動軸が回転することにより前記他のシリンダの内部に形成される他のシリンダ室の内部で公転する他のピストンとをさらに有し、
前記駆動軸には、
前記他の偏心軸部分のうちの前記他のピストンに形成される孔の内周面に対向する外周面に形成される他の偏心縦溝部分と、
前記第2軸部分の外周面に形成され前記他の偏心縦溝部分の一端に接続される第3軸縦溝部分と、
前記第3軸部分の外周面に形成され前記他の偏心縦溝部分の他端に接続される第4軸縦溝部分と、
前記給油縦孔と前記他の偏心縦溝部分とを接続する他の給油横孔とがさらに形成される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】
前記回転軸に直交する平面に前記他の偏心縦溝部分が交差する断面の面積を、前記他の給油横孔が沿う直線に直交する平面に前記他の給油横孔が交差する断面の面積により除算した比B’/A’は、次式:
0.4≦B’/A’≦1
を満たす
請求項4に記載のロータリ圧縮機。
【請求項6】
前記他の偏心軸部分の外周面のうちの前記回転軸から最も離れた他の最大偏心位置点と交差して前記回転軸を始点とする始線から、前記他の偏心縦溝部分に交差して前記回転軸を始点とする動径まで、前記回転軸を中心に前記駆動軸の回転方向に回転する角度は、-180度より大きく、かつ、0度より小さい
請求項4または請求項5に記載のロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機筐体の内部に駆動軸とシリンダとピストンとが設けられたロータリ圧縮機が知られている。ピストンは、駆動軸の偏心部分に嵌合し、駆動軸の回転に追従して、シリンダの内部に形成されたシリンダ室の内部で公転し、冷媒を圧縮する。駆動軸には、給油縦孔と給油横孔とが形成されている。給油縦孔は、駆動軸が回転することにより、圧縮機筐体に貯留された潤滑油を吸い上げ、給油横孔は、吸い上げられた潤滑油の一部をピストンと偏心部分との間のクリアランスに供給している(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-176796号公報
【特許文献2】特開2001-73977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータリ圧縮機は、駆動軸を回転可能に支持する軸受をさらに備えている。駆動軸と軸受との間にはクリアランスが形成され、クリアランスに供給される潤滑油の量が少ない場合に、駆動軸と軸受との間の摩擦が大きくなり、ロータリ圧縮機の効率が低下するという問題がある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、駆動軸と軸受けのクリアランスに潤滑油を適切に供給するロータリ圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるロータリ圧縮機は、圧縮機筐体と、前記圧縮機筐体の内部に配置される駆動軸と、回転軸を中心に前記駆動軸を回転させるモータと、前記駆動軸が回転することにより冷媒を圧縮する圧縮部とを備えている。前記駆動軸は、第1軸部分と、第2軸部分と、前記第1軸部分と前記第2軸部分との間に配置される偏心軸部分とを有している。前記圧縮部は、シリンダと、前記偏心軸部分に嵌合する孔が形成され前記駆動軸が回転することにより前記シリンダの内部に形成されるシリンダ室の内部で公転するピストンとを有している。前記駆動軸には、前記偏心軸部分のうちの前記ピストンに形成される孔の内周面に対向する偏心部外周面に形成される偏心縦溝部分と、前記第1軸部分の外周面に形成され前記偏心縦溝部分の一端に接続される第1軸縦溝部分と、前記第2軸部分の外周面に形成され前記偏心縦溝部分の他端に接続される第2軸縦溝部分と、前記回転軸に沿って形成される給油縦孔と、前記給油縦孔と前記偏心縦溝部分とを接続する給油横孔とが形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のロータリ圧縮機は、駆動軸と軸受けのクリアランスに潤滑油を適切に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部を示す上方分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例のロータリ圧縮機の駆動軸を示す上方分解斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例のロータリ圧縮機の駆動軸の一部を示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図4のG-G’線断面を示し、実施例のロータリ圧縮機の駆動軸を示す断面図である。
【
図6】
図6は、複数の比と複数の効率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかるロータリ圧縮機について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例0010】
図1は、実施例のロータリ圧縮機を示す縦断面図であり、
図2は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部を示す上方分解斜視図である。
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10内の下部に配置された圧縮部12と、圧縮部12の上方に配置され、駆動軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、圧縮機筐体10の側部に固定された縦置き円筒状のアキュムレータ25と、を備えている。
【0011】
アキュムレータ25は、上吸入管105及びアキュムレータ上湾曲管31Tを介して上シリンダ121Tの上吸入室131T(
図2参照)と接続し、下吸入管104及びアキュムレータ下湾曲管31Sを介して下シリンダ121Sの下吸入室131S(
図2参照)と接続している。
【0012】
モータ11は、外側にステータ111を、内側にロータ112を備え、ステータ111は、圧縮機筐体10の内周面に焼嵌めあるいは溶接によって固定され、ロータ112は、軸方向に平行である直線に沿って配置された駆動軸15に焼嵌めにより固定されている。
【0013】
圧縮機筐体10内部には、圧縮部12を構成する部品の潤滑と上圧縮室133T(
図2参照)及び下圧縮室133S(
図2参照)のシールのために、潤滑油18が圧縮部12をほぼ浸漬する量だけ封入されている。潤滑油18により潤滑される部品としては、上ピストン125T、下ピストン125S、上シリンダ121T、下シリンダ121S、上端板160T、下端板160S、中間仕切板140が例示される。圧縮機筐体10の下側には、ロータリ圧縮機1全体を支持する取付脚310が固定されている。
【0014】
図2に示すように、圧縮部12は、上からドーム状の膨出部を有する上端板カバー170T、上端板160T、上シリンダ121T、中間仕切板140、下シリンダ121S、下端板160S及び平板状の下端板カバー170Sを積層して構成されている。圧縮部12全体は、上下から略同心円上に配置された複数の通しボルト174,175及び補助ボルト176によって固定されている。
【0015】
環状の上シリンダ121Tには、上吸入管105と嵌合する上吸入孔135Tが設けられている。環状の下シリンダ121Sには、下吸入管104と嵌合する下吸入孔135Sが設けられている。また、上シリンダ121Tの上シリンダ室130Tには、上ピストン125Tが配置されている。上ピストン125Tの外周面は、上シリンダ121Tの内周面129Tに当接している。下シリンダ121Sの下シリンダ室130Sには、下ピストン125Sが配置されている。下ピストン125Sの外周面は、下シリンダ121Sの内周面129Sに当接している。
【0016】
上シリンダ121Tには、上シリンダ室130Tの中心から径方向に外方へ延びる上ベーン溝128Tが設けられ、上ベーン溝128Tには上ベーン127Tが配置されている。下シリンダ121Sには、下シリンダ室130Sの中心から径方向に外方へ延びる下ベーン溝128Sが設けられ、下ベーン溝128Sには下ベーン127Sが配置されている。
【0017】
上シリンダ121Tには、外側面から上ベーン溝128Tと重なる位置に上シリンダ室130Tに貫通しない深さで上スプリング穴124Tが設けられ、上スプリング穴124Tには上スプリング126Tが配置されている。下シリンダ121Sには、外側面から下ベーン溝128Sと重なる位置に下シリンダ室130Sに貫通しない深さで下スプリング穴124Sが設けられ、下スプリング穴124Sには下スプリング126Sが配置されている。
【0018】
上シリンダ室130Tは、上シリンダ121Tの一方側の端部である上端部に上端板160Tが密着し、上シリンダ121Tの他方側の端部である下端部に中間仕切板140が密着することにより、上シリンダ121Tの内部に形成されている。すなわち、上シリンダ室130Tは、上端部が上端板160Tで閉塞され、下端部が中間仕切板140で閉塞されている。下シリンダ室130Sは、下シリンダ121Sの一方側の端部である上端部に中間仕切板140が密着し、下シリンダ121Sの他方側の端部である下端部に下端板160Sが密着することにより、下シリンダ121Sの内部に形成されている。すなわち、下シリンダ室130Sは、上端部が中間仕切板140で閉塞され、下端部が下端板160Sで閉塞されている。
【0019】
上シリンダ室130Tは、上ベーン127Tが上スプリング126Tに押圧されて上ピストン125Tの外周面に当接することによって、上吸入孔135Tに連通する上吸入室131Tと、上端板160Tに設けられた上吐出孔190Tに連通する上圧縮室133Tと、に区画される。下シリンダ室130Sは、下ベーン127Sが下スプリング126Sに押圧されて下ピストン125Sの外周面に当接することによって、下吸入孔135Sに連通する下吸入室131Sと、下端板160Sに設けられた下吐出孔190Sに連通する下圧縮室133Sと、に区画される。
【0020】
上端板160Tには、上端板160Tを貫通して上シリンダ121Tの上圧縮室133Tと連通する上吐出孔190Tが設けられ、上吐出孔190Tの出口側には、上吐出孔190Tを囲む環状の上弁座(図示せず)が形成されている。上端板160Tには、上吐出孔190Tの位置から上端板160Tの外周に向かって溝状に延びる上吐出弁収容凹部164Tが形成されている。
【0021】
上吐出弁収容凹部164Tには、後端部が上吐出弁収容凹部164T内に上リベット202Tにより固定され前部が上吐出孔190Tを開閉するリード弁型の上吐出弁200T及び後端部が上吐出弁200Tに重ねられて上吐出弁収容凹部164T内に上リベット202Tにより固定され前部が上吐出弁200Tが開く上側に湾曲して(反って)いて上吐出弁200Tの開度を規制する上吐出弁押さえ201T全体が収容されている。
【0022】
下端板160Sには、下端板160Sを貫通して下シリンダ121Sの下圧縮室133Sと連通する下吐出孔190Sが設けられ、下吐出孔190Sの出口側には、下吐出孔190Sを囲む環状の下弁座が形成されている。下端板160Sには、下吐出孔190Sの位置から下端板160Sの外周に向かって溝状に延びる下吐出弁収容凹部が形成されている。
【0023】
下吐出弁収容凹部には、後端部が下吐出弁収容凹部内に下リベット202Sにより固定され前部が下吐出孔190Sを開閉するリード弁型の下吐出弁200S及び後端部が下吐出弁200Sに重ねられて下吐出弁収容凹部内に下リベット202Sにより固定され前部が下吐出弁200Sが開く下側に湾曲して(反って)いて下吐出弁200Sの開度を規制する下吐出弁押さえ201Sの全部が収容されている。
【0024】
互いに密着固定された上端板160Tとドーム状の膨出部を有する上端板カバー170Tとの間には、上端板カバー室180Tが形成される。互いに密着固定された下端板160Sと平板状の下端板カバー170Sとの間には、下端板カバー室180Sが形成される。下端板160S、下シリンダ121S、中間仕切板140、上端板160T及び上シリンダ121Tを貫通し下端板カバー室180Sと上端板カバー室180Tとを連通する冷媒通路孔136が設けられている。
【0025】
図3は、実施例のロータリ圧縮機の駆動軸を示す上方分解斜視図である。駆動軸15は、概ね棒状に形成され、副軸部分151(第3軸部分)と主軸部分153(第1軸部分)と下偏心軸部分152Sと上偏心軸部分152Tと中間軸部分154(第2軸部分)とを備えている。副軸部分151は、回転自在に副軸受部161Sに支持されている。すなわち、副軸部分151は、副軸受部161Sに形成された孔に嵌合している。主軸部分153は、ロータ112に固定され、回転自在に主軸受部161Tに支持されている。すなわち、主軸部分153は、主軸受部161Tに形成された孔に嵌合している。
【0026】
下偏心軸部分152Sは、副軸部分151と主軸部分153との間に配置され、副軸部分151に隣接し、副軸部分151に一体に形成されている。下偏心軸部分152Sは、下ピストン125Sに形成された孔に嵌合され、すなわち、下偏心軸部分152Sの外周面は、下ピストン125Sに形成された孔の内周面に対向している。上偏心軸部分152Tは、下偏心軸部分152Sと主軸部分153との間に配置され、主軸部分153に隣接し、主軸部分153に一体に形成されている。上偏心軸部分152Tは、上ピストン125Tに形成された孔に嵌合され、すなわち、上偏心軸部分152Tの外周面は、上ピストン125Tに形成された孔の内周面に対向している。下偏心軸部分152Sと上偏心軸部分152Tとは、互いに約180度の位相差をつけて設けられている。
【0027】
中間軸部分154は、下偏心軸部分152Sと上偏心軸部分152Tとの間に配置され、下偏心軸部分152Sに隣接し、下偏心軸部分152Sに一体に形成され、上偏心軸部分152Tに隣接し、上偏心軸部分152Tに一体に形成されている。中間軸部分154は、中間仕切板140に囲まれ、中間軸部分154の外周面は、中間仕切板140に形成された孔の内周面に対向している。駆動軸15は、給油羽根158を備えている。駆動軸15には、下端から上端まで貫通する給油縦孔155が形成されている。給油羽根158は、給油縦孔155に圧入され、駆動軸15に固定されている。
【0028】
図4は、実施例のロータリ圧縮機の駆動軸15の一部を示す側面図である。駆動軸15には、上偏心軸部分縦溝41がさらに形成されている。上偏心軸部分縦溝41は、軸方向に平行である直線に沿うように、形成されている。上偏心軸部分縦溝41は、縦溝上端部分42と縦溝下端部分43と偏心縦溝部分44とから形成されている。縦溝上端部分42は、駆動軸15の主軸部分153の外周面に形成され、縦溝上端部分42には、上偏心軸部分縦溝41の上端が形成されている。縦溝上端部分42の一部は、主軸受部161Tに形成された孔の内周面に対向し、すなわち、駆動軸15の主軸部分153の外周面のうちの主軸受部161Tに形成された孔の内周面に対向する外周面部分に形成されている。
【0029】
縦溝下端部分43は、駆動軸15の中間軸部分154の外周面に形成され、縦溝下端部分43には、上偏心軸部分縦溝41の下端が形成されている。縦溝下端部分43の一部は、中間仕切板140に形成された孔の内周面に対向し、すなわち、駆動軸15の中間軸部分154の外周面のうちの中間仕切板140の内周面に対向する外周面部分に形成されている。偏心縦溝部分44は、縦溝上端部分42と縦溝下端部分43との間に形成されている。偏心縦溝部分44の上端は、縦溝上端部分42に接続され、偏心縦溝部分44の下端は、縦溝下端部分43に接続されている。偏心縦溝部分44は、駆動軸15の上偏心軸部分152Tの外周面に形成され、すなわち、上ピストン125Tの内周面に対向している。偏心縦溝部分44は、さらに、軸方向に垂直である平面と交差する断面の面積が軸方向における位置に対して変動しないように、形成されている。
【0030】
駆動軸15には、上偏心軸部分給油横孔45がさらに形成されている。
図5は、
図4のG-G’線断面を示し、実施例のロータリ圧縮機の駆動軸15を示す断面図である。上偏心軸部分給油横孔45は、駆動軸15の上偏心軸部分152Tの内部に形成され、直線46に沿うように形成されている。直線46は、軸方向に垂直であり、駆動軸15が回転する回転軸47に直交している。上偏心軸部分給油横孔45の一端は、給油縦孔155に接続され、上偏心軸部分給油横孔45の他端は、上偏心軸部分縦溝41の偏心縦溝部分44に接続されている。
偏心縦溝部分44の断面積Bは、軸方向に垂直である平面に偏心縦溝部分44が交差する断面の面積を示している。上偏心軸部分給油横孔45の断面積Aは、直線46に直交する平面に上偏心軸部分給油横孔45が交差する断面の面積に等しい。偏心縦溝部分44と上偏心軸部分給油横孔45とは、断面積Bを断面積Aで除算した比B/Aが次式を満たすように、形成されている。
0.4≦B/A≦1
【0031】
駆動軸15は、ロータリ圧縮機1が冷媒を圧縮するときに、回転軸47を中心に回転方向51に回転する。このとき、回転軸47を始点として上偏心軸最大偏心位置点52と交差する始線53から、回転軸47を始点として上偏心軸部分縦溝41と交差する動径まで、回転方向51に見た角度θは、180度より大きく、かつ、360度より小さい。上偏心軸最大偏心位置点52は、上偏心軸部分152Tの外周面のうちの回転軸47から最も離れた点を示している。すなわち、上偏心軸部分152Tの外周面を上偏心軸最大偏心位置点52から上偏心軸部分縦溝41まで回転方向51の反対方向に辿る反対方向経路の長さが、上偏心軸部分152Tの外周面を上偏心軸最大偏心位置点52から上偏心軸部分縦溝41まで回転方向51に辿る回転方向経路の長さより短い。言い換えれば、上偏心軸部分縦溝41は、角度θが-180度より大きく、かつ、0度より小さくなるように、形成されている。
【0032】
駆動軸15には、図示されていない下偏心軸部分縦溝と下偏心軸部分給油横孔とがさらに形成されている。下偏心軸部分縦溝は、上偏心軸部分縦溝41と同様に形成されている。すなわち、下偏心軸部分縦溝は、上偏心軸部分縦溝41と同様に、軸方向に平行である直線に沿うように、すなわち、回転軸47に平行である直線に沿うように、形成されている。下偏心軸部分縦溝の上端は、駆動軸15の中間軸部分154の外周面に形成されている。下偏心軸部分縦溝の下端は、駆動軸15の副軸部分151の外周面に形成され、副軸受部161Sに形成された孔の内周面に対向している。下偏心軸部分縦溝のうちの上端と下端とをつなげる偏心縦溝部分は、駆動軸15の下偏心軸部分152Sの外周面に形成されている。
【0033】
回転軸47を始点として下偏心軸最大偏心位置点と交差する始線から、回転軸47を始点として下偏心軸部分縦溝と交差する動径まで、回転軸47を中心に回転方向51に回転する角度θ’は、180度より大きく、かつ、360度より小さく、言い換えれば、-180度より大きく、かつ、0度より小さい。下偏心軸最大偏心位置点は、下偏心軸部分152Sの外周面のうちの回転軸47から最も離れた点を示している。すなわち、下偏心軸部分縦溝は、反対方向経路が回転方向経路より短くなるように、形成されている。ここで、反対方向経路は、下偏心軸部分152Sの外周面を下偏心軸最大偏心位置点から下偏心軸部分縦溝まで回転方向51の反対方向に辿る経路を示している。回転方向経路は、下偏心軸部分152Sの外周面を下偏心軸最大偏心位置点から下偏心軸部分縦溝まで回転方向51に辿る経路を示している。言い換えれば、下偏心軸部分縦溝は、角度θ’が-180度より大きく、かつ、0度より小さくなるように、形成されている。
【0034】
下偏心軸部分給油横孔は、上偏心軸部分給油横孔45と同様に、駆動軸15の下偏心軸部分152Sの内部に形成されている。下偏心軸部分給油横孔が沿う直線は、軸方向に垂直であり、回転軸47に直交している。下偏心軸部分給油横孔の一端は、給油縦孔155に接続され、下偏心軸部分給油横孔の他端は、下偏心軸部分縦溝の偏心縦溝部分に接続されている。
下偏心軸部分縦溝の偏心縦溝部分の断面積B’は、軸方向に垂直である平面に下偏心軸部分縦溝の中間縦溝部分が交差する断面の面積を示している。下偏心軸部分給油横孔の断面積A’は、下偏心軸部分給油横孔が沿う直線に直交する平面に下偏心軸部分給油横孔が交差する断面の面積に等しい。下偏心軸部分縦溝の中間縦溝部分と下偏心軸部分給油横孔とは、断面積B’を断面積A’で除算した比B’/A’が次式を満たすように、形成されている。
0.4≦B’/A’≦1
【0035】
[実施例のロータリ圧縮機1の動作]
以下に、駆動軸15の回転による冷媒の流れを説明する。上シリンダ室130T内において、駆動軸15の回転によって、駆動軸15の上偏心軸部分152Tに嵌合された上ピストン125Tが、上シリンダ121Tの内周面129Tに沿って公転することにより、上吸入室131Tが容積を拡大しながら上吸入管105から冷媒を吸入し、上圧縮室133Tが容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が上吐出弁200Tの外側の上端板カバー室180Tの圧力より高くなると、上吐出弁200Tが開いて上圧縮室133Tから上端板カバー室180Tへ冷媒が吐出される。上端板カバー室180Tに吐出された冷媒は、上端板カバー170Tに設けられた上端板カバー吐出孔172T(
図1参照)から圧縮機筐体10内に吐出される。
【0036】
また、下シリンダ室130S内において、駆動軸15の回転によって、駆動軸15の下偏心軸部分152Sに嵌合された下ピストン125Sが、下シリンダ121Sの内周面129Sに沿って公転することにより、下吸入室131Sが容積を拡大しながら下吸入管104から冷媒を吸入し、下圧縮室133Sが容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が下吐出弁200Sの外側の下端板カバー室180Sの圧力より高くなると、下吐出弁200Sが開いて下圧縮室133Sから下端板カバー室180Sへ冷媒が吐出される。下端板カバー室180Sに吐出された冷媒は、冷媒通路孔136及び上端板カバー室180Tを通って上端板カバー170Tに設けられた上端板カバー吐出孔172T(
図1参照)から圧縮機筐体10の内部に吐出される。
【0037】
圧縮機筐体10の内部に吐出された冷媒は、ステータ111の外周に設けられた上下を連通する切欠き(図示せず)、又はステータ111の巻線部の隙間(図示せず)、又はステータ111とロータ112との隙間115(
図1参照)を通ってモータ11の上方に導かれ、圧縮機筐体10の上部の吐出管107から吐出される。
【0038】
以下に、潤滑油18の流れを説明する。圧縮機筐体10に貯留された潤滑油18は、駆動軸15が回転するときに、給油羽根158により給油縦孔155に吸い上げられる。上偏心軸部分給油横孔45の内部の潤滑油18は、駆動軸15が回転するときに、遠心力が与えられ、上偏心軸部分縦溝41に向かって流れ、上偏心軸部分縦溝41に供給される。給油縦孔155の内部の潤滑油18は、上偏心軸部分給油横孔45の内部の潤滑油18が上偏心軸部分縦溝41に向かって流れることにより、上偏心軸部分給油横孔45に吸い込まれる。下偏心軸部分給油横孔の内部の潤滑油18は、駆動軸15が回転するときに、遠心力が与えられ、下偏心軸部分縦溝に向かって流れ、下偏心軸部分縦溝に供給される。給油縦孔155の内部の潤滑油18は、下偏心軸部分給油横孔の内部の潤滑油18が下偏心軸部分縦溝に向かって流れることにより、下偏心軸部分給油横孔に吸い込まれる。圧縮機筐体10に貯留された潤滑油18は、給油縦孔155から上偏心軸部分給油横孔45と下偏心軸部分給油横孔とに潤滑油18が吸い込まれることにより、さらに給油縦孔155に吸い上げられる。
【0039】
すなわち、圧縮機筐体10に貯留された潤滑油18は、駆動軸15が回転することにより、給油縦孔155と上偏心軸部分給油横孔45と下偏心軸部分給油横孔とを通って、上偏心軸部分縦溝41と下偏心軸部分縦溝とにそれぞれ供給される。上偏心軸部分縦溝41に供給された潤滑油18は、上偏心軸部分縦溝41の偏心縦溝部分44に供給され、偏心縦溝部分44を介して駆動軸15の上偏心軸部分152Tの外周面に供給される。上偏心軸部分152Tの外周面に供給された潤滑油18は、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間に働く摩擦力を低減し、上偏心軸部分152Tの摩耗と上ピストン125Tの摩耗とを低減する。
【0040】
上偏心軸部分縦溝41に供給された潤滑油18は、さらに、偏心縦溝部分44を介して縦溝上端部分42と縦溝下端部分43とに供給される。縦溝上端部分42に供給された潤滑油18は、主軸部分153の外周面に供給され、主軸部分153と主軸受部161Tとの間のクリアランスに供給される。ロータリ圧縮機1は、主軸部分153と主軸受部161Tとの間のクリアランスに潤滑油18が供給されることにより、主軸部分153と主軸受部161Tとの間に働く摩擦力を低減することができ、主軸部分153の摩耗と主軸受部161Tの摩耗とを低減することができる。縦溝下端部分43に供給された潤滑油18は、中間軸部分154の外周面に供給され、中間軸部分154と中間仕切板140との間のクリアランスに供給される。
【0041】
上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスの大きさは、上ピストン125Tが公転することにより、変動する。たとえば、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスのうちの幅が大きい部分と小さい部分とが生じる位置は、上ピストン125Tが公転することにより、変動する。上偏心軸部分縦溝41は、角度θが-180度より大きく0度より小さくなるように上偏心軸部分縦溝41が形成されていることにより、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスのうちの幅が大きい領域に接続される。上偏心軸部分縦溝41に供給された潤滑油18は、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスのうちの幅が比較的大きい領域に上偏心軸部分縦溝41が接続されることにより、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスに多く供給される。ロータリ圧縮機1は、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスに多くの潤滑油18が供給されることにより、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間に働く摩擦力をより低減し、上偏心軸部分152Tの摩耗と上ピストン125Tの摩耗とをより低減することができる。
【0042】
下偏心軸部分縦溝に供給された潤滑油18は、下偏心軸部分縦溝の偏心縦溝部分に供給され、偏心縦溝部分を介して駆動軸15の下偏心軸部分152Sの外周面に供給される。ロータリ圧縮機1は、下偏心軸部分152Sの外周面に潤滑油18が供給されることにより、下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間に働く摩擦力を低減することができ、下偏心軸部分152Sの摩耗と下ピストン125Sの摩耗とを低減することができる。
【0043】
下偏心軸部分縦溝に供給された潤滑油18は、さらに、下偏心軸部分縦溝の偏心縦溝部分を介して下偏心軸部分縦溝の上端と下端とに供給される。下偏心軸部分縦溝の上端に供給された潤滑油18は、中間軸部分154の外周面に供給され、中間軸部分154と中間仕切板140との間のクリアランスに供給される。下偏心軸部分縦溝の下端に供給された潤滑油18は、副軸部分151の外周面に供給され、副軸部分151と副軸受部161Sとの間のクリアランスに供給される。副軸部分151と副軸受部161Sとの間のクリアランスに供給された潤滑油18は、副軸部分151と副軸受部161Sとの間に働く摩擦力を低減し、副軸部分151の摩耗と副軸受部161Sの摩耗とを低減する。
【0044】
下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間のクリアランスの大きさは、下ピストン125Sが公転することにより、変動する。たとえば、下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間のクリアランスのうちの大きい部分と小さい部分とが生じる位置は、下ピストン125Sが公転することにより、変動する。下偏心軸部分縦溝は、角度θ’が-180度より大きく0度より小さくなるように下偏心軸部分縦溝が形成されていることにより、そのクリアランスのうちの幅が大きい領域に接続される。下偏心軸部分縦溝に供給された潤滑油18は、下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間のクリアランスのうちの幅が比較的大きい領域に下偏心軸部分縦溝が所定領域に接続されることにより、下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間のクリアランスに多く供給される。ロータリ圧縮機1は、下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間のクリアランスに多くの潤滑油18が供給されることにより、下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間に働く摩擦力をより低減し、下偏心軸部分152Sの摩耗と下ピストン125Sの摩耗とをより低減することができる。
【0045】
ロータリ圧縮機1の効果を確認するために、複数のロータリ圧縮機試作機が作製され、複数のロータリ圧縮機試作機の各々に評価試験が実行されている。表1は、複数のロータリ圧縮機試作機に対応する複数の作製条件と複数の効率とを示している。
【表1】
【0046】
複数のロータリ圧縮機試作機は、試作番号1のロータリ圧縮機と試作番号2のロータリ圧縮機と試作番号3のロータリ圧縮機と試作番号4のロータリ圧縮機と試作番号5のロータリ圧縮機とを含んでいる。複数の作製条件の各々は、断面積Aと断面積Bとを示している。複数のロータリ圧縮機試作機は、断面積Aと断面積Bとの比B/Aが互いに異なるように作製され、比B/Aが互いに異なること以外は互いに同様に作製されている。
【0047】
試作番号1のロータリ圧縮機試作機の断面積Aは、7.07mm2を示している。試作番号1のロータリ圧縮機試作機の断面積Bは、3.64mm2を示している。試作番号2のロータリ圧縮機試作機の断面積Aは、7.07mm2を示している。試作番号2のロータリ圧縮機試作機の断面積Bは、3.75mm2を示している。試作番号3のロータリ圧縮機試作機の断面積Aは、7.07mm2を示している。試作番号3のロータリ圧縮機試作機の断面積Bは、5.30mm2を示している。試作番号4のロータリ圧縮機試作機の断面積Aは、7.07mm2を示している。試作番号4のロータリ圧縮機試作機の断面積Bは、5.50mm2を示している。試作番号5のロータリ圧縮機試作機の断面積Aは、7.07mm2を示している。試作番号5のロータリ圧縮機試作機の断面積Bは、6.30mm2を示している。
【0048】
図6は、複数の比B/Aと複数の効率との関係を示すグラフである。複数の比B/Aは、複数のロータリ圧縮機試作機に対応している。複数の比B/Aのうちのあるロータリ圧縮機試作機に対応する比B/Aは、そのロータリ圧縮機試作機の断面積Bをそのロータリ圧縮機試作機の断面積Aで除算した値を示している。複数の効率は、複数のロータリ圧縮機試作機に対応し、同一の冷凍サイクル装置に複数のロータリ圧縮機試作機の各々が搭載されることにより、求められている。複数の効率のうちのあるロータリ圧縮機試作機に対応する効率は、そのロータリ圧縮機試作機が設けられた冷凍サイクル装置の能力(たとえば、COP)を、そのロータリ圧縮機試作機が消費する電力量で除算した値を示している。
【0049】
図6のグラフは、比B/Aが0.75以下であるときに、比B/Aが小さいほど効率が小さくなることを示し、上偏心軸部分給油横孔45の断面積Aに対して偏心縦溝部分44の断面積Bが小さいほどロータリ圧縮機1の効率が低下することを示している。すなわち、
図6のグラフは、比B/Aが0.75以下であるときに、比B/Aが小さいほど、駆動軸15が回転することに逆らう摩擦力が大きくなることを示し、主軸部分153と主軸受部161Tとの間のクリアランスに供給される潤滑油18の量が低減することを示している。
【0050】
図6のグラフは、さらに、比B/Aが0.75より大きいときに、比B/Aが大きいほど効率が小さくなることを示し、上偏心軸部分給油横孔45の断面積Aに対して偏心縦溝部分44の断面積Bが小さいほどロータリ圧縮機1の効率が低下することを示している。すなわち、
図6のグラフは、比B/Aが0.75より大きいときに、比B/Aが大きいほど、駆動軸15が回転することに逆らう摩擦力が大きくなることを示し、主軸部分153と主軸受部161Tとの間のクリアランスに供給される潤滑油18の量が増大した分、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスに供給される潤滑油18の量が低減することを示している。
【0051】
図6のグラフは、さらに、比B/Aが次式を満たすときに、ロータリ圧縮機1の効率が予め定められた値Eより大きくなることを示している。
0.4≦B/A≦1
図6のグラフは、さらに、比B/Aが上記式を満たさないときに、ロータリ圧縮機1の効率が値Eより小さくなる可能性があることを示している。すなわち、
図6のグラフは、比B/Aが予め定められた範囲に含まれるロータリ圧縮機1の効率が、比B/Aがその範囲外である他のロータリ圧縮機の効率に比較して、より良好であることを示している。
【0052】
[実施例のロータリ圧縮機1の効果]
実施例のロータリ圧縮機1は、圧縮機筐体10と、圧縮機筐体10の内部に配置される駆動軸15と、回転軸47を中心に駆動軸15を回転させるモータ11と、駆動軸15が回転することにより冷媒を圧縮する圧縮部12とを備えている。駆動軸15は、主軸部分153と、中間軸部分154と、主軸部分153と中間軸部分154との間に配置される上偏心軸部分152Tとを備えている。圧縮部12は、上シリンダ121Tと上ピストン125Tとを備えている。上ピストン125Tは、上偏心軸部分152Tに嵌合する孔が形成され、駆動軸15が回転することにより、上シリンダ121Tの内部に形成される上シリンダ室130Tの内部で公転する。駆動軸15には、偏心縦溝部分44と縦溝上端部分42と縦溝下端部分43と給油縦孔155と上偏心軸部分給油横孔45とが形成されている。偏心縦溝部分44は、上偏心軸部分152Tのうちの上ピストン125Tに形成された孔の内周面に対向する偏心部外周面に形成され、上偏心軸部分給油横孔45に接続されている。縦溝上端部分42は、主軸部分153の外周面に形成され、偏心縦溝部分44の一端に接続されている。縦溝下端部分43は、中間軸部分154の外周面に形成され、偏心縦溝部分44の他端に接続されている。給油縦孔155は、回転軸47に沿って形成されている。上偏心軸部分給油横孔45は、給油縦孔155と偏心縦溝部分44とを接続する。
【0053】
実施例のロータリ圧縮機1は、上偏心軸部分縦溝41の上端が主軸部分153の外周面に形成されていることにより、主軸部分153と主軸受部161Tとの間のクリアランスに潤滑油18を適切に供給することができる。このため、ロータリ圧縮機1は、駆動軸15と主軸受部161Tとの間に働く摩擦力を低減することができ、ロータリ圧縮機1の効率を向上させることができる。
【0054】
また、実施例のロータリ圧縮機1は、回転軸47に直交する平面に偏心縦溝部分44が交差する断面の面積(断面積B)を、上偏心軸部分給油横孔45が沿う直線に直交する平面に上偏心軸部分給油横孔45が交差する断面の面積(断面積A)により除算した比B/Aが、次式を満たしている。
0.4≦B/A≦1
実施例のロータリ圧縮機1は、比B/Aが特定の範囲に含まれるように作製されることにより、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスと、主軸部分153と主軸受部161Tとの間のクリアランスとに適切な量の潤滑油18を供給することができる。実施例のロータリ圧縮機1は、複数のクリアランスに適切な量の潤滑油18が供給されることにより、駆動軸15に働く摩擦力を適切に低減することができ、冷媒を圧縮する効率を向上させることができる。
【0055】
また、実施例のロータリ圧縮機1は、回転軸47を始点に上偏心軸最大偏心位置点52に交差する始線53から、回転軸47を始点に上偏心軸部分縦溝41に交差する動径まで、回転軸47を中心に回転方向51に回転する角度θは、-180度より大きく、かつ、0度より小さい。実施例のロータリ圧縮機1は、角度θが適切な値になるように作製されることにより、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスに多くの潤滑油18を供給することができる。実施例のロータリ圧縮機1は、多くの潤滑油18が上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間のクリアランスに供給されることにより、上偏心軸部分152Tと上ピストン125Tとの間の摩擦力を低減することができ、冷媒を圧縮する効率を向上させることができる。
【0056】
また、実施例のロータリ圧縮機1の駆動軸15は、副軸部分151と、中間軸部分154と副軸部分151との間に配置される下偏心軸部分152Sとをさらに備えている。圧縮部12は、下シリンダ121Sと下ピストン125Sとをさらに備えている。下ピストン125Sは、下偏心軸部分152Sに嵌合する孔が形成され、駆動軸15が回転することにより、下シリンダ121Sの内部に形成される下シリンダ室130Sの内部で公転する。駆動軸15には、下偏心部分縦溝の偏心縦溝部分と下偏心部分縦溝の縦溝上端部分と下偏心部分縦溝の縦溝下端部分と下偏心軸部分給油横孔とがさらに形成されている。下偏心部分縦溝の偏心縦溝部分は、下偏心軸部分152Sのうちの下ピストン125Sに形成された孔の内周面に対向する外周面に形成されている。下偏心部分縦溝の縦溝上端部分は、中間軸部分154の外周面に形成され、下偏心部分縦溝の偏心縦溝部分の一端に接続されている。下偏心部分縦溝の縦溝下端部分は、副軸部分151の外周面に形成され、下偏心部分縦溝の偏心縦溝部分の他端に接続されている。下偏心軸部分給油横孔は、給油縦孔155と下偏心部分縦溝の偏心縦溝部分とを接続する。
【0057】
実施例のロータリ圧縮機1は、下偏心部分縦溝の縦溝下端部分が副軸部分151の外周面に形成されていることにより、副軸部分151と副軸受部161Sとの間のクリアランスに潤滑油18を適切に供給することができる。このため、ロータリ圧縮機1は、駆動軸15と副軸受部161Sとの間に働く摩擦力を低減することができ、冷媒を圧縮する効率を向上させることができる。実施例のロータリ圧縮機1は、下偏心部分縦溝が上偏心軸部分縦溝41と同様に形成されることにより、冷媒を圧縮する効率をさらに向上させることができる。
【0058】
また、実施例のロータリ圧縮機1は、下偏心部分縦溝の断面積B’を下偏心軸部分給油横孔の断面積A’により除算した比B’/A’が、次式を満たしている。
0.4≦B’/A’≦1
実施例のロータリ圧縮機1は、比B’/A’が特定の範囲に含まれるように作製されることにより、下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間のクリアランスと、副軸部分151と副軸受部161Sとの間のクリアランスとに適切な量の潤滑油18を供給することができる。実施例のロータリ圧縮機1は、複数のクリアランスに適切な量の潤滑油18が供給されることにより、駆動軸15に働く摩擦力を適切に低減することができ、冷媒を圧縮する効率を向上させることができる。
【0059】
また、実施例のロータリ圧縮機1は、回転軸47を始点に下偏心軸最大偏心位置点に交差する始線から、回転軸47を始点に下偏心部分縦溝に交差する動径まで、回転軸47を中心に回転方向51に回転する角度θ’は、-180度より大きく、かつ、0度より小さい。実施例のロータリ圧縮機1は、角度θ’が適切な値になるように作製されることにより、下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間のクリアランスに多くの潤滑油18を供給することができる。実施例のロータリ圧縮機1は、多くの潤滑油18が下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間のクリアランスに供給されることにより、下偏心軸部分152Sと下ピストン125Sとの間の摩擦力を適切に低減することができ、冷媒を圧縮する効率を向上させることができる。
【0060】
ところで、既述の実施例のロータリ圧縮機1は、縦溝上端部分42の一部が主軸受部161Tの内周面に対向しているが、縦溝上端部分42が主軸受部161Tの内周面に対向していなくてもよい。また、既述の実施例のロータリ圧縮機1は、下偏心軸部分縦溝の下端が副軸受部161Sの内周面に対向しているが、下偏心軸部分縦溝の下端が副軸受部161Sの内周面に対向していなくてもよい。この場合でも、ロータリ圧縮機1は、主軸部分153と主軸受部161Tとの間、および、副軸部分151と副軸受部161Sとの間のクリアランスに潤滑油18を適切に供給することができる。このため、ロータリ圧縮機1は、主軸部分153と主軸受部161Tとの間、および、副軸部分151と副軸受部161Sとの間に働く摩擦力を低減することができ、冷媒を圧縮する効率を向上させることができる。
【0061】
ところで、既述の実施例のロータリ圧縮機1は、2シリンダ式ロータリ圧縮機に形成されているが、単シリンダ式ロータリ圧縮機に形成されてもよい。たとえば、圧縮部12は、下シリンダ121Sと下ピストン125Sと下ベーン127Sと中間仕切板140とが省略されている。駆動軸15は、下偏心軸部分152Sと中間軸部分154とが省略され、上偏心軸部分152Tが副軸部分151に隣接し、上偏心軸部分縦溝41の縦溝下端部分43が副軸部分151の外周面に形成されている。このようなロータリ圧縮機も、駆動軸15に働く摩擦力を低減することができ、冷媒を圧縮する効率を向上させることができる。
【0062】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。