(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173004
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】粉末焼結積層造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/321 20170101AFI20231130BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231130BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20231130BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20231130BHJP
【FI】
B29C64/321
B33Y30/00
B29C64/35
B29C64/153
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084934
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】594003274
【氏名又は名称】株式会社アフィット
(72)【発明者】
【氏名】海江田 省三
(72)【発明者】
【氏名】山岸 則夫
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL32
4F213WL34
4F213WL67
4F213WL74
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】 (修正有)
【課題】造形化している造形化物周辺に余分な粉末粒子が存在しないために、装置の小型化を実現できるだけでなく、粉末粒子の蓄熱や劣化という問題点が解消される粉末焼結積層造形装置を提供する。
【解決手段】別に作像系装置を設置し可撓性シート上に作製すべき3次元造形物の描画パターンに基づき形成した粉末材料を造形物製作用テーブルに各層毎に転写して粉末粒子の描画パターンを積み上げる。各層毎に転写した描画パターン上にレーザー照射を行なって、粉末材料を焼結化して行くことによって3次元物体を造形する粉末焼結積層造形装置を提供するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作製すべき3次元造形物の描画パターンに基づき焼結可能な粉末材料を連続して固化することによって3次元物体を造形する装置であって、
粉末材料を形成する可撓性シート状ベルトおよび前記ベルトの回転駆動装置と、
電荷を保持できる誘電性材料および前記材料を使い作製すべき3次元造形物の描画パターンを忠実に噴霧できるインクジェットヘッドおよび駆動装置と、
噴霧した塗膜の硬化を促進するランプと、
塗布硬化した膜上に静電荷を付与するための帯電器と、
前記描画パターン上に形成した静電荷像に、誘電もしくは摩擦帯電した粉末材料を静電吸着するための現像器および前記粉末材料と、
前記可撓性シート状ベルトに作製すべき3次元造形物の描画パターンに基づき形成した粉末材料を造形物製作用テーブルに、転写可能な粘着液および前記粘着液を塗布する装置と、
前記造形物製作用テーブル上に転写した粉末材料に照射して逐次焼結するためのレーザー照射装置を持つことを特徴とする粉末焼結積層造形装置。
【請求項2】
作製すべき3次元造形物の描画パターンに基づき焼結可能な粉末材料を連続して固化することによって3次元物体を造形する装置であって、
粉末材料を形成する可撓性シート状ベルトおよび前記ベルトの回転駆動装置と、
前記粘着液を使い、作製すべき3次元造形物の描画パターンを忠実に噴霧できるインクジェットヘッドおよび駆動装置と、
前記描画パターンとして塗布形成した粘着液に、粉末材料を付着するための現像器および前記粉末材料と、
前記可撓性シート状ベルトに作製すべき3次元造形物の描画パターンに基づき形成した粉末材料を造形物製作用テーブルに、転写可能な粘着液および前記粘着液を塗布する装置と、
前記造形物製作用テーブル上に転写した粉末材料に照射して逐次焼結するためのレーザー照射装置を持つことを特徴とする粉末焼結積層造形装置。
【請求項3】
請求項1および請求項2に記載の粉末焼結積層造形装置は、転写されなかった残存物を清掃するクリーニング装置を備えたこと特徴とする粉末焼結積層造形装置。
【請求項4】
請求項1および請求項2に記載の粉末焼結積層造形装置の可撓性シート状ベルトは、巻き出し機および巻き取り機を備えた有端シートであることを特徴とする粉末焼結積層造形装置。
【請求項5】
請求項1および請求項2に記載の粉末焼結積層造形装置は、可撓性シート状ベルトに作製すべき3次元造形物の描画パターンに基づき形成した粉末材料を造形物製作用テーブルに転写するための作像系を、少なくとも2つ以上を備えたこと特徴とする粉末焼結積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末焼結積層造形装置に関し、造形用テーブル上に複数の焼結薄層を積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能試験用試作部品や少量多品種の製品に使用される部品等を造形することができる造形装置が極一般的となってきた。この要求を満たすものとして、光造形装置や粉末焼結積層造形装置などがある。なかでも粉末焼結積層造形装置は、紫外線硬化性樹脂を使用した造形装置( 一般に「光造形装置」と呼ぶ)と異なり、多種類かつ強靭な材料が使用できることが大きな特徴の一つであり、近年市場での認知度も向上し、さまざまな用途で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO-A2-88/002677
【特許文献2】WO-A-92/008566等が基本的な特許として出願されている。
【0004】
【特許文献3】特開2007-030303によると、
図5のような装置が従来市販されている粉末焼結積層造形装置であると報告されている。
【0005】
レーザー光出射部101Aと、造形部101Bと、制御装置101Cとから
構成されている。レーザー光出射部101Aにおいては、レーザー光の光源1とレーザー光の照射方向を制御するミラー2とが設けられている。
【0006】
造形部101Bにおいては、中央部に設置され、レーザー光の照射により造形が行われて3次元造形物が作製される造形用容器3と、その両側に設置されて粉末材料を貯めておく粉末材料容器4a、4bとを備えている。また、造形用容器3内には造形用容器3内壁に沿って昇降するパートシリンダ5が設置され、粉末材料容器4a、4b内には粉末材料容器4a、4b内壁に沿って昇降するフィードシリンダ6a、6bが設置されている。
【0007】
制御装置101Cは、パートシリンダ5を薄層一層分降下させ、フィードシリンダ6 bを上昇させて、リコーターローラー7によってパートシリンダ5上に粉末材料8を供給させ、かつパートシリンダ5上で粉末材料の薄層8aを形成させ、次いで、レーザー光及び制御ミラー2によって作製すべき3次元造形物のスライスデータ(以下「描画パターン」)に基づき粉末材料の薄層8aを選択的に加熱して焼結させ、これらの動作を繰り返させる。このようにして3次元造形物を形成させ、最後に、3次元造形物を冷却手段によって冷却させる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記の従来例の問題点を根本的に見直して創作されたものであり、造形の大型、小型に関係なく、造形に必要な量の粉末を適切に供給し積層化するために、小スペースに繋がるだけでなく、加熱によるダメージを受ける心配が全くない粉末焼結積層造形装置を提供するものである。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、造形時の粉末材料の省スペース化、粉末材料の冷却の不要化、熱による粉末材料の劣化を防ぐことを目的とした装置を提供することにある。
【0010】
従来の粉末焼結積層造形装置は、造形に必要なサイズをすべてカバーできる直方体のスペースだけでなく、新たな造形層に速やかに粉末を供給するために粉末を確保するスペースが造形スペースを挟む所に2か所必要である。
【0011】
従来の粉末焼結積層造形装置は大量の粉末を蓄えているため、粉末材料の焼結ためのレーザー照射で、蓄えられた粉末に熱が籠ってしまうために、粉末材料の冷却装置が必要となる。
【0012】
粉末材料によっては、溜まった熱に長時間曝されるとどうしても劣化してしまうものがある。
【0013】
従来の粉末焼結積層造形装置は大量の粉末を蓄えているため、装置内の粉末材料を入れ替える時には非常に多くに時間を必要する等、造形物をより早く作るために全体の処理時間の短縮や各プロセスの高速化が望まれる。
【0014】
従来の粉末焼結積層造形装置は大量の粉末材料を背後に存在させた状態でレーザー照射による粉末材料の焼結を行うので、使用する粉末材料の種類によっては粉塵爆発を引き起こす危険性があるものがある。その場合粉塵爆発を回避するために装置内に窒素ガスを導入するので、装置の大型化は避けられない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、造形に必要な量の粉末だけを適切に供給し積層化するために、造形物上で逐次粉末材料の積層化をするのではなく、別に作像系装置を設置し可撓性シート上に作製すべき3次元造形物の描画パターンに基づき形成した粉末材料を造形物製作用テーブルに各層毎に転写して粉末粒子の描画パターンを積み上げる。各層毎に転写した描画パターン上にレーザー照射を行なって、粉末材料を焼結化して行くことによって3次元物体を造形する粉末焼結積層造形装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粉末焼結積層造形装置によれば、造形化している造形化物周辺に余分な粉末粒子が存在しないために、装置の小型化を実現できるだけでなく、粉末粒子の蓄熱や劣化という問題点が解消される。
【0017】
本発明の粉末焼結積層造形装置によれば、造形化している造形化物周辺に余分な粉末粒子が存在しないために、装置内の粉末材料の入れ替は極めて簡単に行うことができる。
【0018】
本発明の粉末焼結積層造形装置によれば、造形化している造形化物周辺に余分な粉末粒子が存在しないために、粉塵爆発の危険性のある粉末材料であっても窒素ガスの配備をしなくてよいか、あるいは限定的な場所のみで済む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例の粉末焼結積層造形装置を示す図である。作製すべき3次元造形物の描画パターンに基づき形成した静電荷像に粉末材料を付着させて作像するタイプである。
【
図2】本発明の一実施例の粉末焼結積層造形装置を示す図である。作製すべき3次元造形物の描画パターンに基づき形成した粘着液像に粉末材料を付着させて作像するタイプである。
【
図3】本発明の一実施例の粉末焼結積層造形装置を示す図である。有端ベルト上で作像するタイプである。
【
図4】本発明の一実施例の粉末焼結積層造形装置を示す図である。作像系が複数あるタイプである。少なくとも複数の粉末材料を使うことができる。
【
図5】従来市販されている粉末焼結積層造形装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施例の粉末焼結積層造形装置を示す図である。
可撓性シート状ベルト2は、アルミや銅等の金属箔単層シート状ベルト、カーボン粒子や金属粉等の導電性粒子を含んだ導電性樹脂の単層シート状ベルトあるいは表面に導電層を持つ積層シート状ベルト等からなる。
前記可撓性シート状ベルト2は、接地する。
前記可撓性シート状ベルト2は、回転駆動装置を配備する。
前記可撓性シート状ベルト2上に、作製すべき3次元造形物の描画パターンを忠実に噴霧できるインクジェット装置3で誘電性材料からなるインク4を塗布する。
噴霧塗布したインク4は、ランプ5の光で硬化が促進できるようにする。
帯電器6で、前記噴霧塗布硬化したインク4に静電荷を付与する。
前記静電荷に対応して、誘電あるいは摩擦帯電で荷電した粉末材料8a を現像器7で静電吸着させる。
静電吸着した粉末材料8b を得る。
ここで粉末材料とは、金属や金属合金の粉末、樹脂系の粉末等で、レーザー光で容易に溶融する物質なら使用することができる。
予め造形物製作用テーブル12に、塗布装置10で転写可能な粘着液9を塗布する。
前記可撓性シート状ベルト2と造形物製作用テーブル12を同期移動させながら、粉末材料8を造形物製作用テーブル12側に転写する。
粘着液9とは、バインダーとしての樹脂系固形成分を含んだ水系や有機系の分散溶液である。
前記造形物製作用テーブル12上に転写した粉末材料8にレーザー光照射装置1でレーザー光を照射して、粉末材料を焼結する。
焼結した粉末材料8c を得る。
粘着液9中の樹脂系固形成分が転写後造形物10側に存在しても、レーザー光照射時の高熱で炭化してしまう。
この一連の工程を連続して行い、造形物11を得る。
転写工程で可撓性シート状ベルト2上の転写されなかった残存物13は、清掃装置14でクリーニングをすると、繰り返して最初の工程へ繋げることができる。
【0022】
図2は、本発明の一実施例の粉末焼結積層造形装置を示す図である。
可撓性シート状ベルト2は、アルミや銅等の金属箔単層シート状ベルト、カーボン粒子や金属粉等の導電性粒子を含んだ導電性樹脂の単層シート状ベルトあるいは表面に導電層を持つ積層シート状ベルト等からなる。
前記可撓性シート状ベルト2は、接地する。
前記可撓性シート状ベルト2は、回転駆動装置を配備する。
前記可撓性シート状ベルト2上に、作製すべき3次元造形物の描画パターンを忠実に噴霧できるインクジェット装置3で粘着液9からなるインク4を塗布する。
前記粘着液9のパターンに対応して、粉末材料8を現像器7で付着させる。
付着した粉末材料8を得る。
ここで粉末材料とは、金属や金属合金の粉末、樹脂系の粉末等で、レーザー光で容易に溶融する物質なら使用することができる。
予め造形物製作用テーブル12に、塗布装置10で転写可能な粘着液9を塗布する。
前記可撓性シート状ベルト2と造形物製作用テーブル12を同期移動させながら、粉末材料8を造形物製作用テーブル12側に転写する。
粘着液9とは、バインダーとしての樹脂系固形成分を含んだ水系や有機系の分散溶液である。
前記造形物製作用テーブル12上に転写した粉末材料8にレーザー光照射装置1でレーザー光を照射して、粉末材料を焼結する。
焼結した粉末材料8c を得る。
粘着液9中の樹脂系固形成分が転写後造形物10側に存在しても、レーザー光照射時の高熱で炭化してしまう。
この一連の工程を連続して行い、造形物11を得る。
転写工程で可撓性シート状ベルト2上の転写されなかった残存物13は、清掃装置14でクリーニングをすると、繰り返して最初の工程へ繋げることができる。
【0023】
図3は、本発明の一実施例の粉末焼結積層造形装置を示す図である。
可撓性シート状ベルト2は、アルミや銅等の金属箔単層シート状ベルト、カーボン粒子や金属粉等の導電性粒子を含んだ導電性樹脂の単層シート状ベルトあるいは表面に導電層を持つ積層シート状ベルト等からなる。
前記可撓性シート状ベルト2は、接地する。
前記可撓性シート状ベルト2は、回転駆動装置を配備する。
前記粉末焼結積層造形装置の可撓性シート状ベルトは、有端シートであるため巻き出し機および巻き取り機を備えている。
前記可撓性シート状ベルト2上に、作製すべき3次元造形物の描画パターンを忠実に噴霧できるインクジェット装置3で誘電性材料からなるインク4を塗布する。
噴霧塗布したインク4は、ランプ5の光で硬化が促進できるようにする。
帯電器6で、前記噴霧塗布硬化したインク4に静電荷を付与する。
前記静電荷に対応して、誘電あるいは摩擦帯電で荷電した粉末材料8a を現像器7で静電吸着させる。
静電吸着した粉末材料8b を得る。
ここで粉末材料とは、金属や金属合金の粉末、樹脂系の粉末等で、レーザー光で容易に溶融する物質なら使用することができる。
予め造形物製作用テーブル12に、塗布装置10で転写可能な粘着液9を塗布する。
前記可撓性シート状ベルト2と造形物製作用テーブル12を同期移動させながら、粉末材料8を造形物製作用テーブル12側に転写する。
粘着液9とは、バインダーとしての樹脂系固形成分を含んだ水系や有機系の分散溶液である。
前記造形物製作用テーブル12上に転写した粉末材料8にレーザー光照射装置1でレーザー光を照射して、粉末材料を焼結する。
焼結した粉末材料8c を得る。
粘着液9中の樹脂系固形成分が転写後造形物10側に存在しても、レーザー光照射時の高熱で炭化してしまう。
この一連の工程を連続して行い、造形物11を得る。
【0024】
図4は、本発明の一実施例の粉末焼結積層造形装置を示す図である。
図1、
図2図あるいは
図3において可撓性シート状ベルト2の上で、インクジェット装置でのインク塗布から転写までの製作を行なう作像系は1つである。
造形物11は、2つ以上の粉末材料8を使って製作することができる。
この場合は、インクジェット装置でのインク塗布から転写までの製作を行なう作像系を複数個用意し転写工程で機械的に入れ替えることで達成できる。
使用する粉末材料8は、すべて同じ材料であってもかまわないし、一部ないしは全部異なる材料であってもかまわない。
【符号の説明】
【0025】
1 レーザー光照射装置
2 可撓性シート状ベルト
3 インクジェットヘッド
4 インク
5 ランプ
6 帯電器
7 現像器
8 粉末材料
8a 現像前の粉末材料
8b 静電吸着した粉末材料
8c 焼結した粉末材料
9 転写のための粘着液
10 塗布装置
11 造形物
12 造形物製作用テーブル
13 転写されなかった残存物
14 清掃装置
15 スプレー塗布装置
16 有端シート