(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017317
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】車載装置、異常検知方法および異常検知プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121511
(22)【出願日】2021-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】河野 智哉
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA08
5K033BA06
5K033DA01
5K033DB20
5K033EA02
(57)【要約】
【課題】センサの計測結果に基づく異常検知における誤検知の発生を抑制する。
【解決手段】車載装置は、車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信する受信部と、前記受信部により受信された前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う遅延処理部と、前記遅延処理部による前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する検知部とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
前記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う遅延処理部と、
前記遅延処理部による前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する検知部とを備える、車載装置。
【請求項2】
前記遅延処理部は、前記伝送路の負荷量に基づいて、前記遅延処理における遅延量を調整する、請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記遅延処理部は、前記内部出力シーケンスが前記受信部による前記複数の変化情報の受信シーケンスとは相違するように、前記変化情報に遅延を与える、請求項1または請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記遅延処理部は、前記伝送路の負荷量に応じた遅延を、他の前記伝送路を介して前記受信部により受信された前記変化情報に与える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記遅延処理部は、複数の前記伝送路の負荷量の計測結果に基づいて、前記遅延処理における遅延量を調整する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項6】
前記車載装置は、さらに、
負荷量が所定条件を満たした前記伝送路と、遅延を与えるべき前記変化情報との対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部を備え、
前記遅延処理部は、前記対応情報に基づいて前記遅延処理を行う、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項7】
前記車載装置は、さらに、
前記検知部の検知対象の異常の種類と、前記複数のセンサによる前記複数の変化情報の外部送信シーケンスとの対応関係を示す異常種類情報を記憶する記憶部を備え、
前記検知部は、前記異常種類情報および前記内部出力シーケンスに基づいて、複数種類の異常を検知する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項8】
車両に搭載される車載装置における異常検知方法であって、
前記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信するステップと、
受信した前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行うステップと、
前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知するステップとを含む、異常検知方法。
【請求項9】
車両に搭載される車載装置における異常検知プログラムであって、
コンピュータを、
前記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う遅延処理部と、
前記遅延処理部による前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する検知部、
として機能させるための、異常検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、異常検知方法および異常検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載システムの異常を検出する技術が提案されている。たとえば、特許文献1(特開2012-190408公報)には、以下のような異常診断装置が開示されている。すなわち、異常診断装置は、複数のサブシステムによって階層構造をなすシステムの異常診断を行う異常診断装置であって、前記システム及び前記サブシステムごとに、正常動作モデルを記憶する正常動作モデル蓄積部と、前記システム及び前記サブシステムごとに、実動時動作データを抽出する実動時動作抽出部と、前記システム及び前記サブシステムごとに、前記正常動作モデルに前記実動時動作データが含まれている場合には「正常」、含まれていない場合には「異常の可能性有」とする局所判定を行う正常動作モデル比較部と、前記システムに係る前記局所判定が「異常の可能性有」であり、かつ、前記階層構造の最下位層の前記サブシステムから遡って前記階層構造の最上位層の前記サブシステムに到達するまでの遡及経路に含まれる全ての前記局所判定が「異常の可能性有」である場合には、「異常の可能性大」とする総合判定を行い、最下位層の前記サブシステムを異常箇所として同定する総合判定部とを具備する。
【0003】
また、車両の盗難防止等を目的として、センサの計測結果に基づいて、たとえば正規のユーザ以外の人間により車両のドアが強制的に開けられたこと等を異常として検知し、アラートを発報する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の異常検知技術では、車載ネットワークの状況によっては、センサの計測結果に基づく異常検知において誤検知が発生する場合がある。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、センサの計測結果に基づく異常検知における誤検知の発生を抑制することが可能な車載装置、異常検知方法および異常検知プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、前記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信する受信部と、前記受信部により受信された前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う遅延処理部と、前記遅延処理部による前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する検知部とを備える。
【0008】
本開示の異常検知方法は、車両に搭載される車載装置における異常検知方法であって、前記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信するステップと、受信した前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行うステップと、前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知するステップとを含む。
【0009】
本開示の異常検知プログラムは、車両に搭載される車載装置における異常検知プログラムであって、コンピュータを、記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信する受信部と、前記受信部により受信された前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う遅延処理部と、前記遅延処理部による前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する検知部、として機能させるためのプログラムである。
【0010】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載装置として実現され得るだけでなく、車載装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、車載装置を含む車載通信システムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、センサの計測結果に基づく異常検知における誤検知の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるセンサにより送信されるセンサデータの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるセンサにより送信されるセンサデータの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるセンサにより送信されるセンサデータの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る統合ECUの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る統合ECUにおける記憶部が記憶している遅延量テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る統合ECUにおける記憶部が記憶している対応テーブルの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る統合ECUにおける遅延処理部による遅延処理の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係る統合ECUにおける記憶部が記憶している異常種類テーブルの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る統合ECUが異常を検知する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施の形態に係る車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、前記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信する受信部と、前記受信部により受信された前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う遅延処理部と、前記遅延処理部による前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する検知部とを備える。
【0015】
このように、受信した複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行い、複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する構成により、たとえば変化情報の伝送遅延の影響が低減された、センサにおける変化情報の外部送信シーケンスにより近い内容の内部出力シーケンスに基づいて、異常が発生したか否かを判断することができるので、変化情報の伝送遅延の影響による誤検知を抑制することができる。したがって、センサの計測結果に基づく異常検知における誤検知の発生を抑制することができる。
【0016】
(2)前記遅延処理部は、前記伝送路の負荷量に基づいて、前記遅延処理における遅延量を調整する構成であってもよい。
【0017】
このような構成により、遅延処理における遅延量を、変化情報の伝送遅延に応じた値に設定することができるので、遅延量を所定値に設定する構成と比べて、センサにおける変化情報の外部送信シーケンスにより近い内容の内部出力シーケンスに基づいて、異常が発生したか否かをより正確に判断することができる。
【0018】
(3)前記遅延処理部は、前記内部出力シーケンスが前記受信部による前記複数の変化情報の受信シーケンスとは相違するように、前記変化情報に遅延を与える構成であってもよい。
【0019】
このような構成により、たとえば、変化情報の伝送遅延の影響による受信シーケンスの逆転が解消された内部出力シーケンスに基づいて、異常が発生したか否かをより正確に判断することができる。
【0020】
(4)前記遅延処理部は、前記伝送路の負荷量に応じた遅延を、他の前記伝送路を介して前記受信部により受信された前記変化情報に与える構成であってもよい。
【0021】
このような構成により、変化情報の伝送遅延に応じた遅延を他の変化情報に与えることにより当該伝送遅延が相殺された内部出力シーケンスに基づいて、異常が発生したか否かを判断することができる。
【0022】
(5)前記遅延処理部は、複数の前記伝送路の負荷量の計測結果に基づいて、前記遅延処理における遅延量を調整する構成であってもよい。
【0023】
このような構成により、遅延処理において、複数の変化情報の伝送遅延を総合的に考慮して遅延を設定し、変化情報に与えることができる。
【0024】
(6)前記車載装置は、さらに、負荷量が所定条件を満たした前記伝送路と、遅延を与えるべき前記変化情報との対応関係を示す対応情報を記憶する記憶部を備え、前記遅延処理部は、前記対応情報に基づいて前記遅延処理を行う構成であってもよい。
【0025】
このような構成により、伝送路と遅延を与えるべき変化情報との所定の対応関係に基づいて、遅延処理における遅延量を簡単に設定することができる。
【0026】
(7)前記車載装置は、さらに、前記検知部の検知対象の異常の種類と、前記複数のセンサによる前記複数の変化情報の外部送信シーケンスとの対応関係を示す異常種類情報を記憶する記憶部を備え、前記検知部は、前記異常種類情報および前記内部出力シーケンスに基づいて、複数種類の異常を検知する構成であってもよい。
【0027】
このような構成により、内部出力シーケンスに基づいて、多様な種類の異常を検知することができる。
【0028】
(8)本開示の実施の形態に係る異常検知方法は、車両に搭載される車載装置における異常検知方法であって、前記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信するステップと、受信した前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行うステップと、前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知するステップとを含む。
【0029】
このように、受信した複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行い、複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する方法により、たとえば変化情報の伝送遅延の影響が低減された、センサにおける変化情報の外部送信シーケンスにより近い内容の内部出力シーケンスに基づいて、異常が発生したか否かを判断することができるので、変化情報の伝送遅延の影響による誤検知を抑制することができる。したがって、センサの計測結果に基づく異常検知における誤検知の発生を抑制することができる。
【0030】
(9)本開示の実施の形態に係る異常検知プログラムは、車両に搭載される車載装置における異常検知プログラムであって、コンピュータを、記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信する受信部と、前記受信部により受信された前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う遅延処理部と、前記遅延処理部による前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する検知部、として機能させるためのプログラムである。
【0031】
このように、受信した複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行い、複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する構成により、たとえば変化情報の伝送遅延の影響が低減された、センサにおける変化情報の外部送信シーケンスにより近い内容の内部出力シーケンスに基づいて、異常が発生したか否かを判断することができるので、変化情報の伝送遅延の影響による誤検知を抑制することができる。したがって、センサの計測結果に基づく異常検知における誤検知の発生を抑制することができる。
【0032】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0033】
[構成および基本動作]
<車載通信システム>
図1は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
図1を参照して、車載通信システム301は、統合ECU(Electronic Control Unit)101と、個別ECU201と、センサ51A,51B,51Cとを備える。車載通信システム301は、車両1に搭載される。以下、センサ51A,51B,51Cの各々をセンサ51とも称する。統合ECU101、個別ECU201およびセンサ51は、車載装置の一例である。
【0034】
センサ51Aは、ケーブル5Aを介して個別ECU201と接続される。センサ51Bは、ケーブル5Bを介して個別ECU201と接続される。センサ51Cは、ケーブル5Cを介して統合ECU101と接続される。個別ECU201は、ケーブル3を介して統合ECU101と接続される。以下、ケーブル5A,5B,5Cの各々をケーブル5とも称する。
【0035】
なお、車載通信システム301は、2つまたは4つ以上のセンサ51を備える構成であってもよい。また、車載通信システム301は、2つ以上の統合ECU101を備える構成であってもよい。また、車載通信システム301は、2つ以上の個別ECU201を備える構成であってもよい。車載通信システム301が2つ以上の個別ECU201を備える場合、統合ECU101および複数の個別ECU201のネットワークトポロジは、バス型であってもよいし、統合ECU101を中心とするスター型であってもよい。
【0036】
ケーブル3,5は、たとえば、CAN(Controller Area Network)(登録商標)、FlexRay(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport)(登録商標)、イーサネット(登録商標)、およびLIN(Local Interconnect Network)等の規格に従う伝送線である。なお、ケーブル3,5は、たとえばアナログ信号を伝送可能な信号線であってもよい。
【0037】
センサ51A,51Bは、計測結果を示すセンサデータをCAN、イーサネットまたはLINの規格に従うフレームに格納して個別ECU201へ送信する。センサ51Cは、計測結果を示すセンサデータをCAN、イーサネットまたはLINの規格に従うフレームに格納して統合ECU101へ送信する。
【0038】
(センサデータSA)
たとえば、センサ51Aは、人が車両1の車体に触れたことを検知する指紋センサである。センサ51Aは、たとえば車両1が駐車中の期間において定期的に計測を行い、人が車両1の車体に触れているか否かを示すセンサデータSAを生成し、生成したセンサデータSAをフレームに格納して個別ECU201へ送信する。
【0039】
図2は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるセンサにより送信されるセンサデータの一例を示す図である。
図2は、センサ51Aにより送信されるセンサデータSAのタイミングチャートを示している。
図2において、横軸は時間である。
【0040】
図2を参照して、センサ51Aは、人が車両1の車体に触れていない場合、値が「ゼロ」であるセンサデータSAをフレームに格納して個別ECU201へ送信し、人が車両1の車体に触れている場合、値が「1」であるセンサデータSAをフレームに格納して個別ECU201へ送信する。
【0041】
センサデータSAの値は、たとえば時刻ta1において人が車両1の車体に触れた場合、「ゼロ」から「1」へ遷移する。センサ51Aにより定期的に送信されるセンサデータSAのうちの、値が「ゼロ」から「1」へ遷移したタイミングのセンサデータSAを「センサデータSAV」とも称する。
【0042】
(センサデータSB)
たとえば、センサ51Bは、車両1の振動を検知する振動センサである。センサ51Bは、たとえば車両1が駐車中の期間において定期的に計測を行い、車両1の振動の大きさを示すセンサデータSBを生成し、生成したセンサデータSBをフレームに格納して個別ECU201へ送信する。
【0043】
図3は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるセンサにより送信されるセンサデータの一例を示す図である。
図3は、センサ51Bにより送信されるセンサデータSBのタイミングチャートを示している。
図3において、横軸は時間である。
【0044】
図3を参照して、センサ51Bは、車両1の振動の大きさが所定値未満である場合、値が「ゼロ」であるセンサデータSBをフレームに格納して個別ECU201へ送信し、車両1の振動の大きさが所定値以上である場合、値が「1」であるセンサデータSBをフレームに格納して個別ECU201へ送信する。
【0045】
センサデータSBの値は、たとえば時刻tb1において車両1の振動の大きさが所定値以上となった場合、「ゼロ」から「1」へ遷移する。センサ51Bにより定期的に送信されるセンサデータSBのうちの、値が「ゼロ」から「1」へ遷移したタイミングのセンサデータSBを「センサデータSBV」とも称する。
【0046】
(センサデータSC)
たとえば、センサ51Cは、車両1のドアが開いたことを検知するドアノブセンサである。センサ51Cは、たとえば車両1が駐車中の期間において定期的に計測を行い、車両1のドアが開いているか否かを示すセンサデータSCを生成し、生成したセンサデータSCをフレームに格納して個別ECU201へ送信する。
【0047】
図4は、本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおけるセンサにより送信されるセンサデータの一例を示す図である。
図4は、センサ51Cにより送信されるセンサデータSCのタイミングチャートを示している。
図4において、横軸は時間である。
【0048】
図4を参照して、センサ51Cは、車両1のドアが閉まっている場合、値が「ゼロ」であるセンサデータSCをフレームに格納して統合ECU101へ送信し、車両1のドアが開いている場合、値が「1」であるセンサデータSCをフレームに格納して統合ECU101へ送信する。
【0049】
センサデータSCの値は、たとえば時刻tc1において車両1のドアが開けられた場合、「ゼロ」から「1」へ遷移する。センサ51Cにより定期的に送信されるセンサデータSCのうちの、値が「ゼロ」から「1」へ遷移したタイミングのセンサデータSCを「センサデータSCV」とも称する。
【0050】
なお、センサ51A,51Bは、計測結果を示すアナログ信号を個別ECU201へ送信する構成であってもよい。また、センサ51Cは、計測結果を示すアナログ信号を統合ECU101へ送信する構成であってもよい。
【0051】
個別ECU201は、センサ51A,51Bから受信したフレームを統合ECU101へ中継する。なお、個別ECU201は、センサ51Aから受信したフレームからセンサデータSAを取得し、取得したセンサデータSAを加工し、加工後のセンサデータSAをフレームに格納して統合ECU101へ送信する構成であってもよい。また、個別ECU201は、センサ51Bから受信したフレームからセンサデータSBを取得し、取得したセンサデータSBを加工し、加工後のセンサデータSBをフレームに格納して統合ECU101へ送信する構成であってもよい。
【0052】
たとえば、統合ECU101は、個別ECU201に接続された図示しないアクチュエータを制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報が格納されたフレームを個別ECU201へ送信する。個別ECU201は、統合ECU101から制御情報を受信し、受信した制御情報に基づいて、当該アクチュエータを駆動する。このように、車載通信システム301は、統合ECU101が、個別ECU201によるアクチュエータの駆動を制御するネットワーク構成である。このようなネットワーク構成では、統合ECU101のファームウェアを更新する等の簡易な方法により車載通信システム301に新たな機能を追加することができるため、車載通信システム301への機能追加のニーズに柔軟に対応することができる。
【0053】
<統合ECU>
図5は、本開示の実施の形態に係る統合ECUの構成を示す図である。
図5を参照して、統合ECU101は、通信ポート11A,11Bと、受信部12と、遅延処理部13と、検知部14と、報知部15と、記憶部16とを備える。
【0054】
受信部12、遅延処理部13、検知部14および報知部15は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって実現される。記憶部16は、たとえば不揮発性メモリである。なお、報知部15および記憶部16の少なくともいずれか一方が、統合ECU101の外部に設けられてもよい。
【0055】
通信ポート11A,11Bは、ケーブルを接続可能な端子である。通信ポート11Aには、ケーブル3を介して個別ECU201が接続されている。通信ポート11Bには、ケーブル5Cを介してセンサ51Cが接続されている。
【0056】
(センサデータの受信)
受信部12は、複数のセンサ51の計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、ケーブル3,5を介して受信する。
【0057】
より詳細には、受信部12は、センサ51Aから定期的に送信されるフレームを、ケーブル5A、個別ECU201、ケーブル3および通信ポート11A経由で受信し、受信したフレームからセンサデータSAを取得する。受信部12は、取得したセンサデータSAの値を確認し、取得したセンサデータSAがセンサデータSAVであるか否かを判断する。具体的には、受信部12は、取得したセンサデータSAのうちの、値が「1」であり、かつ直前に受信したフレームから取得したセンサデータSAの値が「ゼロ」であるセンサデータSAをセンサデータSAVとして検知する。受信部12は、検知したセンサデータSAVを遅延処理部13へ出力する。
【0058】
また、受信部12は、センサ51Bから定期的に送信されるフレームを、ケーブル5B、個別ECU201、ケーブル3および通信ポート11A経由で受信し、受信したフレームからセンサデータSBを取得する。受信部12は、取得したセンサデータSBの値を確認し、取得したセンサデータSBがセンサデータSBVであるか否かを判断する。具体的には、受信部12は、取得したセンサデータSBのうちの、値が「1」であり、かつ直前に受信したフレームから取得したセンサデータSBの値が「ゼロ」であるセンサデータSBをセンサデータSBVとして検知する。受信部12は、検知したセンサデータSBVを遅延処理部13へ出力する。
【0059】
また、受信部12は、センサ51Cから定期的に送信されるフレームを、ケーブル5Cおよび通信ポート11B経由で受信し、受信したフレームからセンサデータSCを取得する。受信部12は、取得したセンサデータSCの値を確認し、取得したセンサデータSCがセンサデータSCVであるか否かを判断する。具体的には、受信部12は、取得したセンサデータSCのうちの、値が「1」であり、かつ直前に受信したフレームから取得したセンサデータSCの値が「ゼロ」であるセンサデータSCをセンサデータSCVとして検知する。受信部12は、検知したセンサデータSCVを遅延処理部13へ出力する。
【0060】
センサデータSAV,SBV,SCVは、変化情報の一例である。以下、センサデータSAV,SBV,SCVの各々を「センサデータSV」とも称する。
【0061】
たとえば、受信部12は、センサデータSAVを検知した場合、ケーブル5Aおよびケーブル3からなる伝送路TLAの負荷量を計測する。一例として、受信部12は、センサデータSAが格納されたフレームの受信頻度faをモニタしている。受信部12は、センサデータSAVを検知すると、予め定められた計算式および受信頻度faに基づいて、百分率により表される伝送路TLAの負荷量を算出し、算出した負荷量を示す負荷情報Laを遅延処理部13へ出力する。
【0062】
また、たとえば、受信部12は、センサデータSBVを検知した場合、ケーブル5Bおよびケーブル3からなる伝送路TLBの負荷量を計測する。一例として、受信部12は、センサデータSBが格納されたフレームの受信頻度fbをモニタしている。受信部12は、センサデータSBVを検知すると、予め定められた計算式および受信頻度fbに基づいて、百分率により表される伝送路TLBの負荷量を算出し、算出した負荷量を示す負荷情報Lbを遅延処理部13へ出力する。
【0063】
また、たとえば、受信部12は、センサデータSCVを検知した場合、ケーブル5Cからなる伝送路TLCの負荷量を計測する。一例として、受信部12は、センサデータSCが格納されたフレームの受信頻度fcをモニタしている。受信部12は、センサデータSCVを検知すると、予め定められた計算式および受信頻度fcに基づいて、百分率により表される伝送路TLCの負荷量を算出し、算出した負荷量を示す負荷情報Lcを遅延処理部13へ出力する。
【0064】
(遅延処理)
遅延処理部13は、受信部12により受信されたセンサデータSVのうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う。
【0065】
図6は、本開示の実施の形態に係る統合ECUにおける記憶部が記憶している遅延量テーブルの一例を示す図である。
図6を参照して、記憶部16は、伝送路の負荷量と、遅延処理において与えるべき遅延量との対応関係を示す遅延量テーブルT1を記憶している。遅延量テーブルT1は、伝送路の負荷量が10%未満である場合、遅延処理において与えるべき遅延量はゼロ秒であり、伝送路の負荷量が10%以上でありかつ50%未満である場合、遅延処理において与えるべき遅延量は1.2ミリ秒であり、伝送路の負荷量が50%以上である場合、遅延処理において与えるべき遅延量は2.4ミリ秒であることを示している。
【0066】
図7は、本開示の実施の形態に係る統合ECUにおける記憶部が記憶している対応テーブルの一例を示す図である。
図7を参照して、記憶部16は、負荷量が所定条件としてたとえば10%以上であることを満たした伝送路と、遅延を与えるべきセンサデータSVとの対応関係を示す対応テーブルT2を記憶している。対応テーブルT2は、伝送路TLAの負荷量が10%以上である場合、センサデータSBV,SCVに遅延を与えるべきであり、伝送路TLBの負荷量が10%以上である場合、センサデータSCVに遅延を与えるべきであることを示している。対応テーブルT2は、対応情報の一例である。
【0067】
たとえば、遅延処理部13は、伝送路の負荷量に基づいて、遅延処理における遅延量を調整する。また、たとえば、遅延処理部13は、伝送路の負荷量に応じた遅延を、他の伝送路を介して受信部12により受信されたセンサデータSVに与える。より詳細には、遅延処理部13は、記憶部16における遅延量テーブルT1および対応テーブルT2に基づいて、遅延処理を行う。すなわち、遅延処理部13は、遅延量テーブルT1および対応テーブルT2に基づいて、選択的にセンサデータSVに遅延を与える。
【0068】
たとえば、遅延処理部13は、伝送路TLA,TLB,TLCの負荷量の計測結果に基づいて、遅延処理における遅延量を調整する。より詳細には、遅延処理部13は、センサデータSAV,SBV,SCVおよび負荷情報La,Lb,Lcを受けて、負荷情報La,Lb,Lcがそれぞれ示す負荷量、遅延量テーブルT1および対応テーブルT2に基づいて、センサデータSAV,SBV,SCVの遅延量を動的に設定する。
【0069】
一例として、遅延処理部13は、負荷情報Laが示す伝送路TLAの負荷量が5%であり、負荷情報Lbが示す伝送路TLBの負荷量が60%であり、負荷情報Lcが示す伝送路TLCの負荷量が3%である場合、記憶部16における遅延量テーブルT1および対応テーブルT2に基づいて、センサデータSAV,SBVの遅延時間をゼロに設定する一方で、センサデータSCVの遅延時間を2.4ミリ秒に設定する。
【0070】
図8は、本開示の実施の形態に係る統合ECUにおける遅延処理部による遅延処理の一例を示す図である。
図8は、センサデータSAV,SBV,SCVのタイミングチャートを示している。
図8において、横軸は時間である。
【0071】
図8を参照して、センサ51Aにより送信されるセンサデータSAは時刻ta1において「ゼロ」から「1」へ遷移し、センサ51Bにより送信されるセンサデータSBは時刻ta1より後の時刻tb1において「ゼロ」から「1」へ遷移し、センサ51Cにより送信されるセンサデータSCは時刻tb1より後の時刻tc1において「ゼロ」から「1」へ遷移するものとする。すなわち、センサ51Aは時刻ta1においてセンサデータSAVを個別ECU201へ送信し、センサ51Bは時刻tb1においてセンサデータSBVを個別ECU201へ送信し、センサ51Cは時刻tc1においてセンサデータSCVを統合ECU101へ送信する。したがって、センサ51によるセンサデータSVの外部送信シーケンスは、センサデータSAV、センサデータSBVおよびセンサデータSCVの順である。
【0072】
そして、統合ECU101における受信部12は、時刻ta2においてセンサデータSAVを検知して遅延処理部13へ出力し、時刻ta2より後の時刻tc2においてセンサデータSCVを検知して遅延処理部13へ出力し、時刻tc2より後の時刻tb2においてセンサデータSBVを検知して遅延処理部13へ出力する。したがって、受信部12によるセンサデータSVの受信シーケンスは、センサデータSAV、センサデータSCV、センサデータSBVの順である。
【0073】
すなわち、センサ51BによるセンサデータSBVの送信タイミングは、センサ51CによるセンサデータSCVの送信タイミングよりも早いにも関わらず、伝送路TLBのトラフィックおよび個別ECU201における処理負荷等に基づくセンサデータSBの伝送遅延の影響により、受信部12によるセンサデータSBVの受信タイミングがセンサデータSCVの受信タイミングよりも遅くなっている。
【0074】
遅延処理部13は、センサデータSVの内部出力シーケンスが受信部12によるセンサデータSVの受信シーケンスとは相違するように、センサデータSCVに遅延を与える。
【0075】
より詳細には、遅延処理部13は、たとえば時刻ta2において、受信部12からセンサデータSAVを受けて、受けたセンサデータSAVに対して遅延処理を行うことなく、時刻ta2において当該センサデータSAVを検知部14へ出力する。
【0076】
また、遅延処理部13は、たとえば時刻ta2よりも後の時刻tc2において、受信部12からセンサデータSCVを受けて、受けたセンサデータSCVを2.4秒間保持することにより、時刻tc2の2.4秒後の時刻tc2dにおいて当該センサデータSCVを検知部14へ出力する。
【0077】
また、遅延処理部13は、たとえば時刻tc2よりも後の時刻tb2において、受信部12からセンサデータSBVを受けて、受けたセンサデータSBVに対して遅延処理を行うことなく、時刻tc2dよりも前の時刻tb2において当該センサデータSBVを検知部14へ出力する。
【0078】
すなわち、遅延処理部13は、センサデータSVを、センサデータSAV、センサデータSCVおよびセンサデータSBVの順に受信部12から受けて、センサデータSAV、センサデータSBVおよびセンサデータSCVの順に検知部14へ出力する。
【0079】
(検知処理)
検知部14は、遅延処理部13によるセンサデータSVの内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する。より詳細には、検知部14は、遅延処理部13からセンサデータSVを受けた順番である入力シーケンスに基づいて異常を検知する。
【0080】
図9は、本開示の実施の形態に係る統合ECUにおける記憶部が記憶している異常種類テーブルの一例を示す図である。
図9を参照して、記憶部16は、検知部14の検知対象の異常の種類と、センサ51によるセンサデータSVの外部送信シーケンスとの対応関係を示す異常種類テーブルT3を記憶している。異常種類テーブルT3は、異常種類情報の一例である。
【0081】
たとえば、異常種類テーブルT3は、異常と、当該異常の発生の有無の判断基準となる、センサ51によるセンサデータSVの外部送信シーケンスとの対応関係を示している。
【0082】
具体的には、異常種類テーブルT3は、センサ51によるセンサデータSVの外部送信シーケンスが、センサデータSAV、センサデータSBVおよびセンサデータSCVの順であることを満たした場合、異常Xは発生していないことを示している。異常Xは、たとえば、車両1への異常な乗り込み、すなわち正規のユーザ以外の人間により車両1のドアが強制的に開けられて乗り込まれたことである。
【0083】
また、異常種類テーブルT3は、センサ51によるセンサデータSVの外部送信シーケンスが、センサデータSAVおよびセンサデータSBVの順であり、かつセンサデータSAV,SBVの送信間隔がSミリ秒以上であることを満たした場合、異常Yは発生していないことを示している。異常Yは、たとえば、車両1の揺さぶりである。
【0084】
検知部14は、異常種類テーブルT3および遅延処理部13によるセンサデータSVの内部出力シーケンスに基づいて、複数種類の異常を検知する。
【0085】
より詳細には、検知部14は、遅延処理部13からのセンサデータSVの入力シーケンスがセンサデータSAV、センサデータSBVおよびセンサデータSCVの順である場合、異常Xは発生していないと判断する。
【0086】
一方、検知部14は、遅延処理部13からのセンサデータSVの入力シーケンスがセンサデータSAV、センサデータSBVおよびセンサデータSCVの順とは異なる場合、異常Xが発生したと判断する。そして、検知部14は、異常Xを検知した旨の検知情報を報知部15へ出力する。
【0087】
また、検知部14は、遅延処理部13からのセンサデータSVの入力シーケンスがセンサデータSAVおよびセンサデータSBVの順であり、かつ遅延処理部13からセンサデータSAV,SBVを受けたタイミングの間隔がSミリ秒以上である場合、異常Yは発生していないと判断する。
【0088】
一方、検知部14は、遅延処理部13からのセンサデータSVの入力シーケンスがセンサデータSAVおよびセンサデータSBVの順とは異なるか、または遅延処理部13からセンサデータSAV,SBVを受けたタイミングの間隔がSミリ秒未満である場合、異常Yが発生したと判断する。そして、検知部14は、異常Yを検知した旨の検知情報を報知部15へ出力する。
【0089】
報知部15は、検知部14から検知情報を受けた場合、アラートを発報する。
【0090】
再び
図8を参照して、検知部14が受信部12によるセンサデータSVの受信シーケンスに基づいて異常を検知する構成では、センサ51によるセンサデータSVの外部送信シーケンスがセンサデータSAV、センサデータSBVおよびセンサデータSCVの順であるにも関わらず、受信部12によるセンサデータSVの受信シーケンスがセンサデータSAV、センサデータSCVおよびセンサデータSBVの順であるので、異常Xを誤検知し、報知部15による誤報が発生する。
【0091】
これに対して、検知部14が遅延処理部13によるセンサデータSVの内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する構成により、センサデータSBの伝送遅延の影響によって受信部12におけるセンサデータSBVおよびセンサデータSCVの受信シーケンスが逆転することによる異常の誤検知を抑制することができる。
【0092】
[動作の流れ]
本開示の実施の形態に係る車載通信システムにおける各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0093】
図10は、本開示の実施の形態に係る統合ECUが異常を検知する際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0094】
図10を参照して、まず、統合ECU101は、センサ51からのセンサデータSVを待ち受ける。より詳細には、統合ECU101における受信部12は、センサ51から直接または個別ECU201経由で受信したフレームからセンサデータを取得し、取得したセンサデータがセンサデータSVであるか否かを判断する(ステップS102でNO)。
【0095】
次に、統合ECU101における受信部12は、センサ51からセンサデータSVを受信した場合、すなわちセンサデータSVを検知した場合(ステップS102でYES)、伝送路TLA,TLB,TLCの負荷量を計測する(ステップS104)。
【0096】
次に、統合ECU101は、伝送路TLA,TLB,TLCの負荷量、遅延量テーブルT1および対応テーブルT2に基づいて、センサデータSAV,SBV,SCVの遅延量を設定し、遅延処理を行う。より詳細には、統合ECU101における遅延処理部13は、受信部12からセンサデータSAV,SAB,SACを受けて、受けたセンサデータSAV,SAB,SACのうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する(ステップS106)。
【0097】
次に、統合ECU101における検知部14は、遅延処理部13によるセンサデータSAV,SAB,SACの内部出力シーケンスに基づいて検知処理を行う。より詳細には、検知部14は、記憶部16における異常種類テーブルT3および遅延処理部13によるセンサデータSAV,SAB,SACの内部出力シーケンスに基づいて、異常が発生しているか否かを判断する(ステップS108)。
【0098】
次に、統合ECU101は、異常が発生していないと判断した場合(ステップS110でNO)、センサ51からの新たなセンサデータSVを待ち受ける(ステップS102でNO)。
【0099】
一方、統合ECU101は、異常が発生していると判断した場合(ステップS110でYES)、アラートを発報する(ステップS112)。
【0100】
次に、統合ECU101は、センサ51からの新たなセンサデータSVを待ち受ける(ステップS102でNO)。
【0101】
なお、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、センサ51は、車両1が駐車中の期間において定期的に計測を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。センサ51は、車両1が駐車中の期間の代わりに、または車両1が駐車中の期間に加えて、車両1が走行している期間において定期的に計測を行う構成であってもよい。
【0102】
また、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、センサ51Aは、定期的にセンサデータSAを生成して個別ECU201へ送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。センサ51Aは、定期的に計測を行い、人が車両1の車体に触れることにより値が「ゼロ」から「1」へ遷移したタイミングのセンサデータSAのみを個別ECU201へ送信する構成であってもよい。すなわち、センサ51Aは、センサデータSAのうちのセンサデータSAVを個別ECU201へ送信する一方で、センサデータSAV以外のセンサデータSAの送信を行わない構成であってもよい。
【0103】
同様に、センサ51Bは、センサデータSBのうちのセンサデータSBVを個別ECU201へ送信する一方で、センサデータSBV以外のセンサデータSBの送信を行わない構成であってもよい。また、センサ51Cは、センサデータSCのうちのセンサデータSCVを統合ECU101へ送信する一方で、センサデータSCV以外のセンサデータSCの送信を行わない構成であってもよい。
【0104】
また、本開示の実施の形態に係る統合ECU101では、遅延処理部13は、伝送路の負荷量に基づいて、遅延処理における遅延量を調整する構成であるとしたが、これに限定するものではない。遅延処理部13は、伝送路の負荷量以外の、たとえば個別ECU201における処理負荷に基づいて遅延量を調整する構成であってもよい。
【0105】
また、本開示の実施の形態に係る統合ECU101では、遅延処理部13は、センサデータSVの内部出力シーケンスが受信部12によるセンサデータSVの受信シーケンスとは相違するように、センサデータSCVに遅延を与える構成であるとしたが、これに限定するものではない。遅延処理部13は、センサデータSVの内部出力シーケンスが受信部12によるセンサデータSVの受信シーケンスと同じであり、かつセンサデータSVの出力間隔が受信部12によるセンサデータSVの受信間隔と相違するように、センサデータSCVに遅延を与えて出力する構成であってもよい。
【0106】
また、本開示の実施の形態に係る統合ECU101では、遅延処理部13は、伝送路の負荷量に応じた遅延を、他の伝送路を介して受信部12により受信されたセンサデータSVに与える構成であるとしたが、これに限定するものではない。遅延処理部13は、伝送路の負荷量に応じた遅延を、他の伝送路を介して受信部12により受信されたセンサデータSVに与えない一方で、共通の伝送路を介して受信部12により受信されたセンサデータSVに与える構成であってもよい。
【0107】
また、本開示の実施の形態に係る統合ECU101では、遅延処理部13は、伝送路TLA,TLB,TLCの負荷量の計測結果に基づいて、遅延処理における遅延量を調整する構成であるとしたが、これに限定するものではない。遅延処理部13は、伝送路TLA,TLB,TLCのうちの一部の伝送路の負荷量の計測結果に基づいて、遅延処理における遅延量を調整する構成であってもよい。
【0108】
ところで、従来の異常検知技術では、車載ネットワークの状況によっては、センサの計測結果に基づく異常検知において誤検知が発生する場合がある。具体的には、センサデータSVの受信シーケンスに基づいて異常を検知する構成では、たとえば車載ネットワークにおけるセンサデータSVの伝送遅延の影響によって、センサデータSVの受信シーケンスがセンサ51におけるセンサデータSVの外部送信シーケンスと相違し、誤検知が発生する。
【0109】
これに対して、本開示の実施の形態に係る統合ECU101では、受信部12は、車両1に搭載される複数のセンサ51の計測結果の変化をそれぞれ示す複数のセンサデータSVを、伝送路を介して受信する。遅延処理部13は、受信部12により受信された複数のセンサデータSVのうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う。検知部14は、遅延処理部13による複数のセンサデータSVの内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する。
【0110】
このように、受信した複数のセンサデータSVのうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行い、複数のセンサデータSVの内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する構成により、たとえばセンサデータSVの伝送遅延の影響が低減された、センサにおけるセンサデータSVの外部送信シーケンスにより近い内容の内部出力シーケンスに基づいて、異常が発生したか否かを判断することができるので、センサデータSVの伝送遅延の影響による誤検知を抑制することができる。
【0111】
したがって、本開示の実施の形態に係る統合ECU101では、センサ51の計測結果に基づく異常検知における誤検知の発生を抑制することができる。
【0112】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0113】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車両に搭載される車載装置であって、
前記車両に搭載される複数のセンサの計測結果の変化をそれぞれ示す複数の変化情報を、伝送路を介して受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記複数の変化情報のうちの少なくともいずれか1つに遅延を与えて出力する遅延処理を行う遅延処理部と、
前記遅延処理部による前記複数の変化情報の内部出力シーケンスに基づいて異常を検知する検知部とを備え、
前記遅延処理部は、前記伝送路の負荷量の計測結果に基づいて、前記遅延処理における遅延量を動的に調整する、車載装置。
【符号の説明】
【0114】
1 車両
11A,11B 通信ポート
12 受信部
13 遅延処理部
14 検知部
15 報知部
16 記憶部
5,5A,5B,5C ケーブル
51,51A,51B,51C センサ
101 統合ECU
201 個別ECU
301 車載通信システム
T1 遅延量テーブル
T2 対応テーブル
T3 異常種類テーブル