(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023173269
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】印刷装置、駆動制御方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20231130BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20231130BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/165
B41J2/01 403
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085415
(22)【出願日】2022-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC36
2C056EC37
2C056EC42
2C057AM21
2C057AR08
2C057AR20
(57)【要約】
【課題】記憶されている波形に基づいて生成された信号から、記憶されていない波形を生成する印刷装置などを提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る印刷装置は、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成する多重化回路と、前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を、同期信号に基づいて分離するスイッチを備える分離回路と、を備え、前記分離回路は、前記時分割多重信号から、前記第1部分、前記第2部分、前記第3部分、または前記第4部分に基づき、前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形とは異なる第3駆動波形を示す第3駆動波形信号を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー付与素子によって液体を吐出するノズルと前記エネルギー付与素子とを備えるヘッドと、
少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成する多重化回路と、
前記時分割多重信号が入力され、前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を、同期信号に基づいて分離するスイッチを備える分離回路と、
を備え、
前記分離回路は、前記時分割多重信号から、前記第1部分、前記第2部分、前記第3部分、または前記第4部分に基づき、前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形とは異なる第3駆動波形を示す第3駆動波形信号を生成する
印刷装置。
【請求項2】
生成される前記第3駆動波形の目標の波形に対する再現精度は、分離される前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形の目標の波形に対する再現精度よりも低い
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1駆動波形信号及び前記第2駆動波形信号は、前記ヘッドが備える前記ノズルに前記液体を吐出させる信号である
請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第3駆動波形信号は、前記ヘッドが備える前記ノズルにメンテナンスを行わせる信号である
請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第3駆動波形信号は、前記ヘッドが備える前記ノズルにおいて残留波を計測するための信号である
請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記時分割多重信号を生成する際に、時間的に分割された複数の時間スロットに対して割り当てられる、少なくとも前記第1部分、前記第2部分、前記第3部分、及び前記第4部分を示す情報を記憶した記憶部
を備える請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記時分割多重信号から、前記第3駆動波形信号を生成する同期信号を記憶する記憶部
を備える請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記分離回路は、印刷において要求される画質が一定以上である場合、前記第3駆動波形信号を生成する
請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記第3駆動波形信号を生成する同期信号は、前記第3駆動波形が目標とする波形の傾きの変化量が一定値以上になる時に、パルスが立ち上がる時間間隔が短くなる
請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項10】
ノズルに液体を吐出させるエネルギー付与素子を備える印刷装置の駆動制御方法において、
少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を多重化回路によって生成し、
前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号、又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離回路のスイッチによって分離し、
前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形とは異なる第3駆動波形を示す第3駆動波形信号を、同期信号に基づいて生成し、
前記エネルギー付与素子を、前記分離回路にて分離された前記第1駆動波形信号、前記第2駆動波形信号、又は生成された前記第3駆動波形信号によって駆動させる
駆動制御方法。
【請求項11】
ノズルに液体を吐出させるエネルギー付与素子を備える印刷装置に、駆動制御を実行させるコンピュータプログラムにおいて、
少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を多重化回路によって生成し、
前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号、又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離回路のスイッチによって分離し、
前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形とは異なる第3駆動波形を示す第3駆動波形信号を、同期信号に基づいて生成し、
前記エネルギー付与素子を、前記分離回路にて分離された前記第1駆動波形信号、前記第2駆動波形信号、又は生成された前記第3駆動波形信号によって駆動させる
駆動制御を印刷装置に実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、印刷装置、駆動制御方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルのピエゾ素子を駆動させる駆動信号として、振幅の異なる第1駆動パルス~第4駆動パルスを生成するプリンタがある。1画素を印刷する1周期の間に、第1駆動パルス~第4駆動パルスが連続的に生成される。第1駆動パルス~第4駆動パルスのうちの1つが選択され、各ノズルのピエゾ素子に印加される。ノズルは、選択された駆動パルスの振幅に対応した量のインクを噴射し、所望の大きさのドットが形成される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のプリンタにおいては、1周期の間に4つの駆動パルス(駆動波形)、即ちノズルを駆動させるために使用される全ての駆動パルスが連続的に生成される。前記4つの駆動パルス以外の駆動パルスを使用する場合、該駆動パルスを1周期の間に含める必要がある。駆動パルスはコントローラが記憶したデータに基づいて生成されるため、ピエゾ素子を駆動させるにために必要な駆動パルスの数が多くなるほどに駆動信号を生成するために記憶する必要のある情報量が多くなるという問題点がある。
【0005】
本開示はかかる事情に鑑みてなされたものであり、記憶する情報量に対して、より多くの駆動波形を生成する印刷装置、駆動制御方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る印刷装置は、エネルギー付与素子によって液体を吐出するノズルと、前記エネルギー付与素子及び前記ノズルを備えるヘッドと、少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成する多重化回路と、前記時分割多重信号が入力され、前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を、同期信号に基づいて分離するスイッチを備える分離回路と、を備え、前記分離回路は、前記時分割多重信号から、前記第1部分、前記第2部分、前記第3部分、または前記第4部分に基づき、前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形とは異なる第3駆動波形を示す第3駆動波形信号を生成する。
【0007】
本開示の一実施形態に係る駆動制御方法は、ノズルに液体を吐出させるエネルギー付与素子を備える印刷装置の駆動制御方法において、少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記
第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を多重化回路によって生成し、前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号、又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離回路のスイッチによって分離し、前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形とは異なる第3駆動波形を示す第3駆動波形信号を、同期信号に基づいて生成し、前記エネルギー付与素子を、前記分離回路にて分離された前記第1駆動波形信号、前記第2駆動波形信号、又は生成された前記第3駆動波形信号によって駆動させる。
【0008】
本開示の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、ノズルに液体を吐出させるエネルギー付与素子を備える印刷装置に、駆動制御を実行させるコンピュータプログラムにおいて、少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を多重化回路によって生成し、前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号、又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離回路のスイッチによって分離し、前記第1駆動波形及び前記第2駆動波形とは異なる第3駆動波形を示す第3駆動波形信号を、同期信号に基づいて生成し、前記エネルギー付与素子を、前記分離回路にて分離された前記第1駆動波形信号、前記第2駆動波形信号、又は生成された前記第3駆動波形信号によって駆動させる駆動制御を印刷装置に実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態に係る印刷装置にあっては、記憶されている駆動波形に基づいて生成された時分割多重信号から記憶されていない駆動波形を生成するので、記憶する情報量に対して、より多くの駆動波形を生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】インクジェットヘッドの略示部分拡大断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る制御装置のブロック図である。
【
図4】目標駆動波形A、B、C及び目標駆動波形Xの一例を説明する説明図である。
【
図5】マッピング情報テーブルを示す説明図である。
【
図6】時系列データ、アナログ信号及び時分割多重信号の一例を説明する説明図である。
【
図7】時分割多重信号と同期信号との関係を説明する説明図である。
【
図8】第nスイッチの開閉によってアクチュエータに入力される駆動波形の模式図である。
【
図9】時分割多重信号と同期信号等との関係を説明する説明図である。
【
図10】制御装置による印刷処理を説明するフローチャートである。
【
図11】実施の形態2に係る制御装置のブロック図である。
【
図12】実施の形態2に係る時分割多重信号と同期信号等の関係を説明する説明図である。
【
図13】実施の形態2に係る制御装置による印刷処理を説明するフローチャートである。
【
図14】実施の形態3に係る制御装置のブロック図である。
【
図15】実施の形態3に係る時分割多重信号と同期信号等の関係を説明する説明図である。
【
図16】実施の形態3に係る制御装置による印刷処理を説明するフローチャートである。
【
図17】実施の形態4に係る制御装置のブロック図である。
【
図18】アナログ信号と時分割信号との関係を説明する説明図である。
【
図19】変更例に係る制御装置のブロック図である。
【
図20】実施の形態5に係る制御装置のブロック図である。
【
図21】実施の形態6に係る制御装置のブロック図である。
【
図22】実施の形態7に係る制御装置のブロック図である。
【
図23】D/Aコンバータから出力されたアナログ信号と、アンプに供給された電圧との関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下本発明を、実施の形態1に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。
図1は、印刷装置1を略示する平面図である。以下の説明では、
図1に示す前後左右を使用する。前後方向は搬送方向に対応し、左右方向は走査方向に対応する。また図示はしてはいないが、
図1の紙面に直交する方向である上下方向も使用する。上下方向は左右方向及び前後方向と直交する。上下方向において、紙面の表に向かう方が上方に対応し、紙面の裏に向かう方が下方に対応する。
【0012】
図1に示すように、印刷装置1は、プラテン2と、インク吐出装置3と、搬送ローラ4、5等を備える。プラテン2の上面には、記録媒体である記録用紙200が載置される。インク吐出装置3は、プラテン2に載置された記録用紙200に対してインクを吐出して画像を記録する。インク吐出装置3は、キャリッジ6と、サブタンク7と、4つのインクジェットヘッド8と、循環ポンプ等を備える。
【0013】
プラテン2の上方には、キャリッジ6を案内する左右に延びた2本のガイドレール11、12が設けられている。キャリッジ6には、左右に延びた無端ベルト13が連結されている。無端ベルト13は、キャリッジ駆動モータ14によって駆動される。無端ベルト13の駆動によって、キャリッジ6は、ガイドレール11、12に案内され、プラテン2に対向する領域において、走査方向に往復移動する。より具体的には、キャリッジは、4つのインクジェットヘッド8を支持した状態で、走査方向において、左方から右へとある位置から他の位置へ前記ヘッドを移動させる第1移動と、走査方向において、右方から左方へと他の位置からある位置へ前記ヘッドを移動させる第2移動とを行う。
【0014】
ガイドレール11、12の間に、キャップ20及びフラッシング受け21が設けられている。キャップ20及びフラッシング受け21は、インク吐出装置3よりも下方に配置されている。キャップ20はガイドレール11、12の右端部に配置され、フラッシング受け21はガイドレール11、12の左端部に配置されている。なお、キャップ20及びフラッシング受け21は、左右逆に配置されてもよい。
【0015】
サブタンク7及び4つのインクジェットヘッド8はキャリッジ6に搭載され、キャリッジ6と共に走査方向に往復移動する。サブタンク7はカートリッジホルダ15とチューブ17を介して接続されている。カートリッジホルダ15には、1又は複数色(本実施例においては4色)のインクカートリッジ16が装着される。4色としては、例えばブラック、イエロー、シアン及びマゼンタが挙げられる。
【0016】
サブタンク7の内部には、4つのインク室(図示略)が形成されている。4つのインク室には、4つのインクカートリッジ16から供給された4色のインクがそれぞれ貯留される。
【0017】
4つのインクジェットヘッド8は、サブタンク7の下方において、走査方向に並んでいる。各インクジェットヘッド8の下面には、複数のノズル80(
図2参照)が形成されている。1つのインクジェットヘッド8は、1色のインクに対応し、1つのインク室に接続されている。すなわち、4つのインクジェットヘッド8は、4色のインクにそれぞれ対応し、4つのインク室にそれぞれ接続されている。
【0018】
インクジェットヘッド8には、インク供給口と、インク排出口とが設けられている。インク供給口及びインク排出口は、チューブ等を介してインク室に接続されている。インク供給口及びインク室の間には、循環ポンプが接続されている。
【0019】
循環ポンプによってインク室から送出されたインクは、インク供給口を通ってインクジェットヘッド8に流入し、ノズル80から吐出される。ノズル80から吐出されないインクは、インク排出口を通って、インク室に戻る。インクは、インク室及びインクジェットヘッド8の間を循環する。4つのインクジェットヘッド8は、キャリッジ6と共に走査方向に移動しながら、サブタンク7から供給された4色のインクを記録用紙200に吐出する。
【0020】
図1に示すように、搬送ローラ4は、プラテン2よりも搬送方向上流(後方)に配置されている。搬送ローラ5は、プラテン2よりも搬送方向下流(前方)に配置されている。2つの搬送ローラ4、5は、モータ(図示略)によって、同期して駆動する。2つの搬送ローラ4、5は、プラテン2に載置された記録用紙200を、走査方向と直交する搬送方向に搬送する。印刷装置1は制御装置50を備える。制御装置50は、CPU又はロジック回路(例えばFPGA)、不揮発性メモリ及びRAM等のメモリ55等を備え、持
ち運び可能な記録媒体501に格納したコンピュータプログラム(プログラム製品)を読み出して実行することにより、種々の制御処理を行う。なお、読み出すコンピュータプログラムは、メモリ55にプリインストールしたものでもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しないネットワークを通じてコンピュータプログラムをダウンロードし、メモリ55に記憶させたものであってもよい。
制御装置50は、外部装置100から印刷ジョブ及び駆動波形データを受信して、メモリ55に記憶する。制御装置50は、印刷ジョブに基づいて、インク吐出装置3及び搬送ローラ4等の駆動を制御し、印刷処理を実行する。
【0021】
図2は、インクジェットヘッドの略示部分拡大断面図である。インクジェットヘッド8は、複数の圧力室81を備える。複数の圧力室81は、複数の圧力室列を構成する。圧力室81の上側には振動板82が形成されている。振動板82の上方には、層状の圧電体83が形成されている。各圧力室81の上方であって、圧電体83と振動板82との間に第1共通電極84が形成されている。
【0022】
圧電体83の内部に第2共通電極86が設けられている。第2共通電極86は各圧力室81の上方且つ第1共通電極84よりも上方に配置されている。第2共通電極86は、第1共通電極84と対向しない位置に配置されている。各圧力室81の上方であって、圧電体83の上面に個別電極85が形成されている。個別電極85と、第1共通電極84及び第2共通電極86とは圧電体83を挟んで上下に対向する。振動板82、圧電体83、第1共通電極84、個別電極85及び第2共通電極86はアクチュエータ88を構成する。
【0023】
各圧力室81の下部にノズルプレート87が設けられている。ノズルプレート87には、上下に貫通した複数のノズル80が形成されている。各ノズル80は、各圧力室81の下側に配置されている。複数のノズル80は、圧力室列に沿って延びた複数のノズル列を構成する。
【0024】
図3に示すように、第1共通電極84はCOM端子、本実施例ではグランドに接続され、第2共通電極86は、VCOM端子に接続される。VCOM電圧はCOM電圧よりも高い。個別電極85は、スイッチ群(分離回路)54(
図3参照)に接続される。個別電極85にHIgh又はLow電圧が印加され、圧電体83が変形し、振動板82が振動する。振動板82の振動によって、ノズル80を介して、圧力室81からインクが吐出される。
【0025】
図3は、実施の形態1に係る制御装置50のブロック図である。制御装置50は、制御回路51、D/Aコンバータ52、アンプ53、スイッチ群54及びメモリ55を備える。メモリ55には、駆動波形データが記憶されている。駆動波形データは、個別電極85に印加される電圧波形、即ちアクチュエータ88を駆動させる駆動波形の目標となる目標駆動波形を示すデータであり、量子化されたデータである。本実施例においては、駆動波形データDa、Db、Dcがメモリ55に記憶されている。また、メモリ55には、マッピング情報テーブル551と、目標駆動波形Xを生成するための同期信号S2xを示すデータとが記憶されている。駆動波形データDa、Db、Dc、目標駆動波形X、同期信号S2x、及びマッピング情報の詳細については後述する。
【0026】
D/Aコンバータ52はデジタル信号をアナログ信号に変換する。アンプ53はアナログ信号を増幅させる。スイッチ群54は、複数の第nスイッチ54(n)(n=1、2、・・・)を備える。第nスイッチ54(n)は、例えばアナログスイッチICによって構成される。複数の第nスイッチ54(n)の一端は、共通バスを介して、アンプ53に接続される。各第nスイッチ54(n)の他端は、複数のノズル80に対応した各個別電極85に接続される。
【0027】
個別電極85、第1共通電極84、及び圧電体83によって第1コンデンサ89aが構成されている。個別電極85、第2共通電極86、及び圧電体83によって第2コンデンサ89bが構成されている。
【0028】
図4は、目標駆動波形A、B、C及び目標駆動波形Xの一例を説明する説明図である。
図4において、右方は左方よりも過去の状態を示す。
図6~
図8、
図9、
図12、
図15、
図18、及び
図23も同様である。また、
図4に示す各目標駆動波形は、スイッチ群54が分離または生成する駆動波形(
図8参照)の目標となる波形である。後述する駆動波形データDaは、目標駆動波形Aの量子化データであり、駆動波形データDbは、目標駆動波形Bの量子化データであり、駆動波形データDcは、目標駆動波形Cの量子化データである。駆動波形データDaは量子化されたデータAk(k=0、1、2、・・・)を有し、駆動波形データDbは量子化されたデータBkを有し、駆動波形データDcは量子化されたデータCkを有する。目標駆動波形A、B、Cは、印刷ジョブの実行時にノズル80にインクを吐出させるための駆動波形である。目標駆動波形Xは、ノズル80にメンテナンスを行わせるための駆動波形である。なお、本実施形態においては、目標駆動波形Xは、印刷目的以外でノズル80からインクを吐出するフラッシング処理を行うための駆動波形である。なお、制御装置50のメモリ55は、目標駆動波形Xの量子化データを記憶していないが、記憶してもよい。
【0029】
図5は、マッピング情報テーブル551を示す説明図である。マッピング情報テーブル551は、時系列データを作成する際に、時間間隔Δtごとに分割された複数の時間スロットに割り当てるデータを示すテーブルである。マッピング情報テーブルの管理項目(フィールド)は、時間スロット番号フィールドと、割り当てデータフィールドとを含む。時間スロット番号フィールドには、各時間スロットに振られた番号が格納される。なお、各時間スロットには、時系列順に昇順で番号が振られている。割り当てデータフィールドに
は、各時間スロットに割り当てられるデータAk、Bk、またはCk(k=0、1、2、・・・)のデータ名が格納される。
図5に示す例においては、データ名[Ak]はデータAkに、データ名[Bk]はデータBkに、データ名[Ck]はデータCkに対応する。
【0030】
図6は、時系列データ、アナログ信号及び時分割多重信号の一例を説明する説明図である。
図6において、A、B、Cは、目標駆動波形A、B、Cにそれぞれ対応することを示す。アクチュエータ88を駆動させる場合、制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDa、Db、Dc及びマッピング情報を取得し、時系列データを作成する。時系列データは、データAk、Bk、Ckをマッピング情報テーブルに基づいて時間間隔Δtごとに分割された各時間スロットに割り当てたものである。なお、時間間隔Δtは、所定のサンプリング周波数の逆数である。
図6に示す例においては、時系列データにおける各データは、A0、B0、C0、A1、B1、C1、・・・、Ak、Bk、Ckの順に並べられる。時系列データはデジタル信号である。量子化されたデータAk、Bk、Ckは、所定のサンプリング周波数の逆数に対応する時間ごとに、A0、B0、C0、A1、B1、C1、・・・、Ak、Bk、Ckの順に並べられる。言い換えると、量子化されたデータAk、Bk、Ckのデータ長は、所定のサンプリング周波数の逆数に対応する長さ以下である。
【0031】
制御回路51は時系列データをD/Aコンバータ52に出力する。
図6に示すように、D/Aコンバータ52は時系列データをアナログ信号に変換し、アンプ53に出力する。アンプ53は、入力されたアナログ信号を増幅させて、スイッチ群54に出力する。
図6に示すように、アンプ53にて増幅されたアナログ信号は時分割多重信号を構成する。時分割多重信号において、データAk-1に対応する部分を第1部分、データAkに対応する部分を第2部分、データBk-1に対応する部分を第3部分、データBkに対応する部分を第4部分とすると、第1部分と第2部分との間に第3部分があり、第3部分と第4部分との間に第2部分がある。なお、データAk及びCkとの間でも同様な関係が成立し、データBk及びCkとの間でも同様な関係が成立する。制御回路51、D/Aコンバータ52、アンプ53及びメモリ55は多重化回路50aを構成する。
【0032】
制御回路51は、複数の第nスイッチ54(n)の開閉を制御するスイッチ制御信号S1と、目標駆動波形Aに対応した同期信号S2aと、目標駆動波形Bに対応した同期信号S2bと、目標駆動波形Cに対応した同期信号S2cとをスイッチ群54に出力する。なお3つの同期信号S2a、S2b及びS2cを単に同期信号S2とも表す(
図3参照)。スイッチ制御信号S1は、複数の第nスイッチ54(n)のいずれかを選択することを示す第一選択情報と、3つの同期信号S2a、S2b、S2cのいずれかを選択することを示す第二選択情報とを含む。第一選択情報及び第二選択情報は紐づけられている。
【0033】
図7は、時分割多重信号と、同期信号S2a、S2b、S2c及びS2xとの関係を説明する説明図である。同期信号S2a、S2b及びS2cはパルス波である。同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点との間には時間間隔Δtが設けられている。また同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられ、同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられている。前述したように、時系列データを構成するデータAk、Bk、Ckは時間間隔Δtを設けて順に並べられている。そのため、同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、データAkに対応し、目標駆動波形Aを示す駆動波形信号Paを取得することができる。同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、データBkに対応し、目標駆動波形Bを示す駆動波形信号Pbを取得することができる。同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、データCkに対応し
、目標駆動波形Cを示す駆動波形信号Pcを取得することができる。また、同期信号S2xのパルスが立ち上がるタイミングは、同期信号S2a~S2cのパルスのうち、いずれかと重複している。即ち、制御回路51がメモリ55に記憶されている同期信号S2xを読み出して第nスイッチ54(n)に送信した際、同期信号S2xのパルスの立ち上がり時点において、時分割多重信号にアクセスした場合、駆動波形信号Pa~Pcのうち、いずれか1つの駆動波形信号を取得することが可能である。
【0034】
スイッチ群54は、選択された同期信号S2a~S2cが示す開閉タイミングで、選択された第nスイッチ54(n)を開閉させ、ノズルにインクを吐出させるための駆動波形を分離する。換言すれば、スイッチ群54は、所定のサンプリング周波数によって、第nスイッチ54(n)を開閉させ、ノズルにインクを吐出させるための駆動波形を分離する。また、スイッチ群54は、選択された同期信号S2xが示す開閉タイミングで、選択された第nスイッチ54(n)を開閉させ、ノズル80にメンテナンスを行わせるための駆動波形X1を生成する。
【0035】
図8は、第nスイッチ54(n)の開閉によってアクチュエータ88に入力される駆動波形の模式図である。同期信号S2aが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2aのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2aのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図8に示すように、駆動波形A1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、所定のサンプリング周波数によって、時分割多重信号から駆動波形信号Paが分離されて、駆動波形信号Paによってアクチュエータ88が駆動される。
【0036】
同期信号S2bが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2bのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2bのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図8に示すように、駆動波形B1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、所定のサンプリング周波数によって、時分割多重信号から駆動波形信号Pbが分離されて、駆動波形信号Pbによってアクチュエータ88が駆動される。
【0037】
同期信号S2cが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2cのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2cのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図8に示すように、駆動波形C1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、所定のサンプリング周波数によって、時分割多重信号から駆動波形信号Pcが分離されて、駆動波形信号Pcによってアクチュエータ88が駆動される。
【0038】
前記所定のサンプリング周波数は、インクジェットヘッド8の共振周波数以上である。インクジェットヘッド8の共振周波数は、圧力室81にインク(液体)を充填していない場合における共振周波数であるか、又は圧力室81にインクを充填している場合における共振周波数である。例えば、圧力室81にインクを充填していない場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が100kHzである場合、圧力室81にインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が100kHz未満となる。具体的には、圧力室81にインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が90kHzとなる。つまり、圧力室81にインクを充填していない場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数は、圧力室81にインクを充填している場合におけ
るインクジェットヘッド8の共振周波数よりも大きい。
【0039】
同期信号S2xが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2xのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2xのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、
図8に示すように、駆動波形X1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、時分割多重信号から駆動波形信号Pxが生成され、駆動波形信号Pxによってアクチュエータ88が駆動される。
【0040】
図9は、時分割多重信号と同期信号S2x等の関係を説明する説明図である。上述の通り、目標駆動波形Xは、スイッチ群54が生成する駆動波形(駆動波形X1)の目標となる波形である。目標駆動波形Xと駆動波形X1との類似度は、目標駆動波形A、B、Cと駆動波形A1、B1、C1との類似度よりも低い。なお、該類似度は、例えば、目標駆動波形と駆動波形との各時点における電圧の差の平均によって示される。換言すると、スイッチ群54によって生成される駆動波形X1の目標駆動波形Xに対する再現精度は、スイッチ群54によって分離される駆動波形A1、B1、C1の目標駆動波形A、B、Cに対する再現精度よりも低い。なお、駆動波形X1は印刷ジョブの実行に係る駆動波形ではないため、印刷ジョブの実行に係る駆動波形A1、B1、C1の再現精度よりも低い再現精度で生成されても問題は生じない。なお、スイッチ群54によって生成される駆動波形X1の目標駆動波形Xに対する再現精度は、スイッチ群54によって分離される、駆動波形A1、B1、C1の目標駆動波形A、B、Cに対する再現精度よりも高く、または同等でもよい。
【0041】
上述の通り、同期信号S2xはメモリ55に記憶されている。同期信号S2xは、予めパルスが立ち上がるタイミングが設定された信号である。同期信号S2xは、時分割多重信号から目標駆動波形Xに近い波形を生成するために、駆動波形信号Pa~Pcから所望の駆動波形信号を取得するように設定されている。
図9に示す例においては、同期信号S2xは、パルスx1~x6を含む。スイッチ群54は、パルスx1によって駆動波形信号Pbを取得し、パルスx2によって駆動波形信号Paを取得し、パルスx3によって駆動波形信号Paを取得し、パルスx4によって駆動波形信号Pcを取得し、パルスx5によって駆動波形信号Pbを取得し、パルスx6によって駆動波形信号Pcを取得し、駆動波形X1を生成する。
【0042】
目標駆動波形Xの傾きの変化量が一定値以上になる時の同期信号S2xのパルスが立ち上がる時間間隔は短い。
図9に示す同期信号S2xの例においては、目標駆動波形Xの傾きが0から+に変化する時のパルスの間隔(パルスx1とパルスx2との間隔)と、目標駆動波形Xの傾きが0から-に変化する時のパルスの間隔(パルスx4とパルスx5との間隔)は、他のパルスの間隔よりも短い。目標駆動波形Xの傾きの変化量が一定値以上になる時の同期信号S2xのパルスが立ち上がる時間間隔が短いことにより、駆動波形X1における立ち上がり開始時または立下り開始時においては、目標駆動波形Xに対する一定の再現精度を確保することが可能である。
【0043】
図10は、制御装置50による印刷処理を説明するフローチャートである。制御装置50は外部装置100から印刷ジョブを受信したか否か判定する(S1)。印刷ジョブを受信していない場合(S1:NO)、制御装置50はステップS1に処理を戻す。印刷ジョブを受信した場合(S1:YES)、制御装置50は、印刷ジョブにおいて要求される画質が一定以上であるか否かを判定する(S2)。印刷ジョブにおいて要求される画質は、例えば、印刷装置1のユーザによって選択される印刷モードによって異なる。制御装置50は、印刷ジョブにおいて要求される画質が一定以上である場合(S2:YES)、駆動
波形X1を生成し(S3)、フラッシング処理を実行する(S4)。
【0044】
制御装置50は、1印刷タスクを実行する(S5)。印刷タスクは、印刷ジョブを構成する単位である。具体的には、インクジェットヘッド8が右方又は左方に記録用紙200の左右幅分移動、即ち1走査する間に行う液体吐出処理である。次に制御装置50は、1印刷タスクが完了したか否か判定する(S6)。1印刷タスクが完了していない場合(S6:NO)、ステップS6に処理を戻す。1印刷タスクが完了した場合(S6:YES)、制御装置50は、印刷ジョブが完了したか否か判定する(S7)。
【0045】
印刷ジョブが完了した場合(S7:YES)、制御装置50は駆動波形X1を生成して(S11)フラッシング処理を実行し(S12)、印刷処理を終了する。印刷ジョブが完了していない場合(S7:NO)、制御装置50はフラッシング処理を行うタイミングであるか否か判定する(S8)。フラッシング処理はノズル80のメンテナンスの為に、定期的に実行される。フラッシング処理を行うタイミングである場合(S8:YES)、制御装置50は、駆動波形X1を生成して(S9)フラッシング処理を実行し(S10)、ステップS5に処理を戻す。フラッシング処理を行うタイミングでない場合(S8:NO)、制御装置50はステップS5に処理を戻す。
【0046】
実施の形態1に係るインクジェットヘッド8及び印刷装置1にあっては、各目標駆動波形A、B、Cを示す各駆動波形データDa、Db、Dcに基づいて、時分割多重信号が生成される。生成された時分割多重信号から、駆動波形A1を示す駆動波形信号Pa、駆動波形B1を示す駆動波形信号Pb、駆動波形C1を示す駆動波形信号Pcが分離される。アクチュエータ88は、駆動波形信号Pa、Pb又はPcによって駆動される。また、同期信号S2xに基づき、駆動波形信号Pxが生成される。アクチュエータ88は駆動波形信号Pxによってフラッシング処理が実行される。これにより、メモリ55に記憶されている各駆動波形データDa、Db、Dcに基づいて生成された時分割多重信号から、メモリ55に駆動波形データが記憶されていない駆動波形信号Pxを生成することが可能である。
【0047】
生成される駆動波形X1の、目標駆動波形Xに対する再現精度は、分離される駆動波形A1、B1、C1の目標駆動波形A、B、Cに対する再現精度よりも低い。このため、駆動波形X1を生成する際の制御装置50にかかる負荷が低減される。なお、駆動波形X1は印刷ジョブの実行に係る駆動波形ではないため、印刷ジョブの実行に係る駆動波形A1、B1、C1の再現精度よりも低い再現精度で生成されても問題は生じない。
【0048】
制御装置50は、時分割多重信号から分離された駆動波形A1を示す駆動波形信号Pa、駆動波形B1を示す駆動波形信号Pb、または駆動波形C1を示す駆動波形信号Pcによってノズル80にインクを吐出させることにより、印刷ジョブを実行することが可能である。
【0049】
制御装置50は、時分割多重信号から生成された駆動波形X1を示す駆動波形信号Pxによってノズル80にインクを吐出させることにより、ノズル80にフラッシング処理を行わせることが可能である。
【0050】
制御装置50のメモリ55は各時間スロットに対して割り当てられる、目標駆動波形A、B、またはCの部分を示すデータAk、Bk、Ckを示す情報(マッピング情報)を記憶している。制御回路51は、マッピング情報に基づき、時分割多重信号を生成することが可能である。
【0051】
制御装置50のメモリ55は、駆動波形信号Pxを分離する同期信号S2xを示すデー
タを記憶している。スイッチ群54は、同期信号S2xに基づいて駆動波形信号Pxを生成することが可能である。
【0052】
スイッチ群54は、印刷ジョブにおいて要求される画質が一定以上である場合、駆動波形信号Pxを生成する。これにより、要求される画質が一定以上である印刷ジョブの実行前に、ノズル80にメンテナンスを行わせることが可能である。
【0053】
同期信号S2xは、目標駆動波形Xの傾きの変化量が一定値以上になる時に、パルスが立ちあがる時間間隔が短くなる。これにより、駆動波形X1における立ち上がり開始時または立ち下り開始時においては、目標駆動波形Xに対する一定の再現精度を確保することが可能である。
【0054】
実施の形態1において、駆動波形A1と駆動波形B1は第1駆動波形と第2駆動波形に対応し、駆動波形X1は第3駆動波形に対応する。なお、駆動波形B1と駆動波形C1、または駆動波形C1と駆動波形A1が第1駆動波形と第2駆動波形に対応するものであってもよい。
【0055】
実施の形態1において、制御回路51は、複数の駆動波形データに基づいて生成した時分割多重信号をスイッチ群54に送信するが、メモリ55から読み出した単一の駆動波形データをスイッチ群54に送信してもよい。例えば、印刷装置1が、印刷ジョブを受信せずに待機するアイドリング状態である場合、ノズル80はフラッシング処理のみを行う。印刷装置1がアイドリング状態である場合、メモリ55は目標駆動波形Xの駆動波形データDxを記憶し、制御回路51は、メモリ55から駆動波形データDxを読み出してスイッチ群54に送信してもよい。
【0056】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図11は、実施の形態2に係る制御装置50のブロック図である。実施の形態2に係る制御装置50のメモリ55は、同期信号S2yを示すデータを記憶している。同期信号S2yの詳細については後述する。なお、メモリ55は、同期信号S2xを示すデータを同時に記憶してもよい。
【0057】
図12は、実施形態2に係る時分割多重信号と同期信号S2y等の関係を説明する説明図である。目標駆動波形Yは、ノズル80において非吐出フラッシング処理を行うための駆動波形である。非吐出フラッシング処理は、ノズル80内の乾燥を防止するためにノズル80内のインクの表面(メニスカス)を揺らしてメンテナンスを行う処理である。非吐出フラッシング処理はインクを吐出しないため、スイッチ群54によって生成される駆動波形Y1の目標駆動波形Yに対する再現精度は、駆動波形X1の目標駆動波形Xに対する再現精度より低くてもよい。
図12に示す例においては、同期信号S2yはパルスy1~y5を含み、同期信号S2x(
図9参照)に対して同期信号S2yは立ち上がるパルスの数は少ない。立ち上がるパルスの数が少ないことにより、駆動波形Y1の目標駆動波形Yに対する再現精度は、駆動波形X1の目標駆動波形Xに対する再現精度よりも低い。なお、駆動波形Y1の目標駆動波形Yに対する再現精度は、駆動波形X1の目標駆動波形Xに対する再現精度よりも高いか、または同等でもよい。本実施の形態においてスイッチ群54は、パルスy1によって駆動波形信号Pbを取得し、パルスy2によって駆動波形信号Paを取得し、パルスy3によって駆動波形信号Pcを取得し、パルスy4によって駆動波形信号Pbを取得し、パルスy5によって駆動波形信号Pcを取得し、駆動波形Y1を生成する。
【0058】
図13は、実施の形態2に係る制御装置50による印刷処理を説明するフローチャートである。制御装置50は外部装置100から印刷ジョブを受信したか否か判定する(S21)。印刷ジョブを受信していない場合(S21:NO)、制御装置50はステップS21に処理を戻す。印刷ジョブを受信した場合(S21:YES)、制御装置50は、印刷ジョブにおいて要求される画質が一定以上であるか否かを判定する(S22)。制御装置50は、印刷ジョブにおいて要求される画質が一定以上である場合(S22:YES)、駆動波形Y1を生成し(S23)、非吐出フラッシング処理を実行する(S24)。
【0059】
制御装置50は、1印刷タスクを実行する(S25)。次に制御装置50は、1印刷タスクが完了したか否か判定する(S26)。1印刷タスクが完了していない場合(S26:NO)、ステップS26に処理を戻す。1印刷タスクが完了した場合(S26:YES)、制御装置50は、印刷ジョブが完了したか否か判定する(S27)。
【0060】
印刷ジョブが完了した場合(S27:YES)、制御装置50は駆動波形Y1を生成して(S31)非吐出フラッシング処理を実行し(S32)、印刷処理を終了する。印刷ジョブが完了していない場合(S27:NO)、制御装置50は非吐出フラッシング処理を行うタイミングであるか否か判定する(S28)。非吐出フラッシング処理はノズル80のメンテナンスの為に、定期的に実行される。非吐出フラッシング処理を行うタイミングである場合(S28:YES)、制御装置50は、駆動波形Y1を生成して(S29)非吐出フラッシング処理を実行し(S30)、ステップS25に処理を戻す。非吐出フラッシング処理を行うタイミングでない場合(S28:NO)、制御装置50はステップS25に処理を戻す。
【0061】
実施の形態2に係る制御装置50は、時分割多重信号から生成された駆動波形Y1を示す駆動波形信号Pyによってノズル80駆動させることにより、ノズル80に非吐出フラッシング処理を行わせることが可能である。
【0062】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態3に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図14は、実施の形態3に係る制御装置50のブロック図である。実施の形態3に係る制御装置50のメモリ55は、同期信号S2zを示すデータを記憶している。同期信号S2zの詳細については後述する。なお、メモリ55は、同期信号S2xまたは同期信号S2yを示すデータを同時に記憶してもよい。
【0063】
図15は、実施形態2に係る時分割多重信号と同期信号S2z等の関係を説明する説明図である。目標駆動波形Zは、ノズル80において残留波を計測するための駆動波形である。個別電極85への電圧印加後、振動板82は残留振動(自由振動)する。残留振動による波形は、ノズル80の状態、例えば液体の粘度、又は液体への気泡の混入の有無などによって変化する。制御装置50は、同期信号S2zに基づきスイッチ群54によって生成された駆動波形Z1によってノズル80に電圧を印加し、生じた残留波を計測する。制御装置50は、例えば、取得した残留波に基づいてノズル80の状態が正常であるか否かの判定に用いるために、メモリ55に取得した残留波を示すデータを記憶させる。
図15に示す例においては、同期信号S2zはパルスz1~z6を含む。スイッチ群54は、パルスz1によって駆動波形信号Pbを取得し、パルスz2によって駆動波形信号Paを取得し、パルスz3によって駆動波形信号Paを取得し、パルスz4によって駆動波形信号Pcを取得し、パルスz5によって駆動波形信号Pbを取得し、パルスz6によって駆動波形信号Pcを取得し、駆動波形Z1を生成する。
【0064】
図16は、実施の形態3に係る制御装置50による印刷処理を説明するフローチャート
である。制御装置50は外部装置100から印刷ジョブを受信したか否か判定する(S41)。印刷ジョブを受信していない場合(S41:NO)、制御装置50はステップS41に処理を戻す。印刷ジョブを受信した場合(S41:YES)、制御装置50は、印刷ジョブにおいて要求される画質が一定以上であるか否かを判定する(S42)。制御装置50は、印刷ジョブにおいて要求される画質が一定以上である場合(S42:YES)、駆動波形Z1を生成し(S43)、残留波を計測して(S44)、計測した残留波を示すデータをメモリ55に記憶させる(S45)。
【0065】
制御装置50は、1印刷タスクを実行する(S46)。次に制御装置50は、1印刷タスクが完了したか否か判定する(S47)。1印刷タスクが完了していない場合(S47:NO)、ステップS47に処理を戻す。1印刷タスクが完了した場合(S47:YES)、制御装置50は、印刷ジョブが完了したか否か判定する(S48)。
【0066】
印刷ジョブが完了した場合(S48:YES)、制御装置50は駆動波形Z1を生成して(S53)残留波を計測し(S54)、計測した残留波を示すデータをメモリ55に記憶させて(S55)印刷処理を終了する。印刷ジョブが完了していない場合(S48:NO)、制御装置50は残留波を計測するタイミングであるか否か判定する(S49)。残留波の計測はノズル80のメンテナンスの為に、定期的に実行される。残留波を計測するタイミングである場合(S49:YES)、制御装置50は、駆動波形Z1を生成して(S50)残留波を計測し(S51)、計測した残留波を示すデータをメモリ55に記憶させて(S52)ステップS46に処理を戻す。残留波を計測するタイミングでない場合(S49:NO)、制御装置50はステップS46に処理を戻す。
【0067】
実施の形態3に係る制御装置50は、時分割多重信号から生成された駆動波形Z1を示す駆動波形信号Pzによってノズル80駆動させることにより、ノズル80の残留波を計測することが可能である。
【0068】
(実施の形態4)
以下本発明を実施の形態4に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態4に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図17は、実施の形態4に係る制御装置50のブロック図、
図18は、アナログ信号60A~60C及び時分割信号S3a~S3cとの関係を説明する説明図である。
【0069】
制御装置50は、制御回路51、第1D/Aコンバータ52a、第2D/Aコンバータ52b、第3D/Aコンバータ52c、第2スイッチ制御部56、アンプ53、スイッチ群54及びメモリ55を備える。第2スイッチ制御部56は、第1スイッチ56a、第2スイッチ56b、第3スイッチ56cを備える。
【0070】
アクチュエータ88を駆動させる場合、制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDaを取得し、第1D/Aコンバータ52aに出力する。制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDbを取得し、第2D/Aコンバータ52bに出力する。制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDcを取得し、第3D/Aコンバータ52cに出力する。
【0071】
図18に示すように、第1D/Aコンバータ52a、第2D/Aコンバータ52b及び第3D/Aコンバータ52cは、それぞれアナログ信号60A、60B、60Cを出力する。制御回路51はアナログ信号60Aに対応した時分割信号S3aと、アナログ信号60Bに対応した時分割信号S3bと、アナログ信号60Cに対応した時分割信号S3cとをスイッチ群54に出力する。なお3つの時分割信号S3a、S3b及びS3cを単に時
分割信号S3とも表す(
図17参照)。
【0072】
時分割信号S3a、S3b及びS3cはパルス波である。時分割信号S3aのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S3bのパルスの立ち上がり時点との間には時間間隔Δtが設けられている。また時分割信号S3bのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S3cのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられ、時分割信号S3cのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S3aのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられている。各時分割信号S3a、S3b及びS3cは、前述の各同期信号S2a、S2b及びS2cに対応する。
【0073】
第1スイッチ56aは時分割信号S3aのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第2スイッチ56bは時分割信号S3bのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第3スイッチ56cは時分割信号S3cのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。なお、第1スイッチ56a、第2スイッチ56b及び第3スイッチ56cは、同時に開いていることがあるが、同時に閉じていることはない。第1スイッチ56a、第2スイッチ56b及び第3スイッチ56cは、同時に閉じると、アナログ信号60A、60B、60Cが混在することになるからである。
【0074】
第2スイッチ制御部56から、アナログ信号60A~60Cを合成した合成信号が出力される。合成信号は
図6に示すアナログ信号と同様な信号である。合成信号はアンプ53にて増幅され、アンプ53は時分割多重信号を出力する。この時分割多重信号は
図6に示す時分割多重信号と同様な信号である。時分割多重信号はスイッチ群54に入力される。スイッチ群54のスイッチ制御及びアクチュエータ88の駆動は実施の形態1と同様である。
【0075】
実施の形態4に係る印刷装置1にあっては、駆動波形データDaのデータ値をメモリ55から読み出して、第1D/Aコンバータ52aに入力し、アナログ信号60Aを生成する。また、駆動波形データDbをメモリ55から読み出して、第2D/Aコンバータ52bに入力し、アナログ信号60Bを生成する。また、駆動波形データDcのデータ値をメモリ55から読み出して、第3D/Aコンバータ52cに入力し、アナログ信号60Cを生成する。開閉タイミングを示す時分割信号S3aに基づいて、第1スイッチ56aを開閉させ、時分割信号S3aとは異なる開閉タイミングを示す時分割信号S3bに基づいて、第2スイッチ56bを開閉させ、時分割信号S3a、S3bとは異なる開閉タイミングを示す時分割信号S3cに基づいて、第3スイッチ56cを開閉させて、各アナログ信号60A~60Cから時分割多重信号を生成することができる。
【0076】
実施の形態4に係る印刷装置1は以下の構成に変更してもよい。
図19は変更例に係る制御装置50のブロック図である。変更例においては、アンプ53に代えて3つのアンプ53a~53cを備える。また第1D/Aコンバータ52aのアナログ信号がアンプ53aに入力され、アンプ53aは第1スイッチ56aにアナログ信号を出力する。第2D/Aコンバータ52bのアナログ信号がアンプ53bに入力され、アンプ53bは第2スイッチ56bにアナログ信号を出力する。第3D/Aコンバータ52cのアナログ信号がアンプ53cに入力され、アンプ53cは第3スイッチ56cにアナログ信号を出力する。第1~第3時分割信号S3a~S3cに基づいて、第1~第3スイッチ56a~56cが開閉され、時分割多重信号が生成される。3つのアンプを使用することによって、各アンプのスイッチング周波数を低くすることが可能である。これにより、帯域が狭いアンプによっても時分割多重を実現しやすい。
【0077】
(実施の形態5)
以下本発明を実施の形態5に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態5に係る構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図20は制御装置50のブロック図である。
【0078】
制御装置50は、制御回路51、D/Aコンバータ52、3つのアンプ53d~53f、スイッチ群54、メモリ55、第3スイッチ制御部57、サンプルホールドユニット58(S/Hユニット)等を備える。第3スイッチ制御部57は、第1スイッチ57a、第2スイッチ57b、第3スイッチ57cを備える。サンプルホールドユニット58は第1サンプルホールド回路58a(第1S/H回路)、第2サンプルホールド回路58b(第2S/H回路)、第3サンプルホールド回路58c(第3S/H回路)を備える。
【0079】
制御回路51は時系列データをD/Aコンバータ52に出力する。D/Aコンバータ52は時系列データをアナログ信号に変換し、サンプルホールドユニット58に出力する。D/Aコンバータ52が出力するアナログ信号は
図6に示すアナログ信号と同様である。
【0080】
制御回路51はサンプルホールドユニット58に、サンプリング周期を示すサンプリング信号S4a~S4cを出力する。サンプリング信号S4aは第1サンプルホールド回路58aに入力され、サンプリング信号S4bは第2サンプルホールド回路58bに入力され、サンプリング信号S4cは第3サンプルホールド回路58cに入力される。各サンプリング信号S4a~S4cのサンプリング周期は相互に異なり、時間間隔Δtずつずれている。なお3つのサンプリング信号S4a、S4b及びS4cを単にサンプリング信号S4とも表す(
図20参照)。
【0081】
第1サンプルホールド回路58aはサンプリング信号S4aのサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングして保持し、アンプ53dに出力する。第2サンプルホールド回路58bはサンプリング信号S4bのサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングして保持し、アンプ53eに出力する。第3サンプルホールド回路58cはサンプリング信号S4cのサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングして保持し、アンプ53fに出力する。
【0082】
第1サンプルホールド回路58aが出力するアナログ信号は、
図18のアナログ信号60Aと同様である。第2サンプルホールド回路58bが出力するアナログ信号は、
図18のアナログ信号60Bと同様である。第3サンプルホールド回路58cが出力するアナログ信号は、
図18のアナログ信号60Cと同様である。
【0083】
アンプ53dはアナログ信号を増幅して第1スイッチ57aに出力する。アンプ53eはアナログ信号を増幅して第2スイッチ57bに出力する。アンプ53fはアナログ信号を増幅して第3スイッチ57cに出力する。
【0084】
制御回路51は、アンプ53dが出力するアナログ信号に対応した時分割信号S5aと、アンプ53eが出力するアナログ信号に対応した時分割信号S5bと、アンプ53fが出力するアナログ信号に対応した時分割信号S5cとを第3スイッチ制御部57に出力する。なお3つの時分割信号S5a、S5b及びS5cを単に時分割信号S5とも表す(
図20参照)。
【0085】
時分割信号S5a、S5b及びS5cは、
図18に示す時分割信号S3a、S3b及びS3cと同様なパルス波である。時分割信号S5aのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S5bのパルスの立ち上がり時点との間には時間間隔Δtが設けられている。また時分割信号S5bのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S5cのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられ、時分割信号S5cのパルスの立ち上がり時点と、時
分割信号S5aのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられている。各時分割信号S5a、S5b及びS5cは、前述の各同期信号S2a、S2b及びS2cに対応する。
【0086】
第1スイッチ57aは時分割信号S5aのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第2スイッチ57bは時分割信号S5bのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第3スイッチ57cは時分割信号S5cのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。なお、第1スイッチ57a、第2スイッチ57b及び第3スイッチ57cは、同時に開いていることがあるが、同時に閉じていることはない。第1スイッチ57a、第2スイッチ57b及び第3スイッチ57cは、同時に閉じると、アナログ信号60A、60B、60Cが混在することになるからである。
【0087】
第3スイッチ制御部57から、アンプ53d~53fから出力されたアナログ信号を合成した合成信号、即ち時分割多重信号が出力される。この時分割多重信号は
図6に示す時分割多重信号と同様な信号である。時分割多重信号はスイッチ群54に入力される。スイッチ群54のスイッチ制御及びアクチュエータ88の駆動は実施の形態1と同様である。
【0088】
なおサンプリング信号S4aが示すサンプリング時点は、時分割信号S5aが示す閉時点よりも早く、サンプリング信号S4bが示すサンプリング時点は、時分割信号S5bが示す閉時点よりも早く、サンプリング信号S4cが示すサンプリング時点は、時分割信号S5cが示す閉時点よりも早い。
【0089】
実施の形態5に係る印刷装置1にあっては、各駆動波形データDa、Db、Dcのデータ値をメモリ55から読み出して、時系列に並べてD/Aコンバータ52に入力し、サンプリング信号S4aに基づいて、第1サンプルホールド回路58aを動作させ、サンプリング信号S4bに基づいて、第2サンプルホールド回路58bを動作させ、サンプリング信号S4cに基づいて、第3サンプルホールド回路58cを動作させる。時分割信号S5a~S5cに基づいて第1~第3スイッチ57a~57cを開閉させ、時分割多重信号を生成することができる。
【0090】
またサンプリング信号S4aが示すサンプリング時点は、時分割信号S5aが示す閉時点よりも早く、サンプリング信号S4bが示すサンプリング時点は、時分割信号S5bが示す閉時点よりも早く、サンプリング信号S4cが示すサンプリング時点は、時分割信号S5cが示す閉時点よりも早い。そのため、時分割信号S5a~S5cの遅延による時分割多重信号の生成への影響を抑制することができる。
【0091】
(実施の形態6)
以下本発明を、実施の形態6に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態6に係る構成の内、実施の形態1~3と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図21は、実施の形態6に係る制御装置50のブロック図である。
【0092】
制御装置50は、制御回路51、デジタルデータを直接入力可能なデジタルアンプ530、ローパスフィルタ59(LPF)、スイッチ群54及びメモリ55を備える。デジタルアンプ530は、スイッチング回路及び増幅回路を備える。制御回路51は時系列データ(デジタルデータ)をデジタルアンプ530に出力し、デジタルアンプ530は時系列データをアナログ信号に変換し且つ増幅して、ローパスフィルタ59に出力する。ローパスフィルタ59はスイッチ群54に時分割多重信号を出力する。スイッチ群54のスイッチ制御及びアクチュエータ88の駆動は実施の形態1と同様である。
【0093】
実施の形態6に係る印刷装置にあっては、各駆動波形データDa、Db、Dcのデータ値をメモリ55から読み出して、デジタルアンプ530に入力し、時分割多重信号を生成することができる。デジタルアンプ530を使用することによって、D/Aコンバータを削減できる。デジタルアンプ530はアナログアンプに比べて、高精度、高安定部品を必要としないため、温度変化等の環境変化に強く、また動作も部品点数も少ないので、長寿命である。
【0094】
(実施の形態7)
以下本発明を実施の形態7に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態7に係る構成の内、実施の形態1~4と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図22は実施の形態7に係る制御装置50のブロック図である。
【0095】
制御装置50は、制御回路51、D/Aコンバータ52、アンプ53、振幅情報生成回路70、電圧決定回路71、電圧可変電源72等を備える。制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDa~Dcを取得し、D/Aコンバータ52に出力する。D/Aコンバータ52は駆動波形データDa~Dcをアナログ信号に変換してアンプ53に出力する。アンプ53からアクチュエータ88までの信号制御は、実施の形態1~4と同様であるので、省略する。
【0096】
制御回路51は振幅情報生成回路70にデジタル信号を出力し、デジタル信号の振幅を示す情報を生成して、電圧決定回路71に出力する。電圧決定回路71は、前記振幅を示す情報に基づいて、アンプ53に設定する電圧を決定し、電圧可変電源72に出力する。電圧可変電源72は、決定された電圧をアンプ53に供給する。なお決定された電圧は、電圧可変電源72が供給可能な最大電圧よりも低い電圧である。
【0097】
図23は、D/Aコンバータ52から出力されたアナログ信号と、アンプ53に供給された電圧との関係を説明する説明図である。
図23において、一点鎖線はアンプ53に供給された電圧を示す。
図23に示すように、アンプ53には、アナログ信号の振幅に応じた大きさの電圧が供給されている。電圧可変電源72が供給可能な最大電圧をアンプ53に供給する場合に比べて、電力消費量を削減することができる。
【0098】
上述の印刷装置1はシリアルヘッド方式であるが、ラインヘッド方式の印刷装置に上述の技術を適用してもよい。また、上述の印刷装置1はピエゾ方式のインクジェットヘッドを備えているが、バブルジェット方式のインクジェットヘッドまたは静電力方式のインクジェットヘッドを備える印刷装置に上述の技術を適用してもよい。特に、バブルジェット方式のヘッドを備える印刷装置に上述の技術を適用する場合、実施の形態1において、目標駆動波形A、B、Cは、振幅もパルス幅も異なったが、振幅が同程度で、パルス幅が異なる。なお、静電力方式のインクジェットヘッドとは、例えば、シリコンの単結晶基板からなる第1基板、第2基板及び第3基板が積層されて、構成される。第1基板は、底壁を振動板とする液室を構成する凹部を有する。第2基板は、第1基板に接合され、振動板とほぼ同形状の電極を有する。第3基板は、第1基板に接合され、液室の一部と、ノズルと、液室とノズルとを繋ぐ流路とを有する。電極に発振回路より正のパルス電圧を印加すると、電極の表面がプラス電位に帯電し、対応する振動板がマイナス電位に帯電する。そして、振動板は撓み、液室は拡張する。次に電極へのパルス電圧の印加をオフすると、撓んだ振動板が復元し、液室が縮小し、液室内の圧力が上昇し、ノズルからインクが吐出される。第1基板、第2基板及び第3基板は、シリコンだけでなく、ガラス、ニッケル、プラスチック、ステンレスにより構成されていてもよい。
【0099】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えら
れるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも1つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0100】
1 印刷装置
50 制御装置
51 制御回路
52 D/Aコンバータ
53 アンプ
530 デジタルアンプ
54 スイッチ群
55 メモリ
56 第2スイッチ制御部
57 第3スイッチ制御部
58 サンプルホールドユニット
70 振幅情報生成回路
71 電圧決定回路
72 電圧可変電源