(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023174012
(43)【公開日】2023-12-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及びこれを有する液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/125 20060101AFI20231130BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20231130BHJP
【FI】
B41J2/125
B41J2/14 611
B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086613
(22)【出願日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF23
2C057AG14
2C057AG42
2C057AG44
2C057AG47
2C057AG75
2C057AL03
2C057AL25
2C057AM21
2C057AM22
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
2C057DB04
2C057DD06
2C057DE02
(57)【要約】
【課題】流路全体における液体の平均温度を精度よく検出する。
【解決手段】プリンタは、第1方向D1に延び、複数の個別流路19に連通するマニホールド流路11が形成された流路部材21と、流路部材21の上面21aに固定された圧電アクチュエータ22と、2つの温度センサ81,82とを有するヘッド1を含んでいる。圧電アクチュエータ22は、複数の個別部、複数の枝部、幹部を有する高電位電極と、複数の個別部、複数の枝部、幹部を有する低電位電極極と、を含む。高電位電極の幹部は、第1方向D1において、マニホールド流路の少なくとも一部に対し、低電位電極の幹部の反対に位置する。温度センサ81,82は、第1方向D1において、高電位電極の幹部と低電位電極の幹部との間に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル及び前記ノズルに連通する圧力室をそれぞれ含み、第1方向に配列された複数の個別流路と、前記第1方向に延び、前記複数の個別流路に連通する共通流路とが形成された流路部材と、
前記流路部材の表面に固定され、前記複数の個別流路の前記圧力室のそれぞれと前記表面及び前記第1方向と直交する第2方向に重なる複数のアクチュエータ部を有するアクチュエータ部材と、
温度センサと、を備え、
前記アクチュエータ部材は、
前記複数のアクチュエータ部を構成する複数の第1個別部と、前記複数の第1個別部を連結する複数の第1枝部と、前記複数の第1枝部を連結しかつ第1給電部との接点が設けられた第1幹部とを有する第1共通電極と、
前記複数のアクチュエータ部を構成する複数の第2個別部と、前記複数の第2個別部を連結する複数の第2枝部と、前記複数の第2枝部を連結しかつ第2給電部との接点が設けられた第2幹部とを有する第2共通電極と、を含み、
前記第1幹部は、前記第1方向において、前記共通流路の少なくとも一部に対し、前記第2幹部の反対に位置し、
前記温度センサは、前記第1方向において、前記第1幹部と前記第2幹部との間に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記温度センサは、前記第1方向において、前記第1幹部と前記第2幹部との間の中央に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1共通電極は、前記複数のアクチュエータ部を構成する複数の別の第1個別部を有し、
前記複数の第1個別部は、前記第1方向に配列され、
前記複数の別の第1個別部は、前記第1方向に配列され、
前記複数の第1個別部と前記複数の別の第1個別部とは、前記第2方向と直交しかつ前記第1方向と交差する第3方向に並ぶ複数の第1個別部列を形成し、
前記第2共通電極は、前記複数のアクチュエータ部を構成する複数の別の第2個別部を有し、
前記複数の第2個別部は、前記第1方向に配列され、
前記複数の別の第2個別部は、前記第1方向に配列され、
前記複数の第2個別部と前記複数の別の第2個別部とは、前記第2方向と直交しかつ前記第1方向と交差する第3方向に並ぶ複数の第2個別部列を形成し、
前記複数の第1枝部及び前記複数の第2枝部は、前記第1方向にそれぞれ延び、前記第3方向に並び、
前記第1幹部は、前記第3方向に延び、前記複数の第1枝部と連結された第1延在部と、前記接点が設けられた第1接点部と、を有し、
前記第2幹部は、前記第3方向に延び、前記複数の第2枝部と連結された第2延在部と、前記接点が設けられた第2接点部と、を有し、
前記温度センサは、前記第1方向において、前記第1延在部及び前記第2延在部の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記アクチュエータ部材は、
第1圧電層と、
前記第1圧電層に対して前記第2方向に積層された第2圧電層と、
前記第2方向において前記第1圧電層の前記第2圧電層と反対側の面に配置された第1電極層と、
前記第2方向において前記第1圧電層と前記第2圧電層との間に配置された第2電極層と、
前記第2方向において前記第2圧電層の前記第1圧電層と反対側の面に配置された第3電極層と、を含み、
前記第1電極層は、それぞれ第1電位及び前記第1電位と異なる第2電位のいずれかが選択的に付与される複数の第1電極であって、前記複数の個別流路の前記圧力室のそれぞれと前記第2方向に重なる複数の第1電極を含み、
前記第2電極層は、前記第1電位に保持される前記第1共通電極を含み、
前記第3電極層は、前記第2電位に保持される前記第2共通電極を含むことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
請求項1に記載の液体吐出ヘッドと、を備え、
前記温度センサは、前記流路部材の表面上であって、前記アクチュエータ部材よりも前記搬送方向の上流又は下流に配置されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
請求項1に記載の液体吐出ヘッドと、を備え、
前記温度センサは、前記流路部材の表面上であって、前記アクチュエータ部材よりも前記搬送方向の上流及び下流にそれぞれ配置されており、
上流及び下流に配置された2つの前記温度センサによって検出された検出温度の平均値を導出する制御部をさらに備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
請求項1~6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記温度センサによって検出された検出温度を補正するための補正係数を記憶する記憶部と、
前記補正係数に基づいて前記検出温度を補正する制御部と、を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッド及びこれを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の圧力室及び複数の圧力室に連通する複数のマニホールド流路(共通流路)が形成された流路形成部材(流路部材)と、流路形成部材の表面に固定された圧電アクチュエータ(アクチュエータ部材)とを備えたインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)が示されている。各マニホールド流路は一方向に延びている。圧電アクチュエータは、2つの導電パターン(共通電極)を有している。2つの導電パターン(共通電極)は、それぞれ複数の圧力室にそれぞれ対応する複数の重なり部(個別部)と、一方向に延び複数の重なり部を連結する複数の接続部(枝部)と、一方向と直交する方向に延び複数の接続部を連結する別の接続部(幹部)とを含む。各導電パターンの別の接続部の端部は一方向に折れ曲がり、当該折れ曲がった部分には、電源から給電される接点が設けられている。また、一方の導電パターンの別の接続部は、一方向において、マニホールド流路の一部に対し、他方の導電パターンの別の接続部の反対に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各導電パターンの別の接続部は、給電により電荷を複数の接続部を介して複数の重なり部に供給する部分であり、接続部や重なり部に比べ、多くの電荷が流れ、発熱量が大きくなり易い。このため、流路形成部材のマニホールド流路の一部を挟んだ両側部分が比較的高温になりやすく、マニホールド流路内のインクは下流ほど温度が低くならず、比較的安定した状態となる。
【0005】
このようなインク温度環境において、記録品質を維持するため、流路全体における液体の平均温度を温度センサによって検出し、検出結果に基づいて液体の吐出波形を適宜選択することが考えられる。しかしながら、温度センサの位置によっては、流路全体における液体の平均温度を精度よく検出できず、記録品質の維持が困難になり得る。
【0006】
そこで、本発明の目的は、流路全体における液体の平均温度を精度よく検出することが可能な液体吐出ヘッド及びこれを有する液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドAは、ノズル及び前記ノズルに連通する圧力室をそれぞれ含み、第1方向に配列された複数の個別流路と、前記第1方向に延び、前記複数の個別流路に連通する共通流路とが形成された流路部材と、前記流路部材の表面に固定され、前記複数の個別流路の前記圧力室のそれぞれと前記表面及び前記第1方向と直交する第2方向に重なる複数のアクチュエータ部を有するアクチュエータ部材と、温度センサと、を備えている。そして、前記アクチュエータ部材は、前記複数のアクチュエータ部を構成する複数の第1個別部と、前記複数の第1個別部を連結する複数の第1枝部と、前記複数の第1枝部を連結しかつ第1給電部との接点が設けられた第1幹部とを有する第1共通電極と、前記複数のアクチュエータ部を構成する複数の第2個別部と、前記複数の第2個別部を連結する複数の第2枝部と、前記複数の第2枝部を連結しかつ第2給電部との接点が設けられた第2幹部とを有する第2共通電極と、を含み、前記第1幹部は、前記第1方向において、前記共通流路の少なくとも一部に対し、前記第2幹部の反対に位置し、前記温度センサは、前記第1方向において、前記第1幹部と前記第2幹部との間に配置されている。
【0008】
本発明の液体吐出装置は、第1の観点では、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記液体吐出ヘッドAと、を備え、前記温度センサは、前記流路部材の表面上であって、前記アクチュエータ部材よりも前記搬送方向の上流又は下流に配置されている。
【0009】
本発明の液体吐出装置は、第2の観点では、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記液体吐出ヘッドAと、を備え、前記温度センサは、前記流路部材の表面上であって、前記アクチュエータ部材よりも前記搬送方向の上流及び下流にそれぞれ配置されており、上流及び下流に配置された2つの前記温度センサによって検出された検出温度の平均値を導出する制御部をさらに備えている。
【0010】
本発明の液体吐出装置は、第3の観点では、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、前記液体吐出ヘッドAと、前記温度センサによって検出された検出温度を補正するための補正係数を記憶する記憶部と、前記補正係数に基づいて前記検出温度を補正する制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体吐出ヘッドAによると、温度センサが、比較的、発熱の大きい第1及び第2幹部間に配置される。このため、温度センサが第1方向において第1及び第2幹部の外側に配置されているよりも、流路全体における液体の平均温度を精度よく検出することが可能となる。
本発明の液体吐出装置の第1の観点によると、温度センサが、比較的、発熱の大きい第1及び第2幹部間に配置される。このため、温度センサが第1方向において第1及び第2幹部の外側に配置されているよりも、流路全体における液体の平均温度を精度よく検出することが可能となる。また、搬送方向の上流又は下流に配置された1つの温度センサで検出した検出温度により、流路全体における液体の平均温度を検出することが可能となる。このため、構成が簡単になる。また、温度センサがアクチュエータ部材よりも下流に配置されている場合、記録媒体の搬送気流による冷却の影響の少ない箇所で温度を検出することが可能となる。
本発明の液体吐出装置の第2の観点によると、温度センサが、比較的、発熱の大きい第1及び第2幹部間に配置される。このため、温度センサが第1方向において第1及び第2幹部の外側に配置されているよりも、流路全体における液体の平均温度を精度よく検出することが可能となる。また、記録媒体の搬送気流による冷却の影響を小さくすることが可能となり、流路全体における液体の平均温度をより精度よく検出することが可能となる。
本発明の液体吐出装置の第3の観点によると、温度センサが、比較的、発熱の大きい第1及び第2幹部間に配置される。このため、温度センサが第1方向において第1及び第2幹部の外側に配置されているよりも、流路全体における液体の平均温度を精度よく検出することが可能となる。また、温度センサによって検出された検出温度を補正することが可能となる。このため、流路全体における液体の平均温度をより精度よく検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドを含むプリンタの全体構成図である。
【
図5】
図2の圧電アクチュエータを構成する3つの圧電層のうち、最も上方の圧電層の上面を示す平面図である。
【
図6】
図2の圧電アクチュエータを構成する3つの圧電層のうち、中間の圧電層の上面を示す平面図である。
【
図7】
図2の圧電アクチュエータを構成する3つの圧電層のうち、最も下方の圧電層の上面を示す平面図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】
図8の断面におけるアクチュエータ部の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態に係るヘッド1を含むプリンタ100の全体構成について説明する。
【0014】
なお、以下の説明において、第1方向D1は水平方向である。第2方向D2は鉛直方向であり、第1方向D1と直交する。第3方向D3は、水平方向であり、第1方向D1及び第2方向D2と直交する。
【0015】
プリンタ100(本発明の「液体吐出装置」)は、4つのヘッド1を含むヘッドユニット1xと、プラテン3と、搬送機構4と、制御部5とを備えている。ヘッドユニット1xは、第1方向D1に長尺であり、位置が固定された状態でノズル15(
図3及び
図4参照)から用紙9(本発明の「記録媒体」)に対してインクを吐出するライン式である。4つのヘッド1(本発明の「液体吐出ヘッド」)は、それぞれ第1方向D1に長尺であり、第1方向D1に千鳥状に配列されている。各ヘッド1から吐出されるインクは、互いに同じ色のインク(例えばブラックインク)である。
【0016】
プラテン3は、ヘッドユニット1xの下方に配置された平板部材であり、プラテン3の上面に用紙9が載置される。
【0017】
搬送機構4は、第3方向D3にプラテン3を挟んで配置された2つのローラ対4a,4bを有する。制御部5の制御により搬送モータ(図示略)が駆動されると、ローラ対4a,4bが用紙9を挟持した状態で回転し、用紙9が第3方向D3に沿った搬送方向に搬送される。
【0018】
制御部5は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)を有する。ASICは、ROMに格納されたプログラムに従い、記録処理等を実行する。記録処理において、制御部5は、PC等の外部装置から入力された記録指令(画像データを含む。)に基づき、搬送モータ及びドライバIC(共に図示略)を制御することで、搬送機構4による用紙9の搬送と、ヘッド1による用紙9へのインクの吐出とを行わせ、用紙9上に画像を記録する。
【0019】
また、制御部5は、フラッシュメモリなどから構成された記憶部5aを有する。記憶部5aには、後述の温度センサ81,82によって検出された検出温度を補正するための補正係数を記憶している。制御部5は、補正係数に基づいて検出温度を補正する。
【0020】
次いで、ヘッド1の構成について説明する。
【0021】
ヘッド1は、
図2に示すように、流路部材21及び圧電アクチュエータ22を有する。流路部材21及び圧電アクチュエータ22は、共に、第2方向D2と直交する平面において、第1方向D1の長さが第3方向D3の長さよりも長い、矩形状である。
【0022】
流路部材21は、
図4に示すように、第2方向D2に積層された4枚のプレート31~34で構成されている。各プレート31~34には、流路を構成する孔が形成されている。当該流路は、複数の個別流路19、複数のマニホールド流路11(本発明の「共通流路」)を含む。また、これらプレート31~34は、熱伝導率の高い材料(金属、シリコン、カーボン等)で構成されている。
【0023】
プレート31には、複数の圧力室10が形成されている。プレート32には、圧力室10毎に、連通孔12,13が形成されている。連通孔12,13は、それぞれ、対応する圧力室10の第3方向D3の一端及び他端と第2方向D2に重なっている。プレート33には、連通孔13毎に、連通孔14が形成されている。連通孔14は、対応する連通孔13と第2方向D2に重なっている。プレート33には、さらに、12本のマニホールド流路11が形成されている。マニホールド流路11は、第1方向D1に配列された複数の圧力室10からなる圧力室列10R(
図2参照)毎に設けられている。各マニホールド流路11は、第1方向D1方向に延び、対応する圧力室列10Rに属する複数の圧力室10と連通孔12を介して連通している。プレート34には、複数のノズル15が形成されている。各ノズル15は、連通孔14と第2方向D2に重なっている。
【0024】
個別流路19は、圧力室10、当該圧力室10に連通する連通孔12~14及びノズル15により構成されている。つまり、複数の個別流路19も、複数の圧力室10と同様に、第1方向D1に配列されている。
【0025】
また、流路部材21には、
図2に示すように、その上面21aにおいて、圧電アクチュエータ22が配置されない領域に、2つのインク供給孔8が形成されている(
図2参照)。各インク供給孔8は、チューブを介してインクカートリッジ(図示略)と連通している。また、各インク供給孔8は、プレート31,32を貫通する2つの孔により構成されており、6本のマニホールド流路11と連通している。インクカートリッジからチューブを介して各インク供給孔8に供給されたインクは、6本のマニホールド流路11にそれぞれ供給される。各マニホールド流路11から、各圧力室列10Rに属する複数の圧力室10に、連通孔12を介してインクが供給される。そして後述のように圧電アクチュエータ22が駆動することで、圧力室10内のインクに圧力が付与され、連通孔13,14を通ってノズル15からインクが吐出される。
【0026】
圧電アクチュエータ22(本発明の「アクチュエータ部材」)は、
図4に示すように、流路部材21の上面21a(本発明の「表面」)に配置されている。圧電アクチュエータ22は、3つの圧電層41~43と、複数の駆動電極51と、高電位電極52と、低電位電極53とを有する。
【0027】
3つの圧電層41~43は、それぞれチタン酸ジルコン酸鉛等を主成分とする圧電材料からなり、第2方向D2に積層されている。圧電層42は、圧電層41に対して第2方向D2に積層されている。圧電層43は、圧電層41及び圧電層42に対して第2方向D2に積層され、圧電層41との間に圧電層42を挟む。なお、圧電層41が本発明の「第1圧電層」に該当し、圧電層42が本発明の「第2圧電層」に該当する。圧電層43は、プレート31の上面21aに配置され、プレート31に形成された全ての圧力室10を覆っている。
【0028】
複数の駆動電極51(本発明の「第1電極」)は、
図3に示すように、圧電層41の上面に、圧力室10のそれぞれに対応して配置されている。各駆動電極51は、主部51aと、突出部51bとを有する。主部51aは、対応する圧力室10の略全域と第2方向D2に重なっている。突出部51bは、主部51aから第3方向D3に突出し、対応する圧力室10と第2方向D2に重なっていない。突出部51bには、COF(Chip On Film)(図示略)と電気的に接続される接点が設けられている。COFに実装されたドライバIC(図示略)は、制御部5の制御により、COFの配線を介して各駆動電極51に対して個別に、高電位(VDD電位)及び低電位(GND電位)のいずれかを選択的に付与する。
【0029】
複数の駆動電極51は、
図5に示すように、第1方向D1に配列されており、圧力室列10R(
図2参照)のそれぞれに対応する複数の駆動電極列51Rを形成している。複数の駆動電極列51Rは、第3方向D3に並んでいる。
【0030】
各駆動電極列51Rに対し、第1方向D1の一方(
図7の上方)及び他方(
図7の下方)のそれぞれに、ダミー電極59が設けられている。ダミー電極59は、平面におけるサイズ及び形状が駆動電極51と同じであり、当該駆動電極51と共に第1方向D1に等間隔に配置されている。ダミー電極59は、COFと電気的に接続されず、電位が付与されない。
【0031】
圧電層41の上面には、駆動電極51及びダミー電極59に加え、2つの高電位接続電極部54と、2つの低電位接続電極部55とが設けられている。
【0032】
2つの高電位接続電極部54(本発明の「第1給電部」)は、それぞれ、圧電層41の第3方向D3の一端(
図5の左端)及び他端(
図5の右端)において、圧電層41における第1方向D1の一方側(
図5の上側)に配置されている。2つの低電位接続電極部55(本発明の「第2給電部」)は、それぞれ、圧電層41の第3方向D3の一端(
図5の左端)及び他端(
図5の右端)において、圧電層41における第1方向D1の他方側(
図5の下側)に配置されている。
【0033】
高電位接続電極部54及び低電位接続電極部55は、それぞれ、第1方向D1に互いに離隔して配置された複数の接続電極54a,55aで構成されている。接続電極54a,55aは、平面におけるサイズ及び形状が互いに略同じである。ドライバICは、制御部5の制御により、COFの配線を介して、接続電極54aに高電位(VDD電位)を付与し、接続電極55aに低電位(GND電位)を付与する。接続電極54aは高電位に保持され、接続電極55aは低電位に保持される。
【0034】
高電位電極52(本発明の「第1共通電極」)は、
図6に示すように、圧電層42の上面に配置されており、幹部521と、幹部521から分岐した複数の枝部523と、各枝部523から分岐した複数の個別部52a(本発明の「第1個別部及び別の第1個別部」)とを含む。
【0035】
幹部521(本発明の「第1幹部」)は、圧電層42の第1方向D1の一端(
図6の上端)において、第3方向D3に延びる延在部521a(本発明の「第1延在部」)と、延在部521aの第3方向D3の両端に接続された2つの高電位受容部521b(本発明の「接点及び第1接点部」)とを含む。2つの高電位受容部521bは、それぞれ、圧電層42の第3方向D3の一端(
図6の左端)及び他端(
図6の右端)において、第1方向D1に延びている。
【0036】
2つの高電位受容部521bは、それぞれ、高電位接続電極部54を構成するいくつかの接続電極54aと第2方向D2に重なっている。2つの高電位受容部521bは、それぞれ、圧電層41に形成された貫通孔を介して当該接続電極54aと電気的に接続されており、当該接続電極54aから高電位を受ける。
【0037】
複数の枝部523(本発明の「第1枝部」)は、第3方向D3に並び、それぞれ延在部521aから第1方向D1の他方側(
図6の下側)に延びている。各個別部52aは、各圧力室10の第1方向D1の中央部分と第2方向D2に重なり、各駆動電極51と第2方向D2に重なる部分を有する(
図8参照)。
【0038】
複数の個別部52aは、
図6に示すように、第1方向D1に配列されており、圧力室列10R(
図2参照)のそれぞれに対応する複数の個別部列52aR(本発明の「第1個別部列」)を形成している。複数の個別部列52aRは、第3方向D3に並んでいる。
【0039】
幹部521の延在部521a及び高電位受容部521bは、
図6に示すように、枝部523及び個別部52aよりも平面サイズが幅広に形成されている。このため、高電位電極52においては、電荷と抵抗との積の値が、幹部521が最も高くなる。したがって、接続電極54aから高電位を受けたときに、幹部521が枝部523及び個別部52aよりも発熱する。
【0040】
圧電層42の上面には、高電位電極52に加え、2つの低電位接続電極部56と、2つの浮き電極部64と、浮き電極部65とが設けられている。
【0041】
2つの低電位接続電極部56(本発明の「第2給電部」)は、それぞれ、圧電層42の第3方向D3の一端(
図6の左端)及び他端(
図6の右端)において、圧電層42における第1方向D1の他方側(
図6の下側)に配置されている。2つの低電位接続電極部56は、それぞれ、第1方向D1に互いに離隔して配置された2つの接続電極56aと1つの接続電極56bとで構成されている。
【0042】
2つの浮き電極部64は、それぞれ、圧電層42の第3方向D3の一端(
図6の左端)及び他端(
図6の右端)において、第1方向D1において高電位受容部521bと低電位接続電極部56との間に配置されている。2つの浮き電極部64は、それぞれ、第1方向D1に互いに離隔して配置された複数の浮き電極64aで構成されている。
【0043】
浮き電極部65は、圧電層42の第1方向D1の他端(
図6の下端)に配置されている。浮き電極部65は、第3方向D3に互いに離隔して配置された複数の浮き電極65aで構成されている。浮き電極65aは、平面におけるサイズ及び形状が互いに略同じであり、第3方向D3に等間隔に配置されている。
【0044】
低電位接続電極部56の接続電極56aと、浮き電極部64の浮き電極64aとは、平面におけるサイズ及び形状が互いに略同じであり、第1方向D1に等間隔に配置されている。接続電極56bは、接続電極56aよりも第1方向D1の長さが長い。接続電極56a,56bは、圧電層41に形成された貫通孔を介して当該接続電極55aと電気的に接続されている。一方、浮き電極部64,65の各浮き電極64a,65aは、いずれの電極とも電気的に接続されず、電位が付与されない。
【0045】
低電位電極53(本発明の「第2共通電極」)は、
図7に示すように、圧電層43の上面に配置されており、幹部531と、幹部531から分岐した複数の枝部533と、各枝部533から分岐した複数の個別部53a(本発明の「第2個別部及び別の第2個別部」)とを含む。
【0046】
幹部531(本発明の「第2幹部」)は、圧電層43の第1方向D1の他端(
図7の下端)において、第3方向D3に延びる延在部531a(本発明の「第2延在部」)と、延在部531aの第3方向D3の両端に接続された2つの低電位受容部531b(本発明の「接点及び第2接点部」)とを含む。また、幹部531は、第1方向D1において、マニホールド流路11の一部に対し、幹部521の反藍に位置している(
図2、
図6及び
図7参照)。2つの低電位受容部531bは、それぞれ、圧電層43の第3方向D3の一端(
図7の左端)及び他端(
図7の右端)において、第1方向D1に延びている。
【0047】
2つの低電位受容部531bは、それぞれ、低電位接続電極部55を構成するいくつかの接続電極55a(
図5参照)及び低電位接続電極部56を構成するいくつかの接続電極56a,56b(
図6参照)と第2方向D2に重なっている。2つの低電位受容部531bは、それぞれ、圧電層42に形成された貫通孔を介して当該接続電極56a,56bと電気的に接続されている。したがって、各低電位受容部531bは、低電位接続電極部56(
図6参照)を介して低電位接続電極部55(
図5参照)と電気的に接続されており、低電位接続電極部55から低電位を受ける。
【0048】
複数の枝部533(本発明の「第2枝部」)は、第3方向D3に並び、それぞれ延在部531aから第1方向D1の一方側(
図7の上側)に延びている。複数の個別部53aのうち、第1方向D1の一端及び他端に位置する個別部53aを除き、各個別部53aは、第1方向D1に互いに隣接する2つの圧力室10に跨り、上記2つの圧力室10と第2方向D2に重なる部分を有する(
図8参照)。上記第1方向D1の一端及び他端に位置する個別部53aは、1つの圧力室10と第1方向D1に重なる部分を有する。また、各個別部53aは、各駆動電極51と第2方向D2に重なる部分を有する。
【0049】
複数の個別部53aは、
図7に示すように、第1方向D1に配列されており、圧力室列10R(
図2参照)のそれぞれに対応する複数の個別部列53aR(本発明の「第2個別部列」)を形成している。複数の個別部列53aRは、第3方向D3に並んでいる。
【0050】
幹部531の延在部531a及び低電位受容部531bは、
図7に示すように、枝部533及び個別部53aよりも平面サイズが幅広に形成されている。このため、低電位電極53においては、電荷と抵抗との積の値が、幹部531が最も高くなる。したがって、低電位接続電極部55から低電位を受けたときに、幹部531が枝部533及び個別部53aよりも発熱する。
【0051】
圧電層43の上面には、低電位電極53に加え、高電位接続電極部57と、2つの浮き電極部66とが設けられている。
【0052】
高電位接続電極部57は、圧電層43の第1方向D1の一端(
図7の上端)において、第3方向D3に延びる部分57aと、部分57aの第3方向D3の両端に接続された2つの部分57bとを有する。2つの部分57bは、それぞれ、圧電層43の第3方向D3の一端(
図7の左端)及び他端(
図7の右端)において、第1方向D1に延びている。
【0053】
2つの部分57bは、それぞれ、高電位電極52の各高電位受容部521b(
図6参照)と第2方向D2に重なっている。2つの部分57bは、それぞれ、圧電層42に形成された貫通孔を介して各高電位受容部521bと電気的に接続されている。したがって、各部分57bは、高電位受容部521b(
図6参照)を介して高電位接続電極部54(
図5参照)と電気的に接続されており、高電位接続電極部54から高電位を受ける。なお、高電位接続電極部57は、高電位受容部521bと接続されていなくてもよい。この場合、高電位接続電極部57には電位が付与されない。
【0054】
2つの浮き電極部66は、それぞれ、圧電層43の第3方向D3の一端(
図7の左端)及び他端(
図7の右端)において、第1方向D1において部分57bと低電位受容部531bとの間に配置されている。2つの浮き電極部66は、それぞれ、第1方向D1に互いに離隔して配置された複数の浮き電極66aで構成されている。浮き電極66aは、平面におけるサイズ及び形状が互いに略同じであり、第1方向D1に等間隔に配置されている。各浮き電極66aは、いずれの電極とも電気的に接続されず、電位が付与されない。
【0055】
図8に示すように、圧電層41のうち、第2方向D2において駆動電極51と高電位電極52の個別部52aとに挟まれた部分を、第1活性部91という。圧電層42,43のうち、第2方向D2において駆動電極51と低電位電極53の個別部53aとに挟まれた部分を、第2活性部92という。第1活性部91は主に上向きに分極され、第2活性部92は主に下向きに分極されている。圧電アクチュエータ22は、圧力室10毎に、1つの第1活性部91と、第1方向D1に第1活性部91を挟む2つの第2活性部92とから構成される、アクチュエータ部90を有する。
【0056】
ここで、
図9を参照し、あるノズル15からインクを吐出させる際の、当該ノズル15に対応するアクチュエータ部90の動作について説明する。
【0057】
プリンタ100が記録動作を開始する前は、
図9(a)に示すように、各駆動電極51に低電位(GND電位)が付与されている。このとき、駆動電極51と高電位電極52との電位差によって、第1活性部91にその分極方向に等しい上向きの電界が生じ、第1活性部91が面方向に収縮している。これにより、圧電層41~43における圧力室10と第2方向D2に重なる部分が、圧力室10に向かって(下向きに)凸となるように撓んでいる。このとき圧力室10は、圧電層41~43がフラットな場合と比べ、容積が小さくなっている。
【0058】
プリンタ100が記録動作を開始し、あるノズル15からインクを吐出させる際には、先ず、
図9(b)に示すように、当該ノズル15に対応する駆動電極51の電位が低電位(GND電位)から高電位(VDD電位)に切り替えられる。このとき、駆動電極51と高電位電極52との電位差がなくなることで、第1活性部91の収縮が解消される。一方、駆動電極51と低電位電極53との電位差が生じることで、第2活性部92にその分極方向に等しい下向きの電界が生じ、第2活性部92が面方向に収縮する。ただし、第2活性部92は、クロストーク(ある圧力室10におけるアクチュエータ部90の変形に伴う圧力変動が、当該圧力室10に隣接する別の圧力室10に伝わる現象)を抑制する機能を有するものであり、アクチュエータ部90の変形にほとんど寄与しない。つまり、このとき圧電層41~43は、圧力室10と第2方向D2に重なる部分が圧力室10から離れる方向に(上向きに)凸となるように撓まず、フラットな状態となる。これにより、圧力室10の容積は、
図9(a)に比べて大きくなる。
【0059】
その後、
図9(a)に示すように、当該ノズル15に対応する駆動電極51の電位が高電位(VDD電位)から低電位(GND電位)に切り替えられる。このとき、駆動電極51と低電位電極53との電位差がなくなることで、第2活性部92の収縮が解消される。一方、駆動電極51と高電位電極52との電位差が生じることで、第1活性部91にその分極方向に等しい上向きの電界が生じ、第1活性部91が面方向に収縮する。これにより、圧電層41~43における圧力室10と第1方向D1に重なる部分が、圧力室10に向かって(下向きに)凸となるように撓む。このとき、圧力室10の容積が大きく減少することで、圧力室10内のインクに大きな圧力が付与され、ノズル15からインクが吐出される。
【0060】
ここで、圧電層41の上面に配置された、駆動電極51、ダミー電極59、高電位接続電極部54及び低電位接続電極部55が、第1電極層71を構成する(
図5参照)。圧電層42の上面に配置された、高電位電極52、低電位接続電極部56、浮き電極部64,65が、第2電極層72を構成する(
図6参照)。圧電層43の上面に配置された、低電位電極53、高電位接続電極部57、及び、浮き電極部66が、第3電極層73を構成する(
図7参照)。また、高電位が本発明の「第1電位」に該当し、低電位が本発明の「第2電位」に該当する。
【0061】
また、各ヘッド1は、
図2に示すように、2つの温度センサ81,82を有する。2つの温度センサ81,82は、流路部材21の上面21aに配置されている。温度センサ81は、搬送方向において、流路部材21の上流側端部であって圧電アクチュエータ22よりも上流に配置されている。また、温度センサ82は、搬送方向において、流路部材の下流側端部であって圧電アクチュエータ22よりも下流に配置されている。
【0062】
また、2つの温度センサ81,82は、
図6及び
図7に示すように、第1方向D1において、高電位電極52の幹部521と低電位電極53の幹部531との間に配置されている。より詳細には、2つの温度センサ81,82は、第1方向D1において、幹部521の延在部521aと幹部531の延在部531aとの間の中央に配置されている。
【0063】
本実施形態における温度センサ81,82は、例えば、温度によって電気抵抗が変化する材料(Mn,Ni,Co等の複合金属酸化物)からなるNTCサーミスタ(Negative Temperature Coefficient Thermistor)からなるが、温度を検出可能なセンサであれば、特に限定するものではない。これら温度センサ81,82によって検出された検出温度は、制御部5に出力される。
【0064】
制御部5は、温度センサ81,82で検出された検出温度を補正係数に基づいて補正する。搬送機構4によって用紙9が所定の搬送速度で搬送されることで搬送方向に沿った気流がプリンタ100内に生じる。このときの気流により、流路部材21の底面は、搬送方向上流側が下流側よりも冷やされる。つまり、流路部材21の底面の搬送方向上流側の温度が、下流側の温度よりも低くなる。このため、搬送方向の上流側にある温度センサ81の方が、下流側にある温度センサ82よりも検出温度が低くなる傾向がある。本実施形態における補正係数は、温度センサ81,82の少なくとも一方により検出された検出温度に乗じることで、所定搬送速度の用紙搬送によって生じる2つの温度センサ81,82間の検出温度の差を小さくし、実際の流路部材21内のインクの平均温度に近い温度となるように予め実験で導出されたものである。また、補正係数は、温度センサ81,82の設置位置のバラツキによって生じる検出温度の誤差を補正するものでもある。つまり、補正係数は、各温度センサ81,82の検出温度に補正係数を乗じることで、実際の流路部材21内のインクの平均温度に近い温度となるように予め実験で導出されたものである。制御部5は、補正係数に基づいて補正した各温度センサ81,82の検出温度の平均値を導出する。こうして、制御部5によって導出されたヘッド1毎の平均値(温度)が、ヘッド1毎の吐出制御(アクチュエータ部90に印加される駆動電圧、駆動パルス幅、パルス数の決定等)に用いられる。
【0065】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ100のヘッド1によると、温度センサ81,82が、第1方向D1において、比較的、発熱の大きい2つの幹部521,531間に配置される。仮に温度センサ81,82が第1方向D1において2つの幹部521,531の外側に配置されている場合、2つの幹部521,531の発熱により影響を受けた流路部材21の流路全体におけるインクの平均温度を精度よく検出しにくくなる。しかしながら、本実施形態におけるヘッド1では、温度センサ81,82が、第1方向D1において、2つの幹部521,531間に配置されているため、温度センサ81,82が第1方向D1において2つの幹部521,531の外側に配置されているよりも、流路部材21の流路全体におけるインクの平均温度を精度よく検出することが可能となる。
【0066】
また、温度センサ81,82は、第1方向D1において、幹部521と幹部531との間の中央に配置されている。これにより、流路部材21の流路全体におけるインクの平均温度をより精度よく検出することが可能となる。
【0067】
また、温度センサ81,82は、第1方向D1において、延在部521a及び延在部531aの間に配置されている。これにより、複数の個別部52a及び個別部53aの配列に対応して配置された、延在部521aと延在部531aとの間に温度センサ81,82を配置することが可能となる。延在部521aと延在部531aは比較的発熱の高い部分である。このため、流路部材21の流路全体におけるインクの平均温度を精度よく検出することが可能となる。
【0068】
また、ヘッド1は、圧力室10毎に1つの第1活性部91と2つの第2活性部92とからなるアクチュエータ部90が形成された、3層構成の圧電アクチュエータ22を有する。このような3層構成の圧電アクチュエータ22では、第1活性部91の変形に伴う圧力変動が、隣接する圧力室10に伝達される際に、第2活性部92の変形によってキャンセルされることで、クロストークを効果的に抑制できる。
【0069】
また、プリンタ100の制御部5が、搬送方向の上流及び下流に配置された2つの温度センサ81,82によって検出された検出温度の平均値を導出する。これにより、用紙9の搬送気流による流路部材21の冷却の影響を小さくすることが可能となり、流路部材21の流路全体におけるインクの平均温度をより精度よく検出することが可能となる。
【0070】
また、プリンタ100の制御部5が、温度センサ81,82によって検出された検出温度を補正係数に基づいて補正する。これにより、温度センサ81,82によって検出された検出温度を補正することが可能となる。このため、流路部材21の流路全体におけるインクの平均温度をより精度よく検出することが可能となる。
【0071】
上述の実施形態においては、プリンタ100のヘッド1に、搬送方向上流側の温度センサ81と、搬送方向下流側の温度センサ82とが設けられていたが、温度センサはいずれか一方だけが設けられていてもよい。これにより、搬送方向の上流又は下流に配置された1つの温度センサ81(又は82)で検出した検出温度により、流路部材21の流路全体におけるインクの平均温度を検出することが可能となる。また、圧電アクチュエータ22よりも下流に配置された温度センサ82だけを採用した場合、用紙9の搬送気流による冷却の影響の少ない箇所で温度を検出することが可能となる。
【0072】
また、記憶部5aに複数の補正係数が記憶されていてもよい。例えば、用紙9の搬送速度に応じた複数の補正係数を記憶していてもよい。この場合、第1搬送速度で用紙9が搬送される場合、温度センサ81,82で検出された検出温度を第1補正係数に基づいて補正し、第1搬送速度と異なる第2搬送速度で用紙9が搬送される場合、温度センサ81,82で検出された検出温度を第1補正係数とは異なる第2補正係数に基づいて補正してもよい。
【0073】
上述の実施形態におけるプリンタ100には、ヘッド1が固定されたラインヘッド(ヘッドユニット1x)が採用されていたが、ヘッド1が搬送方向と交差する方向に移動しながら、用紙Pにノズル15からインクを吐出して画像を形成するシリアルタイプのヘッドが採用されてもよい。このようなシリアルプリンタの場合、ヘッド1は、第1方向D1が搬送方向と平行となるように配置され、図示しないキャリッジによって第3方向D3に移動しながら用紙9にインクを吐出し画像を形成する。
【0074】
このようなシリアルプリンタであっても、温度センサ81,82が、第1方向D1において、2つの幹部521,531間に配置される。このため、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、上述と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
【0075】
また、本変形例におけるシリアルプリンタにおいては、ヘッド1が第3方向D3に沿って往復移動する。このため、温度センサ81,82によって検出された検出温度は、用紙Pの搬送気流の影響による温度差が生じにくい。しかしながら、温度センサ81,82の設置位置おける検出温度のバラツキを補正するための補正係数を設定し、制御部5が当該補正係数を検出温度に乗じることで、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0076】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、温度センサ81,82は、第1方向D1において、2つの幹部521,531間に配置されておればよく、延在部521a及び延在部531aの中央よりも一方の延在部側に寄っていてもよい。また、温度センサ81,82は、流路部材21の上面21aに設置されているが、第1方向D1において2つの幹部521,531間に配置されておれば、流路部材21の他の表面に配置されていてもよい。
【0077】
制御部5は、補正係数に基づいて検出温度を補正しなくてもよい。この場合、記憶部5aに補正係数が記憶されていなくてもよい。また、制御部5は、2つの温度センサ81,82のうちのいずれか一方の温度センサによる検出温度を採用して、ヘッド1毎の吐出制御に用いてもよい。
【0078】
第1電位が高電位、第2電位が低電位であることに限定されず、第1電位が低電位、第2電位が高電位であってもよい。
【0079】
圧電アクチュエータ22を構成する圧電層の数は、上述の実施形態では3つであるが、2つ、又は、4つ以上であってもよい。例えば、上述の実施形態(
図4等参照)において、圧電層43の代わりに、ステンレス鋼等からなる振動板を設けてもよい。或いは、上述の実施形態(
図4等参照)において、圧電アクチュエータ22の圧電層43と流路部材21のプレート31との間に、別の圧電層を配置してもよい。
【0080】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出ヘッド及びこれを有する液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出ヘッド及びこれを有する装置)にも適用可能である。吐出対象は、用紙に限定されず、例えば布、基板等であってもよい。ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。
【符号の説明】
【0081】
1 ヘッド(液体吐出ヘッド)
4 搬送機構
5 制御部
5a 記憶部
10 圧力室
11 マニホールド流路(共通流路)
15 ノズル
19 個別流路
21 流路部材
21a 上面(表面)
22 圧電アクチュエータ(アクチュエータ部材)
81,82 温度センサ
41 圧電層(第1圧電層)
42 圧電層(第2圧電層)
51 駆動電極(第1電極)
52 高電位電極(第1共通電極)
52a 個別部(第1個別部)
52aR 個別部列(第1個別部列)
53 低電位電極(第2共通電極)
53a 個別部(第2個別部)
53aR 個別部列(第2個別部列)
54 高電位接続電極部(第1給電部)
55,56 低電位接続電極部(第2給電部)
71 第1電極層
72 第2電極層
73 第3電極層
90 アクチュエータ部
100 プリンタ(液体吐出装置)
521 幹部(第1幹部)
521a 延在部(第1延在部)
521b 高電位受容部(接点、第1接点)
523 枝部(第1枝部)
531 幹部(第2幹部)
531a 延在部(第2延在部)
531b 低電位受容部(接点、第2接点)
533 枝部(第2枝部)
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向