(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175394
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】キサンチンオキシダーゼ阻害用医薬組成物及び食品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4015 20060101AFI20231205BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231205BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20231205BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20231205BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61P43/00 111
A61P19/06
A23L33/10
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087817
(22)【出願日】2022-05-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】300022526
【氏名又は名称】TOWA CORPORATION 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】橋本 顕
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD18
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC08
4C086ZC20
4C086ZC31
(57)【要約】
【課題】 キサンチンオキシダーゼ阻害用医薬組成物及びキサンチンオキシダーゼ阻害用食品組成物の提供。
【解決手段】 本発明は5-アセチル-1ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなるキサンチンオキシダーゼ阻害用医薬組成物及びキサンチンオキシダーゼ阻害用食品組成物に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなるキサンチンオキシダーゼ阻害用医薬組成物。
【請求項2】
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなるキサンチンオキシダーゼ阻害用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサンチンオキシダーゼ阻害用の医薬組成物及び食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る医薬組成物及び食品組成物の有効成分たる5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン(5-Acetyl-1-benzylpyrrolidin-2-one)は、ピロリジンの5位に位置する炭素にアセチル基がついており、1位に位置する窒素にベンジル基がついており、2位に位置する炭素に酸素の二重結合がついている化合物である。
【0003】
この5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンについては、下記非特許文献1に合成化合物の一例として示唆されているが、存在が示唆されているにすぎず、具体的な属性については何らの開示も示唆もなされていない。
【0004】
また、下記特許文献1乃至3に示すように、本発明者は、既に5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンのPDE5阻害作用、エストラジオール産生促進作用及び筋肥大促進作用を見出しているが、キサンチンオキシダーゼ阻害作用については見出していなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】DESKUS、外2名、「SYNTHESIS OF 5S-(1-OXOALKYL AND ARYL)-2-PYRROLIDINONE DERIVATIVES」、SYNTHETIC COMMUNICATIONS、アメリカ合衆国、Marcel Dekker,Inc.、1998年5月、第28巻、第9号、p.1649-1659
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6537689号公報
【特許文献2】特許第6578046号公報
【特許文献3】特許第6962630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンがキサンチンオキシダーゼを阻害する作用を有していることを開示又は示唆する文献はない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、キサンチンオキシダーゼを阻害する作用を5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンが有していることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなるキサンチンオキシダーゼ阻害用医薬組成物またはキサンチンオキシダーゼ阻害用食品組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害用医薬組成物及び食品組成物は、キサンチンオキシダーゼが関与する分解を抑えることにより、尿酸合成阻害、活性酸素種発生阻害及びATP(adenosine triphosphate)増加若しくは欠乏緩和などの効果が期待でき、高尿酸血症、活性酸素種又はATP欠乏に起因する各種疾患の予防や改善、治療に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有するキサンチンオキシダーゼ阻害用医薬組成物に関する。本発明に係る医薬組成物は、キサンチンオキシダーゼ阻害に基づく尿酸合成阻害、活性酸素種発生阻害及びATPの増加若しくは欠乏緩和により、高尿酸血症およびこれに起因する各種疾患、活性酸素種関与の各種疾患、ATP欠乏に起因する各種疾患の予防及び/又は治療に貢献する。
【0012】
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンは、ピロリジンの5位に位置する炭素にアセチル基がついており、1位に位置する窒素にベンジル基がついており、2位に位置する炭素に酸素の二重結合がついている化合物であり、構造式は下記化1のとおりである。また、分子式はC13H15NO2である。
【0013】
【0014】
キサンチンオキシダーゼは、ヒポキサンチンからキサンチンへの分解、該キサンチンから尿酸への分解を触媒する酵素である。
【0015】
本発明に係る医薬組成物は、このキサンチンオキシダーゼの働きを阻害することにより、尿酸合成を阻害して血中尿酸値を低下させ、高尿酸血症及びこれに起因する各種疾患、たとえば、痛風関節炎、痛風結節の予防及び/又は治療に貢献する。
【0016】
また、キサンチンオキシダーゼの働きを阻害することは、ヒポキサンチンの分解やキサンチンの分解時に発生するスーパーオキシド等の活性酸素種の発生の抑制、いわゆる抗酸化につながり、活性酸素種関与の各種疾患、たとえば、動脈硬化や心不全などの心血管疾患の予防及び/又は治療に貢献する。
【0017】
さらに、キサンチンオキシダーゼの働きを阻害することにより、ヒポキサンチンの分解を阻止してヒポキサンチンのまま留め置くこととなる。このように、ヒポキサンチンを分解せずに留めることは、ヌクレオチドに再回収可能な状態を保持することとなり、エネルギー危機時のATP供給過程における、ヌクレオチド不足に起因した多量のATP消費という悪循環を断ち切ることができ、ATPの増強や欠乏の緩和が期待でき、ひいてはミトコンドリアの保護につながる。したがって、本発明に係る医薬組成物は、ATP欠乏に起因する各種疾患、たとえば、循環器疾患、心血管疾患、皮膚疾患等の予防及び/又は治療並びに老化防止に貢献する。
【0018】
本発明に係る医薬組成物は、医薬品又は医薬部外品として使用することができ、各種の形態とすることができる。これら医薬品又は医薬部外品は、例えば、散剤、丸剤、錠剤(例えば、コーティング錠、糖衣錠、チュワブル錠等)、カプセル剤(例えば、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤等)、顆粒剤、内服液剤(例えば、乳濁剤、懸濁剤、シロップ等)等の経口投与に適した剤形とすることができる。
【0019】
その他、例えば、坐剤等の直腸内投与に適した剤形、例えば、注射剤、輸液等の血管内投与、筋肉内投与、皮下又は皮肉投与等に適した剤形、例えば軟膏、クリーム剤、ゲル剤、又は液剤(点眼液、洗眼液等を含む。)等の局部的又は経皮的投与に適した剤形、すなわち非経口的投与に適した剤形とすることもできるが、好ましくは経口投与である。
【0020】
本発明の医薬組成物を錠剤、顆粒剤,カプセル剤、チュワブル錠の形態で用いる場合には、打錠加工助剤、顆粒加工助剤、カプセル加工助剤等をはじめとして既知の担体が用いられ得る。
【0021】
打錠加工助剤としては、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリン等あらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム、おから等の食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウム等の食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、粉末油脂類、グリセリン、脂肪酸エステル等の油脂類、又はチュワブル錠に使用する各種甘味料、各種酸味料、各種香料等の味付け素材、コーティング素材としてのシェラック、トウモロコシタンパク、酵母細胞壁、デンプン、還元麦芽糖水飴、シュガーレス糖衣、マルチトール、グリセリン、ソルビトール、HPMC、HPC等が例示される。ただし、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はない。
【0022】
また、顆粒加工助剤としても、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリン等あらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム等の食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウム等の食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類等が例示される。
【0023】
また、カプセル加工助剤としても、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、ハードカプセルタイプのカプセルを調製するための、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリン等あらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム等の食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウム等の食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類等が、ソフトカプセルタイプのカプセルを調製するための、食品油脂、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル等の内容物粘度調整剤等が、それぞれ例示される。
【0024】
錠剤は、通常、打錠機を使用して調製され得るが、錠剤に味付け素材をブレンドしてチュワブル錠にしたり、錠剤表面を、自動コーティング機、噴霧顆粒機、又は手掛けパンを用いてコーティングしたりしてもよい。顆粒剤の成形には、噴霧顆粒機タイプ、練りだし(押し出し)タイプ、又は高速撹拌顆粒機タイプの各種顆粒機が使用され得る。カプセル剤の調製には、カプセル助剤を混合してカプセル充填機(ハードタイプ及びソフトタイプ)が使用され得る。
【0025】
また、本発明は、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを有効成分として含有してなるキサンチンオキシダーゼ阻害用食品組成物に関する。本発明に係る食品組成物は、キサンチンオキシダーゼ阻害に基づく尿酸合成阻害、活性酸素種発生阻害及びATP増加・欠乏緩和により、高尿酸血症およびこれに起因する各種疾患、活性酸素種関与の各種疾患、ATP欠乏に起因する各種疾患の予防及び/又は改善に貢献する。またATP欠乏緩和により、ミトコンドリアの保護、ひいては老化防止に貢献することができる。
【0026】
本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害用食品組成物は、食品、飲料又は動物用飼料として、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、美容食品又は栄養補助食品(サプリメント)として使用することができる。これら食品、飲料及び動物用飼料は、例えば、アイスクリーム、ゼリー、あめ、チョコレート、及びチューインガム等の既知の食品形態、お茶及びジュース等の飲料水としての形態であってもよい。また、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤又は錠剤等の形態であってもよい。
【0027】
本発明に係るキサンチンオキシダーゼ阻害用医薬組成物及びキサンチンオキシダーゼ阻害用食品組成物の摂取量は、特に制限されないが、使用者若しくは患者等の摂取者又は摂取動物の年齢、体重又は症状等や剤形に応じて適宜選択することができる。また、摂取期間は、摂取者又は摂取動物の年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【実施例0028】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
〈キサンチンオキシダーゼ阻害効果試験〉
キサンチンオキシダーゼ活性測定はヒポキサンチン又はキサンチンを基質としてキサンチンオキシダーゼ添加によって最終的に生成する尿酸量を290nmの吸光度を測定することによって評価した。コントロールとして5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンを添加しない場合を100%として、5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オン存在下での吸光度の上昇抑制率を求めることにより5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンのキサンチンオキシダーゼ阻害効果があるか否かを確認した。
【0030】
〈方法〉
1)検体の調製
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンは、1%DMSO(Dimethyl Sulfoxide:ジメチ
ルスルホキシド)溶液(リン酸緩衝液)に溶解して調製した。
さらに1%DMSOで段階希釈し、試験用の濃度系列のサンプル液を調製した(15mg/mL~90mg/mL)。
2)―1 ヒポキサンチンを基質としたキサンチンオキシダーゼ阻害活性の測定
各濃度の被験物質50μL、100mMリン酸緩衝液35μL、0.1units/mLのキサンチンオキシダーゼ(Xanthine Oxidase from bovine milk:シグマアルドリッチ社製)30μLを混和し、37℃で15分間インキュベートした。さらに0.75 mMヒポキサンチンを60μL添加し、37℃で30分間反応させた。
次いで1N塩酸25μLを添加して、反応を停止させた。この時生成した尿酸を、プレートリーダーにて290nmにおける吸光度を測定した。
2)-2 キサンチンを基質としたキサンチンオキシダーゼ阻害活性の測定
各濃度の被験物質50μL、50mMリン酸緩衝液35μL、0.1units/mLのキサンチンオキシダーゼ(Xanthine Oxidase from bovine milk:シグマアルドリッチ社製)30μLを混和し、25℃で15分間インキュベートした。さらに1.5mMキサンチンを60μL添加し、25℃で30分間反応させた。
次いで1N塩酸25μLを添加して、反応を停止させた。この時生成した尿酸を、プレートリーダーにて290nmにおける吸光度を測定した。
3)解析
測定した反応液中の290nmにおける吸光度を用いて、キサンチンオキシダーゼ阻害率(%)
を以下計算式により求め、50%阻害率(IC50)に相当する濃度を得た。
阻害率(%)=100-{(D吸光度-C吸光度)/(B吸光度-A吸光度)×100}
A:被験物質無添加、酵素添加での290nmにおける吸光度
B:被験物質無添加、酵素無添加での290nmにおける吸光度
C:被験物質添加、酵素添加での290nmにおける吸光度
D:被験物質添加、酵素無添加での290nmにおける吸光度
【0031】
〈結果〉
5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンのIC50はヒポキサンチンを基質とした場合は18.8mg/mL、キサンチンを基質とした場合は11.5mg/mLであった。
この結果から5-アセチル-1-ベンジルピロリジン-2-オンはキサンチンオキシダーゼ阻害
効果を有することを確認した。