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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023175525
(43)【公開日】2023-12-12
(54)【発明の名称】印刷装置及び消耗品付き印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20231205BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20231205BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20231205BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B41J29/38 204
G06Q50/10
G06F3/12 303
G06F3/12 329
B41J2/175 161
B41J2/175 167
B41J2/175 175
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088006
(22)【出願日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 貞明
(72)【発明者】
【氏名】森 哲憲
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
5L049
【Fターム(参考)】
2C056EB20
2C056EB50
2C056EC19
2C056KC02
2C056KC05
2C061AP01
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AR01
2C061HJ07
2C061HK11
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】契約消耗品が用意できていなくても所定の場合にはサブスクリプション等の印刷サービスの利用を実現する。
【解決手段】サブスク契約の締結内容に対応したサブスクモード、及び、サブスク契約の締結内容に対応していないリテールモード、で動作可能な複合機200であって、カートリッジメモリ55に記憶された情報であって、当該インクカートリッジ50がサブスクモードに対応したサブスク種別であることを表すサブスクフラグ、及び、リテールモードに対応したリテール種別であることを表すリテールフラグのどちらがオンとなっているか識別するS17の手順と、リテールフラグがオンであると識別されサブスクモードで動作する必要が生じた場合には、当該インクカートリッジ50をサブスクカートリッジ50Sとして取り扱うためのサブスクフラグのみオン状態に書き換える、S40の手順と、を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷に使用する消耗品が装着可能な装着部と、
前記装着部に装着された前記消耗品を用いて被印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、
制御部と、
を有し、
前記印刷に使用する消耗品に関する契約元との契約の締結内容に対応した契約モード、及び、前記契約の締結内容に対応していない未契約モード、で動作可能な印刷装置であって、
前記制御部は、
前記装着部に装着された前記消耗品に備えられた消耗品記憶部に記憶された消耗品情報であって、当該消耗品が前記契約モードに対応した種別である第1種別であることを表す第1種別情報、及び、前記未契約モードに対応した種別である第2種別であることを表す第2種別情報のいずれかを含む、前記消耗品情報の取得を図る消耗品情報取得処理と、
前記消耗品情報取得処理の取得結果に基づき、当該消耗品の前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第1種別情報が含まれるか前記第2種別情報が含まれるかを識別する種別識別処理と、
前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第2種別情報が含まれていると前記種別識別処理において識別され前記契約モードにて動作する必要が生じた場合には、当該消耗品を前記第1種別として取り扱うための所定情報を前記消耗品記憶部に書き込む、情報書き込み処理と、
を実行する、印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記契約モードでの動作中に前記装着部に新たに装着された前記消耗品が、前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第2種別情報が含まれていると前記種別識別処理において識別された場合に、前記情報書き込み処理を実行する、請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記装着部には複数の消耗品が装着されるよう構成されており、
前記制御部は、
前記種別識別処理において少なくとも1つの前記消耗品の前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第2種別情報が含まれると識別された場合で、当該消耗品の前記消耗品情報が所定条件を満たしている場合には、前記契約モードによる動作開始時に、前記情報書き込み処理を実行する、
請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記契約モードによる動作開始時は、
前記契約が締結された後に前記印刷装置向けに配送された前記第1種別の前記消耗品が到着し、前記装着部に装着されたタイミングである、
請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記種別識別処理の識別結果が所定条件を満たしている場合には、前記契約が成立したときに、前記情報書き込み処理を実行する、請求項1記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記契約モードが解除される時、前記消耗品を前記第1種別として取り扱うための前記所定情報を無効化する無効化処理を実行する、
請求項1記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記装着部に装着された少なくとも1つの前記消耗品に対し前記種別識別処理において前記第2種別情報が識別された場合に、それら消耗品すべてに対応した前記消耗品記憶部に対し前記情報書き込み処理を実行することで、前記装着部に装着されたすべての前記消耗品を前記第1種別として取り扱う、請求項3記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第1種別情報と前記第2種別情報とは、
いずれか一方が真とし、他方が偽として記録される情報であり、
前記制御部は、
前記情報書き込み処理において、前記第1種別情報を前記所定情報として、前記第2種別情報を前記第1種別情報に書き換える、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記所定情報は、前記第2種別の前記消耗品が前記契約モードで使用されていることを表す情報である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記所定情報は、前記消耗品を複数回の期間に分けて前記契約モードで動作可能とするための情報である、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
印刷に使用する消耗品と、
前記消耗品が装着可能な装着部と、
前記装着部に装着された前記消耗品を用いて被印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、
制御部と、
を有し、
前記印刷に使用する消耗品に関する契約元との契約の締結内容に対応した契約モード、及び、前記契約の締結内容に対応していない未契約モード、で動作可能な、消耗品付き印刷装置であって、
前記消耗品は、
前記契約モードに対応した第1種別、若しくは、前記未契約モードに対応した第2種別、のいずれか一方の種別であり、
前記制御部は、
前記装着部に装着された前記消耗品に備えられた消耗品記憶部に記憶された消耗品情報であって、当該消耗品が前記第1種別であることを表す第1種別情報、及び、前記第2種別であることを表す第2種別情報のいずれかを含む、前記消耗品情報の取得を図る消耗品情報取得処理と、
前記消耗品情報取得処理の取得結果に基づき、当該消耗品の前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第1種別情報が含まれるか前記第2種別情報が含まれるかを識別する種別識別処理と、
前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第2種別情報が含まれていると前記種別識別処理において識別され前記契約モードにて動作する必要が生じた場合には、当該消耗品を前記第1種別として取り扱うための所定情報を前記消耗品記憶部に書き込む、情報書き込み処理と、
を実行する、消耗品付き印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗品を用いて被印刷媒体に画像を印刷する印刷装置、及び、消耗品付き印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のように、ユーザと印刷サービス業者との間でサブスクリプション契約が締結され、所定期間内における印刷量の上限値以内の印刷を、ユーザの定額負担のみで可能とする手法が知られている。この従来技術においては、上記のようなサブスクリプションビジネスの態様と、ユーザが自ら購入した市販の消耗品を印刷装置に装着して使用するリテールビジネスの態様と、の両方が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-7723公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術において、サブスクリプション契約の締結後は、前述のリテールビジネス態様において使用される市販の消耗品とは異なる、そのサブスクリプション契約に対応した特定の消耗品(以下適宜、「契約消耗品」と称する)が用いられる。この契約消耗品は多くは印刷サービス業者より配送される。
【0005】
ここで新たに、当初、ユーザが自ら印刷装置を購入し当該印刷装置に同梱されていた消耗品や市販の消耗品を装着して印刷を行っていた(以下適宜、「リテール使用」と称する)が、その後新たにサブスクリプション契約を締結した場合を考える。この場合、例えば所定の配送元から配送された上記契約消耗品がユーザの元へ届くまでの間は、契約消耗品を用いた前述の定額負担での印刷動作は行われずに、市販消耗品を用いた通常の印刷動作が行われることになる。
また、例えばサブスクリプション契約に基づき複数の消耗品が配送される場合には、1つの消耗品が到着した後も、他の消耗品が到着して上記複数の消耗品が揃うまでは、前述の定額負担での印刷動作は行われず市販消耗品を用いた通常の印刷動作が行われる場合があり得る。
さらに、例えばサブスクリプション契約に基づき上記契約消耗品が装着されて前述の定額負担での印刷動作が行われていたが、予想より早く契約消耗品が消耗したためやむを得ずユーザが市販の消耗品を装着して印刷を行う場合やユーザの所在地が効率的な配送に適さず市販の消耗品を装着して印刷を行う方が適している場合もあり得る。
【0006】
上記いずれの場合も、前述のようにサブスクリプション等の印刷サービス契約が既に締結されているにもかかわらず、上記契約消耗品が装着されていないためにユーザが所望する当該印刷サービスを直ちに受けられなかったり或いは一時的に受けられなくなったりしてしまう。
【0007】
本発明の目的は、契約消耗品が用意できていなくても所定の場合にはサブスクリプション等の印刷サービスを利用できる、印刷装置及び消耗品付き印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明の印刷装置は、印刷に使用する消耗品が装着可能な装着部と、前記装着部に装着された前記消耗品を用いて被印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、制御部と、を有し、前記印刷に使用する消耗品に関する契約元との契約の締結内容に対応した契約モード、及び、前記契約の締結内容に対応していない未契約モード、で動作可能な印刷装置であって、前記制御部は、前記装着部に装着された前記消耗品に備えられた消耗品記憶部に記憶された消耗品情報であって、当該消耗品が前記契約モードに対応した種別である第1種別であることを表す第1種別情報、及び、前記未契約モードに対応した種別である第2種別であることを表す第2種別情報のいずれかを含む、前記消耗品情報の取得を図る消耗品情報取得処理と、前記消耗品情報取得処理の取得結果に基づき、当該消耗品の前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第1種別情報が含まれるか前記第2種別情報が含まれるかを識別する種別識別処理と、前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第2種別情報が含まれていると前記種別識別処理において識別され前記契約モードにて動作する必要が生じた場合には、当該消耗品を前記第1種別として取り扱うための所定情報を前記消耗品記憶部に書き込む、情報書き込み処理と、を実行する。
【0009】
本願発明の印刷装置では、契約モードと未契約モードとの2つのモードにより動作可能である。契約モードは、印刷に使用する消耗品に関する契約元との契約の締結内容に対応したものであり、例えばサブスクリプション契約に対応して所定期間内における印刷量の上限値以内の印刷がユーザの定額負担のみで可能となる動作モードである。未契約モードは、リテール使用に対応したものであり、ユーザが自ら購入した市販の消耗品を印刷装置の装着部に装着して使用する場合の動作モードである。
【0010】
装着部に装着されうる消耗品は、上記契約モードに対応した第1種別と、上記未契約モードに対応した第2種別と、が含まれる。消耗品は、消耗品情報を記憶する消耗品記憶部を有する。第1種別の消耗品の消耗品記憶部に記憶された消耗品情報には、第1種別であることを表す第1種別情報が含まれる。第2種別の消耗品の消耗品記憶部に記憶された消耗品情報には、第2種別であることを表す第2種別情報が含まれる。消耗品情報は、制御部が実行する消耗品情報取得処理において取得され、第1種別情報及び第2種別情報のうちいずれか含まれるのか、が種別識別処理において識別される。
【0011】
本来であれば、印刷装置が契約モードで動作する場合は第1種別の消耗品が装着された状態であり、印刷装置が未契約モードで動作する場合は第2種別の消耗品が装着された状態である。
【0012】
本願発明では、何らかの理由で印刷装置が契約モードで動作する必要が生じたにも関わらず第2種別の消耗品が装着される場合に対応し、このような場合には制御部により情報書き込み処理が行われる。情報書き込み処理では、第2種別の消耗品の消耗品記憶部内に記憶されている第2種別情報が、消耗品を第1種別として取り扱うための所定情報が消耗品記憶部に書き込まれる。そのため、印刷装置では、これ以降、当該消耗品を第1種別の消耗品であると疑似的に取り扱うことができ、第1種別の消耗品を用いた契約モードでの動作と同等の動作を円滑に行うことが可能となる。
【0013】
本願発明によれば、契約消耗品が用意できていなくても所定の場合にはサブスクリプション等の印刷サービスを利用できる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本願発明の消耗品付き印刷装置は、印刷に使用する消耗品と、前記消耗品が装着可能な装着部と、前記装着部に装着された前記消耗品を用いて被印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、制御部と、を有し、前記印刷に使用する消耗品に関する契約元との契約の締結内容に対応した契約モード、及び、前記契約の締結内容に対応していない未契約モード、で動作可能な、消耗品付き印刷装置であって、前記消耗品は、前記契約モードに対応した第1種別、若しくは、前記未契約モードに対応した第2種別、のいずれか一方の種別であり、前記制御部は、前記装着部に装着された前記消耗品に備えられた消耗品記憶部に記憶された消耗品情報であって、当該消耗品が前記第1種別であることを表す第1種別情報、及び、前記第2種別であることを表す第2種別情報のいずれかを含む、前記消耗品情報の取得を図る消耗品情報取得処理と、前記消耗品情報取得処理の取得結果に基づき、当該消耗品の前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第1種別情報が含まれるか前記第2種別情報が含まれるかを識別する種別識別処理と、前記消耗品記憶部内の前記消耗品情報に前記第2種別情報が含まれていると前記種別識別処理において識別され前記契約モードにて動作する必要が生じた場合には、当該消耗品を前記第1種別として取り扱うための所定情報を前記消耗品記憶部に書き込む、情報書き込み処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、契約消耗品が用意できていなくても所定の場合にはサブスクリプション等の印刷サービスを利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による印刷処理システムの全体概略構成を表す機能ブロック図である。
図2】リテールカートリッジとサブスクカートリッジの概略構成を表す機能ブロック図である。
図3】リテールカートリッジとサブスクカートリッジの流通態様の違いを説明する図である。
図4】サブスク契約時に印刷不可の期間が生じる比較例を説明する図である。
図5】第1実施形態の場合の運用モードの切替手法を説明する図である。
図6】第1実施形態の場合の複合機における制御手順を表すフローチャートである。
図7】モード別印刷処理の手順を表すフローチャートである。
図8】第2実施形態の場合の運用モードの切替手法を説明する図である。
図9】第2実施形態の場合の複合機における制御手順を表すフローチャートである。
図10】第3実施形態の場合のインクカートリッジの管理手法を説明する図である。
図11】第3実施形態の場合の複合機における制御手順を表すフローチャートである。
図12】デポジット印刷枚数の分割付与を説明する図である。
図13】第4実施形態の場合のインクカートリッジの管理手法を説明する図である。
図14】第4実施形態の場合の複合機における制御手順を表すフローチャートである。
図15】疑似サブスクフラグを備えたリテールカートリッジの概略構成を表す機能ブロック図である。
図16】複数ビット列で時系列的な種別フラグの変化を記録する場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る印刷処理システムを図1に示す。本実施形態は、印刷サービス契約の一例として、ユーザと印刷サービス業者との間で所定期間内における印刷量の上限値以内の印刷を、ユーザの定額負担のみで可能とするサブスクリプション契約に基づく動作が可能な、印刷処理システム1の実施形態である。そして本実施形態では、後述するサブスクリプション専用のインクカートリッジを複合機に実際に装着したタイミングでサブスクリプション契約の実行を開始する場合について説明する。
【0018】
<印刷処理システムの概要>
図1において、この印刷処理システム1は、情報管理サーバ100と、複合機200と、配送管理サーバ400と、を含んでいる。これら情報管理サーバ100、複合機200、及び配送管理サーバ400は、ネットワークNTに接続されており、互いに通信可能である。なお、複合機200が印刷装置の一例である。
【0019】
<情報管理サーバ>
情報管理サーバ100は、例えば複合機200のメーカーが設置及び管理するサーバであり、プロセッサ110と、記憶装置115と、インタフェース190と、を有している。これらプロセッサ110、記憶装置115、及びインタフェース190は、バス105を介して互いに接続されている。
【0020】
記憶装置115は、揮発性記憶装置120と、不揮発性記憶装置130と、を備えている。揮発性記憶装置120は、例えば、DRAMであり、各種のデータを一時的に保存する。不揮発性記憶装置130は、例えば、ハードディスクドライブ、あるいはソリッドステートドライブであり、プログラム記憶領域131と、カートリッジデータベース132と、ユーザデータベース133と、特に図示しないデータ記憶領域と、を有している。
【0021】
プロセッサ110は、データ処理を行う装置であり、例えば、CPUである。プロセッサ110は、プログラム記憶領域131に格納されたプログラムを実行することによって、ネットワークNTに接続された複合機200、配送管理サーバ400に対するデータ通信を含む各種の処理を実行する。
【0022】
インタフェース190は、他の装置と通信するための有線LANインタフェース又は無線インタフェースであり、ネットワークNTに接続されている。
【0023】
<配送管理サーバ>
配送管理サーバ400は、例えば各種物品の配送サービスを行う会社に設置されており、プロセッサと、記憶装置と、ネットワークNTに接続するためのインタフェースと、を有している(図示省略)。
【0024】
<複合機>
複合機200は、例えば、上記印刷サービスを提供する事業者によって保有されている。なお、この複合機200は、使用するユーザの個人所有のものであってもよい。複合機200は、インタフェース270と、プロセッサ210と、印刷部290と、スキャナ部280と、通信部52と、カートリッジホルダ51と、記憶装置215と、表示部240と、操作部250と、を有している。これらインタフェース270、プロセッサ210、印刷部290、スキャナ部280、通信部52、記憶装置215、表示部240、及び操作部250は、バス205を介して互いに接続されている。
【0025】
記憶装置215は、揮発性記憶装置220と、不揮発性記憶装置230とを、含んでいる。揮発性記憶装置220は、例えば、DRAMであり、各種のデータを一時的に保存する。不揮発性記憶装置230は、例えば、フラッシュメモリである。不揮発性記憶装置230は、運用パラメータ記憶領域231と、契約内容データ記憶領域232と、処理済みIDリスト記憶領域233と、プログラム記憶領域234とを備えている。プログラム記憶領域234には各種プログラムが格納されており、それら各種プログラムには、後述の図6図7等のフローチャートの実行に係わる処理プログラムが含まれる。この処理プログラムは、例えば、ファームウェアとしてプログラム記憶領域234に予め格納されている。運用パラメータ231、契約内容データ232、処理済みIDリスト233についてはそれぞれ後述する。
【0026】
プロセッサ210は、各種の処理を行う装置であり、例えば、CPUである。なおプロセッサ210が制御部の一例である。プロセッサ210は、プログラム記憶領域234に格納された上記処理プログラムを実行する。
【0027】
表示部240は、例えば、液晶ディスプレイである。操作部250は、ユーザによる操作を受け付ける装置である。ユーザは、操作部250を操作することによって、種々の指示を複合機200に入力可能である。インタフェース270は、他の装置と通信するための有線または無線のネットワークインタフェースであり、ネットワークNTに接続されている。なお、このインタフェース270が通信I/Fの一例である。
【0028】
スキャナ部280は、CCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて光学的に読取り対象物である原稿を読み取ることによって、読み取った画像を表すスキャンデータを生成する。
【0029】
印刷部290は、図示しない搬送機構により給紙トレイ中の用紙を取り出して搬送しつつ、その搬送される用紙に対して所定の方式で画像を印刷する。以下は、インクジェット方式で印刷が行われる場合を例にとって説明する。すなわち、印刷部290は、カートリッジホルダ51に着脱可能に装着されるインクカートリッジ50のインクを用いて、用紙に対し画像の形成を行う。なお、インクカートリッジ50について詳細には、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)、ブラックインク(K)、それぞれのインクカートリッジ50が含まれるが、以下、便宜上、特に断らない限り、それらを区別せず単に「インクカートリッジ50」と表記して説明する。なお、インクカートリッジ50を備えた状態の複合機200が消耗品付き印刷装置の一例である。
【0030】
通信部52は、例えば端子などであり、カートリッジホルダ51に装着されたインクカートリッジ50が有するカートリッジメモリ(後述)に電気的に接続されてその記録内容に対する読み込みと書き込みを行う。
【0031】
<運用形態とインクカートリッジの種別について>
本実施形態の印刷処理システム1は、その運用形態としてこれまで一般的に行われているリテール運用形態の他にも、上述したようにユーザと印刷サービス業者との間で締結したサブスクリプション契約に基づくサブスクリプション運用形態も対応可能となっている(以下、「サブスクリプション」を適宜「サブスク」と略記)。
【0032】
ここでリテールモードの運用形態とは、ユーザが自ら店舗等で個別に有償購入した市販の消耗品を複合機200に補充して印刷を行う運用形態である。これに対してサブスクモードの運用形態は、所定期間中における所定印刷枚数内に限り特定の契約消耗品について定額料金で使い放題となる運用形態であり、その特定消耗品が欠乏した際の補充は印刷サービス業者の負担によって提供され、ユーザの課金対象とならない。このサブスク契約で適用する特定消耗品としては、例えば用紙、インク、使用済みインクを貯留する廃液タンク、印刷する際にインクを用紙に吹き付けるインクヘッド、及び用紙を切断するカッターなどがあるが、本実施形態の例では特にインクが充填されたインクカートリッジ50を契約消耗品としてサブスク契約する場合について説明する。この場合、インクカートリッジ50が消耗品の一例であり、カートリッジホルダ51が装着部の一例であり、用紙が被印刷媒体の一例であり、サブスクモードが契約モードの一例であり、リテールモードが未契約モードの一例であり、インクが印刷剤の一例であり、インク残量が残量又は消費量を表す消耗状態量の一例であり、サブスク契約が定額契約の一例である。
【0033】
複合機200の製品ラインナップとしては、リテール専用機と、サブスク専用機と、リテール/サブスクの運用の切り替えが可能なハイブリッド機とがあるが、本実施形態の例ではハイブリッド機を使用する場合について説明する。このハイブリッド複合機200の初期導入時には、デフォルトとして上記運用パラメータがリテールモードに設定され、4色分それぞれのカートリッジホルダ51にいずれも後述するリテールカートリッジが装着されたリテール運用状態となっている。そしてリテール運用開始後に、例えばユーザが任意のタイミングで複合機200の操作部250を操作し、ネットワークNTを介したサブスク契約の締結手続きを上記情報管理サーバ100に対して行うことで、リテール運用形態からサブスク運用形態に切り替えることができる。このとき、当該サブスク契約を行う期間や上限印刷枚数などといった具体的な契約内容が上記契約内容データ記憶領域232に記憶される。
【0034】
そしてインクカートリッジ50について基本的には、リテール運用時とサブスク運用時でそれぞれ異なる種別のインクカートリッジ50R,50Sを使い分ける。図2(a)にリテール専用のリテールカートリッジ50Rの構成概略図を示し、図2(b)にサブスク専用のサブスクカートリッジ50Sの構成概略図を示す。これらリテールカートリッジ50Rとサブスクカートリッジ50Sは、互いにYMCKの4色共通でカートリッジそのものの機械的構成(ハードウェア構成)は同じであるが、内部に充填されるインク自体は化学成分が若干異なるものが使用されることもある。
【0035】
インクカートリッジ50R,50Sは、カートリッジメモリ55と、インクタンク56とを備えている。カートリッジメモリ55は、例えばフラッシュメモリであり、複合機200の上記通信部52を介して各種データの読み出しと書き込みが可能となっている。カートリッジメモリ55には、当該インクカートリッジ50R,50Sがリテールとサブスクのいずれの種別にあるかを表す種別フラグと、当該インクカートリッジ50R,50Sの製造個体を識別する製造IDと、製造メーカー情報(図示する例では「ブラザー工業」)と、その他各種情報が工場製造時に記録されている。インクタンク56には、当該インクカートリッジ50R,50Sの種別と色に対応した化学成分のインクが充填され、インク残量が複合機200により管理される。複合機200は、一例として、新品時からのインクの累積使用量をドットごとにカウントすることでインク残量を管理する。なお以下における図中では、視認での区別が容易となるよう、リテールカートリッジ50Rのインクを黒色で示し、サブスクカートリッジ50Sのインクを網掛けで示している。なお、複合機200での印刷時には、各種別のインク成分に対応して異なる印刷制御が行われる。なお、カートリッジメモリ55が消耗品記憶部の一例であり、このカートリッジメモリ55に記録される種別フラグ、製造ID、及び製造メーカーの各情報が消耗品情報の一例であり、種別フラグのサブスク種別が第1種別の一例であり、リテール種別が第2種別の一例であり、種別フラグの情報が第1種別情報及び第2種別情報の一例である。
【0036】
なおこの例では、種別フラグにはリテールフラグとサブスクリプションフラグ(以下、サブスクフラグ)の2種類があり、必ずリテールフラグとサブスクフラグのどちらか一方が真を意味するオン状態となり、他方が偽を意味するオフ状態となるよう切り替えられる。これにより、当該インクカートリッジ50の種別が、オンとなっているいずれか一方で表現される。
【0037】
<インク種別間での流通態様の違いに伴うサブスク契約時の問題について>
上記のリテールカートリッジ50Rとサブスクカートリッジ50Sは、それぞれユーザに対する流通態様が大きく相違する。例えば図3に示すように、リテールカートリッジ50Rの場合は、国内各地に多数ある家電販売店などの近隣店舗に多数のリテールカートリッジ50Rがあらかじめ在庫として用意されるため、ユーザは当該店舗に直接来店して購入、もしくは通販で発注しても、1つのリテールカートリッジ50Rからすぐに入手できる。これに対してサブスクカートリッジ50Sは、上記情報管理サーバ100より配送管理サーバ400を介し配送拠点に配送の手配がなされる。配送拠点の数は家電販売店より少なく、また配送にかかるコスト上の理由から一部の区間においては他の配送物とともにまとめて輸送されるため相当の時間を要する。その結果リテールカートリッジ50Rと比較して、サブスクカートリッジ50Sの入手には長い時間が必要となる。
【0038】
このことから、ハイブリッド複合機200でリテール運用中にサブスク契約を新規に締結した際には、図4に示す比較例のように当該複合機200で印刷不可となる期間が発生してしまう。すなわち、ハイブリッド複合機200を新規に導入した際には、上述したようにデフォルトとしてYMCK4色のリテールカートリッジ50Rが装着され、初期的にリテールモードで運用される。このときは、装着しているインクカートリッジ50の種別とこの時点の運用モードの種別が同じリテールモードで一致していることで、当該ハイブリッド複合機200における印刷動作が可能となる。そしてこのリテールモードでの運用中には、各色のリテールカートリッジ50Rが消耗してインク残量が欠乏した場合でも、ユーザは近隣店舗ですぐに新しいリテールカートリッジ50Rを入手して印刷を続行できる。
【0039】
しかし、そのリテールモードの運用中にユーザが新規にサブスク契約を締結した場合には、全色のサブスクカートリッジ50Sを一斉に発注するものの、それらが到着して当該ハイブリッド複合機200に装着されるまでの配送期間中は印刷不可となってしまう。これは、サブスク契約時に当該ハイブリッド複合機200の運用パラメータをサブスクモードに切り替えることで、その時点で装着されているリテールカートリッジ50Rが使用できなくなるためである。そして発注した全色のサブスクカートリッジ50Sが到着して一斉にハイブリッド複合機200に装着した際に初めてサブスクモードが開始されて印刷枚数のカウントアップが開始されるが、それまでの配送期間(印刷不可期間)の分だけ時間契約であるサブスク運用料金がむだになってユーザに不利益が生じてしまう。また、使用途中で交換したリテールカートリッジ50Rはそれ以降使用されなくなり、その余剰分のインク残量だけユーザ側にとって不利益が生じてしまう。
【0040】
<本実施形態の場合の運用モード切替手法について>
これに対して本実施形態では、図5に示すように、リテール運用中で新規にサブスク契約を行ってもリテールカートリッジ50Rを使用するリテール運用を継続することとし、また自動的にインク残量がある程度少なくなったと判定された色から対応するサブスクカートリッジ50Sを順次発注する。この発注タイミングは、複合機200における当該色のリテールカートリッジ50Rのインク残量が欠乏する前に、対応色のサブスクカートリッジ50Sがその配送期間を考慮して到着可能なタイミングが望ましい。これにより、各色それぞれのリテールカートリッジ50Rの完全なインク欠乏後に速やかに対応する色のサブスクカートリッジ50Sを交換装着することが可能となる。つまり、製造されてから実際に装着使用されるまで所定の保存可能期限がサブスクカートリッジ50Sに設定されている場合でも、その期限内で装着することが可能となる。
【0041】
また本実施形態では、最初のサブスクカートリッジ50Sが到着してリテールカートリッジ50Rと交換装着した際に初めて運用パラメータをサブスクモードに切り替え、さらにその時点で装着している全てのインクカートリッジ50の種別フラグを一斉にサブスクリプションに書き換える。つまり、最初のサブスクカートリッジ50Sの交換装着時には、他の3つのリテールカートリッジ50Rを疑似サブスクカートリッジ50S′として混用することでサブスクモードの運用を可能にする。
【0042】
また、このようなインクカートリッジ50の種別フラグの書き換えは、同じカートリッジメモリ55に記録されている製造メーカー情報を取得し、当該インクカートリッジ50がサブスクのサービス提供の前提となるメーカー純正品であることを条件として行う。そして種別フラグの書き換えを行ってサブスクモードを開始した際には、その時点をサブスク契約の周期起点として開始する。なお、このようなメーカー純正品である条件が所定条件の一例である。
【0043】
また、本実施形態の例では、最初のサブスクモードの開始時において全てのリテールカートリッジ50Rのインク残量を検出し、それらインク残量に基づいて設定したデポジット印刷枚数を上記契約内容データに記録する。このデポジット印刷枚数は、一例として、ユーザがサブスク契約で設定した契約期間内で上限印刷枚数以上に印刷した場合に、さらに追加的に無償適用できる印刷枚数である。つまり、上記サブスクモード開始時点における全ての疑似サブスクカートリッジ50S′(元リテールカートリッジ50R)のインク残量はユーザ側の金銭的負担分としてみなせるため、当該印刷処理システム1がそれと同等にデポジット印刷枚数の形で適用することでユーザに利益還元することができる。ここで、デポジット印刷枚数はリテールカートリッジ50Rに残ったインクがサブスクモードで印刷されることに応じたものなので、サブスクモードで印刷されるごとにデポジット印刷枚数が徐々に増加するように制御してもよい。或いは、疑似サブスクカートリッジ50S′(元リテールカートリッジ50R)のインクがまだ残っている状態でサブスクカートリッジ50S交換された場合、デポジット印刷枚数をインク残量に応じて減じるようにしてもよい。なお、デポジット印刷枚数が所定許容量の一例である。
【0044】
そして、全てのリテールカートリッジ50R(疑似サブスクカートリッジ50S′)に対しては、それぞれサブスクカートリッジ50Sに順次交換装着する直前で種別フラグをリテールに戻すよう書き換える。例えばインク残量が空になったことを検知したときである。これにより、交換後のリテールカートリッジ50Rが全てインク残量のない空の状態であって、かつ種別フラグの内容が正しいリテール種別となるため、種別に応じた適切なリユース又はリサイクルを行うことができる。ここで、疑似サブスクカートリッジ50S′の種別フラグはサブスクモードにおいてもリテールのままとしてもよい。その場合、複合機200は疑似サブスクカートリッジ50S′とするカートリッジの製造IDを複合機200の不揮発性記憶装置230内に記憶することで、例えば電源がオフされたのちの利用時においても継続して疑似サブスクカートリッジ50S′として取り扱うことができる。また、契約が解除されたときに、全てのリテールカートリッジ50R(疑似サブスクカートリッジ50S′)に対して種別フラグをリテールに戻すよう書き換えてもよい。
【0045】
<制御手順>
本実施形態における上記の手法を実現するために、複合機200のプロセッサ210が実行する制御手順の一例を、図6図7のフローチャートにより説明する。まず、複合機200において、主電源が投入された際には図6に示す以下の手順が開始される。なお上述したように、当該ハイブリッド複合機200の初期導入時には全色のカートリッジホルダ51それぞれに満充填状態のリテールカートリッジ50Rが装着され、またデフォルトとして運用パラメータがリテールモードに設定されている。
【0046】
まずS5では、運用パラメータを参照してリテールモードにあるか否かが判定される。サブスクモードにある場合にはNO判定され、S50へ移行する。一方、リテールモードにある場合にはYES判定され、S10へ移行する。
【0047】
S10では、ユーザが複合機200を用いたサブスク契約手続きが為されたか否かが判定される。一例として、複合機200は情報管理サーバ100からサブスク契約手続きが新規に為された旨の通知を受け取ることで、当該判定が行われる。サブスク契約手続きが新規に為されていない場合にはNO判定され、S50へ移行する。一方、サブスク契約手続きが新規に為された場合にはYES判定され、S15へ移行する。
【0048】
S15では、例えばどれだけの周期期間でいくらの定額料金でサブスク運用を行うかといった具体的な契約内容を示す契約内容データを情報管理サーバ100から取得して記録する。なお、この契約内容データの記憶領域232が第3記憶部の一例である。
【0049】
次のS17では、カートリッジホルダ51にサブスクカートリッジ50Sが新規に装着されたか否かが判定される。なおこのとき、装着されている各インクカートリッジ50から製造メーカー情報も取得し、その内容が当該複合機200の製造メーカーと同じメーカー(図中では「B社」と略記)であるか否か、言い換えると当該インクカートリッジ50が複合機200の製造メーカーの純正品であるか否かも併せて判定される。カートリッジホルダ51にサブスクカートリッジ50Sが新規に装着されていない場合、或いは、装着されているインクカートリッジ50の少なくとも1つが製造メーカーの純正品でない場合、にはNO判定され、S50へ移行する。一方、サブスクカートリッジ50Sが新規に装着され、且つ装着されているインクカートリッジ50の全てが製造メーカーの純正品である場合、にはYES判定され、S20へ移行する。
【0050】
S20では、その時点でカートリッジホルダ51に装着されている全色のインクカートリッジ50それぞれのインク残量を取得し、次のS25で最もインク残量が少なく検出された色のサブスクカートリッジ50Sの配送が手配される。そしてS30で、上記検出した各色のインク残量に基づいてデポジット印刷枚数を設定し、契約内容データとして記録する。
【0051】
S40では、本来のカートリッジ種別にかかわらず、その時点でカートリッジホルダ51に装着されている全色のインクカートリッジ50それぞれの種別フラグを一斉にサブスクフラグに書き換えるとともに、次のS45で複合機200の運用パラメータもサブスクモードに切り替える。これにより、以降においてサブスクモードの運用が開始される。なお、この場合のサブスクフラグが所定情報の一例である。
【0052】
次のS50では、例えば操作部250での操作を介してユーザから印刷指示を受けたか否かが判定される。印刷指示を受けていない場合はNO判定され、S5の手順に戻る。一方、印刷指示を受けた場合はYES判定され、S100のモード別印刷処理を実行する。その後にS55で、ユーザから動作終了を指示する操作が行われたか否かが判定され、動作終了の指示がない場合にはNO判定されてS5の手順に戻り、動作終了させる指示がある場合にはYES判定されてこのフローを終了する。
【0053】
図7は、複合機200のプロセッサ210が実行するモード別印刷処理S100の制御手順を示している。まずS105では、運用パラメータを参照してサブスクモードにあるか否かが判定される。リテールモードにある場合にはNO判定され、S110へ移行してリテールモードでの印刷動作を実行した後にS112にて各リテールカートリッジ50Rのインク残量取得を行い、処理を終了する。一方、サブスクモードにある場合にはYES判定され、S115へ移行する。
【0054】
S115では、サブスクモードでの印刷動作を実行した後にS120へ移行し、その時点のサブスク契約期間中における累積印刷枚数をカウントアップする。そして次のS125で、カウントアップした累積印刷枚数がサブスク契約の契約枚数内にあるか否かが判定され、契約枚数内にある場合にはYES判定されてS145へ移行する。一方、契約枚数を超過している場合にはNO判定され、次のS130でさらにその超過枚数分があらかじめ設定されているデポジット印刷枚数内にあるか否かが判定される。超過枚数分がデポジット印刷枚数内にある場合にはYES判定され、S145へ移行する。一方、超過枚数分がデポジット印刷枚数を超過している場合にはNO判定され、次のS135へ移行する。なお、カウントアップした累積印刷枚数が印刷量の一例であり、契約枚数が上限値の一例である。
【0055】
S135では、当該契約期間における累積印刷枚数がサブスク契約の契約枚数及びデポジット印刷枚数を超過した上限超過エラー状態となって追加支払いが必要となった旨を表示部240に表示してユーザに報知する。そして次のS140でユーザが新たにサブスク契約の対応手続きを行うなどによりエラー解除が行われるまでループ待機し、ループ解除された際には次のS150へ移行する。S145では、各カートリッジ50のインク残量取得を行う。ここでは、サブスクカートリッジ50S又は上述の疑似サブスクカートリッジ50S′のインク残量が取得される。
【0056】
S150では、その時点でインク残量が少量となったインクカートリッジ50があるか否かが判定される。このときの判定基準としては、それまでの使用ペースを考慮して、その時点に配送拠点から当該ユーザに到着するまでの配送期間の経過後でおよそ欠乏すると予想されるインク残量を基準として判定する。いずれのインクカートリッジ50もこの基準となるインク残量より多い場合にはNO判定され、S160へ移行する。一方、いずれか1つのインクカートリッジ50でもこの基準のインク残量より少なくなった場合にはYES判定され、S155で当該インクカートリッジ50を発注してからS160へ移行する。なお、配送効率を向上させるよう、他にも近いインク残量のインクカートリッジ50があれば併せて発注してもよい。
【0057】
S160では、その時点でインク残量がほぼ欠乏したインクカートリッジ50があるか否かが判定される。いずれのインクカートリッジ50もインク残量がいくらかでも残っている場合にはNO判定され、このフローを終了する。一方、いずれか1つのインクカートリッジ50でもインク残量が欠乏している場合にはYES判定され、S165へ移行する。
【0058】
S165では、インク残量が欠乏したインクカートリッジ50の種別フラグをリテールフラグに書き換え、次のS170で当該インクカートリッジ50の交換が必要である旨を表示部240に表示してユーザに報知する。そして次のS175で、ユーザが対応する新たなサブスクカートリッジ50Sを交換装着するまでループ待機し、ループ解除された際にはこのフローを終了する。
【0059】
なお、S17の手順が消耗品情報取得処理及び種別識別処理の一例であり、S17にてYES判定がされた場合は契約モードにて動作する必要が生じた場合の一例であり、S40の手順が情報書き込み処理の一例である。
【0060】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態においては、サブスクモードとリテールモードとの2つのモードにより動作可能である。サブスクモードは、印刷に使用するインクカートリッジ50に関する契約元とのサブスク契約の締結内容に対応したものであり、例えばサブスクリプション契約に対応して所定期間内における印刷量の上限値以内の印刷がユーザの定額負担のみで可能となる動作モードである。リテールモードは、リテール使用に対応したものであり、ユーザが自ら購入した市販のインクカートリッジ50を複合機200のカートリッジホルダ51に装着して使用する場合の動作モードである。
【0061】
カートリッジホルダ51に装着されうるインクカートリッジ50は、上記サブスクモードに対応したサブスクカートリッジ50Sの種別と、上記リテールモードに対応したリテールカートリッジ50Rの種別と、が含まれる。インクカートリッジ50は、当該インクカートリッジ50に関する情報を記憶するカートリッジメモリ55を有する。サブスクカートリッジ50Sのカートリッジメモリ55に記憶された情報には、サブスクの種別であることを表すサブスクフラグの種別フラグ情報が含まれる。リテールカートリッジ50Rのカートリッジメモリ55に記憶された情報には、リテールの種別であることを表すリテールフラグが含まれる。カートリッジメモリ55の記憶情報は、プロセッサ210が実行するS17の手順において取得され、サブスク種別情報及びリテール種別情報のうちいずれか含まれるのか、がS17の手順において識別される。
【0062】
本来であれば、複合機200がサブスクモードで動作する場合はサブスクカートリッジ50Sが装着された状態であり、複合機200がリテールモードで動作する場合はリテールカートリッジ50Rが装着された状態である。
【0063】
本実施形態では、例えば、何らかの理由で複合機200がサブスクモードで動作しているにも関わらずリテールカートリッジ50Rが装着される場合に対応し、このような場合にはプロセッサ210によりS40の手順が行われる。S40の手順では、リテールカートリッジ50Rのカートリッジメモリ55内に記憶されているリテールフラグの情報が、インクカートリッジ50をリテールカートリッジ50Rとして取り扱うための情報内容、つまりサブスクフラグに書き換えられる。すなわち、所定情報としてのサブスクフラグが書き込まれる。そのため、複合機200では、これ以降、当該リテールカートリッジ50Rを疑似サブスクカートリッジ50S′であると疑似的に取り扱うことができ、サブスクカートリッジ50Sを用いたサブスクモードでの動作と同等の動作を円滑に行うことが可能となる。
【0064】
本実施形態によれば、契約が結ばれた状態であるにも関わらずユーザに生じ得る不利益を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では特に、複合機200に備えられたプロセッサ210は、上記いずれの運用モードで動作するかを決定するために、S17,S40,S45の手順を実行する。S17の手順では、複合機200のカートリッジホルダ51に装着されたインクカートリッジ50に関するカートリッジメモリ55の記憶内容の取得が、例えば通信部52の通信を介し図られる。カートリッジメモリ55の記憶情報の取得結果に応じ、上記S17の手順が行われ、カートリッジホルダ51に装着されたインクカートリッジ50が上記サブスク種別であるかリテール種別であるか、が識別される。
【0066】
インクカートリッジ50がリテール種別であると識別された場合には、カートリッジメモリ55の記憶情報が所定条件を満たしていることを条件に、サブスクモードでの運用動作開始時においてS40,S45の手順により当該リテール種別のインクカートリッジ50を上記サブスク種別として取り扱う。所定条件としては、例えば、取得されたカートリッジメモリ記憶情報において、当該インクカートリッジ50が正規メーカーによる純正品であることを表していること、等が考えられる。上記S40,S45の手順により、所定条件が満たされていれば、カートリッジホルダ51に装着されているインクカートリッジ50がリテール使用に対応するリテール種別であった場合においても、サブスク契約の締結内容に対応するサブスク種別として取り扱われる。
【0067】
本実施形態においては、リテール使用に対応するリテール種別のインクカートリッジ50がカートリッジホルダ51に装着されている場合であっても、インクカートリッジ50のカートリッジメモリ記憶情報が所定条件を満たしていればサブスクモードでの動作開始時にサブスク種別として取り扱われ、複合機200がサブスクモードで動作する。例えば、サブスク契約に基づき複数のサブスク種別のインクカートリッジ50が配送される場合に、1つのインクカートリッジ50が到着した後、他のインクカートリッジ50がまだ到着せず複数のインクカートリッジ50が揃わない状態であっても、前述の定額負担での印刷動作を行うことができる。
【0068】
本実施形態によれば、複合機200がリテール使用されている状態で新たにサブスクリプション契約が結ばれた際における、ユーザ側の不利益を抑制することができる。
【0069】
また前述したように、リテール種別のインクカートリッジ50はリテール使用に対応してユーザが自ら購入したものであるため、購入費用の負担がユーザにおいて過去に発生している。ユーザは、サブスク契約締結の際、例えばサブスク契約の所定期間に対応した定額負担も行っているため、二重の金銭的負担となる。
【0070】
本実施形態においては、前述のS30の手順では、S40,S45の手順におけるリテール種別からサブスク種別への種別変更の取扱いに基づき、サブスク契約の締結内容に対応した利益還元が行われる。本実施形態によれば、利益還元の実行により、ユーザの金銭的な二重負担を軽減することができる。なお、ユーザに対する利益還元の形式としては、上記デポジット印刷枚数の追加に限られない。例えば最初にサブスクモードを開始した時点での全てのリテールカートリッジ50Rのインク残量に基づき、それに相当するフリーチャージ期間を設定付与してその間に限り累積印刷枚数のカウントアップを停止したり、もしくは単純に次の月額料金からインク残量に相当する金額を減額するなどにより利益還元してもよい。
【0071】
なお本実施形態の例では、印刷を行う複合機200がインクジェット方式の場合でインクカートリッジ50を消耗品として適用した場合について説明したが、これ以外にも例えばレーザー方式の場合にはYMCKの各色のトナーがリテール又はサブスクの消耗品として適用される。
【0072】
また、本実施形態では特に、サブスク契約が締結された後に配送されたサブスク種別のインクカートリッジ50Sが到着してカートリッジホルダ51に装着されたタイミングで、カートリッジホルダ51に装着されているそれ以外のリテール種別のインクカートリッジ50Rをサブスク種別として取り扱い、サブスクモードによる印刷動作を開始することができる。
【0073】
また、本実施形態では特に、プロセッサ210が実行するS17の手順において、インクカートリッジ50のカートリッジメモリ55に記憶された情報が取得され、S17の手順において、当該カートリッジメモリ記憶情報に含まれるサブスク種別又はリテール種別の情報が識別される。リテール種別が識別された場合には、S40,S45の手順において、カートリッジメモリ55内のカートリッジメモリ記憶情報に含まれるリテール種別情報がサブスク種別情報に書き換えられる。
【0074】
本実施形態によれば、リテール使用に対応するリテール種別のインクカートリッジ50Rがカートリッジホルダ51に装着されている場合に、リテール種別の情報をサブスク種別の情報に書き換えることで、当該インクカートリッジ50をサブスク種別として取り扱い、複合機200をサブスクモードで運用動作することができる。
【0075】
なお上述した手法は、ネットワークNTを介したオンライン接続により情報管理サーバ100と連携して行う場合のみならず、例えばスクールプリントサービスのようなオフラインで複合機200が使用される場合においても当該複合機200が独力で実行可能である。
【0076】
また、本実施形態では特に、サブスクモードでの動作開始時に、少なくとも1つのリテール種別のインクカートリッジ50Rが装着されている場合であっても、それらリテール種別のインクカートリッジ50Rすべてのリテール種別情報をサブスク種別情報に書き換えることでサブスク種別として取り扱い、サブスクモードによる印刷動作を開始できる。
【0077】
また、本実施形態では特に、S30の手順で、インクカートリッジ50のインク残量に応じて利益還元が行われる。本実施形態によれば、S40,S45の手順においてインクカートリッジ50をリテール種別からサブスク種別への種別変更したとき、その時点でのインクカートリッジ50内のインク残量に応じた適正な内容の還元を行うことができる。
【0078】
また、本実施形態では特に、ユーザが締結した契約は、所定金額の支払いと引き換えに、所定期間内における印刷量上限値を規定する定額契約、いわゆるサブスクリプション契約である。このサブスクリプション契約では、例えば所定期間内に印刷部290により実行された累積印刷枚数が上記上限値に達した場合、それ以降の印刷についてはユーザに対して追加支払いが要求される。本実施形態においては、S30の手順における態様として、上記のように追加支払いを要求すべきタイミングにおいて追加支払いを求めることなく上限値を超える印刷を許容する、いわゆるデポジット印刷枚数の形で利益が還元される。これにより本実施形態によれば、ユーザは、本来は有料負担となるべき印刷量部分を無料で印刷できることで、利益還元を受けることができる。
【0079】
また、本実施形態では特に、利益還元を情報管理サーバ100等に頼らず複合機200独力にて実行するために、契約内容データの記憶領域232が設けられる。本実施形態においては、ユーザが定格契約を締結したときにその内容が複合機200の契約内容データの記憶領域232に記憶されている。S30の手順では、対象となるインクカートリッジ50のインク残量と上記契約内容データの記憶領域232に記憶されている定額契約の内容とに応じて、前述の契約枚数の上限値を超える印刷が許容される。本実施形態によれば、追加支払いを求めずに契約枚数上限値を超える印刷を許容する態様の利益還元を、定額契約の締結内容に基づき複合機200にて実行することができる。
【0080】
また、本実施形態では特に、サブスクフラグとリテールフラグは、いずれか一方が真としてオン状態に記録され、他方が偽としてオフ状態に記録される情報であり、プロセッサ210は、S40の手順において、サブスクフラグを所定情報として、リテールフラグのみオン状態からサブスクフラグのみオン状態に書き換える。これにより、サブスクフラグとリテールフラグのいずれが真であるかに基づいて当該インクカートリッジ50がサブスク種別とリテール種別のいずれかであるかを明確に区別できる。S40の手順において、リテールフラグのみオン状態からサブスクフラグのみオン状態に書き換えることにより、当該インクカートリッジ50を疑似サブスクカートリッジ50S′であると疑似的に取り扱うことができる。このため、サブスクカートリッジ50Sを用いたサブスクモードでの動作と同等の動作を円滑に行うことが可能となる。
【0081】
<第2実施形態>
本発明の第2の実施形態に係る印刷処理システム1Aについて以下に説明する。本実施形態では、ユーザがサブスク契約手続きを行ったタイミングからすぐにサブスク契約の実行を開始する場合について説明する。なお、本実施形態の印刷処理システム1Aにおける各装置や部位における構成や処理について、上記第1実施形態の印刷処理システム1と同等である部分については適宜説明を省略する。
【0082】
図8は、この第2実施形態の場合の運用モード切替手法を表している。上記図5に示した第1実施形態との違いは、まずユーザがサブスク契約手続きを行ったタイミングでその時点で複合機200に装着されている全色のリテールカートリッジ50Rの種別フラグをサブスク種別に書き換え、すぐにサブスクモードの運用を開始する点である。このため本実施形態の例では、サブスク契約手続きが完了したタイミングで全てのインクカートリッジ50のインク残量を検出し、それらインク残量に基づいて設定したデポジット印刷枚数を上記契約内容データに記録する。
【0083】
そして本実施形態の場合でも、全ての疑似サブスクカートリッジ50S′(元リテールカートリッジ50R)に対しては、別途発注し到着したサブスクカートリッジ50Sにそれぞれ順次交換装着する直前で種別フラグをリテールに戻すよう書き換える。その他の処理や工程については、上記第1実施形態と同等である。
【0084】
また、本実施形態の場合に適用する制御手順の一例を図9のフローチャートに示す。この図9において、上記図6に示した第1実施形態の場合のフローチャートとの違いは、まずS10の判定において、ユーザがサブスク契約手続きを希望していない場合のNO判定でS50へ移行する点で相違する。
【0085】
また、S17を省略してその代わりにS25とS30の間において実行されるS27の手順では、その時点で装着されている全色のインクカートリッジ50がいずれも純正品であるか否か、言い換えるといずれの製造メーカー情報も当該複合機200の製造メーカーと同じメーカーであるか否かだけが判定される。いずれか1つでも製造メーカーの純正品でない場合にはNO判定され、S50へ移行する。一方、いずれも製造メーカー純正のサブスクカートリッジ50Sである場合にはYES判定され、S30へ移行する。その他の手順及びモード別印刷処理S100については第1実施形態と同等であり説明を省略する。
【0086】
以上のように本実施形態における複合機200においても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態の複合機200では、サブスクモードとリテールモードとの2つの運用モードにより動作可能である。プロセッサ210は、上記いずれの運用モードで動作するかを決定するために、S27の手順と、S40,S45の手順と、を実行する。
【0087】
S27の手順では、複合機200のカートリッジホルダ51に装着されたインクカートリッジ50に関するカートリッジメモリ記憶情報の取得が、例えばインクカートリッジ50と通信部52との通信を介し図られる。カートリッジメモリ記憶情報が取得できたかできなかったか、及び、取得できた場合の取得内容に応じ、上記S40,S45の手順が行われる。S27にて純正のリテールカートリッジが装着されていることは、所定条件の一例である。また、S27にて純正のリテールカートリッジが装着されている場合は契約モードにて動作する必要が生じた場合の一例である。
【0088】
S40,S45の手順では、サブスク契約の成立時に、カートリッジホルダ51に装着されたインクカートリッジ50を上記サブスク種別として取り扱い、複合機200は上記サブスクモードによる運用動作を実行する。S40,S45の手順により、カートリッジホルダ51に装着されているインクカートリッジ50が、サブスク契約の締結内容に対応するサブスク種別のインクカートリッジ50Sであった場合のみならず、リテール使用に対応するリテール種別のインクカートリッジ50Rであった場合においても、サブスク種別として取り扱われる。
【0089】
本実施形態においては、リテール使用に対応するリテール種別のインクカートリッジ50Rがカートリッジホルダ51に装着されている場合であっても、インクカートリッジ50のカートリッジメモリ記憶情報が所定条件を満たしていれば、サブスク契約の成立後はサブスク種別として取り扱われて複合機200がサブスクモードで運用動作する。例えば、配送拠点から配送されるサブスク種別のインクカートリッジ50がユーザの元へまだ届いていない状態であっても、前述の定額負担での印刷動作を行うことができる。
【0090】
本実施形態によれば、複合機200がリテール使用されている状態で新たにサブスクリプション契約が結ばれた際における、ユーザ側の不利益を抑制することができる。
【0091】
また本実施形態においても、プロセッサ210が実行するS30の手順において、S40,S45の手順におけるリテール種別からサブスク種別への種別変更の取扱いに基づき、サブスク契約の締結内容に対応した利益還元が行われる。本実施形態によれば、利益還元の実行により、ユーザの金銭的な二重負担を軽減することができる。
【0092】
また、本実施形態では特に、複合機200は、インタフェース270を介して情報管理サーバ100に通信可能に接続されている。本実施形態によれば、リテール種別のインクカートリッジ50Rがカートリッジホルダ51に装着されている場合であっても、情報管理サーバ100との通信結果に応じてサブスク種別として取り扱い、サブスクモードによる動作を実行することができる。
【0093】
また、本実施形態では特に、プロセッサ210が実行するS27の手順において、インクカートリッジ50のカートリッジメモリ55に記憶されたカートリッジメモリ記憶情報が取得される。カートリッジメモリ記憶情報にリテール種別情報が含まれていた場合には、S40,S45の手順において、カートリッジメモリ55内のカートリッジメモリ記憶情報に含まれるリテール種別情報がサブスク種別情報に書き換えられる。
【0094】
本実施形態によれば、リテール使用に対応するリテール種別のインクカートリッジ50Rがカートリッジホルダ51に装着されている場合に、リテール種別情報をサブスク種別情報に書き換えることで、当該インクカートリッジ50をサブスク種別として取り扱い、複合機200をサブスクモードで運用動作することができる。
【0095】
<第3実施形態>
本発明の第3の実施形態に係る印刷処理システム1Bについて以下に説明する。本実施形態では、サブスクモード中でありながらユーザ自身がリテールカートリッジ50Rを購入してそれを疑似サブスクカートリッジ50S′として使用する場合について説明する。なお、本実施形態の印刷処理システム1Bにおける各装置や部位における構成や処理について、上記第1、第2実施形態の印刷処理システム1,1Aと同等である部分については適宜説明を省略する。
【0096】
図10は、この第3実施形態の場合におけるインクカートリッジ50の管理手法を表している。この図10において、本実施形態では、例えばユーザがサブスク契約済みであったり、もしくは複合機200自体がサブクス専用機であることで、すでにサブスクモードの運用状態であることが前提となっている。そのようなサブスクモードの運用中であっても、例えば予想より早くサブスクカートリッジ50Sが消耗したためやむを得ずユーザ自身が近隣店舗からリテールカートリッジ50Rを購入して印刷を行う場合もあり得る。また、ユーザの所在地が効率的な配送に適さず近隣店舗からリテールカートリッジ50Rを購入して印刷を行う方が適している場合もあり得る。
【0097】
そのようにサブスクモード中で複合機200に新たなリテールカートリッジ50Rを交換装着して使用する場合でも、その際には種別フラグをサブスクに書き換えて疑似サブスクカートリッジ50S′として使用する。そして、その疑似サブスクカートリッジ50S′でのインク使用量分はユーザ側の金銭的負担分としてみなして利益還元する必要がある。このため本実施形態の図示する例では、購入したリテールカートリッジ50Rの交換装着時においてその新品の全インク量に相当するデポジット印刷枚数を設定し、上記契約内容データに記録する。
【0098】
このように新品のリテールカートリッジ50Rの交換装着時にそのインク全量分のデポジット印刷枚数を設定することで、その疑似サブスクカートリッジ50S′のインクを使い切ることを前提としたデポジット印刷枚数をあらかじめ設定できる。
【0099】
本実施形態の場合に適用する制御手順の一例を図11のフローチャートに示す。この図11においては、例えばユーザがサブスク契約済みであったり、もしくは複合機200自体がサブクス専用機であることで、すでにサブスクモードの運用状態であることを前提とした処理となっている。
【0100】
まずS205では、運用パラメータを参照してサブスクモードにあるか否かが判定される。リテールモードにある場合にはNO判定され、このフローを終了する。一方、サブスクモードにある場合にはYES判定され、S210へ移行する。
【0101】
S210では、カートリッジホルダ51に純正品のリテールカートリッジ50Rが新規に装着されたか否かが判定される。カートリッジホルダ51に新規で装着されたインクカートリッジ50がサブスクカートリッジ50Sである場合、又は製造メーカーの純正品でない場合、にはNO判定され、このフローを終了する。一方、純正品のリテールカートリッジ50Rが新規に装着された場合にはYES判定され、S215へ移行する。
【0102】
S215では、新規に装着されたリテールカートリッジ50Rが新品であるか否かが判定される。装着されたリテールカートリッジ50Rが新品でなく中古品である場合にはNO判定され、S220に移行して表示部240等に当該リテールカートリッジ50は利用できない旨のエラーを報知し、その後このフローを終了する。一方、装着されたリテールカートリッジ50Rが新品である場合にはYES判定され、S225へ移行する。
【0103】
S225では、新規装着したリテールカートリッジ50Rの満充填量のインク残量に基づいてデポジット印刷枚数を設定し、契約内容データとして記録する。
【0104】
次にS230で、新規装着したリテールカートリッジ50Rの種別フラグをサブスクフラグに書き換えて疑似サブスクカートリッジ50S′とし、サブスクモードの運用を再開してこのフローを終了する。
【0105】
なお、S210の手順が消耗品情報取得処理及び種別識別処理の一例であり、S230の手順が取扱処理の一例であり、情報書き込み処理の一例でもあり、S225の手順が利益還元処理の一例である。そして、S210で、カートリッジホルダ51に純正品のリテールカートリッジ50Rが新規に装着されたと判定され、さらにS215で、新規に装着されたリテールカートリッジ50Rが新品であると判定された場合は、契約モードにて動作する必要が生じた場合の一例である。
【0106】
以上の本実施形態における複合機200においても、上記第1及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0107】
すなわち、本実施形態の複合機200では、複合機200のプロセッサ210が上記いずれの運用動作モードで動作するかを決定するために、S210の手順を実行する。S210の手順では、複合機200のカートリッジホルダ51に装着されたインクカートリッジ50に関するカートリッジメモリ55の記憶内容の取得が、例えば通信部52を介し図られる。カートリッジメモリ55の記憶情報の取得結果に応じ、上記S210の手順が行われ、カートリッジホルダ51に装着されたインクカートリッジ50が上記サブスク種別であるかリテール種別であるか、が識別される。サブスクモードでの動作中に少なくとも1つのインクカートリッジ50がリテール種別であると識別された場合には、S225の手順において利益還元が行われる。
【0108】
本実施形態では、サブスクモードで動作している場合に、取得したカートリッジメモリ55の記憶情報に基づきリテールカートリッジ50Rが装着されていることを識別して利益還元処理を行うことで、サブスク契約が結ばれた状態であるにも関わらずユーザに生じ得る不利益を抑制することができる。
【0109】
なお、上述したようにリテールカートリッジ50を疑似サブスクカートリッジ50S′として使用している場合で、その使用中にインク残量を中途半端に残したまま本来のサブスクカートリッジ50Sに装着交換する場合もあり得る。この場合には、ユーザへの利益還元として設定されるデポジット印刷枚数は疑似サブスクカートリッジ50S′で実質的に使用されたインク量に相当する分だけ設定されるべきである。このため、上述したようにリテールカートリッジ50Rの交換装着時における新品の全インク量だけに基づいてデポジット印刷枚数を設定するのではなく、新品時の全インク量と当該疑似サブスクカートリッジ50S′の途中交換時におけるインク残量との差分で実質インク使用量を算出し、それに基づいてデポジット印刷枚数を設定してもよい。
【0110】
または、図12に示すように、リテールカートリッジ50Rを交換装着した時点で所定量の単位デポジット印刷量を初期的に付与するよう設定し、インク残量の減少に応じてその単位デポジット印刷量の倍数分でデポジット印刷量を設定してもよい。なおこの場合におけるデポジット印刷枚数が、複数の許容量部分において分割して許容されることになり、S30の手順はインク残量の変動推移に応じて、複数の許容量部分を段階的に順次許容することの一例となる。
【0111】
このように、S30の手順において、上限値を超えるデポジット印刷枚数が一気に許容されるのではなく、複数の許容量部分が段階的に順次許容される。これにより、例えば、ユーザへの利益還元を行った後に、ユーザによりインクカートリッジ50が使い切ることなく途中で取り外された場合であっても、メーカー側の損失を最小限に抑えることができる。
【0112】
<第4実施形態>
本発明の第4の実施形態に係る印刷処理システム1Cについて以下に説明する。本実施形態では、サブスクモード中に当該サブスク契約を解約した場合について説明する。特に、サブスク契約直後であってリテールカートリッジ50Rを疑似サブスクカートリッジ50S′として使用している最中でまだインク残量がありながらサブスク契約を解約した場合におけるユーザ側への利益還元について説明する。なお、本実施形態の印刷処理システム1Cにおける各装置や部位における構成や処理について、上記第1~第3実施形態の印刷処理システム1,1A,1Bと同等である部分については適宜説明を省略する。
【0113】
図13は、この第4実施形態の場合におけるインクカートリッジ50の管理手法を表している。この図13に示す例おいては、上記第2実施形態と同様にユーザがサブスク契約手続きを行ったその時点で複合機200に装着されている全色のリテールカートリッジ50Rの種別フラグをサブスク種別に書き換えて疑似サブスクカートリッジ50S′とし、すぐにサブスクモードの運用を開始する。本実施形態の例では、サブスク契約手続きが完了したタイミングで全てのインクカートリッジ50のインク残量を検出し、それらインク残量に基づいて設定したデポジット印刷枚数を上記契約内容データに記録する。
【0114】
その後、各色の疑似サブスクカートリッジ50S′のインク切れに合わせて発注していたサブスクカートリッジ50Sを順次交換装着していくが、全ての疑似サブスクカートリッジ50S′のインク残量を使い切る前にユーザがサブスク契約を解約する場合もあり得る。この場合、全ての疑似サブスクカートリッジ50S′についてサブスクリプションフラグをオフしてリテールフラグをオンする。また、この場合、デポジット印刷枚数を更新する。具体的には、例えば、疑似サブスクカートリッジ50S′のインク残量に対応したデポジット印刷枚数を減じる。なお、この場合の利益還元の形態としては、すでにサブスクモードが終了しているので次のサブスク契約時に対するデポジット印刷枚数のままで利益還元してもよいし、その他各種のサービスポイント等で還元してもよい。
【0115】
このようなサブスク解約の際には、上述のように装着中の全ての疑似サブスクカートリッジ50S′の種別フラグがリテールに戻すよう書き換えるので、その後の印刷は元のリテールカートリッジ50Rとして動作することができる。尚、サブスク契約締結前やサブスク契約解除後では、サブスクカートリッジ50Sを使用した印刷はできず、不正使用が防止される。
【0116】
本実施形態の場合に適用する制御手順の一例を図14のフローチャートに示す。この図14においては、例えばユーザがサブスク契約済みであることで、すでにサブスクモードの運用状態であることを前提とした処理となっている。
【0117】
まずS305では、運用パラメータを参照してサブスクモードにあるか否かが判定される。リテールモードにある場合にはNO判定され、このフローを終了する。一方、サブスクモードにある場合にはYES判定され、S310へ移行する。
【0118】
S310では、ユーザがサブスク契約を解除する処理を実施したか否かが判定される。サブスク解除処理が実施されていない場合にはNO判定され、このフローを終了する。一方、サブスク解除処理さ実際された場合にはYES判定され、S315へ移行する。
【0119】
S315では、その時点で使用している疑似サブスクカートリッジ50S′が存在するか検出する。
【0120】
そして、疑似サブスクカートリッジ50S′が存在する場合、S325で、全ての疑似サブスクカートリッジ50S′の種別フラグをリテールフラグに書き換える。S325の処理は無効化処理の一例である。
【0121】
そして、S330で、各カートリッジのインク残量に基づいてデポジット印刷枚数を更新する。例えば、疑似サブスクカートリッジ50S′のインク残量に対応したデポジット印刷枚数を減じる。これにより、サブスク契約の解除時にデポジット印刷枚数の調整が図られる。
【0122】
以上の本実施形態における複合機200においては、サブスクモードの開始時に付与されたデポジット印刷枚数が契約解除時に調整されるため、ユーザが過剰に利益還元を受けることを抑制できる。
【0123】
なお、サブスクモードの開始時から終了時までの間に消費する疑似サブスクカートリッジ50S′でのインク使用量分の利益還元については、所定単位の倍数分で段階的に設定してもよい。この場合にはサブスク解約時にリテールに戻す必要はない。
【0124】
また、本実施形態では特に、S325の手順で、サブスクモードが解除されるとき、インクカートリッジ50を疑似サブスクカートリッジ50S′として取り扱うためのサブスクフラグを無効化する。これにより、確実に本来のリテールカートリッジ50Rに戻すことができる。なお、リテールフラグとサブスクフラグ以外に、このようなサブスク契約の解除に特化した無効化フラグを設けて解約時にオン状態に書き込んでもよい。
【0125】
<その他変形例>
なお、上記の各実施形態においては、カートリッジメモリ55においてリテールフラグとサブスクフラグの2つのフラグの一方をオン状態とし他方をオフ状態として切り替えることで当該インクカートリッジ50の種別を表現していた。しかし、リテールとサブスクの種別を表現する情報形態はこれ以外にもあってもよい。例えば、図15に示すように、種別フラグとしてリテールフラグとサブスクフラグの他に疑似サブスクフラグを設けてもよい。この場合には、当該インクカートリッジ150の工場出荷時におけるリテールフラグとサブスクフラグの設定は書き換え不可能として永久に固定したままとし、複合機200は疑似サブスクフラグだけオンとオフの切り替えを可能とする。つまり、リテールフラグと、サブスクフラグと、疑似サブスクフラグの順で、オン・オフ・オフの状態でリテールカートリッジ50Rとみなし、オフ・オン・オフの状態でサブスクカートリッジ50Sとみなし、オン・オフ・オンの状態で疑似サブスクカートリッジ50S′とみなす。これにより、製造時における本来のリテールとサブスクの種別情報は維持されたまま、状況に応じて疑似サブスクフラグを切り替えてリテールカートリッジ50Rと疑似サブスクカートリッジ50S′との使用の切り替えが可能となる。この場合にはサブスク解約時にリテールに戻す必要はない。なお、疑似サブスクフラグが、リテールカートリッジ50Rがサブスクモードで使用されていることを表す所定情報の一例である。
【0126】
これにより、製造時における当該インクカートリッジ50の本来のサブスク種別とリテール種別との種別情報を維持したまま、状況に応じて疑似的にサブスク種別に対応した疑似サブスク種別であることを表現し、当該インクカートリッジ50を疑似サブスクカートリッジ50S′であると疑似的に取り扱うことができる。
【0127】
また特に図示しないが、種別情報の形態として上述した複数のフラグ以外にも、例えば1つでオンとオフの2値を表す1ビット情報でリテールとサブスクのいずれかを対応させて表現してもよい。さらに、複数のビット列で時系列的にリテールとサブスクの切り替えを記録できるようにしてもよい。例えば図16に示すように、新品のリテールカートリッジ50Rをインク残量0%まで使い切るとして、その場合の10%経過ごとに1ビット対応させた10ビットデータでリテールとサブスクの時系列的な切り替えを記録できるようにしてもよい。なお、この場合の10ビットデータは、インクカートリッジ50を複数回の期間に分けてサブスクモードで動作可能とするための所定情報の一例である。この場合、1ビットサブスクに書き換える毎に、10%のインク量に対応したデポジット印刷枚数をユーザに付与する。このような時系列的なビット列データを用いることで、疑似サブスクカートリッジ50S′として利用している間のインク使用量に適正に対応した利益還元を設定できる。
【0128】
または、特に図示しないテーブル中の所定項目にリテールとサブスク(ないし疑似サブスク)にそれぞれ対応するコード情報を上書きすることで切り替えるよう表現してもよい。もしくはその他の区別可能な情報形態で表現してもよい。
【0129】
また、印刷サービス契約は、上述のサブスクリプション契約の外に、枚数課金等の従量制の課金を行う印刷サービスの契約であってもよいし、所定期間の印刷量の上限設定のない定額印刷サービスの契約であってもよい。また、印刷サービス契約の種類が切り替わるような場合であってもよい。この場合、一方の種類の印刷サービス契約から見れば他方の種類の印刷サービス契約は未契約との扱いとなる。
【0130】
また、図6図7図9図11図14等に示すフローは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0131】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【符号の説明】
【0132】
1,1A, 印刷処理システム
1B,1C
50 インクカートリッジ(消耗品の一例)
50R,150R リテールカートリッジ
50S サブスクカートリッジ
50S′ 疑似サブスクカートリッジ
51 カートリッジホルダ(装着部の一例)
55 カートリッジメモリ(消耗品記憶部の一例)
56 インクタンク
57 インク残量センサ
100 情報管理サーバ
132 カートリッジデータベース(第2記憶部の一例)
133 ユーザデータベース
200 複合機(印刷装置の一例)
210 プロセッサ(制御部の一例)
231 運用パラメータ記憶領域
232 契約内容データ記憶領域(第3記憶部の一例)
233 処理済みIDリスト記憶領域(第1記憶部の一例)
234 プログラム記憶領域
290 印刷部
400 配送管理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16