(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176196
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】研磨装置及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 13/02 20060101AFI20231206BHJP
B24B 13/00 20060101ALI20231206BHJP
B24B 13/005 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B24B13/02 E
B24B13/00 D
B24B13/005 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088357
(22)【出願日】2022-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】521054164
【氏名又は名称】株式会社吉田光学工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110003764
【氏名又は名称】弁理士法人OMNI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成男
【テーマコード(参考)】
3C049
【Fターム(参考)】
3C049AA09
3C049AA18
3C049AB03
3C049AB04
3C049AB08
3C049AC04
3C049BB02
3C049BB08
3C049BB09
3C049BC01
3C049BC02
3C049CA02
3C049CB01
3C049CB03
(57)【要約】
【課題】多様な外形仕様に柔軟に対応し、生産性及び作業性を向上させながら、高精度で被加工物を研磨できる研磨装置及び研磨方法を提供する。
【解決手段】本発明の研磨装置1は、被加工物をそれぞれ保持する複数の被加工物保持部20と、中心軸を中心に回転可能であり、かつ、複数の被加工物保持部20が、中心軸から任意の距離の同一円周上に、相互に等間隔となるように配置される基台部10と、被加工物保持部20に保持された被加工物の被研磨面を研磨する複数の被加工物研磨部30とを備えており、基台部10が中心軸を中心に一方向に回転することにより、被加工物を保持した被加工物保持部20を、複数の研磨位置に順次移動させて、複数の被加工物研磨部30により研磨を行うと共に、複数の被加工物研磨部30による研磨終了後の被加工物を、被加工物交換位置に移動させて、研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に交換可能にすることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研磨するための研磨装置であって、
前記被加工物をそれぞれ保持する複数の被加工物保持部と、
中心軸を中心に回転可能であり、かつ、前記複数の被加工物保持部が、前記中心軸から任意の距離の同一円周上に、相互に等間隔となるように配置される基台部と、
前記被加工物保持部に保持された前記被加工物の被研磨面を研磨する複数の被加工物研磨部と、
を備え、
前記複数の被加工物研磨部は、
前記基台部の上方において、前記被加工物を研磨する複数の研磨位置にそれぞれ設けられ、かつ、前記被加工物保持部に保持されている研磨終了後の前記被加工物を交換するための被加工物交換位置には設けられておらず、
前記複数の研磨位置及び前記被加工物交換位置は、前記基台部の前記中心軸を中心に同一円周上に設けられており、
前記基台部が前記中心軸を中心に一方向に回転することにより、前記被加工物を保持した前記被加工物保持部を、前記複数の研磨位置に順次移動させて、前記複数の被加工物研磨部により研磨を行うと共に、前記複数の被加工物研磨部による研磨終了後の被加工物を、前記被加工物交換位置に移動させて、研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に交換可能にする研磨装置。
【請求項2】
前記被加工物保持部は、前記基台部上に着脱自在に設けられている請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記基台部に設けられ、かつ前記複数の被加工物保持部にそれぞれ対応して設けられた複数の従動プーリと、
前記複数の従動プーリのうち、前記研磨位置に対応した位置にある全ての従動プーリ、又は前記基台部の外周に巻き掛けられた無端ベルトと、
前記研磨位置に対応した位置にある全ての従動プーリ又は前記基台部に、前記無端ベルトを介して連結された駆動プーリと、
をさらに備える請求項1に記載の研磨装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の研磨装置を用いて、前記被加工物を研磨するための研磨方法であって、
前記基台部の中心軸から任意の距離の同一円周上に、相互に等間隔となるように配置された前記複数の被加工物保持部のそれぞれに被加工物を保持させ、
前記基台部を、前記中心軸を中心に一方向に回転させることにより、前記被加工物を保持した前記被加工物保持部を、前記複数の研磨位置に順次移動させて、前記複数の被加工物研磨部により研磨を行うと共に、
前記被加工物交換位置に移動させて、研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に交換する研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズ等の被加工物を研磨するための研磨装置及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学レンズ等の研磨装置としては、例えば、特許文献1に開示されるように、下軸を定位置で回転させ、その上端面をカンザシが移動し、両者間で被加工レンズと刃物を相対移動させて研削を行うものがある。
【0003】
また特許文献2に開示されるように、帯電した微細砥粒を分散した研磨液に通電し、微細砥粒と逆の極性を有する研磨工具に微細砥粒を付着させて、研磨工具によりレンズ表面を研磨する装置がある。
【0004】
しかしこれらの研磨装置では、被加工レンズの被研磨面の研磨領域(例えば、被加工レンズの周辺部等)に応じて研磨条件を変更しながら研磨を行うことが困難である。また、研磨領域ごとに研磨工具を変更して行うことも考えられるが、これらの研磨装置では、研磨工具の変更のために時間を要するため加工(研磨)時間が長くなり、その結果、作業性及び生産効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実全昭56-089447号
【特許文献2】特開2000-108002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、多様な外形仕様に柔軟に対応し、生産性及び作業性を向上させながら、高精度で被加工物を研磨できる研磨装置及び研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の研磨装置は、前記の課題を解決するために、被加工物を研磨するための研磨装置であって、前記被加工物をそれぞれ保持する複数の被加工物保持部と、中心軸を中心に回転可能であり、かつ、前記複数の被加工物保持部が、前記中心軸から任意の距離の同一円周上に、相互に等間隔となるように配置される基台部と、前記被加工物保持部に保持された前記被加工物の被研磨面を研磨する複数の被加工物研磨部と、を備え、前記複数の被加工物研磨部は、前記基台部の上方において、前記被加工物を研磨する複数の研磨位置にそれぞれ設けられ、かつ、前記被加工物保持部に保持されている研磨終了後の前記被加工物を交換するための被加工物交換位置には設けられておらず、前記複数の研磨位置及び前記被加工物交換位置は、前記基台部の前記中心軸を中心に同一円周上に設けられており、前記基台部が前記中心軸を中心に一方向に回転することにより、前記被加工物を保持した前記被加工物保持部を、前記複数の研磨位置に順次移動させて、前記複数の被加工物研磨部により研磨を行うと共に、前記複数の被加工物研磨部による研磨終了後の被加工物を、前記被加工物交換位置に移動させて、研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に交換可能にすることを特徴とする。
【0008】
前記の構成によれば、基台部の上方においては、複数の研磨位置と被加工物交換位置とが基台部の中心軸を中心に同一円周上に設けられている。そして、複数の被加工物研磨部はそれぞれの研磨位置に対応して設けられている。また、基台部上には複数の被加工物保持部が、基台部の中心軸から任意の距離の同一円周上に相互に等間隔となるように配置されている。そのため、中心軸を中心にして基台部を一方向に回転させることで、被加工物を保持した被加工物保持部を、複数の研磨位置に順次移動させることができる。また、各研磨位置での研磨終了後の被加工物を保持する被加工物保持部を、被加工物交換位置まで移動させることができる。
【0009】
これにより、前記構成では、例えば、各被加工物研磨部を異ならせる等して、各研磨位置で被加工物の研磨領域や研磨条件を変更することができる。その結果、多様な外形仕様に柔軟に対応して、高精度の被加工物を製造することができる。また、被加工物交換位置には被加工物研磨部が設けられていないため、各研磨位置でそれぞれ被加工物の研磨を行いながら、研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に容易に交換することができる。その結果、前記構成の研磨装置であると、従来の研磨装置と比較して生産性を向上させることが可能になる。
【0010】
前記の構成においては、前記被加工物保持部は、前記基台部上に着脱自在に設けられていることが好ましい。これにより、基台部上に被加工物保持部が固定されている場合と比較して、被加工物交換位置での被加工物の交換を一層容易に行うことができ、さらに生産性の向上を図ることができる。
【0011】
また前記の構成においては、前記基台部に設けられ、かつ前記複数の被加工物保持部にそれぞれ対応して設けられた複数の従動プーリと、前記複数の従動プーリのうち、前記研磨位置に対応した位置にある全ての従動プーリ、又は前記基台部の外周に巻き掛けられた無端ベルトと、前記研磨位置に対応した位置にある全ての従動プーリ又は前記基台部に、前記無端ベルトを介して連結された駆動プーリと、をさらに備えることが好ましい。この構成であると、駆動プーリが回転駆動することにより、無端ベルトを介して駆動プーリに連結された複数の従動プーリを回転させることができる。ここで、複数の従動プーリは、複数の被加工物保持部にそれぞれ対応して基台部に設けられたものであり、かつ研磨位置に位置するものである。そのため、従動プーリを回転させることで基台部自体を回転させることができる。また、無端ベルトを基台部の外周に巻き掛けることによっても当該基台部を回転させることができる。そして、基台部を回転させることで、被加工物を保持した被加工物保持部を、複数の研磨位置に順次移動させることができる。また、各研磨位置での研磨終了後の被加工物を保持する被加工物保持部を、被加工物交換位置まで移動させることができる。
【0012】
また本発明の研磨方法は、前記の課題を解決するために、前述の研磨装置を用いて、前記被加工物を研磨するための研磨方法であって、前記基台部の中心軸から任意の距離の同一円周上に、相互に等間隔となるように配置された前記複数の被加工物保持部のそれぞれに被加工物を保持させ、前記基台部を、前記中心軸を中心に一方向に回転させることにより、前記被加工物を保持した前記被加工物保持部を、前記複数の研磨位置に順次移動させて、前記複数の被加工物研磨部により研磨を行うと共に、前記被加工物交換位置に移動させて、研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に交換することを特徴とする。
【0013】
前記の構成によれば、中心軸を中心に一方向に基台部を回転させることにより、被加工物を保持した被加工物保持部を複数の研磨位置に順次移動させながら研磨を行う。そのため、例えば、各被加工物研磨部を異ならせる等することで、各研磨位置で被加工物の研磨領域や研磨条件を変更することができる。その結果、多様な外形仕様に柔軟に対応して、高精度の被加工物を製造することができる。また、被加工物交換位置には被加工物研磨部が設けられていないため、各研磨位置でそれぞれ被加工物の研磨を行いながら、研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に容易に交換することができる。そのため、被加工物の交換のために研磨装置を停止させる必要がなく、従来の研磨装置と比較して、生産性及び作業性を大幅に向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、被加工物を保持した被加工物保持部を複数の研磨位置に順次移動させながら研磨を行うので、多様な外形仕様に柔軟に対応して、高精度の被加工物を製造することができる。また、各研磨位置でそれぞれ被加工物の研磨を行いながら、被加工物交換位置で研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に容易に交換できるので、従来の研磨装置と比較して生産性及び作業性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る研磨装置の概略構成を表す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る研磨装置において、基台部の要部及び回転駆動部を模式的に表す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る研磨装置において、基台部の底面側の要部及び回転駆動部を模式的に表す底面図である。
【
図4】
図4(a)は被加工レンズを保持することが可能な被加工物保持部を模式的に表す斜視図であり、
図4(b)は被加工物保持部の下端部を表す底面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る研磨装置において、被加工物保持部に保持された被加工レンズを被加工物研磨部で研磨する様子を表す断面模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る研磨装置において、研磨具の研磨面の概略構成を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(研磨装置)
本発明の実施形態に係る研磨装置について、
図1~
図6を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0017】
本実施形態の研磨装置1は、光学レンズ等の被加工物の被加工面(被研磨面)を研磨加工する装置である。
研磨装置1は、
図1に示すように、基台部10と、被加工レンズ(被加工物)4を保持する複数の被加工物保持部20と、被加工レンズ4を研磨する複数の被加工物研磨部30と、駆動プーリ40と、研磨液貯留部50と、制御部60とを備えている。
図1は、本実施形態の研磨装置1の概略構成を表す模式図である。
【0018】
基台部10は、台座2上の軸部3に軸支されて設けられている。基台部10は、軸部3上で、基台部10の中心軸(軸部3)を中心に回転可能に設けられている。
【0019】
基台部10は、平面視における全体形状が略円形状のテーブル11を備える。テーブル11の外周縁には、基台部10のテーブル11に対し垂直方向に立設するように外壁部12が設けられている。これにより、基台部10は円形状枠部となっている。外壁部12が設けられることにより、被加工レンズ4の研磨に用いられる研磨液が基台部10の周囲に流れ落ちるのを防止することができる。外壁部12の上部には、研磨液の飛散を防止するための基台部側飛散防止部14が立設している。また、基台部10の中心には、平面視における形状が略円形状の円柱状部13が設けられている。
【0020】
基台部10のテーブル11において、外壁部12と円柱状部13との間に区画して形成される領域には、
図2に示すように、被加工物保持部20を着脱自在に固定することが可能な6つの固定部15が設けられている。各固定部15は、基台部10の中心軸から任意の距離の同一円周上に、相互に等間隔となるように配置されている。尚、本実施形態では固定部15が6つ設けられている場合を例にして説明するが、本発明はこの態様に限定されるものではない。固定部15は、少なくとも2以上が設けられていればよい。また
図2は、研磨装置1の基台部10の要部及び駆動プーリ40を模式的に表す平面図である。同図においては、被加工レンズ4が研磨される位置である研磨位置A~Eと、研磨終了後の被加工レンズ4が研磨前の被加工レンズに交換される位置である被加工物交換位置Fとが仮想的に示されている。
【0021】
固定部15は、中心部において基台部10のテーブル11に対し垂直方向に突出した突出部15aと、突出部15aの側周面から突出する一対の回転防止部15bとを有している。一対の回転防止部15bは、突出部15aに対し相互に反対方向に突出するように設けられている。また、突出部15a及び回転防止部15bは、被加工物保持部20の下端部と嵌合可能になっている。固定部15は、その中心軸を中心に回転可能にテーブル11上に設けてもよい。この場合、各固定部15を制御部60に電気的に接続し、制御部60の動作指令によりその動作を制御するのが好ましい。
【0022】
基台部10のテーブル11において、固定部15が設けられている側と反対の裏面側には、
図3に示すように、固定部15(被加工物保持部20)の設置位置に対応するように6つの従動プーリ16が設けられている。
図3は、研磨装置1の基台部10において、底面側の要部及び駆動プーリ40を模式的に表す底面図である。6つの従動プーリ16のうち5つの従動プーリ16の外周には、無端ベルト41が掛け渡されている。これらの5つの従動プーリ16は、研磨位置A~Eに対応する位置にある。また、被加工物交換位置Fに対応する位置にある従動プーリ16には、無端ベルト41が掛け渡されていない。無端ベルト41は駆動プーリ40にも掛け渡されており、駆動プーリ40が回転すると無端ベルト41を介して5つの従動プーリ16に動力が伝達される。これにより、軸部3上で基台部10を、基台部10の中心軸を中心に一方向に回転駆動させることができる。
【0023】
被加工物保持部20は、
図4(a)に示すように、その内部が空洞であり、その上端部において平凸状の被加工レンズ4を保持することができる。
図4(a)は、被加工レンズ4を保持することが可能な被加工物保持部20を模式的に表す斜視図である。上端部には、被加工レンズ4の被研磨面(凸状面)が表出するように被加工レンズ4を保持することが可能な載置部21が設けられている。載置部21の載置面21aは、周縁部21bよりも高さ位置が低くなるように段差が設けられている。これにより、載置部21は、被加工レンズ4を嵌め込むようにして載置することができる。また、周縁部21bの一部には切り欠き部24が設けられている。切り欠き部24は、被加工物保持部20の側壁部25において、下端部の方向に向かって任意の距離で直線状に延在している。これにより被加工レンズ4を載置部21上に嵌め込んで載置する際に、被加工レンズ4の大きさに応じて、周縁部21bを拡径することができる。さらに、被加工物保持部20の側壁部25には、被加工物保持部20を貫通する一対の貫通穴26が設けられている。この一対の貫通穴26を介して、例えばボルトを側壁部25に貫通させ、貫通したボルトを反対側からナットで締結することにより、周縁部21bの縮径が可能になる。これにより、被加工レンズ4を周縁部21bで固定し、載置部21から脱離するのを抑制することができる。
【0024】
また被加工物保持部20の下端部には、
図4(b)に示すように、基台部10の固定部15に於ける突出部15aの挿入を可能にする挿入部22が設けられている。
図4(b)は被加工物保持部20の下端部を表す底面図である。また被加工物保持部20の下端部には、固定部15の突出部15aとの嵌合を可能にする、一対の嵌合溝部23も設けられている。一対の嵌合溝部23は、挿入部22と連通している。
【0025】
被加工物研磨部30は、被加工レンズ4を研磨する5つの研磨位置A~Eにおいて、被加工物保持部20に保持される被加工レンズ4と対向配置されるように、それぞれ設けられている(
図2を参照)。また、被加工物研磨部30は、研磨終了後の被加工レンズ4の交換を行うための被加工物交換位置Fには設けられていない(
図2を参照)。
【0026】
被加工物研磨部30は、
図5及び
図6に示すように、研磨具31と、駆動部32と、研磨液供給部33と、研磨部側飛散防止部34とを備える。
図5は、被加工物保持部20に保持された被加工レンズ4を被加工物研磨部30で研磨する様子を表す断面模式図である。
図6は、研磨具31の研磨面31bの概略構成を表す平面図である。
【0027】
研磨具31は、
図5及び6に示すように、本体部31aと、研磨面31bと、雌ネジ部31cと、研磨液供給孔31dとを備える。本体部31aにおいて、被加工レンズ4と対向する側には、被加工レンズ4を研磨するための研磨面31bが設けられている。研磨面31bは、その形状が略凹状となっており、被加工レンズ4の被研磨面と面接触して押圧しながら研磨することができる。研磨面31bとしては、ポリウレタン等の研磨パッドからなる。但し、研磨面31bの形状は略凹状の場合に限定されず、被加工レンズの形状や研磨条件に応じて適宜変更可能である。また、研磨面31bは研磨パッドの場合に限定されず、例えば、砥石やペレット等を用いてもよい。
【0028】
本体部31aにおいて、被加工レンズ4に対向する側との反対側には、雌ネジ部31cが設けられている。雌ネジ部31cは、後述する接続部32aの雄ネジ部と螺合している。これにより、研磨具31は駆動部32と連結されている。
【0029】
本体部31a及び研磨面31bには、研磨面31bに研磨液を供給するための3つの研磨液供給孔31dが設けられている。また、研磨面31bには、研磨液供給孔31dと連通する排出路31eが、研磨面31bの周縁部に向かって延在している。これにより、各研磨液供給孔31dから供給された研磨液を、排出路31eを介して排出することができる。尚、本発明において、研磨液供給孔31d及び排出路31eは、本体部31a及び研磨面31bに少なくとも1つ設けられていればよい。研磨液供給孔31d及び排出路31eの数は、特に限定されない。
【0030】
駆動部32は、接続部32aに接続された研磨具31を、研磨具31の軸芯周りに回転させることができる。また、駆動部32は、研磨具31の研磨面31bが被加工レンズ4の被研磨面に圧接(当接)した状態で研磨されるように、研磨具31を被加工レンズ4に押圧する。駆動部32は制御部60と電気的に接続されており、制御部60の動作指令によりその動作が制御される。
【0031】
研磨液供給部33は、研磨液貯留部50から供給される研磨液を、研磨具31の研磨面31bと被加工レンズ4の被研磨面との間に供給する。研磨液供給部33は、研磨具31を回転させて被加工レンズ4を研磨する場合、研磨液供給孔31dと連通しないのが好ましい。その一方、研磨液供給部33は、被加工物保持部20のみを回転させて被加工レンズ4を研磨する場合には、研磨液供給孔31dと連通していてもよい。
【0032】
研磨部側飛散防止部34は、
図5に示すように、研磨具31の周囲を遮蔽する。研磨部側飛散防止部34は、少なくとも、研磨具31による被加工レンズ4の研磨位置まで垂下している。これにより、研磨具31による被加工レンズ4の研磨中に、研磨液が周囲に飛散するのを防止することができる。
【0033】
尚、被加工物研磨部30は、被加工レンズ4を研磨するに際して、研磨具31を被加工レンズ4に対し任意の角度で傾斜させて研磨することができる。これにより、被加工レンズ4の被研磨面の研磨領域を適宜調整することができる。その結果、例えば、研磨具31を被加工レンズ4に対し垂直方向から当接させた場合には、被加工レンズ4の頭頂部の研磨が困難であるが、当該垂直方向に対し任意の角度に傾斜させた状態で研磨具31を当接させることにより、頭頂部の研磨を容易に行うことができる。
【0034】
駆動プーリ40は、前述の通り、無端ベルト41を介して、基台部10のテーブル11の裏面側に設けられた5つの従動プーリ16に連結されている。従動プーリ16は制御部60と電気的に接続されており、当該制御部60の動作指令によりその動作が制御される。尚、駆動プーリ40は、無端ベルト41を介して、基台部10と直接連結されるように構成してもよい。この場合、無端ベルト41は、基台部10の外周に巻き掛けられるのが好ましい。このような場合でも、駆動プーリ40が回転すると無端ベルト41を介して基台部10に動力が伝達され、軸部3上で基台部10がその中心軸を中心に一方向に回転駆動させることができる。
【0035】
研磨液貯留部50は、その内部に研磨液を貯留している。研磨液貯留部50には、各被加工物研磨部30に研磨液を供給するための供給管51が複数接続されている。さらに、各供給管51の経路中には開閉弁52がそれぞれ設けられている。開閉弁52は、例えば制御部60により、その開閉が制御されるようにしてもよい。この場合、制御部60の動作指令により開閉弁52が開栓されると、研磨液が供給管51を介して各被加工物研磨部30にそれぞれに圧送される。
【0036】
制御部60は研磨装置1の各部と電気的に接続しており、研磨装置1の動作を統括的に又は部分的に制御する。例えば、制御部60は、被加工物研磨部30や開閉弁52、被加工物保持部20等の各部の動作を制御することができる。ここで制御部60は、例えば、演算部と、記憶部とを有するコンピュータにより構成することができる。記憶部には、例えば、研磨条件や駆動プーリ40の駆動条件が予め格納されている。研磨条件としては、例えば被加工物研磨部30の研磨具31の回転数、研磨時間及び被研磨面における研磨領域等が挙げられる。また、被加工物保持部20を回転させる場合には、その回転数及び回転(研磨)時間等が挙げられる。さらに、駆動プーリ40の駆動条件としては、駆動プーリ40の回転数や研磨時間に対応した駆動プーリ40の駆動時間等が挙げられる。
【0037】
(研磨方法)
次に、本実施形態の研磨装置1を用いた被加工レンズの研磨方法について、以下に説明する。
【0038】
先ず、研磨前の被加工レンズを保持した被加工物保持部20を、被加工物交換位置Fにおける固定部15に固定させる。そして、制御部60による動作制御により駆動プーリ40を回転駆動させる。これにより、基台部10のテーブル11は、
図2の矢印Xで示す方向に回転し、被加工物交換位置Fで固定部15に固定された被加工物保持部20は、研磨位置Aに搬送される。
【0039】
被加工物保持部20が研磨位置Aに搬送されると、研磨前の被加工レンズは研磨位置Aに設けられている被加工物研磨部30により、所定の研磨条件で研磨される。被加工物研磨部30による研磨は、制御部60による動作制御により行われる。また、研磨位置Aで研磨されている間、被加工物交換位置Fでは、研磨前の新たな被加工レンズが補充される。すなわち、研磨前の新たな被加工レンズが保持された被加工物保持部20が、被加工物交換位置Fにある固定部15に固定される。
【0040】
研磨位置Aで研磨が終了し、かつ、被加工物交換位置Fで研磨前の新たな被加工レンズの補充が終了すると、制御部60による動作制御により、再び駆動プーリ40を回転駆動させる。これにより、基台部10のテーブル11が、矢印Xで示す方向に再び回転し、研磨位置Aで研磨された被加工レンズは、被加工物保持部20に保持されたまま研磨位置Bに搬送される。続いて、当該被加工レンズは研磨位置Bに設けられている被加工物研磨部30により、所定の研磨条件で研磨される。また、被加工物交換位置Fで補充された研磨前の新たな被加工レンズは、研磨位置Aに搬送される。そして、研磨前の新たな被加工レンズは、研磨位置Aに設けられている被加工物研磨部30により、所定の研磨条件で研磨される。
【0041】
このようにして、被加工物交換位置Fで補充される研磨前の被加工レンズは、基台部10のテーブル11の間欠回転により、研磨位置Aから研磨位置Eに順次搬送される。そして、各研磨位置A~Eでは、それぞれに設置されている被加工物研磨部30により所定の研磨条件にて研磨される。研磨位置A~Eにおいて全ての研磨が終了し、再び被加工物交換位置Fに戻ると、研磨終了後の被加工レンズは、当該被加工物交換位置Fで研磨前の被加工レンズと交換される。
【0042】
以上の通り、本実施形態の研磨装置1を用いた研磨方法であると、例えば、各研磨位置A~Eでの研磨条件や、備え付ける各被加工物研磨部30を異ならせる等することで、多様な外形仕様に柔軟に対応して、高精度のレンズを製造することができる。また、各研磨位置A~Eでそれぞれ被加工レンズの研磨を行いながら、研磨終了後の被加工レンズを研磨前の被加工レンズに交換することができ、被加工レンズの交換のために研磨装置1を停止させる必要がない。そのため、従来の研磨装置と比較して、大幅に生産性及び作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0043】
1…研磨装置、2…台座、3…軸部、4…被加工レンズ(被加工物)、10…基台部、11…テーブル、12…外壁部、13…円柱状部、14…基台部側飛散防止部、15…固定部、15a…突出部、15b…回転防止部、16…従動プーリ、20…被加工物保持部、21…載置部、21a…載置面、21b…周縁部、22…挿入部、23…嵌合溝部、24…切り欠き部、25…側壁部、26…貫通穴、30…被加工物研磨部、31…研磨具、31a…本体部、31b…研磨面、31c…雌ネジ部、31d…研磨液供給孔、31e…排出路、32…駆動部、32a…接続部、33…研磨液供給部、34…研磨部側飛散防止部、40…駆動プーリ、41…無端ベルト、50…研磨液貯留部、51…供給管、52…開閉弁、60…制御部、A~E…研磨位置、F…被加工物交換位置、J…中心軸
【手続補正書】
【提出日】2023-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研磨するための研磨装置であって、
前記被加工物をそれぞれ保持する複数の被加工物保持部と、
中心軸を中心に回転可能であり、かつ、前記複数の被加工物保持部が、前記中心軸から任意の距離の同一円周上に、相互に等間隔となるように配置される基台部と、
前記被加工物保持部に保持された前記被加工物の被研磨面を研磨する複数の被加工物研磨部と、
を備え、
前記複数の被加工物研磨部は、
前記基台部の上方において、前記被加工物を研磨する複数の研磨位置にそれぞれ設けられ、かつ、前記被加工物保持部に保持されている研磨終了後の前記被加工物を交換するための被加工物交換位置には設けられておらず、
前記複数の研磨位置及び前記被加工物交換位置は、前記基台部の前記中心軸を中心に同一円周上に設けられており、
前記基台部が前記中心軸を中心に一方向に回転することにより、前記被加工物を保持した前記被加工物保持部を、前記複数の研磨位置に順次移動させて、前記複数の被加工物研磨部により研磨を行うと共に、前記複数の被加工物研磨部による研磨終了後の被加工物を、前記被加工物交換位置に移動させて、研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に交換可能にし、
さらに、前記基台部に設けられ、かつ前記複数の被加工物保持部にそれぞれ対応して設けられた複数の従動プーリと、
前記複数の従動プーリのうち、前記研磨位置に対応した位置にある全ての従動プーリ、又は前記基台部の外周に巻き掛けられた無端ベルトと、
前記研磨位置に対応した位置にある全ての従動プーリ又は前記基台部に、前記無端ベルトを介して連結された駆動プーリと、
を備える研磨装置。
【請求項2】
前記被加工物保持部は、前記基台部上に着脱自在に設けられている請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の研磨装置を用いて、前記被加工物を研磨するための研磨方法であって、
前記基台部の中心軸から任意の距離の同一円周上に、相互に等間隔となるように配置された前記複数の被加工物保持部のそれぞれに被加工物を保持させ、
前記基台部を、前記中心軸を中心に一方向に回転させることにより、前記被加工物を保持した前記被加工物保持部を、前記複数の研磨位置に順次移動させて、前記複数の被加工物研磨部により研磨を行うと共に、
前記被加工物交換位置に移動させて、研磨終了後の被加工物を研磨前の被加工物に交換する研磨方法。