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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178004
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231207BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20231207BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H02M3/155 Y
H01F37/00 M
H01F37/00 R
H01F27/24 W
H02M3/155 W
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091016
(22)【出願日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】北本 良太
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD03
5H730FG05
5H730FG10
5H730FG22
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】1相動作時の損失を低減可能な3相磁気結合リアクトルを用いた電力変換装置の制御装置を提供する。
【解決手段】第1外側コア部21及び第2外側コア部23は、それぞれ第1方向の中央に外側ギャップ26、28を有し、内側コア部22は、第1方向の中央に外側ギャップ26、28より第1方向の長さが大きい内側ギャップ27を有することで、3相のインダクタンスをバランスさせ、外側コイル11、13及び内側コイル12を選択する3相動作時のリプル電流及び損失を低減させる。また、いずれか1つのコイル11~13を選択する1相動作時は、インダクタンスが大きくなる内側コイル12を選択することで、リプル電流及び損失を低減させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相磁気結合リアクトルを用いた電力変換装置の制御装置であって、
前記3相磁気結合リアクトルは、
第1外側コイルと、
第2外側コイルと、
前記第1外側コイルと前記第2外側コイルとの間に配置された内側コイルと、
前記第1外側コイルが巻回される第1外側コア部と、前記第2外側コイルが巻回される第2外側コア部と、前記内側コイルが巻回される内側コア部と、を備えるコアと、を備え、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部は、それぞれ第1方向に延設され、且つ、前記第1方向に直交する第2方向に並べて配置され、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部の前記第1方向で一端側は、前記第2方向に延設された第1連結部で連結され、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部の前記第1方向で他端側は、前記第2方向に延設された第2連結部で連結され、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部を通る磁束は、いずれかのコア部に巻回されるコイルに由来して該コア部に発生する直流磁束の向きに対し、他のコア部に巻回される他のコイルに由来して該コア部に発生する直流磁束の向きが逆向きになるように構成され、
前記第1外側コア部及び前記第2外側コア部は、それぞれ前記第1方向の中央に外側ギャップを有し、
前記内側コア部は、前記第1方向の中央に前記外側ギャップより前記第1方向の長さが大きい内側ギャップを有し、
前記制御装置は、
前記第1外側コイル、前記第2外側コイル、及び前記内側コイルのうちいずれか1つのコイルに電流を流して動作させる1相動作、
前記第1外側コイル、前記第2外側コイル、及び前記内側コイルのうちいずれか2つのコイルに電流を流して動作させる2相動作、及び
前記第1外側コイル、前記第2外側コイル、及び前記内側コイルの全てのコイルに電流を流して動作させる3相動作、を切り替え可能であって、
前記1相動作では、前記内側コイルを選択する、電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記2相動作では、前記第1外側コイル及び前記第2外側コイルを選択する、電力変換装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する研究開発が行われている。
【0003】
電気自動車やHEV(Hybrid Electrical Vehicle:ハイブリッド電気自動車)などにも搭載されるDC-DCコンバータには、コアの周囲にコイルを装着することで構成されるリアクトルが用いられる。近年では、大出力のコンバータにおいて駆動相を複数設け電流を分割することで高効率化を目指した多相コンバータが用いられる。このような多相コンバータにおいては、動作させる相の数によって損失が変化することが知られており、小出力時にスイッチング損失の低減のために動作相数を低減する制御方法が一般的である。
【0004】
例えば、特許文献1では、電流を中心とした損失マップを作成し、最も効率が良くなる相数で動作させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-153240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のDC-DCコンバータは、2相のコアが一体化された磁気結合リアクトルを2つ用いた4相リアクトルを利用するものであり、3相のコアが一体化された3相磁気結合リアクトルではない。3相磁気結合リアクトルにおいても、低電流時はスイッチングロスの低減のため少ない動作相数とすることが望ましい。
【0007】
3相磁気結合リアクトルで1相動作させる場合、どの相を選択すれば損失を低減できるか検討の余地があった。
【0008】
本発明は、1相動作時の損失を低減可能な3相磁気結合リアクトルを用いた電力変換装置の制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
3相磁気結合リアクトルを用いた電力変換装置の制御装置であって、
前記3相磁気結合リアクトルは、
第1外側コイルと、
第2外側コイルと、
前記第1外側コイルと前記第2外側コイルとの間に配置された内側コイルと、
前記第1外側コイルが巻回される第1外側コア部と、前記第2外側コイルが巻回される第2外側コア部と、前記内側コイルが巻回される内側コア部と、を備えるコアと、を備え、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部は、それぞれ第1方向に延設され、且つ、前記第1方向に直交する第2方向に並べて配置され、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部の前記第1方向で一端側は、前記第2方向に延設された第1連結部で連結され、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部の前記第1方向で他端側は、前記第2方向に延設された第2連結部で連結され、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部を通る磁束は、いずれかのコア部に巻回されるコイルに由来して該コア部に発生する直流磁束の向きに対し、他のコア部に巻回される他のコイルに由来して該コア部に発生する直流磁束の向きが逆向きになるように構成され、
前記第1外側コア部及び前記第2外側コア部は、それぞれ前記第1方向の中央に外側ギャップを有し、
前記内側コア部は、前記第1方向の中央に前記外側ギャップより前記第1方向の長さが大きい内側ギャップを有し、
前記制御装置は、
前記第1外側コイル、前記第2外側コイル、及び前記内側コイルのうちいずれか1つのコイルに電流を流して動作させる1相動作、
前記第1外側コイル、前記第2外側コイル、及び前記内側コイルのうちいずれか2つのコイルに電流を流して動作させる2相動作、及び
前記第1外側コイル、前記第2外側コイル、及び前記内側コイルの全てのコイルに電流を流して動作させる3相動作、を切り替え可能であって、
前記1相動作では、前記内側コイルを選択する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、3相磁気結合リアクトルを用いた電力変換装置において1相動作時の損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】3相インターリーブ型のDC-DCコンバータ10の回路図である。
図2】DC-DCコンバータ10に用いられる3相磁気結合リアクトル1の斜視図である。
図3】3相磁気結合リアクトル1の平面図を示す図である。
図4】相2と相3の2相動作における、各コア部の磁束の向きを示す図である。
図5】相1と相3の2相動作における、各コア部の磁束の向きを示す図である。
図6】ギャップ26~28を説明するための図である。
図7】コア20の漏れ磁束を説明するための図である。
図8】磁束密度Bと、磁界の強さHと、透磁率μとの関係を示す図である。
図9】ギャップ26~28の長さto、tiと、インダクタンスとの関係を示す図である。
図10】3相動作時のリブルの電流依存性を示す図である。
図11】コイル11~13の電流と、インダクタンスとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態の電力変換装置の制御装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
先ず、本発明の制御装置の制御対象である電力変換装置の一例としての3相インターリーブ型のDC-DCコンバータを説明する。図1は、3相インターリーブ型のDC-DCコンバータを示す回路図である。
【0014】
図1に示す3相インターリーブ型のDC-DCコンバータ10(以下、DC-DCコンバータ10)は、平滑コンデンサC1と、3つのコイル11~13を有する3相磁気結合リアクトル1(以下、3相リアクトル)と、スイッチ部SW1,SW2,SW3と、ダイオードD1,D2,D3と、平滑コンデンサC2と、制御装置CTRと、を備える。
【0015】
このDC-DCコンバータ10は、平滑コンデンサC1側の電圧V1を入力電圧とし、平滑コンデンサC2側の電圧V2を出力電圧として動作する場合、入力電圧V1を昇圧する。
【0016】
3相リアクトル1は、コイル11~13の入力端子が高電位側の電源ラインに並列に接続される。3相リアクトル1のコイル11は、出力端子が、直列に接続されたスイッチ部SW1とダイオードD1の中間ノードに接続され、第1電圧変換部14を構成する。3相リアクトル1のコイル12は、出力端子が、直列に接続されたスイッチ部SW2とダイオードD2の中間ノードに接続され、第2電圧変換部15を構成する。3相リアクトル1のコイル13は、出力端子が、直列に接続されたスイッチ部SW3とダイオードD3の中間ノードに接続され、第3電圧変換部16を構成する。スイッチ部SW1,SW2,SW3は、それぞれIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子と、このスイッチング素子に並列接続された還流ダイオードとを有する。
【0017】
なお、3相リアクトル1の「3相」とは、変換部の数が3つのであることを意味し、後述する1相動作とは、第1電圧変換部14~第3電圧変換部16のうちスイッチング動作する変換部の数が1つであることを意味し、2相動作とは、スイッチング動作する変換部の数が2つであることを意味し、3相動作とは、スイッチング動作する変換部の数が3つであることを意味する。以下の説明では、第1電圧変換部14を「相1」、第2電圧変換部15を「相2」、第3電圧変換部16を「相3」と称することがある。
【0018】
スイッチ部SW1~SW3の各スイッチング素子は、制御装置CTRからの信号によってオンオフ制御される。DC-DCコンバータ10が有する3つの電圧変換部14、15、16は電気的に並列に接続されており、少なくとも1つの電圧変換部14、15、16のスイッチング素子を所望のタイミングでオンオフ切換動作することによって、電圧V1を直流のまま昇圧して電圧V2を出力する。電圧変換部14、15、16のスイッチ部SW1,SW2,SW3のオンオフ切換動作は、スイッチング制御部からDC-DCコンバータ10へのパルス状の所定のデューティ比を有するスイッチング信号によって制御される。
【0019】
電圧変換部14、15、16のスイッチング素子をオンオフ切換制御すると、オン動作中にはDC-DCコンバータ10への入力電流がスイッチング素子側に流れて3相リアクトル1はエネルギーを蓄え、オフ動作中にはDC-DCコンバータ10への入力電流がダイオード側に流れて3相リアクトル1は蓄えたエネルギーを放出する。DC-DCコンバータ10の3つの電圧変換部14、15、16のうち1つのみを駆動する1相動作の場合には、オフ動作中のDC-DCコンバータ10の1つの電圧変換部を流れた電流が出力される。また、DC-DCコンバータ10の3つの電圧変換部14、15、16のうち2つを駆動する2相動作の場合には、例えば駆動する各電圧変換部14、15、16のオンオフ切換位相を180度ずつずらすインターリーブ制御が行われる。DC-DCコンバータ10の3つの電圧変換部14、15、16の全てを駆動する3相動作の場合には、例えば各電圧変換部14、15、16のオンオフ切換位相を120度ずつずらすインターリーブ制御が行われる。
【0020】
続いて、3相リアクトル1の構造について説明する。以下の説明では、3つのコイル11~13のうち、外側に配置されたコイル11、13をそれぞれ第1外側コイル11、第2外側コイル13と称し、第1外側コイル11と第2外側コイル13に挟まれたコイル12を内側コイル12と称する。また、図2及び図3に示すように、3相リアクトル1をX軸、Y軸、Z軸の直交座標系を用いて各部位の位置関係について説明する。
【0021】
3相リアクトル1は、図2に示すように、第1外側コイル11と、第2外側コイル13と、内側コイル12と、コア20と、これらを収容する筐体40と、を備える。
【0022】
コア20は、例えば、軟磁性体の粉末を成型した圧粉磁心で構成される。コア20は、図3に示すように、X軸方向に延設されY軸方向に沿って互いに平行に並べて配置された第1外側コア部21、内側コア部22、及び第2外側コア部23と、X軸方向一端側でY軸方向に延設され、これら第1外側コア部21、内側コア部22、及び第2外側コア部23を連結する第1連結部24と、X軸方向他端側でY軸方向に延設され、これら第1外側コア部21、内側コア部22、及び第2外側コア部23を連結する第2連結部25と、を備える。言い換えると、コア20は、X軸方向及びY軸方向に沿って形成されるXY平面上に配置された、平面構造のコアである。X軸方向が本発明の第1方向であり、Y軸方向が本発明の第2方向である。
【0023】
第1外側コア部21及び第2外側コア部23は、それぞれX方向の中央にギャップ26、28(以下、外側ギャップ26、28)を有する。また、内側コア部22は、X方向の中央にギャップ27(以下、内側ギャップ27)を有する。これらのギャップ26~28は、各相の磁気抵抗を調整するために設けられるが、詳しくは後述する。
【0024】
第1外側コア部21には第1外側コイル11が巻回され、第2外側コア部23には第2外側コイル13が巻回され、内側コア部22には内側コイル12が巻回される。したがって、第1外側コア部21、内側コア部22、及び第2外側コア部23は、それぞれX軸方向に延設され、且つ、Y軸方向に並べて配置される。各コイル11~13の巻き数及び巻き方向は、等しくなるように構成される。
【0025】
この3相リアクトル1では、各コイル11、12、13のいずれか2つ以上のコイルに電流を流した場合、いずれの組合せでも各コイルにて生じる磁束の方向(以下、磁束方向)が互いに逆向きになっており、コアで生じる磁束を低減できる。即ち、第1外側コア部21、第2外側コア部23、及び内側コア部22を通る磁束は、いずれかのコア部に巻回されるコイルに由来してそのコア部に発生する直流磁束の向きに対し、他のコア部に巻回される他のコイルに由来してそのコア部に発生する直流磁束の向きが逆向きになるように構成される。これにより、コア20の磁気飽和を抑制することができ、より大きなインダクタンスを発生できる。
【0026】
2相動作を例に、図4及び図5を用いて磁束の流れについてより具体的に説明する。
【0027】
図4は、相2と相3の2相動作における、各コア部の磁束の向きを示す図であり、図5は、相1と相3の2相動作における、各コア部の磁束の向きを示す図である。以下の説明では、図4及び図5に示すように、X方向における紙面上方の向きを+X方向とし、X方向における紙面下方の向きを-X方向とし、Y方向における紙面右方の向きを+Y方向とし、Y方向における紙面左方の向きを-Y方向として説明する。
【0028】
図4に示すように、2相動作において相2及び相3を選択した場合、内側コイル12(相2)に流れる電流によってコア20に発生する磁束(図中、白抜き矢印)は、内側コア部22で正方向(図中、-X方向から+X方向)に発生し、第1外側コア部21及び第2外側コア部23で逆方向(図中、+X方向から-X方向)に発生する。
【0029】
これに対し、第2外側コイル13(相3)に流れる電流によってコア20に発生する磁束(図中、ハッチング付き矢印)は、第2外側コア部23で正方向(図中、-X方向から+X方向)に発生し、内側コア部22及び第1外側コア部21で逆方向(図中、+X方向から-X方向)に発生する。
【0030】
即ち、磁束の方向を模式的に示す図4の矢印から分かるように、内側コイル12(相2)及び第2外側コイル13(相3)に流れる電流の向きが同じ場合、内側コイル12(相2)に由来して内側コア部22に発生する直流磁束の向きに対し、第2外側コイル13(相3)に由来して内側コア部22に発生する直流磁束の向きが逆向きになる。また、第2外側コイル13(相3)に由来して第2外側コア部23に発生する直流磁束の向きに対し、内側コイル12(相2)に由来して第2外側コア部23に発生する直流磁束の向きが逆向きになる。
【0031】
また、図5に示すように、2相動作において相1及び相3を選択した場合、第1外側コイル11(相1)に流れる電流によってコア20に発生する磁束(図中、白抜き矢印)は、第1外側コア部21で正方向(図中、-X方向から+X方向)に発生し、内側コア部22及び第2外側コア部23で逆方向(図中、+X方向から-X方向)に発生する。
【0032】
これに対し、第2外側コイル13(相3)に流れる電流によってコア20に発生する磁束(図中、ハッチング付き矢印)は、第2外側コア部23で正方向(図中、-X方向から+X方向)に発生し、内側コア部22及び第1外側コア部21で逆方向(図中、+X方向から-X方向)に発生する。
【0033】
即ち、磁束の方向を模式的に示す図5の矢印から分かるように、第1外側コイル11(相1)及び第2外側コイル13(相3)に流れる電流の向きが同じ場合、第1外側コイル11(相1)に由来して第1外側コア部21に発生する直流磁束の向きに対し、第2外側コイル13(相3)に由来して第1外側コア部21に発生する直流磁束の向きが逆向きになる。また、第2外側コイル13(相3)に由来して第2外側コア部23に発生する直流磁束の向きに対し、第1外側コイル11(相1)に由来して第2外側コア部23に発生する直流磁束の向きが逆向きになる。なお、詳しい説明は省略するが、このことは、2相動作において相1及び相2を選択した場合も同様であり、3相動作においても同様である。
【0034】
このように構成されたDC-DCコンバータ10では、駆動する電圧変換部14、15、16の数を増やすことで、出力電流のリプルを低減することができる。また、駆動する電圧変換部14、15、16の数の増加によってスイッチング損失は増大するが、導通損失は減少する。制御装置CTRは、駆動する電圧変換部14、15、16の数毎の損失を考慮したDC-DCコンバータ10のエネルギー効率を示すマップ等を用いて駆動する電圧変換部14、15、16の数を選択する。また、制御装置CTRは、1相動作及び2相動作において、駆動する相を選択する。制御装置CTRは、後述するように1相動作時に電圧変換部15(相2)、即ち内側コイル12を選択する。また、制御装置CTRは、2相動作時に前述したように電圧変換部15(相2)及び第3電圧変換部16(相3)を選択してもよく、第1電圧変換部14(相1)及び第3電圧変換部16(相3)を選択してもよく、第1電圧変換部14(相1)及び電圧変換部15(相2)を選択してもよい。なお、3相動作の場合、第1電圧変換部14(相1)~第3電圧変換部16(相3)の全ての相を動作させるので相を選択する余地はない。
【0035】
次に、コア20に設けられるギャップ26~28について説明するとともに、1相動作時に電圧変換部15(相2)、即ち内側コイル12を選択する理由について説明する。ここでギャップ26~28は、3相動作において最適になるように設計される。
【0036】
図6は、ギャップ26~28を説明するための図である。
【0037】
(3相動作)
コア20の各部のパラメータを以下のように定義する。
外側コア部21、23から内側コア部22を通る磁路長:li
外側コア部21、23から外側コア部21、23を通る磁路長:lo
外側コア部21、23から内側コア部22を通る磁気抵抗:Rmi
外側コア部21、23から外側コア部21、23を通る磁気抵抗:Rmo
内側コア部22のギャップ27の長さ:ti
外側コア部21、23のギャップ26、28の長さ:to
真空透磁率:μ0
コア20の絶対透磁率:μ
コア20の比透磁率:μr0
コア20の断面積:A
コイル11~13の巻数:N
コイル11~13の通電電流:I
【0038】
磁気抵抗Rmiと磁気抵抗Rmoは、それぞれ以下の(1)式で表される。
【0039】
【数1】

(1)
【0040】
外側コア部21、23から見ると、磁束は、liの磁路とloの磁路に分流するため、この相から発生する磁束Φoは、以下の(2)式で表される。
【0041】
【数2】
(2)
【0042】
内側コア部22から見ると、磁束は、liの磁路2つに分流するため、この相から発生する磁束Φiは、以下の(3)式で表される。
【0043】
【数3】
(3)
【0044】
一方の外側コア部21、23から他方の外側コア部21、23に流れる磁束Φo2oは、以下の(4)式で表される。
【0045】
【数4】

(4)
【0046】
内側コア部22から一方の外側コア部21、23に流れる磁束Φi2oは、以下の(5)式で表される。
【0047】
【数5】

(5)
【0048】
したがって、外側コア部21、23で打ち消された結果、残る磁束Φoは、以下の(6)式で表される。
【0049】
【数6】

(6)
【0050】
また同様に、内側コア部22で打ち消された結果、残る磁束Φiは、以下の(7)式で表される。
【0051】
【数7】

(7)
【0052】
磁気結合の効果が最も大きいのは、外側コア部21、23及び内側コア部22で打ち消された結果、残る磁束が0のときであるため、以下の(8)式が成り立つ。
【0053】
【数8】

(8)
【0054】
このとき、磁気抵抗を寸法パラメータで表すと、以下の(9)式となる。
【0055】
【数9】

(9)
【0056】
もしくは、比透磁率で表すと、以下の(10)式となる。
【0057】
【数10】

(10)
【0058】
このように、磁気結合の効果が最も大きくなる外側ギャップ26、28及び内側ギャップ27の長さto、tiは、言い換えると、3相動作時の効率が最もよい外側ギャップ26、28及び内側ギャップ27の長さto、tiは、それぞれのコア20内での磁路長lo、liの差と比透磁率とを用いて相対的に表せる。そして、内側ギャップ27の長さtiは、外側ギャップ26、28の長さtoより必ず大きくなる。
【0059】
つぎに、外側ギャップ26、28及び内側ギャップ27の長さto、tiの最適値の設定方法について説明する。図7は、コア20の漏れ磁束を説明するための図である。図8は、磁束密度Bと、磁界の強さHと、透磁率μとの関係を示す図である。図9は、ギャップ26~28の長さto、tiと、インダクタンスとの関係を示す図である。
【0060】
第1外側コア部21の各部のパラメータを以下のように定義する。
漏れ磁束の磁路の磁気抵抗:RmoLeak
空気部分の磁気抵抗:RmoAir
コイル11がある部分の外側コア部21内の磁気抵抗:RmoCore
外側ギャップ26の磁気抵抗:RmoGap
コイル11がある部分のコア長さ:lcoil
【0061】
このとき、RmoLeak=RmoAir+RmoCore+RmoGapとなる。そして、第1外側コア部21の漏れ磁束は、以下の(11)式で表される。
【0062】
【数11】

(11)
【0063】
また、漏れ磁束によるインダクタンスは、以下の(12)式で表せられる。
【0064】
【数12】

(12)
【0065】
このとき、外側ギャップ26の設計によって変化するパラメータは、比透磁率μと外側ギャップ26の長さtoである。また、比透磁率μは、図8に示すように、BHカーブに沿うため、外側ギャップ26の長さtoに依存する。外側ギャップ26の長さtoとインダクタンスの関係としては、インダクタンスが最大となる外側ギャップ26の長さtoが存在し、それより大きくなっても、小さくなってもインダクタンスが低下するカーブを描く(図9参照)。
【0066】
同様のことが他方の外側ギャップ28や内側ギャップ27についても言えるが、コア20内の直流磁束を打ち消すために、外側ギャップ26、28の長さtoと内側ギャップ27の長さtiとの相対関係((10)式参照)を維持すると、双方のギャップ長さto、tiをインダクタンスが最大となるように同時に設定することは不可能である。そのため、図9に示すように、双方のギャップ長さto、tiを敢えてインダクタンスの最大点からずらし、インダクタンスが相間でバランスを取れる最適点で設計することが望ましい。
【0067】
図10は、3相動作時のリブルの電流依存性を示す図である。図11は、コイル11~13の電流と、インダクタンスとの関係を示す図である。
【0068】
前述の説明では、コア20の透磁率μが部位によらず一定であることを前提にしていた。しかしながら、漏れ磁束を考慮すると、ある電流値でコア20内の磁束がバランスする設計のとき、他の電流値ではバランス点からの透磁率μの変化量が異なるため、各相間で直流磁束がバランスせず、各相のインダクタンスに差が生じる。例えば、ある電流値I0でインダクタンスがバランスしているとした場合、コア内の磁束キャンセルの条件から、以下の(13)、(14)式が成り立つ。
【0069】
【数13】


(13)
【0070】
【数14】

(14)
【0071】
コア20では、外側ギャップ26、28より内側ギャップ27の方が長いため、コア20内の磁路の磁束をキャンセルできるときのコア20の透磁率μは、内側コア部22の方が外側コア部21、23より大きい。つまり、内側コア部22は低磁束領域、外側コア部21、23は高磁束領域で使用していることになる。図10に示すように、3相動作時は、BHカーブの特性上、バランスしているバランス点から低電流側にシフトすると、高磁束で使っていた外側コア部21、23の方が透磁率μの変化が大きくなる。これにより、外側コア部21、23(外側コイル11、13)では、内側コア部22(内側コイル12)と比べてインダクタンスの電流依存性が大きく、低電流値でインダクタンス値が大きくなるため、リプルは相対的に小さくなる。
【0072】
(1相動作)
一方、1相動作時では、内側コイル12を選択した場合、ギャップ26~28の長さto、tiの違いにより、直流磁束が制限されて飽和しづらいため、電流が大きくなってもインダクタンスが大きくとれる。つまり、3相動作時の設計制約に従って設計すると、1相動作時の低電流条件下では、図11に示すように、インダクタンスは、外側コイル11、13よりも内側コイル12の方が大きくなる。したがって、1相動作時のリプルを小さくするには、内側コイル12を選択して動作させることが望ましい。
【0073】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0074】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0075】
(1) 3相磁気結合リアクトル(3相磁気結合リアクトル1)を用いた電力変換装置(DC-DCコンバータ10)の制御装置(制御装置CTR)であって、
前記3相磁気結合リアクトルは、
第1外側コイル(第1外側コイル11)と、
第2外側コイル(第2外側コイル13)と、
前記第1外側コイルと前記第2外側コイルとの間に配置された内側コイル(内側コイル12)と、
前記第1外側コイルが巻回される第1外側コア部(第1外側コア部21)と、前記第2外側コイルが巻回される第2外側コア部(第2外側コア部23)と、前記内側コイルが巻回される内側コア部(内側コア部22)と、を備えるコア(コア20)と、を備え、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部は、それぞれ第1方向(X軸方向)に延設され、且つ、前記第1方向に直交する第2方向(Y軸方向)に並べて配置され、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部の前記第1方向で一端側は、前記第2方向に延設された第1連結部(第1連結部24)で連結され、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部の前記第1方向で他端側は、前記第2方向に延設された第2連結部(第2連結部25)で連結され、
前記第1外側コア部、前記第2外側コア部、及び前記内側コア部を通る磁束は、いずれかのコア部に巻回されるコイルに由来して該コア部に発生する直流磁束の向きに対し、他のコア部に巻回される他のコイルに由来して該コア部に発生する直流磁束の向きが逆向きになるように構成され、
前記第1外側コア部及び前記第2外側コア部は、それぞれ前記第1方向の中央に外側ギャップ(外側ギャップ26、28)を有し、
前記内側コア部は、前記第1方向の中央に前記外側ギャップより前記第1方向の長さが大きい内側ギャップ(内側ギャップ27)を有し、
前記制御装置は、
前記第1外側コイル、前記第2外側コイル、及び前記内側コイルのうちいずれか1つのコイルに電流を流して動作させる1相動作、
前記第1外側コイル、前記第2外側コイル、及び前記内側コイルのうちいずれか2つのコイルに電流を流して動作させる2相動作、及び
前記第1外側コイル、前記第2外側コイル、及び前記内側コイルの全てのコイルに電流を流して動作させる3相動作、を切り替え可能であって、
前記1相動作では、前記内側コイルを選択する、電力変換装置の制御装置。
【0076】
(1)によれば、第1外側コア部及び第2外側コア部は、それぞれ第1方向の中央に外側ギャップを有し、内側コア部は、第1方向の中央に外側ギャップより第1方向の長さが大きい内側ギャップを有するので、3相動作時のリプル電流が低減されるように3相のインダクタンスをバランスさせることができる。また、内側コイルは、ギャップの長さの違いにより、外側コイルよりもインダクタンスが大きくなるので、1相動作時に内側コイルを選択することで、1相動作時のリプル電流及び損失を低減できる。
【0077】
(2) (1)に記載の電力変換装置の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記2相動作では、前記第1外側コイル及び前記第2外側コイルを選択する、電力変換装置の制御装置。
【0078】
(2)によれば、2相動作では第1外側コイル及び第2外側コイルが選択され、1相動作では内側コイルが選択されるので、使用頻度の差を抑えて各コイル等の負荷を均等化することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 3相磁気結合リアクトル
10 DC-DCコンバータ(電力変換装置)
11 第1外側コイル
12 内側コイル
13 第2外側コイル
20 コア
21 第1外側コア部
22 内側コア部
23 第2外側コア部
24 第1連結部
25 第2連結部
26 外側ギャップ
27 内側ギャップ
28 外側ギャップ
CTR 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11