(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001783
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G06T 5/00 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
G06T5/00 710
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102716
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100221556
【弁理士】
【氏名又は名称】金田 隆章
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 巧実
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057AA07
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CD05
5B057CE03
5B057CG05
5B057CH20
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC22
5B057DC36
(57)【要約】
【課題】画像のデータにおいて特定の要素を他の要素に比べて強調することができる画像処理装置及び画像処理方法を得る。
【解決手段】本開示の一態様に係る画像処理装置は、プロセッサと、画像のデータを記憶した記憶装置とを備える。プロセッサは、画像を複数の領域に分割し、複数の領域のそれぞれに対して直交変換を実行し、複数の領域のそれぞれについて算出された複数の直交変換係数を用いて、各領域を代表する代表値を算出し、算出した少なくとも1つ以上の代表値に基づいて算出した値と、複数の直交変換係数とに基づいて画像の鮮明度を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、画像のデータを記憶した記憶装置とを備える画像処理装置であって、
前記プロセッサは、
前記画像を複数の領域に分割し、
前記複数の領域のそれぞれに対して直交変換を実行し、
前記複数の領域のそれぞれについて算出された複数の直交変換係数を用いて、各領域を代表する代表値を算出し、
前記算出した少なくとも1つ以上の代表値に基づいて算出した値と、前記複数の直交変換係数とに基づいて前記画像の鮮明度を調整する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記複数の領域のそれぞれにおける前記代表値が所定の閾値より大きい場合に、前記複数の直交変換係数の絶対値を増加させる、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記複数の直交変換係数を、絶対値に基づいて複数の群に分類し、
前記分類された群毎に、前記算出した少なくとも1つ以上の代表値に基づいて算出した値と、前記複数の直交変換係数とに基づいて前記画像の鮮明度を調整する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記代表値の中から所定の代表値を選択し、
前記各領域を代表する代表値を、前記所定の代表値に基づいて正規化し、
正規化された前記代表値に代表される前記領域に含まれる前記直交変換係数と、当該正規化された代表値に応じた値とに基づいて、前記画像の鮮明度を調整する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記複数の直交変換係数を、絶対値の大きさに応じて順に複数の群に分類し、
前記複数の群のうち前記複数の直交変換係数の絶対値が最も大きい群における前記複数の直交変換係数の絶対値の和を、前記代表値として算出し、
算出された前記代表値に基づいて、前記複数の領域のそれぞれにおける前記直交変換係数を正規化し、
正規化された前記複数の直交変換係数に対して、その絶対値に応じた倍率を乗じる、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理装置は、前記画像に映る対象物を鮮明化する画像鮮明化処理を実行し、
前記プロセッサは、前記画像を複数の領域に分割する前に、前記対象物の幅が各領域内に包含されるように、前記画像のサイズ及び前記複数の領域のサイズのうちの少なくとも一方を調整する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
プロセッサによって、記憶装置に記憶された画像のデータに対して画像処理を実行する画像処理方法であって、
前記画像を複数の領域に分割し、
前記複数の領域のそれぞれに対して直交変換を実行し、
前記複数の領域のそれぞれについて算出された複数の直交変換係数を用いて、各領域を代表する代表値を算出し、
前記算出した少なくとも1つ以上の代表値に基づいて算出した値と、前記複数の直交変換係数とに基づいて前記画像の鮮明度を調整することを含む、
画像処理方法。
【請求項8】
前記複数の領域のそれぞれにおける前記代表値が所定の閾値より大きい場合に、前記複数の直交変換係数の絶対値を増加させることを含む、請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記複数の直交変換係数を、絶対値に基づいて複数の群に分類し、
前記分類された群毎に、前記算出した少なくとも1つ以上の代表値に基づいて算出した値と、前記複数の直交変換係数とに基づいて前記画像の鮮明度を調整することを含む、
請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記代表値の中から所定の代表値を選択し、
前記各領域を代表する代表値を、前記所定の代表値に基づいて正規化し、
正規化された前記代表値に代表される前記領域に含まれる前記直交変換係数と、当該正規化された代表値に応じた値とに基づいて、前記画像の鮮明度を調整することを含む、
請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記複数の直交変換係数を、絶対値の大きさに応じて順に複数の群に分類し、
前記複数の群のうち前記複数の直交変換係数の絶対値が最も大きい群における前記複数の直交変換係数の絶対値の和を、前記代表値として算出し、
算出された前記代表値に基づいて、前記複数の領域のそれぞれにおける前記直交変換係数を正規化し、
正規化された前記複数の直交変換係数に対して、その絶対値に応じた倍率を乗じることを含む、
請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記画像処理方法は、前記画像に映る対象物を鮮明化する画像鮮明化処理方法であり、
前記画像を複数の領域に分割する前に、前記対象物の幅が各領域内に包含されるように、前記画像のサイズ及び前記複数の領域のサイズのうちの少なくとも一方を調整することを含む、
請求項7に記載の画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像内に映る対象物を、コントラストを上げる等の手段により鮮明化する技術が知られている。例えば、特許文献1は、眼底画像から血管径などの血管微細形状を維持したまま血管領域を自動的に抽出することが可能な眼底画像処理装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、画像のデータにおいて特定の要素を他の要素に比べて強調することができる画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、プロセッサと、画像のデータを記憶した記憶装置とを備える画像処理装置を提供する。プロセッサは、画像を複数の領域に分割し、複数の領域のそれぞれに対して直交変換を実行し、複数の領域のそれぞれについて算出された複数の直交変換係数を用いて、各領域を代表する代表値を算出し、算出した少なくとも1つ以上の代表値に基づいて算出した値と、複数の直交変換係数とに基づいて画像の鮮明度を調整する。
【0006】
本開示の他の態様は、プロセッサによって、記憶装置に記憶された画像のデータに対して画像処理を実行する画像処理方法を提供する。この画像処理方法は、画像を複数の領域に分割し、複数の領域のそれぞれに対して直交変換を実行し、複数の領域のそれぞれについて算出された複数の直交変換係数を用いて、各領域を代表する代表値を算出し、算出した少なくとも1つ以上の代表値に基づいて算出した値と、複数の直交変換係数とに基づいて画像の鮮明度を調整することを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る画像処理装置及び画像処理方法によれば、画像のデータにおいて特定の要素を他の要素に比べて強調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示すブロック図
【
図2】
図1の画像処理装置のプロセッサによって実行される画像処理の手順を例示するフローチャート
【
図3】
図2のステップS7で実行されるDCTを説明するための模式図
【
図4】
図2のDCT係数強調処理S8の詳細な手順を例示するフローチャート
【
図5】
図4の群分け処理S81を説明するための模式図
【
図6】
図4の正規化処理S82を説明するための模式図
【
図7】DCTブロックの第1~第4群に対する倍率を例示するグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
従来技術においては、遮蔽物に覆われた対象物を特定波長を有する光を用いて撮像して画像を生成した場合、遮蔽物による光の減衰、散乱等のため、当該画像において対象物が不鮮明となる課題がある。ここで、「対象物」の一例は、血管、骨、内臓等の組織であり、「遮蔽物」の一例は、対象物を覆う皮膚、脂肪、筋肉等の組織である。「特定波長を有する光」の一例は、可視光、赤外光、紫外光、X線等の光である。
【0010】
例えば、カメラを用いて人体を撮像した場合、撮像画像では、体表面の近くにある血管に比べて、深部にある血管が不鮮明となり、血管が判別できないことがある。
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、画像のデータにおいて特定の要素を他の要素に比べて強調し、当該特定の要素を容易に識別可能とする画像処理装置及び画像処理方法を見出した。
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
(実施形態)
[1.構成]
図1は、本開示の実施形態に係る画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。画像処理装置100は、プロセッサ1と、記憶装置2と、入力インタフェース(I/F)3と、出力インタフェース(I/F)4とを備える。
【0014】
プロセッサ1は、情報処理を実行して画像処理装置100の機能を実現する。プロセッサ1は、CPU、MPU、FPGA等の回路で構成される。このような情報処理は、例えば、プロセッサ1が記憶装置2に格納されたプログラム21を実行することにより実現される。
【0015】
記憶装置2は、画像処理装置100の機能を実現するために必要なプログラム21及びデータを含む種々の情報を記録する記録媒体である。記憶装置2は、例えば、フラッシュメモリ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)等の半導体記憶装置、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記憶装置、その他の記録媒体単独で又はそれらを組み合わせて実現される。記憶装置2は、SRAM、DRAM等の揮発性メモリを含んでもよい。
【0016】
入力インタフェース3は、画像データ11等の情報を画像処理装置100に入力するために、画像処理装置100と外部機器とを接続するインタフェース回路である。このような外部機器は、例えば、図示しない他の情報処理端末、画像データ11を取得するカメラ等の装置である。入力インタフェース3は、既存の有線通信規格又は無線通信規格に従ってデータ通信を行う通信回路であってもよい。
【0017】
出力インタフェース4は、画像処理装置100から情報を出力するために、画像処理装置100と外部の出力装置とを接続するインタフェース回路である。このような出力装置は、例えばディスプレイ12である。出力インタフェース4は、既存の有線通信規格又は無線通信規格に従ってネットワーク13に接続されてデータ通信を行う通信回路であってもよい。入力インタフェース3及び出力インタフェース4は、同様のハードウェアにより実現されてもよい。
【0018】
[2.動作]
[2-1.全体動作]
図2は、
図1の画像処理装置100のプロセッサ1によって実行される画像処理の手順を例示するフローチャートである。
【0019】
図2のステップS1において、プロセッサ1は、画像データ11を取得する。画像データ11は、
図1に示すように入力インタフェース3を介してプロセッサ1に入力されてもよいし、記憶装置2に予め格納されていてもよい。
【0020】
図2のステップS2において、プロセッサ1は、画像データ11によって表される画像に対してノイズ除去処理を実行する。なお、本明細書では、画像データ11によって表される画像についても、同じ参照符号を用いて「画像11」と表現することがある。
【0021】
図2のステップS3において、プロセッサ1は、画像11のコントラストを上げるための平坦化処理を実行する。例えば、プロセッサ1は、画像11の各画素の輝度値について、輝度値分布を広げるヒストグラム平坦化処理を実行する。
図2のステップS4において、プロセッサ1は、ガンマ補正処理を実行する。
図2のステップS5において、プロセッサ1は、その他の輝度補正処理を実行する。例えば、プロセッサ1は、出力画像の各画素値を、対応する入力画素値だけを用いて求めるのではなく、対応する入力画素の周囲の画素値をも用いて求める。例えば、プロセッサ1は、入力画素の輝度値を、当該入力画素の周囲の画素における輝度値平均値と比較することにより、入力画像において対象物を特定し、出力画像において対象物が鮮明となるように輝度値を補正する。
【0022】
図2のステップS6において、プロセッサ1は、血管等の対象物の幅が後述のDCTブロック内に包含されるように、画像11のサイズ及びDCTブロックのサイズのうちの少なくとも一方を調整するリサイズ処理を実行する。ここで、「サイズ」とは、画像11によって表される画像の寸法を表し、例えば画像11によって表される画像の縦及び/又は横の大きさを表す。例えば、プロセッサ1は、DCTブロックと比較して血管が大きく、画像11における血管幅がDCTブロック内に包含されない場合、画像11のサイズを小さくして血管幅がDCTブロック内に包含されるように調整する。リサイズ処理前の画像サイズとリサイズ処理後の画像サイズとの比率は、プロセッサ1が画像11内の血管等の対象物の幅を検知し、検知結果と画像11のサイズ及びDCTブロックのサイズに基づいて計算してもよい。あるいは、リサイズ処理前の画像サイズとリサイズ処理後の画像サイズとの比率は、ユーザにより、キーボード、タッチパネル等の入力装置及び入力インタフェース3を介してプロセッサ1に入力されてもよい。
【0023】
図2のステップS7において、プロセッサ1は、
図3に示すように、
図2のステップS2~S6の処理を受けた画像11を、それぞれ水平方向(x方向)にM画素、垂直方向(y方向)にN画素のサイズを有する複数のブロック(本明細書において、「DCTブロック」と呼ぶ。)B
ijに分割し、各ブロックに対して離散コサイン変換(Discrete Cosine Transform、DCT)を実行する。ここで、M及びNは、2以上の整数であり、
図3に示した例ではM=N=8である。DCTは、本開示の「直交変換」の一例である。複数のDCTブロックは、本開示の「複数の領域」の一例である。また、i及びjは、0以上の整数であり、B
ijは、画像11において水平方向(x方向)にi番目、垂直方向(y方向)にj番目のDCTブロックを指す。
【0024】
DCTにより、画像11の各ブロックは、様々な周波数成分を有する基底画像の和として表される。
図3の「DCT」の矢印の先のuv座標系には、各DCT係数F(u,v)に対応する64個の基底画像の例が示されている。例えば、ステップS7において、プロセッサ1は、次の式(1)により、各DCTブロックの画像データf(x,y)を、周波数成分を有する画像データ、すなわちDCT係数F(u,v)に変換する。変換基底はcosθである。u=v=0のときにおけるDCT係数F(0,0)を「直流成分」と呼び、u≠0かつv≠0のときにおけるDCT係数F(u,v)を「交流成分」と呼ぶ場合がある。なお式(1)においてCuおよびCvは定数項である。式(1)はあくまで一例であり、定数項の内容その他、具体的なパラメータの値は処理の目的に応じて任意に定めることができる。
【0025】
【0026】
図2のステップS8において、プロセッサ1は、DCT係数強調処理を実行する。例えば、プロセッサ1は、DCTブロックのそれぞれにおけるDCT係数の各周波数成分F(u,v)のうち、特定の条件を満たすものに1を超える倍率を乗じる。倍率を乗じる代わりに、所定値を加算してもよい。DCT係数強調処理S8の詳細な手順については後述する。
【0027】
図2のステップS9において、プロセッサ1は、DCT係数強調処理S8により強調されたDCT係数F(u,v)に対して逆離散コサイン変換(IDCT)を実行する。
【0028】
図2のステップS10において、プロセッサ1は、リサイズ処理S6に対応する逆リサイズ処理を実行する。具体的には、IDCT処理S9の後の画像11は、リサイズ処理S6においてサイズ変更されたサイズを有するところ、逆リサイズ処理S10において、プロセッサ1は、リサイズ処理S6においてサイズ変更された画像を変更前のサイズに復元する。
【0029】
[2-2.DCT係数強調処理]
図4は、
図2のDCT係数強調処理S8の詳細な手順を例示するフローチャートである。
【0030】
図4のステップS81において、プロセッサ1は、各DCTブロックにおいて、DCT係数を絶対値の順に群分けする。
図5は、
図4の群分け処理S81を説明するための模式図である。
図5の右図は、
図5の左図に示した画像11のDCTブロックB
05のDCT係数の大きさの関係を示す模式図である。
図5の右図における数字は、DCT係数の絶対値の大きさの順位を示す。一例を挙げると、
図5の右図の第1行第2列に示したDCT係数F
05(1,0)の絶対値は、DCTブロックB
05のDCT係数の全周波数成分の絶対値の中で9番目に大きい。
【0031】
例えば、群分け処理S81において、プロセッサ1は、第2~4位の大きさを有するDCT係数を第1群に分類し、第5~8位の大きさを有するDCT係数を第2群に分類し、第9~16位の大きさを有するDCT係数を第3群に分類し、第17位以下の大きさを有するDCT係数を第4群に分類する。
図5では、第1群を水平線ハッチングで示し、第2群をドットハッチングで示し、第3群を斜線ハッチングで示している。直流成分と第4群にはハッチングを付していない。また、第4群にも属さない、より小さなDCT係数の順序の記載は省略した。群分け処理S81により、DCTブロックごとに、第1群、第2群、・・・のように群分けが行われる。
【0032】
図4のステップS82において、プロセッサ1は、全DCTブロックの全群の中から、DCT係数の絶対値が最も大きい群を決定する。具体的には、プロセッサ1は、まず全DCTブロックの各々について、第1群に属するDCT係数の絶対値の和rを求める。以下、求められた和rは、各DCTブロックを代表する「代表値」の一例である。その後プロセッサ1は、全DCTブロックについて求めた代表値rのうち、最も大きい最大代表値r
maxを決定する。
【0033】
図6は、
図4のステップS82を説明するための模式図である。
図6の上図は、画像11の各DCTブロックの第1群における代表値rを示している。
図6の上図に示した例では、最大代表値r
max=224である。
【0034】
図4のステップS82において、プロセッサ1は、最大代表値r
maxに基づいて、各DCTブロックにおけるDCT係数を正規化する。正規化の一例として、プロセッサ1は、各DCTブロックにおけるDCT係数を最大代表値r
maxで除算する。
図6の下図は、各DCTブロックの第1群における、DCT係数の絶対値の和の正規化値r
nを示している。
【0035】
図4のステップS83において、プロセッサ1は、各DCTブロックの各群において、
正規化処理S82において算出された正規化値r
nに応じた倍率mを決定する。例えば、プロセッサ1は、
図6の下図に示した正規化値r
nの大きさに応じて、対応するDCTブロックにおける第1群に対する倍率m
1、第2群に対する倍率m
2、第3群に対する倍率m
3、及び第4群に対する倍率m
4を決定する。
【0036】
図7は、上記のような倍率m
1~m
4を正規化値r
nの関数として例示するグラフである。
図7の実線はm
1を、一点鎖線はm
2を、破線はm
3を、点線はm
4を示している。
図7のグラフに示したような正規化値r
nと倍率m
1~m
4との関係は、テーブルとして記憶装置2に予め格納されてもよい。この場合、プロセッサ1は、記憶装置2に格納された正規化値r
nと倍率m
1~m
4との関係を参照して、正規化値r
nの大きさに応じた倍率m
1~m
4を決定する。
【0037】
図4のステップS84において、プロセッサ1は、ステップS83で決定された倍率を対応するDCT係数に乗算する。
【0038】
図7に示した例では、第1群に対する倍率m
1及び第2群に対する倍率m
2は、1以上に設定され、第3群に対する倍率m
3及び第4群に対する倍率m
4は、1以下に設定されている。例えば、m
1>m
2であり、m
3>m
4である。このように、画像処理装置100は、画像11の構成に大きく寄与する第1群のDCT係数に対して最大の倍率m
1を乗算し、第1群ほどではないが画像11の構成に寄与する第2群のDCT係数に対して最大の倍率m
2を乗算する。一方、画像処理装置100は、画像11の構成に対する寄与が比較的小さい第3群、第4群のDCT係数に対しては、画像11の構成に寄与しないノイズとみなすことができるため、1以下の倍率を乗算して減衰させる。また、第1群に対する倍率m
1及び第2群に対する倍率m
2は、正規化値r
nが0より大きく1未満の範囲において最大値を取る。このようにすると、周波数成分が比較的少ないブロックの倍率が最大になる。そのため、深度のそれぞれ異なる位置に存在する対象物をそれぞれ類似した外見に補正することができる。
【0039】
このように、画像処理装置100は、元画像データの構成に対する寄与の程度に応じて倍率を変化させることにより、出力する画像データにおいて、対象物を鮮明化することができる。例えば、生体を撮像した元画像データにおいては体表面の近くにある血管に比べて、深部にある血管が不鮮明である場合であっても、画像処理装置100によれば、出力される画像データにおいて、深部にある血管又は両血管を鮮明化することができる。
【0040】
[3.効果等]
以上のように、画像処理装置100において、プロセッサ1は、画像11を複数のDCTブロックに分割し、複数のDCTブロックのそれぞれに対してDCTを実行する。プロセッサ1は、複数のDCTブロックのそれぞれについて算出された複数のDCT係数を用いて、各DCTブロックを代表する代表値を算出し、算出した少なくとも1つ以上の代表値に基づいて算出した値と、複数のDCT係数とに基づいて画像11の鮮明度を調整する。
【0041】
この構成により、画像処理装置100は、画像11において特定の要素を他の要素に比べて強調することができる。
【0042】
プロセッサ1は、複数DCT係数を、絶対値に基づいて複数の群に分類し、分類された群毎に、算出した少なくとも1つ以上の代表値に基づいて算出した値と、複数のDCT係数とに基づいて画像11の鮮明度を調整してもよい。例えば、プロセッサ1は、分類された群のそれぞれにおける複数のDCT係数の各絶対値に対して、互いに異なる倍率を乗じてもよい。
【0043】
この構成により、群毎に倍率を決定し、各群が画像11の構成に寄与する程度に応じて、DCTブロックの各DCT係数を強調することができる。
【0044】
プロセッサ1は、複数の群のそれぞれにおけるDCT係数の絶対値に基づいて、複数の群のそれぞれにおける倍率を決定してもよい。
【0045】
この構成により、各群が画像11の構成に寄与する程度に応じて、DCTブロックの各DCT係数を強調することができる。
【0046】
プロセッサ1は、代表値の中から所定の代表値を選択し、各領域を代表する代表値を、前記所定の代表値に基づいて正規化し、正規化された代表値に代表されるDCTブロックに含まれるDCTと、当該正規化された代表値に応じた値とに基づいて、前記画像の鮮明度を調整しもよい。
【0047】
この構成により、様々な画像11に対応可能な倍率を設定することができる。
【0048】
具体的には、プロセッサ1は、複数のDCT係数を、絶対値の大きいものから順に複数の群に分類してもよい(ステップS81)。この場合において、プロセッサ1は、複数の群のうち複数のDCT係数の絶対値が最も大きい群におけるDCT係数の絶対値の和を、最大代表値rmaxとして算出し、算出された最大代表値rmaxに基づいて、複数のDCTブロックのそれぞれにおけるDCT係数を正規化する(ステップS82)。プロセッサ1は、正規化されたDCT係数に対して、その絶対値に応じた倍率を乗じる(ステップS83,S84)。
【0049】
画像処理装置100は、画像11に映る対象物を鮮明化する画像鮮明化処理を実行するものであってもよい。このような画像処理装置100において、プロセッサ1は、画像11を複数のDCTブロックに分割する前に、対象物の幅が各DCTブロック内に包含される幅となるように、画像11のサイズ及び複数のDCTブロックのサイズのうちの少なくとも一方を調整する。
【0050】
この構成により、対象物の幅がDCTブロック内に収まるため、DCTブロック内において対象物を鮮明化することができる。
【0051】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0052】
上記実施形態では、DCT係数強調処理S8において、プロセッサ1が、群分け処理S81を実行した後、正規化処理S82を経て倍率mを決定する(ステップS83)例を説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されず、プロセッサ1は、群分け処理S81を実行した後、DCTブロックの代表値rが所定の閾値より大きい場合に、1より大きい倍率を乗算するなどして当該DCT係数の絶対値を増加させてもよい。この構成によれば、画像処理装置100は、画像11において、DCTブロックの複数のDCT係数のうち、絶対値が比較的大きいもののみを強調することができる。
【0053】
上記実施形態では、DCT係数強調処理S8において、プロセッサ1が倍率mを決定する(ステップS83)例を説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されず、プロセッサ1が群分け処理S81を実行した後、
図4のステップS82,S83に代えて、ユーザが手動で倍率mを決定してもよい。ステップS84において、プロセッサ1は、ユーザによって決定された倍率mを対応するDCT係数に乗算する。例えば、ユーザは、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を用いて、倍率mを決定する。ユーザは、倍率mの乗算処理S84及びIDCT処理S9を経た画像11を、ディスプレイ12等を用いて確認しながら、GUIを用いて倍率mを調整してもよい。
【0054】
上記実施形態では、遮蔽物に覆われた対象物を特定波長を有する光を用いて撮像して生成された画像データ11について説明した。しかしながら、画像処理装置100が処理可能な画像データ11は、光学的に撮像されたものに限定されず、超音波画像、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging、MRI)等であってもよい。
【0055】
上記実施形態では、直交変換の一例として、DCTについて説明したが、直交変換はこれに限定されず、例えば、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform、DFT)であってもよい。DFTは、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform、FFT)を含む。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示は、画像処理技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 プロセッサ
2 記憶装置
3 入力インタフェース
4 出力インタフェース
11 画像データ
12 ディスプレイ
13 ネットワーク
21 プログラム
100 画像処理装置