(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178656
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電源システム、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20231211BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20231211BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20231211BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20231211BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20231211BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/249
H01M8/04537
H01M8/04302
H01M8/04225
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091460
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】井口 毅
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
5H730
【Fターム(参考)】
5H126AA21
5H127AB14
5H127AC15
5H127BA02
5H127BB02
5H127DA01
5H127DB63
5H127DB66
5H127DB89
5H127DC42
5H127DC44
5H127DC45
5H127DC46
5H127DC47
5H127DC89
5H127DC90
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB84
5H730BB88
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD31
(57)【要約】
【課題】より効率的かつ確実に車両の自己診断を実行すること。
【解決手段】実施形態の電源システムは、燃料電池および前記燃料電池の出力電圧を変換する電圧変換部を備えた一以上の燃料電池出力部と、負荷に対して前記一以上の燃料電池と並列に接続されると共に、ダイオードおよび回生型直流電源を含む電圧調整部と、前記一以上の燃料電池出力部および前記電圧調整部を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記燃料電池を起動させた後、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となるように前記電圧調整部による抑制制御を実行させ、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となった場合に、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷への電力供給を開始する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池および前記燃料電池の出力電圧を変換する電圧変換部を備えた一以上の燃料電池出力部と、
負荷に対して前記一以上の燃料電池と並列に接続されると共に、ダイオードおよび回生型直流電源を含む電圧調整部と、
前記一以上の燃料電池出力部および前記電圧調整部を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記燃料電池を起動させた後、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となるように前記電圧調整部による抑制制御を実行させ、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となった場合に、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷への電力供給を開始する、
電源システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電源システムの起動中において前記燃料電池から前記電圧調整部を介して接続される補機に電力を常時供給されるように制御する、
請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記負荷に供給する電力と前記補機に供給する電力とを加算した値を、前記燃料電池出力部の数で除算した値に対応する電流を発生させる指令を、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれに出力する、
請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷に電力の供給を開始した後、前記一以上の燃料電池出力部から供給される電力が、前記負荷に供給する電力と前記補機に供給する電力とを加算した値、または前記電圧調整部による抑制制御に必要な廃電電力の値のうち高い方となるように、前記燃料電池出力部から出力される電力を制御する、
請求項2に記載の電源システム。
【請求項5】
燃料電池および前記燃料電池の出力電圧を変換する電圧変換部を備えた一以上の燃料電池出力部と、
負荷に対して前記一以上の燃料電池と並列に接続されると共に、ダイオードおよび回生型直流電源を含む電圧調整部と、を備える電源システムにおいて、
一以上のコンピュータが、
前記燃料電池を起動し、
前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となるように前記電圧調整部による抑制制御を実行し、
前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となった場合に、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷への電力供給を開始する、
制御方法。
【請求項6】
燃料電池および前記燃料電池の出力電圧を変換する電圧変換部を備えた一以上の燃料電池出力部と、
負荷に対して前記一以上の燃料電池と並列に接続されると共に、ダイオードおよび回生型直流電源を含む電圧調整部と、を備える電源システムにおいて、
一以上のコンピュータに、
前記燃料電池を起動させ、
前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となるように前記電圧調整部による抑制制御を実行させ、
前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となった場合に、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷への電力供給を開始させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム、制御方法、およびプログラムに関する。
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池(FC;Fuel Cell)に関する研究開発が行われている。FCV(Fuel Cell Vehicle:燃料電池自動車)システム等では、走行時の過渡電力変動へ対応するために、電池に対して高い出力応答性が求められている。これに関連して、従来では、FC(Fuel Cell)により応答性が高い蓄電池をFCと並列に接続して過渡電力変動に対応する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池に関する技術においては、FCシステムを定置型の補助・調整電源または常用電源等の用途で使用する場合に、FC発電部に高い出力応答性が求められない場合がある。そのため、高い出力応答性が求められない場合には、システム内の蓄電池を無くした構成(蓄電池レス)にして設備コストやサイズの削減を図りたいという要望があった。しかしながら、システム内の電圧(DCバス電圧)は、蓄電池の電圧で決まるため、蓄電池レスの構成になると電圧が不確定となり、適切な電力が供給できない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、蓄電池レスであっても電圧をより適切に安定させることができる電源システム、制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電源システム、制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る電源システムは、燃料電池および前記燃料電池の出力電圧を変換する電圧変換部を備えた一以上の燃料電池出力部と、負荷に対して前記一以上の燃料電池と並列に接続されると共に、ダイオードおよび回生型直流電源を含む電圧調整部と、前記一以上の燃料電池出力部および前記電圧調整部を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記燃料電池を起動させた後、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となるように前記電圧調整部による抑制制御を実行させ、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となった場合に、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷への電力供給を開始する、電源システムである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記制御装置は、前記電源システムの起動中において前記燃料電池から前記電圧調整部を介して接続される補機に電力を常時供給されるように制御するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記制御装置は、前記負荷に供給する電力と前記補機に供給する電力とを加算した値を、前記燃料電池出力部の数で除算した値に対応する電流を発生させる指令を、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれに出力するものである。
【0009】
(4):上記(2)の態様において、前記制御装置は、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷に電力の供給を開始した後、前記一以上の燃料電池出力部から供給される電力が、前記負荷に供給する電力と前記補機に供給する電力とを加算した値、または前記電圧調整部による抑制制御に必要な廃電電力の値のうち高い方となるように、前記燃料電池出力部から出力される電力を制御するものである。
【0010】
(5):本発明の他の態様に係る制御方法は、燃料電池および前記燃料電池の出力電圧を変換する電圧変換部を備えた一以上の燃料電池出力部と、負荷に対して前記一以上の燃料電池と並列に接続されると共に、ダイオードおよび回生型直流電源を含む電圧調整部と、を備える電源システムにおいて、一以上のコンピュータが、前記燃料電池を起動し、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となるように前記電圧調整部による抑制制御を実行し、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となった場合に、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷への電力供給を開始する、制御方法である。
【0011】
(6):本発明の他の態様に係るプログラムは、燃料電池および前記燃料電池の出力電圧を変換する電圧変換部を備えた一以上の燃料電池出力部と、負荷に対して前記一以上の燃料電池と並列に接続されると共に、ダイオードおよび回生型直流電源を含む電圧調整部と、を備える電源システムにおいて、一以上のコンピュータに、前記燃料電池を起動させ、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となるように前記電圧調整部による抑制制御を実行させ、前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となった場合に、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷への電力供給を開始させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)~(6)の態様によれば、蓄電池レスであっても電圧をより適切に安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】蓄電池を備える電源システム100の構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態の蓄電池レスの電源システム100Aの構成の一例を示す図である。
【
図3】電源システム100Aの起動時の制御内容の一例を説明するための図である。
【
図4】実施形態の電源システム100Aにおいて実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の電源システム、制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。なお、以下では、電源システムの一例として、FCS(Fuel Cell Stack)を含む定置型の電源システムを用いて説明する。
【0015】
[蓄電池を備える電源システム]
まず、蓄電池を設けない構成(蓄電池レス)の電源システムを説明する前に、蓄電池を備える電源システムについて説明する。
図1は、蓄電池を備える電源システム100の構成の一例を示す図である。電源システム100は、例えば、一以上のFCS110と、蓄電池120と、BATVCU(Battery Voltage and current Control Unit)130と、電流センサ140と、制御装置150とを備える。
図1では、一以上のFCSの一例として、2つのFCS110-1、110-2が示されている。FCS110-1、110-2はインバータ200の先に接続される負荷(例えば、電力を消費する機器、装置、設備)に対して並列に接続される。それぞれのFCSを特に区別しない場合には、「FCS110」と称して説明する。各FCS110は、「燃料電池出力部」の一例である。また、2つのFCS110は同じ構成のため、具体的な構成を説明する場合には、FCS110-1を用いて説明するものとする。
【0016】
図1の例において、電源システム100は、インバータ200に接続されている。インバータ200へは、負荷電流I
loadとDCバス電圧V
busとが出力される。インバータ200は、電源システム100から出力された直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を負荷に出力する。
【0017】
FCS110-1は、後述する制御装置150の制御により発電制御を行う。FCS110-1は、例えば、FC(Fuel Cell)112-1と、FCVCU(Fuel Cell Voltage and current Control Unit)114-1とを備える。FC112-1は、例えば燃料の一例である水素と酸素とを化学反応させて発電を行う。FCVCU114-1は、「電圧変換部」の一例である。FC112-1の正極側には、抵抗52およびダイオード53が直列に接続される。ダイオード53のカソード側は、端子Aに接続される。ダイオード53のアノード側は、抵抗52に接続される。ダイオード54とリアクトル55とは並列に接続され、それぞれが端子Cと端子Dとに接続する。端子Cは、抵抗52とダイオード53との間に設けられた端子である。端子DはFC112-1の負極側に接続する端子である。コンデンサ56は、端子Eと端子Fに接続される。端子Eは、ダイオード53のカソード側と接続する端子である。端子FはFC112-1の負極側に接続する端子である。FCVCU114-1は、制御装置150からの電流指令を受け付けて、受け付けた電流I1が出力されるようにFCS110を制御する。以下では、FC112-1と112-2を特に区別しない場合には、「FC112」と称し、FCVCU114-1、114-2を特に区別しない場合には、「FCVCU114」と称して説明する。FCVCU114は、燃料電池の出力電圧を変換する「第1の電圧変換部」の一例である。
【0018】
図1の電源システム100では、蓄電池120およびBATVCU130は直列に接続されると共に、FCS110とは並列に接続される。蓄電池120は、例えば、リチウムイオン電池や全固体電池である。蓄電池120は、負荷接続時に電力を供給する。BATVCU130は、負荷に対してFCVCU114と並列に接続される。また、BATVCU130は、制御装置150の制御により、蓄電池120の出力電圧を電圧変換し、DCバス電圧の安定供給やFC-OCV(Open Circuit Voltage)電圧抑制のための電力回生を行う。電流センサ140は、インバータ200へ出力される負荷電流I
loadを検出する。
【0019】
制御装置150は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0020】
また、制御装置150は、電源システム100の構成全体を制御するマネージメントECU(Electronic Control Unit)である。例えば、制御装置150は、電流センサ140で検出された負荷電流Iloadと、DCバス電圧Vbusから負荷電力P(=Iload*Vbus)を求め、各FCS110のそれぞれで均一(所定の許容誤差を含む)の電力を出力させるために、所定の電流I1を出力させる電流指令を行う。例えば、FCS110がN個並列に接続されている場合には、制御装置150Aは、FCS110のそれぞれで、電力Pを並列数Nで除算した値(P/N)を出力させるための電流I1を発生させる電流指令を各FCS110に出力する。
【0021】
ここで、
図1に示すような電源システム100の場合、DCバス電圧V
busは、蓄電池120の電圧で決定される。そのため、電源システムを蓄電池レスの構成にした場合には、DCバス電圧V
busが不確定となり、インバータ200が予め規定した入力電圧の範囲から外れてしまい、安定した電圧での供給ができない場合があった。そこで、実施形態では、蓄電池120およびBATVCU130に代えて、電圧を調整する電圧調整部を備え、FCから電圧調整部を介して、電圧調整部に接続された補機に常に電力(補機電力)を供給することで、DCバス電圧を安定させる。
【0022】
[蓄電池レスの電源システム]
図2は、実施形態の蓄電池レスの電源システム100Aの構成の一例を示す図である。なお、以下では、
図1に示す電源システム100と同様の構成については、同様の名称および符号を付するものとし、ここでの具体的な説明は後述する。
【0023】
図2に示す電源システム100Aは、一以上のFCS110と、電流センサ140と、制御装置150Aと、電圧クランプ回路160とを備える。
図2に示す電源システム100Aは、
図1に示す電源システム100と比較して、蓄電池120およびBATVCU130に代えて電圧クランプ回路160を備え、更に制御装置150に代えて制御装置150Aを備える点で相違する。したがって、以下では、主に電圧クランプ回路160および制御装置150Aを中心として説明する。電圧クランプ回路160は、「電圧調整部」の一例である。
【0024】
電圧クランプ回路160は、FCS110と並列に接続される。電圧クランプ回路160は、例えば、回生型直流電源(双方向電源)162と、ダイオード164とを備える。回生型直流電源162およびダイオード164は直列に接続される。回生型直流電源162は、一方がFCS110の負極側に接続され、他方がダイオード164のカソード側に接続される。ダイオード164は、アノード側がFCS110の正極側に接続され、カソード側が回生型直流電源162に接続される。また、電圧クランプ回路160は、補機に接続される。ここで、補機の正極側端子は、回生型直流電源162と、ダイオード164との間の端子Hに接続され、補機の負極側端子は、FCS110の負極側と接続される。補機とは、例えば、FCS110に空気を供給して温度を調整するエアーポンプ(不図示)や、FCS110ごとのECU(不図示)、制御装置150等の電源システムに関連する機器である。また、補機には、回生型直流電源162と同じ電圧で動作する機器や、回生型直流電源162の電圧をDC/DCコンバータによって調整した電圧で動作する機器が含まれてよい。上記DC/DCコンバータは、例えば電圧クランプ回路160内に含まれる。
【0025】
回生型直流電源162は、直流電源と直流電子負荷の機能を有する。また、回生型直流電源162は、電子負荷動作時には電力を交流電源側に回生する機能も備える。また、回生型直流電源162は、例えば、直流と交流を双方向に変換できるコンバータを備える。具体的には、内部に双方向のDC/DCコンバータと、双方向のAC/DCコンバータの両方を搭載することで、直流・交流の双方に対応することができる。
【0026】
ダイオード164は、順方向(アノード側からカソード側)へ所定の電気を流し、逆方向への電気の流れを遮断する。ダイオード164を介してFC電圧の電力を補機に供給することで、安定した電力を補機に供給することができる。
【0027】
制御装置150Aは、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0028】
制御装置150Aは、電源システム100Aの構成全体を制御するマネージメントECUである。例えば、制御装置150は、電流センサ140で検出された負荷電流Iloadと、DCバス電圧Vbusから負荷電力P(=Iload*Vbus)を求め、各FCS110のそれぞれで均一の電力を出力させるために、所定の電流I1を出力させる電流指令を行う。ここで、電源システム100AにおけるDCバス電圧Vbusは、例えば、ダイオード164の順方向電圧Vfと回生型直流電源電圧Vpsとの加算値(Vbus=Vf+Vps)によって算出できる。例えば、FCS110がN個並列に接続されている場合には、制御装置150Aは、FCS110のそれぞれで、負荷電力Pと補機電力との加算値を並列数Nで除算した値((負荷+補機電力)/N)を出力させるための電流I1を発生させる電流指令を各FCS110に出力する。
【0029】
また、制御装置150Aは、OCV抑制制御を行う。OCV抑制制御とは、例えば、FC112の電圧が高くなりすぎると、FC112の劣化が進んでしまうため、電圧が閾値(OCV抑制電圧)により大きくなった場合に、FC112からの電圧(FC電圧)を出力(消費)させることで閾値より大きくならないようにする制御である。制御装置150Aは、一以上のFCS110のそれぞれから、定期的または所定のタイミングでFC110の電圧を取得し、取得したFC電圧を用いて閾値を用いた判定処理を行う。
【0030】
次に、電源システム100Aにおける起動時の制御内容について、図を用いて説明する。
図3は、電源システム100Aの起動時の制御内容の一例を説明するための図である。
図3の例では、横軸に時刻を示し、縦軸に、FC電圧、DCバス電圧V
bus、および電源システム100Aに関する各電力値(FC出力電力、負荷電力、補機電力、直流電源電力)を示している。FC出力電力は、FCS110から出力される電力である。負荷電力は、負荷に供給される電力である。補機電力は、補機に供給される電力である。直流電源電力は、回生型直流電源162が出力する電力である。各電力値については、制御装置150Aにより管理や調整がなされる。また、
図3において、時刻T0が最も早く、時刻T1、T2、T3、T4の順に遅くなっているものとする。
【0031】
制御装置150Aは、時刻T0において、電源システム100Aを起動させ、FC112による発電を実行させる。これにより、FC電圧が増加すると共に、DCバス電圧Vbusも増加する。FC電圧がOCV抑制電圧閾値まで増加している場合、回生型直流電源162からの電力(直流電源電力)が補機電力として補機側に供給される。
【0032】
ここで、FC電圧がOCV抑制電圧まで到達した時点(時刻T1)で、制御装置150Aは、OCV抑制制御を開始し、FC112の電力を負荷や補機等に供給しないで消費する「廃電」を行う。この場合、制御装置150Aは、例えば、DCバス電圧V
bus(=V
f+V
p)がインバータ200の入力電圧範囲内となり、且つFC出力電力が必要廃電電力となるように電圧クランプ回路160によって調整される。必要廃電電力とは、例えば、OCV抑制制御を行う場合に、最低限必要な電力である。必要廃電電力は、FC112ごとに設定される。必要廃電電力は、「目標値」の一例である。OCV抑制制御を実行している間、FC出力電力の一部は、補機に供給され、残りは回生型直流電源162で吸収(消費)される。
図3の例では、電力を吸収している状態を負の電力値で示している。
【0033】
次に、制御装置150Aは、OCV抑制制御を開始してから所定時間が経過した時刻T2において、FC電圧のOCV抑制制御を完了し、時刻T3において負荷への電力供給を開始する。所定時間経過した後に、負荷への電力供給を開始することで、FC電圧およびDCバス電圧Vbusが共に安定した状態で、電力を供給することができる。
【0034】
時刻T3において、負荷電力の供給が開始されると、負荷電力が増加すると共に直流電源電力が徐々に増加し、初期値(0[W])となる時刻T4以降、補機電力およびFC出力電力を増加させるFC電力制御を開始する。この場合、制御装置150Aは、例えば、目標電力が負荷に供給する電力と補機に供給する電力との加算値、または電圧クランプ回路160によるOCV抑制制御に必要な廃電電力の値のうち高い方となるように、FC出力電力を制御する。これにより、OCV抑制制御が可能な電力を確保しながら、より適切な電力を供給することができる。
【0035】
なお、
図3の例では、時刻T4以降において、FC出力電力および補機電力の増加により、
図2に示すようにFC電圧は消費され、OCV抑制電圧よりも減少している。
【0036】
このように、
図2に示すような蓄電池レスの構成においても、電源システム100Aの起動中においてFCS110側から電圧クランプ回路160を介して補機に電力を常時供給することで、DCバス電圧V
busをより安定させることができ、インバータ200の入力電圧範囲内になるように調整することができる。また、
図2に示すようなシステム構成にすることで、蓄電池等の設備コストを削減することができると共に、システムサイズの削減を実現することができる。
【0037】
[処理フロー]
図4は、実施形態の電源システム100Aにおいて実行される処理の一例を示すフローチャートである。なお、以下の処理では、電源システム100Aにおいて実行される処理のうち、主に制御装置150Aにおける電力供給開始制御を中心として説明する。
図4に示されるフローチャートでは、FCS110がN(N:一以上)個設けられた構成における処理を示すものとする。
【0038】
図4の例において、制御装置150Aは、電源システム100A(特にFC112)を起動させた後、N個のFCS110の全てのFC電圧がOCV抑制電圧より大きいか否かを判定する(ステップS100)。N個のFCS110の全てのFC電圧がOCV抑制電圧より大きいと判定した場合、制御装置150Aは、電圧クランプ回路160にOCV抑制制御を開始させる(ステップS102)。OCV抑制制御における目標電力は、例えば、必要廃電電力である。
【0039】
次に、制御装置150Aは、全てのFCS110でFC電圧がOCV抑制電圧と一致するか否かを判定する(ステップS104)。一致するとは、OCV抑制電圧を超えない所定の許容誤差を含んでもよい。全てのFCS110でFC電圧がOCV抑制電圧と一致すると判定した場合、制御装置150Aは、負荷への電力供給を開始する(ステップS106)。次に、制御装置150Aは、FC電力制御を開始する(ステップS108)。ステップS108の処理での目標電力は、負荷電力と補機電力との加算値、または必要廃電電力のうち高い方である。これにより、本フローチャートの処理は終了する。
【0040】
以上説明した実施形態によれば、FC(燃料電池)112および燃料電池の出力電圧を変換するFCVCU(電圧変換部の一例)114を備えた一以上のFCS(燃料電池出力部の一例)110と、負荷に対して前記一以上の燃料電池と並列に接続されると共に、ダイオード164および回生型直流電源162を含む電圧クランプ回路(電圧調整部の一例)160と、一以上のFCS110および電圧クランプ回路160を制御する制御装置150と、を備え、制御装置150は、FC112を起動させた後、前記一以上のFCS110のそれぞれの電圧が目標値となるように電圧クランプ回路160による抑制制御を実行させ、一以上のFCS110のそれぞれの電圧が目標値となった場合に、一以上のFCSから負荷への電力供給を開始することにより、蓄電池レスであっても電圧をより適切に安定させることができる。
【0041】
具体的には、実施形態によれば、回生型直流電源とダイオードを用いて電圧クランプ回路を構成し、FCから電圧クランプ回路を介して補機電力を常時に供給することで、DCバス電圧を安定させることができる。したがって、実施形態によれば、蓄電池レスによる設備コストの削減やシステムサイズの削減を実現することができる。また、実施形態によれば、補機電力を利用して電圧クランプすることで、効率良くDCバス電圧を安定化させることができ、延いてはエネルギーの効率化に寄与することができる。
【0042】
なお、実施形態における電源システムは、非常用電源として使用してもよく、常用で使用してもよい。また、日中は系統電力を負荷に供給し、夜間は日中に余剰電力等を用いて生産した水素等の燃料を用いて実施形態における電源システムから電力を負荷に供給するといった補助・調整を目的とした使用を行ってもよい。また、実施形態における電源システムは、定置型でなくてもよい。
【0043】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
燃料電池および前記燃料電池の出力電圧を変換する電圧変換部を備えた一以上の燃料電池出力部と、負荷に対して前記一以上の燃料電池と並列に接続されると共に、ダイオードおよび回生型直流電源を含む電圧調整部と、を備える電源システムにおいて、コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
前記燃料電池を起動し、
前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となるように前記電圧調整部による抑制制御を実行し、
前記一以上の燃料電池出力部のそれぞれの電圧が目標値となった場合に、前記一以上の燃料電池出力部から前記負荷への電力供給を開始する、
電源システム。
【0044】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0045】
100、100A…電源システム、110…FCS、140…電流センサ、150、150A…制御装置、160…電圧クランプ回路、162…回生型直流電源、164…ダイオード、200…インバータ