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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178716
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】運転可否判定装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/06 20060101AFI20231211BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20231211BHJP
   B62J 45/41 20200101ALI20231211BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20231211BHJP
   B62J 50/21 20200101ALI20231211BHJP
【FI】
B60K28/06
B62J45/00
B62J45/41
B62J27/00
B62J50/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091558
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康宏
【テーマコード(参考)】
3D037
【Fターム(参考)】
3D037FA04
3D037FB14
(57)【要約】
【課題】運転可否を判定するための特別な操作を要することなく機器の運転可否の判定を行うことができる運転可否判定装置を提供する。
【解決手段】予め定めた始動操作によって運転可能な状態となる自動二輪車の運転の可否を判定する運転可否判定装置10であって、運転者が前記始動操作を行うためのキー装置11と、前記自動二輪車の運転可否の判定を行う判定部12と、を備え、前記キー装置11は、前記運転者が保持する操作キー25と、前記自動二輪車に搭載されて第一の方向で前記操作キー25を挿入可能とするキー穴を有するキーシリンダ21と、を備え、前記判定部12は、前記キーシリンダ21における前記キー穴の周囲が前記第一の方向でキー挿入側に押圧されたか否かに基づいて、前記自動二輪車の運転の可否を判定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた始動操作によって運転可能な状態となる機器(1)の運転の可否を判定する運転可否判定装置(10)であって、
運転者が前記始動操作を行うためのキー装置(11)と、
前記機器(1)の運転可否の判定を行う判定部(12)と、を備え、
前記キー装置(11)は、前記運転者が保持する操作キー(25)と、前記機器(1)に搭載されて第一の方向で前記操作キー(25)を挿入可能とするキー穴(24)を有するキー挿入部(21)と、を備え、
前記判定部(12)は、前記キー挿入部(21)における前記キー穴(24)の周囲が前記第一の方向でキー挿入側に押圧されたか否かに基づいて、前記機器(1)の運転の可否を判定することを特徴とする運転可否判定装置。
【請求項2】
前記キー挿入部(21)における前記第一の方向でキー抜取側の端部に、前記キー挿入部(21)の端部を覆うカバー部材(31)と、前記カバー部材(31)に前記第一の方向でキー挿入側に向けて加えられた圧力を検知する圧力センサ(35)と、を備え、
前記カバー部材(31)は、前記キー穴(24)の入口となるキー穴開口(34)を形成し、
前記判定部(12)は、前記カバー部材(31)が前記第一の方向でキー挿入側に押圧されたか否かに基づいて、前記機器(1)の運転の可否を判定することを特徴とする請求項1に記載の運転可否判定装置。
【請求項3】
前記判定部(12)は、前記圧力センサ(35)が予め定めた閾値よりも大きな圧力を検知した場合に、前記機器(1)の運転が不可であると判定することを特徴とする請求項2に記載の運転可否判定装置。
【請求項4】
前記判定部(12)は、前記圧力センサ(35)が前記閾値よりも大きな圧力を、予め定めた回数より多く検知した場合に、前記機器(1)の運転が不可であると判定することを特徴とする請求項3に記載の運転可否判定装置。
【請求項5】
前記カバー部材(31)は、前記第一の方向でキー抜取側に凸の凸形状(31a)を有し、前記キー穴開口(34)の少なくとも一部は、前記凸形状(31a)の頂部に位置していることを特徴とする請求項2から4の何れか一項に記載の運転可否判定装置。
【請求項6】
前記判定部(12)による運転可否判定の結果に基づいて前記機器(1)の駆動システムの作動を制御する制御部(13)を備え、
前記制御部(13)は、前記判定部(12)が前記機器(1)の運転が不可であると判定した場合に、駆動制限制御として、前記機器(1)の駆動装置の始動を制限するか、前記駆動システムの駆動待機状態への移行を制限することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の運転可否判定装置。
【請求項7】
前記駆動制限制御が実行されていることを表示する制限表示部(15a)を備えていることを特徴とする請求項6に記載の運転可否判定装置。
【請求項8】
前記機器(1)が備える運転情報表示装置(15)に、前記制限表示部(15a)が備えられていることを特徴とする請求項7に記載の運転可否判定装置。
【請求項9】
前記判定部(12)は、前記機器(1)の運転が不可であると判定した後、予め定めた適性回復時間(Ta)の経過後に前記判定をリセットすることを特徴とする請求項6に記載の運転可否判定装置。
【請求項10】
前記判定部(12)は、前記機器(1)の駆動システムの運転状態から前記駆動システムを停止させた後、予め定めた判定保持時間(Tb)の間は運転可能判定を維持することを特徴とする請求項6に記載の運転可否判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転可否判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行前に運転者が運転に適した状態にあるか否か(運転が可能か否か)を判定する運転可否判定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この技術では、車両の走行前に運転者が行う検査として、クラッチペダルを踏みながら指示計の指針を動かし、装置側が指定した課題にペダル操作を追従させることができるか否かで、運転者が運転に適した状態にあるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭59-30573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、運転可否判定に特別な検査が必要となり、心身異常のない運転者にとっては追加の手間が掛かって煩わしいという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、運転可否を判定するための特別な操作を要することなく機器の運転可否の判定を行うことができる運転可否判定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、予め定めた始動操作によって運転可能な状態となる機器(1)の運転の可否を判定する運転可否判定装置(10)であって、運転者が前記始動操作を行うためのキー装置(11)と、前記機器(1)の運転可否の判定を行う判定部(12)と、を備え、前記キー装置(11)は、前記運転者が保持する操作キー(25)と、前記機器(1)に搭載されて第一の方向で前記操作キー(25)を挿入可能とするキー穴(24)を有するキー挿入部(21)と、を備え、前記判定部(12)は、前記キー挿入部(21)における前記キー穴(24)の周囲が前記第一の方向でキー挿入側に押圧されたか否かに基づいて、前記機器(1)の運転の可否を判定することを特徴とする。
この構成によれば、機器の運転時(始動操作時)に、運転者が操作キーをキー挿入部に挿入する際、操作キーがキー挿入部のキー穴に的確に挿入された場合は、機器の運転を可能(許可)とし、操作キーがキー挿入部のキー穴の周囲に繰り返し突き当たる等の動作がなされた場合は、機器の運転を不能(不許可)とする、といった制御を行うことが可能となる。すなわち、機器の運転に必要な始動操作時(キー操作時)における操作キーの挿入の仕方によって、運転可否の判定を行うことが可能となる。このため、運転可否を判定するための追加の操作が不要となり、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記キー挿入部(21)における前記第一の方向でキー抜取側の端部に、前記キー挿入部(21)の端部を覆うカバー部材(31)と、前記カバー部材(31)に前記第一の方向でキー挿入側に向けて加えられた圧力を検知する圧力センサ(35)と、を備え、前記カバー部材(31)は、前記キー穴(24)の入口となるキー穴開口(34)を形成し、前記判定部(12)は、前記カバー部材(31)が前記第一の方向でキー挿入側に押圧されたか否かに基づいて、前記機器(1)の運転の可否を判定することを特徴とする。
この構成によれば、操作キーがキー穴開口の周囲に繰り返し突き当たる(カバー部材が繰り返し押圧される)等の動作がなされた場合には、機器の運転を不能(不許可)とする、といった制御が可能となる。このため、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様において、前記判定部(12)は、前記圧力センサ(35)が予め定めた閾値よりも大きな圧力を検知した場合に、前記機器(1)の運転が不可であると判定することを特徴とする。
この構成によれば、操作キーがキー穴開口の周囲(カバー部材)に突き当たり、圧力センサが所定以上の圧力を検知した場合には、機器の運転を不能(不許可)とするといった制御が可能となる。このため、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第三の態様において、前記判定部(12)は、前記圧力センサ(35)が前記閾値よりも大きな圧力を、予め定めた回数より多く検知した場合に、前記機器(1)の運転が不可であると判定することを特徴とする。
この構成によれば、操作キーがキー穴開口の周囲(カバー部材)を規定回数を越えて押圧した場合には、機器の運転を不能(不許可)とするといった制御が可能となる。すなわち、運転者が操作キーの挿入に苦戦してカバー部材を何度も押圧した場合に限り、機器の運転を制限することが可能となる。一方、運転者がカバー部材を偶然押圧してしまったような場合には、機器の運転制限を回避することが可能となる。このように、運転可否の誤判定を防いで運転可否判定の精度を高め、運転可否判定装置の実用性を高めることができる。
【0010】
本発明の第五の態様は、上記第二から第四の態様の何れか一つにおいて、前記カバー部材(31)は、前記第一の方向でキー抜取側に凸の凸形状(31a)を有し、前記キー穴開口(34)の少なくとも一部は、前記凸形状(31a)の頂部に位置していることを特徴とする。
この構成によれば、カバー部材がキー抜取側に凸の凸形状を有し、キー穴開口の少なくとも一部が凸形状の頂部に位置することで、操作キーをキー穴に挿入しようとした際、キー穴開口の周囲に操作キーが突き当たると、操作キーがキー穴よりも外側に滑り落ちるように案内される。このため、操作キーのキー穴への挿入の難易度が高まり、運転者は操作キーをキー穴開口に的確に差し込む必要がある。これにより、運転者が機器の運転に適さない状態にあることを検知しやすくし、運転可否判定の精度をより一層高めることができる。
【0011】
本発明の第六の態様は、上記第一から第五の態様の何れか一つにおいて、前記判定部(12)による運転可否判定の結果に基づいて前記機器(1)の駆動システムの作動を制御する制御部(13)を備え、前記制御部(13)は、前記判定部(12)が前記機器(1)の運転が不可であると判定した場合に、駆動制限制御として、前記機器(1)の駆動装置の始動を制限するか、前記駆動システムの駆動待機状態への移行を制限することを特徴とする。
この構成によれば、機器の運転不可判定に基づいて機器の駆動システムを制御する制御部が、機器の駆動装置の始動を制限するか、あるいは機器の駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行を制限することで、機器の運転を確実に制限することができ、運転可否判定装置の実用性を高めることができる。
【0012】
本発明の第七の態様は、上記第六の態様において、前記駆動制限制御が実行されていることを表示する制限表示部(15a)を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、機器の駆動制限制御が実行されていることを示す制限表示部を備えることで、機器が駆動制限状態にあることを運転者に知らしめることができる。このため、運転者が機器の故障ではなく駆動制限状態にあることを容易に理解することができ、運転可否判定装置の実用性を高めることができる。
【0013】
本発明の第八の態様は、上記第七の態様において、前記機器(1)が備える運転情報表示装置(15)に、前記制限表示部(15a)が備えられていることを特徴とする。
この構成によれば、機器の運転情報を表示するメータ装置等に、駆動制限制御が実行されていることを示す制限表示部を備えることで、運転者が駆動制限制御がなされていることに気付きやすく、運転可否判定装置の実用性を高めることができる。
【0014】
本発明の第九の態様は、上記第六から第八の態様の何れか一つにおいて、前記判定部(12)は、前記機器(1)の運転が不可であると判定した後、予め定めた適性回復時間(Ta)の経過後に前記判定をリセットすることを特徴とする。
この構成によれば、機器の運転不可判定後、規定時間の経過後に前記判定が自動的にリセットされることで、追加のリセット操作を設定することなく機器の運転を再開することができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【0015】
本発明の第十の態様は、上記第六から第九の態様の何れか一つにおいて、前記判定部(12)は、前記機器(1)の駆動システムの運転状態から前記駆動システムを停止させた後、予め定めた判定保持時間(Tb)の間は運転可能判定を維持することを特徴とする。
この構成によれば、機器を運転している状態から駆動システムを停止させた後、規定時間の間は運転可能判定を維持することで、機器の短時間の停止後に運転を再開するような場合には、運転可否判定を改めて行うことを不要として駆動装置の始動等を行うことができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、運転可否を判定するための特別な操作を要することなく機器の運転可否の判定を行うことができる運転可否判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態における自動二輪車のメインスイッチユニット周辺の後面図である。
図2】前記メインスイッチユニットの操作キー、キーシリンダ、カバー部材および圧力センサの配置を示す断面図である。
図3】前記カバー部材をキー挿脱方向から見た正面図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】上記自動二輪車の運転可否判定装置の構成を示すブロック図である。
図6】上記運転可否判定装置の制御装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、車体左右中心を示す線CLが示されている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態における運転可否判定装置10(図5参照)は、例えばスクータ型の自動二輪車(鞍乗り型車両)1に適用されている。図1は、自動二輪車1の乗車位置側(後方側)から見たレッグシールド2周辺を示している。レッグシールド2は、運転者が着座するシート(不図示)の前方に位置し、シートに着座した運転者の脚部への走行風を抑える。
【0020】
自動二輪車1は、操向輪である前輪と、駆動輪である後輪と、を備えている(何れも不図示)。前輪は、フロントフォーク等の懸架部品に支持され、バーハンドル3によって操向可能である。前輪を含むステアリング系部品は、車体フレーム4の前端部に操向可能に支持されている。車体フレーム4の周囲は、レッグシールド2を含む車体カバー5によって覆われている。自動二輪車1は、走行用の駆動源として、エンジン(内燃機関)および電気モータの少なくとも一つを備えている。
【0021】
レッグシールド2の後面側(運転者側)には、自動二輪車1の電源をオンオフするためのメインスイッチを含むメインスイッチユニット20が配置されている。メインスイッチユニット20は、例えばレッグシールド2の右側部に配置され、レッグシールド2後面側の取り付け座面に嵌め込まれた状態で、レッグシールド2内側の車体フレーム4等に固定されている。
【0022】
図2を併せて参照し、メインスイッチユニット20は、操作キー25が差し込まれるキーシリンダ21を備えている。キーシリンダ21は、車体側に固定される円筒状の外筒22と、操作キー25が差し込まれるキー穴24を有する内筒23と、を備えている。内筒23は、外筒22内に同軸に挿入され、外筒22に対して軸回りに回転可能である。キーシリンダ21は、運転者の操作によって、内筒23のキー穴24に操作キー25のメインキー25aを挿入した状態で、操作キー25および内筒23を外筒22に対して一体的に回転可能である。この回転操作は、実施形態における「予め定めた始動操作」に相当する。内筒23に対する回転操作によって、自動二輪車1の主電源のオンオフがなされるとともに、ハンドルロック等の各種ロック装置の施解錠がなされる。
【0023】
外筒22および内筒23の中心軸線C1は、キーシリンダ21の中心軸線(シリンダ軸線)であり、このシリンダ軸線C1を中心に、外筒22に対して内筒23が回転可能である。以下、シリンダ軸線C1に沿う方向をシリンダ軸方向(又は単に軸方向)という。
【0024】
内筒23のキー穴24は、操作キー25を軸方向に沿って挿脱可能とする。キー穴24内に操作キー25が挿入されると、操作キー25に形成された凹凸に応じて、外筒22および内筒23の間に配された係止部材が変位し、外筒22に対して内筒23を回転可能となる。以下、キーシリンダ21における軸方向前方側(操作キー25が差し込まれる側)をキー挿入側、キーシリンダ21における軸方向後方側(操作キー25が抜き取られる側)をキー抜取側、という。
【0025】
操作キー25は、運転者がキーシリンダ21から抜き取って保持(携帯)可能である。メインスイッチユニット20におけるレッグシールド2の後方側(キーシリンダ21の軸方向一端側)の端部には、キーシャッター26が備えられている。キーシャッターは、キーシリンダ21の軸方向一端側(キー穴24を含む)を後方側に露出可能な露出孔を有し、この露出孔を不図示のシャッター板で開閉可能である。
【0026】
自動二輪車1の主電源をオンにした状態で、後述する運転可否判定装置10の判定結果が「運転可」の場合には、以下の走行準備動作が可能である。すなわち、駆動源にエンジンを備える車両の場合、不図示のスタートスイッチを操作することで、エンジンを始動させることが可能である。また、駆動源に電気モータを備える車両の場合、不図示のスタートスイッチを操作することで、電気モータを含む駆動システムを駆動待機状態(駆動準備完了状態、アクセル操作によって直ちに走り出せる状態)に移行させることが可能である。
【0027】
図2図4を参照し、キーシリンダ21の軸方向一端側には、内筒23の軸方向一端側(後端側、キー抜取側)を後方側から覆うカバー部材(露出部)31が配置されている。カバー部材31は、軸方向で貫通する貫通孔32を有している。貫通孔32は、内筒23のキー穴24の後方に連なるように形成されている。貫通孔32におけるカバー部材31の後面33上の開口は、キー穴24の入口となるキー穴開口34を構成している。カバー部材31は、レッグシールド2の後面側(乗車位置側)で車体外側に露出している。カバー部材31は、キーシリンダ21の軸方向一端側でキー抜取側に露出する露出部として構成されている。
【0028】
図2を参照し、キーシャッター26は、キーシリンダ21の外筒22に固定されるハウジング27と、ハウジング27の内側で開閉作動するシャッター板(不図示)と、シャッター板を閉作動させる閉操作部28と、操作キー25のサブキー25bが差し込まれるキー凹部を有してシャッター板を開作動させる開操作部としてのロータ29と、を備えている。
【0029】
ハウジング27は、軸方向の厚さを抑えた偏平状をなしている。ハウジング27内には、シャッター板を含む機構部品が収容されている。
ロータ29は、シリンダ軸線C1と平行な中心軸線(ロータ軸線)を有し、このロータ軸線を中心にハウジング27に対してロータ29が回転可能である。ロータ29は、ハウジング27の後面側(レッグシールド2の後面側、乗車位置側)に露出している。
【0030】
キーシャッター26は、キーシリンダ21と同様、ロータ29の軸方向一端側(後端側、キー抜取側)を後方から覆うロータカバー部材(露出部)を備えてもよい。ロータカバー部材は、ロータ29の後面側に形成されるロータ凹部の後方に連なってロータ凹部の入口を構成するロータ凹部開口を構成する。ロータカバー部材は、レッグシールド2の後面側(乗車位置側)で車体外側に露出する。ロータカバー部材は、ロータ29の軸方向一端側でキー抜取側に露出する露出部を構成する。
【0031】
サブキー25bおよびロータ29は、マグネットキーを構成している。サブキー25bをロータ29のロータ凹部に軸方向に沿って差し込むことで、ロータ29内部に配された係止部材が変位し、ハウジング27に対してロータ29を回転可能とする。操作キー25とともにロータ29を回転させることで(予め定めた始動操作)、シャッター板が開作動してシリンダ露出孔が開き、キーシリンダ21のキー穴24に操作キー25を挿入可能となる。
キーシリンダ21と操作キー25(メインキー25a)との組み合わせ、ならびにキーシャッター26と操作キー25(サブキー25b)との組み合わせは、それぞれ運転者が自動二輪車1における規定の始動操作を行うためのキー装置11を構成している。
【0032】
操作キー25(メインキー25a)は、板状のキー本体の側縁に凹凸を形成した形態に限らず、キー本体の表裏面に広く凹部を形成したディンプルキーまたはウェーブキー等でもよい。また、車体側のカードスロットに差し込む磁気カードまたはICカードを含むカードキーでもよい。すなわち、運転者が保持する操作キー25と、車体側に搭載されて規定の方向(第一の方向)で操作キー25を挿入可能とするキー穴24を有するキー挿入部と、を備えてキー装置11を構成するものであればよい。
【0033】
自動二輪車1において、運転者による予め定めた始動操作の一つとして、メインスイッチユニット20のキーシリンダ21に操作キー25を差し込む操作がある。このとき、自動二輪車1が備える運転可否判定装置10において、運転者による自動二輪車1の運転の可否が判定され、必要に応じて自動二輪車1の駆動システムの運転を制限する制御がなされる。
図5に示すように、運転可否判定装置10は、運転者が始動操作を行うためのキー装置11と、自動二輪車1の運転可否を判定する判定部12と、判定部12による運転可否判定の結果に基づいて自動二輪車1の駆動システムの作動を制御する制御部13と、を備えている。
【0034】
図2を併せて参照し、キー装置11は、運転者が保持する操作キー25と、車体側に搭載されて規定の方向(第一の方向)で操作キー25を挿入可能とするキーシリンダ21と、を備えている。キー装置11は、例えばキーシリンダ21と操作キー25(メインキー25a)との組み合わせで構成される他、キーシャッター26と操作キー25(サブキー25b)との組み合わせで構成されてもよい。
【0035】
判定部12および制御部13は、例えば自動二輪車1が備える電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)において構成されている。判定部12および制御部13は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。判定部12および制御部13は、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0036】
判定部12は、以下の条件に基づき、自動二輪車1の運転の可否を判定する。判定部12の判定条件は、キーシリンダ21の軸方向一端側に配置されて運転者側に露出するカバー部材(露出部)31が、キー挿脱方向(前記第一の方向)でキー挿入側に繰り返し押圧されたか否かである。カバー部材31とキーシリンダ21の内筒23との間には、圧力センサ35が配置されている。圧力センサ35は、カバー部材31が所定以上の力でキー挿入側に押圧されたときの圧力を検知し、この検知情報を判定部12に出力する。
【0037】
カバー部材31は、キーシリンダ21の内筒23の軸方向一端部に圧力センサ35を介して支持されている。操作キー25がキーシリンダ21内に突き当たるまで差し込まれた場合、キーシリンダ21にはキー挿入方向の力が入力されるが、この力はカバー部材31には入力されない。したがって、操作キー25がキーシリンダ21に正しく挿入された場合、圧力センサ35が圧力を検知することはない。
【0038】
判定部12は、圧力センサ35が予め定めた閾値よりも大きな圧力を複数回検知した場合に、当該操作を行った運転者による自動二輪車1の運転は不可であると判定する。この判定に伴い、制御部13がエンジンECUと連係してエンジンの始動を制限し、自動二輪車1の運転を確実に制限する。実施形態では、スタータモータ18を駆動するスタータリレー17に対し、制御装置14が電力供給を停止させることで、エンジンの始動を制限する。エンジンECUは、制御装置14と一体でも別体でもよい。
【0039】
実施形態では、圧力センサ35が閾値よりも大きな圧力を予め定めた回数よりも多く検知した場合に、判定部12において自動二輪車1の運転が不可であると判定する。これにより、カバー部材31が誤って押圧された場合等における誤判定を抑えて、運転不可判定を精度よく行うことができる。
【0040】
すなわち、利用者(運転者)が飲酒、過労、病気等により運転適性を低下させた状態では、利用者が操作キー25をキー穴24に差し込む操作に苦慮することが想定される。この場合、操作キー25がキー穴開口34の周囲に繰り返し突き当てられ、カバー部材31が複数回押圧されることとなる。したがって、エンジン始動前(メインスイッチユニット20のオン操作前)にカバー部材31が複数回押圧されたことを検知した場合、利用者(運転者)が運転適性を低下させた状態にあるものとして運転不可と判定し、エンジン始動を不能とする。
【0041】
図4を参照し、カバー部材31の後面33側(露出側)は、キー挿脱方向で後方側(キー抜取側)に凸の凸形状31aを有している。カバー部材31の後面33(露出面)は、例えば半球状に形成されている。キー穴開口34は、後面33の後方側への凸形状31aの頂点31bを切り欠くように配置されている。キー穴開口34は、カバー部材31の凸形状31aの頂部に位置している。
【0042】
図3を併せて参照し、カバー部材31の後面33は、キー挿脱方向から見て、キー穴開口34の周縁から外周側に延びている。カバー部材31の後面33は、キー穴開口34の周縁よりも外周側に位置するほどキー挿入側に位置するように傾斜している。この後面33の傾斜を、「外向きに傾斜」あるいは「外向き傾斜」ということがある。カバー部材31の後面33は、接線が外向きに傾斜した曲面(球面)である。
【0043】
カバー部材31の後面33の傾斜により、操作キー25をキー穴24に挿入しようとした際、キー穴開口34の周囲(後面33)に操作キー25が突き当たると、操作キー25がキー穴開口34よりも外周側に案内される(滑り落ちる)。このため、操作キー25をより正確にキー穴開口34に差し込む必要があり、その結果、メインスイッチユニット20のオン操作の難易度が高まる。
【0044】
カバー部材31の後面33側(露出側)には、操作キー25をキー穴24に案内するようなテーパ形状および凹形状を有していない。すなわち、カバー部材31の後面33側には、内周側(キー穴開口34側、頂点31b側)に位置するほどキー挿入側に位置するように傾斜した形状および面を有していない。前述の傾斜を、「内向きに傾斜」あるいは「内向き傾斜」ということがある。
【0045】
カバー部材31の後面33側(露出側)に内向き傾斜の形状および面が形成されていると、操作キー25がキー穴24に案内されやすくなる。一方、操作キー25がキー穴24に案内されやすくなると、操作キー25がカバー部材31を押圧し難くなる。すなわち、カバー部材31が操作キーの挿入を案内する形状および面を有していると、運転適性が低下した利用者であっても操作キーをキー穴24に挿入しやすくなる。その結果、カバー部材31の押圧を検知することによる運転不可判定の精度に影響を与えてしまう。
【0046】
実施形態では、カバー部材31の後面33側(露出側)は、外向き傾斜の後面33を形成する凸形状31aを有している。カバー部材31の後面33は、キー穴開口34の周縁に隣接して、キー穴開口34の周縁よりも外周側に位置するほどキー挿入側に位置するように傾斜している。これにより、操作キーがカバー部材31の後面33に突き当たると、操作キーがカバー部材31の外周側に案内され、操作キーをキー穴24に挿入し難くなる。すなわち、カバー部材31の凸形状31aによりキー挿入の難易度が高められるため、運転適性が低下した利用者は、操作キーをキー穴24の周囲(カバー部材31の後面33)に突き当てやすくなる。この突き当てによる圧力を繰り返し検知することで、利用者(運転者)が運転に適した状態にあるか否かの判定を精度よく行うことができる。
【0047】
図3を参照し、キー穴開口34は、例えばメインキー25aにおけるキー挿脱方向(シリンダ軸線C1に沿う方向)と直交する断面形状25a1に対して、相似となる形状である。キー穴開口34は、メインキー25aの前記断面形状25a1に対して、キー挿脱に要する隙間を加えた程度に大きい形状である。キー挿脱方向から見て、キー穴開口34よりも外周側には、バリ取り程度の面取りを除き、実質的に内向き傾斜の形状および面はなく、外向き傾斜の形状および面がキー穴開口34に隣接している。キー穴開口34よりも外周側には、キー挿脱方向と直交する平面であれば部分的に存在してもよい。
【0048】
カバー部材31の凸形状31aは、半球状に限らず、円錐状、角錐状、さらには平面および曲面を組み合わせた形状、あるいは段差状(階段状)に形成されてもよい。カバー部材31の凸形状31aは、キー穴開口34よりも外周側に位置するほどキー挿入側に位置するように、全体的に見て外向きに傾斜していればよい。
【0049】
次に、図5を参照し、実施形態における自動二輪車1の運転可否判定装置10の主な構成について説明する。
運転可否判定装置10は、メインスイッチユニット20と、制御装置14と、メータ装置15と、バッテリ16と、スタータリレー17と、スタータモータ18と、を備えている。
【0050】
メインスイッチユニット20のキーシリンダ21は、操作キー25(メインキー25a)とともにキー装置11を構成している。キーシリンダ21および圧力センサ35は、制御装置14に接続されている。
制御装置14は、判定部12および制御部13を構成する電子制御ユニットである。制御装置14には、メインスイッチユニット20の他、メータ装置15、前記スタートスイッチおよびバッテリ16等が接続されている。
【0051】
メータ装置15は、車速を示す速度計およびエンジン回転数を示す回転計ならびに各種インジケータ等を備えている。メータ装置15は、自動二輪車1の各種運転状態を運転者に表示する。メータ装置15は、運転可否判定の結果に基づきエンジン始動制限が実行されていることを運転者に表示する制限表示部15aを備えている。制限表示部15aは、例えば始動制限時に点灯または点滅するランプでもよく、あるいは液晶パネル等を利用した表示装置であってもよい。制限表示部15aは、メータ装置15とは独立して設けられてもよい。
【0052】
バッテリ16は、例えば自動二輪車1の補機用電源として車載された12Vバッテリである。
スタータリレー17は、スタートスイッチの操作により制御装置14から供給された一次電流に応じてオンオフするスイッチであり、バッテリ16とスタータモータ18との間の電力供給の有無を切り替える。
スタータモータ18は、バッテリ16から供給された電力によって駆動し、エンジンをクランキングさせてエンジン始動を可能とする。
【0053】
運転者がエンジン始動操作を行うために操作キー25をキーシリンダ21に挿入する際、操作キー25がカバー部材31に複数回突き当てられると(カバー部材31がキー挿入側に複数回押圧されると)、以下の作用がある。すなわち、制御装置14の判定部12において、当該操作を行った運転者が運転不可状態にあるものと判定する。その後、制御装置14の制御部13は、エンジンECUと連係してエンジンの始動を制限する制御(駆動制限制御)を行う。駆動制限制御がなされると、自動二輪車1の電源オン状態でスタートスイッチが操作されても、スタータリレー17に一次電流が供給されない(スタータリレー17がオン作動しない)。その結果、スタータモータ18が駆動せず、エンジンが始動させず、自動二輪車1の運転が制限(規制)される。
【0054】
このとき、メータ装置15の制限表示部15aは、運転可否判定の結果(運転不可判定)に基づきエンジンを始動させることができない旨を表示する。
運転が不可であるとの判定(運転者が運転適性を低下させた状態にあるとの判定)は、例えば飲酒による酩酊状態から回復する程度の時間(予め定めた適性回復時間Ta、例えば24時間)が経過した後にリセットされる。なお、所定時間の経過を待つ以外にも、特定のリセット操作等に応じて、運転が不可であるとの判定をリセット可能としてもよい。
【0055】
運転可否判定は、エンジンを停止してキーシリンダ21から操作キー25を抜き取る度に行われると、特に正常な運転者は煩わしさを感じることがある。この煩わしさを低減するために、実施形態では、運転が可能であるとの判定(運転者が運転適性を有する状態にあるとの判定)がなされてエンジンを始動させた状態から、キーシリンダ21の回転によりイグニッションオフとしてエンジンを停止し、操作キー25をキーシリンダ21から抜き取った後、例えば軽食、飲み物等を買いに行く程度の時間(予め定めた判定保持時間Tb、例えば15分程度)の間は、運転可否判定を不要としてエンジン始動を可能とする構成としている。
【0056】
制御装置14は、メインスイッチのオフ状態でも運転可否判定を可能とするために、メインスイッチのオフ状態でも待機電力が供給された待機状態とされる。
例えば、自動二輪車1が以下の防犯装置を備える場合、操作キー25の認証に伴い制御装置14に電力が供給されて待機状態となる構成としてもよい。前記防犯装置は、予め設定された認証エリア内で車両と操作キー25(リモートキー)との間の通信を行うことによって、操作キー25の認証を行うものである。また、例えば自動二輪車1が位置情報を検知又は取得可能であれば、場所および時間帯等の条件に応じて、制御装置14に電力が供給されて待機状態となる構成としてもよい。これらの構成により、運転可否判定を可能とするための電力消費を抑えることができる。
【0057】
次に、制御装置14で行われる運転可否判定に係る処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。以下の処理は、制御装置14が待機状態にある場合に所定の制御周期で繰り返し実行される。図6のフローチャートでは、運転者の「運転適性低下状態」の一例として「飲酒状態」と記載している。
【0058】
まず、イグニッションオフ後で適性回復時間Ta、判定保持時間Tbが経過した等の条件が揃うと、制御装置14は、待機電力が供給された待機状態(キーシリンダ21の圧力検知スタンバイ状態)となる(ステップS1)。その後、圧力センサ35による予め定めた圧力検知がなされたか否かの判定が開始される(ステップS2)。予め定めた圧力検知とは、圧力センサ35が予め定めた閾値以上の圧力を予め定めた回数以上検知することである。
【0059】
ステップS2でYES(規定の圧力検知有り)の場合、判定部12において飲酒状態であると判定され(ステップS3)、制御部13においてエンジン始動不可な状態(エンジン始動が制限された状態)への移行がなされる(ステップS4)。
ステップS2でNO(所定の圧力検知無し)の場合、判定部12において飲酒状態ではないと判定され(ステップS5)、制御部13においてエンジン始動可能な状態への移行がなされる(ステップS6)。
【0060】
実施形態では、自動二輪車1がエンジン(内燃機関)を走行用の駆動源とする場合の例について説明したが、以下の例も考えられる。すなわち、自動二輪車1が走行用の駆動源に電気モータを含む電動車両である場合、判定部12において運転不可と判定されると、制御部13において駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行が制限され、判定部12において運転可能と判定された場合に、制御部13において駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行が実行されてもよい。
【0061】
以上説明したように、上記実施形態における運転可否判定装置10は、予め定めた始動操作によって運転可能な状態となる自動二輪車1の運転の可否を判定する運転可否判定装置10であって、運転者が前記始動操作を行うためのキー装置11と、前記自動二輪車1の運転可否の判定を行う判定部12と、を備え、前記キー装置11は、前記運転者が保持する操作キー25と、前記自動二輪車1に搭載されて第一の方向で前記操作キー25を挿入可能とするキー穴24を有するキーシリンダ21と、を備え、前記判定部12は、前記キーシリンダ21における前記キー穴24の周囲が前記第一の方向でキー挿入側に押圧されたか否かに基づいて、前記自動二輪車1の運転の可否を判定する。
この構成によれば、自動二輪車1の運転時(始動操作時)に、運転者が操作キー25をキーシリンダ21に挿入する際、操作キー25がキーシリンダ21のキー穴24に的確に(スムーズに)挿入された場合は、自動二輪車1の運転を可能(許可)とし、操作キー25がキーシリンダ21のキー穴24の周囲に繰り返し突き当たる等の動作がなされた場合は、自動二輪車1の運転を不能(不許可)とする、といった制御を行うことが可能となる。すなわち、自動二輪車1の運転に必要な始動操作時(キー操作時)における操作キー25の挿入の仕方によって、運転可否の判定を行うことが可能となる。このため、運転可否を判定するための追加の操作が不要となり、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0062】
上記運転可否判定装置10において、前記キーシリンダ21における前記第一の方向でキー抜取側の端部に、前記キーシリンダ21の端部を覆うカバー部材31と、前記カバー部材31に前記第一の方向でキー挿入側に向けて加えられた圧力を検知する圧力センサ35と、を備え、前記カバー部材31は、前記キー穴24の入口となるキー穴開口34を形成し、前記判定部12は、前記カバー部材31が前記第一の方向でキー挿入側に押圧されたか否かに基づいて、前記自動二輪車1の運転の可否を判定する。
この構成によれば、操作キー25がキー穴開口34の周囲に繰り返し突き当たる(カバー部材31が繰り返し押圧される)等の動作がなされた場合には、自動二輪車1の運転を不能(不許可)とする、といった制御が可能となる。このため、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0063】
上記運転可否判定装置10において、前記判定部12は、前記圧力センサ35が予め定めた閾値よりも大きな圧力を検知した場合に、前記自動二輪車1の運転が不可であると判定する。
この構成によれば、操作キー25がキー穴開口34の周囲(カバー部材31)に突き当たり、圧力センサ35が所定以上の圧力を検知した場合には、自動二輪車1の運転を不能(不許可)とするといった制御が可能となる。このため、運転可否を判定するための追加の操作が不要となり、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0064】
上記運転可否判定装置10において、前記判定部12は、前記圧力センサ35が前記閾値よりも大きな圧力を、予め定めた回数より多く検知した場合に、前記自動二輪車1の運転が不可であると判定する。
この構成によれば、操作キー25がキー穴開口34の周囲(カバー部材31)を規定回数を越えて押圧した場合には、自動二輪車1の運転を不能(不許可)とするといった制御が可能となる。すなわち、運転者が操作キー25の挿入に苦戦してカバー部材31を何度も押圧した場合に限り、自動二輪車1の運転を制限することが可能となる。一方、運転者がカバー部材31を偶然押圧してしまったような場合には、自動二輪車1の運転制限を回避することが可能となる。このように、運転可否の誤判定を防いで運転可否判定の精度を高め、運転可否判定装置10の実用性を高めることができる。
【0065】
上記運転可否判定装置10において、前記カバー部材31は、前記第一の方向でキー抜取側に凸の凸形状31aを有し、前記キー穴開口34の少なくとも一部は、前記凸形状31aの頂部に位置している。
この構成によれば、カバー部材31がキー抜取側に凸の凸形状31aを有し、キー穴開口34の少なくとも一部が凸形状31aの頂部に位置することで、操作キー25をキー穴24に挿入しようとした際、キー穴開口34の周囲に操作キー25が突き当たると、操作キー25がキー穴開口34よりも外周側に滑り落ちるように案内される。このため、操作キー25のキー穴24への挿入の難易度が高まり、運転者は操作キー25をキー穴開口34に的確に差し込む必要がある。これにより、運転者が自動二輪車1の運転に適さない状態にあることを検知しやすくし、運転可否判定の精度をより一層高めることができる。
【0066】
上記運転可否判定装置10において、前記判定部12による運転可否判定の結果に基づいて前記自動二輪車1の駆動システムの作動を制御する制御部13を備え、前記制御部13は、前記判定部12が前記自動二輪車1の運転が不可であると判定した場合に、駆動制限制御として、前記自動二輪車1の駆動装置の始動を制限するか、前記駆動システムの駆動待機状態への移行を制限する。
この構成によれば、自動二輪車1の運転不可判定に基づいて自動二輪車1の駆動システムを制御する制御部13が、自動二輪車1の駆動装置の始動を制限するか、あるいは自動二輪車1の駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行を制限することで、自動二輪車1の運転を確実に制限することができ、運転可否判定装置10の実用性を高めることができる。
【0067】
上記運転可否判定装置10において、前記駆動制限制御が実行されていることを表示する制限表示部15aを備えている。
この構成によれば、自動二輪車1の駆動制限制御が実行されていることを示す制限表示部15aを備えることで、自動二輪車1が駆動制限状態にあることを運転者に知らしめることができる。このため、運転者が自動二輪車1の故障ではなく駆動制限状態であることを容易に理解することができ、運転可否判定装置10の実用性を高めることができる。
【0068】
上記運転可否判定装置10において、前記自動二輪車1が備える運転情報表示装置(メータ装置15)に、前記制限表示部15aが備えられている。
この構成によれば、自動二輪車1の運転情報を表示するメータ装置15に、駆動制限制御が実行されていることを示す制限表示部15aを備えることで、運転者が駆動制限制御が実行されていることに気付きやすく、運転可否判定装置10の実用性を高めることができる。
【0069】
上記運転可否判定装置10において、前記判定部12は、前記自動二輪車1の運転が不可であると判定した後、予め定めた適性回復時間Taの経過後に前記判定をリセットする。
この構成によれば、自動二輪車1の運転不可判定後、規定時間の経過後に前記判定が自動的にリセットされることで、追加のリセット操作を設定することなく自動二輪車1の運転を再開することができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0070】
上記運転可否判定装置10において、前記判定部12は、前記自動二輪車1の駆動システムの運転状態から前記駆動システムを停止させた後、予め定めた判定保持時間Tbの間は運転可能判定を維持する。
この構成によれば、自動二輪車1を運転している状態から駆動システムを停止させた後、規定時間の間は運転可能判定を維持することで、自動二輪車1の短時間の停止後に運転を再開するような場合には、運転可否判定を改めて行うことを不要としてエンジンの始動等を行うことができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、本実施形態の運転可否判定装置は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。また、鞍乗り型車両以外の車両(乗用車、バス、トラック等)に適用してもよい。
本実施形態の運転可否判定装置は、車両に適用されるものであるが、本発明は車両への適用に限らず、航空機や船舶等の種々輸送機器、ならびに建設機械や産業機械等、様々な乗物や移動体に適用してもよい。さらに、本発明は、乗物以外でも利用者が運転を行う機器であれば、例えば手押しの芝刈り機や清掃機等に広く適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 自動二輪車(機器)
10 運転可否判定装置
11 キー装置
12 判定部
13 制御部
15 メータ装置(運転情報表示装置)
15a 制限表示部
21 キーシリンダ(キー挿入部)
24 キー穴
25 操作キー
31 カバー部材
31a 凸形状
34 キー穴開口
35 圧力センサ
Ta 適正回復時間
Tb 判定保持時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6