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特開2023-1793人間関係抽出装置及び人間関係抽出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001793
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】人間関係抽出装置及び人間関係抽出方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20221226BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102730
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 敬志
(72)【発明者】
【氏名】尾白 大知
(72)【発明者】
【氏名】竹市 嘉一郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 泉
(72)【発明者】
【氏名】須田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 哲
(72)【発明者】
【氏名】新井 達也
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 浄人
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象者の個人に紐付く基本情報だけでなく、個人と組織との関係及び組織間の関係までも考慮して、対象者がハイリスク者でないか判定する人間関係抽出装置を提供する。
【解決手段】人間関係抽出装置100は、プロセッサと、プログラム及びデータを記憶する記憶装置と、を備える。記憶装置は、外部から入力される既知の事実情報(人関係テーブル111、組織-人関係テーブル112、組織関係事実テーブル113、BL該当者テーブル115)を記憶する。プロセッサは、対象者が指定された際に、対象者の個人に紐付く事実情報を取得して記憶装置に登録し(対象者関係情報テーブル116)、各種の事実情報に基づいて対象者の関係者を抽出する第1の関係者抽出を実行し、抽出された関係者にブラックリストの該当者が含まれるか否かに基づいて、対象者がハイリスク者であるか否かを判定する第1の判定を実行し、第1の判定の判定結果を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
審査の対象者が高程度のリスクを有するハイリスク者であるか否かをコンピュータによって判定する人間関係抽出装置であって、
プログラムの実行によって所定の処理を実行するプロセッサと、
前記プログラム及びデータを記憶する記憶装置と、
を備え、
前記記憶装置は、外部から入力される既知の事実情報として、人と人の事実関係を示す情報と、組織と人の事実関係を示す情報と、組織と組織の事実関係を示す情報と、ブラックリストの該当者を示す情報と、を少なくとも記憶し、
前記プロセッサは、
前記対象者が指定された際に、前記対象者の個人に紐付く事実情報を取得して前記記憶装置に登録し、
前記記憶装置に記憶された各種の前記事実情報に基づいて前記対象者の関係者を抽出する第1の関係者抽出を実行し、
前記第1の関係者抽出で抽出された前記関係者に前記ブラックリストの該当者が含まれるか否かに基づいて、前記対象者がハイリスク者であるか否かを判定する第1の判定を実行し、
前記第1の判定の判定結果を出力する
ことを特徴とする人間関係抽出装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記第1の判定の実行に加えて、
前記第1の関係者抽出で抽出された前記関係者に含まれる前記ブラックリストの該当者の度合いを示す関連度スコアを算出し、当該算出した関連度スコアに基づいて、前記対象者がハイリスク者であるか否かを判定する第2の判定を実行し、
前記第1及び前記第2の判定の少なくとも何れかで前記対象者がハイリスク者であるとの判定結果が得られた場合に前記対象者をハイリスク者であると最終判定し、
前記最終判定の判定結果と、前記第1及び前記第2の判定の判定結果とを出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の人間関係抽出装置。
【請求項3】
前記記憶装置は、前記事実情報から類推される組織間の類推関係を示す組織関係類推情報をさらに記憶し、
前記プロセッサは、
前記第1の関係者抽出によって抽出される関係者に加えて、前記組織関係類推情報に基づいて、前記対象者が所属歴を有する組織と前記類推関係にある組織への所属歴を有する人も、前記対象者の関係者として抽出する第2の関係者抽出を実行し、
前記第1の関係者抽出で抽出された前記関係者を対象として前記第1の判定を実行し、
前記第2の関係者抽出で抽出された前記関係者を対象として前記第2の判定を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の人間関係抽出装置。
【請求項4】
前記記憶装置に記憶される前記事実情報には、複数の個人について各人に紐付く基本情報を示す人基本情報が含まれ、
前記プロセッサは、
前記人基本情報に基づいて、個人間の類似度を示す個人間類似度を算出し、
各組織に所属する人同士の前記個人間類似度に基づいて、組織間の関係を類推し、
前記類推した組織間の類推関係を前記組織関係類推情報に登録する
ことを特徴とする請求項3に記載の人間関係抽出装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記組織と人の事実関係を示す情報に基づいて、組織への所属期間が前記対象者の組織への所属期間と重複しない人を、前記対象者の関係者から除外する
ことを特徴とする請求項1に記載の人間関係抽出装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記第1または前記第2の判定において前記対象者がハイリスク者であるとの判定結果が得られた場合に、前記ブラックリストの該当者との関係が想定される人または組織に対する確認を推奨する出力を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の人間関係抽出装置。
【請求項7】
審査の対象者が高程度のリスクを有するハイリスク者であるか否かを判定する人間関係抽出装置による人間関係抽出方法であって、
前記人間関係抽出装置を構成するコンピュータは、プログラムの実行によって所定の処理を実行するプロセッサと、前記プログラム及びデータを記憶する記憶装置と、を有し、
前記記憶装置は、外部から入力される既知の事実情報として、人と人の事実関係を示す情報と、組織と人の事実関係を示す情報と、組織と組織の事実関係を示す情報と、ブラックリストの該当者を示す情報と、を少なくとも記憶し、
前記プロセッサが、前記対象者が指定された際に、前記対象者の個人に紐付く事実情報を取得して前記記憶装置に登録する登録ステップと、
前記プロセッサが、前記登録ステップまでに前記記憶装置に記憶された各種の前記事実情報に基づいて前記対象者の関係者を抽出する第1の関係者抽出を実行する関係者抽出ステップと、
前記プロセッサが、前記関係者抽出ステップで抽出された前記関係者に前記ブラックリストの該当者が含まれるか否かに基づいて、前記対象者がハイリスク者であるか否かを判定する第1の判定を実行する判定ステップと、
前記プロセッサが、前記判定ステップにおける判定結果を出力する出力ステップと、
を備えることを特徴とする人間関係抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間関係抽出装置及び人間関係抽出方法に関し、様々な審査手続きにおいて対象者がリスクの高いハイリスク者でないかを判定する人間関係抽出装置及び人間関係抽出方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、口座開設や住民票の登録等の様々なシーンにおいて、対象者がリスクの高いハイリスク者でないか否かが審査されている。上記「リスク」は、例えば、近い将来に犯罪に関与する可能性があることが挙げられる。上記審査を行う審査機関は、既知のハイリスク者(例えば、犯罪者やその関係者など)を登録したブラックリストを保持していることが一般的であり、ハイリスク者はブラックリスト該当者と何かしらの関係で繋がっていることが多いことも知られているため、審査時には、対象者とブラックリスト該当者との関係性を判定することにより、対象者がハイリスク者であるか否かが判定される。
【0003】
ここで例えば特許文献1には、共通エンティティに対する関係に基づいてエンティティを解決するための技法が開示されている。特許文献1では、「2つのエンティティを比較し、共通に関係している1つまたは複数のエンティティのセットに基づいて、2つのエンティティがエンティティ・レゾリューション閾値を満たす場合に、単一エンティティに解決する」方法が開示されている。この特許文献1を用いてハイリスク者とブラックリスト該当者との関係性の有無を判定しようとする場合、対象者とブラックリスト該当者とを2つのエンティティとすることで、両エンティティにおいて例えば電話番号や住所などの属性が共通する場合に、対象者とブラックリスト該当者とが関係があると決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014-529129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1の技法によれば、電話番号や住所など個人に紐付く基本情報の値が対象者とブラックリスト該当者とで一致している場合に、両者の関係性を抽出することができる。しかし、基本情報が完全一致するケースは決して多くなく、ブラックリスト該当者との関係性を有するハイリスク者を見逃してしまうリスクは、依然高いと言わざるを得なかった。
【0006】
また、ハイリスク者とブラックリスト該当者との関係性は、個人に紐付く基本情報だけで十分に判定できるものではなく、個人の周辺情報(例えば、勤務先などの所属組織)に基づいて関係性が存在する場合も想定されるが、従来技術では、このような対象者の周辺情報まで考慮して対象者とブラックリスト該当者との関係性を抽出することはできなかった。具体的には例えば、対象者の勤務先にブラックリスト該当者も勤務しているような場合には、従来技術によって関係性を抽出することが可能であったが、対象者の勤務先と類似する別の勤務先にブラックリスト該当者が勤務している場合には、従来技術では関係性を抽出することはできなかった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、個人に紐付く基本情報だけでなく、個人と組織との関係、及び組織間の関係までも考慮して、対象者がハイリスク者でないか判定することが可能な人間関係抽出装置及び人間関係抽出方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、審査の対象者が高程度のリスクを有するハイリスク者であるか否かをコンピュータによって判定する人間関係抽出装置であって、プログラムの実行によって所定の処理を実行するプロセッサと、前記プログラム及びデータを記憶する記憶装置と、を備え、前記記憶装置は、外部から入力される既知の事実情報として、人と人の事実関係を示す情報と、組織と人の事実関係を示す情報と、組織と組織の事実関係を示す情報と、ブラックリストの該当者を示す情報と、を少なくとも記憶し、前記プロセッサは、前記対象者が指定された際に、前記対象者の個人に紐付く事実情報を取得して前記記憶装置に登録し、前記記憶装置に記憶された各種の前記事実情報に基づいて前記対象者の関係者を抽出する第1の関係者抽出を実行し、前記第1の関係者抽出で抽出された前記関係者に前記ブラックリストの該当者が含まれるか否かに基づいて、前記対象者がハイリスク者であるか否かを判定する第1の判定を実行し、前記第1の判定の判定結果を出力する人間関係抽出装置が提供される。
【0009】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、審査の対象者が高程度のリスクを有するハイリスク者であるか否かを判定する人間関係抽出装置による人間関係抽出方法であって、前記人間関係抽出装置を構成するコンピュータは、プログラムの実行によって所定の処理を実行するプロセッサと、前記プログラム及びデータを記憶する記憶装置と、を有し、前記記憶装置は、外部から入力される既知の事実情報として、人と人の事実関係を示す情報と、組織と人の事実関係を示す情報と、組織と組織の事実関係を示す情報と、ブラックリストの該当者を示す情報と、を少なくとも記憶し、前記プロセッサが、前記対象者が指定された際に、前記対象者の個人に紐付く事実情報を取得して前記記憶装置に登録する登録ステップと、前記プロセッサが、前記登録ステップまでに前記記憶装置に記憶された各種の前記事実情報に基づいて前記対象者の関係者を抽出する第1の関係者抽出を実行する関係者抽出ステップと、前記プロセッサが、前記関係者抽出ステップで抽出された前記関係者に前記ブラックリストの該当者が含まれるか否かに基づいて、前記対象者がハイリスク者であるか否かを判定する第1の判定を実行する判定ステップと、前記プロセッサが、前記判定ステップにおける判定結果を出力する出力ステップと、を備える人間関係抽出方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、個人に紐付く基本情報だけでなく、個人と組織との関係、及び組織間の関係までも考慮して、対象者がハイリスク者でないか判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る人間関係抽出装置100の構成例を示すブロック図である。
図2】人間関係抽出装置100を実現するコンピュータ10のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】人関係テーブル111の一例を示す図である。
図4】組織-人関係テーブル112の一例を示す図である。
図5】組織関係事実テーブル113の一例を示す図である。
図6】人基本情報テーブル114の一例を示す図である。
図7】BL該当者テーブル115の一例を示す図である。
図8】対象者関係情報テーブル116の一例を示す図である。
図9】個人類似度テーブル117の一例を示す図である。
図10】組織関係類推テーブル118の一例を示す図である。
図11】抽出結果テーブル119の一例を示す図である。
図12】人間関係抽出処理の処理手順例を示すフローチャートである。
図13】対象者Aと周辺環境との接続関係の一例を示す模式図である。
図14】対象者Aと拡張した周辺環境との接続関係の一例を示す模式図である。
図15】判定結果画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。以下の説明では、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて各種情報を説明する事があるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。データ構造に依存しないことを示すために「XXテーブル」、「XXリスト」等を「XX情報」と呼ぶことがある。各情報の内容を説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについては互いに置換が可能である。
【0013】
(1)装置構成
図1は、本発明の一実施形態に係る人間関係抽出装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、人間関係抽出装置100は、所定の機能を提供する処理部として、入力関係登録部101、組織関係類推部102、関係者抽出部103、及びハイリスク者判定部104を備え、所定の情報を保持する各種データとして、人関係テーブル111、組織-人関係テーブル112、組織関係事実テーブル113、人基本情報テーブル114、BL該当者テーブル115、対象者関係情報テーブル116、個人類似度テーブル117、組織関係類推テーブル118、及び抽出結果テーブル119を備えて構成される。
【0014】
人間関係抽出装置100は、審査の対象とされる対象者とブラックリスト(BL)に登録されたブラックリスト該当者(BL該当者)との関係性を抽出する人間関係抽出処理を実行することによって、対象者が高程度のリスクを有するハイリスク者であるか否かを判定する装置である。詳細は図12等を参照しながら後述するが、人間関係抽出処理では、事実情報から示される人同士の関係性、組織と人の関係性、及び組織同士の関係性と、事実情報から類推される組織同士の関係性とに基づいて、周辺環境から対象者の関係者を抽出し、関係者がBL該当者であるか等を判断基準として、対象者がハイリスク者であるか否かを判定し、その判定結果を可視化することにより、ハイリスク者を高精度で検出する。
【0015】
入力関係登録部101は、各種の事実情報の入力を受け付け、入力された事実情報を各種データ(人関係テーブル111、組織-人関係テーブル112、組織関係事実テーブル113、人基本情報テーブル114、BL該当者テーブル115)に登録し、記憶装置(図2に示すメモリ12または記憶デバイス13)に記憶させる機能を有する。組織関係類推部102は、組織間の関係を類推し、類推結果を組織関係類推テーブル118に登録する機能を有する。関係者抽出部103は、判定対象の対象者に紐付いた基本情報を対象者関係情報テーブル116に登録し、登録された各種データに基づいて対象者と関係性を有する人(関係者)を抽出する機能を有する。なお、関係者抽出部103による関係者の抽出結果は、抽出結果テーブル119に登録される。ハイリスク者判定部104は、関係者抽出部103による関係者の抽出結果に基づいて、対象者がハイリスク者であるか否かを判定し、その判定結果をユーザに出力する機能を有する。
【0016】
人間関係抽出装置100が保持する各種データの詳細は、図3図11を参照しながら後述する。なお、人関係テーブル111、組織-人関係テーブル112、組織関係事実テーブル113、人基本情報テーブル114、及びBL該当者テーブル115は、人及び組織について既に判明している事実情報について、対象者がハイリスク者であるか否かの判定が行われるよりも前に、人間関係抽出装置100に入力されて登録されるデータである。また、対象者関係情報テーブル116は、人間関係抽出の対象者に関する事実情報について、対象者の指定時に人間関係抽出装置100に入力されて登録されるデータである。また、個人類似度テーブル117、組織関係類推テーブル118、及び抽出結果テーブル119は、人間関係抽出処理のなかで生成及び登録されるデータである。
【0017】
図2は、人間関係抽出装置100を実現するコンピュータ10のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0018】
コンピュータ10は、CPU11、メモリ12、記憶デバイス13、入力デバイス14、出力デバイス15、及びネットワークデバイス16が、バス17を介して互いに接続されて構成される。
【0019】
CPU11は、プログラムを実行するプロセッサであり、例えばCPU(Central Processing Unit)である。メモリ12は、プログラムやプログラムを実行する際に参照されるデータ等を格納するRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置である。記憶デバイス13は、プログラムやプログラムを実行する際に参照されるデータ等を格納する補助記憶装置であって、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。入力デバイス14は、操作者による入力を受け付ける装置であって、例えば、キーボード、マウス、またはタッチパネル等である。出力デバイス15は、CPU11によって実行された処理の結果、あるいは、メモリ12または記憶デバイス13に保持されたデータ等を出力する装置であって、例えば、液晶表示装置や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。ネットワークデバイス16は、通信インタフェース及び入出力インタフェース等の各種インタフェースである。バス17は、内部通信線であって、コンピュータ10内の各装置を連結する。
【0020】
図1に示した人間関係抽出装置100の各処理部は、各処理部の機能に応じた処理用のプログラムが上記したコンピュータ10のハードウェア資源により実行されることによって実現される。具体的には、図1に示した入力関係登録部101、組織関係類推部102、関係者抽出部103、及びハイリスク者判定部104は、CPU11が、メモリ12または記憶デバイス13に保持された所定のプログラムを関連データを参照しながら実行することによって実現される。なお、ハイリスク者判定部104は、CPU11が所定のプログラムを実行し、さらにその実行結果(後述する図15の判定結果画面120)を出力デバイス15(あるいはユーザ側端末でもよい)に出力することによって実現される。
【0021】
また、図1に示した人間関係抽出装置100の各種データ(人関係テーブル111、組織-人関係テーブル112、組織関係事実テーブル113、人基本情報テーブル114、BL該当者テーブル115、対象者関係情報テーブル116、個人類似度テーブル117、組織関係類推テーブル118、抽出結果テーブル119)は、メモリ12または記憶デバイス13によって実現される。
【0022】
なお、コンピュータ10においてCPU11が実行する上記プログラム、及び当該プログラムが参照するデータの一部または全ては、メモリ12または記憶デバイス13に予め格納されていてもよいし、必要に応じて、ネットワークデバイス16を介して、ネットワークで接続された他の装置の非一時的記憶装置または非一時的な記憶媒体から、コンピュータ10の記憶デバイス13に格納されるように構成されてもよい。また、以下の説明では、簡便のため、人間関係抽出装置100が1つのコンピュータ10によって実現される構成とするが、本実施形態に係る人間関係抽出装置100の構成はこれに限定されるものではなく、複数のコンピュータ10によって実現されてもよく、あるいは、データベース装置やクラウドストレージ等を含めて実現されてもよい。
【0023】
(2)データ構造
図3は、人関係テーブル111の一例を示す図である。人関係テーブル111は、人と人との事実関係を示す情報を保持するテーブルであって、該当者1111、関係者1112、及び関係性1113のカラムを有する。人関係テーブル111には、該当者1111ごとに、関係者1112との間の関係性1113が記録される。本実施形態では、人同士の事実関係について、例えば、人Aと人Bが家族関係にあるとき、または人Aと人Bが同じ住所を有するときに、関係性を有するとし、上記の場合にはそれぞれ、関係性1113に「家族」または「同居」等と記載される。
【0024】
図4は、組織-人関係テーブル112の一例を示す図である。組織-人関係テーブル112は、組織と人との事実関係を示す情報を保持するテーブルであって、組織1121、人1122、関係性1123、関係開始1124、及び関係終了1125のカラムを有する。組織-人関係テーブル112には、組織1121ごとに、当該組織に関係する(または関係した)人1122について、その関係性1123、さらに、当該関係性の開始時期(関係開始1124)及び終了時期(関係終了1125)が記録される。本実施形態では、組織と人との事実関係について、例えば、組織Pに人Aがある期間に亘って所属しているときに、関係性を有するとし、その場合、関係性1123に「所属」と記載される。具体的には例えば、図4の1行目のレコードでは、組織Pにおいて、人Cが、2017年4月から2019年3月まで所属していたことが示されている。なお、関係性1123のカラム値は、「所属」以外にも適宜設定することができる。例えば、直接雇用されていた場合には「所属」と記載し、派遣契約や業務請負によって勤務していた場合には「派遣」や「請負」と記載する等してもよい。また、関係性1123には、組織1121における立場(役職等)を区別して記載してもよい。
【0025】
図5は、組織関係事実テーブル113の一例を示す図である。組織関係事実テーブル113は、組織と組織との事実関係を示す情報を保持するテーブルであって、該当組織1131、関係組織1132、関係性1133のカラムを有する。組織関係事実テーブル113には、該当組織1131ごとに、関係組織1132、及びその関係組織との関係性1133が記録される。本実施形態では、組織間の事実関係について、例えば、組織Pと組織Qとがグループ会社であるとき、または組織Pと組織Qの代表者が同一であるときに、関係性を有するとし、上記の場合にはそれぞれ、関係性1133に「グループ会社」または「代表者同一」等と記載される。
【0026】
図6は、人基本情報テーブル114の一例を示す図である。人基本情報テーブル114は、個人に紐付く基本情報を保持するテーブルであって、名前1141、国籍1142、職業1143、住所1144、年齢1145、及び勤務先1146のカラムを有する。
【0027】
図7は、BL該当者テーブル115の一例を示す図である。BL該当者テーブル115は、ブラックリストの登録情報を保持するテーブルであり、BL該当者の名前が列挙される。
【0028】
図8は、対象者関係情報テーブル116の一例を示す図である。対象者関係情報テーブル116は、対象者に関する事実情報として、対象者個人に紐付く基本情報を保持するテーブルであって、関係者1161、カテゴリ1162、関係性1163、関係開始1164、及び関係終了1165のカラムを有する。対象者関係情報テーブル116の登録内容は、人間関係抽出処理において対象者の指定とともに入力される。関係者1161には、対象者と直接的に関係する対象が記載され、「人」だけでなく「組織」(対象者が所属する組織)も含む。カテゴリ1162には、関係者1161の種別であって、「人」または「組織」が記載される。関係性1163には、対象者と関係者1161との関係性が記載される。そして、関係開始1164及び関係終了1165には、関係者1161に組織が記載されている(言い換えれば、カテゴリ1162が「組織」である)場合に、対象者が当該組織に所属した期間が記載される。
【0029】
図9は、個人類似度テーブル117の一例を示す図である。個人類似度テーブル117は、人と人との類推関係を示す個人類似度を保持するテーブルである。詳細は後述するが、個人類似度は、組織関係類推部102によって、人基本情報テーブル114に登録されている各個人に属する情報に基づいて算出される。本例では、個人類似度は「0.0」~「1.0」の範囲内の数値で表されるとし、値が1.0に近いほど、類似度が高い(関係性があると類推される)ことを意味する。
【0030】
図10は、組織関係類推テーブル118の一例を示す図である。組織関係類推テーブル118は、組織と組織との類推関係を示す情報を保持するテーブルであって、該当組織1181、関係組織1182、及び組織類似度1183のカラムを有する。該当組織1181及び関係組織1182は、類推関係を有する組織であり、組織類似度1183は、該当組織1181の関係組織1182に対する類似度(組織類似度)である。詳細は後述するが、組織類似度は、組織関係類推部102によって、各組織に属している人の個人類似度に基づいて算出され、所定以上の組織類似度を有する組織の組み合わせが、組織関係類推テーブル118に記録される。本例では、組織類似度は「0.0」~「1.0」の範囲内の数値で表されるとし、値が1.0に近いほど、類似度が高い(関係性があると類推される)ことを意味する。本実施形態では、組織間の類推関係について、例えば、組織Pに所属している人Aと組織Qに所属している人Bの属性情報が類似しているとき、あるいは、組織Pと組織Qにおいて、財務情報、企業規模、または取扱商品が類似しているときに、関係性を有すると類推する。
【0031】
図11は、抽出結果テーブル119の一例を示す図である。抽出結果テーブル119は、対象者の関係者の抽出結果に関する情報を保持するテーブルであって、関係者抽出部103によって登録される。抽出結果テーブル119は、関係者1191、BL該当有無1192、事実関係有無1193、類推関係有無1194、及び関連組織1195のカラムを有する。関係者1191には、対象者の関係者として抽出された人が記録される。BL該当有無1192には、当該関係者がBL該当者であるか否かが記録され、事実関係有無1193には、当該関係者が対象者と事実情報に基づく直接関係を有するか否かが記録され、類推関係有無1194には、当該関係者が対象者と類推情報に基づく類推関係を有するか否かが記録される。また、関連組織1195には、対象者または関係者が所属している(あるいは所属していた)組織が記録される。
【0032】
(3)人間関係抽出処理
以下では、人間関係抽出装置100によって実行される人間関係抽出処理について、図3図11の具体的なデータ例を適宜参照しながら、詳しく説明する。人間関係抽出処理は、対象者が指定された場合に、人間関係抽出装置100が、対象者と強い関係を有する関係者を抽出しブラックリスト該当者と照合することによって、対象者とブラックリスト該当者との関係性を抽出し、対象者がハイリスク者であるか否かを判定する処理である。
【0033】
図12は、人間関係抽出処理の処理手順例を示すフローチャートである。図12において、ステップS1,S2の処理は、対象者の指定がなされる前の任意のタイミングで実行される。一方、ステップS3~S5の処理は、対象者の指定及び当該対象者の関係情報(対象者関係情報テーブル116に登録される情報)の入力がなされた後に実行される。本説明では、「対象者A」が指定されるとする。
【0034】
(3-1)入力関係の登録
まず、ステップS1では、入力関係登録部101が、予め用意された各種の事実関係を示す情報を、人関係テーブル111、組織-人関係テーブル112、組織関係事実テーブル113、人基本情報テーブル114、及びBL該当者テーブル115に登録する。
【0035】
(3-2)組織関係の類推
次に、ステップS2では、組織関係類推部102が組織間の関係を類推する。ステップS2において組織関係類推部102は、各組織に属している人の類似度(個人類似度)に基づいて、組織同士の類似度(組織類似度)を算出し、組織類似度が所定の閾値を超えている場合に、組織関係が有ると類推し、類推結果を組織関係類推テーブル118に登録する。
【0036】
ここで、ステップS2の処理を詳しく説明する。
【0037】
まず、組織関係類推部102は、人基本情報テーブル114から、個人に属する属性情報(例えば、国籍1142、職業1143、住所1144、年齢1145)を抽出し、抽出した属性情報に基づいて、個人間の類似度(個人類似度)を所定の算出方法で算出する。個人類似度の算出方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、対象とする個人間で、抽出した属性情報が一致している割合(度合い)を個人類似度とする。具体的には、図6の人基本情報テーブル114に示されたX1とX3の組み合わせの場合、国籍、職業、住所、年齢の4項目の属性情報のうち、国籍「A国」と住所「東京」の2項目が一致していることから、この個人類似度は、0.5(2/4)となる。組織関係類推部102は、このような個人類似度の算出を、人基本情報テーブル114に登録されている全ての人の組み合わせについて実行する。図9に例示した個人類似度テーブル117は、これら個人類似度の算出結果をまとめて記録したデータテーブルである。
【0038】
次に、組織関係類推部102は、人基本情報テーブル114の勤務先1146に記載されている各組織について、異なる組織に所属する人の組み合わせのうちから、所定の閾値(例えば0.8)以上の個人類似度を有するペアを抽出する。具体的には、図6の人基本情報テーブル114及び図9の個人類似度テーブル117の場合、P社に所属するX1とR社に所属するX4による1組のペアが抽出される。当該ペアにおける個人類似度は1.0である。次いで、組織関係類推部102は、各組織において、全体人数に対してペアで抽出された人の割合(度合い)を、当該組織の組織類似度として算出する。上記具体例でいうと、人基本情報テーブル114によればP社に所属する人は、X1とX2の2名であり、ペアで抽出されたP社の人はX1だけであるから、P社のR社に対する組織類似度は、0.5(1/2)となる。なお、R社を基準にした組織類似度(すなわち、R社のP社に対する組織類似度)は、R社に所属する人が3人(X3,X4,X5)であることから、0.33(1/3)となる。このように、組織ごとに相手の組織に対する組織類似度を算出することにより、組織の規模を考慮した類似度を算出することができる。
【0039】
そして、組織関係類推部102は、組織ごとに算出した組織類似度のうち、所定の閾値(例えば0.3)以上となるものについて、組織間の関係が類推されると見なし、組織関係類推テーブル118に登録する。上記の具体例だと、P社のR社に対する組織類似度「0.5」及びR社のP社に対する組織類似度「0.33」は、何れも所定の閾値「0.3」以上であることから、図10のように、組織関係類推テーブル118に登録される。
【0040】
以上のようにして、ステップS2では、組織関係類推部102によって組織間の関係が類推され、その類推結果が組織関係類推テーブル118に登録される。
【0041】
(3-3)事実情報に基づいた関係者の抽出
次に、ステップS3では、関係者抽出部103が、ユーザによって指定された対象者Aと事実情報に基づく関係性(直接関係)を有する人を、対象者Aの関係者として抽出する(第1の関係者抽出)。
【0042】
ここで、ステップS3の処理を詳しく説明する。ステップS3において関係者抽出部103は、以下の第1段階~第4段階の処理を順に実行する。
【0043】
図13は、対象者Aと周辺環境との接続関係の一例を示す模式図である。図13には、対象者Aの周辺環境について、事実情報から明らかとなる直接関係の一例が示されており、「家族」または「所属」の表記は対象間の関係性を表している。また、「所属」の表記の下部に記載された数字は、当該所属の期間を表している。以下、図13に示した関係を具体例として、第1の関係者抽出を説明する。
【0044】
第1段階において、関係者抽出部103は、対象者Aの指定時に入力された対象者Aに関する事実情報を、対象者関係情報テーブル116に登録する。
【0045】
第2段階において、関係者抽出部103は、対象者関係情報テーブル116と、ステップS1で登録した各種の関係テーブル(人関係テーブル111、組織-人関係テーブル112、組織関係事実テーブル113)とに基づいて、対象者Aと関係する「人」を抽出する。この第2段階で参照される各テーブルの情報は全て、類推を含まない事実情報である。
【0046】
第2段階の処理について、図3図4図5図8の各テーブルを用いて具体的に説明する。
【0047】
まず、関係者抽出部103は、対象者関係情報テーブル116(図8)を参照し、第1レコードにおいて関係者1161が「B」で、カテゴリ1162が「人」であることを確認すると、「B」をキーとして、人関係テーブル111(図3)及び組織-人関係テーブル112(図4)を検索し、「B」に関係する対象(人でも組織でもよい)の抽出を試みる。しかし、図3の人関係テーブル111及び図4の組織-人関係テーブル112には、「B」に関する情報がないため、「B」に関係する対象は抽出されない。
【0048】
次に、関係者抽出部103は、対象者関係情報テーブル116の第2レコードを参照し、関係者1161が「P」で、カテゴリ1162が「組織」であることを確認すると、「P」をキーとして、組織-人関係テーブル112(図4)及び組織関係事実テーブル113(図5)を検索し、「P」に関係する対象(人でも組織でもよい)の抽出を試みる。この場合、「P」に関係する対象としてQ,C,Dが抽出される。さらに関係者抽出部103は、何らかの対象が抽出された場合は、抽出された対象のそれぞれをキーとして、同様の検索を繰り返す。
【0049】
そして、関係者抽出部103は、上記検索を繰り返し実行して抽出した複数の対象のうちから「人」を選別し、これら(本例では、B,C,D,E)を、対象者Aの関係者の候補者とする。
【0050】
第3段階では、関係者抽出部103は、第2段階で抽出した対象者Aの関係者の候補者について、各人の組織への所属期間を確認し、対象者Aの組織への所属期間と重複していない候補者は、対象者Aの関係者から除外する。具体的には、図8の対象者関係情報テーブル116によれば、2018年4月から2019年3月までが、対象者Aが組織Pに所属していた期間である。一方、図4の組織-人関係テーブル112によれば、Dが組織Pに所属していた期間は2013年4月から2016年3月であり、所属期間が重複しない。なお、C,Eは、組織への所属に関する事実情報が存在しないため、除外されない。したがって、第3段階の処理によって、Dが除外され、B,C,Eが対象者Aの関係者とされる。なお、第3段階における除外対象は、組織への所属期間が対象者と重複しない候補者だけでなく、当該候補者に従属する候補者(例えば、家族)も含むようにしてもよい。
【0051】
第4段階において、関係者抽出部103は、第3段階終了時に抽出された対象者Aの関係者を抽出結果テーブル119に登録する。
【0052】
詳しくは、関係者抽出部103は、抽出結果テーブル119に当該関係者ごとにレコードを新規作成し、関係者1191に当該関係者を登録し、事実関係有無1193に「○」を登録する。さらに、第4段階において関係者抽出部103は、対象者Aの関係者をBL該当者テーブル115(図7)と照合し、BL該当者が存在するか否かを確認し、その確認結果を抽出結果テーブル119の該当レコードのBL該当有無1192に登録する。具体的には、ステップS3の第4段階において、抽出結果テーブル119には、対象者Aの関係者としてB,C,E,Fの4名が登録される。このうち、BL該当者であるCのレコードでは、BL該当有無1192のカラム値に「○」が登録され、BL該当者ではないB,D,Eのレコードでは、BL該当有無1192のカラム値に「-」が登録される。また、各レコードの関連組織1195には、対象者または関係者が所属している(あるいは所属していた)組織が登録される。
【0053】
以上のように、ステップS3では、第1の関係者抽出によって、事実情報に基づいて、対象者Aと直接関係を有する関係者を抽出することができ、その抽出結果を抽出結果テーブル119に登録することができる。
【0054】
(3-4)類推情報に基づいた関係者の抽出
次に、ステップS4では、関係者抽出部103は、ステップS3で抽出した事実情報に基づく関係性(直接関係)を有する人に加えて、類推情報に基づく関係性(類推関係)を有する人も、対象者Aの関係者として抽出する(第2の関係者抽出)。
【0055】
ここで、ステップS4の処理を詳しく説明する。ステップS4において関係者抽出部103は、以下の第1段階~第4段階の処理を順に実行する。
【0056】
図14は、対象者Aと拡張した周辺環境との接続関係の一例を示す模式図である。図14には、対象者Aの周辺環境について、図13に示した直接関係に加えて、類推情報から明らかとなる類推関係の一例が示されている。凡例にも示した通り、図14では、事実情報に基づく直接関係は実線で表され、類推情報に基づく類推関係は破線で表される。図14におけるその他の表記の方法は、図13と同様である。以下、図14に示した関係を具体例として、第2の関係者抽出を説明する。
【0057】
第1段階において、関係者抽出部103は、ステップS3(第1の関係者抽出)の第2段階で抽出された組織に着目し、当該組織と類推関係となっている組織を組織関係類推テーブル118から抽出する。具体的には、第1の関係者抽出の第2段階では組織Pが抽出されたことから、関係者抽出部103は、図10の組織関係類推テーブル118において該当組織1181に「P」が記載されたレコードの関係組織1182を参照することにより、組織Pと類推関係を有する組織として組織R及び組織Sを抽出する。なお、第1段階において、関係者抽出部103は、抽出済みの対象者Aの関係者として、ステップS3(第1の関係者抽出)で抽出された直接関係による関係者を取得しておいてもよい。
【0058】
第2段階において、関係者抽出部103は、組織-人関係テーブル112及び人関係テーブル111に基づいて、上記第1段階で抽出した組織と直接関係を有する人を、対象者Aと類推関係を有する関係者の候補者として抽出する。具体的には、図4の組織-人関係テーブル112からは、組織Rへの所属履歴を持つ人としてR1,R2が抽出され、組織Sへの所属履歴を持つ人としてS1,S2が抽出される。なお、図3の人関係テーブル111には、R1,R2,S1,S2に関係する人は登録されていないことから、それ以外の人は抽出されない。
【0059】
第3段階において、関係者抽出部103は、第2段階で抽出した対象者Aの類推関係による関係者の候補者について、各人の組織への所属期間を確認し、対象者Aの組織への所属期間と重複していない候補者は、対象者Aの類推関係による関係者から除外する。具体的には、図4の組織-人関係テーブル112からは、R1,R2,S1,S2の組織Rまたは組織Sへの所属期間を読み取ることができ、関係者抽出部103は、これらを対象者Aの組織Pへの所属期間である「2018年4月から2019年3月」と比較する。この結果、R1及びS1が組織に所属していた期間が対象者Aが組織Pに所属していた期間とは重複しないことから、R1,S1が対象者Aの類推関係による関係者から除外される。すなわち、第3段階の処理によって、R2,S2が対象者Aの類推関係による関係者とされる。なお、第3段階における除外対象は、組織への所属期間が対象者と重複しない候補者だけでなく、当該候補者に従属する候補者(例えば、家族)も含むようにしてもよい。
【0060】
第4段階において、関係者抽出部103は、第3段階終了時に抽出された対象者Aの関係者を抽出結果テーブル119に登録する。
【0061】
詳しくは、関係者抽出部103は、抽出結果テーブル119に当該関係者ごとにレコードを新規作成し、関係者1191に当該関係者を登録し、事実関係有無1193に「-」を登録し、類推関係有無1194に「○」を登録する。さらに、第4段階において関係者抽出部103は、抽出結果テーブル119に新規登録した対象者Aの関係者をBL該当者テーブル115(図7)と照合し、BL該当者が存在するか否かを確認し、その確認結果を抽出結果テーブル119の該当レコードのBL該当有無1192に登録する。具体的には、ステップS4の第4段階では、R2,S2が新規の関係者として抽出結果テーブル119に登録され、図7のBL該当者テーブル115によれば、R2,S2は何れもBL該当者である。したがって、抽出結果テーブル119のR2,S2のレコードでは、BL該当有無1192のカラム値に「○」が登録される。また、各レコードの関連組織1195には、対象者及び関係者が所属している(あるいは所属していた)組織が登録される。なお、抽出結果テーブル119には、ステップS3の第4段階において対象者Aの直接関係による関係者としてB,C,E,Fの4名が登録されているが、これらの関係者のレコードの類推関係有無1194にも「○」が登録される。
【0062】
以上のように、ステップS4では、第2の関係者抽出によって、類推情報に基づいて、対象者Aと類推関係を有する関係者を抽出することができ、その抽出結果を抽出結果テーブル119に追加登録することができる。
【0063】
(3-4)ハイリスク者の判定
次に、ステップS5では、ハイリスク者判定部104が、ステップS3及びステップS4で登録された抽出結果テーブル119を参照して、対象者Aがハイリスク者であるか否かを判定し、最終的な判定結果をユーザに出力した後、人間関係抽出処理を終了する。
【0064】
ここで、本実施形態におけるハイリスク者判定には、以下に説明する第1及び第2の判定が含まれる。
【0065】
まず、第1の判定では、ハイリスク者判定部104は、ステップS3における第1の関係者抽出の抽出結果を用いて、事実情報に基づいて対象者Aと強い関係(直接関係)を有する関係者にBL該当者が存在するか否かに基づいて、対象者Aがハイリスク者であるか否かを判定する。
【0066】
具体的には、第1の判定においてハイリスク者判定部104は、抽出結果テーブル119を参照し、BL該当有無1192及び事実関係有無1193がともに「○」となっているレコードが存在するか否かを確認することにより、対象者Aと直接関係を有する関係者がBL該当者であるか否かを判定することができる。図11の抽出結果テーブル119の場合、事実関係有無1193を参照すると、B,C,E,Fが直接関係を有する関係者であり、これらの関係者のうち、BL該当有無1192を参照するとCがBL該当者であることが分かる。すなわち、対象者Aは、BL該当者であるCと直接関係を有することから、ハイリスク者判定部104は、第1の判定において対象者Aをハイリスク者と判定する。
【0067】
このような第1の判定によれば、対象者AがBL該当者と直接関係を持つ場合に、対象者AがBL該当者と強く関係しているという観点から、対象者Aをハイリスク者と判定することができる。
【0068】
次に、第2の判定では、ハイリスク者判定部104は、ステップS3における第1の関係者抽出、またはステップS4における第2の関係者抽出の抽出結果を用いて、対象者Aの周辺環境において、どの程度BL該当者が存在するかに基づいて、対象者Aがハイリスク者であるか否かを判定する。
【0069】
以下では、直接関係だけでなく類推関係にまで拡張した対象者Aの関係者(すなわち、第1及び第2の関係者抽出で抽出された関係者)を「対象者Aの周辺環境」として、第2の判定を詳しく説明する。なお、本実施形態に係る人間関係抽出装置100は、第2の判定の別例として、対象者Aと直接関係を有する関係者(すなわち、第1の関係者抽出で抽出された関係者)だけを「対象者Aの周辺環境」として第2の判定を行うようにしてもよく、この場合、人間関係抽出処理においてステップS4の処理(第2の関係者抽出)を実行しなくてもよい。
【0070】
第2の判定においてハイリスク者判定部104は、対象者Aの関係者として抽出された総関係者数のなかでBL該当者が占める割合に基づいて、BL関連度スコアを算出し、算出したBL関連度スコアが所定の閾値以上である場合に、対象者Aをハイリスク者であると判定する。具体的には、ハイリスク者判定部104は、抽出結果テーブル119を参照し、その総レコード数から総関係者数を取得することができ、BL該当有無1192に「○」が登録されているレコード数からBL該当者の数を取得することができる。図11の抽出結果テーブル119の場合、総関係者は6名(B,C,E,F,R2,S2)であり、そのうちBL該当者は3名(C,R2,S2)であることから、ハイリスク者判定部104は、対象者AのBL関連度スコアを0.5(3/6)と算出する。ここで、BL関連度スコアに対して予め設定された所定の閾値が例えば0.4であるとすると、対象者AのBL関連度スコアは閾値以上であることから、ハイリスク者判定部104は、第2の判定において対象者Aをハイリスク者と判定する。
【0071】
このような第2の判定によれば、対象者AがBL該当者とは直接関係を持たない場合でも、対象者Aの周辺環境(例えば類推関係を含む)に多数のBL該当者が存在する場合には、対象者AがBL該当者と関係している可能性が高いという観点から、対象者Aをハイリスク者と判定することができる。
【0072】
なお、ハイリスク者の判定には、上述した第1及び第2の判定を行う前に、ハイリスク者判定部104が、BL該当者テーブル115を参照して対象者AがBL該当者であるか否かを確認し、対象者AがBL該当者である場合にはハイリスク者と判定する処理を加えてもよい。
【0073】
そして、ハイリスク者判定部104は、上記第1の判定及び第2の判定の判定結果に基づいて判定結果画面を表示することにより、審査者であるユーザに、対象者Aがハイリスク者であるか否かの最終的な判定結果を通知するだけでなく、各判定の詳細な判定結果、及び必要な対応策を通知する。
【0074】
図15は、判定結果画面の一例を示す図である。図15に示した判定結果画面120は、ステップS5で出力される判定結果画面の表示例であり、人間関係抽出装置100またはユーザ側端末のディスプレイ等に表示される。
【0075】
図15によれば、判定結果画面120の領域121には、ハイリスク者判定の最終的な判定結果が表示される。ハイリスク者判定部104は、第1の判定または第2の判定に少なくとも何れかにおいて対象者がハイリスク者であると判定した場合に、領域121に「ハイリスク者に該当する」旨を表示する。
【0076】
判定結果画面120の領域122には、第1の判定に基づく詳細な判定結果とその対応に関する推奨策が表示される。具体的には、ハイリスク者判定部104は、第1の判定において対象者Aをハイリスク者と判定した場合、領域122の「BL該当有無」にチェックを付け、対象者AがBL該当者と関係があるため、確認が必要である旨を表示する。さらに、ハイリスク者判定部104は、領域122に、対象者Aと直接関係を有するBL該当者の関係者(本例では例えばC)、及び対象者Aとの関係性を表示する。これらの表示内容は、例えば、抽出結果テーブル119においてBL該当有無1192及び事実関係有無1193の双方に「○」が登録されたレコードの情報から生成することができる。
【0077】
判定結果画面120の領域123には、第2の判定に基づく詳細な判定結果とその対応に関する推奨策が表示される。具体的には、ハイリスク者判定部104は、第2の判定において対象者Aをハイリスク者と判定した場合、領域122の「BL該当者関連度」にチェックを付け、対象者AがBL該当者との関係が高いため、確認が必要である旨を表示する。また、ハイリスク者判定部104は、領域123に、第2の判定で算出した対象者AのBL関連度スコアと、その算出における総関係者数(対象人数)及びBL該当者数を表示する。本例の場合、前述したようにBL関連度スコアは0.5であり、総関係者数は6名、BL該当者数は3名である。さらに、ハイリスク者判定部104は、領域123に、確認が必要な組織に関する情報として、対象者Aの所属組織、対象者Aと類推関係を有するBL該当者の所属組織、BL該当者の所属組織における総関係者数(対象人数)及びBL該当者数を表示する。本例の場合、対象者Aの所属組織は組織Pであり、対象者Aと類推関係を有するBL該当者(R2,S2)のは組織R,Sである。また組織Rにおける総関係者数は、BL該当者であるR2だけであり、また組織Sにおける総関係者数は、BL該当者であるS2だけである。これらの表示内容は、例えば、抽出結果テーブル119において事実関係有無1193に「×」が登録され、かつ類推関係有無1194に「○」が登録されたレコードの情報から生成することができる。
【0078】
なお、判定結果画面120では、例えば領域122や領域123においてBL該当者の所属組織を他とは異なる色やフォントで表示する等、特定の情報を強調表示するようにしてもよい。
【0079】
上記のように判定結果画面120が出力(表示)されることにより、ユーザは、対象者の周辺環境を考慮して抽出した関係者を解析した結果として、対象者がハイリスク者であるか否かを知ることができる。また、このような判定結果画面120によれば、ハイリスク者であるか否かを判定した第1及び第2の判定に関する詳細な情報だけでなく、確認が必要な事項も提示される。したがって、審査者であるユーザは、審査において中止すべき点を確実に把握することができ、ハイリスク者の見逃しを防止することができる。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態に係る人間関係抽出装置100によれば、事実情報に基づいて、対象者と直接関係を有する関係者を抽出し、当該関係者にBL該当者が存在する場合に、第1の判定において対象者をハイリスク支援者と判定することができる。このとき、事実情報には、個人に紐付く基本情報(人基本情報テーブル114、対象者関係情報テーブル116)だけでなく、個人と組織との関係(組織-人関係テーブル112)、及び組織間の関係(組織関係事実テーブル113)も含まれることで、対象者の周辺環境を考慮して関係者を抽出することができる。したがって、本実施形態に係る人間関係抽出装置100は、BL該当者との直接的な繋がりが疑われるハイリスク者を精度よく識別することができる。
【0081】
また、本実施形態に係る人間関係抽出装置100によれば、事実情報または類推情報に基づいて、対象者と直接関係または類推関係(間接的な関係)を有する関係者を抽出し、これらの関係者に含まれるBL該当者の割合に基づいて、第2の判定において対象者がハイリスク者であるかを判定することができる。上記類推情報には、組織間の類推関係を示す情報(組織関係類推テーブル118)が含まれるため、類推情報を用いることで、対象者の周辺環境を拡張して関係者を抽出することができる。このような第2の判定によるハイリスク者の判定方法は、対象者の周辺環境においてBL該当者の割合が多い場合に、犯罪を支援しているブローカー等の存在が想定されることを考慮したものである。したがって、本実施形態に係る人間関係抽出装置100によれば、対象者とBL該当者との直接的な関係が見つからない場合でも、BL該当者との間接的(環境的)な繋がりが疑われるハイリスク者を精度よく識別することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る人間関係抽出装置100では、ハイリスク者を判定する第1及び第2の判定において、組織への所属期間が対象者と重複しない人を関係者から除外する処理を行うことにより、関係者の抽出精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0083】
10 コンピュータ
11 CPU
12 メモリ
13 記憶デバイス
14 入力デバイス
15 出力デバイス
16 ネットワークデバイス
17 バス
100 人間関係抽出装置
101 入力関係登録部
102 組織関係類推部
103 関係者抽出部
104 ハイリスク者判定部
111 人関係テーブル
112 組織-人関係テーブル
113 組織関係事実テーブル
114 人基本情報テーブル
115 BL該当者テーブル
116 対象者関係情報テーブル
117 個人類似度テーブル
118 組織関係類推テーブル
119 抽出結果テーブル
120 判定結果画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15