(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023179386
(43)【公開日】2023-12-19
(54)【発明の名称】車両用電子回路
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20231212BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
B60R16/023 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023092856
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】22177616
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516137960
【氏名又は名称】コノート エレクトロニクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アッラー マハディ
(72)【発明者】
【氏名】モハメド サラマ
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ エルバズ
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA05
5K033BA06
5K033DB13
5K033EC00
(57)【要約】
【課題】ソフトウェア対応データ受信時における車両電子回路の処理ユニットの処理負荷を低減する。
【解決手段】車両(1)用電子回路(3)が、自電子回路(3)を通信ネットワークに接続するネットワークインタフェース(7)と、ハードワイヤドロジックを有するハードウェアコンポーネント(6)とを備え、そのハードワイヤドロジックが、ソフトウェアプログラムを表す少なくとも1個のデータパケットを所定の通信プロトコルに従いその通信ネットワークからネットワークインタフェース(7)を介し受信する。その電子回路(3)が、そのハードウェアコンポーネント(6)に接続されているメモリインタフェース(13)を備え、そのハードウェアコンポーネント(6)が、そのメモリインタフェース(13)を介し不揮発性メモリ(8)にそのソフトウェアプログラムを格納するよう適合化されていて、またその電子回路が、そのソフトウェアプログラムをその不揮発性メモリ(8)から読み込み実行するよう構成された処理ユニット(5)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)用の電子回路(3)であって、
前記電子回路(3)を通信ネットワークに接続するためのネットワークインタフェース(7)と、
ハードワイヤドロジックを有するハードウェアコンポーネント(6)であり、そのハードワイヤドロジックにより、ソフトウェアプログラムを表す少なくとも1個のデータパケットが、所定の通信プロトコルに従い前記ネットワークインタフェース(7)を介して前記通信ネットワークから受信されるハードウェアコンポーネント(6)と、
前記ハードウェアコンポーネント(6)に接続され又はそれに備わるメモリインタフェース(13)であり、そのメモリインタフェース(13)を介し不揮発性メモリ(8)に前記ソフトウェアプログラムを格納するよう前記ハードウェアコンポーネント(6)が適合化されているメモリインタフェース(13)と、
前記ソフトウェアプログラムを前記不揮発性メモリ(8)から読み込んで実行するよう構成されている処理ユニット(5)と、
を備える電子回路。
【請求項2】
請求項1に係る電子回路(3)であって、前記処理ユニット(5)が中央処理ユニット即ちCPUとして実現されている電子回路。
【請求項3】
請求項1に係る電子回路(3)であって、前記ハードウェアコンポーネント(6)が、
グラフィクス処理ユニット即ちGPUか、
コプロセッサか、
フィールドプログラマブルゲートアレイ即ちFPGAか、
を備える電子回路。
【請求項4】
請求項1に係る電子回路(3)であって、前記ハードウェアコンポーネント(6)が、前記ハードワイヤドロジックにより前記メモリインタフェース(13)を介し前記不揮発性メモリ(8)に前記ソフトウェアプログラムを格納するよう、適合化されている電子回路。
【請求項5】
請求項1に係る電子回路(3)であって、そのハードウェア構成により、前記通信プロトコルに従い一種類又は複数種類のサービスが実現される電子回路。
【請求項6】
請求項1に係る電子回路(3)であって、ハードウェアセキュリティモジュール即ちHSM(9)を備える電子回路(3)であり、前記ハードウェアコンポーネント(6)がそのHSM(9)に接続されたHSMインタフェース(14)を備え、前記HSM(9)が前記少なくとも1個のデータパケットを確認するよう構成されている電子回路。
【請求項7】
請求項1に係る電子回路(3)であって、前記ネットワークインタフェース(7)がワイヤレスデータ通信用のネットワークインタフェース(7)として設計されている電子回路。
【請求項8】
請求項1に係る電子回路(3)であって、前記ネットワークインタフェース(7)が前記車両(1)の通信バス用のバスインタフェースとして設計されている電子回路。
【請求項9】
請求項1に係る電子回路(3)であって、前記電子回路(3)がマイクロコントローラとして、及び/又は、システムオンチップ即ちSoCとして、実現されている電子回路。
【請求項10】
請求項1に係る電子回路(3)であって、前記電子回路(3)が前記不揮発性メモリ(8)を備える電子回路。
【請求項11】
車両(1)用の電子制御ユニット即ちECU(2)であり、請求項1~10のうち何れか一項に係る電子回路(3)を備えるECU。
【請求項12】
車両(1)の電子回路(3)を動作させる方法であって、
ソフトウェアプログラムを表す少なくとも1個のデータパケットを、前記電子回路(3)のハードウェアコンポーネント(6)により通信ネットワークから受信し、但しそのハードワイヤドロジックにより、その少なくとも1個のデータパケットを受信するための所定の通信プロトコルが符号化されているものとし、
前記ハードウェアコンポーネント(6)により不揮発性メモリ(8)に前記ソフトウェアプログラムを格納し、
前記電子回路(3)の処理ユニット(5)により前記ソフトウェアプログラムを前記不揮発性メモリ(8)から読み込んで実行する方法。
【請求項13】
請求項12に係る方法であって、前記ハードウェアコンポーネント(6)により前記少なくとも1個のデータパケットが受信されている間に前記処理ユニット(5)が更なるソフトウェアプログラムを実行する方法。
【請求項14】
請求項12又は13に係る方法であって、前記少なくとも1個のデータパケットを、ワイヤレス要領にて前記通信ネットワークを介しサーバコンピュータから受信する方法。
【請求項15】
請求項12又は13に係る方法であって、前記少なくとも1個のデータパケットを、前記車両(1)の通信バスを介しその車両(1)外の情報処理デバイスから受信する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用電子回路、車両用電子制御ユニット、並びに車両の電子回路を動作させる方法、を指向している。
【背景技術】
【0002】
車両内電子回路、とりわけ自動車内のそれのなかには、その車両の電子制御ユニット(ECU)内に入っているものがあり、またその車両又は電子回路の不揮発性メモリ上に格納されている特定のソフトウェアプログラムをする処理ユニット例えば中央処理ユニット(CPU)が入っているものがある。
【0003】
ソフトウェアのバグをフィクスするため、或いはそのソフトウェアに改善を取り入れるためには、その不揮発性メモリ上に格納されているソフトウェアを更新する必要があろう。そうしたソフトウェア更新は、例えば、その車両の診断インタフェースを介しサービスポイントにて、或いはオーバジエア(OTA)更新により、実行することができる。これとは別の理由でも、ソフトウェアがリプレースされることや新規ソフトウェアが格納されることがありうる。
【0004】
従来のECUにあっては、そのCPUのソフトウェアモジュール、例えばブートローダと表されるそれを用いることで、その不揮発性メモリ内のソフトウェアを更新することができる。しかしながら、そのCPUのブートローダその他のコンポーネントにてソフトウェアプログラム更新用の個別データパケットが受信される際に、そのCPUにおける全体的処理負荷が増大して、そのCPUの通常動作に悪影響することがありうるし、とりわけそのCPUがソフトウェア更新用データパケットの受信中にそのソフトウェアプログラムの旧バージョンを実行する場合にそうなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3961380号明細書(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、車両の電子回路に備わる処理ユニットにより実行されるべきソフトウェアプログラムの格納との関連で、そのソフトウェアプログラムに対応するデータの受信中におけるその処理ユニットの処理負荷が低減される改善発想を、提供することにある。
【0007】
この目的は独立形式請求項の各主題により達成される。更なる実現形態及び好適実施形態が従属形式請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基礎にある着想は、車両用電子回路の処理ユニットに加え、ハードワイヤドロジックを有するハードウェアコンポーネントを提供し、そのハードワイヤドロジック回路、以下ではハードワイヤドロジックとも表されるそれを、そのソフトウェアプログラムを表すデータパケットを通信ネットワークから受信するための所定の通信プロトコルを、符号化しているものとする、というものである。
【0009】
発明のある態様では車両用電子回路が提供される。本電子回路は、自電子回路を通信ネットワークに接続するためのネットワークインタフェースを備える。本電子回路は、ハードワイヤドロジックを有するハードウェアコンポーネントを備え、そのハードワイヤドロジックが、ソフトウェアプログラムを表す少なくとも1個のデータパケットを所定の通信プロトコルに従いそのネットワークインタフェース経由でその通信ネットワークから受信するよう適合化されていて、その通信プロトコルがとりわけそのハードワイヤドロジックにより符号化されているものである。本電子回路は、そのハードウェアコンポーネントに接続され又はそれに備わるメモリインタフェースを備え、そのハードウェアコンポーネントが、そのメモリインタフェースを介しそのソフトウェアプログラムを不揮発性メモリ、具体的にはその車両又は電子回路の不揮発性メモリに格納するよう、適合化されているものである。本電子回路は、そのソフトウェアプログラムをその不揮発性メモリから読み込んで実行するよう構成されている処理ユニットを備える。
【0010】
前記通信ネットワークをワイヤレス通信ネットワーク又は無線通信ネットワークとすることができる。その場合、前記少なくとも1個のデータパケットを例えばサーバコンピュータからその通信ネットワーク及びネットワークインタフェースを介し本電子回路へと送ることができる。これに代え、その通信ネットワークをワイヤベース又は有線通信ネットワーク、例えばCANバス又はEthernet(登録商標)ネットワーク等といった前記車両の通信バスとすることもできる。その場合、前記少なくとも1個のデータパケットを、その車両外にある情報処理デバイスからそれら通信ネットワーク及びネットワークインタフェースを介し本電子回路へと送ることができる。その情報処理デバイスは、有線接続ベース又はワイヤレス接続ベースでその通信ネットワーク又は車両バスに接続することができる。
【0011】
前記処理ユニットによる前記不揮発性メモリからの読込は、前記メモリインタフェースを介し又は本電子回路の更なるメモリインタフェースを介し行うことができる。前記ハードウェアコンポーネントはその処理ユニットの一部分ではなく且つその処理ユニットはそのハードウェアコンポーネントの一部分ではない。それでいて、それらハードウェアコンポーネント及び処理ユニットを共通プラットフォーム上で実現することができる。例えば、本電子回路を、それら処理ユニット、ハードウェアコンポーネント、メモリインタフェース及びネットワークインタフェースが入っているマイクロコントローラ又はシステムオンチップ(SoC)が、備わるものとすることができる。
【0012】
ある種の実現形態によれば、それら処理ユニット及びハードウェアコンポーネントを、本電子回路の更なるインタフェースを介し相互接続することができる。
【0013】
前記ソフトウェアプログラムの実行に備え、前記処理ユニットにより例えばそのソフトウェアプログラムを本電子回路の更なるメモリデバイス、例えば本電子回路に備わる揮発性メモリ及び/又はランダムアクセスメモリに、ロードすることができる。
【0014】
前記通信プロトコルにより、例えば、データ交換用の一種類又は複数種類のサービス、とりわけ前記通信ネットワークを介し少なくとも1個のデータパケットを受信するためのそれを、定義することができる。その通信プロトコルにより、例えば、どの種類のサービスが利用可能であるか、並びにそれらがどのようにして実行されるのかを、定義することができる。こうした通信プロトコルは、既知のもの又は規格化されたものとすることができる。例えば、その通信プロトコルを、産業規格ISO14229にて定められている統一診断サービス(UDS)通信プロトコルとすることができる。とはいえ、他の通信プロトコルを用いることもできる。
【0015】
前記ハードワイヤドロジックがあるので、前記ハードウェアコンポーネントにて、前記少なくとも1個のデータパケットを受信するためのソフトウェアモジュールが必要とされない。とはいえ、他の諸機能を実現するため、そのハードウェアコンポーネントを1個又は複数個のソフトウェアモジュールが備わるものとすることができる。例えば、そのハードウェアコンポーネントを、前記メモリインタフェースを介し前記不揮発性メモリに前記ソフトウェアプログラムを格納するよう適合化又はプログラミングされた、ソフトウェアモジュールが備わるものとすることができる。これに代え、そのハードウェアコンポーネントの機能のうちその不揮発性メモリにそのソフトウェアプログラムを格納する機能が、そのハードワイヤドロジックにより符号化されていてもよい。
【0016】
本発明に係る電子回路では、前記不揮発性メモリに前記ソフトウェアプログラムを格納する機能、例えばその不揮発性メモリ内に存在する旧版ソフトウェアプログラムを更新するためのそれ、言い換えれば新規ソフトウェアバージョンをその不揮発性メモリにフラッシングするためのそれが、前記処理ユニット例えば本電子回路のCPUから前記ハードウェアコンポーネントへとアウトソーシングされる。従ってその処理ユニットにおける処理負荷が低減される。結果として、その処理ユニットにて、自身の全能力を用い更なるソフトウェアプログラム、とりわけそのソフトウェアプログラムの旧バージョンを実行しながら、前記少なくとも1個のデータパケットを前記通信ネットワークから受信することができる。従って、本電子回路の通常動作を、その少なくとも1個のデータパケットを例えばOTA更新を通じ受信している間に、顕著な制約無しで維持することができる。
【0017】
前記少なくとも1個のデータパケットを受信する機能が、ソフトウェアによってではなく前記ハードワイヤドロジックにより符号化されているため、その機能のロバスト性を顕著に高めることができ、且つその更新プロセス全体をより決定論的なものとすることができる。とりわけ、そうしたハードウェア構成を有するハードウェアコンポーネントを様々な目的で標準コンポーネントとして用いうるため、本電子回路の新世代又は新バージョンを開発する際にソフトウェアをプログラミングする労力を、低減することができる。その際に、様々なアプリケーション及び車両製造業者又は供給業者の間で通例は通信プロトコルが規格化されていることを、利用することができる。
【0018】
効果的なことに、前記ハードウェアコンポーネントが前記ハードワイヤドロジックを有しているので、それによって前記処理ユニットのブートローダソフトウェアの機能を継承することや、その処理ユニットのソフトウェアモジュールの別の機能であり前記ソフトウェアプログラムの更新に関わるもの、例えばオーバジエア又は有線ベース要領での更新に関わるものを、継承することができる。
【0019】
注記されることに、前記ハードウェアコンポーネントが前記ハードワイヤドロジックを有していてそれが前記通信プロトコルに対応しているとはいえ、そのハードウェアコンポーネントをなおも付加的に構成設定可能なもの、言い換えれば可調(チューナブル)なものとすることができる。即ち、そのハードウェアコンポーネントの1個又は複数個のビルディングブロックに個別的な可更新(アップデータブル)構成設定情報(コンフィギュレーション)、言い換えれば可調パラメタを組み込むことができる。その可更新構成設定情報又は可調パラメタを、例えば、そのハードウェアコンポーネントの1個又は複数個のコンフィギュレーションレジスタに格納することができる。
【0020】
こうすることで、例えば、本電子回路の識別子即ちID、或いは本電子回路が入っている車両の上位ユニットのそれ、例えばその車両の電子制御ユニット(ECU)のそれを、それら可更新構成設定情報又は可調パラメタとの関わりで格納することができる。その上で、別の識別子即ちIDを別の電子回路の個別ハードウェアコンポーネントに格納することができる。結果として、例えば、ある特定の電子回路又はECU向けのメッセージを識別すること及び他のメッセージを無視することができる。
【0021】
従って、前記ハードワイヤドロジックを前記通信プロトコルに対応するハードワイヤド構成設定情報で以て表すこともできるが、前記可更新構成設定情報又は可調パラメタが更なる目的上排除されるわけではない。
【0022】
幾つかの実現形態では本電子回路が前記不揮発性メモリを備える。
【0023】
ある種の実現形態では本電子回路がマイクロコントローラとして及び/又はSoCとして実現される。
【0024】
本電子回路に前記不揮発性メモリが備わる実現形態では、従って、そのマイクロコントローラ又はSoCをその不揮発性メモリが備わるものとすることができる。
【0025】
これに代わる実現形態には、本電子回路にマイクロコントローラ又はSoCが備わり且つ前記不揮発性メモリが備わるものの、その不揮発性メモリがそのマイクロコントローラ又はSoCの一部分とはされないものがある。こうした実現形態でも、そのマイクロコントローラ又はSoCを、少なくとも前記ハードウェアコンポーネント、前記処理ユニット、前記メモリインタフェース及び前記ネットワークインタフェースが備わるものとすることができる。
【0026】
幾つかの実現形態では前記処理ユニットが中央処理ユニット(CPU)、とりわけ前記マイクロコントローラ又はSoCに備わるCPUとして実現される。
【0027】
幾つかの実現形態では、前記ハードウェアコンポーネントがハードウェアペリフェラル又はハードウェアIPブロックとして実現され又はそれを備えるものとされ、とりわけそれが前記マイクロコントローラ又はSoCに備わるものとされる。
【0028】
前記ハードウェアコンポーネントを、例えばグラフィクス処理ユニット(GPU)、コプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が備わるものとすることができる。
【0029】
幾つかの実現形態では、前記ハードウェアコンポーネントが、前記ハードワイヤドロジックにより前記メモリインタフェースを介し前記不揮発性メモリに前記ソフトウェアプログラムを格納するよう、適合化される。
【0030】
言い換えれば、前記ハードワイヤドロジックにより、前記ハードウェアコンポーネントの機能のうち、前記メモリインタフェースを介し前記不揮発性メモリに前記ソフトウェアプログラムを格納する機能をも、符号化することができる。
【0031】
幾つかの実現形態では、前記ハードウェア構成により前記通信プロトコルに従い一種類又は複数種類のサービスが実現される。
【0032】
その一種類又は複数種類のサービスのなかに、例えば、ダウンロード要求サービス、ファイル転送要求サービス、データ転送サービス及び/又は転送抜け要求サービスを含めることができる。こうしたサービスは例えばUDS通信プロトコルに従い定義されている。これらに対応するサービスID(SID)は、UDS通信プロトコルによれば、順に0x34、0x38、0x36及び0x37である。
【0033】
こうすることで、広範に受け入れられている規格化された通信プロトコルを実現し、本電子回路の使用に関わる柔軟性を高めることができる。
【0034】
幾つかの実現形態では本電子回路がハードウェアセキュリティモジュール(HSM)を備える。前記ハードウェアコンポーネントが、そのHSMに接続されたHSMインタフェースを備える。そのHSMが、前記少なくとも1個のデータパケットを確認するよう、とりわけその少なくとも1個のデータパケットの真正性(信頼性)を確認するよう構成される。
【0035】
そのHSMではそれ自体既知な確認方法を用いることができる。とはいえ、前記ハードウェアコンポーネントを、そのHSMによる前記少なくとも1個のデータパケットの確認を要求するよう適合化させ、その確認の結果に従い前記ソフトウェアプログラムが前記不揮発性メモリに格納されるようにすることもできる。とりわけ、その確認に成功した場合に限り、そのハードウェアコンポーネントによりそのソフトウェアプログラムがその不揮発性メモリに格納されるようにすることができる。
【0036】
前記ハードウェアコンポーネントの機能のうち前記HSMによる確認を要求する機能も、前記ハードワイヤドロジックにより符号化することができる。こうすることでセキュリティを改善することができる。
【0037】
幾つかの実現形態では、前記ネットワークインタフェースがワイヤレスデータ通信用のネットワークインタフェースとして設計される。
【0038】
これに代わる実現形態では、前記ネットワークインタフェースが車両の通信バス用のバスインタフェース、例えばCAN又はCANFDインタフェース或いはEthernet(登録商標)インタフェースとして設計される。
【0039】
本発明の更なる態様では、車両用の電子制御ユニット(ECU)であり本発明の実現形態に係る電子回路を備えるものが、提供される。
【0040】
本発明の更なる態様では車両の電子回路を動作させる方法、とりわけ本発明に係る電子回路を動作させるそれが提供される。本方法では、ソフトウェアプログラムを表す少なくとも1個のデータパケットを、その電子回路のハードウェアコンポーネントによりとりわけその電子回路のネットワークインタフェースを介して通信ネットワークから受信し、但しそのハードウェアコンポーネントに備わるハードワイヤドロジックにより、少なくとも1個のデータパケットを受信するための所定の通信プロトコルが符号化されているものとする。本方法では、そのハードウェアコンポーネントにより、とりわけその電子回路のメモリインタフェースを介し、そのソフトウェアプログラムをその電子回路又はその車両の不揮発性メモリに格納する。本方法では、その電子回路の処理ユニットによりそのソフトウェアプログラムをその不揮発性メモリから読み込んで実行する。
【0041】
本方法の幾つかの実現形態では、前記少なくとも1個のデータパケットが前記ハードウェアコンポーネントにより受信されている間に更なるソフトウェアプログラムが前記処理ユニットにより実行される。
【0042】
前記更なるソフトウェアプログラムたりうるものには、例えば前記ソフトウェアプログラムの旧バージョンがある。こうすることで、そのソフトウェアを更新している間も、前記処理ユニットの通常動作を維持することができる。
【0043】
幾つかの実現形態では、前記少なくとも1個のデータパケットを、とりわけOTA更新プロセス中にワイヤレス要領にて前記通信ネットワークを介しサーバコンピュータから受信する。
【0044】
本方法の幾つかの実現形態では、前記少なくとも1個のデータパケットを、その車両の通信バスを介しその車両外の情報処理デバイスから受信する。
【0045】
本発明に係る方法の更なる実現形態は、本発明に係る電子回路の様々な実施形態の当然な帰結であるし、その逆も成り立つ。とりわけ、本発明に係る電子回路の様々な実現形態に関連する個々の特徴及び対応する説明並びに長所を、本発明に係る方法の対応する実現形態へと相似的に引き写すことができる。具体的には、本発明に係る電子回路は本発明に係る方法を実行するよう設計又はプログラミングされる。具体的には、本発明に係る電子回路により本発明に係る方法が実行される。
【0046】
本発明の更なる特徴は、特許請求の範囲、図面及び図示記述から明白である。本明細書にて上述した諸特徴及び特徴組合せ、並びに図示記述中にて後述され及び/又は図面に示される諸特徴及び特徴組合せを、言及されている個別的な組合せのみならずその他の組合せでも、本発明に備わるものとすることができる。とりわけ、当初作成された請求項の諸特徴を全ては有していない諸実施形態及び特徴組合せも、本発明に備わるものとすることができる。更に、特許請求の範囲における列挙で説明されている諸特徴の組合せを超え又は外れている諸実施形態及び特徴組合せも、本発明に備わるものとすることができる。
【0047】
以下、本発明を、具体的な例示的実現形態及び個々の模式的図面を参照して詳細に説明する。図中、同一又は機能同一の要素を同じ参照符号で表すことがある。別の図面を参照する際に、同一又は機能同一の要素についての記述が反復されるとは限らない。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明に係る電子回路のある例示的実現形態が備わる車両を模式的に示す図である。
【
図2】本発明に係る電子回路の更なる例示的実現形態のブロック構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1に、本発明に係る電子回路3のある例示的実現形態を備える車両1、例えば乗用車を模式的に示す。例えば、電子回路3を車両1の電子制御ユニット(ECU)2の一部分とすることができる。
【0050】
電子回路3は、例えば、ECU2に備わるマイクロコントローラ又はSoCとして実現することができる。実際の実現形態にもよるが、ECU2ひいては電子回路3を様々な目的で用いること、例えば先進運転者支援システム(ADAS)や自律運転システム(ADS)等といった電子車両ガイダンスシステムの一部分として用いることができ、及び/又は、車両1のセンサデバイス4、アクチュエータ、原動機等々を制御するのに用いることができる。
【0051】
図2に、
図1との関連で述べた車両1にて用いられる電子回路3のある例示的実現形態のブロック構成を模式的に示す。
【0052】
電子回路3は、自電子回路3を通信ネットワークに接続するためのネットワークインタフェース7、例えばワイヤレス又は無線ネットワーク或いは車両1の有線ベース通信バスに接続するためのそれを備えている。
【0053】
電子回路3に備わるハードウェアコンポーネント6は、例えばマイクロコントローラ又はSoCのハードウェアペリフェラル又はハードウェアIPブロックであり、これにはハードワイヤドロジック回路又はハードワイヤドロジックが入っている。そのハードワイヤドロジックにより、ハードウェアコンポーネント6の機能のうち、ソフトウェアプログラムを表す少なくとも1個のデータパケットを例えばUDS通信プロトコル等といった所定の通信プロトコルに従いネットワークインタフェース7を介してその通信ネットワークから受信する機能が、符号化されている。
【0054】
電子回路3、とりわけハードウェアコンポーネント6は、更にメモリインタフェース13を備えており、そのメモリインタフェース13が、電子回路3の不揮発性メモリ8に接続され又は接続可能とされ、及び/又は、電子回路3の更なるメモリインタフェース18を介しECU2の不揮発性メモリ17に接続され又は接続可能とされている。ハードウェアコンポーネント6、とりわけそのハードワイヤドロジックは、ネットワークインタフェース13を介し不揮発性メモリ8にソフトウェアプログラムを格納するよう適合化されている。
【0055】
電子回路3は、更に処理ユニット5例えばCPUを備えており、その処理ユニット5が、例えばメモリインタフェース13を介し又は更なるメモリインタフェース(図示せず)を介し不揮発性メモリ8からソフトウェアプログラムを読み込み然るべく実行するよう、構成されている。
【0056】
例えば、ハードウェアコンポーネント6に備わるハードワイヤドロジックを、そのハードウェアコンポーネント6のプロトコル処理ロジックブロック10の態で実現することができる。更に、ある種の実現形態によれば、ハードウェアコンポーネント6に備わるバッファ11によって、前記少なくとも1個のデータパケットの諸部分を、それが通信ネットワークから受信された後に不揮発性メモリ8に格納される前まで中間格納することができる。
【0057】
ある種の実現形態によれば、ハードウェアコンポーネント6を更にパケットフィルタモジュール12が備わるものとし、そのパケットフィルタモジュール12を介しネットワークインタフェース7にプロトコル処理ロジックブロック10を接続することができる。
【0058】
ある種の実現形態によれば、ハードウェアコンポーネント6をCPUインタフェース15が備わるものとし、それによりハードウェアコンポーネント6を処理ユニット5に接続することもできる。この場合、その処理ユニット5により、例えばハードウェアコンポーネント6の付加的コンフィギュレーションを設定することで例えば不揮発性メモリ8での格納個所を定め、そこにハードウェアコンポーネント6によりソフトウェアプログラムが格納されるようにすることができる。
【0059】
ある種の実現形態では、本電子回路がハードウェアセキュリティモジュール(HSM)9を備えるものとされ、ハードウェアコンポーネント6がHSMインタフェース14を備えるものとされ、そのHSMインタフェース14によりHSM9がプロトコル処理ロジックブロック10に接続される。従って、前記少なくとも1個のデータパケットに含まれるデータパケットが受信された後に、プロトコル処理ロジックブロック10から、HSM9によるそのデータパケットの確認を要求することができる。これに代え、その確認が、前記少なくとも1個のデータパケットに含まれるデータパケットが受信された後にしか要求されないようにしてもよい。
【0060】
注記されることに、プロトコル処理ロジックブロック10のほか、ハードウェアコンポーネント6の他のビルディングブロック、例えば付加的なメモリインタフェース13、HSMインタフェース14、CPUインタフェース15及び/又はパケットフィルタモジュール12にも、それら自身の個別タスクを実行するよう適合化された個別的な更なるハードウェア論理回路を入れることができる。
【0061】
とはいえ、ハードウェアコンポーネント6は、その通信プロトコルに対応するハードワイヤドロジックのほかにも、構成設定可能なコンフィギュレーション又は個別可調パラメタが、例えばハードウェアコンポーネント6内の1個又は複数個のコンフィギュレーションレジスタ16にて提供されうるという意味で、構成設定可能又は可調なものである。
【0062】
とりわけ図面との関連で述べた通り、本発明のある種の実現形態によれば、既存ソフトウェアプログラムを更新するためマイクロコントローラ又はSoC或いはECUに備わっているブートローダ機能を、そのCPUとは別体なハードウェアコンポーネント内ハードワイヤドロジックにより置換することができる。従って、CAN、CANFD又はEthernet(登録商標)上での標準的なUDSフラッシングシーケンスを一般的な要領で実現することができる。
【0063】
前記ハードウェアコンポーネントに備わるハードワイヤドロジックにより、関連する診断識別子(DID)及び/又は応答識別子(RID)でありそのフラッシングシーケンスを担うものを自動受信し、前記ソフトウェアプログラムを表すその受信画像を前記不揮発性メモリ例えばフラッシュメモリ内の割当個所に書き込むこと、例えばそれを確認した後にそうすることができる。
【0064】
従って開発コスト及び労力を低減することができる。ブートローダ機能をハードウェアによって実現することにより、それを高度に標準化されていて無エラーなものとすることができる。
【0065】
更に、本発明の諸実現形態によれば、前記少なくとも1個のデータパケットによってOTA画像を受信している間もその処理ユニット又はCPU上で通常動作を実行し続けることができる。従って、そのCPUの性能が減じることを避けることができる。言い換えれば、そのOTA更新機能をCPUから降ろしてハードウェアコンポーネントに移すことができる。従って、そのOTA機能がより決定論的なものになりうる。
【0066】
ある種の実現形態によれば、前記ハードウェアコンポーネントを前記ネットワークインタフェース又はネットワークコントローラと前記メモリインタフェース又はメモリコントローラとに直結すること、ひいては前記少なくとも1個のデータパケットに関わる画像が受信されそれが前記不揮発性メモリの冗長パーティション内に書き込まれるようにすることができる。
【0067】
本発明の諸実現形態を用いeSyncコンパチブルなOTAソフトウェア更新を実現することもできる。そのeSyncコンプライアンスを、例えばUNECE WP.29 UN-R156なる規則により指定することができる。前記ハードウェアコンポーネントにて、例えば、前記ネットワークインタフェースを介し直に、対応するeSyncメッセージを受信することができる。
【0068】
パケットフィルタを、例えば、それらeSyncメッセージのみを前記ハードウェアコンポーネントへとルーティングしそのデータトラフィックの残りを前記CPUへとルーティングするよう設け且つ構成することができる。そのハードウェアコンポーネントにてそれらeSyncメッセージが受信されたら、そこでそれらを処理し、前記メモリインタフェースを介して前記不揮発性メモリへと新たな画像を引き渡すことができる。
【外国語明細書】