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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180090
(43)【公開日】2023-12-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20231213BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231213BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 303
B41J2/01 307
B41J2/17 201
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093203
(22)【出願日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥爾
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸昌
(72)【発明者】
【氏名】荒川 悠太
(72)【発明者】
【氏名】白井 陽久
(72)【発明者】
【氏名】法亢 昌広
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA27
2C056EB11
2C056EB13
2C056EB36
2C056EB37
2C056EC03
2C056EC11
2C056EC28
2C056EC35
2C056EC37
2C056EC54
2C056FA10
2C056HA29
2C056JA01
2C056JC13
(57)【要約】
【課題】適正な位置で記録ヘッドからのインクの空吐出を行うことが可能な画像形成システムを提供する。
【解決手段】コントローラは、移動体30を移動方向に沿って移動させる。移動体30は、記録ヘッド21及び検知部25が搭載されている。検知部25は、インク受け部55に固定された被検知部56,57を検知する。インク受け部55は、フラッシング時に記録ヘッド21から吐出されるインクを受ける。コントローラは、移動体30の移動中に検知部25によって被検知部56,57が検知された時の、移動体30の位置を、エンコーダ33からの信号に基づいて取得する。コントローラは、取得された移動体30の位置に基づいて、フラッシングの開始タイミングを決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータにより所定の移動方向に沿って移動されるように構成された移動体と、
前記移動体に搭載され、前記移動体と共に移動されながらシートにインクを吐出して画像を形成するように構成された記録ヘッドと、
フラッシングの実行時に前記記録ヘッドから吐出されたインクを受けるように構成され、前記移動体の移動と共に移動されないように固定された、インク受け部と、
前記インク受け部に直接または間接的に固定された被検知部と、
前記移動体に搭載され、前記被検知部を検知するように構成された検知部と、
前記モータの回転量または前記移動体の移動量に応じた信号を出力するように構成されたエンコーダと、
前記エンコーダからの前記信号に基づいて前記移動体の位置を検出するように構成された位置検出部と、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記移動体を前記移動方向に沿って移動させる移動処理と、
前記移動処理による前記移動体の移動中に前記検知部によって前記被検知部が検知された時の、前記移動体の位置を、前記位置検出部から取得する位置取得処理と、
前記位置取得処理により取得された前記移動体の位置に基づいて、前記フラッシングの開始タイミングを決定する決定処理と、
前記決定処理により決定された前記開始タイミングに従って前記フラッシングを開始するフラッシング処理と、
を実行するように構成された、画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記決定処理は、前記開始タイミングとして、前記フラッシングを開始する際の前記移動体の位置であるフラッシング開始位置を決定し、
前記フラッシング処理は、前記決定処理により決定された前記フラッシング開始位置で前記フラッシングを開始する、
画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記フラッシング処理は、前記移動体を前記移動方向へ移動させることにより前記移動体が基準位置に到達したことに応じて、前記移動体の移動を継続させつつ、前記基準位置への到達タイミングから規定時間経過後に前記フラッシングを開始し、
前記決定処理は、前記開始タイミングとして、前記規定時間を決定する、
画像形成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記決定処理は、前記位置取得処理により取得された前記移動体の位置と、前記検知部によって前記被検知部が検知されるべき前記移動体の設計上の位置と、の差である位置偏差に基づいて、前記フラッシング開始位置を決定する、
画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置であって、
前記決定処理は、前記フラッシングを開始するように予め決められた前記移動体の設計上の位置である理論開始位置を前記位置偏差に基づいて補正することにより前記フラッシング開始位置を決定する、
画像形成装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の画像形成装置であって、
前記移動処理は、
前記検知部で前記被検知部が検知されるように前記移動体を前記移動方向へ移動させ、その後前記移動体を前記移動方向における前記インク受け部よりも上流側に向けて前記移動方向とは反対方向へ移動させる第1の移動処理と、
前記第1の移動処理の実行後、前記記録ヘッドが前記インク受け部を通過するように前記移動体を前記移動方向へ移動させる第2の移動処理と、
を含み、
前記位置取得処理は、前記第1の移動処理による前記移動体の前記移動方向への移動中に前記検知部によって前記被検知部が検知されたときの前記移動体の位置を前記位置検出部から取得し、
前記フラッシング処理は、前記第2の移動処理による前記移動体の移動中に前記フラッシングを開始する、
画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置であって、
前記コントローラは、
前記シートへ前記画像を形成する際、前記画像の形成に先立って、前記画像の形成とは別の特定の目的で前記移動体を前記移動方向へ往復移動させる事前処理、
を実行するように構成されており、
前記第1の移動処理は、前記事前処理における前記移動体の前記往復移動に含まれる、
画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置であって、
前記検知部は、前記シートを検知可能に構成されており、
前記特定の目的は、前記検知部による前記シートの検知結果に基づいて、前記シートの有無及び/または前記シートの前記移動方向の幅を検出することを含む、
画像形成装置。
【請求項9】
請求項6に記載の画像形成装置であって、
前記被検知部とは別に設けられ、前記インク受け部に直接または間接的に固定された別の被検知部、をさらに備える、画像形成装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成装置であって、
前記被検知部は、前記インク受け部よりも前記移動方向の上流側に配置されており、
前記別の被検知部は、前記インク受け部よりも前記移動方向の下流側に配置されている、
画像形成装置。
【請求項11】
請求項9に記載の画像形成装置であって、
前記位置取得処理は、前記検知部により前記被検知部が検知されたときの前記移動体の位置である第1検知位置と、前記検知部により前記別の被検知部が検知されたときの前記移動体の位置である第2検知位置とを、前記位置検出部から取得し、
前記決定処理は、第1位置偏差と第2位置偏差とに基づいて前記フラッシング開始位置を決定し、前記第1位置偏差は、前記第1検知位置と前記検知部によって前記被検知部が検知されるべき設計上の前記移動体の位置との差であり、前記第2位置偏差は、前記第2検知位置と前記検知部によって前記別の被検知部が検知されるべき設計上の前記移動体の位置との差である、
画像形成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成装置であって、
前記決定処理は、式(1)及び式(2)に基づき、これら式(1)及び式(2)を満たす前記フラッシング開始位置を決定する、画像形成装置。
【数1】
【請求項13】
請求項11に記載の画像形成装置であって、
前記フラッシング処理は、前記フラッシング開始位置から、前記記録ヘッドから前記インクを吐出する吐出動作を所定周期で所定回数実行することを含み、
前記決定処理は、前記第1位置偏差及び前記第2位置偏差に基づいて、前記所定周期及び/または前記所定回数を決定することを含む、
画像形成装置。
【請求項14】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記被検知部は、前記インク受け部よりも前記移動方向の上流側に配置される、画像形成装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像形成装置であって、
前記移動処理は、前記移動体を前記移動方向へ片道移動させることを含み、
前記位置取得処理、前記決定処理及び前記フラッシング処理は、前記移動処理により前記移動体が前記移動方向へ連続的に片道移動されている間に実行される、
画像形成装置。
【請求項16】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記インク受け部を支持している支持部をさらに備え、
前記被検知部は、前記支持部に固定されている、
画像形成装置。
【請求項17】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記移動方向に沿って且つ前記記録ヘッドと対向するように延設されたプラテンをさらに備え、
前記インク受け部及び前記被検知部は、前記プラテンに固定されている、
画像形成装置。
【請求項18】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記シートへの画像形成が行われていない期間に前記移動体が待機される所定の待機位置に設けられ、前記記録ヘッドを覆うように構成されたキャッピング機構を備え、
前記インク受け部は、前記キャッピング機構に設けられており、
前記被検知部は、前記キャッピング機構に固定されている、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているインクジェット記録装置は、記録ヘッドからインクの空吐出を行う機能を備える。インクの空吐出は、画像記録時のインク吐出不良を防止するために行われる。また、インクの空吐出は、主走査方向における非印字領域に設けられた維持回復機構まで記録ヘッドが搬送されて行われる。維持回復機構には空吐出受けが設けられており、この空吐出受けが、記録ヘッドから空吐出されたインクを受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-179503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のインクジェット記録装置では、空吐出受けの実際の位置が設計上の規定位置からずれていたり、空吐出受けの実際の寸法が設計上の規定寸法からずれていたりすると、空吐出受けの外部へインクが吐出されてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本開示の一局面は、適正な位置で記録ヘッドからのインクの空吐出を行うことが可能な技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面における画像形成装置は、モータと、移動体と、記録ヘッドと、インク受け部と、被検知部と、検知部と、エンコーダと、位置検出部と、コントローラとを備える。
【0007】
移動体は、モータにより所定の移動方向に沿って移動される。記録ヘッドは、移動体に搭載される。記録ヘッドは、移動体と共に移動されながらシートにインクを吐出して画像を形成する。インク受け部は、フラッシングの実行時に記録ヘッドから吐出されたインクを受ける。被検知部は、インク受け部に直接または間接的に固定されている。検知部は、移動体に搭載される。検知部は、被検知部を検知する。エンコーダは、モータの回転量または移動体の移動量に応じた信号を出力する。位置検出部は、エンコーダからの信号に基づいて移動体の位置を検出する。
【0008】
コントローラは、移動処理と、位置取得処理と、決定処理と、フラッシング処理とを実行する。移動処理は、移動体を移動方向に沿って移動させる。位置取得処理は、移動処理による移動体の移動中に検知部によって被検知部が検知された時の、移動体の位置を、位置検出部から取得する。決定処理は、位置取得処理により取得された移動体の位置に基づいて、フラッシングの開始タイミングを決定する。フラッシング処理は、決定処理により決定された開始タイミングに従ってフラッシングを開始する。
【0009】
このような画像形成装置では、インク受け部に直接又は間接的に固定された被検知部の実際の位置が、位置取得処理によって取得される。そして、その取得された実際の位置に基づいて、フラッシングの開始タイミングが決定される。したがって、適正なタイミングでフラッシングを開始することができる。即ち、フラッシング実行時にインク受け部へ適切にインクを吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の画像形成システムの構成を表すブロック図である。
図2】キャリッジ搬送機構及び用紙搬送機構の構成を表す説明図である。
図3】フラッシング時に生じ得る問題を説明するための説明図である。
図4】フラッシング開始位置の補正演算の手順の概要を表す説明図である。
図5】印刷制御処理のフローチャートである。
図6】画像形成システムの第1の変形例を示す説明図である。
図7】画像形成システムの第2の変形例を示す説明図である。
図8】画像形成システムの第3の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[1.実施形態]
(1)画像形成システムの構成
図1に示す本実施形態の画像形成システム1は、インクジェットプリンタとして構成されている。画像形成システム1は、メインコントローラ10と、通信インタフェース15と、印刷コントローラ20と、搬送コントローラ40とを備える。
【0012】
メインコントローラ10は、CPU11と、記憶部12とを備える。記憶部12は、各種のプログラム及びデータなどを記憶可能である。記憶部12は、例えば、ROM及びRAMを備える。ROMは、各種プログラムを記憶している。CPU11は、これらプログラムに従う処理を実行する。RAMは、CPU11による処理実行時に作業領域として使用される。記憶部12は、さらに、記憶内容を電気的に書き換え可能な不揮発性の記憶媒体(例えばNVRAM)を備えていてもよい。NVRAMは、画像形成システム1の電源オフ時にも保持しておく必要のあるデータが記憶される。NVRAMはプログラムが記憶されてもよい。
【0013】
CPU11は、記憶部12に記憶されているプログラムに従う処理を実行することにより、画像形成システム1内の各部を統括制御し、各種機能を実現する。以下では、CPU11が実行する処理のことを、メインコントローラ10が実行する処理として説明する。
【0014】
通信インタフェース15は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置5とデータ通信可能に構成されている。通信インタフェース15は、例えば、USB通信、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信、有線LAN又は無線LANなどの通信方式に従って情報処理装置5と通信可能であってもよい。
【0015】
メインコントローラ10は、通信インタフェース15を介して外部の機器(例えば情報処理装置5)から印刷対象の画像データを受信すると、その画像データに基づく画像が用紙Q(図2参照)に形成されるように、印刷コントローラ20及び搬送コントローラ40に各種指令を入力する。
【0016】
画像形成システム1は、記録ヘッド21と、インクタンク22と、ヘッド駆動回路23と、メディアセンサ25と、キャリッジ搬送機構26と、CRモータ31と、第1モータ駆動回路32と、第1エンコーダ33と、第1信号処理回路34とを更に備える。キャリッジ搬送機構26は、キャリッジ30を備え、キャリッジ30を主走査方向へ往復移動させる。キャリッジ30は、記録ヘッド21及びメディアセンサ25を搭載している。キャリッジ30が移動すると、記録ヘッド21及びメディアセンサ25もキャリッジ30と共に移動する。記録ヘッド21は、用紙Qに向けてインクを吐出する。メディアセンサ25は、用紙Qを検出する。メディアセンサ25は、本実施形態ではさらに、後述する第1被検知部56及び第2被検知部57(図2参照)を検出する。
【0017】
CRモータ31は、キャリッジ30の駆動源である。印刷コントローラ20は、メインコントローラ10からの指令に従ってCRモータ31を制御することにより、キャリッジ搬送機構26によるキャリッジ30の搬送を制御する。印刷コントローラ20は、更に、メインコントローラ10からの指令に従って、記録ヘッド21によるインクの吐出動作を制御する。これらの制御によって、印刷コントローラ20は、上記画像を用紙Qに形成する。
【0018】
インクタンク22は、インクが充填されている。インクタンク22は、本実施形態では、キャリッジ30には搭載されず、画像形成システム1における所定位置に配置されている。記録ヘッド21は、インクタンク22とチューブ(不図示)を介して接続されている。記録ヘッド21は、インクタンク22からチューブを介してインクが供給され、そのインクを吐出する。
【0019】
ヘッド駆動回路23は、印刷コントローラ20からの制御信号に従って、記録ヘッド21を駆動する。キャリッジ搬送機構26は、CRモータ31が発生する回転力をキャリッジ30に伝達する。キャリッジ30は、CRモータ31及びキャリッジ搬送機構26によって、主走査方向に沿って往復移動される。主走査方向は、副走査方向に直交する。副走査方向は、後述する用紙搬送機構41による用紙Qの搬送方向である。
【0020】
CRモータ31は、例えば直流モータの形態である。第1モータ駆動回路32は、印刷コントローラ20から入力される操作量に対応する駆動電力をCRモータ31に供給することにより、CRモータ31を駆動する。
【0021】
第1モータ駆動回路32は、例えば、操作量に対応する電圧又は電流をCRモータ31に印加して、CRモータ31を駆動してもよい。また例えば、第1モータ駆動回路32は、PWM(パルス幅変調)制御によりCRモータ31を駆動してもよい。
【0022】
第1エンコーダ33は、主走査方向におけるキャリッジ30の変位に応じた信号(以下、第1エンコーダ信号)を出力する。本実施形態の第1エンコーダ33は、ロータリエンコーダの形態である。第1信号処理回路34は、第1エンコーダ33から入力された第1エンコーダ信号に基づき、後述するように、主走査方向におけるキャリッジ30の位置Px及び速度Vxを検出する。第1信号処理回路34により検出されたキャリッジ30の位置Px及び速度Vxは、印刷コントローラ20及びメインコントローラ10に入力される。なお、ここでいるキャリッジ30の位置Pxとは、文字通りキャリッジ30自体の位置であってもよいし、キャリッジ30自体の位置を間接的に示す位置であってもよい。具体的には、キャリッジ30に搭載されている特定の部材(例えばインクが吐出されるノズル)の位置であってもよい。
【0023】
印刷コントローラ20は、メインコントローラ10からの指令に従うキャリッジ30の搬送制御を実現するように、第1信号処理回路34から入力されるキャリッジ30の位置Px及び速度Vxに基づき、CRモータ31に対する操作量を決定し、CRモータ31を制御する。
【0024】
印刷コントローラ20は、更に、第1信号処理回路34から入力されたキャリッジ30の位置Pxに基づき、メインコントローラ10からの指令に従うインクの吐出制御を実現するための制御信号を、ヘッド駆動回路23に入力する。これにより、印刷対象の画像を用紙Qに形成するためのインクが、記録ヘッド21から用紙Qへ吐出される。
【0025】
画像形成システム1は、用紙搬送機構41と、PFモータ43と、第2モータ駆動回路44と、第2エンコーダ45と、第2信号処理回路46とを更に備える。搬送コントローラ40は、メインコントローラ10からの指令に従って、PFモータ43を制御することにより、用紙Qの搬送を制御する。
【0026】
図1図2に示すように、用紙搬送機構41は、搬送ローラ42を備える。搬送ローラ42は、記録ヘッド21よりも副走査方向上流側において、主走査方向に延設するように配置されている。搬送ローラ42は、PFモータ43からの回転力を受けて回転することにより、より上流から搬送されてくる用紙Qを、副走査方向下流側へ搬送する。用紙Qは、記録ヘッド21の動作に合わせて、即ち記録ヘッド21により画像が形成されながら、副走査方向に搬送される。
【0027】
PFモータ43は、例えば直流モータの形態である。第2モータ駆動回路44は、搬送コントローラ40から入力される操作量に従う駆動電力をPFモータ43に印加することにより、PFモータ43を駆動する。第2エンコーダ45は、本実施形態ではロータリエンコーダの形態である。第2エンコーダ45は、例えば、PFモータ43の回転軸又は搬送ローラ42の回転軸に配置されている。第2エンコーダ45は、その配置されている回転軸の回転に応じた信号(以下、第2エンコーダ信号)を出力する。
【0028】
第2信号処理回路46は、第2エンコーダ45から入力される第2エンコーダ信号に基づき、搬送ローラ42の回転量及び回転速度を検出する。搬送ローラ42の回転量及び回転速度は、搬送ローラ42の回転により搬送される用紙Qの搬送量及び搬送速度に対応する。
【0029】
第2信号処理回路46により検出された回転量及び回転速度は、搬送コントローラ40に入力される。搬送コントローラ40は、第2信号処理回路46から入力された回転量及び回転速度に基づき、PFモータ43に対する操作量を決定して、PFモータ43を制御する。これにより、搬送コントローラ40は、搬送ローラ42による用紙Qの搬送を制御する。
【0030】
キャリッジ搬送機構26の具体的構成について、図2を参照して説明する。キャリッジ搬送機構26は、キャリッジ30と、ベルト機構27と、第1ガイドレール28と、第2ガイドレール29とを備える。ベルト機構27は、駆動プーリ27aと、従動プーリ27bと、ベルト27cとを備える。駆動プーリ27a及び従動プーリ27bは、主走査方向に沿って配列されている。ベルト27cは、駆動プーリ27aと従動プーリ27bとの間に巻回されている。
【0031】
キャリッジ30は、ベルト27cに固定されている。ベルト機構27では、駆動プーリ27aが、CRモータ31からの回転力を受けて回転する。駆動プーリ27aの回転に伴い、ベルト27c及び従動プーリ27bが従動回転する。
【0032】
第1,第2ガイドレール28,29は、主走査方向に沿って延設されている。第1,第2ガイドレール28,29は、互いに副走査方向に離間して配置されている。ベルト機構27は、例えば第1ガイドレール28に配置されている。第1,第2ガイドレール28,29には、例えば、主走査方向に沿って延びる凸状の壁(不図示)が形成されている。この壁は、キャリッジ30の移動方向を主走査方向に規制する。
【0033】
キャリッジ30は、第1,第2ガイドレール28,29によって移動方向を規制されながら、ベルト27cの回転に連動して、第1,第2ガイドレール28,29上を主走査方向に沿って移動する。記録ヘッド21及びメディアセンサ25は、キャリッジ30の移動に伴って、キャリッジ30と一体的に主走査方向に沿って移動する。
【0034】
画像形成システム1は、図2に示すように、プラテン50を更に備える。プラテン50は、用紙搬送機構41により搬送される用紙Qを支持する。即ち、用紙Qはプラテン50上を搬送される。プラテン50の主走査方向の長さは、用紙Qの主走査方向の長さよりも長い。
【0035】
プラテン50は、記録ヘッド21から吐出されたインクが用紙Qに着弾した時の、用紙Qにおけるその着弾位置が、プラテン50上に存在するように、形成および配置されている。本実施形態では、プラテン50は、図2に例示するように、副走査方向においては、第1ガイドレール28の裏側から第2ガイドレール29の裏側まで延設されている。
【0036】
第1エンコーダ33は、被検出回転体に配置されている。被検出回転体は、当該被検出回転体の回転とキャリッジ30の移動とが同期または互いに追従するように構成されたどのような回転体であってもよい。つまり、キャリッジ30は被検出回転体の回転と共に移動する。被検出回転体は、例えばCRモータ31(詳しくはCRモータ31の回転軸)、駆動プーリ27aまたは従動プーリ27bであってもよい。本実施形態では、被検出回転体は例えばCRモータ31であり、図2に示すように、CRモータ31に第1エンコーダ33が設けられている。
【0037】
第1エンコーダ33は、より具体的には、円盤状のスケール(不図示)と、光学センサ(不図示)とを備える。スケールは、その中心が被検出回転体の回転軸上に配置されるようにして、被検出回転体に固定されている。つまり、スケールは被検出回転体と共に一体的に回転する。
【0038】
スケールは、スリット列(不図示)を備える。スリット列は、スケールの全周に渡って且つ周方向に沿って互いに等間隔で配置された、複数のスリットを含む。
光学センサは、画像形成システム1の筐体内において、スリット列と対向するように固定配置されている。光学センサは、スリットの有無を検知する検知位置を有する。各スリットは、スケールが回転すると検知位置を通過する。光学センサは、主走査方向におけるキャリッジ30の変位に応じた第1エンコーダ信号を出力する。第1エンコーダ信号は、スリットが光学センサの検知位置を通過するたびに出力されるパルスを含む。
【0039】
本実施形態の光学センサは、スリットが検知位置を通過している間にハイレベル信号を出力し、検知位置にスリットが存在していない間はローレベル信号を出力する。これにより、スリットが光学センサを通過する事象の発生に応じたパルス状の第1エンコーダ信号が出力される。第1エンコーダ信号はアナログ信号である。第1エンコーダ信号は、第1信号処理回路34に入力される。
【0040】
なお、画像形成システム1は、2つの光学センサを備えていてもよい。この場合、2つの光学センサをそれぞれA相センサ、B相センサと称する。また、A相センサの検知位置をA相検知位置、B相センサの検知位置をB相検知位置と称する。また、A相センサからの第1エンコーダ信号をA相エンコーダ信号、B相センサからの第1エンコーダ信号をB相エンコーダ信号と称する。A相センサ及びB相センサは、スリットの配列方向に沿って(即ちスケールの周方向に沿って)互いに離間して配置されている。即ち、A相検知位置とB相検知位置とは、スケールの周方向に沿って互いに離間している。そのため、A相エンコーダ信号とB相エンコーダ信号とは互いに位相がπ/2異なる。A相エンコーダ信号及びB相エンコーダ信号は、第1信号処理回路34に入力される。本実施形態では、一例として、第1エンコーダ33がA相センサ及びB相センサを備えているものとして説明する。
【0041】
第1信号処理回路34は、A相エンコーダ信号及びB相エンコーダ信号それぞれのパルスエッジを検出する。パルスエッジは、ローレベルからハイレベルへ変化する(立ち上がる)立ち上がりエッジと、ハイレベルからローレベルへ変化する立ち下がりエッジを含む。
【0042】
第1信号処理回路34は、A相エンコーダ信号及びB相エンコーダ信号のうちのいずれか一方のパルスエッジが検出される度にパルスエッジのカウントを行う。具体的には、いずれか一方のパルスエッジが検出される度に、その検出時における他方の信号レベルに応じて、パルスエッジのカウント値をカウントアップ(インクリメント)またはカウントダウン(デクリメント)する。例えば、キャリッジ30が主走査方向へ移動している際はパルスエッジが検出される毎にカウント値がカウントアップされ、キャリッジ30が主走査方向とは逆方向(以下、「ホーム方向」と称する)へ移動している際はパルスエッジが検出される毎にカウント値がカウントダウンされてもよい。カウント値は、所定のクリア条件が成立した場合に初期値(例えばゼロ)にクリアされてもよい。所定のクリア条件は、例えば、キャリッジ30が後述するホームポジションに移動されたこと、を含んでいてもよい。
【0043】
第1信号処理回路34は、カウント値に基づいて、キャリッジ30の位置Px(以下、「検出位置Px」と称する)を検出し、印刷コントローラ20へ出力する。第1信号処理回路34は、さらに、A相エンコーダ信号のパルスエッジが検出された時間間隔、またはB相エンコーダ信号のパルスエッジが検出された時間間隔に基づいて、キャリッジ30の速度Vx(以下、「検出速度Vx」と称する)を検出する。第1信号処理回路34は、検出した検出速度Vxを印刷コントローラ20へ出力する。
【0044】
図2に示すように、画像形成システム1は、更に、フラッシングガイド55と、サポートフレーム58と、第1被検知部56と、第2被検知部57とを備える。本実施形態では、フラッシングが行われることがある。フラッシングとは、記録ヘッド21から用紙Qとは異なる所定領域へインクを吐出する動作に対応する。フラッシングの目的の1つは、記録ヘッド21におけるインクが吐出されるノズルに付着している、乾燥したインクを、排出することにある。
【0045】
フラッシングガイド55は、本実施形態では例えば、キャリッジ30の搬送路における、用紙Qが搬送される領域よりも主走査方向下流側に配置されている。より具体的には、本実施形態のフラッシングガイド55は、キャリッジ30の搬送路における、プラテン50よりも主走査方向下流側に配置されている。サポートフレーム58は、画像形成システムにおける例えば筐体の一部に固定されている。あるいは、サポートフレーム58自体が筐体の一部であってもよい。サポートフレーム58は、フラッシングガイド55を固定及び支持している。
【0046】
フラッシングガイド55は、フラッシング時に記録ヘッド21から吐出されたインクを受ける受け皿として機能する。より詳しくは、本実施形態のフラッシングガイド55には、インク吸収材59が設けられている。フラッシング時に吐出されるインクは、より詳しくは、インク吸収材59に着弾(即ち付着)する。インク吸収材59は、フラッシング時に吐出されたインクを吸収または吸着可能な、どのような形状、大きさ、材質を有していてもよい。インク吸収材59は、例えばスポンジ状の材質を有していてもよい。フラッシングガイド55は、インク吸収材59を支持する。フラッシングガイド55はさらに、フラッシング時に吐出されたインクやインク吸収材59に吸収されたインクがフラッシングガイド55の周囲に漏れるのを抑制する。このような機能を発揮するために、フラッシングガイド55は、例えば、所定の深さを有する皿状の形状を備えていてもよい。
【0047】
本実施形態の画像形成システム1では、フラッシング時に吐出されたインクがインク吸収材59を外れたとしても、それがフラッシングガイド55内であれば許容される。そのため、本実施形態では、フラッシング時に吐出されるインクがフラッシングガイド55を外れないように、後述の各種補正演算が行われる。
【0048】
また、本実施形態では、インク吸収材59を含むフラッシングガイド55全体が本開示におけるインク受け部の一例に相当する。ただし、本開示におけるインク受け部は、どのような形態で実現されてもよい。例えば、インク吸収材59は、フラッシングガイド55に着脱可能であってもよい。また例えば、インク吸収材59は、フラッシングガイド55に一体的に設けられていてもよい。具体的には、例えば、フラッシングガイド55は、その一部がインク吸収材59として機能するように構成されていてもよい。逆に、後で図7図8を参照して説明するように、インク吸収材59が単独で(つまりフラッシングガイド55を伴わずに)設けられてもよい。その場合は、インク吸収材59が本開示のインク受け部の一例として機能する。
【0049】
本実施形態では、フラッシングが行われる際、キャリッジ30が主走査方向へ移動される。そして、キャリッジ30が所定のフラッシング開始位置に到達した時にフラッシングが開始される。
【0050】
フラッシングはどのように行われてもよいし、フラッシングの終了タイミングはどのように決定されてもよい。例えば、フラッシングは、フラッシング開始位置からキャリッジ30が主走査方向へ所定距離移動するまで行われてもよいし、フラッシング開始位置からキャリッジ30を主走査方向へ移動させつつ所定時間経過するまで行われてもよい。また、フラッシングにおけるインクの吐出は、連続的に行われてもよいし断続的に行われてもよい。本実施形態のフラッシングでは、一例として、フラッシング開始位置から、キャリッジ30を主走査方向へ移動(例えば定速移動)させながら、所定の周期(以下、「フラッシング周期」と称する)で所定回数(以下、「吐出発数」と称する)、記録ヘッド21からインクを吐出させる。
【0051】
第1,第2被検知部56,57はそれぞれ、本実施形態では、主走査方向に沿うフラッシングガイド55の両端に設けられている。具体的には、第1被検知部56はフラッシングガイド55における主走査方向上流側の端部に設けられ、第2被検知部57はフラッシングガイド55における主走査方向下流側の端部に設けられている。第1,第2被検知部56,57は、前述の通り、メディアセンサ25によって検知される。第1,第2被検知部56,57は、メディアセンサ25に直接固定されていてもよいし、メディアセンサ25に間接的に固定されていてもよい。
【0052】
第1,第2被検知部56,57は、主走査方向におけるフラッシングガイド55の実際の位置(詳しくは実際の両端位置)を検出するために設けられている。第1,第2被検知部56,57は、メディアセンサ25からメインコントローラ10に入力される後述の検出信号に基づいてメインコントローラ10により検出される。
【0053】
メディアセンサ25は、キャリッジ30における下面(プラテン50に対向する面)において、プラテン50に対向するように設けられている。メディアセンサ25は、用紙Qや第1,第2被検知部56,57などの検知対象を検知する。メディアセンサ25は、発光部(不図示)と受光部(不図示)とを備える。発光部は、例えば発光ダイオードなどの発光素子を含む。受光部は、光を受け、その受光量を示す検出信号を出力する。
【0054】
メインコントローラ10は、検知対象を検知すべき期間に、発光部へ発光指示を出力する。発光指示は、発光量を含む。発光部は、メインコントローラ10から発光指示を受けると、指示された発光量の光を所定の発光方向へ照射する。発光方向は、例えば、プラテン50上の用紙Qに垂直または略垂直であって且つプラテン50に向かう方向である。
【0055】
発光部からの照射光は、プラテン50或いはプラテン50に支持された用紙Qなどの物体で反射され、その反射光が受光部で受光される。本実施形態では、照射光は、第1,第2被検知部56,57にも照射されて第1,第2被検知部56,57で反射され得る。
【0056】
受光部による反射光の受光量は、発光部から検知対象までの距離や、検知対象の形状、材質、色などの物理的特性などによって異なる。メディアセンサ25は、受光部の受光量を示す検出信号をメインコントローラ10へ出力する。例えば、メディアセンサ25は、受光量が大きいほど電圧が高くなるような検出信号をメインコントローラ10へ出力する。
【0057】
メインコントローラ10は、メディアセンサ25から入力された検知信号に基づいて、検知対象を検知する。メインコントローラ10は、検知信号に基づいてどのような方法で検知対象を検知してもよい。例えば、検知対象毎に受光量範囲が設定されていてもよい。そして、メインコントローラ10は、検知信号が示す受光量がどの検知対象の受光量範囲に含まれているかによって、検知対象を判別してもよい。また例えば、検知対象毎に受光量の変化量の範囲が設定されていてもよい。そして、メインコントローラ10は、いずれかの検知対象の受光量変化量の範囲に含まれるような受光量の変化が生じた場合に、当該検知対象を検知してもよい。
【0058】
プラテン50上を用紙Qが搬送されている時、メインコントローラ10は、メディアセンサ25からの検知信号に基づいて、用紙Qの存在および幅(即ち主走査方向の長さ)を検出する。メインコントローラ10は、さらに、フラッシングを実行する前に、メディアセンサ25からの検知信号に基づいて、第1,第2被検知部56,57を検出する。
【0059】
メインコントローラ10は、第1被検知部56が検知された時の検出位置Pxである第1検出位置Px1と第2被検知部57が検知された時の検出位置Pxである第2検出位置Px2とに基づいて、フラッシングガイド55の第1端位置及び第2端位置を検知する。第1端位置は、フラッシングガイド55における主走査方向上流側の端部の位置に対応し、第2端位置は、フラッシングガイド55における主走査方向下流側の端部の位置に対応する。以下、検出位置Pxに基づいて検出される第1端位置及び第2端位置をそれぞれ「第1端検知位置Pa」及び「第2端検知位置Pb」と称する。
【0060】
第1端検知位置Pa及び第2端検知位置Pbはどのように検知されてもよい。例えば、第1検出位置Px1がそのまま第1端検知位置Paとして検知され(即ち扱われ)、第2検出位置Px2がそのまま第2端検知位置Pbとして検知され(即ち扱われ)てもよい。
【0061】
特に、第1被検知部56がフラッシングガイド55の第1端と同じかほぼ同じ位置に設けられている場合は、第1検出位置Px1がそのまま第1端検知位置Paとして検知されてもよい。あるいは、第1検出位置Px1と実際の第1端検知位置Paとが一致またはほぼ一致するように第1被検知部56が構成されている場合も、第1検出位置Px1がそのまま第1端検知位置Paとして検知されてもよい。第2端検知位置Pbについても同様であり、第2被検知部57がフラッシングガイド55の第2端と同じかほぼ同じ位置に設けられている場合は、第2検出位置Px2がそのまま第2端検知位置Pbとして検知されてもよい。あるいは、第2検出位置Px2と実際の第2端検知位置Pbとが一致またはほぼ一致するように第2被検知部56が構成されている場合も、第2検出位置Px2がそのまま第2端検知位置Pbとして検知されてもよい。
【0062】
あるいは、メディアセンサ25による検知対象がフラッシングガイド55の両端そのものではなくフラッシングガイド55の両端に設けられている第1,第2被検知部56,57であることを考慮して、第1端検知位置Pa及び第2端検知位置Pbが検知されてもよい。例えば、第1検出位置Px1を主走査方向へ第1の所定距離だけシフトさせた位置が第1端検知位置Paとして検知され、第2検出位置Px2をホーム方向へ第2の所定距離だけシフトさせた位置が第2端検知位置Pbとして検知されてもよい。第1の所定距離は、第1検出位置Px1と実際の第1端検知位置Paとの差に応じて決められてもよい。第2の所定距離は、第2検出位置Px2と実際の第2端検知位置Pbとの差に応じて決められてもよい。
【0063】
以下の説明においては、説明の簡素化のため、第1検出位置Px1及び第2検出位置Px2がそれぞれそのまま第1端検知位置Pa及び第2端検知位置Pbとして検知されるものとして説明する。
【0064】
図2に示すように、画像形成システム1は、更に、キャッピング機構60を備える。キャッピング機構60は、キャリッジ30の搬送路における、用紙Qが搬送される領域よりも主走査方向上流側に配置されている。より具体的には、本実施形態のキャッピング機構60は、キャリッジ30の搬送路における、プラテン50よりも主走査方向上流側に配置されている。
【0065】
キャッピング機構60は、キャップ61と、レバー62と、孔63と、駆動機構(不図示)とを備える。孔63は、第2ガイドレール29の一部を貫通するように設けられている。レバー62は、その一端が孔63から上方へ突出するように設けられている。レバー62の他端は駆動機構に機械的に連結されている。レバー62は、弾性体(不図示)によって主走査方向へ付勢されている。
【0066】
用紙Qへの画像形成が終了すると、キャリッジ30は、キャッピング機構60に向けて(即ちホーム方向へ)移動される。ホーム方向へ移動されているキャリッジ30は、レバー62と接触し、レバー62をホーム方向へ移動させる。これにより、駆動機構がキャップ61を上方へリフトアップする。具体的には、キャリッジ30と共にレバー62がホーム方向へ移動していくことにより、キャップ61が徐々に上方へリフトアップしていく。そして、記録ヘッド21全体がキャップ61上の所定のホームポジションに到達したときに、キャリッジ30が停止されると共に、記録ヘッド21がキャップ61によりキャッピング、即ち塞がれる。詳しくは、記録ヘッド21における、インクが吐出するノズルが少なくともキャッピングされる。なお、キャッピング機構60は、ホームポジションで記録ヘッド21をキャップ61によってキャッピング可能などのような構成を有していてもよい。
【0067】
画像形成システム1は、用紙Qへの印刷が不要な期間は、基本的に、キャリッジ30をホームポジションで待機させる。そして、用紙Qへの画像形成その他の、キャリッジ30をホームポジションから主走査方向へ移動させるべきタイミングが到来すると、画像形成システム1は、キャリッジ30をホームポジションから主走査方向へ移動させる。キャリッジ30がホームポジションから主走査方向へ移動し始めると、その移動に伴い、レバー62も付勢力によって主走査方向へ移動していく。これにより、キャップ61が下方へリフトダウンしていき、キャップ61による記録ヘッド21のキャッピングが解除される。
【0068】
(2)フラッシングパラメータの補正
(2-1)概要
本開示における最も特徴的技術の1つである、フラッシングパラメータの補正について、説明する。フラッシングパラメータとは、前述の、フラッシング開始位置、フラッシング周期および吐出発数の総称である。本実施形態では、フラッシングが行われる際、フラッシングパラメータの少なくとも1つを補正する補正演算が行われる。そして、その補正演算による補正後のフラッシングパラメータに基づいてフラッシングが行われる。
【0069】
(2-2)補正演算の目的
補正演算の具体的内容を説明する前に、補正演算の目的について簡単に説明する。メインコントローラ10は、フラッシングを実行すべきタイミングが到来すると、フラッシングパラメータを含むフラッシング指令を印刷コントローラ20へ出力する。印刷コントローラ20は、メインコントローラ10からフラッシング指令を受けると、フラッシングパラメータに基づいてフラッシングを実行する。
【0070】
ここで、本実施形態では、第1エンコーダ33としてロータリエンコーダが用いられている。また、キャリッジ30は、ベルト27cによって移動される。そのため、ベルト27cのピッチや、第1エンコーダ33のスリット間隔のばらつきによって、第1信号処理回路34において第1エンコーダ信号のカウント値に基づいて算出された検出位置Pxと、キャリッジ30の実際の位置とは、異なり得る。
【0071】
例えば、ベルト27cの全長が理論値よりも長い場合、CRモータ31の一回転あたりのキャリッジ30の移動距離は、理論上の移動距離よりも短くなる。この場合、キャリッジ30の実際の位置は検出位置Pxよりも遅れることになる。そのため、例えば検出位置Pxがフラッシング開始位置に一致するまでキャリッジ30が移動されたとしても、キャリッジ30は実際にはまだフラッシング開始位置に到達していないことが想定される。このような状態でフラッシングが開始されると、フラッシングガイド55の外部(詳しくはフラッシングガイド55より上流側)にインクが吐出されてしまう可能性がある。
【0072】
また例えば、第1エンコーダ33のスリット数が規定値より少なくてスリット間隔が規定間隔より大きくなっている場合、1カウントあたりのキャリッジ30の移動距離は、理論上の移動距離よりも長くなる。この場合、キャリッジ30の実際の位置は検出位置Pxよりも進むことになる。そのため、例えば検出位置Pxがフラッシング開始位置に一致するまでキャリッジ30が移動されたとき、キャリッジ30は実際にはフラッシング開始位置よりも先に進んでいることが想定される。このような状態でフラッシングが開始されると、フラッシングが完了するまでにキャリッジ30がフラッシングガイド55を通過して、フラッシングガイド55の外部(詳しくはフラッシングガイド55より下流側)にインクが吐出されてしまう可能性がある。
【0073】
このような、検出位置Pxと実際のキャリッジ30の位置とのズレは、キャリッジ30の移動が進むほど(つまりカウント値が増加するほど)大きくなる。
また、仮にベルト27cや第1エンコーダ33が理論通り(設計値通り)に造られているならば、検出位置Pxと実際の位置とのズレは生じないものの、他の要因でフラッシングガイド55の外部へインクが吐出されてしまう可能性もある。例えば、フラッシングガイド55が、設計上の正規の位置からずれて取り付けられている可能性がある。あるいは、フラッシングガイド55自体の寸法が設計上の寸法とずれている可能性もある。具体的には、フラッシングガイド55の主走査方向の寸法が設計上の寸法よりも短くなっている可能性もある。このような場合、フラッシング時にラッシングガイド55の外部へインクが吐出されてしまう可能性がある。
【0074】
フラッシングガイド55の外部にインクが吐出される可能性がある具体的態様を、図3を参照して説明する。メインコントローラ10の記憶部12には、前述のフラッシングパラメータ、即ち、フラッシング開始位置、フラッシング周期及び吐出発数が記憶されている。このうち記憶部12に記憶されているフラッシング開始位置、即ち設計上(理論上)のフラッシング開始位置を、以下、「理想FLS開始位置Pst0」(図3上段参照)と称する。記憶部12には、さらに、フラッシングガイド55の設計上の第1端位置及び第2端位置が記憶されている。以下の説明では、設計上の第1端位置を「第1端理想位置Pa0」(図3上段参照)と称し、設計上の第2端位置を「第2端理想位置Pb0」(図3上段参照)と称する。なお、フラッシングガイド55の主走査方向の寸法は、設計上は、図3上段に例示するようにLg0である。そして、設計上は、フラッシング時には、理想FLS開始位置Pst0を起点とする所定の着弾範囲55aにインクが吐出される。なお、この設計上の着弾範囲55aは、例えば、インク吸収材59が存在する範囲に一致していてもよいし、インク吸収材59が存在する範囲と部分的にずれていてもよい。
【0075】
これに対し、実際の画像形成システム1において、ベルト27cの長さまたは第1エンコーダ33のスリット間隔が設計値とは異なっていることを想定する。具体的には、例えば、検出位置Pxよりも実際の位置の方が進んでいることを想定する。さらに、図3の下段に例示するように、フラッシングガイド55の実際の取付位置が設定上の取付位置よりもホーム方向へずれており、且つフラッシングガイド55の実際の寸法Lgが設計上の寸法Lg0よりも短くなっていることを想定する。
【0076】
この場合、図3下段に例示するように、メインコントローラ10が認識しているキャリッジ30の検出位置Pxが理想FLS開始位置Pst0に到達した時、キャリッジ30の実際の位置は理想FLS開始位置Pst0よりも進んでいる可能性がある。そのため、フラッシングの開始位置が設計上の位置よりも主走査方向下流側にずれる。しかも、前述の通り、フラッシングガイド55の実際の寸法Lgは設計上の寸法Lg0よりも短い。そのため、フラッシング時の実際の着弾範囲55bは、図3下段に例示するように、フラッシングガイド55をはみ出してしまう。
【0077】
また、本実施形態では、印刷コントローラ20は、例えば速度フィードバック制御によりキャリッジ30の移動を制御する。速度フィードバック制御は、検出速度Vxを周期的に取得して、その検出速度Vxが、メインコントローラ10から指令された速度プロファイルに一致するように、CRモータ31への通電量を制御する制御法である。速度フィードバック制御で用いられる検出速度Vxは、前述の通り、第1エンコーダ信号のカウント値に基づいて検出される。
【0078】
そのため、第1エンコーダ33のスリット間隔のばらつきなどによって、検出速度Vxと実際の速度とが一致しないことが起こり得る。ここで、本実施形態では、1回のフラッシングにおけるフラッシング周期および吐出発数がメインコントローラ10から指令される。そのため、例えば実際の速度が検出速度Vxよりも速い場合、吐出発数分のインクの吐出が終了する前にキャリッジ30がフラッシングガイド55を通過して、これによりフラッシングガイド55の外部(詳しくはフラッシングガイドより下流側)にインクが吐出されてしまう可能性がある。
【0079】
そこで、本実施形態では、フラッシングの実行前に、前述の補正演算によってフラッシングパラメータを補正する。
(2-3)補正演算の具体的内容
図4を参照して、補正演算の具体的内容を説明する。図4においても、図3と全く同様に、フラッシングガイド55の実際の取付位置及び寸法が設計上の位置及び寸法からずれており、且つ実際のキャリッジ30の位置が検出位置Pxよりも進んでいることを想定している。
【0080】
メインコントローラ10は、補正演算に先立って、まず、フラッシングガイド55の両端検知を行う。具体的には、後述するプレスキャンの実行時に、キャリッジ30をホームポジションから主走査方向へ移動させる。そして、メディアセンサ25によりフラッシングガイド55の第1端が検知されたことに応じて第1端検知位置Paを取得(検知)する。さらに、メディアセンサ25によりフラッシングガイド55の第2端が検知されたことに応じて第2端検知位置Pbを取得する。
【0081】
図4中段は、取得された第1端検知位置Pa及び第2端検知位置Pbの一例を図示している。即ち、この例では、第1端が検知された時にメインコントローラ10が認識している第1端検知位置Paは、第1端の実際の位置よりもホーム方向にずれている。同様に、第2端が検知された時にメインコントローラ10が認識している第2端検知位置Pbは、第2端の実際の位置よりもホーム方向にずれている。しかもそのずれ量は、第1端の実際の位置と第1端検知位置Paとのずれ量よりも大きい。
【0082】
また、図4の例では、第1端検知位置Paは第1端理想位置Pa0よりもΔaだけホーム方向へずれており、第2端検知位置Pbは第2端理想位置Pb0よりもΔbだけホーム方向へずれている。
【0083】
メインコントローラ10は、取得された第1端検知位置Pa及び第2端検知位置Pbと、第1端理想位置Pa0及び第2端理想位置Pb0と、理想FLS開始位置Pst0とを用いて、補正量ΔPを算出する。
【0084】
補正量ΔPは、図4下段に例示するように、実際にフラッシングを開始すべき検出位置Pxである実FLS開始位置Pstと理想FLS開始位置Pst0との差を示す。つまり、理想FLS開始位置Pst0を補正量ΔPで補正することで、実FLS開始位置Pstを算出する。
【0085】
本実施形態では、下記式(1)に示すように、理想FLS開始位置Pst0から補正量ΔPだけ減算する(即ちホーム方向へずらす)ことで、実FLS開始位置Pstが算出される。また、補正量ΔPは、図4下段にも例示されているように、下記式(2)で表される。
【0086】
【数1】
【0087】
上記式(2)から明らかなように、α及びβの組み合わせが二種類ある。補正値ΔPは、これら二種類の組み合わせのうちのいずれかを用いて表すことができる。図4下段は、一例として、α=Pa,β=Δaである場合の補正値ΔPを示している。
【0088】
上記式(2)を用いて最終的に取得すべきフラッシングパラメータは、実FLS開始位置Pstである。式(1)及び式(2)のいずれにも、実FLS開始位置Pstを含む項が存在する。そのため、メインコントローラ10は、実際には、例えば、式(1)及び式(2)を合成して得られる、実FLS開始位置Pstの演算式を用いて、実FLS開始位置Pstを算出する。当該演算式は、左辺がPstであり、右辺にPstは存在しない。
【0089】
メインコントローラ10は、このようにして実FLS開始位置Pstを算出した後、実際にフラッシングを実行させる。即ち、キャリッジ30を例えばホームポジションから主走査方向へ移動させ、検出位置Pxが実FLS開始位置Pstに一致したことに応じて、フラッシングを開始する。これにより、図4下段に例示するように、フラッシングガイド55の実際の取付位置や寸法が理想とは異なっていても、フラッシングガイド55における適切な位置からフラッシングを開始でき、且つフラッシングガイド55の外部へインクが吐出されることを抑制できる。
【0090】
ここで、補正すべきフラッシングパラメータは、フラッシング開始位置に限らない。フラッシング開始位置に加えて、或いはフラッシング開始位置に代えて、フラッシング周期及び/または吐出発数が補正されてもよい。例えば、図3及び図4の例では、カウント値に基づいて検出される検出速度Vxよりも実際の速度の方が速い。
【0091】
そこで、この場合は、例えば、フラッシング周期を短くし、及び/または吐出発数を低減させてもよい。より具体的には、例えば、ΔbとΔaとの差が大きいほどフラッシング周期が短くなるように、フラッシング周期を補正してもよい。また例えば、ΔbとΔaとの差が大きいほど吐出発数が少なくなるように、吐出発数を補正してもよい。そのように補正する理由は、ΔbとΔaとの差が大きいほど、実際の速度が検出速度Vxよりもより速いことが予想されるからである。
【0092】
なお、上記とは逆に、キャリッジ30の実際の速度が、カウント値に基づいて検出される検出速度Vxよりも遅い場合は、フラッシング実行中にキャリッジ30の実際の位置がフラッシングガイド55を通過してしまう可能性は低い。そのため、この場合はフラッシング周期及び吐出発数を補正しなくてもよい。ただし、この場合も、フラッシング周期及び/または吐出発数を補正してもよい。例えば、フラッシング周期を長くし、及び/または吐出発数を増加させてもよい。
【0093】
(3)印刷制御処理
メインコントローラ10により実行される印刷制御処理について、図5を参照して説明する。例えば情報処理装置5から印刷指示を受けるなどの、用紙Qへ画像を形成すべきタイミングが到来すると、メインコントローラ10は、印刷制御処理のプログラムを記憶部12から読み込んで実行する。
【0094】
メインコントローラ10は、印刷制御処理を開始すると、S11Oで、プレスキャン処理を開始する。プレスキャン処理は、画像の形成とは別の特定の目的で行われる。特定の目的は、例えば、プラテン50上の用紙Qの有無を判別すること、プラテン50上の用紙Qの幅(主走査方向の長さ)を判別すること、キャリッジ30を主走査方向に沿って適正に往復移動できる状態か否かを判別すること、第1エンコーダ33の状態(例えばスケールにおけるスリット列の状態)が正常であるか否かを判別すること、などのうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0095】
プレスキャン処理においては、メインコントローラ10は、印刷コントローラ20への指令することにより、キャリッジ30をホームポジションから主走査方向へ一往復させる。そして、その一往復の間に、メディアセンサ25からの検出信号に基づいて検出対象を検知したり、移動中の位置、速度を監視したりするなどして、上記特定の目的に必要な情報を収集する。そして、その収集した情報に基づいて、上記特定の目的のための各種処理を行う。
【0096】
そして、本実施形態では、そのプレスキャン処理のための主走査方向へのキャリッジ30移動中に、メディアセンサ25からの検出信号に基づいて、フラッシングガイド55の第1端検知位置Pa及び第2端検知位置Pbを取得する。
【0097】
即ち、メインコントローラ10は、S120で、フラッシングガイド55の第1端がメディアセンサ25により検知されたか否か判断する。メインコントローラ10は、第1端が検知されるまで、S120の判断処理を繰り返す。第1端が検知されると、メインコントローラ10は、S130で、第1端検知位置Paを取得する。
【0098】
続くS140で、メインコントローラ10は、フラッシングガイド55の第2端がメディアセンサ25により検知されたか否か判断する。メインコントローラ10は、第2端が検知されるまで、S140の判断処理を繰り返す。第2端が検知されると、メインコントローラ10は、S150で、第2端検知位置Pbを取得する。
【0099】
S160では、メインコントローラ10は、補正処理を実行する。具体的には、取得された第1端検知位置Pa及び第2端検知位置Pbを用いて、フラッシングパラメータを補正する。本実施形態では、メインコントローラ10は、例えば、少なくともフラッシング開始位置の補正を行う。具体的には、前述の式(1)及び式(2)に基づいて、実FLS開始位置Pstを算出する。
【0100】
メインコントローラ10は、S160では、さらにフラッシング周期及び/または吐出発数を補正してもよい。また、前述のように、補正処理においては、フラッシング開始位置の補正(即ち実FLS開始位置Pstの算出)は行われずにフラッシング周期及び/または吐出発数の補正が行われてもよい。
【0101】
補正処理の終了後、メインコントローラ10は、S170で、フラッシング処理を実行する。なお、図5では詳細が省略されているが、プレスキャン処理は、基本的にはS170の処理の実行前までに完了する。メインコントローラ10は、プレスキャン処理のためにキャリッジ30を一往復移動させると、印刷コントローラ20への指令を介して、キャリッジ30を再びホームポジションに戻す。
【0102】
S170では、メインコントローラ10は、印刷コントローラ20への指令により、キャリッジ30をホームポジションから主走査方向へ片道移動させる。そして、キャリッジ30が実FLS開始位置Pstに到達すると(つまり検出位置Pxが実FLS開始位置Pstに一致すると)、メインコントローラ10は、フラッシングを開始する。即ち、印刷コントローラ20へ指令することにより、実FLS開始位置Pstから、キャリッジ30を主走査方向へ移動(例えば定速移動)させながら、フラッシング周期で吐出発数だけ、記録ヘッド21からインクを吐出させる。
【0103】
フラッシング終了後は、メインコントローラ10は、キャリッジ30を一旦停止させる。そして、S180で、メインコントローラ10は、印刷処理を実行する。つまり、画像データに基づく画像を用紙Qに形成するように、印刷コントローラ20及び搬送コントローラ40に指令する。これにより、用紙Qが副走査方向へ搬送されつつ、且つキャリッジ30が主走査方向に沿って往復移動されながら、記録ヘッド21により印刷対象の画像が用紙Qに形成される。
【0104】
(4)実施形態の効果、及び文言の対応関係
以上説明した実施形態の画像形成システム1では、フラッシングガイド55に固定された第1,第2被検知部56,57の実際の位置が取得され、それらに基づいて第1端検出位置Pa及び第2端検出位置Pbが取得される。そして、その取得された第1端検出位置Pa及び第2端検出位置Pbに基づいて、実FLS開始位置Pstが決定される。したがって、フラッシングガイド55の実際の位置に応じた適正な位置でフラッシングを開始することができる。即ち、フラッシング実行時にフラッシングガイド55へ適切にインクを吐出させることができる。
【0105】
また、本実施形態では、理想FLS開始位置Pst0が補正演算されることによって実FLS開始位置Pstが算出される。具体的には、前述の式(1)及び式(2)に基づいて実FLS開始位置Pstが算出される。そのため、実FLS開始位置Pstを簡素な線形演算により算出することができる。
【0106】
また、本実施形態では、実FLS開始位置Pstの算出に用いられる第1端検出位置Pa及び第2端検出位置Pbが、プレスキャン処理時におけるキャリッジ30の移動時に取得される。つまり、第1端検出位置Pa及び第2端検出位置Pbを取得するためにプレスキャンとは別にキャリッジ30を移動させない。そのため、第1端検出位置Pa及び第2端検出位置Pbを効率よく取得することができる。
【0107】
また、本実施形態では、実FLS開始位置Pst0の算出に加えて或いは代えて、フラッシング周期及び/または吐出発数が補正され得る。例えば実FLS開始位置Pst0の算出に加えてさらにフラッシング周期及び/または吐出発数が補正されることで、フラッシング時により確実にインクをフラッシングガイド55内に吐出させることが可能となる。
【0108】
ここで、文言の対応関係を明確にする。本実施形態において、画像形成システム1は本開示における画像形成装置の一例に相当する。CRモータ31は本開示におけるモータの一例に相当する。キャリッジ30は本開示における移動体の一例に相当する。サポートフレーム58は本開示における支持部の一例に相当する。第1,第2被検知部56,57の各々は本開示における被検知部の一例に相当する。メディアセンサ25は本開示における検知部の一例に相当する。第1エンコーダ33は本開示におけるエンコーダの一例に相当する。第1信号処理回路34は本開示における位置検出部の一例に相当する。メインコントローラ10は本開示におけるコントローラの一例に相当する。第1端検知位置Paは本開示における第1検知位置の一例に相当し、第2端検知位置Pbは本開示における第2検知位置の一例に相当する。式(2)におけるΔa及びΔbの各々は本開示における位置偏差の一例に相当する。より具体的には、Δaは本開示における第1位置偏差の一例に相当し、Δbは本開示における第2位置偏差の一例に相当する。理想FLS開始位置Pst0は本開示における理論開始位置の一例に相当する。用紙Qは本開示におけるシートの一例に相当する。フラッシング周期は本開示における所定周期の一例に相当する。吐出発数は本開示における所定回数の一例に相当する。
【0109】
S110の処理は本開示における事前処理の一例に相当する。S110においてキャリッジ30を移動させることは本開示における移動処理(特に第1の移動処理)の一例に相当する。S130及びS150の処理は本開示における位置取得処理の一例に相当する。S160の処理は本開示における決定処理の一例に相当する。S170の処理は本開示におけるフラッシング処理の一例に相当する。また、S170の処理においてキャリッジ30を移動させることは本開示における第2の移動処理の一例に相当する。
【0110】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0111】
(1)上記実施形態では、第1被検知部56はフラッシングガイド55の第1端の外側に隣接して固定され、第2被検知部57はフラッシングガイド55の第2端の外側に隣接して固定されていた。しかし、第1,第2被検知部56,57は、フラッシングガイド55にどのように固定されていてもよいし、どのような位置に固定されていてもよい。
【0112】
例えば、第1,第2被検知部56,57は、皿状のフラッシングガイド55の内壁に固定されてもよい。具体的には、第1被検知部56は、例えば、フラッシングガイド55の第1端に該当する側壁の内面、即ちインクが吐出される空間に対向する面に、固定されていてもよい。同様に、第2被検知部57は、例えば、フラッシングガイド55の第2端に該当する側壁の内面に固定されていてもよい。
【0113】
また例えば、第1被検知部56はフラッシングガイド55の第1端の上面に固定され、第2被検知部57はフラッシングガイド55の第2端の上面に固定されていてもよい。つまり、第1,第2被検知部56,57とフラッシングガイド55とが上下方向において積層された状態となっていてもよい。
【0114】
また、第1,第2被検知部56,57はそれぞれ、図6に例示するように、フラッシングガイド55から主走査方向に沿って離間した状態でフラッシングガイド55に固定されていてもよい。図6に例示する画像形成システム100では、第1,第2被検知部56,57は、サポートフレーム58に固定されている。また、第1,第2被検知部56,57はいずれも、フラッシングガイド55から主走査方向に沿って離間して配置されている。このような画像形成システム100では、メインコントローラ10は、第1被検知部56とフラッシングガイド55の第1端との距離、及び第2被検知部56とフラッシングガイド55の第2端との距離を考慮して、前述の補正演算を行うことで、上記実施形態と同様に実FLS開始位置Pstを算出することができる。例えば、第1被検知部56が検知されたときの検出位置Pxから、第1被検知部56と第1端との距離の分だけ主走査方向へ進めた位置を、第1端検出位置Paとして取得することができる。また、第2被検知部57が検知されたときの検出位置Pxから、第2被検知部57と第2端との距離の分だけホーム方向へ戻した位置を、第2端検出位置Pbとして取得することができる。
【0115】
(2)フラッシングガイド55及び第1,第2被検知部56,57は、上記実施形態とは異なる部位に設けられていてもよい。また、前述の通り、インク吸収材59が、フラッシングガイド55を伴わずに、第1,第2被検知部56,57と共に配置されてもよい。例えば、図7に例示するように、インク吸収材59及び第1,第2被検知部56,57がプラテン50上に設けられていてもよい。図7に例示する画像形成システム110では、プラテン50における、用紙Qが搬送される領域よりも主走査方向下流側に、インク吸収材59及び第1,第2被検知部56,57が設けられている。この画像形成システム110でも、上記実施形態のフラッシングパラメータの補正方法におけるフラッシングガイド55をインク吸収材59に置き換えることで、上記実施形態と同じ補正方法でフラッシングパラメータを補正できる。具体的には、インク吸収材59におけるホーム方向側の端部を、上記実施形態の補正方法におけるフラッシングガイド55の第1端とみなし、インク吸収材59における主走査方向側の端部を、上記実施形態の補正方法におけるフラッシングガイド55の第2端とみなすことで、上記実施形態の補正方法にてフラッシングパラメータを補正できる。なお、この画像形成システム110においては、インク吸収材59が本開示におけるインク受け部の一例に相当する。
【0116】
図7の画像形成システム110において、インク吸収材59及び第1,第2被検知部56,57は、プラテン50にどのように固定されていてもよいし、プラテン50におけるどのような位置に固定されていてもよい。例えば、インク吸収材59は、プラテン50の表面の一部に直接固定されていてもよい。
【0117】
また例えば、フラッシングガイド55及び第1,第2被検知部56,57は、用紙Qが搬送される領域よりもホーム方向側に設けられていてもよい。あるいは、インク吸収材59が、フラッシングガイド55を伴わずに、第1,第2被検知部56,57と共に、用紙Qが搬送される領域よりもホーム方向側に設けられていてもよい。具体的には、図8に例示するように、キャッピング機構60における所定部位に、インク吸収材59及び第1,第2被検知部56,57が設けられてもよい。
【0118】
図8に例示する画像形成システム120では、一例として、キャップ61の上面に、インク吸収材59及び第1,第2被検知部56,57が設けられている。なお、インク吸収材59及び第1,第2被検知部56,57は、キャッピング機構60において、どこにどのように固定されていてもよい。第1,第2被検知部56,57は、インク吸収材59に隣接されていてもいいし、主走査方向に沿ってインク吸収材59から離間して固定されていてもよい。この画像形成システム120でも、上記実施形態のフラッシングパラメータの補正方法におけるフラッシングガイド55をインク吸収材59に置き換えることで、上記実施形態と同じ補正方法でフラッシングパラメータを補正できる。具体的には、インク吸収材59における主走査方向側の端部を、上記実施形態の補正方法におけるフラッシングガイド55の第1端とみなし、インク吸収材59におけるホーム方向側の端部を、上記実施形態の補正方法におけるフラッシングガイド55の第2端とみなすことで、上記実施形態の補正方法にてフラッシングパラメータを補正できる。なお、この画像形成システム120においては、インク吸収材59が本開示におけるインク受け部の一例に相当する。
【0119】
図8に例示する画像形成システム120では、例えば、プレスキャンにおけるキャリッジ30の往復移動の終了時、即ちホームポジションから主走査方向へ移動されたキャリッジ30が再びホームポジションに戻ってきたときに、第1端検出位置Pa及び第2端検出位置Pbを取得してもよい。
【0120】
(3)記録ヘッド21は、いくつのノズルを備えていてもよい。記録ヘッド21が複数のノズルを備えている場合、それらは主走査方向に沿って互いに離間して配置されていてもよい。この場合、メインコントローラ10は、ノズル毎に当該ノズルの検出位置Pxを検出してもよい。そして、ノズル毎に個別に、対応する検出位置Pxが実FLS開始位置Pstに到達したときに当該ノズルからのフラッシングを開始してもよい。
【0121】
また、記録ヘッド21が複数のノズルを備えている場合、異なる二種類以上の実FLS開始位置Pstが設定されてもよい。そして、それら二種類以上の実FLS開始位置Pstそれぞれに、少なくとも1つのノズルが対応付けられていてもよい。
【0122】
(4)上記実施形態では、第1端検知位置Pa及び第2端検知位置Pbに基づいて実FLS開始位置Pstを算出したが、第1端検知位置Pa及び第2端検知位置Pbのうちのいずれか一方を用いて(即ち他方は用いずに)実FLS開始位置Pstを算出してもよい。つまり、第1,第2被検知部56,57のうちのいずれか一方は備えられていなくてもよい。
【0123】
例えば第2被検知部57が備えられていなくてもよい。この場合、メインコントローラ10は、第1端検知位置Paを用いて実FLS開始位置Pstを算出してもよい。具体的には、例えば、Δaをそのまま、或いはΔaに所定の係数を乗じた値を、補正値ΔPとして算出してもよい。そして、理想FLS開始位置Pst0よりもそのΔPだけホーム方向側の位置を、実FLS開始位置Pstに決定してもよい。
【0124】
また例えば、第1被検知部56が備えられていなくてもよい。この場合、メインコントローラ10は、第2端検知位置Pbを用いて実FLS開始位置Pstを算出してもよい。具体的には、例えば、Δbをそのまま、或いはΔbに所定の係数を乗じた値を、補正値ΔPとして算出してもよい。そして、理想FLS開始位置Pst0よりもそのΔPだけホーム方向側の位置を、実FLS開始位置Pstに決定してもよい。
【0125】
また、第2端検知位置Pbを用いずに第1端検知位置Paを用いて実FLS開始位置Pstを算出する場合、主走査方向へキャリッジ30が片道移動されている間に、S120~S170までの一連の処理が実行されてもよい。つまり、当該片道移動中に第1端検知位置Paが取得された場合、キャリッジ30の片道移動を継続させつつ、その第1端検知位置Paに基づいて実FLS開始位置Pstを算出する。そして、継続されているキャリッジ30の片道移動により、検出位置Pxが実FLS開始位置Pstに到達したら、フラッシングを開始してもよい。つまり、例えばプレスキャンにおけるキャリッジ30の往復移動のうちの往方向(主走査方向)への移動の過程で、実FLS開始位置Pstの算出及びそれに基づくフラッシング処理を完了させてもよい。
【0126】
(5)上記実施形態では、フラッシングの開始タイミングを補正する具体的方法の一例として、フラッシング開始位置を補正する例を示した。しかし、フラッシング開始位置を補正することとは別の方法で、フラッシングの開始タイミングを補正することもできる。
【0127】
例えば、キャリッジ30の検出位置Pxが理想FLS開始位置Pst0に到達したことに応じて、その到達タイミングから、規定時間経過後にフラッシングを開始(即ちインク吐出を開始)してもよい。そして、規定時間を補正するようにしてもよい。規定時間は、0以上のどのような時間に設定されてもよい。メインコントローラ10は、例えば、キャリッジ30の実際の位置が検出位置Pxよりも進んでいる場合は、規定時間を短くすることによって、理想FLS開始位置Pst0に到達後のより速いタイミングでフラッシングが開始されるようにしてもよい。逆に、キャリッジ30の実際の位置が検出位置Pxよりも遅れている場合は、メインコントローラ10は、規定時間を長くすることによって、理想FLS開始位置Pst0に到達後のより遅いタイミングでフラッシングが開始されるようにしてもよい。
【0128】
(6) 本開示の技術は、第1エンコーダ33としてリニアエンコーダが用いられている画像形成システムにも適用できる。また、キャリッジ30の位置を検出するためのセンサとしてロータリエンコーダ及びリニアエンコーダのいずれとも異なるセンサが用いられている画像形成システムに対しても、本開示の技術を適用できる。
【0129】
(7)上記実施形態では、メインコントローラ10にて補正演算(具体的には図5のS120~S160)が行われたが、補正演算はどこで行われてもよい。補正演算の一部または全てが、メインコントローラ10以外(例えば印刷コントローラ20)で行われてもよい。
【0130】
(8)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0131】
1,100,110,120…画像形成システム、10…メインコントローラ、11…CPU、12…記憶部、20…印刷コントローラ、21…記録ヘッド、25…メディアセンサ、26…キャリッジ搬送機構、30…キャリッジ、31…CRモータ、33…第1エンコーダ、34…第1信号処理回路、50,101…プラテン、55…フラッシングガイド、56…第1被検知部、57…第2被検知部、58…サポートフレーム、59…インク吸収材、60…キャッピング機構、61…キャップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8