(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180504
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20231214BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20231214BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20231214BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20231214BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/485 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/13
F02D29/06 E
F02D29/06 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093866
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】本田 暁拡
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB08
3D202CC00
3D202CC41
3D202DD16
3D202DD29
3D202DD45
3D202EE27
3G093AA07
3G093BA04
3G093DA01
3G093DB09
3G093DB19
3G093DB28
3G093EA03
(57)【要約】
【課題】外部に給電する際に排気管に凝縮水が過度に溜まることを抑える車両制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン12を駆動して外部への給電を制御する車両制御装置10は、給電要求に応じてエンジン12を駆動させて外部への給電を制御する制御部と、エンジン12の駆動状態に関する情報を取得する取得部と、エンジン12の駆動状態に関する情報をもとに、エンジン12の駆動によって発生する凝縮水量を推定する推定部と、を備える。制御部は、凝縮水量が所定の閾値を超える場合に、エンジン12の回転数を上昇させた後にエンジン12を停止させる停止制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを駆動して外部への給電を制御する車両制御装置であって、
給電要求に応じて前記エンジンを駆動させて外部への給電を制御する制御部と、
前記エンジンの駆動状態に関する情報を取得する取得部と、
前記エンジンの駆動状態に関する情報をもとに、前記エンジンの駆動によって発生する凝縮水量を推定する推定部と、を備え、
前記制御部は、推定された凝縮水量が所定の閾値を超える場合に、前記エンジンの回転数を上昇させた後に前記エンジンを停止させる停止制御を実行することを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部への駆動を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、イグニッションスイッチがオフにされると、排気管内での凝縮水の凍結が予想される条件を満たす場合に、エンジンによってモータジェネレータを駆動させてバッテリを充電した後に、エンジンを停止させる車両用制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部に給電する際にエンジンを駆動させると、排気管に凝縮水が過度に溜まるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、外部に給電する際に排気管に凝縮水が過度に溜まることを抑える車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、エンジンを駆動して外部への給電を制御する車両制御装置であって、給電要求に応じてエンジンを駆動させて外部への給電を制御する制御部と、エンジンの駆動状態に関する情報を取得する取得部と、エンジンの駆動状態に関する情報をもとに、エンジンの駆動によって発生する凝縮水量を推定する推定部と、を備える。制御部は、凝縮水量が所定の閾値を超える場合に、エンジンの回転数を上昇させた後にエンジンを停止させる停止制御を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部に給電する際に排気管に凝縮水が過度に溜まることを抑える車両制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】車両に設けられた給電システムの機能構成を示す図である。
【
図3】給電要求がある場合の外部給電処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、車両1に設けられた給電システム2の機能構成を示す図である。給電システム2は、災害やキャンプなどで外部の装置に給電することができる。給電システム2は、車両制御装置10、エンジン12、モータ14、車載センサ16、給電ボタン17、PCU18、バッテリ20および排気管22を備える。車両1は、エンジン12とバッテリ20を備えるHEV(Hybrid Electric Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)である。
【0010】
エンジン12は、車両制御装置10によって駆動を制御され、通常は車輪を回転させるために駆動するが、外部給電をする場合には車輪との接続を解除した状態で駆動されてよい。エンジン12とモータ14は、ベルトによって接続されており、エンジン12で発生した駆動力が、ベルトを介してモータ14に入力され、交流電力が生成される。
【0011】
モータ14は、エンジン12の駆動に応じて発電し、モータ14で生成された交流電力は、外部への給電と、バッテリ20への給電に用いられる。外部給電の場合では、モータ14で生成された交流電力の一部がバッテリ20の充電にも用いられる。
【0012】
PCU(Power Control Unit)18は、モータ14から供給された交流電力を直流電力に変換してバッテリ20に充電させる。また、PCU18は、バッテリ20から供給された直流電力を交流電力に変換して外部に給電する。車両1には、外部に給電するためのコンセント(不図示)が設けられ、モータ14およびPCU18は、そのコンセントに電気的に接続され、外部の装置にコンセントを介して給電する。
【0013】
車載センサ16は、車両1に搭載された複数のセンサを含む。例えば、車載センサ16は、
図1に示すようにモータ14のケースに取り付けられ、モータ14の温度(TMG)を検出する温度センサを含む。また、車載センサ16は、バッテリ20の電圧を検出して充電率(SOC)を算出する充電率検出センサであってよい。また、車載センサ16は、エンジン12の吸入空気量を検出する吸入空気量センサ、エンジン燃料の供給量を検出する流量センサ、排気ガスの酸素量を検出する酸素検出センサを含む。吸入空気量、燃料供給量、排気ガスの酸素量をもとに、空燃比を算出できる。また、車載センサ16は、外気温を検出する温度センサであってよい。
【0014】
給電ボタン17は、ユーザの給電要求を受け付ける。給電ボタン17は、機械式のスイッチであってよく、タッチパネルに形成されたボタン領域であってよい。給電ボタン17は、ユーザの給電要求を受け付け、車両制御装置10に送る。なお、ユーザの給電要求は音声で受け付けてもよい。
【0015】
車両制御装置10は、エンジン12の駆動と、PCU18の動作とを制御し、外部への給電を制御する。エンジン12の駆動によってモータ14で発電された電力が外部とバッテリ20に給電される。PCU18を動作させることで、バッテリ20の直流電力を交流電力に変換して外部に給電できる。
【0016】
排気管22は、エンジン12に連結され、車両前後に延在し、車両後方に開放する。排気管22は、エンジン12の燃焼によって発生した排気ガスを出す。排気ガスに含まれる水蒸気が冷やされると凝縮水となり、排気管22に残る。排気管22に溜まった凝縮水は凍結して膨張することもあるため、過度に溜まらないよう排出することが好ましい。
【0017】
図2は、車両制御装置10の機能構成を示す。
図2において、さまざまな処理を行う機能ブロックとして記載される各要素は、ハードウェア的には、回路ブロック、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0018】
車両制御装置10は、取得部24、推定部26、決定部28および制御部30を備える。取得部24は、複数の車載センサ16の検出結果と、給電ボタン17の検出結果とを取得する。複数の車載センサ16の検出結果に含まれる吸入空気量、燃料供給量および排気ガスの酸素量は、エンジン12の駆動状態に関する情報である。給電ボタン17の検出結果は、ユーザの給電要求または給電停止要求を含む。このように、取得部24は、エンジン12の駆動状態に関する情報、モータ14の温度(TMG)、バッテリ20の充電率(SOC)、ユーザの給電要求を取得する。
【0019】
推定部26は、エンジン12の駆動状態に関する情報と外気温とをもとに、外部給電中のエンジン12の駆動によって発生する凝縮水量を推定する。凝縮水量は、エンジン12の駆動時間に応じて増加する傾向があり、エンジン12の吸入空気量、エンジン12への燃料供給量、排気ガスの酸素量および外気温などによって推定することができる。推定部26は、エンジン12の駆動状態に関する情報と外気温とエンジン12の駆動時間を入力すれば凝縮水量を出力する関数または2次元マップを用いてよい。
【0020】
決定部28は、推定された凝縮水量が所定の閾値を超える場合に、エンジン12の駆動による外部給電を停止することを決定する。所定の閾値は、実験等によって定められ、例えば排気管22に対して凝縮水が溜まっている割合によって定められる。つまり、所定の閾値は、排気管22の大きさによって定められてよい。エンジン12の駆動によってバッテリ20の充電率が回復していれば、エンジン12の駆動を停止した後、バッテリ20での外部給電が開始される。
【0021】
制御部30は、給電要求に応じてエンジン12を駆動させて外部給電を実行することができる。制御部30は、エンジン12の駆動による外部給電だけでなく、バッテリ20からも外部給電できる。
【0022】
制御部30は、バッテリ20の充電率(SOC)が所定の第1残量W1以上である場合、バッテリ20を優先させ、エンジン12を駆動させることなく、バッテリ20から外部に給電する。一方、バッテリ20の充電率(SOC)が第1残量W1より少ない場合、制御部30は、エンジン12を駆動させて外部に給電する。
【0023】
制御部30は、バッテリ20からの外部給電中に、バッテリ20の充電率(SOC)が第2残量W2以下になった場合、バッテリ20からの外部給電を停止する。第2残量W2は、第1残量W1よりも小さく、数パーセントに設定される。
【0024】
制御部30は、バッテリ20の充電率(SOC)が第1残量W1以下であり、且つモータ14の温度(TMG)が第1温度T1以下である場合に、エンジン12を駆動して、外部に給電するとともに、バッテリ20を充電する。制御部30は、モータ14の温度(TMG)が第1温度T1より大きい場合、エンジン12を駆動せず、モータ14からの給電を停止する。
【0025】
制御部30は、モータ14の温度(TMG)が所定の第1温度T1より大きい場合、エンジン12を駆動せず、外部給電を実行しない。また、制御部30は、モータ14からの外部給電中にモータ14の温度(TMG)を監視し、モータ14の温度(TMG)が所定の第2温度T2より大きくなった場合、エンジン12からの外部給電を終了する。第2温度T2は、第1温度T1よりも大きい値に設定される。キャンプや災害時にエンジン12を駆動して給電する場合、車両1が停止しているためエンジン12を空冷しづらく、過度に高温になるおそれがある。そこで、モータ14の温度を監視して、過度に高温になる場合には、駆動を停止する。
【0026】
モータ14からの外部給電中において、モータ14の温度(TMG)が所定の第2温度T2より大きくなり、且つ推定部26によって推定された凝縮水量が所定の閾値を超える場合に、制御部30は、エンジン12の回転数を所定数まで上昇させた後にエンジン12を停止させる停止制御を実行する。つまり、エンジン12の駆動によって凝縮水が排気管22に過度に溜まった場合、エンジン12の回転数を上昇させて、排気ガスの圧力によって凝縮水を排出し、エンジン12を停止する。凝縮水を排出するためのエンジン12の回転数およびその回転数での駆動時間は実験等により予め設定される。凝縮水を排出する動作を実行した後は直ちにエンジン12が停止される。これにより、凝縮水が過度に溜まる前に凝縮水を排出できる。また、エンジン12の駆動中に回転数を上昇するだけでよいため、凝縮水の排出処理を素早くできる。
【0027】
なお、モータ14からの外部給電中において、推定部26によって推定された凝縮水量が所定の閾値を超える場合に、制御部30は、エンジン12の回転数を所定数まで上昇させた後にエンジン12を停止させる停止制御を実行してよい。つまり、モータ14の温度(TMG)が所定の第2温度T2より大きいという温度条件を満たさなくても、凝縮水を排出する処理を実行してエンジン12を停止してよい。モータ14からの外部給電が停止された場合、その間にバッテリ20が充電されたいればバッテリ20からの外部給電をする。
【0028】
図3は、給電要求がある場合の外部給電処理のフローチャートである。
図3に示す外部給電処理は、ユーザの給電要求によって開始し、ユーザが給電停止要求をした場合に終了する。つまり、
図3では、給電要求がなされている状態でのフローである。
【0029】
給電要求を受けて、決定部28は、バッテリ20の充電率(SOC)が第1残量以上であるか判定する(S10)。バッテリ20の充電率(SOC)が第1残量以上である場合(S10のY)、決定部28は、バッテリ20から給電することを決定し、制御部30は、決定部28の決定に応じてバッテリ20から給電するようPCU18を制御する(S12)。
【0030】
決定部28は、バッテリ20からの給電中はバッテリ20の充電率(SOC)を監視し、バッテリ20の充電率(SOC)が第2残量W2以下であるか判定する(S14)。バッテリ20の充電率(SOC)が第2残量W2以下である場合(S14のY)、決定部28は給電停止を決定し、制御部30はバッテリ20からの給電を停止して、本処理を終了する(S16)。バッテリ20の充電率(SOC)が第2残量W2以下でなければ場合(S14のN)、S10のステップに戻る。
【0031】
バッテリ20の充電率(SOC)が第1残量以上でない場合(S10のN)、決定部28は、モータ14の温度(TMG)が第1温度T1以下であるか判定する(S18)。モータ14の温度(TMG)が第1温度T1以下でなければ(S18のN)、決定部28は給電停止を決定し、本処理を終了する。このように、バッテリ20の充電率が低く、モータ14の温度が高ければ外部給電が実行されない。
【0032】
モータ14の温度(TMG)が第1温度T1以下であれば(S18のY)、決定部28は、モータ14での給電を決定し、制御部30は決定部28の決定に応じてエンジン12を駆動する(S20)。エンジン12の駆動中において、決定部28は、モータ14の温度(TMG)が第2温度T2以上であるか判定する(S22)。
【0033】
決定部28は、モータ14の温度(TMG)が第2温度T2以上になるか監視し(S22のN)、モータ14の温度(TMG)が第2温度T2以上となれば(S22のY)、エンジン12の駆動を停止することを決定する。これにより、モータ14の温度(TMG)が第2温度T2以上になるまで、すなわち、モータ14が高温になるまで、エンジン12を駆動して外部給電できる。エンジン12の駆動を停止する前に、決定部28は、推定部26によって推定された凝縮水量が所定の閾値を超えるか判定する(S24)。
【0034】
推定された凝縮水量が所定の閾値を超えない場合(S24のN)、制御部30は、エンジン12を停止し(S28)、S10のステップに戻る。これにより、エンジン12の駆動によってバッテリ20の充電率が回復していれば、バッテリ20から外部給電を継続できる。また、凝縮水が溜まっていなければ直ちにエンジン12を停止できる。
【0035】
推定された凝縮水量が所定の閾値を超える場合(S24のY)、制御部30は、エンジン12の回転数を上昇させて凝縮水を排出する処理を実行する(S26)。制御部30は、排水処理を実行した後、エンジン12を停止し(S28)、S10のステップに戻る。これにより、エンジン12を停止する前に、エンジン12の回転数を上昇することで、凝縮水を短時間でスムーズに排水することができる。
【0036】
なお実施例はあくまでも例示であり、各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0037】
1 車両、 2 給電システム、 10 車両制御装置、 12 エンジン、 14 モータ、 16 車載センサ、 17 給電ボタン、 18 PCU、 20 バッテリ、 22 排気管、 24 取得部、 26 推定部、 28 決定部、 30 制御部。