(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180682
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】印刷材収容容器および印刷材収容容器の再製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B41J2/175 169
B41J2/175 161
B41J2/175 173
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094197
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 幸治
(72)【発明者】
【氏名】深澤 教幸
(72)【発明者】
【氏名】川手 寛之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA19
2C056EB20
2C056EB45
2C056EB59
2C056KC02
2C056KC04
2C056KC09
2C056KC14
2C056KC30
(57)【要約】
【課題】液体カートリッジを含む印刷材収容容器を再利用する際に、初回固定時に用いた固定部材を再固定時に用いることができる技術を提供する。
【解決手段】印刷材収容容器は、端子を有する電気回路が設けられた基板と、初回固定時および初回固定時より後の再固定時において、基板を固定可能な固定部と、基板の端子を除く非端子部分と、固定部と、を固定する固定部材と、を備え、非端子部分は、固定部材と係合可能な係合部を有し、固定部材は、初回固定時および再固定時において、係合部と係合可能に構成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷材収容容器であって、
端子を有する電気回路が設けられた基板と、
初回固定時および前記初回固定時より後の再固定時において、前記基板を固定可能な固定部と、
前記基板の前記端子を除く非端子部分と、前記固定部と、を固定する固定部材と、を備え、
前記非端子部分は、前記固定部材と係合可能な係合部を有し、
前記固定部材は、前記初回固定時および前記再固定時において、前記係合部と係合可能に構成される、印刷材収容容器。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷材収容容器であって、
前記固定部材は、前記固定部と一体に設けられ、加熱によって溶融可能な熱カシメ部を有する凸部であり、
前記係合部は、前記凸部を挿通可能な貫通孔と、前記凸部を受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方である、印刷材収容容器。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷材収容容器であって、
前記固定部材は、前記固定部に取り付けられ、外力を加えることによって変形可能な返し付きピンであり、
前記係合部は、前記返し付きピンを挿通可能な貫通孔と、前記返し付きピンを受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方である、印刷材収容容器。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷材収容容器であって、
前記基板は、フィルム状のフィルム基板である、印刷材収容容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の印刷材収容容器であって、
前記固定部材は、複数設けられ、
前記印刷材収容容器は、
前記初回固定時に用いられる前記固定部材としての初回固定部材と、
前記再固定時に用いられる前記固定部材としての再固定部材と、を有する、印刷材収容容器。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷材収容容器であって、
前記係合部は、複数設けられ、
前記印刷材収容容器は、
前記初回固定部材と係合する前記係合部としての初回係合部と、
前記再固定部材と係合する前記係合部としての再係合部と、を有する、印刷材収容容器。
【請求項7】
印刷材収容容器の再製造方法であって、
前記印刷材収容容器は、
端子を有する電気回路が設けられた基板と、
初回固定時および前記初回固定時より後の再固定時において、前記基板を固定可能な固定部と、
前記基板の前記端子を除く非端子部分と、前記固定部と、を固定する固定部材と、を備え、
前記非端子部分は、前記固定部材と係合可能な係合部を有し、
前記印刷材収容容器の前記再製造方法は、
前記印刷材収容容器を用意する第1工程と、
前記固定部材を、前記係合部との係合を解除可能に変形させる第2工程と、
前記固定部から前記基板を取り外す第3工程と、
前記基板の前記係合部を前記固定部材に係合させて、前記基板を前記固定部に再固定する第4工程と、を備える、印刷材収容容器の再製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷材収容容器の再製造方法であって、
前記固定部材は、前記固定部と一体に設けられ、加熱によって溶融可能な熱カシメ部を有する凸部であり、
前記係合部は、前記凸部を挿通可能な貫通孔と、前記凸部を受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方であり、
前記印刷材収容容器の前記再製造方法は、
前記第2工程において、前記凸部の前記熱カシメ部を溶融することによって、前記固定部材を、前記係合部との係合を解除可能に変形させ、
前記第3工程において、前記凸部の形状を前記係合部によって規制しながら、前記基板を前記固定部から取り外すことによって、溶融された前記熱カシメ部を前記係合部と再び係合可能な形状に復元させた復元凸部を形成し、
前記第4工程において、前記係合部を前記復元凸部に嵌合させた状態で前記復元凸部を熱カシメすることによって、前記基板を前記固定部に再固定する、印刷材収容容器の再製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の印刷材収容容器の再製造方法であって、
前記固定部材は、前記固定部に取り付けられ、外力を加えることによって変形可能な返し付きピンであり、
前記係合部は、前記返し付きピンを挿通可能な貫通孔と、前記返し付きピンを受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方であり、
前記印刷材収容容器の前記再製造方法は、
前記第2工程において、前記返し付きピンの形状を、前記基板を固定する前の形状に近づけるように変形させる、印刷材収容容器の再製造方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の印刷材収容容器の再製造方法であって、
前記基板は、複数の前記係合部を有し、
複数の前記係合部は、前記固定部材を挿通可能な貫通孔と、前記固定部材を受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方を含み、
前記印刷材収容容器の前記再製造方法は、
前記第2工程において、前記貫通孔に係合する前記固定部材のみを係合解除可能に変形させる、印刷材収容容器の再製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷材収容容器および印刷材収容容器の再製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取り付け部にICチップが固定された液体カートリッジにおいて、再使用可能な状態でICチップを取り出す技術が知られている(特許文献1)。この技術では、取り付け部の外縁を構成する壁部に刃部材を圧入して壁部を切断し、ICチップの裏面側に刃部材を差し入れることで、ICチップを再使用可能な状態で取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、ICチップを取り出す際に取り付け部の一部を切断するため、取り出したICチップを再び取り付けて液体カートリッジを再利用することが困難であった。さらに、液体カートリッジを再利用できたとしても、液体カートリッジにICチップを再び取り付けるためには、初回固定時に用いた固定部材とは異なる固定部材を要する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示の第1形態によれば、印刷材収容容器が提供される。この印刷材収容容器であって、端子を有する電気回路が設けられた基板と、初回固定時および前記初回固定時より後の再固定時において、前記基板を固定可能な固定部と、前記基板の前記端子を除く非端子部分と、前記固定部と、を固定する固定部材と、を備え、前記非端子部分は、前記固定部材と係合可能な係合部を有し、前記固定部材は、前記初回固定時および前記再固定時において、前記係合部と係合可能に構成される。
【0006】
(2)本開示の第2形態によれば、印刷材収容容器の再製造方法が提供される。印刷材収容容器の再製造方法において、前記印刷材収容容器は、端子を有する電気回路が設けられた基板と、初回固定時および前記初回固定時より後の再固定時において、前記基板を固定可能な固定部と、前記基板の前記端子を除く非端子部分と、前記固定部と、を固定する固定部材と、を備え、前記非端子部分は、前記固定部材と係合可能な係合部を有し、前記印刷材収容容器の前記再製造方法は、前記印刷材収容容器を用意する第1工程と、前記固定部材を、前記係合部との係合を解除可能に変形させる第2工程と、前記固定部から前記基板を取り外す第3工程と、前記基板の前記係合部を前記固定部材に係合させて、前記基板を前記固定部に再固定する第4工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】初回固定時の基板の固定方法と固定部周辺の詳細構成とを説明するための図。
【
図5】印刷材収容容器の再製造方法を示すフローチャート。
【
図6】第1実施形態の印刷材収容容器の再製造方法を説明するための上面視図。
【
図7】第1実施形態の印刷材収容容器の再製造方法を説明するための断面模式図。
【
図8】第2実施形態における印刷材収容容器の再製造方法を説明するための図。
【
図9】第3実施形態における印刷材収容容器の再製造方法を説明するための図。
【
図10】第4実施形態における印刷材収容容器の再製造方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
A-1.印刷材収容容器および印刷装置の構成:
図1は、印刷材収容容器100の一例を示す外観斜視図である。
図1には、印刷材収容容器100が収容される印刷装置のケース120も併せて図示している。印刷材収容容器100は、図示しない印刷装置の吐出ヘッドに印刷材を供給する。本実施形態では、印刷装置は、インクを吐出するインクジェットプリンターである。また、本実施形態では、印刷材収容容器100は、印刷材としてのインクを収容するインクカートリッジである。なお、他の実施形態では、印刷装置は、例えば、印刷材としてのトナーなどの粉体を用いて印刷を行うプリンターであってもよい。この場合、印刷材収容容器100は、印刷材としての粉体を収容するトナーカートリッジである。また、印刷材収容容器100は、印刷のために印刷装置に供給する印刷材を収容する用途に代えて、印刷装置から排出され、利用に供されなかった印刷材を回収して収容する用途に用いられてもよい。具体的には、印刷材収容容器100は、例えば、吐出ヘッドのクリーニング動作などによって印刷に利用されなかったインクを回収する廃液タンクであってもよい。
【0009】
印刷装置は、印刷材収容容器100を着脱可能に装着するための図示しない装置側装着部と、装置側装着部に装着された印刷材収容容器100を受け入れる装置側受入部と、を備える。装置側装着部は、引き出し可能なケース120を有する。印刷材収容容器100を印刷装置に装着する場合には、例えば、ユーザーが、引き出されたケース120に印刷材収容容器100を収容した状態で、ケース120を印刷装置内に押し進める。これにより、印刷材収容容器100が印刷装置に装着される。
【0010】
印刷材収容容器100、および、印刷材収容容器100に設けられた基板5は、再利用可能である。例えば、印刷材収容部110に収容された印刷材の残量が予め定められた閾値未満となった場合に、印刷材収容容器100は、ケース120から取り外される。そして、再利用する印刷材収容容器100の内部に印刷材が再び注入されることで、印刷材収容容器100を再利用することができる。印刷材収容容器100の再利用時において、基板5は、印刷材収容容器100から取り外される。そして、取り外された基板5は、メモリーに対して初期化などの予め定められた処理が行われた後に、再利用する印刷材収容容器100に再び組み付けられる。このようにして、印刷材収容容器100を再製造することができる。なお、再利用する印刷材収容容器100には、取り外した基板5とは異なる新たな基板5が組み付けられてもよい。また、取り外された基板5は、メモリーに対して初期化などの予め定められた処理が行われた後に、再利用する印刷材収容容器100とは異なる新たな印刷材収容容器100に組み付けられてもよい。
【0011】
印刷材収容容器100は、印刷材収容部110と、接続部材130と、を備える。印刷材収容部110は、印刷材としてのインクを収容する。
図1に示す例では、印刷材収容部110は、いわゆるインクパックであり、可撓性を有する袋状のフィルムにより形成されている。なお、印刷材収容部110の材質および形状は、これに限られるものではなく、印刷材を収容できる構成であればよい。
【0012】
接続部材130は、例えば、樹脂等により形成されている。接続部材130は、ハンドル170と、印刷材の供給口131と、基板5と、基板5を固定する固定部7と、基板5を固定部7に固定するための固定部材8と、を備える。
【0013】
ハンドル170は、印刷材収容容器100を移動させるときなどに把持される。ハンドル170には、ユーザーによって把持される把持部171が設けられる。ハンドル170は、印刷材収容部110がケース120に配置されている状態において、ケース120の外側に露出する位置に設けられている。ハンドル170は、印刷材収容容器100の長手方向に対して垂直となる方向に沿った軸を中心に回動する。すなわち、印刷材収容部110をケース120に着脱するときに、ハンドル170は、第1姿勢から回動させた第2姿勢に変化する。ハンドル170は、例えば、ポリプロプレン等の樹脂により形成される。
【0014】
供給口131は、印刷材収容部110内の印刷材を外部に吐出させるために設けられた開口である。供給口131は、接続部材130のうち、図示しない装置側受入部と嵌合する側面130aの中央部に設けられている。供給口131は、接続部材130の側面130aに取り付けられる図示しない供給口部材と、供給口部材に接続されている図示しない管状部材と、を介して、印刷材収容部110と連通している。このとき、図示しない装置側受入部には、図示しない吐出ヘッドと連通するように図示しない供給針が設けられる。そして、供給針が供給口131に挿入されることで、印刷材収容部110に収容された印刷材としてのインクが図示しない吐出ヘッド側に供給される。
【0015】
供給口131には、印刷材収容部110内の印刷材の意図しない漏出を防止するために、弁機構135が設けられている。具体的には、弁機構135は、図示しない供給針が供給口131に挿入されるまでの間において、供給口131を閉状態とし、図示しない供給針が供給口131に挿入されたときに供給口131を開状態とする。弁機構135は、例えば、図示しないシール部材と、シール部材の挿入口を防ぐ図示しない供給弁と、供給弁をシール部材に向けて付勢する図示しない付勢部材と、を備える。
【0016】
図2は、基板5の表面5aを示す平面図である。
図3は、基板5の側面5sを示す平面図である。本実施形態では、基板5は、剛板によって形成され、予め定められた厚みを有する。基板5は、印刷材収容容器100を図示しない装置側受入部に装着した装着状態において、印刷材収容容器100と印刷装置とを電気的に接続する。基板5は、印刷装置と、
図1に示す印刷材収容容器100と、を電気的に接続するための複数の端子50と、図示しない電気回路と、を備える。つまり、基板5は、印刷材収容容器100側に設けられた電気接続部である。これに対して、印刷装置の装置側受入部には、印刷材収容容器100と電気的に接続するための図示しない装置側電気接続部が設けられる。装置側電気接続部の端子は、例えば、導電性の弾性部材である。基板5に設けられた端子50は、
図2に示すように、基板5の表面5aにおいて、装置側電気接続部に設けられた図示しない端子と対応する位置に配置されている。これにより、印刷材収容容器100の装着状態において、基板5の端子50と、図示しない装置側電気接続部と、が接触することで、印刷装置と印刷材収容容器100とが電気的に接続される。
【0017】
本実施形態では、各端子50は、基板5の表面5aのうち、基板5の一端部5c側に位置する下段と、基板5の一端部5c側とは反対側の他端部5d側に位置する上段と、において、基板5の右端部5rから左端部5sに延びる直線に沿って配列されている。具体的には、上段に4つの端子50が配置され、下段に5つの端子50が配置されている。なお、端子50の数や配列パターンは、これに限られるものではない。以下において、基板5の端子50を除く部分を非端子部分59と呼ぶ。
【0018】
非端子部分59は、固定部材8と係合可能な係合部500を有する。係合部500は、非端子部分59に少なくとも1つ以上設けられる。本実施形態では、係合部500は、貫通孔53および切り欠き55である。よって、本実施形態では、係合部500は、非端子部分59に複数設けられている。
【0019】
貫通孔53は、固定部材8である後述の凸部のうち、後述する突起81を挿通可能な孔である。貫通孔53は、基板5の表面5aと裏面5bとを貫通するように形成され、非端子部分59のうち、端子50が形成された端子形成部分よりも一端部5c側に形成されている。
【0020】
切り欠き55は、固定部材8である後述の凸部のうち、後述するリブ85を受け入れ可能とする。切り欠き55は、非端子部分59のうち、端子50が形成された端子形成部分よりも他端部5d側において、他端部5dから端子50側に切り欠かれるようにして形成されている。本実施形態では、切り欠き55は、基板5の他端部5d側の中央に形成されている。なお、基板5における貫通孔53および切り欠き55の形成位置は、これに限られるものではない。貫通孔53および切り欠き55は、固定部材8と係合可能な位置に形成されていればよい。
【0021】
図3に示すように、基板5の裏面5bには、記憶装置58が設けられている。記憶装置58は、各端子50と図示しない配線を介して電気的に接続されている。記憶装置58は、例えば、印刷材収容容器100および印刷材に関する情報等を記憶する。記憶装置58に記憶される情報は、例えば、印刷材収容容器100の製造年月日、耐久使用年数、印刷材収容容器100が収容する印刷材の種類および色調である。記憶装置58に記憶された各種情報は、複数の端子50によって印刷装置に受け渡される。なお、記憶装置58は、必須の構成ではなく、基板5の裏面5bには、例えば、装置側電気接続部の接続状態を検出するための回路等が設けられてもよい。
【0022】
図4は、初回固定時における基板5の固定方法と、固定部7周辺の詳細構成と、を説明するための図である。
図4の上図は、初回固定時における固定部7周辺を上面視した上面視図である。
図4の下図は、初回固定時における固定部7周辺を、
図4の上図における4-4断面で切断した断面模式図である。
図4の上図および
図4の下図ではいずれも、矢印で矢印の左側に基板5を固定する前の状態を図示し、矢印の右側に基板5を固定した後の状態を図示している。ここで言う基板5を固定する前の状態とは、基板5が固定部7に配置された状態であって、基板5が固定部材8によって固定部7に固定されていない状態を指す。また、基板5を固定した後の状態とは、固定部7に載置された基板5が固定部材8によって固定された後の状態を指す。
【0023】
固定部7は、初回固定時、および、初回固定時より後の再固定時において、基板5を固定可能な部分である。ここで言う初回固定時とは、印刷材収容容器100に対して基板5を初回に固定する時を指す。また、再固定時とは、初回に固定された基板5を印刷材収容容器100から取り外した後に、前述したメモリーの初期化や印刷材の補充などの各種処理を経て、再び基板5を印刷材収容容器100に固定する時を指す。
【0024】
図1に示すように、本実施形態では、固定部7は、接続部材130の本体に形成された凹部である。この凹部の底面は、印刷材収容容器100をケース120に装着する際の装着方向に対して予め定められた角度だけ傾斜している。なお、固定部7の形成態様は、これに限られるものではない。固定部7は、例えば、印刷材収容容器100の装着方向に対して垂直や水平な部分であってもよい。
【0025】
図4の下図に示すように、固定部7は、基板5を収容するための窪み部701と、基板5の裏面5bの一端部5cおよび他端部5dと接触する接触部705と、固定部材8と、を備える。窪み部701は、基板5の記憶装置58と対向する底部702と、窪み部701の内壁を形成する壁部703と、によって構成される。
【0026】
固定部材8は、基板5の非端子部分59と、固定部7と、を固定する。固定部材8は、初回固定時および再固定時において、係合部500と係合可能に構成される。固定部材8は、印刷材収容容器100に少なくとも1つ以上設けられる。本実施形態では、固定部材8は、固定部7と一体に設けられ凸部801である。具体的には、固定部材8は、固定部7から突出する凸部801としての突起81およびリブ85である。よって、本実施形態では、固定部材8は、印刷材収容容器100に複数設けられている。
【0027】
突起81は、固定部7のうち、壁部703から突出するように設けられた円柱形状の凸部801である。突起81は、基板5に設けられた貫通孔53に挿入されることによって、基板5の位置決めを行うと共に、基板5を固定部7に固定する。よって、突起81は、基板5を固定部7に配置した配置状態において、貫通孔53に挿通可能な位置に形成される。
【0028】
リブ85は、固定部7のうち、壁部703および接触部705から突出するように設けられた多面体形状の凸部801である。リブ85は、基板5に設けられた切り欠き55に受け入れられることによって、基板5の位置決めを行うと共に、基板5を固定部7に固定する。よって、リブ85は、基板5の配置状態において、切り欠き55により受け入れ可能な位置に形成される。なお、凸部801としての突起81およびリブ85の形成位置は、これに限られるものではない。凸部801は、係合部500と係合可能な位置に形成されていればよい。また、凸部801としての突起81およびリブ85の形状は、係合部500と係合可能な形状であればよい。例えば、リブ85の形状は、円柱形状であってもよい。
【0029】
凸部801は、加熱によって溶融可能な熱カシメ部890,895を有する。熱カシメ部890,895は、例えば、接続部材130と同一の材料によって形成される。熱カシメ部890,895は、少なくとも凸部801の先端側に設けられる。本実施形態において、凸部801の先端側は、凸部801のうち、固定部7から離れる側を指す。なお、凸部801の一部に熱カシメ部890,895が設けられてもよく、凸部801の全体が熱カシメ部890,895であってもよい。
【0030】
A-2.初回固定時における基板の固定方法:
基板5を固定部7に対して初回に固定する場合、まず、基板5を一端部5cから他端部5dに向かう方向にスライドさせることで、切り欠き55とリブ85とが嵌合する。これにより、基板5の他端部5d側の位置決めが行われる。次に、リブ85と切り欠き55とが嵌合した状態で、基板5の一端部5c側を固定部7の接触部705に近づけることで、突起81が貫通孔53に挿通する。これにより、基板5の一端部5c側の位置決めが行われ、基板5が固定部7に配置された配置状態となる。このとき、配置状態において、
図4において矢印の左側に示すように、突起81は、貫通孔53に挿通された状態で、貫通孔53の上面側、すなわち、基板5の表面5aから突出している。また、配置状態において、リブ85は、切り欠き55に嵌合した状態で、切り欠き55の上面側、すなわち、基板5の表面5aから突出している。
【0031】
次に、凸部801の熱カシメ部890,895を熱カシメすることで、基板5が固定部7に固定される。具体的には、貫通孔53から突出した突起81の先端、すなわち、突起81の熱カシメ部890を加熱することで、突起81の熱カシメ部890が溶融して軟化する。そして、突起81の熱カシメ部890が軟化した状態で、突起81の熱カシメ部890を基板5に向けて押圧することで、
図4において矢印の右側に示すように、突起81の先端が貫通孔53の少なくとも一部を覆うように変形する。その後、空冷等によって突起81が冷却されることで、突起81が凝固する。これにより、突起81と貫通孔53とが係合して、基板5の一端部5c側が固定部7に固定される。
【0032】
同様に、切り欠き55から突出したリブ85の先端、すなわち、リブ85の熱カシメ部895を加熱することで、リブ85の熱カシメ部895が溶融して軟化する。そして、リブ85の熱カシメ部895が軟化した状態で、リブ85の熱カシメ部895を基板5に向けて押圧することで、
図4において矢印の右側に示すように、リブ85の先端が切り欠き55の少なくとも一部を覆うように変形する。その後、空冷等によってリブ85が冷却されることで、リブ85が凝固する。これにより、リブ85と切り欠き55とが係合して、基板5の他端部5d側が固定部7に固定される。なお、突起81およびリブ85の熱カシメ部890,895の溶融度合いに応じて、基板5に向けた熱カシメ部890,895の押圧作業は省略してもよい。
【0033】
A-3.印刷材収容容器の再製造方法:
図5は、印刷材収容容器100の再製造方法を示すフローチャートである。
図6は、第1実施形態における印刷材収容容器100の再製造方法を説明するための上面視図である。
図7は、第1実施形態における印刷材収容容器100の再製造方法を説明するための断面模式図である。
図7は、
図6の各工程における上面視図を7-7断面で切断した状態を図示している。
図6および
図7には、
図5に示す印刷材収容容器100の再製造方法における各工程(ステップS1~ステップS4)に対応するステップ番号を付している。
【0034】
図5に示すように、印刷材収容容器100の再製造方法において、まず、印刷材収容容器100を用意する第1工程(ステップS1)が実行される。第1工程(ステップS1)において用意する印刷材収容容器100は、
図6および
図7に示すように、係合部500と固定部材8とが係合することで固定部7に基板5が固定された状態の印刷材収容容器100である。第1工程(ステップS1)において用意する印刷材収容容器100は、例えば、印刷に供され、印刷材の残量が予め定められた閾値未満となった印刷材収容容器100である。
【0035】
図5に示すように、第1工程(ステップS1)の後に、係合部500との係合を解除可能に変形させる第2工程(ステップS2)が実行される。本実施形態では、係合部500としての貫通孔53に固定部材8としての突起81が挿通した状態で熱カシメされている。そのため、基板5を固定部7から取り外すために、貫通孔53と突起81との係合を解除する必要がある。このとき、突起81は、熱カシメ部890を有する。そのため、
図6および
図7に示すように、突起81の熱カシメ部890を再び溶融して、貫通孔53との係合を解除可能とするように突起81を変形させることで、貫通孔53と突起81との係合を解除することができる。さらに、貫通孔53と突起81との係合を解除した場合に、切り欠き55とリブ85との係合は、基板5を他端部5dから一端部5cに向かう方向にスライドさせることで解除することができる。つまり、貫通孔53と突起81との係合を解除することで、リブ85を切断したり削り落としたりすることなく、基板5を固定部7から取り外すことができる。
【0036】
図5に示すように、第2工程(ステップS2)の後に、固定部7から基板5を取り外す第3工程(ステップS3)が実行される。本実施形態では、熱カシメ部890が再溶融および再凝固可能であることを利用して、基板5を固定部7から取り外すと共に、固定部材8を係合部500と再係合可能な形状に復元する。具体的には、
図6および
図7に示すように、加熱によって突起81の熱カシメ部890を溶融させた状態で、切り欠き55が位置する基板5の他端部5d側を支点としながら、基板5の一端部5c側を接触部705から離れる離間方向D1に向けて持ち上げる。このとき、基板5は、凸部801としての突起81の形状を係合部500としての貫通孔53によって規制しながら、固定部7から取り外される。その後、突起81は、空冷等により再び凝固する。これにより、基板5を固定部7から取り外す過程において、溶融された熱カシメ部890を係合部500と再び係合可能な形状に復元させた復元凸部809を形成することができる。本実施形態では、復元凸部809は、貫通孔53と再び係合可能な形状に復元させた突起81である。
【0037】
なお、凸部801の全体が熱カシメ部890,895である場合に、第2工程(ステップS2)において、凸部801の熱カシメ部890は、半溶融状態となる程度に溶融されることが好ましい。ここで言う半溶融状態とは、熱カシメ部890が加熱される前よりも軟化した状態、かつ、溶融された凸部801の形状を自立的に保持できる状態を指す。このようにすると、第3工程(ステップS3)において、基板5を固定部7から取り外す過程において、貫通孔53から突起81を容易に抜き出すことができると共に、復元凸部809を容易に形成することができる。
【0038】
図5に示すように、第3工程(ステップS3)の後に、基板5の係合部500を固定部材8に係合させて、基板5を固定部7に再固定する第4工程(ステップS4)が実行される。本実施形態では、
図6および
図7に示すように、切り欠き55とリブ85とを嵌合させた状態で、切り欠き55が位置する基板5の他端部5d側を支点としながら、基板5の一端部5c側を接触部705に近づく接近方向D2に向けて押し下げる。そして、係合部500としての貫通孔53を、復元凸部809としての突起81に嵌合させた状態で、突起81の熱カシメ部890を再び熱カシメする。再固定時における突起81の熱カシメ方法は、
図4に示す初回固定時と同様である。これにより、基板5を固定部7に再固定することができる。
【0039】
上記第1実施形態によれば、印刷材収容容器100および基板5を再利用することができる。さらに、基板5の初回固定時と再固定時とにおいて、同一の固定部材8を用いて、基板5を固定部7に再固定することができる。具体的には、固定部材8の形態が、係合部500との係合を解除可能に変形させることができない形態である場合、基板5を固定部7から取り外す際に、固定部材8を切断するなどして固定部材8と係合部500との係合を解除する場合がある。この場合、印刷材収容容器100を再製造する際に、固定部材8を再利用できない場合がある。これに対して、上記第1実施形態によれば、固定部材8は、係合部500との係合を解除可能に変形できる。そして、係合部500との再係合を可能とするように固定部材8を復元することができる。そのため、印刷材収容容器100の再製造時に、固定部材8を切断したり削り落としたりする等により破壊することなく、固定部材8を再利用することができる。換言すると、新たな固定部材8を再固定時に必要としないため、再固定のための追加部材が不要となる。よって、初回固定時に用いた固定部材8とは異なる固定部材8を要することなく、基板5を固定部7に再固定して、印刷材収容容器100を再製造することができる。
【0040】
また、上記第1実施形態によれば、
図6および
図7に示すように、基板5および固定部7は、再固定の前後において共通の構造を用いるため、基板5を固定部7に固定する際に、基板5の位置決めをしやすくできる。これにより、基板5の端子50と装置側電気接続部の端子とが電気的に接続されない可能性を低減することができる。
【0041】
また、上記第1実施形態によれば、基板5は、複数の係合部500を有する。複数の係合部500は、固定部材8を挿通可能な貫通孔53と、固定部材8を受け入れ可能な切り欠き55と、の少なくとも一方を含む。そして、印刷材収容容器100を再製造する場合に、第2工程(ステップS2)において、貫通孔53に係合する固定部材8のみを係合解除可能に変形させることができる。このようにすると、基板5に複数の係合部500が存在する場合に、貫通孔53と係合する固定部材8のみの係合を解除することで、基板5を固定部7から取り外すことができる。そのため、印刷材収容容器100の再製造に要する時間を短縮することができる。
【0042】
また、上記第1実施形態によれば、印刷材収容容器100を再製造する場合に、第2工程(ステップS2)において、貫通孔53に係合する固定部材8のみを係合解除可能に変形させることができる。このようにすると、切り欠き55とリブ85とを嵌合させた状態で、貫通孔53と突起81とを係合させることができる。これにより、さらに基板5の位置決めをしやすくできる。また、固定部7に対する基板5の固定品質が低下することを抑制できる。さらに、基板5の位置決めを良好に行えることで、印刷材収容容器100をより容易に再製造することができる。
【0043】
また、上記第1実施形態によれば、貫通孔53と突起81との係合を解除した場合に、切り欠き55とリブ85との係合は、基板5を他端部5dから一端部5cに向かう方向にスライドさせることで解除することができる。これにより、印刷材収容容器100の再製造に係る回数の増加に伴って基板5が劣化したり、固定部材8による基板5の固定力が低下したりする可能性を低減することができる。
【0044】
また、上記第1実施形態によれば、印刷材収容容器100および基板5を再利用することができる。そのため、印刷材収容容器100の再製造時に係る環境負荷を低減することができる。
【0045】
また、上記第1実施形態によれば、固定部材8を、係合部500との係合を解除可能に変形させることで、基板5を固定部7から取り外すことができる。そのため、印刷材収容容器100の再製造時に、固定部材8を切断したり削り落としたりすることなく、固定部材8を再利用することができる。よって、印刷材収容容器100の再製造時における廃棄物を削減することができる。また、印刷材収容容器100の再製造時において、切削屑等の発生量が低減できるため、固定部7が切削屑等により汚染される可能性を低減することができる。
【0046】
また、上記第1実施形態によれば、初回固定時と再固定時とで、基板5の固定方法が共通する。そのため、印刷材収容容器100の再製造を行う場合に、初回に印刷材収容容器100を製造するための製造装置の少なくとも一部を転用することができる。よって、印刷材収容容器100の再製造に要する製造装置の数および種類が増加することを抑制できる。
【0047】
また、上記第1実施形態によれば、
図6および
図7に示すように、初回に製造された印刷材収容容器100と、再製造された印刷材収容容器100とで、固定部7付近における外観の差が生じにくい。つまり、外観を損ねることなく、印刷材収容容器100を再製造することができる。
【0048】
また、上記第1実施形態によれば、熱カシメ部890,895は、加熱により溶融させることで、形状を変化させやすい。そのため、固定部材8としての凸部801に設けられた熱カシメ部890を溶融させることで、基板5を固定部7から取り外す過程において、係合部500と再係合が可能な復元凸部809を容易に形成することができる。これにより、印刷材収容容器100を容易に再製造することができる。
【0049】
また、上記第1実施形態によれば、凸部801の熱カシメ部890,895の形状を係合部500によって規制しながら、基板5を固定部7から取り外すことで、再固定時に固定部材8として用いられる復元凸部809を形成することができる。そのため、上記第1実施形態によれば、復元凸部809の形状を規制するために、基板5以外の別部材を用いることなく、復元凸部809を形成することができる。
【0050】
また、上記第1実施形態によれば、基板5は、剛板によって形成され、予め定められた厚みを有する。そのため、基板5を固定部7から取り外す過程において、溶融した熱カシメ部890の形状を規制しやすくできる。
【0051】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態における印刷材収容容器100の再製造方法を説明するための図である。上記第1実施形態では、
図6に示すように、リブ85のように、初回固定部材に対して何ら処理を施すことなく再固定部材として使用したり、突起81のように、初回固定部材の形状を復元させた復元凸部809を形成して再利用したりしていた。つまり、上記第1実施形態では、初回固定時に用いられる固定部材8としての初回固定部材と、再固定時に用いられる固定部材8としての再固定部材とは、同一であった。これに対して、本実施形態では、印刷材収容容器100は、初回固定部材と、初回固定部材とは異なる位置に形成された再固定部材と、を有する。初回固定部材は、
図6に示す突起81およびリブ85である。よって、本実施形態では、固定部材8の数、および、形成態様が
図6に示す第1実施形態とは異なる。なお、第1実施形態における各ステップと同一のステップ、および、同一の構成については、同一の符号を付すと共に説明を省略する。
【0052】
印刷材収容容器100は、再固定部材として、熱カシメ部891,892を先端側に有する2つの凸部801を備える。2つの凸部801は、第1側方突起811および第2側方突起812である。第1側方突起811および第2側方突起812は、固定部7から突出するように設けられた円柱状の凸部801である。第1側方突起811は、第1陥入部571に受け入れられることによって、基板5の位置決めを行うと共に、基板5を固定部7に再固定する。第2側方突起812は、第2陥入部572に受け入れられることによって、基板5の位置決めを行うと共に、基板5を固定部7に再固定する。なお、凸部801の形成位置は、これに限られるものではない。
【0053】
図2に示すように、本実施形態では、基板5は、4つの係合部500を有する。具体的には、基板5は、貫通孔53および切り欠き55に加えて、係合部500としての第1陥入部571と、第2陥入部572と、を有する。第1陥入部571は、凸部801のうち、第1側方突起811を受入可能とする。第1陥入部571は、非端子部分59のうち、端子50が形成された端子形成部分よりも左端部5s側において、左端部5sから端子50側に切り欠かれるようにして形成されている。また、第2陥入部572は、凸部801のうち、第2側方突起812を受入可能とする。第2陥入部572は、非端子部分59のうち、端子形成分よりも右端部5r側において、右端部5rから端子50側に切り欠かれるようにして形成されている。第1陥入部571および第2陥入部572は、一端部5cよりも他端部5dに近い側に形成されている。なお、基板5における係合部500の形成位置は、これに限られるものではない。
【0054】
図8では、固定部7に対して、初回に基板5を固定する前の状態を初期状態として図示している。また、基板5が初回固定部材によって固定部7に初回に固定された後の状態を第1カシメ状態として図示している。初回固定時における基板5の固定方法、すなわち、初期状態から第1カシメ状態へと移行する過程については、
図4に示す第1実施形態と同一である。さらに、第1カシメ状態における基板5を固定部7から取り外した後に、再固定部材によって基板5が固定部7に再固定された後の状態を第2カシメ状態として図示している。よって、本実施形態では、
図5に示す第1工程(ステップS1)において、
図8に示す第1カシメ状態の印刷材収容容器100が用意される。そして、第1カシメ状態の印刷材収容容器100から基板5を取り外した後に、再固定部材によって基板5を固定部7に再固定することで、第2カシメ状態の印刷材収容容器100が再製造される。
【0055】
図6および
図7に示す第1実施形態と同様に、第1カシメ状態の印刷材収容容器100に対して、第2工程(ステップS2)および第3工程(ステップS3)を実行することで、突起81と貫通孔53との係合、および、リブ85と切り欠き55との係合が解除される。これにより、基板5が固定部7から取り外されると共に、溶融した突起81から復元凸部809が形成される。なお、
図8に示すように、リブ85についても、突起81と同様に、熱カシメ部895を溶融して復元凸部809としてもよい。
【0056】
第4工程(ステップS4)において、基板5を一端部5cから他端部5dに向かう方向にスライドさせて、切り欠き55とリブ85とを嵌合させる。これにより、第1陥入部571と第1側方突起811とが嵌合し、かつ、第2陥入部572と第2側方突起812とが嵌合する。その後、貫通孔53と復元凸部809としての突起81とを嵌合させる。そして、第1側方突起811の熱カシメ部891、および、第2側方突起812の熱カシメ部892をそれぞれ熱カシメすることで、第2カシメ状態の印刷材収容容器100を製造することができる。
【0057】
なお、初回固定部材と再固定部材との構成は、これに限られるものではない。例えば、初回固定部材が第1側方突起811および第2側方突起812であり、再固定部材が突起81およびリブ85であってもよい。つまり、第1カシメ状態と第2カシメ状態とは、いずれが先であってもよい。
【0058】
また、本実施形態のように、印刷材収容容器100において初回固定部材と再固定部材とがそれぞれ形成されている場合には、固定に供されていない固定部材8の先端側が係合部500から突出した状態となる場合がある。しかし、このような場合であっても、固定部材8の長さ、すなわち、固定部7から突出する突出方向における寸法を調整することで、印刷材収容容器100における他の部材との不用意な接触および干渉を回避することができる。
【0059】
上記第2実施形態によれば、
図8に示すように、固定部材8は、印刷材収容容器100に複数設けられる。そして、印刷材収容容器100は、固定部材8としての初回固定部材と、固定部材8としての再固定部材と、を有する。これにより、基板5が固定部7に固定された印刷材収容容器100について、初回固定品と再固定品とを区別しやすくできる。これにより、固定部7に対して基板5を再固定した回数、すなわち、印刷材収容容器100の再製造回数を目視によって確認しやすくできる。
【0060】
また、上記第2実施形態によれば、印刷材収容容器100を再製造する過程において、初回固定部材が破損した場合であっても、再固定部材を用いて基板5を固定部7に再固定できる。これにより、印刷材収容容器100の再製造時において、固定部7に対する基板5の固定品質が低下することを抑制できる。また、印刷材収容容器100を再製造する過程において、初回固定部材が破損した場合であっても、固定部7を取り替えたり、修理したりする必要がないため、印刷材収容容器100を再利用できる可能性を向上させることができる。
【0061】
また、上記第2実施形態によれば、基板5を固定部7に再固定する時点において、初回固定部材であった突起81の形状は復元され、復元凸部809となっている。そのため、印刷材収容容器100の再製造時において、基板5を固定部7に位置決めする際に、貫通孔53に対して復元凸部809としての突起81を容易に挿通させることができる。換言すると、印刷材収容容器100の再製造時において、基板5を固定部7に位置決めする際に、貫通孔53と突起81とが干渉することを抑制できる。これにより、印刷材収容容器100を容易に再製造することができる。
【0062】
また、上記第2実施形態によれば、初回固定部材は、熱カシメ部890,895を有する凸部801である。再固定部材は、初回固定部材とは異なる位置に形成された固定部材8であり、初回固定部材と同じく熱カシメ部891,892を有する凸部801である。そのため、再固定の度に新たな固定部材8を要することなく、印刷材収容容器100を再製造できる。
【0063】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態における印刷材収容容器100の再製造方法を説明するための図である。本実施形態では、基板5の構成の一部と、固定部材8の構成の一部とが、
図6に示す第1実施形態および
図8に示す第2実施形態とは異なる。また、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、印刷材収容容器100は、初回固定部材と再固定部材とを有する。初回固定部材は、
図6および
図8に示す突起81およびリブ85である。上記実施形態における各ステップと同一のステップ、および、同一の構成については、同一の符号を付すと共に説明を省略する。以下において、突起81を挿通可能とする貫通孔53を第1貫通孔531とも呼ぶ。
【0064】
印刷材収容容器100は、再固定部材として、熱カシメ部893,894を先端側に有する2つの凸部801を備える。2つの凸部801は、第3側方突起813および第4側方突起814である。第3側方突起813および第4側方突起814は、固定部7から突出するように設けられた円柱状の凸部801である。第3側方突起813は、第2貫通孔532に挿通することによって、基板5の位置決めを行うと共に、基板5を固定部7に再固定する。第4側方突起814は、第3貫通孔533に挿通することによって、基板5の位置決めを行うと共に、基板5を固定部7に再固定する。なお、凸部801の形成位置は、これに限られるものではない。
【0065】
基板5は、4つの係合部500を有する。具体的には、基板5は、第1貫通孔531および切り欠き55に加えて、係合部500としての第2貫通孔532と第3貫通孔533と、を有する。第1貫通孔531および切り欠き55は、初回固定部材と係合する係合部500としての初回係合部である。第2貫通孔532は、凸部801のうち、第3側方突起813を挿通可能とする。第3貫通孔533は、第4側方突起814を挿通可能とする。第2貫通孔532および第3貫通孔533は、再固定部材と係合する係合部500としての再係合部である。
【0066】
第2貫通孔532は、非端子部分59のうち、端子50が形成された端子形成部分よりも一端部5c側において、第1貫通孔531と左端部5sとの間に形成されている。また、第3貫通孔533は、非端子部分59のうち、端子形成部分よりも一端部5c側において、第1貫通孔531と右端部5rとの間に形成されている。つまり、第1貫通孔531と第2貫通孔532と第3貫通孔533とは、基板5の右端部5rから左端部5sに延びる直線に沿って配列されている。なお、基板5における係合部500の形成位置は、これに限られるものではない。
【0067】
図9では、固定部7に対して、初回に基板5を固定する前の状態を初期状態として図示している。また、基板5が初回固定部材によって固定部7に初回に固定された後の状態を第1カシメ状態として図示している。初回固定時における基板5の固定方法、すなわち、初期状態から第1カシメ状態へと移行する過程については、
図4に示す第1実施形態と同一である。そして、第1カシメ状態における基板5を固定部7から取り外した後に、再固定部材としての第3側方突起813によって基板5が固定部7に再固定された後の状態を第2カシメ状態として図示している。さらに、第2カシメ状態における基板5を固定部7から取り外した後に、再固定部材としての第4側方突起814によって基板5が固定部7に再固定された後の状態を第3カシメ状態として図示している。つまり、本実施形態では、印刷材収容容器100は、2回再製造される場合を例に挙げて説明する。
【0068】
印刷材収容容器100の1回目の再製造では、
図5に示す第1工程(ステップS1)において、
図9に示す第1カシメ状態の印刷材収容容器100が用意される。そして、
図6および
図7に示す第1実施形態と同様に、第1カシメ状態の印刷材収容容器100に対して、第2工程(ステップS2)および第3工程(ステップS3)が実行される。これにより、突起81と貫通孔53との係合、および、リブ85と切り欠き55との係合が解除される。そして、基板5が固定部7から取り外されると共に、溶融した突起81から復元凸部809が形成される。
【0069】
第4工程(ステップS4)において、基板5を一端部5cから他端部5dに向かう方向にスライドさせて、切り欠き55とリブ85とを嵌合させる。その後、第1貫通孔531と復元凸部809としての突起81、第2貫通孔532と第3側方突起813、および、第3貫通孔533と第4側方突起814をそれぞれ嵌合させる。そして、第3側方突起813の熱カシメ部893を熱カシメすることで、第2カシメ状態の印刷材収容容器100を製造することができる。
【0070】
さらに、印刷材収容容器100の2回目の再製造では、
図5に示す第1工程(ステップS1)において、
図9に示す第2カシメ状態の印刷材収容容器100が用意される。次に、第2工程(ステップS2)において、第3側方突起813の熱カシメ部893を加熱によって溶融させる。これにより、第3側方突起813と第2貫通孔532との係合が解除される。そして、第3工程(ステップS3)において、切り欠き55が位置する基板5の他端部5d側を支点としながら、基板5の一端部5c側を接触部705から離れる離間方向D1に向けて持ち上げることで、基板5が固定部7から取り外される。これにより、溶融した第3側方突起813から復元凸部809が形成される。
【0071】
第4工程(ステップS4)において、基板5を一端部5cから他端部5dに向かう方向にスライドさせて、切り欠き55とリブ85とを嵌合させる。その後、第1貫通孔531と復元凸部809としての突起81、第2貫通孔532と第3側方突起813、および、第3貫通孔533と第4側方突起814をそれぞれ嵌合させる。そして、第4側方突起814の熱カシメ部894を熱カシメすることで、第3カシメ状態の印刷材収容容器100を製造することができる。
【0072】
なお、初回固定部材と再固定部材との構成は、これに限られるものではない。例えば、初回固定部材がリブ85および第3側方突起813であり、再固定部材がリブ85および突起81であってもよい。つまり、第1カシメ状態と、第2カシメ状態と、第3カシメ状態とは、いずれが先でいずれが後であってもよい。
【0073】
上記第3実施形態によれば、印刷材収容容器100は、初回固定部材に係合する係合部500としての初回係合部と、再固定部材に係合する係合部500としての再係合部と、を備える。このとき、基板5には、複数の再係合部が形成されている。そして、複数の再固定部材が固定部7から突出するように形成されている。このように、再固定部材と再係合部とを2組以上形成することで、印刷材収容容器100を2回以上再製造する場合に、何回目の再製造による再固定品であるかを区別しやすくできる。
【0074】
D.第4実施形態:
図10は、第4実施形態における印刷材収容容器100の再製造方法を説明するための図である。本実施形態では、熱カシメ部890~894を有する凸部801とは異なる固定部材8を用いて、印刷材収容容器100を再製造する方法を説明する。本実施形態では、固定部材8は、固定部7に取り付けられた返し付きピン87である。返し付きピン87の基端部87bは、固定部7に取り付けられている。返し付きピン87は、外力を加えることによって容易に変形可能なピンであり、例えば、いわゆる割りピンである。
図10に示す例では、返し付きピン87は、固定部7から突出する二股のピンである。
【0075】
本実施形態における基板6は、樹脂製のフィルム部材等によって形成されたフィルム状のフィルム基板である。フィルム基板6の非端子部分69には、少なくとも1つ以上の係合部600が形成されている。係合部600は、返し付きピン87を挿通可能な貫通孔63と、返し付きピン87を受け入れ可能な切り欠き65と、の少なくとも一方である。本実施形態では、フィルム基板6に、貫通孔63と切り欠き65との両者が形成されている。
【0076】
貫通孔63は、返し付きピン87を挿通可能な孔である。貫通孔63は、フィルム基板6の表面6aと裏面6bとを貫通するように形成される。
図10に示す例では、非端子部分69のうち、端子60が形成された端子形成部分よりも一端部6c側に形成されている。切り欠き65は、返し付きピン87を受入可能とする。切り欠き55は、非端子部分59のつい、端子形成部分よりも他端部6d側において、他端部6dから端子50側に切り欠かれるようにして形成されている。なお、貫通孔63および切り欠き65の形成位置は、これに限られるものではない。貫通孔63および切り欠き65は、返し付きピン87と係合可能な位置に形成されていればよい。
【0077】
フィルム基板6を固定部7に固定する場合、
図10の左図に固定解除状態として示すように、貫通孔53と切り欠き65とにそれぞれ返し付きピン87を挿通させて、固定部7上にフィルム基板6が配置される。固定解除状態において、返し付きピン87の形状は、概ね直線状である。そして、返し付きピン87の先端部87a側に外力を加えることで、貫通孔63および切り欠き65の淵部63a,65aを支点としながら、返し付きピン87の先端部87a側をフィルム基板6の表面6aに近づけるようにして変形させる。これにより、
図10の右図に固定状態として示すように、返し付きピン87の先端部87aが、フィルム基板6を固定部7側に押さえ込むようにして、フィルム基板6が固定部7に固定される。つまり、固定状態において、返し付きピン87の形状は、貫通孔63から基板5の表面5aに沿うようにして折れ曲がったL字形状である。
【0078】
固定部7からフィルム基板6を取り外す場合、返し付きピン87の先端部87a側に外力を加えることで、淵部63a,65aを支点としながら、返し付きピン87の先端部87a側をフィルム基板6の表面6aから遠ざけるようにして変形させる。そして、返し付きピン87の形状が固定解除状態における直線状に戻る。これにより、係合部500と返し付きピン87との係合が解除される。
【0079】
上記第4実施形態によれば、
図10に示すように、印刷材収容容器100を再製造する場合、返し付きピン87の形状を、基板6を固定する前の形状に近づけるように変形させることで、基板6を固定部7から容易に取り外すことができる。これにより、印刷材収容容器100を容易に再製造することができる。
【0080】
また、上記第4実施形態によれば、返し付きピン87の形状を、基板6を固定する前の形状に近づけるように変形させることで、固定部材8と係合部500との係合を解除することができる。加熱によって固定部材8を溶融することなく、固定部材8の形状を復元できる。つまり、固定部材8を復元する過程において、固定部材8の形状を規制するために、基板5が一定以上の厚さや剛性を有する必要がない。そのため、剛板によって形成された基板5よりも薄く軟らかいフィルム基板6であっても、容易に固定部7から取り外して再固定することができる。よって、基板5,6の種類や性質を限定することなく、印刷材収容容器100を容易に再製造することができる。
【0081】
また、上記第4実施形態によれば、加熱によって固定部材8を溶融することなく、固定部材8の形状を復元できる。そのため、印刷材収容容器100の再製造に係る作業の安全性を高めることができる。
【0082】
なお、固定部材8としての返し付きピン87は、フィルム基板6よりも剛性が高い
図2に示すような基板5を固定部7に固定するために用いられてもよい。
【0083】
E.他の実施形態:
E-1:他の実施形態1:
上記実施形態では、基板5,6は、複数の係合部500,600として貫通孔53,63と切り欠き55,65との両者を備えていた。しかし、本開示は、これに限られるものではない。基板5,6が複数の係合部500,600を備える場合に、基板5,6は、例えば、係合部500,600として貫通孔53,63のみを備えてもよい。係合部500,600が貫通孔53,63のみである場合、印刷材収容容器100の再製造時において、固定部材8と貫通孔53,63との係合を全て解除することで、基板5,6を固定部7から取り外すことができる。このような形態であっても、印刷材収容容器100の再製造時において、固定部材8を、係合部500,600との係合を解除可能に変形させることで、基板5,6を固定部7に再固定することができる。
【0084】
E-2:他の実施形態2:
上記実施形態では、基板5,6は、複数の係合部500,600として貫通孔53,63と切り欠き55,65との両者を備えていた。しかし、本開示は、これに限られるものではない。基板5,6が複数の係合部500,600を備える場合に、基板5は、例えば、係合部500,600として切り欠き55,65のみを備えてもよい。係合部500,600が切り欠き55,65のみである場合、印刷材収容容器100の再製造時において、複数の係合箇所の一部の係合を解除することで、基板5,6を固定部7から取り外すことができる。例えば、基板5,6の一端部5c,6cの中央と、他端部5d,6dの中央と、にそれぞれ切り欠き55,65が形成された基板5,6を固定部7から取り外す場合には、一端部5c,6c側の固定部材8と、他端部5d,6d側の固定部材8と、のいずれか一方のみを係合解除可能に変形させればよい。このような形態であっても、印刷材収容容器100の再製造時において、固定部材8を、係合部500,600との係合を解除可能に変形させることで、基板5,6を固定部7に再固定することができる。
【0085】
F.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0086】
(1)本開示の第1形態によれば、印刷材収容容器が提供される。この印刷材収容容器は、端子を有する電気回路が設けられた基板と、初回固定時および前記初回固定時より後の再固定時において、前記基板を固定可能な固定部と、前記基板の前記端子を除く非端子部分と、前記固定部と、を固定する固定部材と、を備え、前記非端子部分は、前記固定部材と係合可能な係合部を有し、前記固定部材は、前記初回固定時および前記再固定時において、前記係合部と係合可能に構成される。この形態によれば、初回固定時に用いた固定部材とは異なる固定部材を要することなく、印刷材収容容器に基板を再び取り付けて、印刷材収容容器を再利用することができる。
【0087】
(2)上記形態において、前記固定部材は、前記固定部と一体に設けられ、加熱によって溶融可能な熱カシメ部を有する凸部であり、前記係合部は、前記凸部を挿通可能な貫通孔と、前記凸部を受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方であってもよい。この形態によれば、加熱によって熱カシメ部を溶融させることで、固定部材8としての凸部801の形状を変化させることができる。このようにすると、基板を固定部から取り外したり、基板を固定部に再固定したりする際に、凸部の形状を容易に変化させることができる。そのため、加熱によって熱カシメ部を溶融させた状態で、基板を固定部から取り外すことによって、凸部を、係合部と再び係合可能な形状に復元することができる。つまり、再固定時に固定部材を再利用することができる。
【0088】
(3)上記形態において、前記固定部材は、前記固定部に取り付けられ、外力を加えることによって変形可能な返し付きピンであり、前記係合部は、前記返し付きピンを挿通可能な貫通孔と、前記返し付きピンを受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方であってもよい。この形態によれば、返し付きピンを変形させることによって、基板を固定部から容易に取り外すことができると共に、固定部に対して基板を容易に再固定することができる。
【0089】
(4)上記形態において、前記基板は、フィルム状のフィルム基板であってもよい。この形態によれば、返し付きピンを変形させることによって、基板を固定部に着脱できる。そのため、フィルム基板のように、剛板によって形成された基板よりも剛性が低い基板であっても、基板を固定部から容易に取り外すことができると共に、固定部に対して基板を容易に再固定することができる。
【0090】
(5)上記形態において、前記固定部材は、複数設けられ、前記印刷材収容容器は、前記初回固定時に用いられる前記固定部材としての初回固定部材と、前記再固定時に用いられる前記固定部材としての再固定部材と、を有してもよい。この形態によれば、固定部材は、印刷材収容容器に複数設けられる。そして、印刷材収容容器は、初回固定部材と再固定部材とを有する。これにより、基板が固定部に固定された印刷材収容容器について、初回固定品と再固定品とを区別しやすくできる。つまり、再利用された印刷材収容容器であるか否かを判別しやすくできる。
【0091】
(6)上記形態において、前記係合部は、複数設けられ、前記印刷材収容容器は、前記初回固定部材と係合する前記係合部としての初回係合部と、前記再固定部材と係合する前記係合部としての再係合部と、を有してもよい。この形態によれば、初回固定時と再固定時とにおいてそれぞれ異なる係合部に固定部材が係合される。これにより、基板が固定部に固定された印刷材収容容器について、初回固定品と再固定品とを区別しやすくできる。つまり、再利用された印刷材収容容器であるか否かを判別しやすくできる。
【0092】
(7)本開示の第2形態によれば、印刷材収容容器の再製造方法が提供される。印刷材収容容器の再製造方法において、前記印刷材収容容器は、端子を有する電気回路が設けられた基板と、初回固定時および前記初回固定時より後の再固定時において、前記基板を固定可能な固定部と、前記基板の前記端子を除く非端子部分と、前記固定部と、を固定する固定部材と、を備え、前記非端子部分は、前記固定部材と係合可能な係合部を有し、前記印刷材収容容器の前記再製造方法は、前記印刷材収容容器を用意する第1工程と、前記固定部材を、前記係合部との係合を解除可能に変形させる第2工程と、前記固定部から前記基板を取り外す第3工程と、前記基板の前記係合部を前記固定部材に係合させて、前記基板を前記固定部に再固定する第4工程と、を備える。この形態によれば、初回固定時に用いた固定部材とは異なる固定部材を要することなく、印刷材収容容器に基板を再び取り付けて、印刷材収容容器を再利用することができる。
【0093】
(8)上記形態において、前記固定部材は、前記固定部と一体に設けられ、加熱によって溶融可能な熱カシメ部を有する凸部であり、前記係合部は、前記凸部を挿通可能な貫通孔と、前記凸部を受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方であり、前記印刷材収容容器の前記再製造方法は、前記第2工程において、前記凸部の前記熱カシメ部を溶融することによって、前記固定部材を、前記係合部との係合を解除可能に変形させ、前記第3工程において、前記凸部の形状を前記係合部によって規制しながら、前記基板を前記固定部から取り外すことによって、溶融された前記熱カシメ部を前記係合部と再び係合可能な形状に復元させた復元凸部を形成し、前記第4工程において、前記係合部を前記復元凸部に嵌合させた状態で前記復元凸部を熱カシメすることによって、前記基板を前記固定部に再固定してもよい。この形態によれば、基板を固定部から取り外す過程において、凸部の形状を、係合部との再係合が可能な形状に復元することができる。これにより、再固定時に固定部材を再利用することができる。
【0094】
(9)上記形態において、前記固定部材は、前記固定部に取り付けられ、外力を加えることによって変形可能な返し付きピンであり、前記係合部は、前記返し付きピンを挿通可能な貫通孔と、前記返し付きピンを受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方であり、前記印刷材収容容器の前記再製造方法は、前記第2工程において、前記返し付きピンの形状を、前記基板を固定する前の形状に近づけるように変形させてもよい。この形態によれば、返し付きピンを変形させることによって、基板を固定部から容易に取り外すことができると共に、固定部に対して基板を容易に再固定することができる。
【0095】
(10)上記形態おいて、前記基板は、複数の前記係合部を有し、複数の前記係合部は、前記固定部材を挿通可能な貫通孔と、前記固定部材を受け入れ可能な切り欠きと、の少なくとも一方を含み、前記印刷材収容容器の前記再製造方法は、前記第2工程において、前記貫通孔に係合する前記固定部材のみを係合解除可能に変形させてもよい。この形態によれば、貫通孔と係合する固定部材の係合のみを解除することによって、基板を固定部から取り外すことができる。これにより、印刷材収容容器の再製造に要する時間を短縮することができる。
【0096】
上述した本開示の各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことが可能である。また、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、上述した本開示の一形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部を上述した本開示の他の形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部と組み合わせて、本開示の独立した一形態とすることも可能である。
【0097】
本開示は、印刷材収容容器および印刷材収容容器の再製造方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、印刷材収容容器を備える印刷装置、印刷材収容容器の再製造装置などの形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0098】
5…基板、5a,6a…表面、5b,6b…裏面、5c,6c…一端部、5d,6d…他端部、5r,6r…右端部、5s,6s…左端部、6…フィルム基板、7…固定部、8…固定部材、50,60…端子、53,63…貫通孔、55,65…切り欠き、58…記憶装置、59,69…非端子部分、63a,65a…淵部、81…突起、85…リブ、87…返し付きピン、87a…先端部、87b…基端部、100…印刷材収容容器、110…印刷材収容部、120…ケース、130…接続部材、130a…側面、131…供給口、135…弁機構、170…ハンドル、171…把持部、500,600…係合部、531…第1貫通孔、532…第2貫通孔、533…第3貫通孔、571…第1陥入部、572…第2陥入部、701…窪み部、702…底部、703…壁部、705…接触部、801…凸部、809…復元凸部、811…第1側方突起、812…第2側方突起、813…第3側方突起、814…第4側方突起、890~895…熱カシメ部、D1…離間方向、D2…接近方向