(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180997
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電動工具及び電動工具システム
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B25B23/14 620J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094715
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 直規
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038CC08
(57)【要約】
【課題】使い勝手を向上させた電動工具及び電動工具システムを提供する。
【解決手段】電動工具2は、締付部23とセンサ部24と通信部25と記憶部27とを備える。センサ部24は、締付部23による締付トルクを少なくとも測定し、測定の結果に関連する作業データを取得する。通信部25は、前記作業データを送信する。記憶部27は、前記作業データを記憶する。通信部25が記憶部27に記憶されている前記作業データを送信する通信モードは、第1通信モードと第2通信モードとを含む。通信部25は、前記第1通信モードでは、前記締付作業の合間に、記憶部27に記憶されている作業データのうち一部のデータである第1作業データを送信し、第2通信モードでは、全ての前記締付作業の完了後に、記憶部27に記憶されている前記作業データのうち前記第1作業データを除くデータである第2作業データ、を少なくとも送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源の駆動力によって部材の締付作業を行う締付部と、
前記締付部による締付トルクを少なくとも測定し、測定の結果に関連する作業データを取得する測定処理、を実行するセンサ部と、
前記作業データを送信する通信部と、
前記作業データを記憶する記憶部と、
前記締付部、前記センサ部、前記通信部、及び前記記憶部を収容する可搬型の工具本体と、を備え、
前記通信部が前記記憶部に記憶されている前記作業データを送信する通信モードは、第1通信モードと、第2通信モードとを含み、
前記通信部は、
前記第1通信モードでは、前記締付作業の合間に、前記記憶部に記憶されている前記作業データ、の一部である第1作業データを送信し、
前記第2通信モードでは、全ての前記締付作業の完了後に、前記記憶部に記憶されている前記作業データのうち前記第1作業データを除くデータである第2作業データ、を少なくとも送信する、
電動工具。
【請求項2】
前記通信部は、
前記第1通信モードでは、1回又は複数回の前記締付作業が終わる度に、前記記憶部に記憶されている前記作業データのうち前記1回又は前記複数回の前記締付作業に対応する前記第1作業データを送信し、
前記第2通信モードでは、全ての前記締付作業が完了した後に、前記記憶部に記憶されている前記作業データのうち、全ての前記締付作業に対応する前記第2作業データを少なくとも送信する、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記測定処理は、
前記締付トルクを測定するトルク測定を行い、前記トルク測定の結果である締付トルク値を取得するトルク測定処理と、
前記締付トルク値を基に前記締付作業の良否に関する判定を行い、前記判定の結果に関する判定結果データを取得する判定処理と、
前記トルク測定に関連する関連測定を行い、前記関連測定の結果である関連値を取得する関連測定処理と、を含み、
前記第1作業データは、前記締付トルク値及び前記判定結果データのうち1種類以上の情報を含み、
前記第2作業データは、前記締付トルク値及び前記判定結果データ並びに前記関連値のうち、前記第1作業データに含まれる1種類以上の情報を除く1種類以上の情報、を含む、
請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記第1作業データは、前記判定結果データを含み、
前記第2作業データは、前記締付トルク値及び前記関連値を含む、
請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記通信部は、前記第2通信モードでは、前記第1作業データ及び前記第2作業データを含む詳細作業データを送信する、
請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記記憶部は、記憶している前記詳細作業データのうち、前記通信部によって送信されたデータを削除する、
請求項5に記載の電動工具。
【請求項7】
前記記憶部は、
前記第1通信モードでは、前記通信部が前記判定結果データを送信しても、送信された前記判定結果データを削除せず、
前記第2通信モードでは、前記通信部が前記詳細作業データを送信すると、送信された前記詳細作業データを削除する、
請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記記憶部は、前記第2通信モードでは、前記通信部が前記詳細作業データを送信しても、送信された前記詳細作業データを直ちには削除せず極力保持し続ける、
請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記通信部は、
前記第1作業データを無線通信方式で送信する無線通信部と、
前記第2作業データを有線通信方式で送信する有線通信部と、を含み、
前記第1通信モードは、無線通信モードであり、
前記第2通信モードは、有線通信モードであり、
前記無線通信モードでは、前記無線通信部が、前記締付作業の合間に前記第1作業データを前記無線通信方式で送信し、
前記有線通信モードでは、前記有線通信部が、全ての前記締付作業の完了後に少なくとも前記第2作業データを有線通信方式で送信する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電動工具と、
受信機と、を含み、
前記受信機は、前記通信部から送信された前記作業データを受信する、
電動工具システム。
【請求項11】
請求項9に記載の電動工具と、
受信機と、を含み、
前記受信機は、前記通信部から送信された前記作業データを受信する、
電動工具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動工具及び電動工具システムに関する。より詳細には、本開示は、作業者が締付作業に使用する電動工具、及び、電動工具を含む電動工具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電動工具と、センター装置とからなる電動工具制御システム(電動工具システム)を開示する。センター装置は、予め設定されたネジ締め情報を、ネットワークを介して電動工具に送信する。電動工具は、受信したネジ締め情報に基づいてモータの回転制御を行う。また、センター装置は、これまでに行われたネジ締め作業の履歴を電動工具からネットワークを介して受信し、履歴に基づいてネジ締めラインにおいてネジ締めの対象が移動するライン速度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電動工具制御システムでは、電動工具を用いる作業の間に電動工具からセンター装置にネジ締め作業の履歴が無線で送信されるため、送信する履歴の情報が多くなると、通信に長い時間が必要であった。電動工具が履歴の情報を送信するのに長い時間が必要になると、送信中はネジ締め作業が行えないため、ネジ締め作業を行えない時間が長くなり、電動工具の使い勝手が低下するという問題があった。
【0005】
本開示の目的は、使い勝手を向上させた電動工具及び電動工具システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の電動工具は、締付部と、センサ部と、通信部と、記憶部と、可搬型の工具本体と、を備える。前記締付部は、動力源の駆動力によって部材の締付作業を行う。前記センサ部は、測定処理を実行する。前記測定処理は、前記締付部による締付トルクを少なくとも測定し、測定の結果に関連する作業データを取得する処理である。前記通信部は、前記作業データを送信する。前記記憶部は、前記作業データを記憶する。前記工具本体は、前記締付部、前記センサ部、前記通信部、及び前記記憶部を収容する。前記通信部が前記記憶部に記憶されている前記作業データを送信する通信モードは、第1通信モードと第2通信モードとを含む。前記通信部は、前記第1通信モードでは、前記締付作業の合間に第1作業データを送信し、前記第2通信モードでは、全ての前記締付作業の完了後に第2作業データを少なくとも送信する。前記第1作業データは、前記記憶部に記憶されている前記作業データのうち一部のデータである。前記第2作業データは、前記記憶部に記憶されている前記作業データのうち前記第1作業データを除くデータである。
【0007】
本開示の一態様の電動工具システムは、前記電動工具と、受信機と、を含む。前記受信機は、前記無線通信部から送信された前記作業データを受信する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、使い勝手を向上させた電動工具及び電動工具システムを提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動工具を含む電動工具システムの概略的なブロック図である。
【
図2】
図2は、同上の電動工具の動作を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、同上の電動工具において行われる一連の締付作業と第1通信モードでの第1作業データの送信タイミングとの関係を説明するためのタイミング図である。
【
図4】
図4は、同上の電動工具システムの概略的なシステム構成図である。
【
図5】
図5は、同上の電動工具の概略的な側面図である。
【
図6】
図6は、同上の電動工具の一部破断した側面図である。
【
図7】
図7は、同上の電動工具の要部の斜視図である。
【
図8】
図8は、同上の電動工具の第1通信モード(無線通信モード)の動作を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、同上の電動工具の第2通信モード(有線通信モード)の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
本開示の実施形態に係る電動工具及び電動工具システムについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態(変形例を含む)は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0012】
(1)要部
まず、本実施形態に係る電動工具2の要部について
図1~
図3を参照して説明する。
【0013】
電動工具2は、締付部23と、制御部21と、センサ部24と、通信部25と、記憶部27と、可搬型の工具本体200と、を備える。工具本体200は、締付部23、制御部21、センサ部24、通信部25、及び記憶部27を収容する。
【0014】
(1.1)締付作業
締付部23は、動力源の駆動力によって部材の締付作業を行う。
【0015】
なお、詳細は後述するが、締付作業は、例えば、工場における製品の組立作業を行う組立ラインにおいて、第1部材(例えば、ナット)を第2部材(例えば、ボルト)に締結する作業である。組み立てラインでは、このような締付作業が、一定の時間間隔で、所定期間(例えば、午前8時から午前10時までの2時間など)にわたって行われる。
【0016】
(1.1.1)一連の締付作業
本実施形態では、所定期間にN回(Nは2以上の整数:例えば100回)の締付作業が行われたものとする。以下では、所定期間に行われる複数回(N回)の締付作業を「一連の(N回の)締付作業」と称する。
【0017】
(1.1.2)締付動作の制御
制御部21は、締付部23の動作を制御する。
【0018】
センサ部24は、測定処理を実行する。
【0019】
(1.2)測定処理及び作業データ
測定処理とは、締付部23による締付トルクを少なくとも測定し、測定の結果に関連する作業データを取得する処理である。
【0020】
作業データとは、締付部23による締付作業に関するデータである。作業データは、測定処理による測定結果に関連する情報を含む。
【0021】
なお、詳細は後述するが、測定処理は、例えば、トルク測定処理、判定処理、及び関連測定処理などである。また、作業データは、例えば、締付トルク値、判定結果データ、及び関連値などである。
【0022】
また、測定処理は、通常、定期的(周期的)に実行されるが、不定期に実行されてもよい。本実施形態におけるセンサ部24は、例えば、上記のような3種類の処理で構成される測定処理を、0.01秒周期で実行する。
【0023】
これによって、上記のような3種類の情報で構成される作業データが、1秒間に100組、取得される。一の締付作業に5秒を要したとすると、当該一の締付作業について、計測処理は500回実行され、500組の作業データが取得される結果となる。
【0024】
なお、測定処理の実行周期は、0.01秒に限らず、例えば、0.05秒や0.1秒など、適宜変更され得る。
【0025】
(1.3)作業データの送信
通信部25は、センサ部24が取得した作業データを送信する。
【0026】
(1.3.1)送信先
作業データの送信先は、例えば、受信機4、端末装置3、上位装置5などであるが、これに限らない。
【0027】
(1.3.2)通信方式:無線通信方式及び有線通信方式を用いた送信
本実施形態では、作業データの送信に、無線通信方式及び有線通信方式が選択的に用いられる。なお、無線通信方式は、例えばZigBee(登録商標:以下同様)であるが、これに限らない。また、有線通信方式は、例えばUSB(Universal Serial Bus)であるが、これに限らない。
【0028】
ただし、送信には、無線通信方式のみが用いられてもよいし、有線通信方式のみが用いられてもよい。
【0029】
(1.3.3)通信方式の第1変形例:2種類の無線通信方式
無線通信方式のみが用いられる場合において、通信速度が異なる2種類の無線通信方式が選択的に用いられてもよい。通信速度が異なる2種類の無線通信方式は、例えば、ZigBee、Bluetooth(登録商標:以下同様)、及びWi-Fi(登録商標:以下同様)のうち2種類(例えば、ZigBee及びWi-Fi)である。
【0030】
または、通信速度が異なる2種類の無線通信方式は、同種の方式の通信速度が異なる規格でもよい。このような2種類の無線通信方式は、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)、及び一般的なBluetoothなどである。
【0031】
(1.3.4)通信方式の第2変形例:2種類の有線通信方式
有線通信方式のみが用いられる場合において、通信速度が異なる2種類の有線通信方式が選択的に用いられてもよい。通信速度が異なる2種類の有線通信方式は、例えば、USB、及びEthernet(登録商標:以下同様)などである。
【0032】
(1.4)作業データの記憶
記憶部27は、センサ部24が取得した作業データを記憶する。
【0033】
記憶部27は、通常、取得された作業データの全部を記憶するが、一部のみを記憶してもよい。
【0034】
(1.5)記憶されている作業データの送信
本実施形態では、センサ部24が取得した作業データは、記憶部27によって記憶され、通信部25は、記憶部27に記憶されている作業データを送信する。
【0035】
本実施形態では、一連の締付作業の実行に連れて、現時点で実行されている締付作業に関する作業データが、センサ部24によって取得され、記憶部27によって記憶(例えば、記憶部27を構成するメモリに追記)されていく。
【0036】
通信部25は、締付作業の合間に(例えば、1回又は複数回の締付作業が終了される度に)、現時点で記憶部27に記憶されている作業データのうち一部のデータ(第1作業データ:後述)を送信する。そして、通信部25は、全ての締付作業が完了した後に、記憶部27に記憶されている作業データのうち、送信済みのデータ(つまり第1作業データ)を除くデータ(第2作業データ:後述)、を少なくとも送信する。
【0037】
(1.6)通信モード
本実施形態における通信モードとは、通信部25が記憶部27に記憶されている作業データを送信するモードである。通信モードは、第1通信モードと第2通信モードとを含む。
【0038】
(1.6.1)第1通信モード及び第2通信モード
第1通信モードとは、締付作業の合間に第1作業データを送信するモードである。第2通信モードとは、全ての締付作業の完了後に、少なくとも第2作業データを送信するモードである。
【0039】
(1.6.2)第1作業データ及び第2作業データ
第1作業データとは、記憶部27に記憶されている作業データのうち一部のデータである。第2作業データとは、記憶部27に記憶されている作業データのうち第1作業データを除くデータである。
【0040】
なお、詳細は後述するが、第1作業データは判断結果データを含み、第2作業データは締付トルク値及び関連値を含む。ただし、第1作業データは締付トルク値及び判断結果データを含み、第2作業データは関連値を含んでもよい。または、第1作業データは締付トルク値を含み、第2作業データは関連値を含み、判断結果データは、第1作業データ及び第2作業データのいずれにも含まれなくてもよい。
【0041】
(1.6.3)通信モードの設定
電動工具2の通信モードは、本実施形態では、端末装置3を用いて設定される。ただし、通信モードは、例えば、一連の締付作業が開始される前の初期状態では、第1通信モードであり、所定のトリガに応じて、第1通信モードから第2通信モードに自動的に移行してもよい。
【0042】
所定のトリガは、例えば、第1通信モードが無線通信モード、第2通信モードが有線通信モードの場合(「(3)具体例」参照)、USBコネクタが接続されたこと(
図9のステップS7参照)でもよい。または、所定のトリガは、例えば、全ての締付作業が完了したこと、などでもよい。
【0043】
(1.6.4)第1通信モードでの通信動作
通信部25は、第1通信モードでは、締付作業の合間に第1作業データを送信する。
【0044】
(1.6.4a)締付作業の合間
締付作業の合間とは、一の締付作業の終了から次の締付作業の開始までの期間である。なお、以下では、一の締付作業の開始から当該一の締付作業の終了までの期間を「作業期間」と称する。また、一の締付作業の終了から次の締付作業の開始までの期間を「待機期間」と称する。
【0045】
さらに、一連のN回の締付作業に対応するN回の作業期間の各々を、第1作業期間、第2作業期間・・・第N作業期間、のように記す。また、一連のN回の締付作業の合間のN回の待機期間の各々を、第1待機期間、第2待機期間・・・第N待機期間、のように記す。
【0046】
詳しくは、前述した所定期間、つまり、
図3に示すような、一連のN回の締付作業に対応する第1~第NのN個の作業期間を含む期間において、1回目の締付作業に対応する第1作業期間の終了時点(時刻Te1)から、2回目の締付作業に対応する第2作業期間の開始時点(時刻Ts2)までの期間が、第1待機期間である。また、2回目の締付作業に対応する第2作業期間の終了時点(時刻Te2)から、3回目の締付作業に対応する第3作業期間の開始時点(時刻Ts3)までの期間が、第2待機期間である。
【0047】
同様に、i回目(iはN以下の自然数)の締付作業に対応する第i作業期間の終了時点(時刻Tei)から、(i+1)回目の締付作業に対応する第(i+1)作業期間の開始時点(時刻Ts(i+1))までの期間が、第i待機期間である。そして、N回目の締付作業に対応する第N作業期間の終了時点(時刻TeN)から所定時間ΔTが経過した時点(時刻TsN+ΔT)までの期間が、第N待機期間である。
【0048】
締付作業の合間は、本実施形態では、上記のような第1~第NのN個の待機期間の各々である。ただし、N個の待機期間のうち、第N待機期間は、「締付作業の合間」から除外されてもよい。
【0049】
なお、締付作業の合間は、N個の待機期間の各々(つまり、毎回の待期期間)とは限らず、例えば、1回おき、2回おき等の待機期間でもよい。1回おきの待機期間とは、例えば、第2待機期間、第4待機期間、第6待機期間・・・であり、2回おきの待機期間とは、例えば、第3待機期間、第6待機期間、第9待機期間・・・である。
【0050】
(1.6.4b)締付作業の合間に送信される第1作業データ
通信部25は、第1通信モードでは、締付作業の合間に、記憶部27に記憶されている作業データのうち、直近1回又は直近複数回(本実施形態では直近1回)の締付作業に対応する第1作業データを送信する。
【0051】
詳しくは、i回目の締付作業の終了時点(第i作業期間の終了時刻Tei)で、記憶部27には、1回目~i回目のi回分の締付作業に対応する作業データが格納されている。通信部25は、第1通信モードでは、例えば、第i作業期間の直後の第i待機期間に、記憶部27に記憶されているi回分の作業データのうち、直近1回(つまりi回目)の締付作業に対応する第1作業データ(つまり、第i作業期間に取得された作業データ、に含まれる第1作業データ)を送信する。なお、締付作業の合間が「1回おき」の待機期間である場合は、第i待機期間(ただしi≧2)に、直近2回(つまり(i-1)回目及びi回目)の2回の締付作業に対応する第1作業データ(つまり、第(i-1)及び第iの2つの作業期間に取得された作業データ、に含まれる第1作業データ)が送信される。
【0052】
なお、例えば、全ての締付作業の完了に応じて第1通信モードから第2通信モードに自動移行する場合において、最後(N回目)の締付作業に対応する第1作業データは、第2通信モードへの移行の直後に、第2作業データに含めて送信されてもよい。
【0053】
(1.6.5)第2通信モードでの通信動作
通信部25は、第2通信モードでは、全ての締付作業の完了後に、記憶部27に記憶されている作業データのうち、当該全ての締付作業に対応する第2作業データを少なくとも送信する。
【0054】
(1.6.6)全ての締付作業の完了後
全ての締付作業の完了後とは、一連の(N回の)締付作業において、最後(N回目)の作業の終了後である。
【0055】
(1.6.7)少なくとも第2作業データの送信
少なくとも第2作業データを送信することは、第2作業データのみを送信し、第1作業データを送信しない場合と、第2作業データに加えて第1作業データも送信する場合と、を含む。
【0056】
本実施形態における通信部25は、第2通信モードでは、第2作業データのみを送信し、第1作業データを送信しない。これによって、第2通信モードで第1作業データも送信する場合と比べて、第1モードで送信済みの第1作業データは、第2モードで再度送信されることがないので、第2通信モードで送信する作業データの情報量(ひいては、第1通信モード及び第2通信モードを通じて送信する作業データの総量)の抑制を図ることができる。
【0057】
ただし、通信部25は、第2通信モードでは、第1作業データ及び第2作業データを送信してもよい。つまり、第1通信モードで送信済みの第1作業データも含む作業データの全部(詳細作業データ:後述)が、第2通信モードで送信されてもよい。
【0058】
(1.7)動作例
電動工具2を構成する通信部25は、例えば、
図2のフローチャートに従って動作する。なお、このフローチャートの処理は、例えば、電動工具2の電源オンに応じて開始され、電源オフに応じて終了される。また、このフローチャートの処理は、通信モードが、一連の締付作業が開始される前の初期状態では第1通信モードであり、一連の締付作業の完了に応じて、第1通信モードから第2通信モードに移行することを前提とした処理である。
【0059】
通信部25は、通信モードが第1モードか否かを判断する(ステップS21)。通信モードが第1モードでないと判断された場合、処理はステップS24(後述)に進む。
【0060】
ステップS21で通信モードが第1モードであると判断した場合、通信部25は、1回又は複数回(すなわち、予め決められた回数)の締付作業が終了したか否かを判断する(ステップS22)。1回又は複数回の締付作業は未だ終了していないと判断された場合、処理はステップS21に戻る。
【0061】
ステップS22で1回又は複数回の締付作業が終了したと判断した場合、通信部25は、当該1回又は当該複数回の締付作業に対応する第1データを第1通信方式で送信する(ステップS23)。その後、処理はステップS21に戻る。
【0062】
ステップS21で通信モードが第1モードでないと判断した場合、通信部25は、通信モードが第2モードか否かを判断する。通信モードが第2モードでないと判断された場合、処理はステップS21に戻る(ステップS24)。
【0063】
ステップS24で通信モードが第2モードであると判断した場合、通信部25は、全ての締付作業が完了(つまり、N回目の締付作業が終了)したか否かを判断する(ステップS25)。全ての締付作業は未だ完了していないと判断された場合、処理はステップS21に戻る。
【0064】
ステップS25で全ての締付作業が完了したと判断した場合、通信部25は、当該全ての締付作業に対応する第2データを少なくとも送信する(ステップS26)。その後、処理はステップS21に戻る。
【0065】
このように、本例では、当初、通信モードは第1通信モードに設定されており、一連の締付作業中、ステップS21でYesと判定される結果、ステップS21~S23のループが実行される。一連の締付作業が完了すると、通信モードは、第1通信モードから第2通信モードに移行し、ステップS21での判定結果がYesからNoに変化して、ステップS24~S26が実行される。
【0066】
(1.8)利点
以上のように、本実施形態では、通信部25の通信モードが第1通信モードと第2通信モードとを含み、第1通信モードでは、締付作業の合間に作業データの一部(第1作業データ)を送信し、第2通信モードでは、全ての締付作業の完了後に作業データの残りの部分(第2作業データ)を少なくとも送信することで、締付作業が行われない期間(つまり待機期間)の短縮を図ることができる。その結果、作業データの送信によって締付作業が妨げられるのを抑制し、使い勝手を向上させた電動工具2を提供できる。
【0067】
(2)詳細
次に、電動工具2の詳細について説明する。
【0068】
(2.1)測定処理
センサ部24が行う測定処理は、例えば、トルク測定処理と、判定処理と、関連測定処理と、を含む。
【0069】
(2.1.1)トルク測定処理
トルク測定処理とは、締付トルクを測定するトルク測定を行い、締付トルク値を取得する処理である。
【0070】
(2.1.2)締付トルク値
締付トルク値とは、上記トルク測定の結果である。
【0071】
(2.1.3)判定処理
判定処理とは、締付トルク値を基に締付作業の良否に関する判定を行い、判定結果データを取得する処理である。
【0072】
(2.1.4)判定結果データ
判定結果データとは、上記判定の結果に関するデータである。判定結果データは、例えば、判定結果が良であることを示す“OK”、及び判定結果が良でない(すなわち、不良である)ことを示す“NOK”、のいずれか(以下、「“OK”/“NOK”」のように記す)である。
【0073】
ただし、判定結果データは、良を示す“OK”のみ、又は不良を示す“NOK”のみ、でもよい。
【0074】
(2.1.5)関連測定処理
関連測定処理とは、トルク測定に関連する関連測定を行い、関連値を取得する処理である。
【0075】
(2.1.6)関連測定
関連測定は、主関連測定と副関連測定とを含む。
【0076】
(2.1.6a)主関連測定
主関連測定は、例えば、打撃数の測定、回転数の測定、締付時間の測定、及び角度の測定、などである。
【0077】
打撃数とは、インパクト機構(図示しない)による出力軸231への打撃力の発生回数である。回転数とは、出力軸231の回転数である。締付時間とは、1回の締付作業に要した時間である。
【0078】
角度とは、出力軸231の回転に応じて、第2部材に対して第1部材が回転した角度である。角度は、例えば、角度(着座前)及び角度(着座後)を含む。角度(着座前)は、締付作業の開始から着座までの角度であり、角度(着座後)は、着座から締付作業の終了までの角度である。
【0079】
(2.1.6b)副関連測定
副関連測定は、例えば、電池残量の計測、日時情報(作業日・時刻)の取得などである。
【0080】
電池残量とは、電源部26に含まれる蓄電池の残量である。センサ部24は、電源部26を介して電池残量を計測する。
【0081】
日時情報とは、一連の締付作業が行われた日の日付、開始時刻及び終了時刻などである。センサ部24は、例えば、プロセッサの内蔵時計やNTP(Network Time Protocol)サーバから日時情報を取得する。
【0082】
(2.1.7)関連値
関連値とは、関連測定の結果である。関連値は、例えば、上記のような各種の関連測定の結果を示す値である。
【0083】
(2.1.7a)関連測定の周期
主関連測定は、トルク測定と同様、例えば、0.01秒周期で行われる。ただし、主関連測定は、トルク測定の周期とは異なる周期(例えば、トルク測定の周期よりも遅い周期)で実行されてもよい。
【0084】
副関連測定は、例えば、一連の締付作業の開始時及び終了時に実行される。ただし、副関連測定は、一連の締付作業の開始時及び終了時のどちらか一方のみで実行されてもよい。または、副関連測定は、一連の締付作業を構成する複数の締付作業の各々で実行されてもよい。
【0085】
(2.1.8)第1作業データ及び第2作業データの詳細
(2.1.8a)第1作業データ
第1作業データは、締付トルク値及び判定結果データのうち1種類以上の情報を含む。実施形態における第1作業データは、前述したように、判定結果データを含み、締付トルク値を含まない。
【0086】
(2.1.8b)第2作業データ
第2作業データは、締付トルク値及び判定結果データ並びに関連値のうち、第1作業データに含まれる1種類以上の情報を除く1種類以上の情報、を含む。本実施形態における第2作業データは、締付トルク値及び関連値を含み、判定結果データを含まない。
【0087】
(2.1.8c)利点
このように、本実施形態では、第1作業データは判定結果データを含み、第2作業データは締付トルク値及び関連値を含むことで、第1通信モードで送信される作業データの情報量(以下、「送信量」と記す)が抑制され、待機期間の短縮を図ることができる。その結果、作業データの送信によって締付作業が妨げられるのをより一層抑制し、使い勝手を向上させることができる。
【0088】
なお、後述する「(2.6)第1作業データ及び第2作業データの第1変形例」のように、第1作業データが締付トルク値を含み、判定結果データを含まない場合も、第1通信モードでの送信量は抑制されるが、この場合は、受信機4(後述)側で良否の判定が行われため、受信機4側での処理負荷が増大する。本実施形態によれば、この場合と比べて、受信機4側での処理負荷の抑制を図ることができる。そして、受信機4と通信する電動工具2の数が多いほど、抑制効果は顕著となる。
【0089】
(2.2)第1通信モードでの通信部の動作
通信部25は、第1通信モードでは、1回又は複数回(予め決められた回数:本実施形態では1回)の締付作業が終わる度に、記憶部27に記憶されている作業データのうち、当該1回又は当該複数回の締付作業に対応する第1作業データを送信する。
【0090】
すなわち、第1通信モードでは、例えば、i回目の締付作業が終わった直後の第i待機期間に、記憶部27に記憶されているi回分の作業データのうち、i回目の締付作業に対応する第1作業データ(すなわち、第i作業期間に取得された作業データのうち第1作業データ)が送信される。
【0091】
(2.3)第2通信モードでの通信部の動作
通信部25は、第2通信モードでは、全ての締付作業が完了した後に、記憶部27に記憶されている作業データのうち、当該全ての締付作業に対応する第2作業データを少なくとも送信する。
【0092】
なお、前述したように、本実施形態において、第2通信モードでは、第2作業データのみ送信されるが、「(2.8)第2通信モードでの通信部の動作の変形例」で説明するように、第1作業データも含む詳細作業データが送信されてもよい。
【0093】
(2.4)第1通信モード及び第2通信モードによる送信の利点
こうして、1回又は複数回の締付作業が終わる度に、当該1回又は当該複数回の締付作業に対応する第1作業データの送信を行い、全ての締付作業の完了後に、当該全ての締付作業に対応する第2作業データを送信することで、一連の待機期間の均等な短縮を図ることができる。
【0094】
(2.5)送信済みデータの削除
記憶部27は、記憶している作業データのうち、通信部25によって送信されたデータ(以下、「送信済みデータ」と記す)を削除する。
【0095】
こうして、送信済みデータを自動的に削除することで、記憶部27の記憶容量の抑制を図ることができる。
【0096】
(2.6)第1作業データ及び第2作業データの第1変形例
この変形例では、第1作業データは、締付トルク値を含み、判断結果データを含まない。第2作業データは、関連値を含む。判断結果データは、第2作業データにも含まれていない。
【0097】
この場合、受信機4側で、第1作業データに含まれる締付トルクを基に、締付作業の良否に関する判定が行われ、判定結果データが取得される。
【0098】
(2.7)第1作業データ及び第2作業データの第2変形例
この変形例では、第1作業データは、締付トルク値及び判断結果データを含み、第2作業データは、関連値を含む。
【0099】
(2.8)第2通信モードでの通信部の動作の変形例
この変形例において、通信部25は、第2通信モードでは、全ての締付作業の完了後に、詳細作業データを送信する。
【0100】
(2.8.1)詳細作業データ
詳細作業データとは、一連の締付作業の詳細に関するデータであり、第1作業データ及び第2作業データを含む。詳細作業データは、一連の締付作業を構成する全て(N回)の締付作業について、判定結果データ、締付トルク値及び関連値を含む。つまり、この変形例において、第1通信モードで送信される第1作業データは、詳細作業データの一部であり、第2通信モードでは、第1作業データも含む詳細作業データの全部が送信される。
【0101】
(2.8.2)判定結果データの不削除、及び詳細作業データの削除
この変形例における記憶部27は、第1通信モードでは、通信部25が判定結果データを送信しても、当該送信された判定結果データを削除しない。
【0102】
また、記憶部27は、第2通信モードでは、通信部25が詳細作業データを送信すると、当該送信された詳細作業データを削除する。
【0103】
(2.8.3)利点
この変形例によれば、第1通信モードでは、詳細作業データの一部である判定結果データのみが送信され、第2通信モードで、判定結果データも含む詳細作業データの全部が送信される。そして、第1モードでは、送信された判定結果データは記憶部27から削除されず、第2通信モードで、送信された詳細作業データの全部が削除されるので、記憶部27の記憶容量の抑制を図りつつ、第2通信モードで詳細作業データの全部の送信も行うことができる。
【0104】
ただし、この変形例において、記憶部27は、第2通信モードでは、送信された詳細作業データを直ちには削除せず極力保持し続けてもよい。詳しくは、例えば、詳細作業データの書き込み先となっているメモリが満杯となると、記憶部27は、メモリに記憶されている詳細作業データのうち古いデータから順に削除しつつ、新たな詳細作業データを記憶する動作を行ってもよい。
【0105】
または、記憶部27は、第2通信モードでは、送信された詳細作業データを削除せず、保持し続けてもよい。詳しくは、例えば、メモリが満杯となると、記憶部27は、新たな詳細作業データを記憶する動作を停止してもよい。
【0106】
(2.9)通信方式の詳細:無線通信及び有線通信
詳しくは、本実施形態における通信部25は、作業データを無線通信方式で送信する無線通信部251と、作業データを有線通信方式で送信する有線通信部252とを含む。
【0107】
前述した第1通信モードは無線通信モードであり、前述した第2通信モードは有線通信モードである。無線通信モードでは、無線通信部251が、1回又は複数回の締付作業が終わると、センサ部24が出力した測定結果に関連する作業データを無線通信方式で送信する。有線通信モードでは、有線通信部252が、記憶部27に記憶されている作業データを有線通信方式で送信する。
【0108】
ここにおいて、電動工具2は、部材の締付作業に使用される。電動工具2はユーザが携帯して使用する可搬型の工具である。電動工具2を使用して行われる「締付作業」は、例えば第1部材であるナットを、第2部材であるボルトに締結する作業であるが、第1部材及び第2部材はそれぞれナットとボルトに限定されず、適宜変更が可能である。また、締付作業は、複数の第1部材を、一つの第2部材に対して締め付ける作業でもよく、複数の第1部材は、1種類の部材でもよいし、複数種類の部材でもよい。センサ部24の測定結果に関連する「作業データ」は、センサ部24が測定した締付トルクの測定値(最大値又は平均値など)でもよいし、締付作業中の締付トルクの時間的な変化を示す時系列データ(波形データ)でもよい。また、作業データは、センサ部24が測定した締付トルクの測定値等に基づいて作業内容の良否を判定した判定結果などのデータでもよい。また、センサ部24は、締付トルク以外に動力源であるモータの回転数、モータに流れる電流値等を測定してもよく、センサ部24の測定対象は適宜変更が可能である。
【0109】
この電動工具2では、通信部25の通信モードが無線通信モードと有線通信モードとを少なくとも含む。有線通信モードでは、有線通信部252が、有線通信モードで動作中に記憶部27に記憶された作業データを有線通信方式で送信するので、締付作業の合間に作業データを無線通信方式で送信する場合に比べて、作業データの送信によって締付作業が妨げられるのを抑制でき、使い勝手が向上するという利点がある。また、電動工具2と通信相手との間での無線通信が良好ではない環境では、通信部25の通信モードを有線通信モードに設定することによって、有線通信モードで作業データを送信することができ、使い勝手が向上するという利点もある。また、一般的に有線通信方式は無線通信方式に比べて伝送速度が速いので、有線通信モードで動作中に記憶部27に記憶された作業データを短時間で送信でき、使い勝手が向上する。なお、無線通信モードでは、締付作業に関する作業指示情報を受信して動作するのであるが、有線通信モードでは、有線通信方式で作業指示情報を受信した後は、電動工具2が単独で動作するため、有線通信モードをスタンドアローンモードとも言う。
【0110】
なお、通信モードが無線通信モード及び有線通信モードの両方に設定された場合、通信部25は、無線通信部251による無線通信と、有線通信部252による有線通信との両方を実行可能な状態となる。無線通信部251による無線通信は常時可能であり、有線通信部252と端末装置3とが有線接続された状態では、有線通信部252による有線通信も可能になる。
【0111】
なお、以下の実施形態では、通信部25の通信モードが無線通信モード及び有線通信モードのいずれかに設定される場合について説明する。
【0112】
また、
図1及び
図4に示すように、電動工具システム1は、電動工具2と、受信機4と、を含む。受信機4は、電動工具2から送信された作業データを受信する。
【0113】
なお、
図1及び
図4では電動工具2が1台しか図示されていないが、電動工具2の数は複数でもよい。つまり、電動工具システム1は複数の電動工具2を含んでもよく、受信機4は、複数の電動工具2の各々と通信可能である。
【0114】
(2.10)通信方式の第1変形例の詳細:2種類の無線通信方式
この変形例における通信部25は、第1作業データを第1無線通信方式で送信する第1無線通信部(図示しない)と、第2作業データを第2無線通信方式で送信する第2無線通信部(図示しない)とを含む。第1無線通信方式は、例えばZigBee方式であり、第2無線通信方式は、例えばWi-Fi方式である。
【0115】
前述した第1通信モードは第1無線通信モードであり、前述した第2通信モードは第2無線通信モードである。第1無線通信モードでは、第1無線通信部が、1回又は複数回の締付作業が終わると、当該1回又は当該複数回の締付作業に対応する第1作業データを第1無線通信方式で送信する。第2無線通信モードでは、第2無線通信部が、全ての締付作業が終わると、当該全ての締付作業に対応する第2作業データを第2無線通信方式で送信する。これにより、第1作業データ及び第2作業データの各々の情報量に応じた速度での無線送信が可能となる。
【0116】
(2.11)通信方式の第2変形例の詳細:2種類の有線通信方式
この変形例における通信部25は、第1作業データを第1有線通信方式で送信する第1有線通信部(図示しない)と、第2作業データを第2有線通信方式で送信する第2有線通信部(図示しない)とを含む。第1有線通信方式は、例えばUSB方式であり、第2有線通信方式は、例えばEthernet方式である。
【0117】
前述した第1通信モードは第1有線通信モードであり、前述した第2通信モードは第2有線通信モードである。第1有線通信モードでは、第1有線通信部が、1回又は複数回の締付作業が終わると、当該1回又は当該複数回の締付作業に対応する第1作業データを第1有線通信方式で送信する。第2有線通信モードでは、第2有線通信部が、全ての締付作業が終わると、当該全ての締付作業に対応する第2作業データを第2有線通信方式で送信する。これにより、第1作業データ及び第2作業データの各々の情報量に応じた速度での有線送信が可能となる。
【0118】
(3)具体例
以下、実施形態に係る電動工具2、及び、電動工具2を含む電動工具システム1の具体例について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明は一例であり、種々の変更が可能である。
【0119】
(3.1)構成
以下、電動工具システム1の構成について、
図1,
図4及び
図5を参照して説明する。
【0120】
本実施形態の電動工具システム1は、例えば、工場において製品の組立作業を行う組立ラインに用いられる。なお、電動工具システム1の使用用途は、工場の組立ラインに限らず、他の使用用途であってもよい。電動工具システム1は、例えば、建設工事等の施工現場において建築物を施工する作業に用いられてもよい。
【0121】
電動工具システム1は、
図1に示すように、電動工具2と、受信機4と、を含む。また、電動工具システム1は、受信機4とネットワーク6を介して通信可能な上位装置5を更に含んでもよい。ここにおいて、電動工具システム1が上位装置5を備えることは必須ではなく、上位装置5は適宜省略が可能である。また、電動工具2には、電動工具2に通信線CB1を介して接続されて電動工具2と有線通信を行う端末装置3が接続可能である。
【0122】
次に、電動工具システム1を構成する各機器の詳細について図面を参照して説明する。
【0123】
(3.1.1)電動工具
電動工具2は、
図1に示すように、制御部21と、操作部22と、締付部23と、センサ部24と、通信部25と、電源部26と、記憶部27と、表示部28と、を備える。
【0124】
また、電動工具2は、
図4~
図6に示すように、各部を収容又は保持するための可搬型の工具本体200を備えている。工具本体200は、筒形状の胴体部201と、胴体部201の周面から径方向に突出する握り部202とを備える。胴体部201の軸方向における一端側からは出力軸231が突出している。出力軸231には、作業対象の第1部材に合わせた先端工具(例えばトルクレンチビットなど)が着脱自在に取り付けられるソケットが取り付けられる。したがって、出力軸231にはソケットを介して所望の先端工具が取り付けられる。また、握り部202の一端(
図5における下端)には電池取付座203が設けられている。電池取付座203には、樹脂製のケース内に電源部26を収納した電池パック261が着脱自在に取り付けられる。
【0125】
締付部23は、出力軸231と、出力軸231を回転させるモータと、モータを駆動する駆動回路と、を備えている。なお、本実施形態の電動工具2はインパクト工具であり、締付部23は、出力軸231に打撃力を発生させるインパクト機構を有している。インパクト機構は、出力トルクが所定レベル以下であれば、モータの出力軸の回転を減速して出力軸231に伝達し、第1部材を回転させるように構成されている。また、インパクト機構は、出力トルクが所定レベルを超えると、出力軸231に打撃力を加えて、第1部材を回転させるように構成されている。なお、モータ及びインパクト機構は、胴体部201の内部に収容されている。
【0126】
制御部21は、締付部23、センサ部24、及び通信部25等の動作を制御する。制御部21は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部21として機能する。プログラムは、ここでは制御部21のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部21は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。制御部21を構成するマイクロコントローラ(回路基板等)は、例えば握り部202の内部に収容されている。
【0127】
操作部22は、握り部202に設けられたトリガスイッチ221を備える。トリガスイッチ221がユーザによって操作されると、トリガスイッチ221の引き込み量(操作量)に比例した大きさの操作信号が、制御部21に入力される。制御部21は、操作部22からの操作信号に応じた回転速度で出力軸231が回転するように、締付部23が備えるモータの回転速度を調整する。
【0128】
センサ部24は、締付部23による締付トルクを測定し、締付トルク値を取得する。センサ部24は、例えば、出力軸231に取り付けられた磁歪式のトルクセンサを備えている。磁歪式のトルクセンサは、出力軸231にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を、非回転部分に設置したコイルで検出し、歪みに比例した電圧信号を出力する。これによりセンサ部24は、出力軸231に加わったトルクを測定する。つまり、センサ部24は、電動工具2が作業対象の第1部材に与えるトルク(締付トルク)を測定する。センサ部24は、測定したトルクの値(締付トルク値)を制御部21へ出力する。なお、センサ部24は、モータの出力軸に加わるトルクを測定してもよく、モータの出力軸に加わるトルク、及び減速機構の減速比等に基づいて、出力軸231に加わる締付トルクを測定してもよい。なお、センサ部24は磁歪式のトルクセンサを備えるものに限定されず、センサ部24の具体化手段は適宜変更が可能である。例えば、センサ部24は、締付部23が備えるモータに流れる電流を検出することによって、第1部材を第2部材に対して締め付ける締付トルクを測定してもよい。
【0129】
制御部21は、第1部材の締付トルク値が、受信機4又は端末装置3から入力される作業指示情報に基づいて設定されるトルク設定値となるように締付部23を制御する。制御部21は、例えば、センサ部24で測定された締付トルク値が、トルク設定値に達すると、締付部23のモータの回転を停止させる。なおトルク設定値は変更可能であり、受信機4又は端末装置3から電動工具2に送信される作業指示情報に基づいて制御部21によって変更される。ここにおいて、「作業指示情報」とは、電動工具2を用いて行う1回又は複数回の締付作業の作業内容に関する情報を含むことが好ましい。作業指示情報は、例えば、1回又は複数回の締付作業に対応する作業内容を示す情報を含む。電動工具2を用いて行う作業が締付作業である場合、作業指示情報は、締付トルクに関する情報を含むのが好ましい。締付トルクに関する情報は、締付トルクの設定値(トルク設定値)でもよいし、電動工具2がインパクト工具の場合は打撃数でもよい。また、電動工具2を用いて行う締付作業が、所定の作業内容の単位作業を連続的に複数回実行するような所謂バッチ作業を含む場合、作業指示情報は、単位作業の作業内容(例えば締付トルクの設定値)に関するバッチ作業情報と、単位作業を連続的に実行する回数に関する回数情報と、を含むことが好ましい。なお、単位作業を連続的に複数回実行するとは、単位作業を間断なく繰り返し実行することに限定されず、別の作業が間に入るのでなければ、時間を開けて単位作業を実行してもよい。
【0130】
通信部25は、上述したように、無線通信部251と、有線通信部252と、を含む。
【0131】
無線通信部251は、例えばZigBeeに準拠した近距離無線通信を行う通信モジュールである。無線通信部251は、この種の通信方式で、受信機4との間で無線通信を行う。無線通信モードでは、無線通信部251は、制御部21が有するRAM(Random Access Memory)等のメモリに一時的に記憶されている作業データを、無線通信方式で受信機4に送信する。無線通信部251が、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read-Only Memory)等の記憶部27から作業データを読み出して受信機4に無線送信する場合は、記憶部27にアクセスする時間が必要なため、作業データの送信に時間を要する。制御部21は、通信部25が作業データを送信する間は締付部23の締付作業を停止させているため、作業データの送信に長時間を要すると、次回の締付作業を開始するまでの時間が長くなり、締付作業を繰り返し行う場合の作業周期が長くなるという問題がある。それに対して、本実施形態では、無線通信部251は、RAM等のメモリに一時的に記憶されている作業データを、無線通信方式で受信機4に送信するため、EEPROM等の記憶部27にアクセスする時間が不要になり、締付作業を開始するまでの時間を短くでき、締付作業を繰り返し行う場合の作業周期を短くできるという利点がある。
【0132】
なお、無線通信部251と受信機4との間の無線通信の方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi、Bluetooth等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信であってもよい。例えば、無線通信部251は、握り部202の内部に収容されており、無線通信部251のアンテナは、胴体部201の内部に収容されている。
【0133】
有線通信部252は、電動工具2に通信線CB1を介して接続される端末装置3との間で、例えばUSB規格に準拠した有線通信方式で通信を行う。有線通信モードでは、有線通信部252は、記憶部27に記憶されている作業データを記憶部27から読み出して、端末装置3へ送信する。本実施形態では、電動工具2の胴体部201の後部の周面には、
図7に示すように凹部204が設けられ、凹部204の底面の孔205内にメス側のUSBコネクタCN1が露出している。通信線CB1の両端にはオス側のUSBコネクタCN2,CN3がそれぞれ設けられている。通信線CB1の第1端のUSBコネクタCN2を電動工具2のUSBコネクタCN1に接続し、通信線CB1の第2端のUSBコネクタCN3を端末装置3のメス側のUSBコネクタに接続することで、電動工具2が通信線CB1を介して端末装置3に接続される。この状態で、電動工具2の有線通信部252と、端末装置3の有線通信部31(
図1参照)との間で、有線通信方式で通信が行われる。なお、USBコネクタCN1から通信線CB1のUSBコネクタCN2又はCN3が取り外された状態では、胴体部201の凹部204には、柔軟性を有する合成樹脂製の蓋材206が着脱可能な状態で取り付けられており、USBコネクタCN1等に埃や水などが付着するのを抑制している。
【0134】
電源部26は、蓄電池を備えている。電源部26は、電池パック261内に収容されている。電池パック261は、樹脂製のケース内に電源部26を収容して構成されている。電池パック261を工具本体200の電池取付座203から取り外し、取り外した電池パック261を充電器に接続することによって、電源部26の蓄電池を充電することができる。電源部26は、蓄電池に充電された電力で、制御部21を含む電気回路とモータとに動作に必要な電力を供給する。
【0135】
記憶部27は、例えば、ROM(Read Only Memory)、及び、不揮発性メモリを含む。不揮発性メモリには、例えばEEPROM又はフラッシュメモリ等がある。記憶部27は、制御部21が実行する制御プログラムを記憶する。また記憶部27は、受信機4又は端末装置3から受信した作業指示情報、及び、作業指示情報に基づいて行った作業の実施内容に関連する作業データを記憶する。作業データは、例えば、作業を実行したことを示す情報でもよいし、作業の実行結果に関する情報(例えば、締付トルク値、打撃数、回転数、締付時間、角度、日時などの情報)でもよい。作業が第1部材を第2部材に締め付ける締付作業である場合、作業の実行結果に関する情報は、例えば、センサ部24が測定した締付トルクの測定値(締付トルク値)、締付作業を行った第1部材の本数(以下、作業済み本数とも言う)等の情報を含むことが好ましい。また、作業の実行結果に関する情報は、作業指示情報に基づいて行った作業の良否を示す判定情報(判定結果データ)を含んでもよい。また記憶部27は、個々の電動工具2に割り当てられた識別情報や、個々の電動工具2の品種(例えば製造メーカとその製造メーカで決められた品番とを含む情報)などの情報(工具種別の情報)を記憶する。ここで、識別情報は、例えば電動工具2に割り当てられるIPアドレスを含むことが好ましい。
【0136】
表示部28は、例えば、工具本体200の表面(例えば電池取付座203の上面)に露出して設けられた、2桁の7セグメントLED(Light Emitting Diode)を有する。また、表示部28は、工具本体200の表面(例えば胴体部201の後端面)に露出して設けられた、例えば青色発光ダイオードと赤色発光ダイオードとを有している。
【0137】
なお、電池取付座203の内部には有線通信部252等の回路部品が実装された回路基板101が収容されている。また、胴体部201の内部には、表示部28が備える発光ダイオード等の回路部品が実装された回路基板102と、USBコネクタCN1等の回路部品が実装された回路基板103とが収容されている。このように、工具本体200の内部には、回路基板101~103を含む複数の回路基板が収容されているが、電動工具2の回路部品が複数の回路基板に分かれて実装されていることは必須ではなく、1枚の回路基板にまとめて実装されていてもよい。
【0138】
(3.1.2)受信機
受信機4は、
図1に示すように、無線通信部41と、有線通信部42と、制御部43と、操作部44と、表示部45と、記憶部46と、を備えている。
【0139】
制御部43は、無線通信部41、有線通信部42、及び表示部45等の動作を制御する。制御部43は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部43として機能する。プログラムは、ここでは制御部43のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部43は、例えば、FPGA、又はASIC等で構成されてもよい。
【0140】
無線通信部41は、電動工具2の無線通信部251と同じ通信方式(例えばZigBee)で、近距離の無線通信を行う通信モジュールである。無線通信部41は、電動工具2の無線通信部251と無線通信を行う。
【0141】
有線通信部42は、通信線を介して有線通信を行う通信モジュールである。有線通信部42は、上位装置5の通信部51と例えばEthernet等のネットワーク6を介して有線通信を行う。ネットワーク6は、電動工具2が使用される工場等の施設に設けられたLAN(Local Area Network)でもよいし、インターネット等のWAN(Wide Area Network)でもよい。
【0142】
操作部44は、ユーザの操作を受け付ける操作スイッチ等を含む。
【0143】
表示部45は、例えば複数の発光ダイオードを含み、複数の発光ダイオードの点灯、点滅、又は消灯により受信機4の動作状態等を表示する。なお表示部45は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置を含んでもよい。
【0144】
記憶部46は、例えば、ROM、RAM、及び不揮発性メモリ(例えば、EEPROM又はフラッシュメモリ等)を含む。記憶部46は、電動工具2を用いる締付作業の作業内容に関する作業指示情報、電動工具2から受信した作業データ等を電動工具2の識別情報と対応付けて記憶する。これにより、記憶部46は、複数の電動工具2の各々について、電動工具2に送信する作業指示情報及び電動工具2から受信した作業情報を記憶することができる。また、記憶部46は、個々の受信機4に割り当てられた識別情報や、個々の受信機4の品種(例えば製造メーカとその製造メーカで決められた品番とを含む情報)などの情報を記憶する。ここで、識別情報は、例えば受信機4に割り当てられるIPアドレスを含む。
【0145】
(3.1.3)上位装置
上位装置5は、例えばサーバである。上位装置5は、通信部51と、記憶部52と、制御部53と、を備えている。
【0146】
通信部51は、通信線を介して有線通信を行う通信モジュールである。通信部51は、受信機4の有線通信部42と例えばEthernet等のネットワーク6を介して有線通信を行う。
【0147】
記憶部52は、例えば、ROM、RAM、及び不揮発性メモリ(例えば、EEPROM又はフラッシュメモリ等)を含む。記憶部52は、複数の電動工具2の各々について、電動工具2を用いる締付作業の作業内容に関する作業指示情報、及び電動工具2が行った作業の作業データの履歴等を、電動工具2の識別情報と対応付けて記憶する。
【0148】
制御部53は、通信部51等の動作を制御する。制御部53は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部53として機能する。プログラムは、ここでは制御部53のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部53は、例えば、FPGA、又はASIC等で構成されてもよい。
【0149】
制御部53は、電動工具2を用いる締付作業の作業内容に関する作業指示情報を通信部51から受信機4に対して送信させる。
【0150】
また制御部53は、通信部51が受信機4から受信した、電動工具2を用いて行った作業の作業データの履歴を記憶部52に記憶させる。
【0151】
(3.1.4)端末装置
端末装置3は、電動工具2の通信モードの設定、及び電動工具2から有線通信方式で作業データを受信するためのデータ取込用アプリ(プログラム)がインストールされたコンピュータ端末である。端末装置3は、ノート型のコンピュータでもよいし、タブレット型のコンピュータでもよいし、スマートフォン等の通信端末でもよい。
【0152】
端末装置3は、制御部30と、有線通信部31と、HMI(Human Machine Interface
)32と、を備える。
【0153】
有線通信部31は、通信線CB1を介して電動工具2と接続される。有線通信部31は、通信線CB1を介して電動工具2の有線通信部252との間で、例えばUSB規格に準拠した有線通信方式で通信を行う。
【0154】
HMI32は、端末装置3を使用する管理者が入力した情報を受け付ける入力部と、端末装置3を使用する管理者に対して情報を出力する出力部と、を備える。管理者が入力した情報を受け付ける入力部には、キーボード、マウス、スイッチ、音声入力用のマイク等が含まれる。管理者に対して情報を出力する出力部としては、液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置、LED等のランプ、音声出力用のスピーカー等が含まれる。
【0155】
制御部30は、有線通信部31及びHMI32等の動作を制御する。制御部30は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部30として機能する。プログラムは、ここでは制御部30のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部30は、例えば、FPGA、又はASIC等で構成されてもよい。
【0156】
以下では、端末装置3及び受信機4を使用する管理者が、電動工具2を用いて締付作業を行うユーザと別の人である場合を例に説明を行うが、端末装置3及び受信機4を使用する管理者と、電動工具2を用いて締付作業を行うユーザは同じ人でもよい。
【0157】
(3.2)動作説明
次に、電動工具システム1が備える電動工具2の動作を
図8及び
図9等に基づいて説明する。上述のように、電動工具2が作業データを送信する通信モードは無線通信モードと有線通信モードとを含み、この2つの通信モードについて以下に説明する。
【0158】
電動工具2の通信モードは、例えば端末装置3を用いて設定される。電動工具2が通信線CB1を介して端末装置3に接続された状態で、管理者が、端末装置3にインストールされたデータ取込用アプリを実行させ、データ取込用アプリ上で通信モードを無線通信モード及び有線通信モードのいずれかに設定する。管理者がデータ取込用アプリで通信モードを設定すると、制御部30は有線通信部31から電動工具2に通信モードを設定するモード設定情報を送信する。電動工具2の有線通信部252がモード設定情報を受信すると、制御部21は、モード設定情報に基づいて通信モードを無線通信モード及び有線通信モードのいずれかに設定する。言い換えると、制御部21は、有線通信部252に通信線CB1を介して接続された端末装置3から有線通信部252が受信したモード設定情報に基づいて、通信モードを無線通信モード又は有線通信モードに設定する。これにより、端末装置3を用いて電動工具2の通信モードを無線通信モード又は有線通信モードに設定することができる。管理者がデータ取込用アプリを終了し、電動工具2から通信線CB1を取り外すと、電動工具2は、設定された通信モードで動作を開始する。なお、端末装置3が実行するデータ取込用アプリでは、電動工具2が記憶部27に記憶する作業データの種類を選択することも可能である。また、端末装置3が実行するデータ取込用アプリでは、電動工具2から取り出す作業データの種類を選択することも可能であり、端末装置3から電動工具2に対して取得対象の作業データの種類を指定するデータ種別情報も送信される。
【0159】
(3.2.1)無線通信モードの動作
電動工具2が無線通信モードに設定されている場合の動作を
図8等に基づいて説明する。なお、電動工具2は、端末装置3から入力されたデータ種別情報に基づき、作業の良否を示す判定結果の情報と、締付トルクの時系列データとを作業データとして受信機4に送信するように設定されている。電動工具2は、データ種別情報に基づいて、締付トルクの測定値(最大値又は平均値など)を作業データとして受信機4に送信してもよい。なお、作業データとして締付トルクの測定値を受信機4に送信することは必須ではなく、作業データの内容は適宜変更が可能である。
【0160】
無線通信モードで動作中の電動工具2には、受信機4から作業指示情報が無線通信方式で送信される。
【0161】
受信機4を使用する管理者が操作部44を用いて電動工具2に出力する1回又は複数回分の締付作業に関する作業指示情報(例えば締付トルク、本数等の情報)を作成すると、作成した作業指示情報が無線通信部41から設定対象の電動工具2に送信される。なお、受信機4は、端末装置3と通信可能に構成されており、端末装置3で作成された作業指示情報を端末装置3から取得して設定対象の電動工具2に送信してもよい。また、受信機4は、上位装置5で作成された作業指示情報を上位装置5から取得して設定対象の電動工具2に送信してもよい。
【0162】
電動工具2の無線通信部251が受信機4から送信された作業指示情報を受信すると(ステップS11:Yes)、制御部21は作業指示情報を記憶部27に記憶させる。また、制御部21は、表示部28が備える7セグメントLEDを用いて、作業指示情報を受信し締付作業を開始する準備が整ったことを表示する。なお、無線通信部251が受信機4から作業指示情報を受信している間、制御部21は、表示部28が有する通信表示用の発光ダイオードを点灯させて、受信機4と通信中であることを表示する。そして、無線通信部251と受信機4との通信が終了すると、制御部21は、表示部28が有する通信表示用の発光ダイオードを点滅させて、受信機4との通信が終了したことを表示し、締付部23による締付作業を開始する準備が整っていることを表示する。
【0163】
締付部23による締付作業を開始する準備が整うと、ユーザは電動工具2を持って作業場所まで移動する。ユーザが、電動工具2の出力軸231にソケットを介して取り付けられた先端工具を第1部材に当てて、トリガスイッチ221を引くと、制御部21が作業指示情報に基づいて締付部23を制御し、第1部材を第2部材に締め付ける締付作業が行われる(ステップS12)。作業指示情報には締付トルクの情報が含まれており、制御部21は、センサ部24により測定される締付トルクの測定値(締付トルク値)が、作業指示情報に含まれる締付トルクの設定値(トルク設定値)に一致するように締付部23を制御する。このように、無線通信モードでは、無線通信部251が、締付作業に関する作業指示情報を受信し、制御部21は作業指示情報に基づいて締付部23を制御する。これにより、受信機4から、離れた場所にある電動工具2に対して締付作業に関する作業指示情報を送信できるので、通信線CB1を介して電動工具2を端末装置3に接続して端末装置3から作業指示情報を受け取る手間が省け、使い勝手が向上する。
【0164】
締付部23による1回の締付作業が完了すると、制御部21は、センサ部24の測定結果に基づいて作業の良否を判定した判定結果の情報、締付トルクの測定値(平均値、最大値等)、及び、1回の締付作業の開始から終了までの締付トルクの時系列データを作業データとして制御部21のメモリに一時的に記憶させる。また、制御部21は、メモリに一時的に記憶された判定結果の情報を含む作業データと電動工具2の識別情報とを無線通信部251から受信機4に送信させる(ステップS13)。言い換えると、無線通信モードにおいて、無線通信部251は、1回の締付作業が終わると、作業データの少なくとも一部を無線通信方式で送信する。これにより、1回の締付作業が終わるごとに、電動工具2を用いて行った締付作業の作業データを受信機4に送信できるので、次の締付作業を開始する前に締付作業の良否を判断でき、締付作業が不良である場合には締付作業をやり直すことができ、また次の締付作業の品質向上に生かすことができる。受信機4の無線通信部41が電動工具2から送信された作業データを受信すると、受信した作業データ(判定結果の情報)と送信元の電動工具2の識別情報と受信時刻とを対応付けて記憶部46に記憶させる。なお、制御部21は、無線通信部251が作業データを送信する送信期間(なお、送信期間は、前述した待機期間の少なくとも一部である)において、締付部23による締付作業を停止しており、締付部23が締付作業を行うことで発生する電磁ノイズによって無線通信部251と受信機4との無線通信に通信エラーが発生する可能性を低減している。
【0165】
また、制御部21は、判定結果の情報に基づいて表示用の発光ダイオードを点灯又は点滅させることで、電動工具2を使用するユーザに対して判定結果の情報を通知することができる。
【0166】
ここで、ステップS11で受信した作業指示情報に基づく1回又は複数回分の締付作業が全て終了していなければ(ステップS14:No)、電動工具2はステップS12に戻って締付作業を繰り返す。
【0167】
一方、ステップS11で受信した作業指示情報に基づく1回又は複数回分の締付作業が全て終了していれば(ステップS14:Yes)、制御部21は、締付部23による締付作業を停止し、ステップS11に戻って新たな作業指示情報の受信を待機する。つまり、制御部21は、作業指示情報に基づく締付作業が全て終了すると、締付部23による締付作業を停止しており、作業指示情報が電動工具2に設定されていない状態で、電動工具2による締付作業が継続される可能性を低減できる。
【0168】
なお、制御部21のメモリには、作業データとして締付トルクの時系列データも一時的に記憶されているが、締付トルクの時系列データはデータ量が大きいため、判定結果の情報を送信する時間に比べて、締付トルクの時系列データを送信する時間は長くなる。電動工具2を用いて締付作業を行う途中に締付トルクの時系列データを送信する場合、締付トルクの時系列データの送信によって締付作業を行えない時間が長くなる。そこで、制御部21は、作業指示情報に基づく1回又は複数回分の締付作業が全て終了した後に無線通信部251から受信機4に締付トルクの時系列データを無線送信させており、締付トルクの時系列データと電動工具2の識別情報とを無線送信することによって、締付作業の実施が遅れる可能性を低減できる。
【0169】
なお、電動工具2に入力された作業指示情報が、所定の単位作業を複数回繰り返すようなバッチ作業に関する作業指示である場合、無線通信部251は、バッチ作業が終了した時点で、制御部21のメモリに一時的に記憶されている作業データの少なくとも一部(例えば締付トルクの時系列データ)を受信機4に送信してもよい。また、電動工具2に入力された作業指示情報が、複数回分の締付作業に関する作業指示である場合も、無線通信部251は、作業指示情報が示す複数回分の締付作業が終了した時点で、制御部21のメモリに一時的に記憶されている作業データの少なくとも一部を受信機4に送信してもよい。このように、無線通信モードにおいて、無線通信部251は、複数回の締付作業が終わると、作業データの少なくとも一部を無線通信方式で送信してもよく、無線通信の回数を少なくすることで、作業データの送信による締付作業の中断を無くすことができ、タクトタイムが短い締付作業にも対応できる。また、無線通信の回数を少なくすることで、消費電力の低減を図ることもできる。また、複数回の締付作業が終わったタイミングで、電動工具2を用いて行った締付作業の作業データを受信機4に送信できるので、次の締付作業を開始する前に締付作業の良否を確認でき、締付作業が不良である場合には締付作業をやり直すことが可能になる。
【0170】
また、無線通信モードでは、無線通信部251は、制御部21のメモリに一時的に記憶されている作業データを送信しており、記憶部27に記憶されている作業データを記憶部27から読み出して送信する場合に比べて記憶部27にアクセスする時間を短縮できるので、無線送信にかかる時間を短縮できるという利点もある。
【0171】
なお、本実施形態では、1回の締付作業を終えるごとに、制御部21は、作業の良否を判定した判定結果の情報を無線通信部251から受信機4に送信させているが、締付トルクの測定値を無線通信部251から受信機4に送信させてもよい。また、1回の締付作業を終えるごとに、制御部21は、作業の良否を判定した判定結果の情報と、締付トルクの測定値とを無線通信部251から受信機4に送信させてもよい。
【0172】
(3.2.2)有線通信モードの動作
電動工具2が有線通信モードに設定されている場合の動作を
図9等に基づいて説明する。なお、電動工具2は、端末装置3から入力されたデータ種別情報に基づき、作業の良否を示す判定結果の情報と、締付トルクの時系列データとを作業データとして端末装置3に送信するように設定されている。電動工具2は、データ種別情報に基づいて、締付トルクの測定値(最大値又は平均値など)を作業データとして受信機4に送信してもよい。なお、作業データとして締付トルクの測定値を受信機4に送信することは必須ではなく、作業データの内容は適宜変更が可能である。
【0173】
管理者は、電動工具2のUSBコネクタCN1に通信線CB1のUSBコネクタCN2を接続し、通信線CB1のUSBコネクタCN3を端末装置3に接続して、電動工具2と端末装置3とを通信線CB1を介して接続する(ステップS1)。電動工具2と端末装置3とが通信線CB1を介して接続され、有線通信部252が有線通信部31と通信可能な状態になると、制御部21は、表示部28が有する通信表示用の発光ダイオードを点灯させて、有線通信方式による通信が開始したことを表示する。
【0174】
管理者は、端末装置3のHMI32を用いてデータ取込用アプリを実行し、設定対象の電動工具2を選択する。管理者が、端末装置3のHMI32を用いて電動工具2に設定する1回又は複数回分の締付作業に関する作業指示情報(例えば締付トルク、本数等の情報)を作成すると、有線通信部31が電動工具2に作業指示情報を送信する。電動工具2の有線通信部252が端末装置3から送信された作業指示情報を受信すると(ステップS2)、制御部21は作業指示情報を記憶部27に記憶させる。また、制御部21は、表示部28が備える7セグメントLEDを用いて、作業指示情報を受信し締付作業を開始する準備が整ったことを表示する。なお、端末装置3は、受信機4を介して上位装置5から取得した作業指示情報を電動工具2に設定してもよい。
【0175】
電動工具2を用いて締付作業を開始する準備が整うと、電動工具2を用いて締付作業を行うユーザが、電動工具2のUSBコネクタCN1からUSBコネクタCN2を取り外し(ステップS3)、胴体部201の凹部204に蓋材206を取り付ける。USBコネクタCN1からUSBコネクタCN2が取り外されると、有線通信部31と有線通信部252との通信が不通になるので、制御部21は、表示部28が有する通信表示用の発光ダイオードを消灯させて、有線通信部31の通信が停止したことを表示する。
【0176】
その後、ユーザが電動工具2を持って作業場所まで移動し、電動工具2の出力軸231にソケットを介して取り付けられた先端工具を第1部材に当てて、トリガスイッチ221を引くと、制御部21が作業指示情報に基づいて締付部23を制御し、第1部材を第2部材に締め付ける締付作業が行われる(ステップS4)。締付部23による1回の締付作業が完了すると、制御部21は、センサ部24の測定結果に基づき、作業の良否を判定した判定結果の情報、締付トルクの測定値、及び、1回の締付作業の開始から終了までの締付トルクの時系列データを作業データとして記憶部27に記憶させる(ステップS5)。
【0177】
ここで、制御部21は、作業指示情報に基づく締付作業が全て終了したか否かを判断し(ステップS6)、全ての締付作業が完了していない場合(ステップS6:No)はステップS4に戻って次の締付作業を実施する。
【0178】
一方、作業指示情報に基づく締付作業が全て終了した場合(ステップS6:Yes)、制御部21は、締付部23による締付作業を停止させ、トリガスイッチ221が引かれても締付部23を回転させない。また、制御部21は、例えば7セグメントLEDを用いて全ての締付作業を終了したことを表示する。
【0179】
その後、ユーザが電動工具2を持って端末装置3が置かれている場所まで移動し、電動工具2のUSBコネクタCN1に通信線CB1のUSBコネクタCN2を接続し、通信線CB1のUSBコネクタCN3を端末装置3に接続して、電動工具2と端末装置3とを通信線CB1を介して接続する(ステップS7)。電動工具2と端末装置3とが通信線CB1を介して接続され、有線通信部252が有線通信部31と通信可能な状態になると、制御部21は、表示部28が有する通信表示用の発光ダイオードを点灯させて、有線通信方式による通信が開始したことを表示する。
【0180】
そして、ユーザ又は管理者が、端末装置3のHMI32を操作してデータ取込用アプリを実行させ、電動工具2から作業データを取得するための操作を行うと、制御部30は、有線通信部31から電動工具2へ作業データの転送を指示する転送指示情報を送信する。電動工具2の有線通信部252が端末装置3から転送指示情報を受信すると、制御部21は、記憶部27に記憶されている作業データ(判定結果の情報、締付トルクの測定値、及び締付トルクの時系列データ)を読み出し、有線通信部252から端末装置3へ有線通信方式で送信させる(ステップS8)。ここで、電動工具2から端末装置3への作業データの転送が完了すると、制御部21は、記憶部27に記憶されている作業データを消去してもよい。また、電動工具2から端末装置3に転送される作業データは、判定結果の情報、締付トルクの測定値、及び締付トルクの時系列データのうちの少なくとも一つでもよいし、全てでもよい。
【0181】
電動工具2から端末装置3への作業データの転送が完了すると、端末装置3のHMI32が作業データの転送完了を出力する。ユーザ又は管理者は、作業データの転送完了を確認すると、電動工具2からコネクタCN2を取り外して締付作業を終了する。なお、ユーザ又は管理者はHMI32を操作して新たな作業指示情報を電動工具2に設定してもよく、電動工具2を用いて新たな締付作業を開始することもできる。
【0182】
このように、有線通信モードでは、電動工具2が有線通信モードで動作中に記憶部27に記憶された作業データが、電動工具2と端末装置3とを通信線CB1を介して接続したタイミングで、電動工具2から端末装置3に送信される。したがって、電動工具2を用いて締付作業を行う途中に作業データを無線送信する場合に比べて、無線通信により締付作業が妨げられる可能性を低減でき、使い勝手が向上するという利点がある。また、無線通信方式に比べて伝送速度が速い有線通信方式で締付トルクの時系列データを送信しているので、締付トルクの時系列データの送信にかかる時間を短縮でき、使い勝手が向上する。また、電動工具2と受信機4との無線通信が良好でない場合、通信部25の通信モードを有線通信モードに設定することで、電動工具2から端末装置3へ有線通信モードで作業データを送信することができ、使い勝手が向上するという利点もある。なお、端末装置3は受信機4と通信可能に構成されており、端末装置3のメモリに記憶された作業データを端末装置3が受信機4に送信してもよい。
【0183】
(4)通信制御方法、プログラム等
電動工具システム1が有する電動工具2と同様の機能は、電動工具2の通信制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る電動工具2の通信制御方法では、通信部25が作業データを送信する通信モードを、無線通信モード又は有線通信モードに設定する。無線通信モードでは、無線通信部251が、1回又は複数回の締付作業が終わると、センサ部24が出力した測定結果に関連する作業データを無線通信方式で送信する。有線通信モードでは、有線通信部252が、有線通信モードで動作中に記憶部27に記憶された作業データを有線通信方式で送信する。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上記の電動工具2の通信制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0184】
本開示における電動工具システム1(具体的には、電動工具2、受信機4、及び上位装置5)及び端末装置3は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における電動工具システム1(具体的には、電動工具2、受信機4、及び上位装置5)及び端末装置3としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここで言うIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここで言うコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0185】
(5)その他の変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0186】
以下、上記の実施形態のその他の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0187】
上記の実施形態において、通信部25の通信モードが、無線通信モードと、有線通信モードとに加えて、両用モードを更に含んでもよい。両用モードでは、無線通信部251による無線通信と有線通信部252による有線通信との両方を実行可能である。この場合、制御部21は、端末装置3から受信したモード設定情報に基づいて、通信モードを無線通信モード、有線通信モード、及び両用モードのうちのいずれかに設定する。通信部25の通信モードが両用モードに設定された場合、無線通信部251による無線通信が所望のタイミングで行われ、また電動工具2が端末装置3に有線接続された状態では有線通信部252による有線通信を実行できる。したがって、両用モードでは、無線通信部251による無線通信と、有線通信部252による有線通信とを同時に行うことも可能である。
【0188】
上記の実施形態において、複数の装置に分散されている受信機4及び上位装置5の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、受信機4と上位装置5とに分散されている一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。また、端末装置3の少なくとも一部の機能と、受信機4及び/又は上位装置5の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0189】
また、受信機4、上位装置5、及び端末装置3における複数の機能は、1つの筐体内に集約されてもよいし、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。また、受信機4の少なくとも一部の機能(例えば、制御部43の一部の機能)がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0190】
なお、
図1及び
図4では電動工具2の数が1つであるが、1つの受信機4が通信可能な電動工具2の数は1つに限定されず、2つ以上でもよく、適宜変更が可能である。また、
図1及び
図4では端末装置3の数が1つであるが、端末装置3の数は1つに限定されず、適宜変更が可能である。また、
図1及び
図4では受信機4の数が1つであるが、1つの上位装置5に複数の受信機4が接続されてもよく、受信機4の数は適宜変更が可能である。
【0191】
上記の実施形態では、電動工具2が、締付部材の締付作業を行うインパクト工具であったが、インパクト機構は必須ではなく、インパクト機構を備えていない電動工具でもよい。
【0192】
また、上記の実施形態では電動工具2を用いる作業が第1部材を第2部材に締め付ける締付作業であったが、電動工具2は締付作業以外の作業(例えば穴開け作業、切削作業、切断作業など)に使用される電動工具でもよく、作業データの内容は電動工具2を用いる作業の内容に応じて適宜変更が可能である。
【0193】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の電動工具(2)は、締付部(23)と、センサ部(24)と、通信部(25)と、記憶部(27)と、可搬型の工具本体(200)と、を備える。締付部(23)は、動力源の駆動力によって部材の締付作業を行う。センサ部(24)は、測定処理を実行する。前記測定処理は、締付部(23)による締付トルクを少なくとも測定し、測定の結果に関連する作業データを取得する処理である。通信部(25)は、前記作業データを送信する。記憶部(27)は、前記作業データを記憶する。工具本体(200)は、締付部(23)、センサ部(24)、通信部(25)、及び記憶部(27)を収容する。通信部(25)が記憶部(27)に記憶されている作業データを送信する通信モードは、第1通信モードと、第2通信モードとを含む。通信部(25)は、前記第1通信モードでは、前記締付作業の合間に第1作業データを送信し、前記第2通信モードでは、全ての前記締付作業の完了後に第2作業データを少なくとも送信する。前記第1作業データは、記憶部(27)に記憶されている前記作業データの一部であり、前記第2作業データは、記憶部(27)に記憶されている前記作業データのうち前記第1作業データを除くデータである。
【0194】
この態様によれば、通信モードが第1通信モードと第2通信モードとを含み、第1通信モードでは、締付作業の合間に作業データの一部である第1作業データを送信し、第2通信モードでは、全ての締付作業の完了後に、作業データの残りの部分である第2作業データを少なくとも送信することで、締付作業が行われない期間(待機期間)の短縮を図ることができる。その結果、作業データの送信によって締付作業が妨げられるのを抑制し、使い勝手を向上させた電動工具(2)を提供できる。
【0195】
第2の態様の電動工具(2)では、第1の態様において、通信部(25)は、前記第1通信モードでは、1回又は複数回の前記締付作業が終わる度に、記憶部(27)に記憶されている前記作業データのうち、前記1回又は前記複数回の前記締付作業に対応する前記第1作業データを送信する。通信部(25)は、前記第2通信モードでは、全ての前記締付作業が完了した後に、記憶部(27)に記憶されている前記作業データのうち、全ての前記締付作業に対応する前記第2作業データを少なくとも送信する。
【0196】
この態様によれば、第1通信モードでは、1回又は複数回の締付作業が終わる度に当該1回又は当該複数回の締付作業に対応する第1作業データを送信し、第2通信モードでは、全ての締付作業の完了後に当該全ての締付作業に対応する第2作業データを送信することで、一連の待機期間の均等な短縮を図ることができる。
【0197】
第3の態様の電動工具(2)では、第2の態様において、前記測定処理は、トルク測定処理と、判定処理と、関連測定処理と、を含む。前記トルク測定処理は、前記締付トルクを測定するトルク測定を行い、前記トルク測定の結果である締付トルク値を取得する処理である。前記判定処理は、前記締付トルク値を基に前記締付作業の良否に関する判定を行い、前記判定の結果に関する判定結果データを取得する処理である。関連測定処理は、前記トルク測定に関連する関連測定を行い、前記関連測定の結果である関連値を取得する処理である。前記第1作業データは、前記締付トルク値及び前記判定結果データのうち1種類以上の情報を含む。前記第2作業データは、前記締付トルク値及び前記判定結果データ並びに前記関連値のうち、前記第1作業データに含まれる1種類以上の情報を除く1種類以上の情報、を含む。
【0198】
この態様によれば、締付トルク値及び判定結果データ並びに関連値が取得される場合に、第1作業データは、締付トルク値及び判定結果データのうち1種類以上の情報を含み、第2作業データは、第1作業データに含まれる1種類以上の情報を除く1種類以上の情報を含むことで、第1通信モードで送信する情報量の抑制、ひいては待機期間の短縮を効果的に図ることができる。
【0199】
第4の態様の電動工具(2)では、第3の態様において、前記第1作業データは、前記判定結果データを含む。前記第2作業データは、前記締付トルク値及び前記関連値を含む。
【0200】
この態様によれば、1作業データは判定結果データを、第2作業データは締付トルク値及び関連値を、それぞれ含むことで、第1通信モードで送信する情報量の抑制、ひいては待機期間の短縮を、より効果的に図ることができる。
【0201】
なお、第1作業データが締付トルク値を含み、判定結果データを含まない場合は、受信機(4)側で判定が行われるが、このような場合と比べて、受信機(4)側での処理負荷の抑制を図ることができる。受信機(4)と通信する電動工具(2)の数が多いほど、抑制効果は顕著となる。
【0202】
第5の態様の電動工具(2)では、第4の態様において、通信部(25)は、前記第2通信モードでは、詳細作業データを送信する。前記詳細作業データは、前記第1作業データ及び前記第2作業データを含む作業データである。
【0203】
この態様によれば、第1通信モードで、詳細作業データの一部である判定結果データが送信された後、第2通信モードで、判定結果データも含む詳細作業データの全部が送信される。このように、判定結果データのみを、先に第1モードで送信することで、送信先(例えば、受信機4等)において、判定結果データに基づく制御(例えば、ライン速度の制御など)をリアルタイムに行える。また、判定結果データも含む詳細作業データを、後に第2通信モードで送信することで、送信先(例えば、端末装置3等)において、詳細作業データの管理及び利用(例えば、詳細作業データの蓄積、蓄積された詳細作業データに基づく工程改善など)が容易になる。
【0204】
第6の態様の電動工具(2)では、第5の態様において、記憶部(27)は、記憶している前記詳細作業データのうち、通信部(25)によって送信されたデータを削除する。
【0205】
この態様によれば、記憶部(27)に記憶されている詳細作業データのうち、送信済みの作業データは自動的に削除されるので、記憶部(27)の記憶容量の抑制を図ることができる。
【0206】
第7の態様の電動工具(2)では、第6の態様において、記憶部(27)は、前記第1通信モードでは、通信部(25)が前記判定結果データを送信しても、送信された前記判定結果データを削除せず、前記第2通信モードでは、通信部(25)が前記詳細作業データを送信すると、送信された前記詳細作業データを削除する。
【0207】
この態様によれば、第1通信モードでは、送信された判定結果データは削除されず、第2通信モードで、送信された詳細作業データの全部が削除される。従って、記憶部(27)の記憶容量の抑制を図りつつ、第2通信モードで詳細作業データの全部の送信も行うことができる。
【0208】
第8の態様に係る電動工具(2)では、第7の態様において、記憶部(27)は、前記第2通信モードでは、通信部(25)が前記詳細作業データを送信しても、送信された前記詳細作業データを直ちには削除せず極力保持し続ける。
【0209】
この態様によれば、詳細作業データを極力保持し続けることで、詳細作業データの再送等が可能となる。
【0210】
第9の態様に係る電動工具(2)では、第1~第8のいずれかの態様において、通信部(25)は、無線通信部(251)と、有線通信部(252)と、を含む。無線通信部(251)は、前記第1作業データを無線通信方式で送信する。有線通信部(252)は、前記第2作業データを有線通信方式で送信する。前記第1通信モードは、無線通信モードであり、前記第2通信モードは、有線通信モードである。前記無線通信モードでは、無線通信部(251)が、前記締付作業の合間に前記第1作業データを前記無線通信方式で送信する。前記有線通信モードでは、有線通信部(252)が、全ての前記締付作業の完了後に少なくとも前記第2作業データを前記有線通信方式で送信する。
【0211】
この態様によれば、第1通信モードは無線通信モードであり、第2通信モードは有線通信モードである。無線通信モードでは、無線通信部(251)が、前記締付作業の合間に前記第1作業データを無線通信方式で送信し、有線通信モードでは、有線通信部(252)が、全ての締付作業の完了後に第2作業データを有線通信方式で送信するので、締付作業の合間に全ての作業データを無線通信方式で送信する場合に比べて、作業データの送信によって締付作業が妨げられるのを抑制でき、使い勝手が向上するという利点がある。
【0212】
なお、第9の態様において、前記無線通信モードでは、無線通信部(251)は、1回の締付作業が終わると、第1作業データを前記無線通信方式で送信してもよい。
【0213】
こうして、1回の締付作業が終わるごとに、無線通信部(251)が第1作業データを無線通信方式で送信することで、第1作業データを用いた制御(例えば、ライン速度の制御、締付部23の制御など)のリアルタイム性の向上を図ることができる。また、第1作業データが締付トルク値を含み、判定結果データを含まない場合において、次の締付作業を実行する前に、受信機(4)側で、第1作業データに基づいて締付作業の良否を判断する(良否に関する判定を行う)ことができる。
【0214】
なお、第9の態様において、無線通信モードでは、無線通信部(251)は、複数回の締付作業が終わると、第1作業データを前記無線通信方式で送信してもよい。
【0215】
こうして、複数回の締付作業が終わるごとに、無線通信部(251)が第1作業データを無線通信方式で送信することで、無線通信の回数を減らしつつ、第1作業データを用いた制御のリアルタイム性の向上を図ることができる。
【0216】
なお、第9の態様において、電動工具(2)は、制御部(21)を更に備えてもよい。制御部(21)は、締付部(23)の動作を制御する。無線通信モードでは、無線通信部(251)は、締付作業に関する作業指示情報を受信し、制御部(21)は前記作業指示情報に基づいて締付部(23)を制御してもよい。
【0217】
これによって、離れた場所にある電動工具(2)に対して新たな締付作業に関する作業指示情報を送信できるので、使い勝手が向上するという利点がある。
【0218】
さらに、制御部(21)は、作業指示情報に基づく締付作業が全て終了すると、締付部(23)による締付作業を停止してもよい。
【0219】
これによって、締付作業に関する作業指示情報が入力されていない状態で、締付部(23)による締付作業が実行されるのを抑制できる。
【0220】
なお、第9の態様において、制御部(21)は、無線通信部(251)が作業データを送信する送信期間において、締付部(23)による締付作業を停止してもよい。
【0221】
これによって、締付部(23)による締付作業が行われることで発生するノイズによって、無線通信部(251)の通信エラーが発生する可能性を低減できる。
【0222】
なお、第9の態様において、制御部(21)は、有線通信部(252)に通信線(CB1)を介して接続された端末装置(3)から有線通信部(252)が受信したモード設定情報に基づいて、通信モードを無線通信モード又は有線通信モードに設定してもよい。
【0223】
これによって、端末装置(3)を用いて通信モードを設定することができる。
【0224】
第10の態様の電動工具システム(1)は、第1~第9のいずれかの態様の電動工具(2)と、受信機(4)と、を含む。受信機(4)は、無線通信部(251)から送信された作業データを受信する。
【0225】
この態様によれば、電動工具(2)の通信部(25)の通信モードが第1通信モードと第2通信モードとを含む。第1通信モードでは、締付作業の合間に第1作業データを送信し、第2通信モードでは全ての締付作業の完了後に少なくとも第2作業データを送信することで、締付作業が行われない期間(待機期間)の短縮を図ることができる。その結果、作業データの送信によって締付作業が妨げられるのを抑制し、使い勝手を向上させた電動工具(2)、を含む電動工具システム(1)を提供できる。
【0226】
上記態様に限らず、上記実施形態に係る電動工具(2)の種々の構成(変形例を含む)は、電動工具(2)の制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0227】
第2~第10の態様に係る構成については、電動工具(2)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0228】
1 電動工具システム
2 電動工具
3 端末装置
4 受信機
21 制御部
23 締付部
24 センサ部
25 通信部
27 記憶部
200 工具本体
251 無線通信部
252 有線通信部