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特開2023-181058経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステム、方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181058
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/374 20210101AFI20231214BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20231214BHJP
【FI】
A61B5/374
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192055
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2022093712
(32)【優先日】2022-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514028042
【氏名又は名称】株式会社アラヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】能村 幸大郎
(72)【発明者】
【氏名】蓬田 幸人
(72)【発明者】
【氏名】リン イ シン
(72)【発明者】
【氏名】野辺 宣翔
(72)【発明者】
【氏名】金井 良太
(72)【発明者】
【氏名】笹井 俊太朗
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127FF02
4C127GG01
4C127GG03
4C127GG11
(57)【要約】
【課題】経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステム等を提供すること
【解決手段】本発明の経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステムは、経時的に変化する波形を有する信号を受信する受信手段と、前記信号から所定の周波数成分の信号を抽出する抽出手段と、前記抽出された信号から、ローカルバーストを検出する検出手段とを備える。本発明の対象のパフォーマンスを推定するシステムは、対象の脳波信号を受信する受信手段と、前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出する抽出手段と、前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出する検出手段と、前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定する推定手段とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステムであって、
経時的に変化する波形を有する信号を受信する受信手段と、
前記信号から所定の周波数成分の信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出された信号から、ローカルバーストを検出する検出手段と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記波形を有する信号の分布に基づいて、前記ローカルバーストの閾値Tを決定することと、
前記抽出された信号が前記閾値Tを超えたときに、前記ローカルバーストを検出することと
を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記閾値Tは、
T=μ+nσ
で表され、ここで、μは、前記所定の周波数成分の信号の分布から決定される代表値であり、σは、前記所定の周波数成分の信号の分布から決定されるばらつきを示す値であり、nは係数である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記nは、前記所定の周波数成分に応じて変動する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記波形を有する信号は、対象の脳波信号または対象の心拍信号である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記波形を有する信号は、対象の脳波信号であり、前記システムは、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定する推定手段
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記推定手段は、学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定し、
前記学習済モデルは、複数の被験体のパフォーマンスを示す値と複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、前記学習済モデルに前記検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、前記対象のパフォーマンスを示す値が出力される、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記推定手段は、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定する第1の推定手段と、
前記推定されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定する第2の推定手段と
を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1の推定手段は、第1の学習済モデルを用いて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定し、
前記第2の推定手段は、第2の学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定し、
前記第1の学習済モデルは、複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値と所定時間経過後の複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、前記第1の学習済モデルに前記検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、前記所定時間経過後の前記対象のローカルバーストのパラメータの値が出力され、
前記第2の学習済モデルは、複数の被験体のパフォーマンスを示す値と複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、前記第2の学習済モデルに前記第1の学習済モデルから出力されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、前記対象のパフォーマンスを示す値が出力される、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ローカルバーストのパラメータは、所定期間内に前記ローカルバーストが検出された回数を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記所定の周波数成分は、デルタ波成分、シータ波成分、アルファ波成分、SMR波成分、ベータ波成分、ガンマ波成分のうちの少なくとも1つである、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記所定の周波数成分は、デルタ波成分およびシータ波成分のうちの一方または両方である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
経時的に変化する波形を有する信号を処理する方法であって、
経時的に変化する波形を有する信号を受信することと、
前記信号から所定の周波数成分の信号を抽出することと、
前記抽出された信号から、ローカルバーストを検出することと
を含む方法。
【請求項14】
前記波形を有する信号は、対象の脳波信号であり、前記方法は、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定すること
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
経時的に変化する波形を有する信号を処理するプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
経時的に変化する波形を有する信号を受信することと、
前記信号から所定の周波数成分の信号を抽出することと、
前記抽出された信号から、ローカルバーストを検出することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
【請求項16】
前記波形を有する信号は、対象の脳波信号であり、
前記処理は、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定すること
をさらに含む、請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
対象のパフォーマンスを推定するための学習済モデルを作成するシステムであって、
被験体の脳波信号と、そのときのパフォーマンスを示すデータを受信する受信手段と、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出する検出手段と、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値と前記パフォーマンスとの間の関係を学習する学習手段と
を備えるシステム。
【請求項18】
対象のパフォーマンスを推定するための学習済モデルを作成する方法であって、
被験体の脳波信号と、そのときのパフォーマンスを示すデータを受信することと、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出することと、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出することと、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値と前記パフォーマンスとの間の関係を学習することと
を含む方法。
【請求項19】
対象のパフォーマンスを推定するための学習済モデルを作成するプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
被験体の脳波信号と、そのときのパフォーマンスを示すデータを受信することと、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出することと、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出することと、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値と前記パフォーマンスとの間の関係を学習することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステム、方法、およびプログラムに関し、より具体的には、ローカルバーストを検出するシステム等、および/または、検出されたローカルバーストに基づいて対象のパフォーマンスを推定するシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
脳が睡眠状態にあるとき、脳波には特徴的な低周波数帯の信号が観察されることが知られている(例えば、特許文献1)。近年、覚醒時でも、睡眠状態にあるときと同様の特徴的な低周波数帯の信号が見られることが分かってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-68018号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、脳波に見られる特徴的な成分と対象のパフォーマンスとの間に関係があることを見出した。本発明は、その関係を利用して対象のパフォーマンスを推定するシステム等を提供する。
【0005】
さらに、本発明の発明者は、特徴的な成分を検出することは、脳波信号のみならず、経時的に変化する波形を有する信号に適用できることも見出した。本発明は、経時的に変化する波形を有する信号から特徴的な成分を検出するシステム等も提供する。
【0006】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステムであって、
経時的に変化する波形を有する信号を受信する受信手段と、
前記信号から所定の周波数成分の信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出された信号から、ローカルバーストを検出する検出手段と
を備えるシステム。
(項目2)
前記検出手段は、
前記波形を有する信号の分布に基づいて、前記ローカルバーストの閾値Tを決定することと、
前記抽出された信号が前記閾値Tを超えたときに、前記ローカルバーストを検出することと
を行うように構成されている、上記項目に記載のシステム。
(項目3)
前記閾値Tは、
T=μ+nσ
で表され、ここで、μは、前記所定の周波数成分の信号の分布から決定される代表値であり、σは、前記所定の周波数成分の信号の分布から決定されるばらつきを示す値であり、nは係数である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目4)
前記nは、前記所定の周波数成分に応じて変動する、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目5)
前記波形を有する信号は、対象の脳波信号または対象の心拍信号である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目6)
前記波形を有する信号は、対象の脳波信号であり、前記システムは、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定する推定手段
をさらに備える、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目7)
前記推定手段は、学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定し、
前記学習済モデルは、複数の被験体のパフォーマンスを示す値と複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、前記学習済モデルに前記検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、前記対象のパフォーマンスを示す値が出力される、
上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目8)
前記推定手段は、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定する第1の推定手段と、
前記推定されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定する第2の推定手段と
を備える、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目9)
前記第1の推定手段は、第1の学習済モデルを用いて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定し、
前記第2の推定手段は、第2の学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定し、
前記第1の学習済モデルは、複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値と所定時間経過後の複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、前記第1の学習済モデルに前記検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、前記所定時間経過後の前記対象のローカルバーストのパラメータの値が出力され、
前記第2の学習済モデルは、複数の被験体のパフォーマンスを示す値と複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、前記第2の学習済モデルに前記第1の学習済モデルから出力されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、前記対象のパフォーマンスを示す値が出力される、
上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目10)
前記ローカルバーストのパラメータは、所定期間内に前記ローカルバーストが検出された回数を含む、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目11)
前記所定の周波数成分は、デルタ波成分、シータ波成分、アルファ波成分、SMR波成分、ベータ波成分、ガンマ波成分のうちの少なくとも1つである、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目12)
前記所定の周波数成分は、デルタ波成分およびシータ波成分のうちの一方または両方である、上記項目のいずれか一項に記載のシステム。
(項目13)
経時的に変化する波形を有する信号を処理する方法であって、
経時的に変化する波形を有する信号を受信することと、
前記信号から所定の周波数成分の信号を抽出することと、
前記抽出された信号から、ローカルバーストを検出することと
を含む方法。
(項目14)
前記波形を有する信号は、対象の脳波信号であり、前記方法は、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定すること
をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14A)
上記項目の1または複数に記載の特徴を備える、項目13または14に記載の方法。
(項目15)
経時的に変化する波形を有する信号を処理するプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
経時的に変化する波形を有する信号を受信することと、
前記信号から所定の周波数成分の信号を抽出することと、
前記抽出された信号から、ローカルバーストを検出することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目16)
前記波形を有する信号は、対象の脳波信号であり、
前記処理は、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定すること
をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載のプログラム。
(項目16A)
上記項目の1または複数に記載の特徴を備える、項目15または16に記載の方法。
(項目17)
対象のパフォーマンスを推定するための学習済モデルを作成するシステムであって、
被験体の脳波信号と、そのときのパフォーマンスを示すデータを受信する受信手段と、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出する検出手段と、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値と前記パフォーマンスとの間の関係を学習する学習手段と
を備えるシステム。
(項目17A)
上記項目の1または複数に記載の特徴を備える、項目17に記載のシステム。
(項目18)
対象のパフォーマンスを推定するための学習済モデルを作成する方法であって、
被験体の脳波信号と、そのときのパフォーマンスを示すデータを受信することと、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出することと、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出することと、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値と前記パフォーマンスとの間の関係を学習することと
を含む方法。
(項目18A)
上記項目の1または複数に記載の特徴を備える、項目18に記載の方法。
(項目19)
対象のパフォーマンスを推定するための学習済モデルを作成するプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
被験体の脳波信号と、そのときのパフォーマンスを示すデータを受信することと、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出することと、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出することと、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値と前記パフォーマンスとの間の関係を学習することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目19A)
上記項目の1または複数に記載の特徴を備える、項目19に記載のプログラム。
(項目A1)
対象のパフォーマンスを推定するシステムであって、
対象の脳波信号を受信する受信手段と、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出する検出手段と、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定する推定手段と
を備えるシステム。
(項目A2)
前記推定手段は、学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定し、
前記学習済モデルは、複数の被験体のパフォーマンスを示す値と複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、前記学習済モデルに前記検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、前記対象のパフォーマンスを示す値が出力される、
上記項目Aに記載のシステム。
(項目A3)
前記推定手段は、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定する第1の推定手段と、
前記推定されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定する第2の推定手段と
を備える、上記項目Aのいずれか一項に記載のシステム。
(項目A4)
前記第1の推定手段は、第1の学習済モデルを用いて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定し、
前記第2の推定手段は、第2の学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定し、
前記第1の学習済モデルは、複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値と所定時間経過後の複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、前記第1の学習済モデルに前記検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、前記所定時間経過後の前記対象のローカルバーストのパラメータの値が出力され、
前記第2の学習済モデルは、複数の被験体のパフォーマンスを示す値と複数の被験体のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、前記第2の学習済モデルに前記第1の学習済モデルから出力されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、前記対象のパフォーマンスを示す値が出力される、
上記項目Aのいずれか一項に記載のシステム。
(項目A5)
前記検出手段は、
前記対象の脳波信号の分布に基づいて、前記ローカルバーストの閾値を決定することと、
前記抽出された脳波信号が前記閾値を超えたときに、前記ローカルバーストを検出することと
を行うように構成されている、上記項目Aのいずれか一項に記載のシステム。
(項目A6)
前記閾値Tは、
T=μ+nσ
で表され、ここで、μは、前記対象の前記所定の周波数成分の脳波信号の分布から決定される代表値であり、σは、前記対象の前記所定の周波数成分の脳波信号の分布から決定されるばらつきを示す値であり、nは係数である、上記項目Aのいずれか一項に記載のシステム。
(項目A7)
前記nは、前記所定の周波数成分に応じて変動する、上記項目Aのいずれか一項に記載のシステム。
(項目A8)
前記ローカルバーストのパラメータは、所定期間内に前記ローカルバーストが検出された回数を含む、上記項目Aのいずれか一項に記載のシステム。
(項目A9)
前記所定の周波数成分は、デルタ波成分、シータ波成分、アルファ波成分、SMR波成分、ベータ波成分、ガンマ波成分のうちの少なくとも1つである、上記項目Aのいずれか一項に記載のシステム。
(項目A10)
前記所定の周波数成分は、デルタ波成分およびシータ波成分のうちの一方または両方である、上記項目Aのいずれか一項に記載のシステム。
(項目A11)
対象のパフォーマンスを推定する方法であって、
対象の脳波信号を受信することと、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出することと、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出することと、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定することと
を含む方法。
(項目A11A)
上記項目Aの1または複数に記載の特徴を備える、項目A11に記載の方法。
(項目A12)
対象のパフォーマンスを推定するプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
対象の脳波信号を受信することと、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出することと、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出することと、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、前記対象のパフォーマンスを推定することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目A12A)
上記項目Aの1または複数に記載の特徴を備える、項目A12に記載のプログラム。
(項目A13)
対象のパフォーマンスを推定するための学習済モデルを作成するシステムであって、
被験体の脳波信号と、そのときのパフォーマンスを示すデータを受信する受信手段と、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出する検出手段と、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値と前記パフォーマンスとの間の関係を学習する学習手段と
を備えるシステム。
(項目A13A)
上記項目Aの1または複数に記載の特徴を備える、項目A13に記載のシステム。
(項目A14)
対象のパフォーマンスを推定するための学習済モデルを作成する方法であって、
被験体の脳波信号と、そのときのパフォーマンスを示すデータを受信することと、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出することと、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出することと、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値と前記パフォーマンスとの間の関係を学習することと
を含む方法。
(項目A14A)
上記項目Aの1または複数に記載の特徴を備える、項目A14に記載の方法。
(項目A15)
対象のパフォーマンスを推定するための学習済モデルを作成するプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
被験体の脳波信号と、そのときのパフォーマンスを示すデータを受信することと、
前記脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出することと、
前記抽出された脳波信号から、ローカルバーストを検出することと、
前記検出されたローカルバーストのパラメータの値と前記パフォーマンスとの間の関係を学習することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目A15A)
上記項目Aの1または複数に記載の特徴を備える、項目A15に記載のプログラム。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象のパフォーマンスを推定するシステム等を提供することを可能にする。このシステム等により、例えば、対象の現在のパフォーマンスまたは将来のパフォーマンスを推定することができ、パフォーマンスの低下を防止するための対策を講じることを可能にし得る。
【0008】
さらに、本発明によれば、ローカルバーストを検出するシステム等も提供することを可能にする。このシステム等によって検出されたローカルバーストは、種々の用途に利用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】対象から測定された脳波信号から特徴的な低周波数帯の信号(すなわち、「ローカルスリープ」における信号)を検出するフローを概略的に示す図
図1B】ローカルスリープの回数と、ドライビングコースの中央線からの距離との相関係数を導出した実験の結果を示す図
図1C】対象の心拍信号からローカルバーストを検出するフローを概略的に示す図
図2A】ローデルタ波成分(約1.0Hz~約1.5Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2B】ミドルデルタ波成分(約2.5Hz~約3.0Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2C】ハイデルタ波成分(約3.5Hz~約4.0Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2D】デルタ波成分(約1.0Hz~約3.0Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2E】シータ波成分(約4.0Hz~約7.0Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2F】アルファ波成分(約8.0~約12Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2G】SMR波成分(約12~約15Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2H】ローベータ波成分(約15Hz~約18Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2I】ミドルベータ波成分(約19Hz~約22Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2J】ハイベータ波成分(約23Hz~約36Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図2K】ガンマ波成分(約36~約48Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す図
図3】ローカルバーストに基づいて対象のパフォーマンスを推定することフローの一例を示す図
図4】対象のパフォーマンスを推定するシステム100の構成の一例を示す図
図5A】プロセッサ部120の構成の一例を示す図
図5B】プロセッサ部120の代替実施形態であるプロセッサ部120Aの構成の一例を示す図
図5C】プロセッサ部120の代替実施形態であるプロセッサ部120Cの構成の一例を示す図
図6】少なくとも1つの学習済モデルを構築し得るニューラルネットワークモデル600の構造の一例を示す図
図7A】本発明の対象のパフォーマンスを推定するためのシステム100における処理700の一例を示すフローチャート
図7B】ステップS704で、推定手段124Aが将来の対象のパフォーマンスを推定する処理の一例を示すフローチャート
図7C】本発明のシステム100における処理800の一例を示すフローチャート
図8】実施例1の結果を示す図
図9】実施例2の結果を示す図
図10】実施例3の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(定義)
本明細書において、「経時的に変化する波形を有する信号」とは、時間と共に振幅が変化することにより、振幅を表す波形が変化する時系列信号をいう。本明細書および特許請求の範囲では、別様に指定されない限り、単に「信号」ともいう。「信号」には、任意の信号が含まれる。典型的には、「信号」は、生体から取得される信号である生体信号であり、具体的には、「信号」は、脳波信号または心拍信号である。「信号」は、任意の時系列データの信号を含み、時系列データは、様々なセンサーから取得されたデータを含み、例えば、脳について取得されるEEG(electroencephalogram)、ECoG(electrocorticogram)、もしくはNIRS(near-infraredspectroscopy)、筋肉について取得されるEMG(Electromyogram)、眼について取得されるEOG(electrooculogram)もしくはERG(electroretinogram)、心臓について取得されるECG(electrocardiogram)、末梢において取得されるPPG(photoplethysmogram)、または、血圧、体温、ホルモン濃度、もしくは加速度データ等の時系列データを含む。
【0011】
本明細書において、「ローカルバースト」とは、所定の周波数成分の信号の振幅が外れ値を取る現象のことをいう。
【0012】
本明細書において、脳波信号に関する「ローカルバースト」とは、所定の周波数成分の脳波信号の振幅が外れ値を取る現象のことをいう。脳波信号に関するローカルバーストは、覚醒時の脳波信号において発生し得る。
【0013】
本明細書において、「ローカルスリープ」とは、脳波信号に関する「ローカルバースト」の一種であり、デルタ波成分またはシータ波成分の脳波信号の振幅が外れ値をとる現象のことをいう。
【0014】
本明細書において、「外れ値」とは、信号の分布に基づいて決定される閾値を超えた値のことをいう。信号の分布は、予め取得された信号の分布であってもよいし、ローカルバーストを検出するために用いられる所定期間内の信号の分布であってもよいし、任意の開始点から直前の時点までの信号の分布であってもよい。
閾値Tは、T=μ+nσ
で表されることができ、ここで、μは、信号の分布から決定される代表値であり、σは、信号の分布から決定されるばらつきを示す値であり、nは係数である。一例では、μは平均値であり、σは標準偏差である。別の例では、μは中央値であり、σは中央絶対偏差である。典型的には、n≧0.33である。nは、固定値であってもよいし、変動値であってもよい。nが変動値である場合、nは、ローカルバーストが検出される周波数成分に応じて変動し得る。例えば、脳波信号において、デルタ波成分のローカルバースト(すなわち、ローカルスリープ)が検出されるとき、n=0.70であり得る。
【0015】
本明細書において、「~を推定する」とは、現在の~を推定することに加えて、将来の~を推定する(すなわち、予測する)ことも含む概念である。
【0016】
本明細書において、「対象」とは、ローカルバーストを検出する対象となる人物もしくは動物、または、パフォーマンスを推定する対象となる任意の人物もしくは動物のことをいう。
【0017】
本明細書において、「被験体」とは、パフォーマンスを推定するために利用される少なくとも1つの学習済モデルを構築するための学習処理において利用される教師データを取得する対象となる任意の人物または動物のことをいう。
【0018】
本明細書において、「パフォーマンス」とは、脳の特定の神経回路における情報処理によって実現される性質または能力のことをいい、例えば、認知機能を含む。「パフォーマンス」は、例えば、注意能力、ワーキングメモリー、反応速度、実行機能、時・空間認知機能、抑制制御機能、記憶能力、情動制御機能を含む。
【0019】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0020】
(1.脳波信号に関するローカルバーストの検出)
上述したように、覚醒時でも、睡眠状態にあるときと同様の特徴的な低周波数帯の脳波信号が見られることが分かってきた。本発明の発明者は、この脳波信号が、脳の情報処理の一時停止状態において発生するものであり、パフォーマンスと相関し得るのではないかと考えた。
【0021】
本発明の発明者は、低周波数帯の脳波信号がパフォーマンスと相関し得るかを調べるために、対象から測定された低周波数帯(デルタ波帯)の脳波信号と、対象がドライビングゲームを行ったときのパフォーマンスとの関係を解析した。対象には、中央線に沿ってドライブするよう指示が与えられた。対象がドライビングゲームを行ったときのパフォーマンスを示す指標として、ドライビングコースの中央線からの距離を利用した。ドライビングコースの中央線からの距離が小さいほど、うまくドライブできている(すなわち、パフォーマンスが高い)ことを示し、ドライビングコースの中央線からの距離が大きいほど、うまくドライブできていない(すなわち、パフォーマンスが低い)ことを示している。
【0022】
図1Aは、対象から測定された脳波信号から特徴的な低周波数帯の脳波信号(すなわち、「ローカルスリープ」における脳波信号)を検出するフローを概略的に示す。
【0023】
第一に、対象から測定された脳波信号に対して、バンドパスフィルタをかけることにより、デルタ波成分の脳波信号を抽出する。
【0024】
第二に、所定期間内で、デルタ波成分の脳波信号が閾値を超えたときを検出する。検出されたものが「ローカルスリープ」である。ここで、閾値は、μ+2σまたはμ+3σとした。μは中央値であり、σは中央絶対偏差である。
【0025】
第三に、所定期間のウインドウを移動させながら、各所定期間内のローカルスリープの数を計数し、ローカルスリープの回数を決定する。
【0026】
このようにして決定されたローカルスリープの回数と、ドライビングコースの中央線からの距離との相関係数を導出した。11人の対象(S1~S11)において実験を行い、相関係数を導出した。
【0027】
図1Bは、その結果を示す。相関係数が0より大きいことは、正の相関があることを示している。図1Bから分かるように、11人中10人の結果において、対象から検出されたローカルスリープの回数と、対象のパフォーマンスとには強い相関があることが見られた。特に、高い者では、約0.9の高い相関係数を示した。このことから、ローカルスリープが検出されると、対象のパフォーマンスが低下し得ることが示唆された。
【0028】
さらに、本発明の発明者は、低周波数帯の脳波信号だけではなく、あらゆる周波数帯において、同様にパフォーマンスと相関し得る脳波信号が発生しているのではないかと考えた。
【0029】
本発明の発明者は、あらゆる周波数帯において、パフォーマンスと相関し得る脳波信号を検出するために、閾値を変動させて、上記と同様の実験を行った。
【0030】
実験は2名の対象に対して行った。閾値は、μ+nσ(μは中央値であり、σは中央絶対偏差である)とし、nの値を変動させた。10-10法(例えば、Valer Jurcak, Daisuke Tsuzuki, Ippeita Dan, "10/20, 10/10, and 10/5 systems revisited: Their validity as relative head-surface-based positioning systems", NeuroImage, Elsevier, 15 February 2007 を参照)に従って頭部に装着された32個の電極のそれぞれから取得された脳波信号について、閾値を超えた回数とドライビングコースの中央線からの距離との相関係数を算出した。ローデルタ波成分(約1.0Hz~約1.5Hz)、ミドルデルタ波成分(約2.5Hz~約3.0Hz)、ハイデルタ波成分(約3.5Hz~約4.0Hz)、デルタ波成分(約1.0Hz~約3.0Hz)、シータ波成分(約4.0Hz~約7.0Hz)、アルファ波成分(約8.0~約12Hz)、SMR波成分(約12~約15Hz)、ローベータ波成分(約15Hz~約18Hz)、ミドルベータ波成分(約19Hz~約22Hz)、ハイベータ波成分(約23Hz~約36Hz)、ガンマ波成分(約36~約48Hz)の各周波数成分において、相関係数r>0となるnをカウントして分布を描いた。
【0031】
図2Aは、ローデルタ波成分(約1.0Hz~約1.5Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Bは、ミドルデルタ波成分(約2.5Hz~約3.0Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Cは、ハイデルタ波成分(約3.5Hz~約4.0Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Dは、デルタ波成分(約1.0Hz~約3.0Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Eは、シータ波成分(約4.0Hz~約7.0Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Fは、アルファ波成分(約8.0~約12Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Gは、SMR波成分(約12~約15Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Hは、ローベータ波成分(約15Hz~約18Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Iは、ミドルベータ波成分(約19Hz~約22Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Jは、ハイベータ波成分(約23Hz~約36Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。図2Kは、ガンマ波成分(約36~約48Hz)の相関係数r>0となるnのカウントを示すグラフ(上側)および32個の電極のそれぞれのn対rのグラフ(下側)を示す。
【0032】
各周波数において、最頻値のnは、表1に示されるとおりとなった。nの平均値は、0.33となった。
【表1】
【0033】
この結果から、ドライビングにおけるパフォーマンスではn≧0.33とすることで、パフォーマンスと相関し得る脳波信号を検出することができることが見いだされた。同様の方法でデータ収集・解析を行うことで、任意のパフォーマンスに対応する閾値を定義することができる。本発明の発明者は、パフォーマンスと相関し得る脳波信号を発生させるときの事象を(脳波信号に関する)「ローカルバースト」と命名した。ここで、「ローカル」は、空間的に局所的なことと、時間的に局所的なこととの両方を意味し得る。すなわち、「ローカルバースト」で特異的な脳波信号を発生させているのが、脳の局所的な部位であること、および、局所的な時間であることの両方を意味し得る。
【0034】
本発明の発明者は、脳波信号に関するローカルバーストを検出することを、対象のパフォーマンスを推定することに応用することができると考えた。
【0035】
図3は、ローカルバーストに基づいて対象のパフォーマンスを推定することフローの一例を示す。図3(a)は、対象U1がデスクワークをしているときにパフォーマンスを予測することの例を示し、図3(b)は、対象U2が自動車を運転しているときにパフォーマンスを推定することの例を示す。本例では、本発明のシステム100が対象のパフォーマンスを推定することができる。
【0036】
ステップS1では、対象U1がデスクワークをしているときの脳波信号が取得され、取得された脳波信号が、本発明のシステム100に入力される。このとき、脳波信号がシステム100に入力される態様は問わない。例えば、対象U1の端末装置からネットワーク(例えば、インターネット、LAN)を介してシステム100に入力されることができる。
【0037】
システム100は、入力された脳波信号からローカルバーストを検出し、検出されたローカルバーストに基づいて、対象U1のパフォーマンスを推定することができる。例えば、システム100は、デルタ波成分のローカルバーストが検出されたことに基づいて、対象U1のパフォーマンスが低下していることを推定することができる。例えば、システム100は、ベータ波成分のローカルバーストが検出されたことに基づいて、対象U1のパフォーマンスが向上していることを推定することができる。
【0038】
ステップS2では、システム100によって推定されたパフォーマンスが対象U1に通知される。推定されたパフォーマンスは、例えば、対象U1の端末装置のディスプレイを介して対象U1に通知されてもよいし、対象U1の端末装置のスピーカを介して対象U1に通知されてもよい。
【0039】
例えば、対象U1は、自身のパフォーマンスが低下していることを通知されることで、パフォーマンスを改善するための対策(例えば、デスクワークを中断して休憩をとる、ストレッチをする、糖分を摂取する等)を講じることができる。例えば、対象U1は、自身のパフォーマンスが向上していることを通知されることで、より一層仕事に励むためのモチベーションを得ることができる。
【0040】
このように、システム100は、対象の脳波信号に基づいて、対象の現在のパフォーマンスを推定することができる。システム100は、対象の脳波信号に基づいて、対象の将来のパフォーマンスを推定することもできる。
【0041】
ステップS3では、対象U2が自動車の運転をしているときの脳波信号が取得され、取得された脳波信号が、本発明のシステム100に入力される。このとき、脳波信号がシステム100に入力される態様は問わない。例えば、対象U1の端末装置からネットワーク(例えば、インターネット、LAN)を介してシステム100に入力されることができる。
【0042】
システム100は、入力された脳波信号からローカルバーストを検出し、検出されたローカルバーストに基づいて、対象U2の将来のパフォーマンスを推定することができる。例えば、システム100は、シータ波成分のローカルバーストが検出されることを推定したことに基づいて、対象U2の将来のパフォーマンスが低下し得ることを推定することができる。例えば、システム100は、ガンマ波成分のローカルバーストが検出されることを推定したこと基づいて、対象U2の将来のパフォーマンスが向上し得ることを推定することができる。
【0043】
ステップS4では、システム100によって推定された将来のパフォーマンスが対象U2に通知される。推定された将来のパフォーマンスは、例えば、対象U2の端末装置(例えば、カーナビ)のディスプレイを介して対象U2に通知されてもよいし、対象U2の端末装置のスピーカを介して対象U2に通知されてもよい。
【0044】
例えば、対象U2は、自身の将来のパフォーマンスが低下し得ることを通知されることで、パフォーマンスを改善するための対策(例えば、運転を中断して休憩をとる、ストレッチをする、コーヒーまたはガムを摂取する等)を予め講じることができる。
【0045】
このように、システム100は、対象の脳波信号に基づいて、対象の将来のパフォーマンスを推定することができる。
【0046】
上述した例では、対象の脳波信号からローカルバーストを検出することを説明したが、本発明は、これに限定されない。システム100は、脳波信号以外の信号からでもローカルバーストを検出することができる。信号は、経時的に変化する波形を有する信号であり、例えば、生体信号であり得、具体的には、心拍信号であり得る。すなわち、システム100は、経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステムと称され得る。
【0047】
図1Cは、対象の心拍信号からローカルバーストを検出するフローを概略的に示す。本例では、8秒間に取得された心拍信号からローカルバーストを検出した。
【0048】
第一に、システム100は、対象から測定された心拍信号に対して、バンドパスフィルタをかけることにより、所定の周波数成分の心拍信号を抽出する。
【0049】
第二に、システム100は、所定期間(8秒間)内で、所定の周波数成分の心拍信号が閾値を超えたときを検出する。検出されたものが心拍信号に関する「ローカルバースト」である。ここで、閾値は、μ+3σとした。μは中央値であり、σは中央絶対偏差である。
【0050】
第三に、システム100は、所定期間(8秒間)内のローカルバーストの数を計数し、ローカルバーストの回数を決定する。
【0051】
このようにして検出されたローカルバーストのパラメータの値(例えば、ローカルバーストの回数)は、任意の用途に利用されることが期待される。例えば、心拍信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値は、心拍信号が取得された対象の状態を推定するために利用されることができる。
【0052】
上記の手法は、心拍信号のみならず、他の任意の信号に対しても同様に適用されることができる。他の任意の信号に対して、バンドパスフィルタ等を適用することにより所定の周波数成分の信号を抽出し、抽出された信号のうち振幅が外れ値をとったとき、すなわち、閾値を超えたときを検出することで、その信号に関するローカルバーストを検出することができる。
【0053】
上述したシステム100は、例えば、後述する構成を有することができる。
【0054】
(2.経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステムの構成)
図4は、本発明の経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステム100の構成の一例を示す。一実施形態において、システム100は、ローカルバーストを検出するための構成を有する。別の実施形態において、システム100は、対象のパフォーマンスを推定するための構成をさらに有する。
【0055】
システム100は、インターフェース部110と、プロセッサ部120と、メモリ部130とを備える。システム100は、データベース部200に接続されている。
【0056】
インターフェース部110は、システム100の外部と情報のやり取りを行う。システム100のプロセッサ部120は、インターフェース部110を介して、システム100の外部から情報を受信することが可能であり、システム100の外部に情報を送信することが可能である。インターフェース部110は、任意の形式で情報のやり取りを行うことができる。例えば、ユーザ装置(例えば、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、スマートグラス、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ等)、または脳波測定装置は、インターフェース部110を介して、システム100と通信することができる。
【0057】
インターフェース部110は、例えば、システム100に情報を入力することを可能にする入力部を備える。入力部が、どのような態様でシステム100に情報を入力することを可能にするかは問わない。例えば、入力部がデータ読み取り装置である場合には、システム100に接続された記憶媒体から情報を読み取ることによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部が受信器である場合、受信器がネットワークを介してシステム100の外部から情報を受信することにより入力してもよい。この場合、ネットワークの種類は問わない。例えば、受信器は、インターネットを介して情報を受信してもよいし、LANを介して情報を受信してもよい。インターフェース部110に入力された情報は、プロセッサ部120に渡され、プロセッサ部120は、これを受信する。
【0058】
インターフェース部110は、例えば、信号をシステム100の外部から受信することができる。インターフェース部110は、例えば、システム100と通信し得る信号測定装置から信号を受信することができる。インターフェース部110は、例えば、データベース部200から信号を受信することができる。
【0059】
インターフェース部110は、例えば、脳波信号をシステム100の外部から受信することができる。インターフェース部110は、例えば、システム100と通信し得る脳波測定装置(例えば、脳波計(Electroencephalograph:EEG))から脳波信号を受信することができる。本明細書では、脳波信号は、脳磁計(Magnetoencephalography:MEG)による脳磁計測から取得可能な信号を含む。インターフェース部110は、例えば、データベース部200から脳波信号を受信することができる。インターフェース部110は、例えば、対象の脳波信号を推定することが可能なシステムから脳波信号を受信することもできる。
【0060】
インターフェース部110は、例えば、心拍信号をシステム100の外部から受信することができる。インターフェース部110は、例えば、システム100と通信し得る心拍計から心拍信号を受信することができる。インターフェース部110は、例えば、データベース部200から心拍信号を受信することができる。
【0061】
インターフェース部110は、例えば、心拍が取得されたときの対象の状態を示す情報をシステム100の外部から受信することができる。インターフェース部110は、例えば、システム100と通信し得る状態測定装置またはユーザ装置から対象の状態を示す情報を受信することができる。インターフェース部110は、例えば、データベース部200から対象の状態を示す値を受信することができる。
【0062】
インターフェース部110は、例えば、脳波が取得されたときの被験体のパフォーマンスを示す情報をシステム100の外部から受信することができる。インターフェース部110は、例えば、システム100と通信し得るパフォーマンス測定装置またはユーザ装置から被験体のパフォーマンスを示す情報を受信することができる。インターフェース部110は、例えば、データベース部200から被験体のパフォーマンスを示す値を受信することができる。
【0063】
被験体のパフォーマンスを示す値は、例えば、所与の課題を被験体に行わせているときに測定される値であり得る。被験体のパフォーマンスを示す値は、連続値であってもよいし、離散値であってもよい。機械学習におけるラベルとして利用することができる限り、任意の態様の値であり得る。所定の課題は、任意の課題であり得、例えば、乗り物(例えば、自動車、二輪車、電車、航空機等)を運転すること、スポーツをすること、ゲームをすること、勉強をすること、試験を受けること、頭脳労働をすること等を含む。被験体のパフォーマンスを示す値は、例えば、集中度、敏捷性、記憶力、判断力、学習能力、言語能力、空間把握能力、自己抑制能力、感情制御力、社会性等を含むがこれらに限定されない。
【0064】
インターフェース部110は、例えば、システム100から情報を出力することを可能にする出力部を備える。出力部が、どのような態様でシステム100から情報を出力することを可能にするかは問わない。例えば、出力部がデータ書き込み装置である場合、システム100に接続された記憶媒体に情報を書き込むことによって情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部が送信器である場合、送信器がネットワークを介してシステム100の外部に情報を送信することにより出力してもよい。この場合、ネットワークの種類は問わない。例えば、送信器は、インターネットを介して情報を送信してもよいし、LANを介して情報を送信してもよい。例えば、出力部がスピーカである場合、外部に音を出力するようにしてもよい。例えば、出力部がディスプレイである場合、ディスプレイに画面を表示することで情報を出力するようにしてもよい。
【0065】
インターフェース部110は、例えば、推定された対象のパフォーマンスを示す情報をシステム100の外部に出力することができる。インターフェース部110は、例えば、システム100と通信し得るユーザ装置に、推定された対象のパフォーマンスを示す情報を提供することができる。インターフェース部110は、例えば、データベース部200に、推定された対象のパフォーマンスを示す情報を提供することができる。インターフェース部110は、例えば、システム100と通信し得る発報装置に、推定された対象のパフォーマンスを示す情報を提供することができる。
【0066】
推定された対象のパフォーマンスを示す情報は、例えば、対象のパフォーマンスを示す値、対象のパフォーマンスが向上または低下していることを示す値、対象のパフォーマンスが所定の閾値以上または以下であることを示す情報を含むが、これらに限定されない。推定された対象のパフォーマンスを示す情報は、例えば、対象の将来のパフォーマンスを示す値、対象のパフォーマンスが将来向上することを示す値、対象のパフォーマンスが将来低下することを示す値、対象のパフォーマンスが将来所定の閾値以上になることを示す情報、または対象のパフォーマンスが将来所定の閾値以下になることを示す情報も含むが、これらに限定されない。
【0067】
インターフェース部110は、例えば、検出されたローカルバーストのパラメータの値をシステム100の外部に出力することができる。インターフェース部110は、例えば、システム100と通信し得るユーザ装置に、検出されたローカルバーストのパラメータの値を提供することができる。インターフェース部110は、例えば、データベース部200に、検出されたローカルバーストのパラメータの値を提供することができる。検出されたローカルバーストのパラメータの値は、任意の用途に利用されることができる。
【0068】
プロセッサ部120は、システム100の処理を実行し、かつ、システム100全体の動作を制御する。プロセッサ部120は、メモリ部130に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、システム100を所望のステップを実行するシステムとして機能させることが可能である。プロセッサ部120は、単一のプロセッサによって実装されてもよいし、複数のプロセッサによって実装されてもよい。
【0069】
メモリ部130は、システム100の処理を実行するために必要とされるプログラムやそのプログラムの実行に必要とされるデータ等を格納する。メモリ部130は、対象のパフォーマンスを推定するための処理をプロセッサ部に行わせるためのプログラム(例えば、後述する図7Aまたは図7Bに示される処理を実現するプログラム)を格納してもよいし、ローカルバーストを検出するための処理をプロセッサ部に行わせるためのプログラム(例えば、図7Cに示される処理を実現するプログラム)を格納してもよい。ここで、プログラムをどのようにしてメモリ部130に格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリ部130にプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、ネットワークを経由してダウンロードされることによってメモリ部130にインストールされるようにしてもよい。あるいは、プログラムは、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されていてもよい。メモリ部130は、任意の記憶手段によって実装され得る。
【0070】
データベース部200には、予め被験体から取得された脳波信号およびそのときのパフォーマンスを示す情報が記憶されることができる。また、データベース部200には、少なくとも1つの学習済モデルを実装するためのデータが格納され得る。
【0071】
図4に示される例では、データベース部200は、システム100の外部に設けられているが、本発明はこれに限定されない。データベース部200をシステム100の内部に設けることも可能である。このとき、データベース部200は、メモリ部130を実装する記憶手段と同一の記憶手段によって実装されてもよいし、メモリ部130を実装する記憶手段とは別の記憶手段によって実装されてもよい。いずれにせよ、データベース部200は、システム100のための格納部として構成される。データベース部200の構成は、特定のハードウェア構成に限定されない。例えば、データベース部200は、単一のハードウェア部品で構成されてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されてもよい。例えば、データベース部200は、システム100の外付けハードディスク装置として構成されてもよいし、ネットワークを介して接続されるクラウド上のストレージとして構成されてもよい。
【0072】
図5Aは、プロセッサ部120の構成の一例を示す。本例では、プロセッサ部120は、対象のパフォーマンスを推定するための構成を有する。
【0073】
プロセッサ部120は、受信手段121と、抽出手段122と、検出手段123と、推定手段124とを備える。
【0074】
受信手段121は、対象の脳波信号を受信するように構成されている。対象の脳波信号が対象から取得される態様は問わない。例えば、対象の脳波信号は、脳波計または脳磁計によって対象から測定されることができる。例えば、対象の脳波信号は、対象の画像から推定されることができる。例えば、対象の脳波信号は、対象の脳波以外の生体信号から推定されることができる。対象の脳波信号は、例えば、対象の頭部に装着された単一の電極によって測定される単一チャネルの信号(すなわち、一次元の信号)であってもよいし、対象の頭部に受信された複数の電極によって測定される複数チャネルの信号(すなわち、2次元以上の信号)であってもよい。好ましくは、対象の脳波信号は、複数チャネルの信号であり得る。電極を装着した位置の情報も含めた複合的な解析を行うことができるからである。
【0075】
受信手段121は、所定期間の脳波信号を受信することができる。所定期間は、長いほど推定に利用可能な情報量が多くなるが、リアルタイム性が損なわれ得る。所定期間は、例えば、約10秒間~約1000秒間であり、好ましくは、約30秒間~約300秒間であり、より好ましくは、約300秒間である。
【0076】
対象の脳波信号は、抽出手段122に渡される。
【0077】
抽出手段122は、所定の周波数成分を抽出するように構成されている。抽出手段122は、当該技術分野において公知の技術を用いて、脳波信号から所定の周波数成分を抽出することができる。抽出手段122は、例えば、バンドパスフィルタを用いて、所定の周波数成分を抽出するようにしてもよいし、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはこれらの組み合わせを用いて、所定の周波数成分を抽出するようにしてもよい。
【0078】
所定の周波数成分は、ローデルタ波成分(約1.0Hz~約1.5Hz)、ミドルデルタ波成分(約2.5Hz~約3.0Hz)、ハイデルタ波成分(約3.5Hz~約4.0Hz)、デルタ波成分(約1.0Hz~約3.0Hz)、シータ波成分(約4.0Hz~約7.0Hz)、アルファ波成分(約8.0~約12Hz)、SMR波成分(約12~約15Hz)、ローベータ波成分(約15Hz~約18Hz)、ミドルベータ波成分(約19Hz~約22Hz)、ハイベータ波成分(約23Hz~約36Hz)、ガンマ波成分(約36~約48Hz)のうちの1つまたは複数であり得る。好ましくは、所定の周波数成分は、デルタ波成分、シータ波成分、アルファ波成分、SMR波成分、ベータ波成分、ガンマ波成分のうちの1つであり得る。より好ましくは、所定の周波数成分は、デルタ波成分またはシータ波成分のうちの一方または両方であり得る。
【0079】
抽出手段122によって抽出された所定の周波数成分の脳波信号は、検出手段123に渡される。
【0080】
検出手段123は、ローカルバーストを検出するように構成されている。検出手段123は、所定の周波数成分の脳波信号の振幅が閾値を超えたときにローカルバーストを検出する。検出手段123は、例えば、閾値を超えた瞬間を特定するようにしてもよいし、閾値を超えている期間を特定するようにしてもよい。
【0081】
検出手段123は、対象の脳波信号の分布に基づいて閾値を決定することができる。閾値を決定するために用いられる脳波信号は、例えば、予め取得された脳波信号(例えば、安静時または課題を行っていないときに測定された脳波信号)であってもよいし、受信手段121によって受信された所定期間内の脳波信号であってもよいし、受信手段121によって受信されて蓄積された脳波信号であってもよい。
【0082】
例えば、対象のパフォーマンスを推定するセッションをTに開始して継続的に行うとき、所定期間の長さをΔTとすると、第1のセッションでは、受信手段121は、T~T(T=T+ΔT)の間の脳波信号を受信することになり、第2のセッションでは、受信手段121は、T~T(T=T+ΔT)の間の脳波信号を受信することになり、第3のセッションでは、受信手段121は、T~T(T=T+ΔT)の間の脳波信号を受信することになり、・・・第mのセッションでは、受信手段121は、Tm-1~T(T=Tm-1+ΔT)の間の脳波信号を受信することになる。例えば、第1のセッションでは、検出手段123は、Tの前に取得された脳波信号に基づいて閾値を決定することができる。例えば、第2のセッションでは、検出手段123は、Tの前に取得された脳波信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、T~Tで取得された脳波信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよい。例えば、第3のセッションでは、検出手段123は、Tの前に取得された脳波信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、T~Tで取得された脳波信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、T~Tで取得された脳波信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよい。例えば、第mのセッションでは、検出手段123は、Tの前に取得された脳波信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、Tm-1~Tで取得された脳波信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、T~Tで取得された脳波信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよい(0≦k<l≦m)。
【0083】
閾値Tは、
T=μ+nσ
で表される。従って、第mのセッションでは、μは、Tの前に取得された脳波信号の分布から算出される代表値(例えば、平均値、中央値)であってもよいし、T~Tで取得された脳波信号の分布から算出される代表値(例えば、平均値、中央値)であってもよい。同様に、σは、Tの前に取得された脳波信号の分布から算出されるばらつきを示す値(例えば、標準偏差、中央絶対偏差)であってもよいし、T~Tで取得された脳波信号の分布から算出されるばらつきを示す値(例えば、標準偏差、中央絶対偏差)であってもよい。
【0084】
nは、所定の周波数成分に応じて変動し得る。従って、検出手段123は、抽出手段122で抽出される周波数成分に応じて、nを決定するようにしてもよい。例えば、抽出手段122で抽出される周波数成分がデルタ波成分である場合、検出手段123は、n=0.70とすることができる。
【0085】
検出手段123は、検出されたローカルバーストからローカルバーストのパラメータの値を決定することができる。
ローカルバーストのパラメータは、所定期間内にローカルバーストが検出された回数、所定期間内に検出されたローカルバーストの時空間パターンを含む。ローカルバーストのパラメータは、所定期間を、例えば、約30秒、約150秒、約300秒、約600秒、約1200秒等に変動させたものであってもよい。例えば、ローカルバーストが検出された回数について、約30秒間でローカルバーストが検出された回数、約150秒間でローカルバーストが検出された回数、約300秒間でローカルバーストが検出された回数、約600秒間でローカルバーストが検出された回数、約1200秒間でローカルバーストが検出された回数等としてもよい。例えば、ローカルバーストの時空間パターンについて、約30秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターン、約150秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターン、約300秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターン、約600秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターン、約1200秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターンとしてもよい。
【0086】
決定されたローカルバーストのパラメータの値は、推定手段124に渡される。
【0087】
推定手段124は、ローカルバーストのパラメータの値に基づいて、対象のパフォーマンスを推定するように構成されている。
【0088】
推定手段124は、少なくとも1つの学習済モデルを備えており、その少なくとも1つの学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定することができる。
【0089】
少なくとも1つの学習済モデルは、ローカルバーストのパラメータの値と、パフォーマンスを示す値との関係を学習している。言い換えると、少なくとも1つの学習済モデルは、ローカルバーストのパラメータの値を入力されると、対応するパフォーマンスを示す値を出力するように訓練されている。これにより、例えば、検出手段123によって抽出されたローカルバーストのパラメータの値が少なくとも1つの学習済モデルに入力されると、対応するパフォーマンスを示す値が出力されることができる。
【0090】
推定手段124が備える少なくとも1つの学習済モデルは、当該技術分野において公知の手法で構築された機械学習モデルを用いて構築されることができる。機械学習モデルは、例えば、ニューラルネットワークモデルであり得る。
【0091】
図6は、少なくとも1つの学習済モデルを構築し得るニューラルネットワークモデル600の構造の一例を示す。
【0092】
ニューラルネットワークモデル600は、入力層と、中間層と、出力層とを有する。ニューラルネットワークモデル600の入力層のノード数は、入力されるデータの次元数(例えば、検出手段123によって抽出されたローカルバーストのパラメータの値の次元数に対応する。ニューラルネットワークモデルの出力層のノード数は、出力されるデータの次元数に対応する。出力される対象のパフォーマンスを示す値は、1次元であってもよいし、多次元であってもよい。ニューラルネットワークの中間層は、任意のアーキテクチャを有し得る。好ましい実施形態では、中間層は、少なくとも1つのLSTM層によって構築され得る。少なくとも1つのLSTM層の各層は、任意の数のノードを有し得る。
【0093】
ニューラルネットワークモデル600は、複数の被験体から取得された脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値と、そのときの被験体から測定されたパフォーマンスを示す値とを用いて予め学習処理がなされ得る。学習処理は、複数の被験体から取得された脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値と、パフォーマンスを示す値とを使用して、ニューラルネットワークモデルの中間層の各ノードの重み係数を計算する処理である。
【0094】
学習処理は、例えば、教師あり学習である。教師あり学習では、例えば、被験体から取得された脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力用教師データとし、脳波信号が取得されたときのその被験体から測定されたパフォーマンスを示す値を出力用教師データとして、複数の被験体のデータを使用してニューラルネットワークモデルの中間層の各ノードの重み係数を計算することにより、被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値とパフォーマンスを示す値とを相関させることが可能な学習済モデルを構築することができる。
【0095】
例えば、教師あり学習のための(入力用教師データ,出力用教師データ)の組は、(第1の時刻に取得された第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,第1の時刻の第1の被験体のパフォーマンスを示す値)、(第2の時刻に取得された第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,第2の時刻の第1の被験体のパフォーマンスを示す値)、・・・(第iの時刻に取得された第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,第iの時刻の第1の被験体のパフォーマンスを示す値)、・・・等であり得る。このように、単一の被験体から教師データが取得され得る。あるいは、例えば、教師あり学習のための(入力用教師データ,出力用教師データ)の組は、(第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,脳波信号が取得されたときの第1の被験体のパフォーマンスを示す値)、(第2の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,脳波信号が取得されたときの第2の被験体のパフォーマンスを示す値)、・・・(第iの被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,脳波信号が取得されたときの第iの被験体のパフォーマンスを示す値)、・・・等であり得る。このように、複数の被験体から教師データが取得され得る。このような学習済のニューラルネットワークモデルの入力層に、対象から取得された脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、その対象のパフォーマンスを示す値が出力層に出力される。
【0096】
推定手段124によって推定されたパフォーマンスを示す情報は、システム100の外部へと出力され、任意の用途に利用されることができる。
【0097】
例えば、パフォーマンスが低下していることを対象またはその周囲の人物に報知することができる。報知のために、例えば、アラームを発報することができる。アラームは、例えば、光、音、またはこれらの組み合わせによるものであり得る。これにより、例えば、自動車を運転中の対象は、パフォーマンスが低下していることを自覚することができ、休憩をとったり、ガムやコーヒー等を摂取したりすることができる。
【0098】
例えば、パフォーマンスが向上していることを対象またはその周囲の人物に報知することができる。例えば、アスリートまたはそのコーチの端末装置にパフォーマンスが向上していることを報知することで、アスリートは、いわゆる「ゾーン」に入っていることを自覚することができ、あるいは、「ゾーン」に入るためのきっかけを知ることができる。例えば、プログラマーのパフォーマンスが向上していることを周囲の人物に報知することで、周囲の人物がプログラマーの集中を妨げることを防ぐことができる。あるいは、プログラマーのパフォーマンスが向上していることをプログラマーの端末装置に報知することで、端末装置からの通知(例えば、メール通知)をオフにする「集中モード」に端末装置を自動で切り替えることができる。
【0099】
上述した例では、システム100は、脳波信号が取得されたときの対象のパフォーマンスを推定することができる。システム100は、将来の対象のパフォーマンスを推定することもできる。本願明細書において、「将来の」とは、脳波信号が取得されたときから所定時間経過後のことをいう。所定時間は、任意の時間であり得、例えば、10秒、30秒、1分、3分、5分、10分、15分、30分、45分、60分、90分、2時間、3時間、6時間、12時間、24時間等であり得る。
【0100】
図5Bは、プロセッサ部120の代替実施形態であるプロセッサ部120Aの構成の一例を示す。プロセッサ部120Aは、推定手段124の代わりに推定手段124Aを備える点を除いて、プロセッサ部120と同様の構成を有する。ここでは、図5Aを参照して上述した構成と同一の構成には、同一の参照番号を付し、詳細な説明は省略する。本例では、プロセッサ部120Aは、対象の将来のパフォーマンスを推定するための構成を有する。
【0101】
プロセッサ部120Aは、受信手段121と、抽出手段122と、検出手段123と、推定手段124Aとを備える。
【0102】
推定手段124Aは、第1の推定手段1241と、第2の推定手段1242とを備える。
【0103】
第1の推定手段1241は、検出手段123によって検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定するように構成されている。
【0104】
第1の推定手段1241は、第1の学習済モデルを備えており、第1の学習済モデルを用いて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定することができる。
【0105】
第1の学習済モデルは、ローカルバーストのパラメータの値と、所定時間経過後のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習している。言い換えると、第1の学習済モデルには、ローカルバーストのパラメータの値を入力されると、対応する所定時間経過後のローカルバーストのパラメータの値を出力するように訓練されている。これにより、例えば、検出手段123によって抽出されたローカルバーストのパラメータの値が第1の学習済モデルに入力されると、所定時間経過後のローカルバーストのパラメータの値が出力されることができる。
【0106】
第1の推定手段1241が備える第1の学習済モデルは、当該技術分野において公知の手法で構築された機械学習モデルを用いて構築されることができる。機械学習モデルは、例えば、図6に示されるような構造を有するニューラルネットワークモデルであり得る。
【0107】
第1の学習済モデルを構築するための学習処理は、例えば、教師あり学習である。教師あり学習では、例えば、被験体から取得された脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力用教師データとし、所定時間経過後にその被験体から取得された脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値を出力用教師データとして、複数の被験体のデータを使用してニューラルネットワークモデルの中間層の各ノードの重み係数を計算することにより、被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値と所定時間経過後のローカルバーストのパラメータの値とを相関させることが可能な学習済モデルを構築することができる。
【0108】
例えば、教師あり学習のための(入力用教師データ,出力用教師データ)の組は、(第1の時刻に取得された第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,第1の時刻から所定時間経過後に取得された第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値)、(第2の時刻に取得された第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,第2の時刻から所定時間経過後に取得された第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値)、・・・(第iの時刻に取得された第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,第iの時刻から所定時間経過後に取得された第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値)、・・・等であり得る。このように、単一の被験体から教師データが取得され得る。あるいは、例えば、教師あり学習のための(入力用教師データ,出力用教師データ)の組は、(第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,所定時間経過後に第1の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値)、(第2の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,所定時間経過後に第2の被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値)、・・・(第iの被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値,所定時間経過後に第iの被験体の脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値)、・・・等であり得る。このように、複数の被験体から教師データが取得され得る。このような学習済のニューラルネットワークモデルの入力層に、対象から取得された脳波信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値を入力すると、所定時間経過後のその対象のローカルバーストのパラメータの値が出力層に出力される。
【0109】
第1の推定手段1241によって推定された所定時間経過後のローカルバーストのパラメータの値は、第2の推定手段1242に渡される。
【0110】
第2の推定手段1242は、第1の推定手段1241によって推定されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、対象のパフォーマンスを推定するように構成されている。
【0111】
第2の推定手段1242は、第2の学習済モデルを備えており、第2の学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定することができる。
【0112】
第2の学習済モデルは、図5Aを参照して上述した例における少なくとも1つの学習済モデルと同様の学習済モデルであり得る。すなわち、第2の学習済モデルは、ローカルバーストのパラメータの値と、パフォーマンスを示す値との関係を学習している。言い換えると、第2の学習済モデルは、ローカルバーストのパラメータの値を入力されると、対応するパフォーマンスを示す値を出力するように訓練されている。これにより、例えば、第1の推定手段1241によって推定されたローカルバーストのパラメータの値が第2の学習済モデルに入力されると、対応するパフォーマンスを示す値が出力されることができる。
【0113】
このようにして、推定手段124Aは、対象の将来のパフォーマンスを推定することができる。推定手段124Aによって推定された将来のパフォーマンスを示す情報は、システム100の外部へと出力され、任意の用途に利用されることができる。
【0114】
例えば、所定時間経過後にパフォーマンスが低下し得ることを対象またはその周囲の人物に報知することができる。報知のために、例えば、アラームを発報することができる。アラームは、例えば、光、音、またはこれらの組み合わせによるものであり得る。これにより、例えば、自動車を運転中の対象は、パフォーマンスが低下し得ることを自覚することができ、休憩をとったり、ガムやコーヒー等を摂取したりして、パフォーマンスの低下を予防することができる。
【0115】
例えば、所定時間経過後にパフォーマンスが向上し得ることを対象またはその周囲の人物に報知することができる。例えば、アスリートまたはそのコーチの端末装置にパフォーマンスが所定時間経過後に向上し得ることを報知することで、アスリートは、いわゆる「ゾーン」にいつ入るかを知ることができ、本番で最大限の能力が発揮できるように調整することが可能になる。例えば、所定時間経過後にプログラマーのパフォーマンスが向上し得ることを周囲の人物に報知することで、周囲の人物がプログラマーの集中を妨げることを事前に防ぐことができる。あるいは、所定時間経過後にプログラマーのパフォーマンスが向上し得ることをプログラマーの端末装置に報知することがで、端末装置からの通知(例えば、メール通知)をオフにする「集中モード」に端末装置を自動で切り替えることができる。また、パフォーマンスが向上し始めるタイミングで仕事にとりかかる習慣および/またはシステムを採用することで、効率の最大化が可能になる。
【0116】
図5Cは、プロセッサ部120の代替実施形態であるプロセッサ部120Cの構成の一例を示す。本例では、プロセッサ部120Cは、経時的に変化する波形を有する信号からローカルバーストを検出するための構成を有する。
【0117】
プロセッサ部120Cは、受信手段121Cと、抽出手段122Cと、検出手段123Cとを備える。
【0118】
受信手段121Cは、経時的に変化する波形を有する信号を受信するように構成されている。経時的に変化する波形を有する信号は、例えば、生体信号であり得、対象に装着された計測器から測定されることができる。典型的には、経時的に変化する波形を有する信号は、心拍信号であり得、対象に装着された心拍計から測定されることができる。
【0119】
受信手段121Cは、所定期間の信号を受信することができる。所定期間は、長いほど推定に利用可能な情報量が多くなるが、リアルタイム性が損なわれ得る。所定期間は、例えば、約5秒間~約1000秒間であり得る。
【0120】
受信された信号は、抽出手段122Cに渡される。
【0121】
抽出手段122Cは、所定の周波数成分を抽出するように構成されている。抽出手段122Cは、当該技術分野において公知の技術を用いて、信号から所定の周波数成分を抽出することができる。抽出手段122Cは、例えば、バンドパスフィルタを用いて、所定の周波数成分を抽出するようにしてもよいし、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、またはこれらの組み合わせを用いて、所定の周波数成分を抽出するようにしてもよい。
【0122】
所定の周波数成分は、任意の周波数帯であり得る。所定の周波数成分は、例えば、任意の幅の周波数窓によって切り取られた成分であり得る。周波数窓の幅は、例えば、0.1Hz、0.5Hz、1Hz、2Hz、3Hz、5Hz、10Hz等の任意の幅であり得る。
【0123】
複数の周波数成分について、ローカルバーストを検出する場合、抽出手段122Cは、複数の周波数成分を抽出することができる。複数の周波数成分は、周波数窓の幅、周波数窓のずらし幅、周波数窓をずらす範囲によって決定され得る。例えば、周波数窓の幅:1Hz、周波数窓のずらし幅:1Hz、周波数窓をずらす範囲:0.5Hz~20.5Hzとすると、0.5~1.5Hzの周波数帯、1.5~2.5Hzの周波数帯、2.5~3.5Hzの周波数帯、・・・18.5~19.5Hzの周波数帯、19.5~20.5Hzの周波数帯の20個の周波数帯が抽出され得る。周波数窓のずらし幅は、ローカルバーストを探索する細かさに対応しており、ローカルバーストを検出したい周波数帯の解像度に関連し得る。周波数窓をずらす範囲は、ローカルバーストを検出したい周波数帯に対応しており、脳波信号について上述した周波数帯(ローデルタ波成分(約1.0Hz~約1.5Hz)、ミドルデルタ波成分(約2.5Hz~約3.0Hz)、ハイデルタ波成分(約3.5Hz~約4.0Hz)、デルタ波成分(約1.0Hz~約3.0Hz)、シータ波成分(約4.0Hz~約7.0Hz)、アルファ波成分(約8.0~約12Hz)、SMR波成分(約12~約15Hz)、ローベータ波成分(約15Hz~約18Hz)、ミドルベータ波成分(約19Hz~約22Hz)、ハイベータ波成分(約23Hz~約36Hz)、ガンマ波成分(約36~約48Hz))に相当し得る。
【0124】
抽出手段122Cによって抽出された所定の周波数成分の信号は、検出手段123Cに渡される。
【0125】
検出手段123Cは、ローカルバーストを検出するように構成されている。検出手段123は、所定の周波数成分の信号の振幅が閾値を超えたときにローカルバーストを検出する。検出手段123Cは、例えば、閾値を超えた瞬間を特定するようにしてもよいし、閾値を超えている期間を特定するようにしてもよい。
【0126】
検出手段123Cは、経時的に変化する波形を有する信号の分布に基づいて閾値を決定することができる。閾値を決定するために用いられる信号は、例えば、予め取得された信号(例えば、安静時または課題を行っていないときに測定された信号)であってもよいし、受信手段121Cによって受信された所定期間内の信号であってもよいし、受信手段121Cによって受信されて蓄積された信号であってもよい。
【0127】
例えば、ローカルバーストを検出するセッションをTに開始して継続的に行うとき、所定期間の長さをΔTとすると、第1のセッションでは、受信手段121Cは、T~T(T=T+ΔT)の間の信号を受信することになり、第2のセッションでは、受信手段121Cは、T~T(T=T+ΔT)の間の信号を受信することになり、第3のセッションでは、受信手段121Cは、T~T(T=T+ΔT)の間の信号を受信することになり、・・・第mのセッションでは、受信手段121Cは、Tm-1~T(T=Tm-1+ΔT)の間の信号を受信することになる。例えば、第1のセッションでは、検出手段123Cは、Tの前に取得された信号に基づいて閾値を決定することができる。例えば、第2のセッションでは、検出手段123Cは、Tの前に取得された信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、T~Tで取得された信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよい。例えば、第3のセッションでは、検出手段123Cは、Tの前に取得された信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、T~Tで取得された信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、T~Tで取得された信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよい。例えば、第mのセッションでは、検出手段123Cは、Tの前に取得された信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、Tm-1~Tで取得された信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよいし、T~Tで取得された信号に基づいて閾値を決定するようにしてもよい(0≦k<l≦m)。
【0128】
閾値Tは、
T=μ+nσ
で表される。従って、第mのセッションでは、μは、Tの前に取得された信号の分布から算出される代表値(例えば、平均値、中央値)であってもよいし、T~Tで取得された信号の分布から算出される代表値(例えば、平均値、中央値)であってもよい。同様に、σは、Tの前に取得された信号の分布から算出されるばらつきを示す値(例えば、標準偏差、中央絶対偏差)であってもよいし、T~Tで取得された信号の分布から算出されるばらつきを示す値(例えば、標準偏差、中央絶対偏差)であってもよい。
【0129】
nは、所定の周波数成分に応じて変動し得る。従って、検出手段123Cは、抽出手段122Cで抽出される周波数成分に応じて、nを決定するようにしてもよい。また、nは、経時的に変化する波形を有する信号の種類に応じても変動し得る。従って、検出手段123Cは、受信手段121Cによって受信された信号に応じて、nを決定するようにしてもよい。例えば、心拍信号の場合、n=3と決定することができる。
【0130】
検出手段123Cは、検出されたローカルバーストからローカルバーストのパラメータの値を決定することができる。
【0131】
ローカルバーストのパラメータは、所定期間内にローカルバーストが検出された回数、所定期間内に検出されたローカルバーストの時空間パターンを含む。ローカルバーストのパラメータは、所定期間を、例えば、約30秒、約150秒、約300秒、約600秒、約1200秒等に変動させたものであってもよい。例えば、ローカルバーストが検出された回数について、約30秒間でローカルバーストが検出された回数、約150秒間でローカルバーストが検出された回数、約300秒間でローカルバーストが検出された回数、約600秒間でローカルバーストが検出された回数、約1200秒間でローカルバーストが検出された回数等としてもよい。例えば、ローカルバーストの時空間パターンについて、約30秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターン、約150秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターン、約300秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターン、約600秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターン、約1200秒間で検出されたローカルバーストの時空間パターンとしてもよい。
【0132】
決定されたローカルバーストのパラメータの値は、正規化されることができる。正規化により、異なる周波数帯のローカルバーストのパラメータの値同士を比較できるようになる。例えば、基準となるベースラインのイベント(例えば、振幅がピークをとるイベント)の数で、ローカルバーストのパラメータの値を除算することによって正規化することができる。これにより、ローカルバーストのパラメータの正規化値は、0~1で表され得、1により近ければ、ローカルバーストの検出数が、多いことを示し、0により近ければ、ローカルバーストの検出数が、少ないことを示すことになる。
【0133】
なお、上述したシステム100の各構成要素は、単一のハードウェア部品で構成されていてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されていてもよい。複数のハードウェア部品で構成される場合は、各ハードウェア部品が接続される態様は問わない。各ハードウェア部品は、無線で接続されてもよいし、有線で接続されてもよい。本発明のシステム100は、特定のハードウェア構成には限定されない。プロセッサ部120または120Aまたは120Cをデジタル回路ではなくアナログ回路によって構成することも本発明の範囲内である。本発明のシステム100の構成は、その機能を実現できる限りにおいて上述したものに限定されない。
【0134】
(3.経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステムにおける処理)
図7Aは、本発明の経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステム100における処理700の一例を示す。処理700は、対象のパフォーマンスを推定するための処理である。処理700は、プロセッサ部120が、メモリ部130に格納されたプログラムを実行することによって行われ得る。なお、処理700は、プロセッサ部120Aにおいても同様に行われることができる。
【0135】
ステップS701では、プロセッサ部120の受信手段121が、対象の脳波信号を受信する。受信手段121は、システム100の外部からインターフェース部110を介して取得された脳波信号を受信することができる。対象の脳波信号が対象から取得される態様は問わない。例えば、対象の脳波信号は、脳波計または脳磁計によって対象から測定されることができる。例えば、対象の脳波信号は、対象の画像から推定されることができる。例えば、対象の脳波信号は、対象の脳波以外の生体信号から推定されることができる。
【0136】
ステップS702では、プロセッサ部120の抽出手段122が、ステップS701で受信された脳波信号から所定の周波数成分の脳波信号を抽出する。抽出手段122は、当該技術分野において公知の技術を用いて、脳波信号から所定の周波数成分を抽出することができる。抽出手段122は、例えば、バンドパスフィルタを用いて、所定の周波数成分を抽出することができる。
【0137】
好ましくは、所定の周波数成分は、デルタ波成分、シータ波成分、アルファ波成分、SMR波成分、ベータ波成分、ガンマ波成分のうちの1つであり得、より好ましくは、所定の周波数成分は、デルタ波成分またはシータ波成分のうちの一方または両方であり得る。
【0138】
例えば、ステップS701で受信された脳波信号が、既に所定の周波数成分しか有していないときは、ステップS702を省略することができる。
【0139】
ステップS703では、プロセッサ部120の検出手段123が、ステップS702で抽出された所定の周波数成分の脳波信号から、ローカルバーストを検出する。検出手段123は、所定の周波数成分の脳波信号の振幅が閾値を超えたときにローカルバーストを検出することができる。このとき、閾値は、検出手段123によって、対象の脳波信号の分布に基づいて決定される値であり得る。検出手段123は、処理700を行う前に閾値を決定するようにしてもよいし、処理700を行っている間に閾値を決定するようにしてもよい。
検出手段123は、検出されたローカルバーストからローカルバーストのパラメータの値を決定することができる。例えば、検出手段123は、所定期間内に検出されたローカルバーストの数を計数することにより、ローカルバーストのパラメータの値として、所定期間内にローカルバーストが検出された回数、または、所定期間内に検出されたローカルバーストの時空間パターンを決定することができる。
【0140】
ステップS704では、プロセッサ部120の推定手段124が、ステップS703で検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、対象のパフォーマンスを推定する。推定手段124は、少なくとも1つの学習済モデルを備えており、その少なくとも1つの学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定することができる。少なくとも1つの学習済モデルは、ローカルバーストのパラメータの値と、パフォーマンスを示す値との関係を学習しており、ステップS703で検出されたローカルバーストのパラメータの値が少なくとも1つの学習済モデルに入力されると、対応するパフォーマンスを示す値が出力される。
【0141】
このようにして、処理700により、対象のパフォーマンスが推定される。推定されたパフォーマンスを示す情報は、システム100の外部へと出力され、任意の用途に利用されることができる。
【0142】
例えば、パフォーマンスが低下していることを対象またはその周囲の人物に報知することができる。報知のために、例えば、アラームを発報することができる。アラームは、例えば、光、音、またはこれらの組み合わせによるものであり得る。これにより、例えば、自動車を運転中の対象は、パフォーマンスが低下していることを自覚することができ、休憩をとったり、ガムやコーヒー等を摂取したりすることができる。
【0143】
例えば、パフォーマンスが向上していることを対象またはその周囲の人物に報知することができる。例えば、アスリートまたはそのコーチの端末装置にパフォーマンスが向上していることを報知することで、アスリートは、いわゆる「ゾーン」に入っていることを自覚することができ、あるいは、「ゾーン」に入るためのきっかけを知ることができる。例えば、プログラマーのパフォーマンスが向上していることを周囲の人物に報知することで、周囲の人物がプログラマーの集中を妨げることを防ぐことができる。あるいは、プログラマーのパフォーマンスが向上していることをプログラマーの端末装置に報知することで、端末装置からの通知(例えば、メール通知)をオフにする「集中モード」に端末装置を自動で切り替えることができる。
【0144】
処理700がプロセッサ部120Aにおいて行われる場合、ステップS704では、プロセッサ部120の推定手段124Aは、将来の対象のパフォーマンスを推定することができる。
【0145】
図7Bは、ステップS704で、推定手段124Aが将来の対象のパフォーマンスを推定する処理の一例を示す。
【0146】
ステップS7041では、第1の推定手段1241が、ステップS703で検出されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定する。第1の推定手段1241は、第1の学習済モデルを備えており、第1の学習済モデルを用いて、将来のローカルバーストのパラメータの値を推定することができる。第1の学習済モデルは、ローカルバーストのパラメータの値と、将来のローカルバーストのパラメータの値との関係を学習しており、ステップS703で検出されたローカルバーストのパラメータの値が第1の学習済モデルに入力されると、将来のローカルバーストのパラメータの値が出力されることができる。
【0147】
ステップS7042では、第2の推定手段1242が、ステップS7041で推定されたローカルバーストのパラメータの値に基づいて、対象のパフォーマンスを推定する。第2の推定手段1242は、第2の学習済モデルを備えており、第2の学習済モデルを用いて、対象のパフォーマンスを推定することができる。第2の学習済モデルは、ローカルバーストのパラメータの値と、パフォーマンスを示す値との関係を学習しており、ステップS7042で検出されたローカルバーストのパラメータの値が第2の学習済モデルに入力されると、対応するパフォーマンスを示す値が出力される。ステップS7042で検出されたローカルバーストのパラメータの値は、将来のローカルバーストのパラメータの値であるため、推定されるパフォーマンスも、将来のパフォーマンスとなる。
【0148】
このようにして、プロセッサ部120Aによる処理700により、対象の将来のパフォーマンスが推定される。推定された将来のパフォーマンスを示す情報は、システム100の外部へと出力され、任意の用途に利用されることができる。
【0149】
例えば、所定時間経過後にパフォーマンスが低下し得ることを対象またはその周囲の人物に報知することができる。報知のために、例えば、アラームを発報することができる。アラームは、例えば、光、音、またはこれらの組み合わせによるものであり得る。これにより、例えば、自動車を運転中の対象は、パフォーマンスが低下し得ることを自覚することができ、休憩をとったり、ガムやコーヒー等を摂取したりして、パフォーマンスの低下を予防することができる。
【0150】
例えば、所定時間経過後にパフォーマンスが向上し得ることを対象またはその周囲の人物に報知することができる。例えば、アスリートまたはそのコーチの端末装置にパフォーマンスが所定時間経過後に向上し得ることを報知することで、アスリートは、いわゆる「ゾーン」にいつ入るかを知ることができ、本番で最大限の能力が発揮できるように調整することが可能になる。例えば、所定時間経過後にプログラマーのパフォーマンスが向上し得ることを周囲の人物に報知することで、周囲の人物がプログラマーの集中を妨げることを事前に防ぐことができる。あるいは、所定時間経過後にプログラマーのパフォーマンスが向上し得ることをプログラマーの端末装置に報知することがで、端末装置からの通知(例えば、メール通知)をオフにする「集中モード」に端末装置を自動で切り替えることができる。また、パフォーマンスが向上し始めるタイミングで仕事にとりかかる習慣および/またはシステムを採用することで、効率の最大化が可能になる。
【0151】
図7Cは、本発明の経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステム100における処理800の一例を示す。処理800は、ローカルバーストを検出するための処理である。処理800は、プロセッサ部120Cが、メモリ部130に格納されたプログラムを実行することによって行われ得る。
【0152】
ステップS801では、プロセッサ部120Cの受信手段121Cが、経時的に変化する波形を有する信号を受信する。受信手段121Cは、システム100の外部からインターフェース部110を介して、取得された信号を受信することができる。経時的に変化する波形を有する信号は、例えば、生体信号であり得、対象に装着された計測器から測定されることができる。典型的には、経時的に変化する波形を有する信号は、心拍信号であり得、対象に装着された心拍計から測定されることができる。
【0153】
ステップS802では、プロセッサ部120Cの抽出手段122Cが、ステップS801で受信された信号から所定の周波数成分の信号を抽出する。抽出手段122は、当該技術分野において公知の技術を用いて、信号から所定の周波数成分を抽出することができる。抽出手段122は、例えば、バンドパスフィルタを用いて、所定の周波数成分を抽出することができる。
【0154】
例えば、ステップS801で受信された信号が、既に所定の周波数成分しか有していないときは、ステップS802を省略することができる。
【0155】
ステップS803では、プロセッサ部120Cの検出手段123Cが、ステップS802で抽出された所定の周波数成分の信号から、ローカルバーストを検出する。検出手段123Cは、所定の周波数成分の信号の振幅が閾値を超えたときにローカルバーストを検出することができる。このとき、閾値は、検出手段123Cによって、経時的に変化する波形を有する信号の分布に基づいて決定される値であり得る。検出手段123Cは、処理800を行う前に閾値を決定するようにしてもよいし、処理800を行っている間に閾値を決定するようにしてもよい。
【0156】
検出手段123Cは、検出されたローカルバーストからローカルバーストのパラメータの値を決定することができる。例えば、検出手段123Cは、所定期間内に検出されたローカルバーストの数を計数することにより、ローカルバーストのパラメータの値として、所定期間内にローカルバーストが検出された回数、または、所定期間内に検出されたローカルバーストの時空間パターンを決定することができる。
【0157】
決定されたローカルバーストのパラメータの値は、正規化されることができる。正規化により、異なる周波数帯のローカルバーストのパラメータの値同士を比較できるようになる。例えば、基準となるベースラインのイベント(例えば、振幅がピークをとるイベント)の数で、ローカルバーストのパラメータの値を除算することによって正規化することができる。これにより、ローカルバーストのパラメータの正規化値は、0~1で表され得、1により近ければ、ローカルバーストの検出数が、多いことを示し、0により近ければ、ローカルバーストの検出数が、少ないことを示すことになる。
【0158】
検出されたローカルバーストまたはローカルバーストのパラメータの値は、任意の用途に利用されることができる。例えば、心拍信号から検出されたローカルバーストのパラメータの値は、心拍信号が取得された対象の状態を推定するために利用されることができる。
【0159】
なお、上述した例では、特定の順序で各ステップが行われることを説明したが、各ステップが行われる順序は示されるものに限定されない。各ステップは、論理的に可能な任意の順序で行われることができる。
【0160】
図7A図7B図7Cを参照して上述した例では、図7A図7B図7Cに示される各ステップの処理は、プロセッサ部120または120Aまたは120Cとメモリ部130に格納されたプログラムとによって実現することが説明されたが、本発明はこれに限定されない。図7A図7B図7C示される各ステップの処理のうちの少なくとも1つは、制御回路などのハードウェア構成によって実現されてもよい。
【0161】
システム100は、サーバ装置として実装されてもよいし、端末装置として実装されてもよい。システム100は、任意の情報処理装置によって実装されることができる。
【0162】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【実施例0163】
(実施例1)
図1Aおよび図1Bを参照して上述した例と同じ対象のうちの1人から得られたデータを用いて、その対象のパフォーマンスを推定した。学習済モデルを利用して推定した。
【0164】
学習済モデルは、1層のbi-LSTMであった。脳波信号から得られる特徴量:30×32(sequence×channel)次元を入力とし、対象のある瞬間でのパフォーマンスを反
映する値(本実施例では、ある瞬間のドライビングコースの中央線からの逸脱距離を対象ごとに固有な平均逸脱度で補正した値(正規化距離))をラベルとして学習処理を行った。対象から得られた4セッション分の各データと、全セッションのデータとを使用して5つのモデルを作成した。
【0165】
ここで、正規化距離は、以下の手順によって得られた。
ドライビングゲームのプレイヤーの現在位置がxy座標で与えられたとき(すなわち、現在位置が(x,y)で表されるとき)、現在位置から近傍にある中央線のxy座標は、(nx,ny)で与えられた。
ドライビングゲームのコース全体のx座標を-50~150の範囲で、かつ、y座標を-100~50の範囲で、0.1刻みのメッシュのグリッドを作成した。中央線の座標が1つのグリッドのセルに入るように、(nx,ny)をグリッド上の値に丸め込んだ(これを、(rnx,rny)とした)。
(rnx,rny)のインデックスの位置を記憶すると、(rnx,rny)のインデックスは、中央線上にあるので、その位置は一意に特定された。
中央線上のある1点のインデックスと対応するxy座標の点群は、中央線と直交する直線上にあると考えられるので、それらの点群を全て平均化した。これを中央線上のインデックスに対して繰り返し、プレイヤーの位置の平均的な軌跡を得た(これを(meanx,meany)とした)。
平均的な軌跡位置(meanx,meany)とそれに対応する全ての現在位置(x,y)との間のユークリッド距離(>0)を求め、現在位置のインデックスに対応する点の全てに代入する操作を、全ての中央線のグリッドに対して繰り返した
これにより、全ての現在位置に対する、平均的な軌跡位置と現在位置との間の逸脱距離が求まった(これを正規化距離とした)。
【0166】
テストは異なる対象のデータを用いて行った。
【0167】
図8は、実施例1の結果を示す。
【0168】
上から1番目のグラフが、全セッションのデータを使用した作成されたモデルによる結果であり、上から2番目のグラフが、セッション01のデータを使用した作成されたモデルによる結果であり、上から3番目のグラフが、セッション02のデータを使用した作成されたモデルによる結果であり、上から4番目のグラフが、セッション03のデータを使用した作成されたモデルによる結果であり、上から5番目のグラフが、セッション04のデータを使用した作成されたモデルによる結果である。横軸が時間を示し、縦軸がドライビングコースの中央線からの距離の正規化値を示す。薄い線が実際の測定データであり、濃い線がモデルからの推定データである。
図8から、推定データは、ある程度測定データに追随していることが分かる。特に、全てのデータを用いて学習したモデルでは、実際の測定データと推定データの間の相関係数が0.73であった。相関係数が0.5以上であることから、実際の測定データと推定データの間に強い相関がみられていると言え、本実施例では精度高く推定ができていると考えられる。
【0169】
(実施例2)
図1Aおよび図1Bを参照して上述した例と同じ対象のうちの1人から得られたデータを用いて、その対象の将来のパフォーマンスを推定した。2つの学習済モデルを利用して推定した。ローカルバーストが検出された回数の将来の値を推定するために第1の学習済モデルを使用し、ローカルバーストの将来の値からパフォーマンスを推定するために第2の学習済モデルを使用した。
【0170】
第1の学習済モデルは、1層のLSTMであった。脳波信号から検出されたローカルバーストの数:32(channel)次元を入力とし、1サンプル後のローカルバーストの特徴
量をラベルとして学習処理を行った。
【0171】
第2の学習済モデルは、1層のbi-LSTMであった。脳波信号から得られる特徴量:30×32(sequence×channel)次元を入力とし、対象のある瞬間でのパフォーマンスを反映する値(本実施例では、ドライビングコースの中央線からの逸脱距離を対象ごとに固有な平均逸脱度で補正した値(正規化距離))をラベルとして学習処理を行った。正規化距離は、実施例1と同一の手順によって得られた。
【0172】
対象から得られた4セッション分の各データと、全セッションのデータとを使用して、第1の学習済モデルおよび第2の学習済モデルとから構成される学習済モデルを5つ作成した。
【0173】
テストは異なる対象の2つのセッションのデータを用いて行った。
【0174】
図9は、実施例2の結果を示す。
【0175】
上から1番目のグラフが、全セッションのデータを使用した作成されたモデルによる結果であり、上から2番目のグラフが、セッション01のデータを使用した作成されたモデルによる結果であり、上から3番目のグラフが、セッション02のデータを使用した作成されたモデルによる結果であり、上から4番目のグラフが、セッション03のデータを使用した作成されたモデルによる結果であり、上から5番目のグラフが、セッション04のデータを使用した作成されたモデルによる結果である。横軸が時間を示し、縦軸がドライビングコースの中央線からの距離の正規化値を示す。濃い実線が実際の測定データであり、淡い実線が実施例1で作成されたモデルからの推定データであり、破線が本実施例で作成されたモデルからの将来の推定データである。
図9から、将来の推定データは、ある程度測定データに追随していることが分かる。特に、全てのデータを用いて学習したモデルでは、実際の測定データと推定データの間の相関係数が0.58であった。相関係数が0.5以上であることから、実際の測定データと推定データの間に強い相関がみられていると言え、本実施例では精度高く推定ができていると考えられる。
【0176】
(実施例3)
心拍信号に対してローカルバーストを検出する処理を行った。
【0177】
心拍信号のデータは、Mehrgardt, P., Khushi, M., Poon, S., & Withana, A. (2022). Pulse Transit Time PPG Dataset (version 1.1.0). PhysioNet.(https://doi.org/10.13026/jpan-6n92)において公開されているデータセットを使用した。心拍信号のデータは、対象が「座っているとき」の心拍信号のデータと、対象が「走っているとき」の心拍信号のデータであった。
【0178】
心拍信号のデータに対して、閾値μ+3σとして、ローカルバーストを検出した。μは中央値であり、σは中央絶対偏差である。
【0179】
周波数窓の幅=1Hz、周波数窓のずらし幅=1Hz、周波数窓をずらす範囲=[0.5Hz,20.5Hz]として、以下の20個の全ての周波数帯について、ローカルバーストを検出した。
1:[0.5,1.5]、2:[1.5,2.5]、3:[2.5,3.5]、4:[3.5,4.5] ... 19:[18.5, 19.5]、20:[19.5, 20.5]
【0180】
図10は、本実施例の結果を示す。図10(a)が、対象が「座っているとき」の心拍信号の生データを示し、図10(b)が、対象が「走っているとき」の心拍信号の生データを示す。横軸が時間を表し、縦軸が振幅を表している。図10(c)が、図10(a)に示される心拍信号から検出されたローカルバーストの時間周波数パターンを示し、図10(d)が、図10(b)に示される心拍信号から検出されたローカルバーストの時間周波数パターンを示す。横軸が時間を表し、縦軸が周波数を表し、色の明暗がローカルバーストの正規化された検出数を表しいている。色が明るいほどローカルバーストの検出数が多いことを表し、色が暗いほどローカルバーストの検出数が少ないことを表している。
【0181】
図10(c)および図10(d)から分かるように、対象の状態の違い(「座っている」vs「走っている」)がローカルバーストの時間周波数パターンの違いに表れている。これは、心拍信号に関するローカルバーストを特徴量として解析することにより、対象の状態を推定することを示唆しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明は、経時的に変化する波形を有する信号を処理するシステム、方法、および、プログラム(例えば、対象のパフォーマンスを推定するシステムまたはローカルバーストを検出するシステム等)を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0183】
100 システム
110 インターフェース部
120 プロセッサ部
121 受信手段
122 抽出手段
123 検出手段
124 推定手段
130 メモリ部
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10