(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181647
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】エンコーダーの校正方法、エンコーダーの校正装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20231218BHJP
G01D 18/00 20060101ALI20231218BHJP
G01D 5/347 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
G01D5/244 B
G01D18/00
G01D5/347 110M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094900
(22)【出願日】2022-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】今井 涼介
【テーマコード(参考)】
2F076
2F077
2F103
【Fターム(参考)】
2F076AA02
2F076AA06
2F076AA07
2F076AA11
2F077AA20
2F077AA35
2F077CC02
2F077CC10
2F077NN02
2F077NN04
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2F077NN30
2F077PP19
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2F077UU18
2F077WW08
2F103BA36
2F103CA02
2F103CA03
2F103DA01
2F103DA04
2F103DA13
2F103EA12
2F103EA13
2F103EB06
2F103EB12
2F103EB32
2F103EB33
(57)【要約】
【課題】計測タイミングのズレを低減し、精度の良い校正ができるエンコーダーの校正方法を提供すること。
【解決手段】エンコーダーの校正方法は、マスター検出部から前記スレーブ検出部に対して位置取得信号を送信するとともに、送信が完了する前に前記パルス信号の計測値を記憶する第1の割込み処理を実行することと、前記位置取得信号を前記スレーブ検出部が受信するとともに、受信が完了する前に前記回転位置検出部から前記回転位置情報を取得し、前記マスター検出部に送信する第2の割込み処理を実行することと、前記基準角度に基づいて、前記第2の割込み処理で取得された前記回転位置情報による前記回転軸の計測角度のキャリブレーションを行うこととを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの回転軸の回転位置を検出し、回転位置情報を出力する回転位置検出部と、前記回転位置検出部から前記回転位置情報を取得するスレーブ検出部とを有する第1エンコーダーと、
前記モーターの前記回転軸に接続され、前記回転軸の回転に応じたパルス信号を出力する第2エンコーダーと、
前記第2エンコーダーからの前記パルス信号を計測して、前記回転軸の基準角度を検出するマスター検出部と、を含む校正装置によるエンコーダーの校正方法であって、
前記マスター検出部から前記スレーブ検出部に対して位置取得信号を送信するとともに、送信が完了する前に前記パルス信号の計測値を記憶する第1の割込み処理を実行することと、
前記位置取得信号を前記スレーブ検出部が受信するとともに、受信が完了する前に前記回転位置検出部から前記回転位置情報を取得し、前記マスター検出部に送信する第2の割込み処理を実行することと、
前記基準角度に基づいて、前記第2の割込み処理で取得された前記回転位置情報による前記回転軸の計測角度のキャリブレーションを行うことと、を含む、
エンコーダーの校正方法。
【請求項2】
前記マスター検出部は、前記基準角度と、前記回転位置情報とを対応付けして補正テーブルに記憶し、
前記補正テーブルでは、前記基準角度ごとに、前記回転位置情報と、前記回転位置情報の補正値とがデータテーブル化されて記憶される、
請求項1に記載のエンコーダーの校正方法。
【請求項3】
前記第1の割込み処理は、
前記位置取得信号における1バイト目の送信が完了したタイミングで実行され、
その時点における前記パルス信号の計測値が記憶される、
請求項1に記載のエンコーダーの校正方法。
【請求項4】
前記第2の割込み処理は、
前記位置取得信号における1バイト目の受信が完了したタイミングで実行され、
その時点において前記回転位置検出部から出力される前記回転位置情報が取得される、
請求項1に記載のエンコーダーの校正方法。
【請求項5】
モーターの回転軸の回転位置を検出し、回転位置情報を出力する回転位置検出部と、前記回転位置検出部から前記回転位置情報を取得するスレーブ検出部とを有する第1エンコーダーと、
前記モーターの前記回転軸に接続され、前記回転軸の回転に応じたパルス信号を出力する第2エンコーダーと、
前記第2エンコーダーからの前記パルス信号を計測して、前記回転軸の基準角度を検出するマスター検出部とを含んで構成される、エンコーダーの校正装置であって、
前記マスター検出部は、前記スレーブ検出部に対して位置取得信号を送信するとともに、送信が完了する前に前記パルス信号の計測値を記憶し、
前記スレーブ検出部は、前記位置取得信号を受信するとともに、受信が完了する前に前記回転位置検出部から出力される前記回転位置情報を取得し、前記マスター検出部に送信し、
前記マスター検出部は、前記基準角度に基づいて、取得された前記回転位置情報による前記回転軸の計測角度のキャリブレーションを行う、
エンコーダーの校正装置。
【請求項6】
前記マスター検出部と前記スレーブ検出部との間には、両者間において同期通信するための配線、または、コネクタが設けられていない、
請求項5に記載のエンコーダーの校正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダーの校正方法、およびエンコーダーの校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、エンコーダーのキャリブレーションのために、基準エンコーダーの回転角と、校正対象となるエンコーダーの回転角とを比較する校正方法が公開されている。当該文献によれば、校正すべき第1エンコーダーと、基準エンコーダーとなる第2エンコーダーとの双方を用いて、対象物の位置または角度を計測する。前記計測工程の後、第1エンコーダーによる計測結果と第2エンコーダーによる計測結果とを比較することによって第1エンコーダーの出力の補正値(校正データ)を決定する、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の校正方法では、基準エンコーダーと校正対象のエンコーダーとの計測タイミングがズレてしまうと、精度良く校正できないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に係る一態様のエンコーダーの校正方法は、モーターの回転軸の回転位置を検出し、回転位置情報を出力する回転位置検出部と、前記回転位置検出部から前記回転位置情報を取得するスレーブ検出部とを有する第1エンコーダーと、前記モーターの前記回転軸に接続され、前記回転軸の回転に応じたパルス信号を出力する第2エンコーダーと、前記第2エンコーダーからの前記パルス信号を計測して、前記回転軸の基準角度を検出するマスター検出部と、を含む校正装置によるエンコーダーの校正方法であって、前記マスター検出部から前記スレーブ検出部に対して位置取得信号を送信するとともに、送信が完了する前に前記パルス信号の計測値を記憶する第1の割込み処理を実行することと、前記位置取得信号を前記スレーブ検出部が受信するとともに、受信が完了する前に前記回転位置検出部から前記回転位置情報を取得し、前記マスター検出部に送信する第2の割込み処理を実行することと、前記基準角度に基づいて、前記第2の割込み処理で取得された前記回転位置情報による前記回転軸の計測角度のキャリブレーションを行うことと、を含む。
【0006】
本願に係る一態様のエンコーダーの校正装置は、モーターの回転軸の回転位置を検出し、回転位置情報を出力する回転位置検出部と、前記回転位置検出部から前記回転位置情報を取得するスレーブ検出部とを有する第1エンコーダーと、前記モーターの前記回転軸に接続され、前記回転軸の回転に応じたパルス信号を出力する第2エンコーダーと、前記第2エンコーダーからの前記パルス信号を計測して、前記回転軸の基準角度を検出するマスター検出部とを含んで構成される、エンコーダーの校正装置であって、前記マスター検出部は、前記スレーブ検出部に対して位置取得信号を送信するとともに、送信が完了する前に前記パルス信号の計測値を記憶し、前記スレーブ検出部は、前記位置取得信号を受信するとともに、受信が完了する前に前記回転位置検出部から出力される前記回転位置情報を取得し、前記マスター検出部に送信し、前記マスター検出部は、前記基準角度に基づいて、取得された前記回転位置情報による前記回転軸の計測角度のキャリブレーションを行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係るエンコーダーの校正装置の概略構成図。
【
図3】補正テーブルの作成処理の流れを示すフローチャート図。
【
図4】基準角度、計測角度の検出タイミングに関するシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態1
***エンコーダーの校正装置の概要***
図1は、実施形態1に係るエンコーダーの校正装置の概略構成図である。
まず、
図1を用いて、本実施形態に係る第1エンコーダー10の校正装置100の概略構成について説明する。
【0009】
校正装置100は、モーター5の回転軸7aの回転角度を検出する第1エンコーダー10のキャリブレーションを行うための装置であり、校正の基準となる基準角度を得るための基準エンコーダーである第2エンコーダー20を備えて構成されている。モーター5は、第1エンコーダー10と対として用いられるサーボモーターであり、例えば、ロボットの関節部分など、回転が必要な機構に組み込まれて使用される。
第1エンコーダー10は、モーター5の回転軸7aに挿通されて組み込まれるが、製造バラつきにより、回転盤11のセンタリングに僅かなズレが生じてしまい、そのズレの補正が必要であった。
【0010】
校正装置100は、台座部3、モーター5、第1エンコーダー10、第2エンコーダー20、中継基板30、PC50などから構成される。
台座部3は、校正用の机であり、台座部分の中央にモーター5の回転軸7bを挿通するための貫通孔8が設けられている。
モーター5は、略円筒形状をなしており、円筒上部の中央に回転軸7aを備えている。回転軸7aは、モーター5の本体を貫通しており、円筒下部にも回転軸7bが突出している。ロボットなどに組み込んで実際に使用する際には、回転軸7b側を出力軸とし、回転軸7bに減速機を取付けて用いられることが多い。
【0011】
キャリブレーションの際には、モーター5は、台座部3の貫通孔8に回転軸7bを挿通した状態で、台座部3に固定される。貫通孔8から突出した回転軸7bには、結合部材9を介して回転軸7cが取付けられる。回転軸7cは、第2エンコーダー20用に延長した回転軸である。回転軸7a,7b,7cは、当該軸の中心を通る中心線60を中心にして、矢印方向に回転する。なお、以降の説明において、回転軸7a,7b,7cを1つの回転軸とみなす場合には、枝番を付さずに回転軸7ともいう。
【0012】
第1エンコーダー10は、アブソリュート型の反射式光学ロータリーエンコーダーであり、回転盤11、回路基板12、受発光部13などから構成される。回転盤11は、同心円状に複数本の光学トラックを備えており、その中心穴11aが回転軸7aに勘合している。受発光部13は、発光素子と受光素子とのセットが複数セット設けられた受発光部であり、回転盤11と対向して配置される。受発光部13は、回路基板12の下面に実装されている。好適例では、発光素子は発光ダイオードで、受光素子はフォトダイオードを用いるが、これに限定するものではなく、同様の性能を有する発光素子、受光素子であれば良い。回路基板12の上面には、エンコーダーIC14、スレーブ検出部としてのスレーブ制御部15を含む回路部品が実装されている。
【0013】
第2エンコーダー20は、インクリメンタル型の光学式ロータリーエンコーダーであり、回転盤21、発光部22、受光部23などから構成される。回転盤21は、外周部に光をオン/オフさせるための複数の光学窓を備え、その中心穴21aが回転軸7cに勘合している。発光部22は、回転盤21の上方に設けられており、光を出射する。受光部23は、回転盤21の下方に設けられており、光学窓を通過した光を受光する。発光部22と受光部23とは、回転盤21を介して向き合って配置されている。好適例では、発光部22は発光ダイオードを備え、受光部23はフォトダイオードを備えるが、これに限定するものではない。換言すれば、第2エンコーダー20は、モーター5の回転軸7に接続され、回転軸7の回転に応じたパルス信号を出力する。
【0014】
中継基板30には、マスター検出部としてのマスター制御部31を含む回路部品が実装されており、PC50からの指示に従い、校正装置100の各部を制御する。また、マスター制御部31は、第2エンコーダー20からのパルス信号を計測して、回転軸7の基準角度を検出する。
中継基板30と第1エンコーダー10の回路基板12との間には、両者間での通信を行うための接続ケーブル81が設けられている。同様に、中継基板30と第2エンコーダー20との間には接続ケーブル82が設けられており、中継基板30とモーター5との間には接続ケーブル83が設けられている。
【0015】
PC50は、パーソナルコンピューターであり、その記憶部には、基準角度、計測角度の取得を含む校正処理の順序と内容を規定した校正処理プログラムや、付随するデータなどが記憶されている。PC50と中継基板30との間は、接続ケーブル84により双方向の通信が可能に接続されている。
【0016】
***校正装置の回路ブロック構成***
図2は、校正装置の回路ブロック構成図である。
図2に示すように、第1エンコーダー10の回路基板12には、エンコーダーIC14、スレーブ制御部15を含む回路部品が実装されている。
エンコーダーIC14は、第1エンコーダー10用の専用ICであり、回転位置検出部に相当する。エンコーダーIC14は、受発光部13を制御して、回転盤11の回転位置情報である計測データを検出する。エンコーダーIC14は、その内部に一時記憶部(図示せず)を備えている。
【0017】
スレーブ制御部15は、例えば、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部16や、A/Dコンバーターなどを含んで構成されている。スレーブ制御部15は、エンコーダーIC14から受信した計測データに基づいて、回転軸7の計測角度を検出する。
換言すれば、第1エンコーダー10は、モーター5の回転軸7の回転位置を検出し、回転位置情報としての計測データを出力する回転位置検出部としてのエンコーダーIC14と、エンコーダーIC14から出力される計測データに基づいて、回転軸7の計測角度を検出するスレーブ検出部としてのスレーブ制御部15を有する。
【0018】
中継基板30には、マスター制御部31、記憶部32を含む回路部品が実装されている。
マスター制御部31は、1つ又は複数のプロセッサーを含んで構成される。マスター制御部31は、マスター検出部であり、第2エンコーダー20からのパルス信号を計測して、回転軸7の基準角度を検出する。換言すれば、マスター検出部としてのマスター制御部31は、第2エンコーダー20からのパルス信号を計測して、回転軸7の基準角度を検出する。
また、マスター制御部31は、検出した基準角度と第1エンコーダー10の計測角度を示す計測データとを比較して、基準角度ごとに、計測データの補正値を算出する。
【0019】
記憶部32は、ROM、及び、RAMを含んで構成されており、マスター制御部31が実行するプログラムや、関連データなどを記憶している。当該プログラムには、後述する補正テーブル作成プログラムなどが含まれている。また、関連データには、補正テーブルが含まれている。
【0020】
***補正テーブル作成処理の流れ***
図3は、補正テーブルの作成処理の流れを示すフローチャート図である。
ここでは、校正装置100による補正テーブル作成処理の流れを、
図3を用いて説明する。なお、以下の処理は、PC50において校正処理プログラムが実行され、PC50からの指令に従い、マスター制御部31が校正装置100の各部を制御することにより実行される。また、マスター制御部31では、補正テーブル作成プログラムが実行される。
【0021】
ステップS10では、まず、第1エンコーダー10がセットされた状態のモーター5を台座部3に固定する。そして、モーター5、第1エンコーダー10、および、第2エンコーダー20を校正時における初期状態とする。
【0022】
ステップS11では、モーター5の回転軸7の回転を開始する。回転速度は、予め定められた一定の速度とする。
回転軸7の回転に伴ない、第1エンコーダー10の回転盤11も回転する。エンコーダーIC14は、受発光部13により回転盤11の回転位置を検出し、計測データを出力する。同様に、回転軸7の回転に伴ない、第2エンコーダー20の回転盤21も回転し、回転に応じたパルス信号を出力する。
【0023】
ステップS12では、マスター制御部31は、第2エンコーダー20からのパルス信号を計測して、回転軸7の基準角度を検出する。好適例では、基準角度は、サンプリング時点におけるパルス数の計測値を指標としており、当該計測値を基準カウントともいう。例えば、360度を2048分割した場合、基準カウントは、0~2047となり、2048回のサンプリングが行われる。マスター制御部31は、サンプリングごとに、その基準カウントを記憶部32の補正テーブルに記憶する。
【0024】
ステップS13では、スレーブ制御部15は、回転軸7の計測角度を示す計測データをエンコーダーIC14から取得する。そして、スレーブ制御部15は、取得した計測データをマスター制御部31に送信する。マスター制御部31は、受信した計測データを、基準カウントと対応付けして記憶する。詳しくは、受信した計測データを、基準カウントと対応付けして記憶部32の補正テーブルに記憶する。
【0025】
***基準角度、計測角度の検出タイミング***
図4は、基準角度、計測角度の検出タイミングに関するシーケンス図である。
上記のステップS12,S13では、計測データが基準カウントと対応付けして記憶されるが、この際、計測データの取得タイミングを、基準カウントの取得タイミングと略一致させるための仕組みが採用されている。
以下、
図4において、マスター検出部としてのマスター制御部31、スレーブ検出部としてのスレーブ制御部15、回転位置検出部としてのエンコーダーIC14をオブジェクトとして、基準カウント、計測データの検出タイミングについて、詳しく説明する。
【0026】
まず、マスター制御部31は、処理70において、スレーブ制御部15に対して位置取得信号としての位置取得コマンドを送信する。位置取得コマンドは、例えば、データ長が5バイトで、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)を用いて非同期で送信される。
【0027】
続いて、マスター制御部31は、位置取得コマンドの1バイト目において、処理71を実行する。処理71とは、その時点における第2エンコーダー20からの基準カウントをバッファーへ退避させ、記憶部32に記憶する処理である。処理71は、割込み処理として予めプログラムされている。換言すれば、処理71は第1の割込み処理であり、位置取得信号としての位置取得コマンドにおける1バイト目の送信が完了したタイミングで実行され、その時点におけるパルス信号の計測値が基準カウントとして記憶される。
図4では、位置取得コマンドの1バイト目を一点鎖線で図示している。なお、割込み処理終了後は、直前の処理に復帰し、位置取得コマンドの2バイト目以降を送信する。
換言すれば、マスター制御部31は、スレーブ制御部15に対して位置取得信号としての位置取得コマンドを送信するとともに、位置取得コマンドの送信が完了する前に第2エンコーダー20からの基準カウントを記憶する第1の割込み処理を実行する。
【0028】
スレーブ制御部15は、位置取得コマンドを受信すると、位置取得コマンドの1バイト目において、処理72を実行する。処理72では、スレーブ制御部15は、計測データを取得するために、エンコーダーIC14との通信を開始する。
【0029】
エンコーダーIC14は、通信が開始した際の最初の信号ライン変動タイミングで処理73を実行する。処理73とは、その時点における計測データを一時記憶部に退避させる処理である。処理73は、割込み処理として予めプログラムされている。退避された計測データは、処理74でスレーブ制御部15に送信される。そして、処理75で、スレーブ制御部15からマスター制御部31に計測データが送信される。換言すれば、処理73は、第2の割込み処理であり、位置取得コマンドにおける1バイト目の受信が完了したタイミングで実行され、その時点においてエンコーダーIC14から出力される計測データが取得される。
換言すれば、スレーブ制御部15は、位置取得コマンドを受信するとともに、位置取得コマンドの受信が完了する前にエンコーダーIC14の計測データを取得し、マスター制御部31に送信する。なお、所定の間隔による遅延が許容できる場合には、スレーブ制御部15が所定の間隔で位置取得コマンドを受信したかを常時監視し、位置取得コマンドの受信が行われたことが確認されたら処理73を行うように構成してもよい。
【0030】
ここで、
図4に示すように、基準カウントを取得する処理71と、計測データを取得する処理73とは、略同じタイミングで行われることが解る。これは、第1の割込み処理と、第2の割込み処理とを設けたことにより実現される。
これにより、マスター検出部としてのマスター制御部31と、スレーブ検出部としてのスレーブ制御部15との間には、両者間において同期通信するための配線、または、コネクタは必要なく、設けられていない。
【0031】
マスター制御部31は、受信した計測データを、処理71で記憶した基準角度の基準カウントと対として、補正テーブルに記憶する。
基準角度、および、計測角度の取得は、サンプリングごとに実行され、モーター5が1周(360度)してモーター5が停止するまで行われる。
【0032】
***補正値の算出、補正テーブルの設定***
図3に戻る。
ステップS14では、モーター5が1周したため、回転軸7の回転を停止する。
ステップS15では、補正テーブルにおける補正値を算出する。
【0033】
図5は、補正テーブルの一例を示す図表である。
図5の表では、基準角度を示す基準カウント数と、当該基準カウント数に対応する計測データとが対として記憶されている。また、計測データごとに、補正値aと、補正値bとが記憶されている。換言すれば、補正テーブルでは、基準角度としての基準カウントごとに、回転位置情報としての計測データと、計測データの補正値a、補正値bとがデータテーブル化されて記憶される。
補正値aと補正値bとは、基準角度に対する計測データの誤差分を補正するための補正値であり、演算により求めることができる。詳しくは、基準カウントがn番目における補正値anは、n番目における計測データの誤差カウント数を補正値bnとしたときに、下記の数式(1)により求められる。
【0034】
補正値an = 補正値bn+1 - 補正値bn ……式(1)
【0035】
補正値は、マスター制御部31により算出され、補正テーブルに記憶される。詳しくは、記憶部32の補正テーブル作成プログラムの附属データには、数式(1)が含まれており、マスター制御部31が当該プログラムを実行することにより、補正値が算出される。なお、補正値の算出はPC50によって行われてもよい。
【0036】
図3に戻る。
ステップS16では、完成した補正テーブルが、スレーブ制御部15の記憶部16に記憶される。これにより、第1エンコーダー10を備えたモーター5が、ロボットの関節部分などに取付けられた際に、補正テーブルを用いて補正した校正計測データを出力することができる。この校正計測データは、下記の数式(2)、数式(3)により導出される。
【0037】
校正計測データ=補正前計測データ+補正データ ……式(2)
補正データ=補正前計測データ*補正値a +補正値b ……式(3)
【0038】
換言すれば、校正装置100による校正方法は、マスター制御部31からスレーブ制御部15に対して位置取得信号としての位置取得コマンドを送信するとともに、第2エンコーダー20からの基準カウントを記憶する第1の割込み処理を実行することと、位置取得コマンドをスレーブ制御部15が受信するとともに、エンコーダーIC14から出力される計測データを取得し、マスター制御部31に送信する第2の割込み処理を実行することと、基準カウントに基づいて、第2の割込み処理で取得された計測データによる回転軸7の計測角度のキャリブレーションを行うための補正テーブルを作成することと、を含む。
なお、補正値の導出方法、および、校正計測データの導出方法は、上記数式(1)~(3)を用いた方法に限定するものではなく、基準カウントに合致した校正計測データが得られるキャリブレーション方法であれば良い。
【0039】
以上、述べた通り、本実施形態の校正装置100、および、校正方法によれば、以下の効果を得ることができる。
モーター5の回転軸7の回転位置を検出し、回転位置情報としての計測データを出力する回転位置検出部としてのエンコーダーIC14と、エンコーダーIC14から計測データを取得するスレーブ検出部としてのスレーブ制御部15とを有する第1エンコーダー10と、モーター5の回転軸7に接続され、回転軸7の回転に応じたパルス信号を出力する第2エンコーダー20と、第2エンコーダー20からのパルス信号を計測して、回転軸7の基準角度としての基準カウントを検出するマスター検出部としてのマスター制御部31とを含む校正装置100によるエンコーダーの校正方法であって、マスター制御部31からスレーブ制御部15に対して位置取得信号としての位置取得コマンドを送信するとともに、第2エンコーダー20からのパルス信号の計測値である基準カウントを記憶する第1の割込み処理を実行することと、位置取得コマンドをスレーブ制御部15が受信するとともに、エンコーダーIC14から出力される計測データを取得し、マスター制御部31に送信する第2の割込み処理を実行することと、基準カウントに基づいて、第2の割込み処理で取得された計測データによる回転軸7の計測角度のキャリブレーションを行うための補正テーブルを作成することと、を含む。
【0040】
この方法によれば、第1の割込み処理と、第2の割込み処理とを設けたことにより、基準カウントを取得する処理71と、計測データを取得する処理73とを、略同じタイミングで行なうことができる。
よって、基準エンコーダーと校正対象のエンコーダーとの計測タイミングがズレてしまうおそれがあった従来の校正方法とは異なり、本実施形態の校正方法によれば、基準となる第2エンコーダー20と、第1エンコーダー10との計測タイミングのズレを低減し、精度良く校正を行うことができる。
従って、校正精度の良い第1エンコーダー10の校正方法を提供することができる。
【0041】
また、補正テーブルでは、基準角度としての基準カウントごとに、回転位置情報としての計測データと、計測データの補正値a、補正値bとがデータテーブル化されて記憶される。
これによれば、第1エンコーダー10を備えたモーター5が、単品で使用される際に、補正テーブルを用いて補正した校正計測データによる正しい計測角度を出力することができる。
【0042】
また、第1の割込み処理は、位置取得信号としての位置取得コマンドにおける1バイト目の送信が完了したタイミングで実行され、その時点におけるパルス信号の計測値が基準カウントとして記憶される。そして、第2の割込み処理は、位置取得コマンドにおける1バイト目の受信が完了したタイミングで実行され、その時点においてエンコーダーIC14から出力される計測データが取得される。
これによれば、基準カウントを取得する処理71と、計測データを取得する処理73とを、略同じタイミングで行なうことができる。よって、基準となる第2エンコーダー20と、第1エンコーダー10との計測タイミングのズレを低減し、精度良く校正を行うことができる。
【0043】
第1エンコーダー10の校正装置100は、モーター5の回転軸7の回転位置を検出し、計測データを出力するエンコーダーIC14と、エンコーダーIC14から計測データを取得するスレーブ制御部15とを有する第1エンコーダー10と、モーター5の回転軸7に接続され、回転軸7の回転に応じたパルス信号を出力する第2エンコーダー20と、第2エンコーダー20からのパルス信号を計測して、回転軸7の基準角度としての基準カウントを検出するマスター制御部31とを含んで構成される、校正装置100であって、マスター制御部31は、スレーブ制御部15に対して位置取得コマンドを送信するとともに、位置取得コマンドの送信が完了する前に第2エンコーダー20からのパルス信号の計測値である基準カウントを記憶し、スレーブ制御部15は、位置取得コマンドを受信するとともに、位置取得コマンドの受信が完了する前にエンコーダーIC14から出力される計測データを取得し、マスター制御部31に送信し、マスター制御部31は、基準カウントに基づいて、取得された計測データによる回転軸7の計測角度のキャリブレーションを行うための補正テーブルを作成する。
【0044】
本実施形態の校正装置100によれば、基準となる第2エンコーダー20と、第1エンコーダー10との計測タイミングのズレを低減し、精度良く校正を行うことができる。
従って、校正精度の良い第1エンコーダー10の校正装置100を提供することができる。
【0045】
また、マスター制御部31と、スレーブ制御部15との間には、両者間において同期通信するための配線、または、コネクタは必要なく、設けられていない。
これにより、同期通信するための配線、または、コネクタが不要となるため、回路基板12や、第1エンコーダー10を小型に構成することができる。
【符号の説明】
【0046】
3…台座部、5…モーター、7…回転軸、7a~7c…回転軸、8…貫通孔、9…結合部材、10…第1エンコーダー、11…回転盤、11a…中心穴、12…回路基板、13…受発光部、14…エンコーダーIC、15…スレーブ制御部、16…記憶部、20…第2エンコーダー、21…回転盤、21a…中心穴、22…発光部、23…受光部、30…中継基板、31…マスター制御部、32…記憶部、50…PC、60…中心線、70~75…処理、81~84…接続ケーブル、100…校正装置。