(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018175
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6473 20110101AFI20230201BHJP
H01R 13/6581 20110101ALI20230201BHJP
H01R 13/514 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
H01R13/6473
H01R13/6581
H01R13/514
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122070
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】松田 英一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和弘
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FB07
5E021FC21
5E021FC23
5E021LA09
5E021LA14
5E021LA21
5E087EE02
5E087EE14
5E087FF03
5E087FF06
5E087FF13
5E087GG26
5E087GG32
5E087HH01
5E087HH02
5E087JJ08
5E087MM02
5E087MM05
5E087RR03
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】UTPモジュールの特性インピーダンスを改善することが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタは、互いに嵌合可能な第1コネクタ10と第2コネクタ11とを備える。第1コネクタ10は、UTPモジュール15を有している。UTPモジュール15は、UTPケーブル12の電線53に接続されるUTP内導体65を有している。第2コネクタ11は、第1コネクタ10と第2コネクタ11との嵌合状態において、UTP内導体65の外周を覆う導電性のシールド部材21を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な第1コネクタと第2コネクタとを備え、
前記第1コネクタは、UTPモジュールを有し、
前記UTPモジュールは、UTPケーブルの電線に接続されるUTP内導体を有し、
前記第2コネクタは、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合状態において、前記UTP内導体の外周を覆う導電性のシールド部材を有している、コネクタ。
【請求項2】
前記第1コネクタは、STPモジュールと、第1ハウジングと、を有し、
前記STPモジュールは、STPケーブルの電線に接続されるSTP内導体と、前記STPケーブルのシールド体に接続される外導体と、を有し、
前記シールド部材は、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合状態において、前記外導体に接触し、
前記第1ハウジングは、複数のキャビティを有し、
前記UTPモジュールと前記STPモジュールは、複数の前記キャビティにそれぞれ収容されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記シールド部材は、複数の筒部を有し、
前記UTP内導体と前記外導体は、複数の前記筒部の内側にそれぞれ配置され、
前記外導体は、前記筒部の内面に接触する、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記UTPモジュールは、前記UTPケーブルに装着される導電性のインピーダンス調整部材を有し、
複数の前記キャビティはそれぞれ同一長さであり、
前記インピーダンス調整部材は、前記UTPモジュールが前記キャビティに収容された状態において、前記キャビティの内側に収まる長さに設定されている、請求項2または請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記シールド部材は、ダイキャスト製である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、STP(Shielded Twisted Pair)モジュールと、UTP(UnShielded Twisted Pair)モジュールと、を備えている。UTPモジュールとSTPモジュールは、特許文献1では端末モジュールと称されている。UTPモジュールは、UTPケーブルの電線に接続される端子金具としてのUTP内導体を有する。STPモジュールは、STPケーブルの電線に接続される端子金具としてのSTP内導体を有する。STPモジュールは、UTPモジュールよりも高速通信が必要とされる場合に使用される。特許文献1の場合、STPモジュールを用いる第1の仕様からUTPモジュールを用いる第2の仕様に変更する場合に、ハウジングを共用できるようにしてある。なお、コネクタに関する技術としては、特許文献2~5に開示されたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-126408号公報
【特許文献2】特開2004-327419号公報
【特許文献3】特開平7-22107号公報
【特許文献4】特開平6-36829号公報
【特許文献5】特開平2-109279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、UTPケーブルの電線には、特性インピーダンスを調整するため、かしめリングとしてのインピーダンス調整部材が装着される。しかし、例えば、コネクタ小型化の要請を受けてかしめリングが短くなると、特性インピーダンスが悪化するといった問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、UTPモジュールの特性インピーダンスを改善することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、互いに嵌合可能な第1コネクタと第2コネクタとを備え、前記第1コネクタは、UTPモジュールを有し、前記UTPモジュールは、UTPケーブルの電線に接続されるUTP内導体を有し、前記第2コネクタは、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合状態において、前記UTP内導体の外周を覆う導電性のシールド部材を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、UTPモジュールの特性インピーダンスを改善することが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態のコネクタにおいて、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合状態において、UTPモジュールを収容したキャビティの位置で切断した側断面図である。
【
図2】
図2は、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合状態において、STPモジュールを収容したキャビティの位置で切断した側断面図である。
【
図6】
図6は、STPモジュールの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、UTPモジュールの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)互いに嵌合可能な第1コネクタと第2コネクタとを備え、前記第1コネクタは、UTPモジュールを有し、前記UTPモジュールは、UTPケーブルの電線に接続されるUTP内導体を有し、前記第2コネクタは、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合状態において、前記UTP内導体の外周を覆う導電性のシールド部材を有している。
【0010】
このように、UTP内導体の外周がシールド部材で覆われていれば、UTPモジュールの特性インピーダンスを改善することができる。
【0011】
(2)前記第1コネクタは、STPモジュールと、第1ハウジングと、を有し、前記STPモジュールは、STPケーブルの電線に接続されるSTP内導体と、前記STPケーブルのシールド体に接続される外導体と、を有し、前記シールド部材は、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合状態において、前記外導体に接触し、前記第1ハウジングは、複数のキャビティを有し、前記UTPモジュールと前記STPモジュールは、複数の前記キャビティにそれぞれ収容されているのが好ましい。
【0012】
このように、UTPモジュールとSTPモジュールが同一の第1ハウジングに収容されていれば、UTPモジュールを用いるUTP仕様とSTPモジュールを用いるSTP仕様のそれぞれに対応したハウジングを設けなくて済む。また、第1ハウジングの嵌合相手となる第2コネクタもUTP仕様とSTP仕様のそれぞれに対応したハウジングを別に設けなく済む。例えば、第2コネクタが基板用コネクタである場合には、UTP仕様とSTP仕様に共用される1つのハウジングを回路基板に設置すれば良いので、ハウジングを別に設ける場合と比較して、コネクタの占有面積を小さくでき、省スペース化を図ることができる。また、UTP仕様とSTP仕様のそれぞれの仕様毎に嵌合作業を行わなくても良いので、嵌合回数を減らすことができ、作業性に優れる。
【0013】
(3)前記シールド部材は、複数の筒部を有し、前記UTP内導体と前記外導体は、複数の前記筒部の内側にそれぞれ配置され、前記外導体は、前記筒部の内面に接触すると良い。
【0014】
このように、UTP内導体と外導体が各筒部の内側に配置されることにより、STPモジュールのシールド性とUTPモジュールの特性インピーダンスをいずれも良好に調整することができる。また、複数の筒部の一部または全部を選択して使用することができるので、汎用性に優れる。
【0015】
(4)前記UTPモジュールは、前記UTPケーブルに装着される導電性のインピーダンス調整部材を有し、複数の前記キャビティはそれぞれ同一長さであり、前記インピーダンス調整部材は、前記UTPモジュールが前記キャビティに収容された状態において、前記キャビティの内側に収まる長さに設定されていると良い。
【0016】
このように、UTPモジュールとSTPモジュールが同一長さの各キャビティにそれぞれ収容される場合に、インピーダンス調整部材がキャビティの内側に収まる長さに設定されると、UTPモジュールの長さをSTPモジュールの長さに合わせることになる。その結果、インピーダンス調整部材が短くなり、特性インピーダンスが上昇して悪化する懸念がある。しかるに本構成の場合、UTP内導体の外周がシールド部材で覆われているので、特性インピーダンスを維持または向上させることができる。なお、元々、UTP内導体は金属等で覆われていないことから、特性インピーダンスが高くなる傾向にあり、従来はこの特性インピーダンスを下げるため、比較的長いインピーダンス調整部材を使用していたという背景がある。
【0017】
(5)前記シールド部材は、ダイキャスト製であると良い。
このように、ダイキャスト製のシールド部材であれば、シールド性能を向上させることができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
本実施形態のコネクタは、
図1および
図2に示すように、互いに嵌合可能な第1コネクタ10と第2コネクタ11とを備える。第1コネクタ10は、通信用の信号が伝送されるUTPケーブル12(
図1を参照)およびSTPケーブル13(
図2を参照)の端部に設けられ、第1ハウジング14と、UTPモジュール15(
図1を参照)と、STPモジュール16(
図2を参照)と、を備えている。第2コネクタ11は、回路基板17に実装され、第2ハウジング18と、第2誘電体19と、端子20と、シールド部材21と、を備えている。なお、以下の説明において、前後方向については、第1コネクタ10と第2コネクタ11が嵌合開始時に互いに向き合う面側を前側とする。上下方向は各図の上下方向を基準とする。
【0020】
<第2ハウジング>
第2ハウジング18は絶縁性の合成樹脂材によって形成され、角筒状の嵌合筒部22を有している(
図3の前側であって、図示せず)。
図3に示すように、嵌合筒部22の後壁33には、上下一対の貫通孔23が形成されている。各貫通孔23は、左右方向に長く延びる開口形状を有している。また、嵌合筒部22の後壁33には、複数の圧入凹部24が形成されている。各圧入凹部24は、背面視矩形状をなし、後壁33の後面に開口ている。また、各圧入凹部24は、貫通孔23の内周面に連通している。具体的には、各圧入凹部24は、上段の貫通孔23の上面における左右2ヵ所と、上段の貫通孔23の左右面における上下中央の1ヵ所ずつと、下段の貫通孔23の下面における左右2ヵ所と、下段の貫通孔23の左右面における上下中央の1ヵ所ずつと、に開口している。詳細は図示しないが、嵌合筒部22の上壁の内面には、ロック部25が形成されている。
【0021】
<第2誘電体>
第2誘電体19は、絶縁性の合成樹脂材によってブロック状をなし、
図1および
図2示すように、前後方向に貫通する左右一対の装着孔26(
図1および
図2には1つのみ図示)を有している。第2誘電体19の装着孔26には、後方から端子20が圧入される。本実施形態の場合、第2誘電体19は、下段の貫通孔23内に配置される下段誘電体27と、上段の貫通孔23内に配置される上段誘電体28と、の2種類で構成されている。下段誘電体27と上段誘電体28は、第2コネクタ11において、一対ずつ2組設けられ、それぞれ左右方向(
図1および
図2の紙面厚み方向)に並んで配置される。
【0022】
<端子>
端子20は、導電性の金属板材からなり、
図1および
図2に示すように、全体として細長く延びるように形成されている。端子20は、内導体接続部29と、基板接続部30と、を有している。内導体接続部29は、前後方向に延び、後部が第2誘電体19に圧入されて保持される。本実施形態の場合、端子20は、下段誘電体27に圧入される短寸の下段端子31と、上段誘電体28に挿入される長寸の上段端子32と、の2種類で構成されている。
【0023】
内導体接続部29の前部は、第2誘電体19の前方に突出し、後述するUTPモジュール15の後述するUTP内導体65またはSTPモジュール16の後述するSTP内導体46に電気的に接続される。基板接続部30は、第2誘電体19の後方において内導体接続部29の後端から下方に延びるように配置される。基板接続部30の下端部は、回路基板17の図示しないスルーホールに挿入され、回路基板17の導電部分に半田付けして接続される。
【0024】
<シールド部材>
シールド部材21は、鋳造体であって、本実施形態の場合、亜鉛合金からなるダイキャスト製の部材として構成される。シールド部材21は、第2ハウジング18に後方から組み付けられる。
図4に示すように、シールド部材21は、張出部34と、張出部34の後方に突出する包囲部35と、張出部34の前方に突出する複数の筒部36と、を有している。張出部34は、正面視および背面視で矩形の外形を有している。
図1および
図2に示すように、張出部34は、第2ハウジング18への組み付け時に、嵌合筒部22の後壁33の後面を覆うように配置される。
【0025】
包囲部35は、背面視(図示しない)門型枠状をなし、後方および下方に開放されている。包囲部35内は、詳細は図示しないが、左右に分割されており、それぞれの分割空間に上段誘電体28および下段誘電体27が収容される。包囲部35の下端には、左右一対ずつの取付突部37が突出して形成されている。各取付突部37が回路基板17の図示しない取付孔に挿入されることにより、シールド部材21が回路基板17上に位置決めして設置される。
【0026】
図4に示すように、各筒部36は、左右方向に長い角筒状をなし、それぞれ同一形状に形成されている。各筒部36は、上段および下段に左右一対ずつ配置されている。各筒部36の内周は、張出部34を貫通し、包囲部35内に連通している。
図1および
図2に示すように、上段の各筒部36には、上段誘電体28が挿入されて保持される。下段の各筒部36には、下段誘電体27が挿入されて保持される。
【0027】
図4に示すように、上段の各筒部36は、張出部34に連なる基端側において、左右方向に長い上段基台部39に連結されている。上段基台部39の外周面は、上段の各筒部36の基端側を一括して包囲するように配置されている。上段基台部39の外周面には、周方向に間隔を置いて複数の圧入部40が突出して形成されている。各圧入部40は、断面矩形のブロック状をなし、張出部34の前面に連結されている。各圧入部40は、各圧入凹部24と対応する位置に配置されている。
【0028】
同様に、下段の各筒部36の基端側も下段基台部41に連結され、下段基台部41の外周面にも各圧入凹部24と対応する位置に複数の圧入部40が形成されている。シールド部材21が第2ハウジング18に組み付けられると、上段基台部39および下段基台部41がそれぞれ上段の貫通孔23および下段の貫通孔23に挿入され、各圧入部40がそれぞれ各圧入凹部24に圧入される。これにより、シールド部材21が第2ハウジング18に保持される。各筒部36内には、後方から第2誘電体19が挿入され、内導体接続部29の前部が突出して配置される。また、各筒部36内には、前方からUTPモジュール15またはSTPモジュール16が挿入される。各筒部36は、孔等の開口部分を有していないので、ノイズの侵入および漏洩を良好に抑制することができ、シールド性能および特性インピーダンスの調整能に優れる。
【0029】
<第1ハウジング>
第1ハウジング14は絶縁性の合成樹脂材によって形成され、断面矩形の外周形状を有している。
図1および
図2に示すように、第1ハウジング14は、第2ハウジング18の嵌合筒部22内に嵌合される。第1ハウジング14には、複数のキャビティ42が前後方向に貫通して形成されている。各キャビティ42は、各筒部36と対応する位置に個別に形成されている。
図5に示すように、各キャビティ42は、互いに同一の開口形状であって、前後長さも互いに同一となるように設定されている。
【0030】
各キャビティ42の内壁上面には、ランス43が前方に突出して形成されている。ランス43は上下方向に弾性変形可能とされている。
図5に示すように、各キャビティ42の内壁下面の左右端部には、後方を向く後方面44が対をなして形成されている。各キャビティ42には後方からUTPモジュール15またはSTPモジュール16が挿入される。UTPモジュール15またはSTPモジュール16は、ランス43に係止されることで後方への抜け出しが規制され(
図1および
図2を参照)、後方面44に当たることで前方への抜け出しが規制可能となる。なお、各キャビティ42は、UTPモジュール15とSTPモジュール16のそれぞれの前後長さを超える前後長さを有し、UTPモジュール15とSTPモジュール16のそれぞれの全体を収容可能とされている。
【0031】
図5に示すように、第1ハウジング14の上壁にはロックアーム45が形成されている。ロックアーム45は上下方向に弾性変形可能とされている。ロックアーム45が嵌合筒部22内で
図3の紙面奥側より第1コネクタ10を挿入し、ロック部25に係止されることにより、第1コネクタ10と第2コネクタ11が嵌合状態に保持される。
【0032】
<STPモジュール>
STPモジュール16は、
図6に示すように、2つのSTP内導体46と、STP上側誘電体47と、STP下側誘電体48と、外導体49と、外導体カバー50と、を有している。
STP内導体46は、雌型端子であって、導電性の金属板材を曲げ加工等して形成されている。STP内導体46は、前部に筒状の箱部51を有し、後部にオープンバレル状のバレル部52を有している。箱部51内には、第1コネクタ10と第2コネクタ11との嵌合時、内導体接続部29の前部が挿入されて電気的に接続される。バレル部52は、STPケーブル13の電線53に接続される。
【0033】
STPケーブル13は、シールド付きツイストペアケーブルであって、2本の電線53と、各電線53の外周を一括して覆う編組線等のシールド体54と、シールド体54の外周を覆う絶縁性のシース55と、を備えている。
【0034】
STPケーブル13の端部では、シース55が除去され、各電線53が左右に並んで露出している。シールド体54の端部は、シース55の端部から折り返されてシース55の外周側に露出している。各電線53におけるシース55の端部とSTP内導体46との間で露出する部分は、特性インピーダンスを調整するクリップ56によって互いに連結されている。
【0035】
STP上側誘電体47およびSTP下側誘電体48は、絶縁性の合成樹脂材によって形成され、上下方向に互いに組み合わされて一体のSTP誘電体57を構成する。2つのSTP内導体46は、それぞれ電線53に接続された状態で、STP誘電体57内に左右方向に並んで収容される。
【0036】
外導体49は、導電性の金属板材を曲げ加工等して形成されている。
図6に示すように、外導体49は、前後方向に長い角筒状の嵌合部58と、
図2に示すように、STPケーブル13のシールド体54に接続されるシールド接続部59と、を有している。筒部36内には後方からSTP誘電体57が挿入されて収容される。STP内導体46は、STP誘電体57によって外導体49から電気的に絶縁される。
図6に示すように、嵌合部58には、複数の弾性接触部60が切り起こして形成されている。第1コネクタ10と第2コネクタ11との嵌合時、嵌合部58がシールド部材21の筒部36内に挿入され、各弾性接触部60が筒部36の内面に接触する。これにより、外導体49とシールド部材21とが電気的に接続される。
【0037】
シールド接続部59は嵌合部58の後端下縁から後方に延びる帯板状をなしている。
図2に示すように、シールド接続部59は、シールド体54の下方に配置され、外導体カバー50の後述するシールドバレル部64の圧着力を受けてシールド体54に接続される。
【0038】
外導体カバー50は、導電性の金属板材を曲げ加工等して形成されている。外導体49の嵌合部58の後部は、外導体カバー50の前部の内側に配置される。
図6に示すように、外導体カバー50の前部の上壁には、方形の開口孔61と、開口孔61の前縁から上方に突出するハウジング係止部62と、が形成されている。外導体カバー50の前部の左右側壁には、下向きに突出する帯板状のストッパ部63が形成されている。STPモジュール16が第1ハウジング14のキャビティ42内に後方から挿入されると、
図2に示す湯鬼、ランス43が開口孔61に嵌まってハウジング係止部62に係止可能に配置され、STPモジュール16がキャビティ42内に抜け止めされる。また、各ストッパ部63が第1ハウジング14の後方面44に当たることによってSTPモジュール16がキャビティ42内に前止めされる。
【0039】
外導体カバー50の後部には、シールドバレル部64が形成されている。
図2に示すように、シールドバレル部64は、外導体49のシールド接続部59を内側に配置しつつSTPケーブル13のシールド体54に圧着して接続される。なお、
図6のシールドバレル部64は、便宜上、STPケーブル13のシールド体54に圧着した変形後の形態を示している。正確には、シールドバレル部64は、変形前、オープンバレル状に形成されている。
【0040】
<UTPモジュール>
UTPモジュール15は、
図8に示すように、2つのUTP内導体65と、UTP上側誘電体66と、UTP下側誘電体67と、インピーダンス調整部材68と、を有している。
UTP内導体65は、STP内導体46と同一形状の雌型端子であって、STP内導体46と同様、箱部51およびバレル部52を有している。バレル部52は、UTPケーブル12の電線53に接続される。UTPケーブル12は、シールド無しツイストペアケーブルであって、STPケーブル13からシールド体54を除いて構成される。つまり、UTPケーブル12は、2本の電線53とシース55とによって構成される。
【0041】
UTP上側誘電体66およびUTP下側誘電体67は、絶縁性の合成樹脂材によって形成され、上下方向に互いに組み合わされて一体のUTP誘電体69を構成する。2つのUTP内導体65は、それぞれ電線53に接続された状態で、UTP誘電体69内に左右方向に並んで収容される。
【0042】
UTP上側誘電体66の上面にはハウジングロック部70が突出して形成されている。UTP上側誘電体66が第1ハウジング14のキャビティ42に後方から挿入されると、
図1に示すように、ランス43がハウジングロック部70に係止可能に配置され、UTPモジュール15がキャビティ42内に抜け止めされる。また、
図8に示すように、UTP上側誘電体66の左右側面の下端部には、前後一対ずつのロック突起71が形成されている。
【0043】
UTP下側誘電体67は、板状の本体部72と、本体部72の左右側縁から立ち上がる前後一対ずつの弾性ロック部73と、を有している。
図9に示すように、各弾性ロック部73が各ロック突起71を係止することにより、UTP誘電体69が合体状態に保持される。UTP下側誘電体67の下面には、前方を向く段付け状のストッパ面74が形成されている。ストッパ面74が第1ハウジング14の後方面44に当たることによってUTPモジュール15がキャビティ42内に前止めされる。
【0044】
本体部72の後部の上面には、平坦な取付面75が形成されている。本体部72の上面には、後側の一対の弾性ロック部73よりも前方に、取付面75の前端を区画する段部76を有している。本体部72の前部の上面は、段部76を介して取付面75より一段高く配置されている。
【0045】
インピーダンス調整部材68は、導電性の金属板材を曲げ加工等して形成されている。インピーダンス調整部材68は、
図1に示すように、UTPケーブル12のシース55の外周面に円筒状に巻き付けられて圧着される圧着部77と、
図8に示すように、圧着部77の前端の下縁から前方に突出し、さらに左右両側に張り出す平板状の設置部78と、を有している。インピーダンス調整部材68は、UTP下側誘電体67の取付面75に対向して配置され、後側の各弾性ロック部73よりも前方に設置部78を位置させる。そして、インピーダンス調整部材68は、UTP下側誘電体67に組み付けられるUTP上側誘電体66によって上方への浮き上がりが規制される。
【0046】
<作用>
図7に示すように、STPモジュール16は、STPケーブル13の端部に接続された状態で形成される。STPモジュール16の内側にはSTP内導体46が収容され、STPモジュール16の外側には外導体49および外導体カバー50が露出して配置される。一方、
図9に示すように、UTPモジュール15は、UTPケーブル12の端部に接続された状態で形成される。UTPモジュール15の内側にはUTP内導体65が収容され、UTPモジュール15の外側にはUTP誘電体69が露出して配置される。
【0047】
UTPモジュール15とSTPモジュール16は、互いに同一または同一に近い前後長さおよび外径寸法を有している。そして、UTPモジュール15とSTPモジュール16は、いずれも第1ハウジング14に収容される。第1ハウジング14には、UTPモジュール15とSTPモジュール16とを分けて収容する複数のキャビティ42が形成されている。各キャビティ42は互いに同一形状で形成されている。
【0048】
このため、UTPモジュール15とSTPモジュール16は、それぞれ、第1ハウジング14の各キャビティ42のうちの適宜のキャビティ42に収容可能となる。つまり、各キャビティ42に収容されるUTPモジュール15とSTPモジュール16の配列は任意であり、例えば、回路基板17の導電部分の配列に応じて定めることができる。また、UTPモジュール15とSTPモジュール16のそれぞれの個数も任意であり、さらに、全てのキャビティ42にUTPモジュール15とSTPモジュール16が収容される必要もない。
【0049】
図2は、2つのSTPモジュール16が左右一側における上下各段のキャビティ42に収容される場合を例示する。
図2に示すように、第1コネクタ10と第2コネクタ11との嵌合状態においては、STPモジュール16の前部がシールド部材21の対応する筒部36内に挿入され、外導体49が各弾性接触部60を介して筒部36に接続される。これにより、第1コネクタ10と第2コネクタ11との間に前後方向に連続したシールド構造が形成される。
【0050】
また、
図1は、2つのUTPモジュール15が左右他側における上下各段のキャビティ42に収容される場合を例示する。
図1に示すように、第1コネクタ10と第2コネクタ11との嵌合状態においては、UTPモジュール15の前部がシールド部材21の対応する筒部36内に挿入され、UTP内導体65の箱部51と端子20の内導体接続部29との接続部分の外周を覆うように筒部36が配置される。これにより、UTP内導体65の外周側に、UTP誘電体69を介して、特性インピーダンスを調整する調整部79が形成される。なお、UTPモジュール15は、筒部36と非接触の状態で配置される。
【0051】
本実施形態の場合、コネクタ小型化の要請によってキャビティ42の前後長さを十分に確保することが困難であるという事情がある。また、UTPモジュール15とSTPモジュール16は互いに同一または同一に近い前後長さに揃えられるため、UTPモジュール15の前後長さが従来型よりも短くなり、UTPモジュール15に収容されたインピーダンス調整部材68の前後長さも従来型よりも短くなるという事情がある。
【0052】
しかるに本実施形態の場合、上記したように、UTP内導体65の外周側が筒部36によって覆われることによって、調整部79が形成されるため、インピーダンス調整部材68の短尺化に起因する特性インピーダンスの調整機能の低下を補うことができ、さらに特性インピーダンスの調整機能を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の場合、UTPモジュール15とSTPモジュール16が共通の第1ハウジング14に収容されるので、UTPモジュール15を収容する専用のUTPハウジングと、STPモジュール16を収容する専用のSTPハウジングと、をそれぞれ設ける必要がない。つまり、本実施形態においては、UTP仕様とSTP仕様のそれぞれに対応したコネクタを設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。とくに、第2コネクタ11は回路基板17に実装されるので、回路基板17の表面に占めるコネクタ占有面積を小さくすることができ、省スペース化に寄与することができる。また、UTP仕様とSTP仕様のそれぞれの仕様毎に嵌合作業を行わなくても良いので、嵌合回数を減らすことができ、作業性の向上を図ることができる。
【0054】
しかも、本実施形態の場合、シールド部材21が複数の筒部36を有し、仕様に応じて、各筒部36の一部または全部にUTPモジュール15とSTPモジュール16を選択的に収容させることができるので、汎用性に優れる。
【0055】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
他の実施形態として、第1コネクタは、STPモジュールを有さず、UTPモジュールのみを有する構成であっても良い。
他の実施形態として、第1コネクタは、インピーダンス調整部材を有さず、筒部のみで特性インピーダンスの調整を行う構成であっても良い。例えば、コネクタ小型化の観点からUTPモジュールの前後長さを十分に確保できない場合に、第1コネクタからインピーダンス調整部材を省略することができる。
他の実施形態として、UTPモジュールは筒部の内面に接触する構成であっても良い。
他の実施形態として、シールド部材の筒部は複数のUTPモジュールとSTPモジュールを一括して覆う構成であっても良い。
他の実施形態として、シールド部材は、導電性の金属板材を曲げ加工等して形成されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0056】
10…第1コネクタ
11…第2コネクタ
12…UTPケーブル
13…STPケーブル
14…第1ハウジング
15…UTPモジュール
16…STPモジュール
17…回路基板
18…第2ハウジング
19…第2誘電体
20…端子
21…シールド部材
22…嵌合筒部
23…貫通孔
24…圧入凹部
25…ロック部
26…装着孔
27…下段誘電体
28…上段誘電体
29…内導体接続部
30…基板接続部
31…下段端子
32…上段端子
33…後壁
34…張出部
35…包囲部
36…筒部
37…取付突部
39…上段基台部
40…圧入部
41…下段基台部
42…キャビティ
43…ランス
44…後方面
45…ロックアーム
46…STP内導体
47…STP上側誘電体
48…STP下側誘電体
49…外導体
50…外導体カバー
51…箱部
52…バレル部
53…電線
54…シールド体
55…シース
56…クリップ
57…STP誘電体
58…嵌合部
59…シールド接続部
60…弾性接触部
61…開口孔
62…ハウジング係止部
63…ストッパ部
64…シールドバレル部
65…UTP内導体
66…UTP上側誘電体
67…UTP下側誘電体
68…インピーダンス調整部材
69…UTP誘電体
70…ハウジングロック部
71…ロック突起
72…本体部
73…弾性ロック部
74…ストッパ面
75…取付面
76…段部
77…圧着部
78…設置部
79…調整部