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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182755
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】眼科装置及び眼科用光学系
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20231219BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20231219BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20231219BHJP
   G02B 13/14 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61B3/10 300
A61B3/10 100
G02B13/00
G02B13/18
G02B13/14
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175553
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2021550631の分割
【原出願日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2019179050
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水田 正宏
(72)【発明者】
【氏名】西 泰史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対物光学系内に中間瞳位置を形成することで結像性能の良い対物レンズを提供する。
【解決手段】被検眼を観察するための眼科装置であって、光源と、光源からの光を走査する走査部120、142、148と、被検眼12の瞳と共役関係な瞳を、走査部に形成する対物光学系130とを有し、対物光学系は、走査部から被検眼に向って順に、正の第1レンズ群134と、正の第2レンズ群と132、を備え、第1レンズ群と第2レンズ群との間に配置され、光を発散する凹面を含む第3レンズ群133を有する眼科装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を観察するための眼科装置であって、
光源と、
前記光源からの光を走査する走査部と、
前記被検眼の瞳と共役関係な瞳を、前記走査部に形成する対物光学系と
を有し、
前記対物光学系は、
前記走査部から前記被検眼に向って順に、
走査部側レンズ群と、
被検眼側レンズ群と、からなり、
前記走査部側レンズ群と前記被検眼側レンズ群との間に、前記被検眼の瞳と共役関係な瞳と異なる中間瞳を形成し、
前記走査部側レンズ群中の前記被検眼から最も離れたレンズ面と、前記走査部の位置との距離をW1とし、前記被検眼側レンズ群の最も被検眼側のレンズ面と前記被検眼の瞳孔との距離をW2とし、前記走査部側レンズ群または前記被検眼側レンズ群のうち前記中間瞳から最も近くに配置された所定レンズの凹面と前記中間瞳の位置との距離をDとするとき、
D<W1、 D<W2
の条件を満たす、眼科装置。
【請求項2】
被検眼を観察するための眼科用光学系であって、
前記被検眼の瞳と共役関係な瞳を形成する対物光学系を含み、
前記対物光学系は、
前記被検眼の瞳と共役関係な瞳の形成側から前記被検眼に向って順に、
瞳共役側レンズ群と、
被検眼側レンズ群と、からなり、
前記瞳共役側レンズ群と前記被検眼側レンズ群との間に、前記被検眼の瞳と共役関係な瞳と異なる中間瞳を形成し、
前記瞳共役側レンズ群中の前記被検眼から最も離れたレンズ面と、前記被検眼の瞳と共役関係の瞳位置との距離をW1とし、前記被検眼側レンズ群の最も被検眼側のレンズ面と前記被検眼の瞳孔との距離をW2とし、前記瞳共役側レンズ群または前記被検眼側レンズ群のうち前記中間瞳から最も近くに配置された所定レンズの凹面と前記中間瞳の位置との距離をDとするとき、
D<W1、D<W2
の条件を満たす、眼科用光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置及び眼科用光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許公開第EP2901919A1号明細書には、広画角な眼底の画像を撮像するためのアタッチメントレンズを有する眼科装置が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の技術の第1態様は、被検眼を観察するための眼科装置であって、光源と、前記光源からの光を走査する走査部と、前記被検眼の瞳と共役関係な瞳を、前記走査部に形成する対物光学系とを有し、前記対物光学系は、前記走査部から前記被検眼に向って順に、正の第1レンズ群と、正の第2レンズ群と、を備え、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に配置され、光を発散する凹面を含む第3レンズ群を有する眼科装置である。
【0004】
本開示の技術の第2態様は、被検眼を観察するための眼科用光学系であって、前記被検眼の瞳と共役関係な瞳を形成する対物光学系を含み、前記対物光学系は、前記被検眼の瞳と共役関係な瞳の形成側から前記被検眼に向って順に、正の第1レンズ群と、正の第2レンズ群と、を備え、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間に、光を発散する凹面を含む第3レンズ群を配置した眼科用光学系である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】第1実施形態の眼科装置の構成図である。
図2】第1実施形態の撮影光学系の概略構成図である。
図3】撮影光学系を構成する対物レンズの構成図である。
図4】実施例1に係る対物レンズのレンズ構成の一例を示す構成図である。
図5】実施例1に係る対物レンズの横収差を示す収差図である。
図6】実施例2に係る対物レンズのレンズ構成の一例を示す構成図である。
図7】実施例2に係る対物レンズの横収差を示す収差図である。
図8】実施例3に係る対物レンズのレンズ構成の一例を示す構成図である。
図9】実施例3に係る対物レンズの横収差を示す収差図である。
図10】実施例4に係る対物レンズのレンズ構成の一例を示す構成図である。
図11】実施例4に係る対物レンズの横収差を示す収差図である。
図12】第2実施形態に係るアタッチメント光学系を携帯端末に着脱可能とする構成を示す概略構成図である。
図13】第2実施例に係るアタッチメント光学系の構成の一例を示す概略構成図である。
図14】第3実施形態の撮影光学系を構成する対物レンズの概略構成図である。
図15】実施例5に係る対物レンズのレンズ構成の一例を示す構成図である。
図16】第4実施形態の撮影光学系を構成する対物レンズの概略構成図である。
図17】第6実施形態の眼科装置の概略構成図である。
図18】第7実施形態の第1構成例に係る撮影光学系の概略構成図である。
図19】第7実施形態の第2構成例に係る撮影光学系の概略構成図である。
図20】第7実施形態の第3構成例に係る撮影光学系の概略構成図である。
図21】第7実施形態の第4構成例に係る撮影光学系の概略構成図である。
図22】第7実施形態の第5構成例に係る撮影光学系の概略構成図である。
図23】第7実施形態の第6構成例に係る撮影光学系の概略構成図である。
図24】第7実施形態の第7構成例に係る撮影光学系の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。
【0007】
[第1実施形態]
【0008】
以下、本開示の第1実施形態に係る眼科装置110について図面を参照して説明する。
図1には、眼科装置110の概略構成が示されている。
【0009】
説明の便宜上、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope)を「SLO」と称する。また、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)を「OCT」と称する。
【0010】
なお、眼科装置110が水平面に設置された場合の水平方向を「X方向」、水平面に対する垂直方向を「Y方向」、撮影光学系116Aの光軸方向を「Z方向」とする。このZ方向の光軸上に被検眼の瞳孔d心が位置するように装置が被検眼に対して配置される。そして、X方向、Y方向、およびZ方向は互いに垂直である。
【0011】
眼科装置110は、撮影装置14および制御装置16を含む。撮影装置14は、被検眼12の眼底の画像を取得するSLOユニット18と、被検眼12の断層画像を取得するOCTユニット20とを備えている。以下、SLOユニット18により取得されたSLOデータに基づいて生成された眼底画像をSLO画像と称する。また、OCTユニット20により取得されたOCTデータに基づいて生成された断層画像をOCT画像と称する。なお、SLO画像は、二次元眼底画像と言及されることもある。また、OCT画像は、被検眼12の撮影部位に応じて、眼底断層画像、前眼部断層画像と言及されることもある。
眼科装置110は、本開示の技術の「眼科装置」の一例である。
【0012】
制御装置16は、CPU(Central Processing Unit(中央処理装置))16A、RAM(Random Access Memory)16B、ROM(Read-Only memory)16C、および入出力ポート(I/O)16Dを有するコンピュータを備えている。
【0013】
制御装置16は、I/Oポート16Dを介してCPU16Aに接続された入力/表示装置16Eを備えている。入力/表示装置16Eは、被検眼12の画像を表示したり、ユーザから各種指示を受け付けたりするグラフィックユーザインターフェースを有する。入力/表示装置16Eは、タッチパネル・ディスプレイを用いることができる。制御装置16は、I/Oポート16Dに接続された通信I/F16Fも備えている。
【0014】
また、制御装置16は、I/Oポート16Dに接続された画像処理装置17を備えている。画像処理装置17は、撮影装置14によって得られたデータに基づき被検眼12の画像を生成する。
【0015】
上記のように、図1では、眼科装置110の制御装置16が入力/表示装置16Eを備えているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、眼科装置110の制御装置16は入力/表示装置16Eを備えず、眼科装置110とは物理的に独立した別個の入力/表示装置を備えるようにしてもよい。この場合、当該表示装置は、制御装置16のCPU16Aの制御下で動作する画像処理プロセッサユニットを備える。画像処理プロセッサユニットが、CPU16Aが出力指示した画像信号に基づいて、SLO画像等を表示するようにしてもよい。
【0016】
撮影装置14は、制御装置16の制御下で作動する。撮影装置14は、SLOユニット18、撮影光学系116A、およびOCTユニット20を含む。撮影光学系116Aは、CPU16Aの制御下で、撮影光学系駆動部(図示省略)によりX、Y、Z方向に移動される。撮影装置14と被検眼12とのアラインメント(位置合わせ)は、例えば、撮影装置14のみばかりではなく、眼科装置110全体をX、Y、Z方向に移動させることにより、行われてもよい。
【0017】
SLOシステムは、図1に示す制御装置16、SLOユニット18、および撮影光学系116Aによって実現される。
【0018】
SLOユニット18は、複数の光源を備えている。例えば、図1に示されるように、SLOユニット18は、B光(青色光)の光源40、G光(緑色光)の光源42、R光(赤色光)の光源44、およびIR光(赤外線(例えば、近赤外光))の光源46を備える。各光源40、42、44、46から出射された光は、各光学部材48、50、52、54、56を介して同一光路に指向される。光学部材48、56は、ミラーであり、光学部材50、52、54は、ビームスプリッタ―である。B光は、光学部材48、50、54を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。G光は、光学部材50、54を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。R光は、光学部材52、54を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。IR光は、光学部材56、52を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。なお、光源40、42、44、46としては、LED光源や、レーザ光源を用いることができる。なお、以下には、レーザ光源を用いた例を説明する。光学部材48、56として、全反射ミラーを用いることができる。また、光学部材50、52、54として、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
光源40、42、44、46は、本開示の技術の「光源」の一例である。
【0019】
SLOユニット18は、G光、R光、B光およびIR光をそれぞれ個別に発する発光モードや、それらすべてを同時にもしくは幾つかを同時に発する発光モードなど、各種発光モードを切り替え可能に構成されている。図1に示す例では、B光(青色光)の光源40、G光の光源42、R光の光源44、およびIR光の光源46の4つの光源を備えるが、本開示の技術は、これに限定されない。例えば、SLOユニット18は、更に、白色光の光源を更に備えていてもよい。この場合、上記各種発光モードに加えて、白色光のみを発する発光モード等を設定してもよい。
【0020】
SLOユニット18から撮影光学系116Aに入射されたレーザ光は、後述する走査部(120、142)によってX方向およびY方向に走査される。走査光は瞳孔27を経由して、被検眼12の後眼部(例えば、眼底)に照射される。眼底により反射された反射光は、撮影光学系116Aを経由してSLOユニット18へ入射される。
走査部(120、142)は、本開示の技術の「走査部」の一例である。
【0021】
被検眼12の眼底で反射された反射光は、SLOユニット18に設けられた光検出素子70、72、74、76で検出される。本実施形態では、複数の光源、すなわち、B光源40、G光源42、R光源44およびIR光源46に対応させて、SLOユニット18は、B光検出素子70、G光検出素子72、R光検出素子74およびIR光検出素子76を備える。B光検出素子70は、ビームスプリッタ64で反射されたB光を検出する。G光検出素子72は、ビームスプリッタ64を透過し、ビームスプリッタ58で反射されたG光を検出する。R光検出素子74は、ビームスプリッタ64、58を透過し、ビームスプリッタ60で反射されたR光を検出する。IR光検出素子76は、ビームスプリッタ64、58、60を透過し、ビームスプリッタ62で反射されたG光を検出する。光検出素子70、72、74、76として、例えば、APD(avalanche photodiode:アバランシェ・フォトダイオード)が挙げられる。
【0022】
画像処理装置17は、CPU16Aの制御のもと、B光検出素子70、G光検出素子72、R光検出素子74、およびIR光検出素子76のそれぞれで検出された信号を用いて、各色に対応するSLO画像を生成する。各色に対応するSLO画像には、B光検出素子70で検出された信号を用いて生成されたB-SLO画像、G光検出素子72で検出された信号を用いて生成されたG-SLO画像、R光検出素子74で検出された信号を用いて生成されたR-SLO画像、及びIR光検出素子76で検出された信号を用いて生成されたIR-SLO画像である。また、B光源40、G光源42、R光源44が同時に発光する発光モードの場合、R光検出素子74、G光検出素子72、及びB光検出素子70で検出されたそれぞれの信号を用いて生成されたB-SLO画像、G-SLO画像およびR-SLO画像から、RGB-SLO画像を合成してもよい。また、G光源42、R光源44が同時に発光する発光モードの場合、R光検出素子74及びG光検出素子72で検出されたそれぞれの信号を用いて生成されたG-SLO画像およびR-SLO画像から、RG-SLO画像を合成してもよい。第1実施形態では、SLO画像としてRG-SLO画像が用いられるが、これに限定されず、他のSLO画像を用いることができる。
ビームスプリッタ58、60、62、64には、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
【0023】
OCTシステムは、図1に示す制御装置16、OCTユニット20、および撮影光学系116Aによって実現される三次元画像取得装置である。OCTユニット20は、光源20A、センサ(検出素子)20B、第1の光カプラ20C、参照光学系20D、コリメートレンズ20E、および第2の光カプラ20Fを含む。
【0024】
光源20Aは、光干渉断層撮影のための光を発生する。光源20Aとしては、例えば、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode;SLD)を用いることができる。光源20Aは、広いスペクトル幅をもつ広帯域光源の低干渉性の光を発生する。光源20Aから射出された光は、第1の光カプラ20Cで分割される。分割された一方の光は、測定光として、コリメートレンズ20Eで平行光にされた後、撮影光学系116Aに入射される。測定光は、後述する走査部(148、142)によってX方向およびY方向に走査される。走査光は、被検眼の前眼部や、瞳孔27を経由して後眼部に照射される。前眼部又は後眼部で反射された測定光は、撮影光学系116Aを経由してOCTユニット20へ入射され、コリメートレンズ20Eおよび第1の光カプラ20Cを介して、第2の光カプラ20Fに入射する。なお、本実施形態では、光源20AとしてSLDを用いるSD-OCTが例示されているが、これに限定されず、SLDに替えて波長掃引光源を用いるSS-OCTが採用されてもよい。
【0025】
光源20Aから射出され、第1の光カプラ20Cで分岐された他方の光は、参照光として、参照光学系20Dへ入射され、参照光学系20Dを経由して、第2の光カプラ20Fに入射する。
【0026】
被検眼12で反射および散乱された測定光(戻り光)と、参照光とは、第2の光カプラ20Fで合成されて干渉光が生成される。干渉光はセンサ20Bで検出される。画像処理装置17は、センサ20Bからの検出信号(OCTデータ)に基づいて、被検眼12の断層画像を生成する。
【0027】
第1実施形態では、OCTシステムは、被検眼12の前眼部又は後眼部の断層画像を生成する。
【0028】
被検眼12の前眼部は、前眼セグメントとして、例えば、角膜、虹彩、隅角、水晶体、毛様体、および硝子体の一部を含む部分である。被検眼12の後眼部は、後眼セグメントとして、例えば、硝子体の残りの一部、網膜、脈絡膜、及び強膜を含む部分である。なお、前眼部に属する硝子体は、硝子体の内、水晶体の最も眼球中心に近い点を通るX-Y平面を境界として、角膜側の部分であり、後眼部に属する硝子体は、硝子体の内、前眼部に属する硝子体以外の部分である。
【0029】
OCTシステムは、被検眼12の前眼部が撮影対象部位である場合、例えば、角膜の断層画像を生成する。また、被検眼12の後眼部が撮影対象部位である場合、OCTシステムは、例えば、網膜の断層画像を生成する。
【0030】
図2には、撮影光学系116Aの概略構成が示されている。撮影光学系116Aは、被検眼12側から順に配置された対物レンズ130、水平走査部142、リレーレンズ装置140、ビームスプリッタ147、垂直走査部120、148、フォーカス調整装置150、及びコリメートレンズ20Eを備えている。
ビームスプリッタ178、147として、例えば、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
【0031】
水平走査部142は、リレーレンズ装置140を介して入射したSLOのレーザ光およびOCTの測定光を水平方向に走査する光学スキャナである。本実施形態では、水平走査部142は、SLO光学系およびOCT光学系とで共用されているが、この限りでない。SLO光学系およびOCT光学系のそれぞれに水平走査部を設けてもよい。
【0032】
コリメートレンズ20Eは、OCTユニット20から出射した光が進むファイバの端部158から出射される測定光を平行光にする。
【0033】
フォーカス調整装置150は、複数のレンズ152、154を備える。被検眼12における撮影部位に応じて、複数のレンズ152、154それぞれを、適宜光軸方向に移動させることにより、被検眼12における測定光のフォーカス位置を調整する。なお、図示しないが、フォーカス検出装置を備える場合には、焦点検出の状態に応じてフォーカス調整装置にてレンズ152、154を駆動して、自動的に焦点合わせを行うようにして、オートフォーカス装置を実現することが可能である。
【0034】
垂直走査部148は、フォーカス調整装置150を介して入射した測定光を垂直方向に走査する光学スキャナである。
【0035】
垂直走査部120は、SLOユニット18から入射したレーザ光を垂直方向に走査する光学スキャナである。
【0036】
リレーレンズ装置140は、複数の正のパワーを有するレンズ144、146を備える。複数のレンズ144、146により、垂直走査部148、120の位置と水平走査部142の位置とが共役になるように、リレーレンズ装置140が構成されている。より具体的には、両走査部の角度走査の中心位置が共役になるように、リレーレンズ装置140が構成されている。
【0037】
ビームスプリッタ147は、リレーレンズ装置140と垂直走査部148との間に、配置されている。ビームスプリッタ147は、SLO光学系とOCT光学系とを合成する光学部材であって、SLOユニット18から出射されたSLO光をリレーレンズ装置140に向けて反射するとともに、OCTユニット20から出射された測定光をリレーレンズ装置140に向けて透過する。OCTユニット20から出射された測定光は、垂直走査部148および水平走査部142によって二次元走査される。また、SLOユニット18から出射された光は、SLO光学系を構成する垂直走査部120および水平走査部142により二次元走査される。二次元走査されたOCT測定光およびSLOレーザ光はそれぞれ、共通光学系を構成する対物レンズ130を介して被検眼12へ入射される。被検眼12で反射されたSLOレーザ光は、対物レンズ130、水平走査部142、リレーレンズ装置140、ビームスプリッタ147および垂直走査部120を経由して、SLOユニット18に入射される。また、被検眼12を経由したOCT測定光は、対物レンズ130、水平走査部142、リレーレンズ装置140、ビームスプリッタ147、垂直走査部148、フォーカス調整装置150、およびコリメートレンズ20Eを経由して、OCTユニット20へ入射される。
【0038】
水平走査部142及び垂直走査部120、148としては、例えば、レゾナントスキャナ、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、回転ミラー、ダボプリズム、ダブルダボプリズム、ローテーションプリズム、MEMSミラースキャナ、音響光学素子(AOM)等が好適に用いられる。本実施形態では、垂直走査部148としてガルバノミラーが用いられ、また、垂直走査部120としてポリゴンミラーが用いられている。なお、ポリゴンミラーや、ガルバノミラーなどの光学スキャナに替えて、MEMSミラースキャナなどの二次元光学スキャナを用いる場合には、入射光をその反射素子で二次元的に角度走査することが可能であるため、リレーレンズ装置140を無くしてもよい。
【0039】
対物レンズ130は、水平走査部142側から順に、第1レンズ群134と第2レンズ群132とを備え、少なくとも第2レンズ群132は全体として正のパワーを有する正レンズ群である。第1実施形態では、第1レンズ群134も全体として正のパワーを有する正レンズ群である。第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々は、少なくとも1つの正レンズを備える。第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々が複数のレンズを備える場合、第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々は全体として正のパワーを有すれば、負レンズを含んでもよい。
【0040】
また、本開示の対物レンズ130は、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の空間に第3レンズ群133を備えている。
【0041】
第1レンズ群134は、本開示の技術の「第1レンズ群」一例であり、第2レンズ群132は、本開示の技術の「第2レンズ群」の一例であり、第3レンズ群133は、本開示の技術の「第3レンズ群」の一例である。
【0042】
対物レンズ130を構成する第1レンズ群134と第2レンズ群132とは、対物レンズ130におけるレンズ面間の光軸AX上での最長の空気間隔によって隔てられている。その最長の空気間隔の空間に第3レンズ群133が配置される。
【0043】
そして結果として、第1レンズ群134と第3レンズ群133との間隔、及び第3レンズ群133と第2レンズ群132との空気間隔は、対物レンズ130全体のレンズ間隔のうち、最も大きな空気間隔と2番目に大きな空気間隔となる。中間群としての第3レンズ群133が第1レンズ群134と第2レンズ群132との間で、被検眼12側に配置される場合には、第1レンズ群134と第3レンズ群133との間隔が最大となり、第3レンズ群133が走査部に配置される場合には、第3レンズ群133と第2レンズ群132との間隔が最大となる。なお、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の位置に、パワーを有しないガラス板があったとしても、当該ガラス板は、第1レンズ群134及び第2レンズ群132の何れかに属するレンズとしては考慮されず、第1レンズ群134と第2レンズ群132とは、最長の空気間隔によって隔てられるとされる。この最長の空気間隔はダイクロイックミラーなどの光合成及び光分離機能を有する合成部を設けるために好都合である。
【0044】
なお、図示は省略したが、撮影光学系116Aは、固視標を提示する固視灯、カメラ、及び照明装置を含む光学モジュールを備えることが可能である。このような光学モジュールを、ビームスプリッタ等によって撮影光学系116Aの光路へ合成するように、配置することが可能である。
【0045】
撮影光学系116Aは、少なくとも被検眼12の眼底を含む後眼部を観察する後眼部観察光学系として機能する対物レンズ130を備える。撮影光学系116Aは、対物レンズ130の光路中に挿脱可能な前眼部観察用の光学モジュール(図示省略)を備え、前眼部観察用の光学モジュールを対物レンズ130の光路中に配置することで、後眼部観察光学系から前眼部観察光学系へ切り替えることが可能である。第1実施形態では、後眼部観察光学系を中心に撮影光学系116Aを説明し、前眼部観察用の光学モジュールを対物レンズ130の光路中に配置した前眼部観察光学系として機能する撮影光学系116Aの説明は省略する。
【0046】
図3に、被検眼12の後眼部を観察する後眼部観察光学系として機能する撮影光学系116Aを構成する対物レンズ130の具体的な構成の一例を示す。
【0047】
図2に示す水平走査部142及び垂直走査部148の走査中心位置は、図3示した走査中心位置Psに対応する。対物レンズ130は、この走査中心位置Psが被検眼12の瞳孔位置(瞳位置)P2に共役となるように、配置される。すなわち、走査部による走査中心位置Psが被検眼12の瞳孔位置P2と共役関係の瞳位置(以下、瞳共役位置P1と称する。)に一致するように構成される。SLO光学系において、垂直走査部120および水平走査部142により走査されるSLOレーザ光は、対物レンズ130を経由して、被検眼12の瞳孔位置P2を中心として2次元的に角度走査される。その結果、SLOレーザ光の集光点が、被検眼12の眼底において2次元走査される。また、OCT光学系においても同様に、垂直走査部148および水平走査部142により走査される測定光は、対物レンズ130を経由して、被検眼12の瞳孔位置P2を中心として二次元的に角度走査される。その結果、測定光の集光点が、被検眼12の眼底において二次元走査される。後眼部を観察する場合、SLOユニット18により眼底二次元画像が取得され、OCTユニット20により眼底断層画像が取得される。
【0048】
このような構成において重要な点は、SLO又はOCTの各走査部に供給される光は、平行光束であり、走査部による角度走査により、被検眼の瞳P2において平行光束が角度走査される。このために、対物レンズ130は全体としてアフォーカル系を構成していることが必要である。そして、被検眼の瞳P2での平行光束の走査角度は、走査部での走査角度と対物レンズ130の角倍率によって決まる。このため、対物レンズ130の近軸角倍率Mについては、1.5倍から5倍程度(1.5≦M≦5)が好ましい。
【0049】
中間群としての第3レンズ群133(G3)の中に、中間瞳位置P3が形成されている。図3に示した光線は、被検眼12の瞳P2に入射する最大角度までの5つの角度の走査光束の各主光線を示しており、これらの主光線が第3レンズ群133(G3)の中で交差していることから明らかである。
【0050】
具体的には、対物レンズ130は、走査部の走査中心位置Psを被検眼12の瞳(瞳孔位置P2)に転送する光学系として機能し、正の第1レンズ群134(G1)と、正の第2レンズ群132(G2)とを含む複数のレンズ群を備える。対物レンズ130は、第1レンズ群134と、第2レンズ群132との間に、走査部の走査中心位置Psと共役関係となる位置(以下、中間瞳位置P3と称する)が形成されるように構成される。すなわち、走査中心位置Psは、瞳共役位置P1であり、被検眼12の瞳孔位置P2及び中間瞳位置P3と共役とされ、第1レンズ群134は正のレンズ群とされ、第2レンズ群132も正のレンズ群とされる。図3に示す例では、第1レンズ群134(G1)は、走査部側で(例えば、直近の水平走査部142側)である瞳共役位置P1側から被検眼12側へ向かって順に、走査部側に凸面を向けた正メニスカスレンズL11、走査部側に凹面を向けた負レンズL12、走査部側に凹面を向けた正メニスカスレンズL13、及び走査部側に正のレンズ成分(負レンズL14と正レンズL15との接合レンズ)含む。なお、本明細書において「レンズ成分」とは、光軸上での空気との接触界面が2面であるレンズを意味し、1つのレンズ成分とは、1つの単レンズ、若しくは複数のレンズが接合されて構成された1組の接合レンズを意味する。第1レンズ群134のレンズ成分は、図示したように接合レンズとした場合は色収差補正のために有効であるが、使用する光の波長域が比較的狭い場合には単レンズとすることができる。
【0051】
第2レンズ群132(G2)は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、正レンズL21、走査部側に凸面を向けた正のメニスカス形状のレンズ成分(正レンズL22と負レンズL23との接合レンズ)、及び走査部側に凸面を向けた正メニスカスレンズL24を含む。第2レンズ群132のメニスカス形状のレンズ成分は、図示したように接合レンズとした場合は色収差補正のために有効であるが、使用する光の波長域が比較的狭い場合には単レンズとすることができる。
【0052】
第3レンズ群133(G3)は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、走査部側に正又は負のレンズ成分(例えば、正レンズL31と負レンズL32との接合レンズ)、走査部側に凸面を向けたメニスカスレンズL33、及び走査部側に凹面を向けたメニスカスレンズL34を含む。第3レンズ群133は、中間瞳位置P3を含むように形成される。瞳の共役点P3は、走査部側に凸面を向けた負メニスカスレンズL33と走査部側に凹面を向けたメニスカス負レンズL34との間、すなわち両レンズの凹面に挟まれた位置に形成する構成とすることが好ましい。
なお、第1レンズ群134(G1)と第2レンズ群132(G2)とは、共に正屈折力を有するが、中間群としての第3レンズ群133(G3)は、収差補正上極めて有効な中間瞳位置P3の近傍に強い発散面を有すればよく、第3レンズ群133(G3)としての屈折力は主には正が好ましいが、負とすることも可能である。
【0053】
ここで、撮影光学系116Aは、広角光学系を形成することによって、被検眼12の眼底において広い視野FOV(Field of View)での観察が実現される。視野FOVは、撮影装置14によって撮影可能な範囲を示している。視野FOVは、視野角として表現され得る。視野角は、第1実施形態において、内部照射角と外部照射角とで規定され得る。外部照射角とは、眼科装置110から被検眼12へ照射される光束の照射角を、瞳孔27を基準として規定した照射角である。また、内部照射角とは、被検眼12の眼底へ照射される光束の照射角を、眼球中心Oを基準として規定した照射角である。外部照射角と内部照射角とは、対応関係にある。例えば、外部照射角が120度の場合、内部照射角は約160度に相当する。
【0054】
広い視野FOVで被検眼12を観察するため、大きな広角(例えば、100度を超える超広角(UWF:Ultra Wide Field)の対物レンズ130を形成する場合、対物レンズ130の収差補正は重要であり、像面の湾曲、例えは、ペッツバール和が増大する傾向になる。そこで、第1実施形態では、超広角の対物レンズ130で、像面の湾曲、例えは、ペッツバール和を抑制することを可能とする光学系を提供する。
【0055】
具体的には、第1実施形態では、本開示の眼科用光学系の一例として、対物レンズ130を、各々正パワーの第1レンズ群134と第2レンズ群132とを備え、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に、光を発散する凹面を含む第3レンズ群133を配置する。すなわち、正の第1レンズ群134と、正の第2レンズ群132と、の間に、硝子硝材から空間へ光が発散する方向となる面(発散面)である凹面を含むようにすればよい。言い換えれば、対物レンズ130は、走査部側から被検眼12に向って順に、正の第1レンズ群134と、正の第2レンズ群132と、を備え、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に、光を発散する凹面を含む第3レンズ群133を配置する。
【0056】
このように対物レンズ130を形成することで、対物レンズ130のペッツバール和の増大を少なくとも抑制可能となる。
【0057】
ところで、広い視野FOVで被検眼12を観察するため、大きな広角(例えば、100度を超える超広角(UWF)の対物レンズ130を形成する場合、画角が増加するのに従ってレンズ径が増大する。また、レンズ径の増大に伴ってレンズ硝材の総量が増加し、対物レンズの全重量も増加する。さらに、対物レンズ130を形成する場合、対物レンズ130の収差補正は重要であり、対物レンズ130で対象とする瞳に対するレンズ系の作用が対物レンズ130の収差補正に大きく影響する。そこで、第1実施形態では、対物レンズ130の最大口径を抑制することを可能とする光学系を提供する。具体的には、第1実施形態では、本開示の眼科用光学系の一例として、対物レンズ130内に中間瞳を内蔵するように形成することで、対物レンズ130の最大口径を抑制する。
【0058】
第1実施形態では、対物レンズ130は、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に、被検眼12の瞳と共役関係の瞳と異なる中間瞳を形成し、かつ第3レンズ群133は、中間瞳の位置を含むように配置される。
【0059】
このように対物レンズ130が中間瞳を形成するように構成することで、対物レンズの結像性能を向上させつつ、対物レンズ130のレンズ径の増大を少なくとも抑制可能となり、レンズ径の増大による対物レンズ130の総重量を抑制することが可能となる。すなわち、対物レンズ130に中間瞳位置P3を含むように第3レンズ群133を配置することで、第3レンズ群133に含まれる凹面による収差補正機能を向上させることが可能となる。さらに、凹面を中間瞳位置に接近させることによって、凹面を瞳から離間させる場合と比べて、その凹面での発散作用をより強くすることが可能となり、ペッツバール和の補正がより容易となる。従って、最も被検眼側に近くて大口径になりがちな第2レンズ群で発生する諸収差を第1レンズ群134と第3レンズ群133との合成にて、容易に補正することが可能となり、UWF対物レンズ全体として小型でありながら、優れた性能を達成することが可能となる。
【0060】
ところで、対物レンズ130の構成において、走査部が設けられる被検眼の瞳の共役位置Psとの距離、そして被検眼瞳位置P2との距離(所謂、作動距離)は、長くすることが好ましい。一方、第3レンズ群133は、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に位置して、中間瞳位置P3を含むように配置される限り、位置についての制約は少なく、収差補正能力は高い。そこで、図3に例示する通り、中間瞳を形成するように構成する対物レンズ130は、第1レンズ群134に含まれる被検眼12から最も離れたレンズ面と、走査部の位置、(走査中心位置Psである瞳共役位置P1)との距離(以下、走査部側の作動距離という)をW1とし、第2レンズ群132の最も被検眼12側のレンズ面と被検眼の瞳孔位置P2との距離(以下、被検眼12側の作動距離という)をW2とし、第3レンズ群133に含まれる最も強い発散パワーを有する凹面と中間瞳位置P3との距離をDとするとき、下記条件式(1)を満足するように構成することが好ましい。
D<W1、 D<W2 ・・・(1)
【0061】
すなわち、走査部が配置される瞳共役位置P1と被検眼瞳孔P2との間に、瞳共役位置P1とは異なる瞳共役位置である中間瞳位置P3を形成し、中間瞳位置P3と中間瞳位置P3に最も近い凹面S3までの間隔Dを、走査部側の作動距離W1と被検眼12側の作動距離W2のどちらか小さい値よりもさらに小さくする。
このように構成することにより、対物レンズ130の結像性能をより向上させることが可能となる。
【0062】
対物レンズ130の収差を考慮する場合、ペッツバール像面を最適にすることが好ましい。この場合、レンズ面のペッツバール曲率が影響する。
そこで、図3に例示する通り、対物レンズ130は、第1レンズ群134中で走査部に最も近い凹面(発散面)S1のペッツバール曲率をC1、第2レンズ群132中の被検眼に最も近い凹面(発散面)S2のペッツバール曲率をC2とし、第3レンズ群133の発散パワーを有する凹レンズ面S3のペッツバール曲率をC3とするとき、下記条件式(2)を満足するように構成することが好ましい。
C3<C1、C3<C2 ・・・(2)
【0063】
ここで、上記ペッツバール曲率Cは、その面の曲率半径R、その面の入射側の屈折率Nとその面の射出側の屈折率N‘とするとき、下記式(3)で計算される。
C={(1/N‘)-(1/N)}/(-R) ・・・(3)
【0064】
すなわち、第3レンズ群133に含まれるレンズにおける凹面のうち最も強い発散パワーを有する凹面S3のペッツバール曲率C3を、第1レンズ群134に含まれるレンズにおける最も走査部に近い発散パワーを有する凹面S1のペッツバール曲率C1及び第2レンズ群132に含まれるレンズにおける最も被検眼12に近い発散パワーを有する凹面S2のペッツバール曲率C2のどちらか負に大きい方よりもさらに負に大きくする。
【0065】
このように構成することにより、対物レンズ130の結像性能をより向上させることが可能となる。すなわち、対物レンズ130に瞳共役像を有する第3レンズ群133を設けることによって、この第3レンズ群133における瞳共役点の近傍に強い発散面S3を設けることができる。また、ペッツバール曲率C3を上記のように構成することにより、瞳共役像を有する第3レンズ群133を具備しない対物レンズと比べて、対物レンズ130を含む対物光学系全体としてのペッツバール和を小さくすることができ、極めて優れた結像性能を達成することが可能となる。
【0066】
対物レンズ130の最大口径を考慮する場合、被検眼側の第2レンズ群132に含まれるレンズが大きく影響する。一方、第3レンズ群133によって対物レンズ130内に中間瞳を内蔵するように形成する場合、第3レンズ群133に含まれるレンズの口径が、第2レンズ群132より大きくなったのでは、対物レンズ130の最大口径を抑制するボトルネックが第3レンズ群133に含まれるレンズの口径になってしまい、対物レンズ130の最大口径を抑制する場合の障害となる。
そこで、対物レンズ130は、第1レンズ群134に含まれるレンズの最大有効径をφ1とし、第2レンズ群132に含まれるレンズの最大有効径をφ2とし、第3レンズ群133に含まれるレンズの最大有効径をφ3とするとき、下記条件式(4)を満足するように構成することが好ましい。
φ3、φ1<0.7・φ2 (4)
【0067】
すなわち、第1レンズ群134に含まれるレンズの最大有効径φ1と第3レンズ群133に含まれるレンズの最大有効径φ3とは、共に、第2レンズ群132に含まれるレンズの最大有効径をφ2の70%よりも小さい。
【0068】
このように構成することにより、対物レンズ130を小型化、及び軽量化することが可能となる。
【0069】
以上説明した第1実施形態によれば、上述の条件を満たす対物レンズ130を構成することで、走査部の走査中心位置Ps(瞳共役位置P1)は、対物レンズ130により被検眼の瞳(瞳孔位置P2)へ転送される。また、対物レンズ130では第3レンズ群133の中に瞳の共役点Po(中間瞳位置P3)が形成され、共役点Po(中間瞳位置P3)は走査中心位置Ps(瞳共役位置P1)とも共役である。この共役点Po(中間瞳位置P3)における凹面(すなわち発散面)は、対物レンズ130全体としての収差補正に極めて有効(ペッツバール和の補正に有効)であり、対物レンズ130の結像性能を格段に向上させることが可能である。また、第1レンズ群134、及び第2レンズ群132の口径を小さくでき、超広角(UWF)でありながら対物レンズ130全体を小型化、及び軽量化することが可能となる。
【0070】
なお、第1実施形態では、水平走査部142及び垂直走査部148により光を走査する場合を説明したが、水平走査部142及び垂直走査部148の一例としてポリゴンミラー又はガルバノミラーを挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えば、走査光をY方向に走査可能な他の光学素子を用いてもよく、一例としては、MEMS(Micro-electromechanical system)ミラー、回転ミラー、プリズム、又は共振ミラーが挙げられる。
【0071】
また、第1実施形態における走査光の走査は、X方向とY方向とを入れ替えても同様の走査が行えることは言うまでもない。
【0072】
<好適な実施例>
次に、本開示の技術の対物レンズ130の実施例について説明する。
【0073】
(実施例1)
図4に、実施例1に係る対物レンズ130のレンズ構成の一例を示す。対物レンズ130は、レンズL11~L34を含む屈折光学系である。
図4では、走査部の走査中心位置Psと共通にされる瞳共役位置P1、被検眼12の瞳孔位置(瞳位置)P2、及び瞳の共役点Poである中間瞳位置P3と共に示す。なお、図中のP1、P2及びP3は光軸方向の位置を示すために図示しているのであり、形状や大きさを示しているわけではない。対物レンズ130は、走査部側から順に、第1レンズ群134(G1)、及び第2レンズ群132(G2)を含む。そして、第1レンズ群134(G1)と、第2レンズ群132(G2)との間に、第3レンズ群133(G3)が配置される。上述のとおり、中間群としての第3レンズ群133(G3)の中に、中間瞳位置P3が形成されている。図4に示した光線は、被検眼の瞳P2に入射する最大角度の走査光束の主光線を示しており、この光線が第3レンズ群133(G3)の中で交差していることから明らかである。
【0074】
以下の説明では、第1レンズ群134を第1レンズ群G1と称し、第2レンズ群132を第2レンズ群G2と称し、第3レンズ群133を第3レンズ群G3と称する場合がある。なお、図4に示す例では、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間で空気間隔によって隔てられた空間に第3レンズ群G3が配置されており、対物レンズ130内で第3レンズ群G3と第2レンズ群G2との空気間隔が最長の空気間隔になっている。
【0075】
第1レンズ群G1は、走査部側である瞳共役位置P1側から被検眼12側へ向かって順に、走査部側に凹面を向けた正メニスカスレンズL11、走査部側に凹面を有する負レンズL12、正レンズL13、正レンズL14及び負レンズL15を含む。レンズL12とレンズL13とは互いに接合されて走査部側に凹面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。また、レンズL14とレンズL15とは互いに接合されて走査部側に凸面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。
【0076】
第2レンズ群G2は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、正レンズL21、正レンズL22、負レンズL23、及び、走査部側に凸面を向けた正メニスカスレンズL24を含む。レンズL22とレンズL23とは互いに接合されて被検眼12側に凹面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。
【0077】
第3レンズ群G3は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、正レンズL31、負レンズL32、走査部側に凸面を向けたメニスカスレンズL33、及び走査部側に凹面を向けたメニスカスレンズL34を含む。レンズL31とレンズL32とは互いに接合されてメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。ここで、上述した第3レンズ群G3の最も強い発散パワーを有する凹レンズ面S3は負レンズL33の被検眼側の凹面である。
【0078】
表1に、実施例1のレンズデータを示す。レンズデータでは、左の欄から順に、面番号(No.)、曲率半径、光軸上の面間隔、d線(波長587.56nm)基準の屈折率(Nd)、d線基準のアッベ数(vd)を示している。レンズデータの第1面は、走査部の走査中心位置Psと共通にされる瞳共役位置P1であり、表では仮想平面(曲率半径がinfと表記)の「絞り」として表記している。面間隔の欄の最終行の値は表中の最も被検眼側のレンズ面から瞳孔位置(瞳位置)P2までの光軸上の距離を示す。なお、対物レンズ130は、アフォーカル系であるため、この表では、物体を無限遠に配置した場合を想定して表記している。また、第7面、第11面、第15面、第20面は、対物レンズ130の性能評価用の仮想平面であり、通過する光線に何ら影響を及ぼすことはない。
【表1】

【0079】
図5に、表1の諸元により構成された対物レンズの横収差の図を示す。図5に示す横収差図では、縦軸は像高を示し、実線は中心波長850.0nmを示し、破線は633.0nmを示し、一点鎖線は532.0nmを示し、二点鎖線は486.1327nmを示している。
図5に示す横収差図から明らかなように、実施例1の対物レンズ130は、可視光波長域の光及び近赤外域の光を含む広い波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、良好に補正されていることが確認される。
【0080】
(実施例2)
図6に、実施例2に係る対物レンズ130のレンズ構成の一例を示す。なお、実施例2は、実施例1と同様の構成のため、同一部分は同一符号を付し詳細な説明を省略する。
【0081】
第1レンズ群G1は、走査部側である瞳共役位置P1側から被検眼側へ向かって順に、走査部側に凸面を向けた正のメニスカスレンズL11、被検眼12側に凹面を持つ負レンズL12、走査部側に凹面を向けた正のメニスカスレンズL13、走査部側に凸面を向けた正のメニスカスレンズL14、及び正レンズL15を含む。レンズL14とレンズL15とは互いに接合されて両凸形状のレンズ成分を形成している。
【0082】
第2レンズ群G2は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、正レンズL21、正レンズL22、負レンズL23、及び、走査部側に凸面を向けた正メニスカスレンズL24を含む。レンズL22とレンズL23とは互いに接合されて被検眼12側に凹面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。
【0083】
第3レンズ群G3は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、正レンズL31、走査部側に凹面を向けた負メニスカスレンズL32、走査部側に凸面を向けたレンズL33、及び被検眼12側に凸面を向けたメニスカスレンズL34を含む。レンズL31とレンズL32とは互いに接合されて正レンズ成分を形成している。ここで、上述した第3レンズ群G3の最も強い発散パワーを有する凹レンズ面S3は負レンズL33の被検眼側の凹面である。
【0084】
表2に、実施例2のレンズデータを示す。
【表2】

【0085】
図7に、表2の諸元により構成された対物レンズの横収差の図を示す
図7に示す横収差図から明らかなように、実施例2の対物レンズ130は、可視光波長域の光及び近赤外域の光を含む広い波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、良好に補正されていることが確認される。
【0086】
(実施例3)
図8に、実施例3に係る対物レンズ130のレンズ構成の一例を示す。なお、実施例3は、実施例1と同様の構成のため、同一部分は同一符号を付し詳細な説明を省略する。
【0087】
第1レンズ群G1は、走査部側である瞳共役位置P1側から被検眼12側へ向かって順に、走査部側に凹面を向けた正メニスカスレンズL11、負レンズL12、正レンズL13、正レンズL14及び走査部側に凹面を向けた負レンズL15を含む。レンズL12とレンズL13とは互いに接合されて走査部側に凹面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。また、レンズL14とレンズL15とは互いに接合されて走査部側に凸面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。
【0088】
第2レンズ群G2は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、正レンズL21、正レンズL22、負レンズL23、及び、走査部側に凸面を向けた正メニスカスレンズL24を含む。レンズL22とレンズL23とは互いに接合されて走査部側に凸面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。
【0089】
第3レンズ群G3は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、正レンズL31、負レンズL32、走査部側に凹面を向けたメニスカスレンズL33、及び走査部側に凹面を向けたメニスカスレンズL34を含む。レンズL31とレンズL32とは互いに接合されて走査部側に凸面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。ここで、上述した第3レンズ群G3の最も強い発散パワーを有する凹レンズ面S3はメニスカスレンズL33の被検眼側の凹面である。
【0090】
表3に、実施例3のレンズデータを示す。
【表3】

【0091】
図9に、表3の諸元により構成された対物レンズの横収差の図を示す
図9に示す横収差図から明らかなように、実施例3の対物レンズ130は、可視光波長域の光及び近赤外域の光を含む広い波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、良好に補正されていることが確認される。
【0092】
(実施例4)
図10に、実施例4に係る対物レンズ130のレンズ構成の一例を示す。なお、実施例4は、実施例1と同様の構成のため、同一部分は同一符号を付し詳細な説明を省略する。
【0093】
第1レンズ群G1は、走査部側である瞳共役位置P1側から被検眼12側へ向かって順に、走査部側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11、正レンズL12、負レンズL13、正レンズL14及び正レンズL15を含む。レンズL11とレンズL12とは互いに接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。また、レンズL15の被検眼12側の面である第9面は、非球面で形成している。
【0094】
第2レンズ群G2は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、正レンズL21、正レンズL22、負レンズL23、及び、走査部側に凸面を向けた正メニスカスレンズL24を含む。レンズL22とレンズL23とは互いに接合されて走査部側に凸面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。
【0095】
第3レンズ群G3は、走査部側から被検眼側へ向かって順に、正レンズL31、走査部側に凹面を向けた負メニスカスレンズL32、走査部側に凸面を向けたメニスカスレンズL33、負レンズL34、及び正レンズL35を含む。レンズL31とレンズL32とは互いに接合されて両凸形状の正レンズ成分を形成している。レンズL34とレンズL35とは互いに接合されて走査部側に凹面を向けたメニスカスレンズ形状のレンズ成分を形成している。ここで、上述した第3レンズ群G3の最も強い発散パワーを有する凹レンズ面S3は負レンズL33の被検眼側の凹面である。
【0096】
表4に、実施例4のレンズデータを示す。
【表4】

【0097】
表4で表記された非球面は、光軸に垂直な方向の高さをhとし、非球面の頂点における接平面から高さhにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をzsとし、近軸の曲率半径の逆数をcとし、円錐係数をkとし、4次の非球面係数をA、6次の非球面係数をB、8次の非球面係数をC、10次の非球面係数をD、12次の非球面係数をEとしたとき、下に示す式で表されるものとする。
zs=(c・h)/〔1+{1-(1+k)・h・c1/2
+A・h+B・h+C・h+D・h10+E・h12+・・・
【0098】
表5に、実施例3の非球面の非球面係数を示す。表中、非球面係数A~を次数で表記している。表中の「E-n」(nは整数)は「×10-n」を意味する。
【表5】

【0099】
図11に、表4及び表5の諸元により構成された対物レンズの横収差の図を示す。
図11に示す横収差図から明らかなように、実施例4の対物レンズ130は、可視光波長域の光及び近赤外域の光を含む広い波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、良好に補正されていることが確認される。
【0100】
次に、上述の実施例1~実施例4の各実施例における対物レンズに対し、上述の条件式の適合について説明する。
表6に、実施例1~実施例4の各々について、上述の条件式に関係する値を示す。
【表6】

【0101】
表6から明らかなように、実施例1~実施例4の対物レンズは、上述の条件式に適合していることが明らかである。
【0102】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態は、第1実施形態に係る撮影光学系116Aの主要部である対物レンズ130を、アタッチメント光学系として形成し、撮影機能を有する携帯端末に着脱可能としたものである。第2実施形態の構成は、第1実施形態と略同様であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、主として異なる部分を説明する。
【0103】
図12に、第2実施形態に係るアタッチメント光学系300を、撮影機能を有する携帯端末400に着脱可能とする構成の一例を示す。
【0104】
図12に示すように、携帯端末400は、撮影機能を実現するための撮影部402を備えている。撮影部402は、携帯端末400の備えられた図示しない操作部のユーザ操作によって、風景など無限遠の被写体を撮影する通常撮影モードで作動するようになっている。すなわち、携帯端末400の撮影部402は、携帯端末用レンズ404(図13)を備え、通常撮影モードによる作動で、平行光が入射されると撮像素子406(図13)に結像する構成になっている。
【0105】
図13に、第2実施形態に係るアタッチメント光学系300の構成の一例を示す。図13では、携帯端末400にアタッチメント光学系300を取り付けた状態が示されている。アタッチメント光学系300は、上述の対物レンズ130を構成する第1レンズ群G1、第2レンズ群G2及び第3レンズ群G3を備えている。これらの各レンズ群の構成と機能については、第1実施形態と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0106】
第2実施形態に係るアタッチメント光学系300は、第1実施形態に係る対物レンズ130に、照明光を照射する照明部304、及び照明部からの照明光を光軸AXに沿う光路に案内するハーフミラー302を備えた点が異なる。照明部304は、被検眼12を照明する照明光を照射する。ハーフミラー302は、照明部304からの照明光を光軸AXに沿う光路に案内する。
【0107】
なお、携帯端末400が被写体を照明する被写体照明部を備える場合、アタッチメント光学系300は、照明部304、及びハーフミラー302に代えて、被写体照明部より照射される照明光を採光し、被写体照明部からの照明光を光軸AXに沿う光路に案内する光学系を備えればよい。また、照明部304は、アタッチメント光学系300に備えることなく、独立した構成としてもよい。
【0108】
アタッチメント光学系300は、アタッチメント光学系300と携帯端末400とを着脱可能に構成するため、携帯端末400にアタッチメント光学系300を取り付ける取付部306を備えている。この取付部306をアタッチメント光学系300が備えることで、携帯端末400に対してアタッチメント光学系300を、着脱可能な構成とすることが可能となる。
【0109】
アタッチメント光学系300に含まれる第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2は、被検眼12の瞳と共役関係の瞳を形成する対物光学系301として機能する。対物光学系301により形成される被検眼12の瞳と共役関係の瞳の位置(瞳共役位置P1)に、携帯端末400の撮影部402の入射瞳が位置するように、取付部306によって、アタッチメント光学系300と携帯端末400とが固定される。
このように構成することで、携帯端末400にアタッチメント光学系300を取り付けるのみの簡単な構成で、被検眼12の眼底画像を撮影することが可能となる。
【0110】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態を説明する。
第1実施形態では、被検眼12の後眼部を観察する後眼部観察光学系として機能する撮影光学系116Aを主に説明した。第3実施形態は、第1実施形態に係る後眼部観察光学系として機能する撮影光学系116Aに、前眼部観察用の光学モジュールを挿入することで、被検眼12の前眼部を観察する前眼部観察光学系として機能するように切替可能に形成したものである。第3実施形態の構成は、第1実施形態と略同様であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、主として異なる部分を説明する。
【0111】
図14に、第3実施例に係る撮影光学系116Aにおける対物レンズ130の構成の一例を示す。第3実施形態に係る撮影光学系116Aは、後眼部観察光学系と前眼部観察光学系とに切替可能な対物レンズ130を備える。対物レンズ130は、走査部(例えば水平走査部142)側から順に、第1レンズ群134と第2レンズ群132とを備え、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の空間に第3レンズ群133を備えている。これらの第1レンズ群134(G1)、第2レンズ群132(G2)及び第3レンズ群133(G3)の構成は、第1実施形態と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0112】
撮影光学系116Aは、対物レンズ130の光路中に挿脱可能な前眼部観察用の光学モジュール136を備え、前眼部観察用の光学モジュールを対物レンズ130の光路中に配置することで、後眼部観察光学系から前眼部観察光学系へ切り替えることが可能である。具体的には、図14に示されるように、前眼部観察用の光学モジュール136が、対物レンズ130の光路中、例えば、対物レンズ130を構成する正屈折力の第1レンズ群134(G1)と正屈折力の第2レンズ群132(G2)との間の光路中に挿入されている。好ましくは、図14に示すように、第2レンズ群132(G2)と第3レンズ群133(G3)との間の光路中に挿入される。
【0113】
光学モジュール136は、その内部に切換レンズとしての負のパワーを有するレンズ162を含む光学素子を有する。レンズ162が対物レンズ130の光軸上に配置されると、レンズ162は、後眼部観察光学系300を前眼部観察光学系400へ切り換えるための切換えレンズとして作用する。レンズ162が対物レンズ130の光路に挿入された場合、走査部(例えば水平走査部142)の走査位置(走査中心位置Ps)と被検眼12の瞳孔位置P3とは共役にならず、走査部の走査位置からの平行光は前眼部に集光される。レンズ162を通過する光束の径は、第1レンズ群134、及び第2レンズ群132の各々を通過する光束径よりも小さい。よって、レンズ162の有効径は対物レンズ130を構成するレンズ群の有効径に比べて小さい。そのため、光学モジュール136を小型に構成できる。なお、光学素子としては、負パワーのレンズ162に限定されず、レンズ162に代えて、例えば、フレネルレンズ、DОE(Diffractive Optical Element)等の光学部材が用いられてもよい。
【0114】
より具体的には、撮影光学系116Aは、オペレータ(例えば、眼科医)によりマニュアルまたは自動で、後眼部観察用の観察光学系の光路である対物レンズ130の光路中に、前眼部観察用の光学モジュール136を挿脱可能とする構成になっている。光学モジュール136が対物レンズ130の光路中に配置されない場合、観察光学系として、後眼部観察光学系が構成され、眼科装置110はそれにより被検眼12の後眼部の画像を取得する。一方、光学モジュール136が対物レンズ130の光路中に挿入された場合、観察光学系として、前眼部観察光学系が構成され、眼科装置110はそれにより被検眼12の前眼部の画像を取得する。
【0115】
なお、前眼部観察用の光学モジュール136には、前眼部観察時に使用される視線方向を追尾するアイ・トラッキングモジュール、被検眼12の視線方向を誘導する固視灯、カメラ、及び照明装置を備えるようにしてもよい。
【0116】
以上説明したように、第3実施形態によれば、後眼部観察用の観察光学系として機能する対物レンズ130の光路に、前眼部観察用の光学モジュール136を挿脱することで、撮影光学系116Aを、被検眼12の前眼部を観察する前眼部観察光学系と、後眼部を観察する後眼部観察光学系とに瞬時に切替可能となる。
【0117】
<好適な実施例>
次に、第3実施形態に係る対物レンズ130の実施例について説明する。
【0118】
(実施例5)
図15に、実施例5に係る対物レンズ130のレンズ構成の一例を示す。なお、実施例5は、実施例2と同様の構成のため、同一部分は同一符号を付し詳細な説明を省略する。実施例5は、実施例2の構成において、第2レンズ群132と第3レンズ群133との間に、前眼部観察用の光学モジュール136に含まれるレンズ136を追加した点が相違する。
【0119】
実施例5では、第2レンズ群G2と第3レンズ群133との間、具体的には、正レンズL21と、負レンズL34との間に、負レンズL41が配置されている。
【0120】
表7に、実施例5のレンズデータを示す。
【表7】

【0121】
図示は省略したが、実施例5の対物レンズ130は、後眼部観察用の観察光学系として機能する対物レンズ130の光路に、前眼部観察用の光学モジュール136を挿入した場合であっても、前眼部撮影の波長域(可視光波長域または近赤外域)の光に対して収差は良好に補正される。
【0122】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態を説明する。第4実施形態の構成は、上記実施形態と略同様であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0123】
上記実施形態では、被検眼12を観察するための撮影光学系116Aに含まれる対物レンズ130は、可視光波長域の光及び近赤外域の光を含む広い波長域の光に対して収差のばらつきを抑制可能である。従って、上記各実施形態に係る対物レンズ130は、SLO及びOCTの各々の専用の眼科装置への適用が可能である。加えて、対物レンズ130は、SLO及びOCTの両者の機能を有する合成装置において、SLO及びOCTに共通の対物レンズとして適用(兼用)することが可能である。第4実施形態は、SLOとOCTとに共通に対物レンズ130を用いたものである。
【0124】
SLO用の光学系とOCT用の光学系とでは、用いる光の波長が異なるため、レンズ構成を各々に合わせて調整することが好ましい。そこで、第4実施形態では、対物レンズ130を共通に用いるため、対物レンズを2群のレンズ群で構成し、SLO用の対物レンズを基準として、一方のレンズ群(例えば、第1レンズ群G1)によって、SLO用の光学系とOCT用の光学系との相違を吸収する。具体的には、対物レンズを2群のレンズ群で構成し、前群のレンズ群(第2レンズ群G2)を共通に用い、後群のレンズ群(第1レンズ群G1)の構成を変更することで、SLO用のリレーレンズ装置からOCT用のリレーレンズ装置として機能するように構成する。
【0125】
図16に、第4実施形態に係る撮影光学系116Aにおける対物レンズ130の構成の一例を示す。
図16に示すように、第4実施形態に係る対物レンズ130は、光路中に、略平行な光を伝播する領域を形成し、形成された領域に光路を分離したり合成する分離合成素子(例えばダイクロイックミラー)DM1を配置する。図16に示す例では、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3との間を平行系に光学系を形成している。この場合、第1レンズ群G1は、第1レンズ群G1から第3レンズ群G3に向う光が平行系になるようにレンズ群を形成する。
【0126】
また、第3レンズ群G3は、第1レンズ群G1からの平行系の光を中間瞳位置P3を含むようにレンズ群を形成する。具体的には、第3レンズ群G3は、走査部側から順に、レンズ群G31、レンズ群G32、及びレンズ群G33を含む。レンズ群G31は、第1レンズ群G1からの平行系の光から第3レンズ群G3の内部に中間瞳を形成する機能を有するレンズ群である。レンズ群G32は、中間瞳位置P3又は近傍に凹面を有するレンズ群である。レンズ群G33は、第2レンズ群へ向けて中間瞳を転送する機能を有するレンズ群である。
【0127】
例えば、図16に示す光軸AXを含む光路をSLOの光路に用い、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3との間の領域に分離合成素子DM1を配置して、OCTの光路に用いる。このようにすることで、SLOとOCTとの2つの光学系を合成することが可能となる。
このように、第4実施形態では、対物レンズ130の光路中に、略平行な光を伝播する領域を形成し、形成された領域に光路を分離する分離合成素子DM1を配置することで、SLOとOCTとの2つの光学系を合成することが可能となる。
【0128】
第4実施形態では、略平行な光を伝播する領域にダイクロイックミラー等によりOCTの光路に用いる場合を説明したが、略平行な光を伝播する領域は、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3との間の領域に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態に係る対物レンズ130の第1レンズ群G1から第3レンズ群G3との間の何れかの空間に分離合成素子を設けてもよい。また、第4実施形態では、略平行な光を伝播する領域に分離合成素子DM1を配置する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、第3レンズ群G3におけるレンズ群G31とレンズ群G32との間の領域に分離合成素子DM2を配置してもよく、レンズ群G32とレンズ群G33との間の領域に分離合成素子DM3を配置してもよく、及び第3レンズ群G3と第2レンズ群G2との間の領域に分離合成素子DM4を配置してもよい。
【0129】
図16に示す構成において、光軸AXを含む光路をOCTの光路に用い、分離合成素子DM1を配置して、SLOの光路に用いも良いことは勿論である。
【0130】
なお、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に光学素子(分離合成素子DM4)を配置すると、可視光域でフレアを生じる場合があるので、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に光学素子(分離合成素子DM4)を配置して光路を分離する場合は、OCTの光路として用いることが好ましい。
【0131】
このように第4実施形態によれば、対物レンズ130を、SLO及びOCTの両者の機能を有する合成装置に兼用することが可能である。
【0132】
〔第5実施形態〕
次に、第5実施形態を説明する。第5実施形態の構成は、第4実施形態と略同様であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0133】
眼科装置では、固視灯により固視標を提示する固視標投影光学系、及びカメラ等で被検眼12の位置を撮影する被検眼位置撮影光学系を備える場合がある。これら固視標投影光学系、及び被検眼位置撮影光学系等の観察光学系は、結像性能として主には可視域を適切に補正することで十分である。一方、本開示の対物レンズ130では、SLO用の可視域とOCT用の近赤外域の両方を含む広い波長域での収差補正が、極めて良好になされる。この場合に、対物レンズ130中の瞳共役位置P3より被検眼12側において主に可視域での収差補正を行い、瞳共役位置P3より走査部側の光学系により近赤外域での収差補正を行うように構成することができる。すなわち、収差補正について波長域を複数に分離して各々において異なる波長域の収差補正を行うことが可能となる。例えば、中間瞳共役位置P3より被検眼12側の光学系として第2レンズ群G2を適用し、中間瞳共役位置P3より走査部側の光学系として第1レンズ群G1を適用する。そして、固視標投影光学系、及び被検眼位置撮影光学系等の観察光学系の光路を合成する場合は、光路合成用プリズムを、第3レンズ群G3中において、瞳共役位置P3の前後の領域(図16に示す分離合成素子DM2又はDM3を配置する領域)に配置することが可能になる。可視域での収差の影響をより考慮する場合には光路を合成する光路合成用プリズムを分離合成素子DM3を配置する領域に配置することが好ましい。また、被検眼位置撮影光学系で赤外光を用いる場合には、図16中の走査部側のDM1の位置に光路合成用プリズムを設けることが有効となる。いずれにしろ、被検眼瞳P2と走査部の配置される瞳共役位置P1との間に光路合成用プリズムを設ける場合には、3群構成の対物レンズの各群での収差補正機能のバランスとの調整が重要である。
【0134】
このように第5実施形態によれば、眼科装置110に、固視標投影光学系、及び被検眼位置撮影光学系等の観察光学系を簡単な構成で備えることが可能となる。
【0135】
〔第6実施形態〕
次に、第6実施形態を説明する。第6実施形態の構成は、上記実施形態と略同様であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0136】
上記実施形態では、被検眼12を観察するための撮影光学系116Aに含まれる対物レンズ130は、可視光波長域の光及び近赤外域の光を含む広い波長域の光に対して収差のばらつきを抑制可能である。従って、上記各実施形態に係る対物レンズ130は、SLO専用の眼科装置への適用が可能であり、SLO専用の眼科装置を、SLO用の眼科装置からOCT用の眼科装置へ切り替えて用いることが可能である。第6実施形態は、SLO専用の眼科装置を、SLO用の眼科装置からOCT用の眼科装置へ切り替え可能な構成としたものである。
【0137】
図17に、第6実施例に係る眼科装置110Aの構成の一例を示す。
図17に示すように、第6実施形態に係る眼科装置110Aは、SLOユニットの走査光をリレーするSLO専用のリレーレンズ装置140と、対物レンズ130とを備え(図2も参照)、SLO専用機として形成されている。リレーレンズ装置140は、眼科装置110Aから挿脱可能なリレーユニット140Aに配置されている。すなわち、リレーユニット140Aを眼科装置110Aのリレーレンズ取付部(図示省略)に取り付けることによって、眼科装置110AはSLO専用機として機能する。
【0138】
一方、眼科装置110Aのリレーレンズ取付部(図示省略)には、リレーユニット140Bを取り付けることが可能である。リレーユニット140Bは、リレーレンズ装置140の光路中に光を分離及び合成するダイクロイックミラーDM5が配置される。また、リレーユニット140Bには、ダイクロイックミラーDM5により分離される光路に、OCTユニットが配置される。従って、リレーユニット140Bを眼科装置110Aのリレーレンズ取付部(図示省略)に取り付けることによって、眼科装置110AはSLO機として機能すると共に、OCT機としても機能することが可能となる。
【0139】
このように、第6実施形態によれば、SLO専用機のリレーレンズ装置140を、ダイクロイックミラーDM5を内蔵したリレーレンズ装置140と同一成分のリレーレンズ141に交換し、OCTユニットを装着することによって、SLOとOCTとの両者の装置として作動することが可能になる眼科装置となる。
【0140】
また、対物レンズ130を共通とし、リレーレンズ装置140とリレーレンズ141とのレンズ構成を共通にして、SLO専用機から、SLOとOCTとの両方が可能になる眼科装置を構成することによって、大幅なコスト削減が可能になる。
【0141】
なお、上記では、リレーユニットをリレーレンズ取付部(図示省略)に取り付ける場合を説明したが、リレーレンズ装置140を複数のレンズ群で形成し、リレーレンズ装置140を眼科装置110Aに固定し、隣り合うレンズ群の空間に、ダイクロイックミラーDM5を挿脱するように構成してもよい。この場合、リレーレンズ装置140の交換が不要のため、さらにコスト削減することが可能になる。
【0142】
このように、本開示の技術は、SLO専用機として機能する眼科装置から、SLOとOCTとの両方が可能になる眼科装置を構成する機能を含むので、次の第1技術を含む。
(第1技術)
第1光源からの光束を角度走査するための走査部を有する第1光路と、
前記走査部による走査光束を被検眼に導く対物レンズと、
前記走査部と前記対物レンズとの間に配置され、前記走査部からの走査光束を前記対物レンズへ導くリレーレンズと、を備え、
前記リレーレンズは、2つのレンズ群を備え、前記2つのレンズ群の間に挿脱可能な光路合成・分離用の光学素子を含み、前記光路合成・分離用の光学素子が光路中に配置される状態で前記光路合成・分離用の光学素子の反射光路上に前記第1光源とは異なる第2光源からの光束を前記対物レンズに導く第2光路が構成されている
眼科装置。
【0143】
なお、ダイクロイックミラーDM5は、上記第1技術の光路合成・分離用の光学素子の一例である。
【0144】
また、第1技術の光学系は、収差補正技術を含むので、次の補足技術1及び補足技術2を含む。
(第1技術の補足技術1)
前記リレーレンズと前記対物レンズとを含む第1の合成光学系において、前記第1光源からの光束に対して第1の収差補正がなされており、前記リレーレンズを構成する2つのレンズ群のうちの前記対物レンズ側のレンズ群と前記対物レンズとを含む第2の合成光学系において、前記第2光源からの光束に対して前記第1の収差補正とは異なる第2の収差補正がなされている
第1技術の眼科装置。
【0145】
(第1技術の補足技術2)
前記対物レンズは、前記第1光源からの光束と前記第2光源からの光束とに対して収差補正がなされており、前記第1光路のリレーレンズと前記第2光路のリレーレンズとは共通のレンズ成分である
第1技術の眼科装置。
【0146】
〔第7実施形態〕
次に、第7実施形態を説明する。第7実施形態の構成は、上記実施形態と略同様であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0147】
本開示の技術は、眼科装置として、可視域の波長を主とする光を用いるSLO用の光学系と、近赤外域の波長を主とする光を用いるOCT用の光学系と、被検眼のアライメントに用いるアライメント光学系との各々の光学系の少なくとも1つの構成を含む。なお、アライメント光学系は、固視標投影光学系及び被検眼位置撮影光学系を含む。これらの各光学系は、レンズ系に対する収差補正がSLO光学系やOCT光学系とは異なる場合がある。そこで、第7実施形態では、対物レンズにおける収差補正を考慮した眼科装置の構成例を説明する。
【0148】
(第1構成例)
第1構成例としての眼科装置は、少なくとも可視域における色収差補正がされた対物レンズを備えたSLO用の眼科装置である。この可視域での色収差補正がなされた対物レンズを含む光学系を説明する。
【0149】
図18に、第1構成例に係る眼科装置における撮影光学系116Bの構成の一例を示す。
図18に示すように、第1構成例に係る眼科装置は、SLO専用機として機能する。具体的には、撮影光学系116Bは、被検眼12側から順に、可視域での色収差補正がなされた対物レンズ1130、水平走査部(図18ではHスキャナとも表記)142、リレーレンズ装置140、及びポリゴンミラー等の垂直走査部(図18ではVスキャナとも表記)120を備えている。
【0150】
水平走査部142は、リレーレンズ装置140を介して入射したSLOのレーザ光を水平方向に走査する光学スキャナである。垂直走査部120は、SLOユニット18から入射したレーザ光を垂直方向に走査する光学スキャナである。本実施形態では、水平走査部142の一例としてガルバノミラーが用いられ、また、垂直走査部120の一例としてポリゴンミラーが用いられている。
【0151】
リレーレンズ装置140は、正のパワーを有する2つのレンズ群144、146を備える。2つのレンズ群144、146により、垂直走査部120の位置と水平走査部142の位置とが共役になるように、リレーレンズ装置140が構成されている。より具体的には、両走査部の角度走査の中心位置が共役になるように、リレーレンズ装置140が構成されている。また、リレーレンズ装置140は、被検眼12の眼底と共役の位置を含むように構成されている。さらに、垂直走査部120の位置と水平走査部142の位置とは、被検眼12の瞳と共役になるように構成されている。
【0152】
SLOユニット18から出射された光は、SLO光学系を構成する垂直走査部120および水平走査部142により二次元走査される。二次元走査されたSLOレーザ光は対物レンズ1130を介して被検眼12へ入射される。被検眼12で反射されたSLOレーザ光は、対物レンズ1130、水平走査部142、リレーレンズ装置140、および垂直走査部120を経由して、SLOユニット18に入射される。
【0153】
対物レンズ1130は、水平走査部142側から順に、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とを備え、少なくとも第2レンズ群G2は全体として正のパワーを有する正レンズ群である。本実施形態では、第1レンズ群G1も全体として正のパワーを有する正レンズ群である。第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2の各々は、少なくとも1つの正レンズを備える。第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2の各々が複数のレンズを備える場合、第1レンズ群G1及び第2レンズ群G2の各々は全体として正のパワーを有すれば、負レンズを含んでもよい。対物レンズ1130は、被検眼12の眼底と共役の位置を含むように構成されている。
【0154】
上記構成により、SLO専用の眼科装置を提供することが可能となる。
【0155】
(第2構成例)
第2構成例としての眼科装置は、SLO用として少なくとも可視域における色収差補正が対物レンズで行われる。この可視域での色収差補正がなされた対物レンズを含む光学系を説明する。
【0156】
図19に、第2構成例に係る眼科装置における撮影光学系116Cの構成の一例を示す。
図19に示すように、第2構成例に係る眼科装置は、SLO及びOCTの各々で作動可能な機能を有する。また、第2構成例に係る眼科装置は、アライメント光学系を含んでいる。具体的には、SLOとして機能する光学系を基準として、撮影光学系116Cは、被検眼12側から順に、可視域での色収差補正がなされた対物レンズ1130、水平走査部(Hスキャナ)142、SLO用のリレーレンズ装置140、及びポリゴンミラー等の垂直走査部(Vスキャナ)120を備えている。
【0157】
上述のように、SLO用の光学系とOCT用の光学系とでは、用いる光の波長が異なるため、レンズ構成を各々に合わせて調整することが好ましい。第2構成例では、SLO用の光学系と、OCT用の光学系とを共通の対物レンズ1130で用いるので、リレーレンズ装置で収差補正の差異を吸収する。具体的には、リレーレンズ装置を2群のレンズ群で構成し、前群のレンズ群(例えば、SLO用のリレーレンズ装置1140の対物レンズ1130側のレンズ群144)を共通に用い、スキャナ142側のレンズ群1146の構成を、OCT側のレンズ群1146Aと異なる構成とすることで、SLO用のリレーレンズ装置からOCT用のリレーレンズ装置として機能するように構成する。また、OCT光を走査する走査部も異なる。このため、第2構成例では、対物レンズ1130と、水平走査部(Hスキャナ)142との間に、SLO用のリレーレンズ装置140と同様の構成のリレーレンズ装置1140を設けている。リレーレンズ装置1140は、被検眼12側から順に、前側レンズ群1144、後側レンズ群1146を備えており、レンズ群1144、1146の間にOCT光及び眼底からの反射光を反射するビームスプリッタ1148を備えている。具体的には、リレーレンズ装置1140は、リレーレンズ装置140と同様に複数の正のパワーを有するレンズ1144、1146を備え、被検眼12の眼底と共役の位置を含むように構成されている。ビームスプリッタ1148の反射側、すなわち、眼底からの反射光の反射側には、SLO用のリレーレンズ装置1140におけるレンズ群1146に対応し、かつOCT用に収差補正がなされたレンズ群1146A、及びOCT用の走査部1142が順に配置されている。すなわち、OCTでは、SLOから独立してXY走査が実行される構成になっている。また、OCT用の走査部1142は、被検眼12の瞳と共役の位置に配置されている。
【0158】
また、撮影光学系116Cは、アライメント光学系を含むために、対物レンズ1130と、リレーレンズ装置1140との間に、アライメント光学系138Hに対して光路を案内するビームスプリッタ178を備えている。すなわち、撮影光学系116Cでは、ビームスプリッタ178がSLOとして機能する光学系の光路に挿入され、ビームスプリッタ178の反射側には、固視標投影光学系138HA、被検眼位置撮影光学系138HB、及び照明装置138HCを含むアライメント光学系138Hを備えている。また、ビームスプリッタ178は、被検眼12の瞳と共役の位置に配置されている。
【0159】
上記構成により、SLO用の対物レンズ1130をOCT用に兼用することが可能となる。
【0160】
(第3構成例)
第3構成例としての眼科装置は、SLO用に、少なくとも可視域における色収差補正がされた対物レンズをOCT用の対物レンズとして用いたOCT専用の眼科装置である。
【0161】
図20に、第3構成例に係る眼科装置における撮影光学系116Dの構成の一例を示す。
図20に示すように、第3構成例に係る眼科装置は、OCT専用機として機能する。具体的には、撮影光学系116Dは、被検眼12側から順に、可視域での色収差補正がなされた対物レンズ1130、ビームスプリッタ1148を含むリレーレンズ装置1140、ビームスプリッタ1148の反射側のOCT用に収差補正がなされたレンズ群1146A、及びOCT用の走査部1142を備えている。リレーレンズ装置1140の透過側には、眼底カメラ光学系Fundusを備えている。眼底カメラ光学系Fundusは、被検眼12の瞳と共役の位置に配置される。
【0162】
上記構成により、SLO用の対物レンズ1130を用いてOCT専用の眼科装置を提供することが可能となる。
【0163】
(第4構成例)
第4構成例としての眼科装置は、第1実施形態に係る対物レンズ130、すなわち、可視域及び近赤外域における色収差補正がされた対物レンズ130を備えたSLO用の眼科装置である。
【0164】
図21に、第4構成例に係る眼科装置における撮影光学系116Eの構成の一例を示す。
図21に示すように、第4構成例に係る眼科装置は、SLO専用機として機能する。具体的には、撮影光学系116Eは、被検眼12側から順に、第1実施形態に係る対物レンズ130、すなわち可視域及び近赤外域での色収差補正がなされた対物レンズ130、水平走査部142、リレーレンズ装置140、及び垂直走査部120を備えている。
【0165】
対物レンズ130は、図3で説明したように、水平走査部142側から順に、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2とを備え、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間に第3レンズ群G3を備えている。対物レンズ130は、第3レンズ群G3内に被検眼12の瞳と共役の位置を含むように構成され、また被検眼の眼底と共役の位置を含むように構成される。なお、図21では、対物レンズ130中の3つのレンズ群を、簡易的にG1,G2,G3として示している。これらは図3に示した3つのレンズ群134,132.133に対応する。以下の図でも同様である。
【0166】
このように、中間瞳を内蔵する対物レンズ130を用いることで、可視域及び近赤外域における色収差補正がなされ、かつ対物レンズ130の最大口径を抑制して対物レンズ130の重量増大を抑制することで、装置全体を軽量化することが可能なSLO専用の眼科装置を提供することが可能となる。
【0167】
(第5構成例)
第5構成例としての眼科装置は、可視域及び近赤外域における色収差補正がされた対物レンズ130を備えたSLO及びOCTを備えた眼科装置である。
【0168】
図22に、第5構成例に係る眼科装置における撮影光学系116Fの構成の一例を示す。図22に示すように、第5構成例に係る眼科装置は、SLO及びOCTの各々で作動可能な機能を有する。図22に示す第5構成例は、図19に示す第2構成例の対物レンズ1130を、可視域及び近赤外域における色収差補正がされた対物レンズ130に代えた点が異なる。
【0169】
上記構成により、SLO用の対物レンズとOCT用の対物レンズとを共用することが可能となる。
【0170】
(第6構成例)
第6構成例としての眼科装置は、可視域及び近赤外域における色収差補正がされた対物レンズ130をOCT用の対物レンズとして用いたOCT専用の眼科装置である。
【0171】
図23に、第6構成例に係る眼科装置における撮影光学系116Gの構成の一例を示す。
図23に示すように、第6構成例に係る眼科装置は、OCT専用機として機能する。図23に示す第6構成例は、図20に示す第3構成例の対物レンズ1130を、可視域及び近赤外域における色収差補正がされた対物レンズ130に代えた点が異なる。この構成においては、対物レンズ130が、図3にて説明したとおり、中間群としての第3レンズ群133(G3)の収差補正能力により、SLO光学系とOCT光学系との両者についての収差補正がなされるため、リレーレンズの構成を完全に同一構成とすることでできる。
【0172】
上記構成により、可視域から近赤外域まで色収差補正がされたOCT専用の眼科装置を提供することが可能となる。
【0173】
(第7構成例)
第7構成例としての眼科装置は、可視域及び近赤外域における色収差補正がされた対物レンズ130を用いてSLO及びOCTの双方に機能する眼科装置である。
【0174】
図24に、第7構成例に係る眼科装置における撮影光学系116Hの構成の一例を示す。
図24に示すように、第7構成例に係る眼科装置は、SLO機及びOCT機として機能する。具体的には、撮影光学系116Hは、被検眼12側から順に、第1レンズ群G1から第3レンズ群G3を含む可視域から近赤外域まで色収差補正がなされた対物レンズ130を備え、水平走査部142、リレーレンズ装置140、及び垂直走査部120を備えてSLO用の光学系を構成している。
【0175】
SLOとOCTとの走査光の相違による収差補正の相違を吸収するため、第7構成例では、SLO用の光学系を基準として、対物レンズ130の第1レンズ群G1の構成を調整することで、OCT用の光学系に適合するように構成する(図16も参照)。すなわち、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3との間を、略平行な光を伝播するように構成し、その光路中に、分離合成素子(例えばダイクロイックミラー)DM1を配置する。分離合成素子DM1の反射側には、SLOとして機能する対物レンズの第1レンズ群G1に対応し、かつOCT用に収差補正がなされたレンズ群134A、及びOCT用の走査部1142Aが順に配置されている。すなわち、OCTでは、SLOから独立してXY走査が実行される構成になっている。また、OCT用の走査部1142Aは、被検眼12の瞳と共役の位置に配置されている。このように構成することで、SLOとOCTとの2つの光学系を、其々の光学系の収差を考慮しつつ合成することが可能となる。
【0176】
また、第7構成例の眼科装置は、アライメント光学系138Hを備えている。具体的には、光路合成用プリズムを、第3レンズ群G3中の瞳共役位置P3の前後の何れか一方の領域に配置する。図24に示す例では、瞳共役位置の前(図16に示す分離合成素子DM1を配置する領域)に、光路合成用プリズムを配置した場合が示されている。このように構成することで、固視標投影光学系138HA、及び被検眼位置撮影光学系138HBの少なくとも一方の光学系を適切に配置することが可能となる。
【0177】
上記構成により、適切に収差補正されたSLO、及びOCTの各々として機能する眼科装置を提供可能であり、アライメント光学系138Hを備えた眼科装置を提供することが可能となる。
【0178】
このように、第7実施形態に係る技術は、SLO、OCT、及びアライメント光学系の少なくとも1つを含む眼科装置を提供することを含むので、次の第2技術を含む。
(第2技術)
第1光源からの光束を走査するための第1走査部と、
前記第1走査部による走査光束を被検眼に導くアフォーカル対物レンズ系と、
前記第1走査部と前記対物レンズとの間に配置され、前記第1走査部からの走査光束を前記対物レンズへ導く第1アフォーカルリレー系とを有する第1光路と、
前記第1光源とは異なる第2光源からの光束を走査するための第2走査部と、
前記第2走査部による走査光束を前記アフォーカル対物レンズ系を通して被検眼に導くための第2アフォーカルリレー系とを有する第2光路と、
前記第1アフォーカルリレー系と前記第2アフォーカルリレー系と共通のビームスプリッタを有し、前記共通のビームスプリッタによって前記第1光路と前記第2光路とが、合成される
眼科装置。
【0179】
また、本開示の技術は、次の第3技術を含む。
(第3技術)
前記第1アフォーカルリレー系と前記第2アフォーカルリレー系はそれぞれ2つの正レンズ群を有し、前記2つの正レンズ群の間に前記共通のビームスプリッタが配置され、
前記第1アフォーカルリレー系の前記共通アフォーカル対物レンズ系側の正レンズ群は、前記第2アフォーカルリレー系の前記共通アフォーカル対物レンズ系側の正レンズ群と共通に構成されている
第2技術の眼科装置。
【0180】
ところで、上述のように、SLO及びOCTの各々について共通に対物レンズを用いる場合、SLO及びOCTの何れか一方の光源についてのみ収差補正がされており、他方の収差補正が不十分と考えられる場合を含むので、本開示の技術は、次の第4技術を含む。
(第4技術)
前記第1アフォーカルリレー系の前記第1スキャナ側の正レンズ群は、前記第2アフォーカルリレー系の前記第2スキャナ側の正レンズ群と異なり、
前記第1光路において、前記第1アフォーカルリレー系と前記共通対物レンズ系との合成系において、前記第1光源からの光束に対して収差補正がなされており、
前記第2光路において、前記第2アフォーカルリレー系と前記共通対物レンズ系との合成において、
前記第2光源からの光束に対して収差補正がなされている
第2技術の眼科装置。
【0181】
また、本開示の技術は、共通対物レンズ系が収差補正が完全である場合を含むので、次の第5技術を含む。
(第5技術)
前記共通対物レンズ系は、前記第1光源からの光束に対しても又前記第2光源からの光束に対しても収差補正がなされており、
第1アフォーカルリレー系の前記第1スキャナ側の正レンズ群は、前記第2アフォーカルリレー系の前記第2スキャナ側の正レンズ群と同一であり、
前記第1光路において、前記第1アフォーカルリレー系と前記共通対物レンズ系との合成系において、前記第1光源からの光束に対して収差補正がなされており、
前記第2光路において、前記第2アフォーカルリレー系と前記共通対物レンズ系との合成において、前記第2光源からの光束に対して収差補正がなされている
第2技術の眼科装置。
【0182】
また、本開示の技術は、共通対物レンズ系が瞳内蔵対物レンズの場合を含むので、次の第6技術を含む。
(第6技術)
前記共通対物レンズ系は、
前記スキャナ側の正の第1レンズ群G1と、
被検眼側の正の第2レンズ群G2と、
両群の間に配置され、発散面を含む第3レンズ群G3とを有する
第2技術の眼科装置。
【0183】
また、本開示の技術は、次の第7技術を含む。
(第7技術)
前記共通対物レンズ系は、
前記第1レンズ群G1と前記第2レンズ群G2との間に前記スキャナの走査中心との共役位置(中間瞳位置)が形成され、前記第3レンズ群G3は、その中間瞳位置を含む
第2技術の眼科装置。
【0184】
また、本開示の技術は、次の第8技術を含む。
(第8技術)
第1光源からの光束を走査するための第1スキャナと、
前記第1走査部による走査光束を被検眼に導くアフォーカル対物レンズ系と、
前記第1走査部と前記アフォーカル対物レンズとの間に配置され、前記第1走査部からの走査光束を前記アフォーカル対物レンズへ導く第1アフォーカルリレー系とを有する第1光学系と、
前記第1光源とは異なる第2光源からの光束を走査するための第2走査部と、
前記第2走査部による走査光束を前記アフォーカル対物レンズ系を通して被検眼に導くための第2アフォーカルリレー系とを有する第2光学系と、
前記第2アフォーカルリレー系はビームスプリッタを有し、前記第1アフォーカルリレー系と交換可能に構成され、前記第1アフォーカルリレー系を前記第2アフォーカルリレー系に切換えることによって、前記第1光学系と前記第2光学系とが前記ビームスプリッタを介して合成され、前記第1光源による被検眼観察と、前記第2光源による被検眼観察が可能となる
眼科装置。
【0185】
また、本開示の技術は、次の第9技術を含む。
(第9技術)
前記共通対物レンズ系は、前記第1光源からの光束に対しても又前記第2光源からの光束に対しても収差補正がなされており、前記第1アフォーカルリレー系と前記第2アフォーカルリレー系とは同一である
第8技術の眼科装置。
【0186】
また、本開示の技術は、次の第10技術を含む。
(第10技術)
前記共通対物レンズ系は、
前記スキャナ側の正の第1レンズ群G1と、
被検眼側の正の第2レンズ群G2と、
両群の間に配置され、発散面を含む第3レンズ群G3とを有する
第8技術の眼科装置。
【0187】
本開示の技術を実施の形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0188】
110 眼科装置
17 画像処理装置
20C 第1の光カプラ
40、42、44、46 光源
70、72、74、76 光検出素子
132 第1レンズ群
133 第3レンズ群
134 第2レンズ群
142 水平走査部
148 垂直走査部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24