(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182992
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】デバイス構造、デバイス構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
B81B 3/00 20060101AFI20231220BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20231220BHJP
G01P 15/08 20060101ALN20231220BHJP
G01P 15/125 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
B81B3/00
B81C1/00
G01P15/08 101B
G01P15/125 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096326
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】寺平 成希
(72)【発明者】
【氏名】黒川 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山内 幸夫
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA13
3C081BA03
3C081BA04
3C081BA22
3C081BA28
3C081BA29
3C081BA41
3C081BA46
3C081BA47
3C081BA48
3C081BA53
3C081BA75
3C081CA02
3C081CA14
3C081CA15
3C081CA20
3C081CA23
3C081CA29
3C081CA32
3C081CA40
3C081DA04
3C081DA29
3C081DA30
3C081DA43
3C081EA02
3C081EA07
3C081EA12
3C081EA21
3C081EA22
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させることが可能なデバイス構造、デバイス構造の製造方法を提供する。
【解決手段】支持層2Aと、デバイス層2Cと、支持層2Aに支持されたデバイス層2Cと、を備え、支持層2Aとデバイス層2Cとの間に、少なくとも2段のキャビティ構造120を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と、
前記支持層に支持されたデバイス層と、
を備え、
前記支持層と前記デバイス層との間に、少なくとも2段のキャビティ構造を有するデバイス構造。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイス構造であって、
前記2段のキャビティ構造は、前記支持層における前記デバイス層の側に配置された1段目の第1キャビティと、前記デバイス層から離れる側に配置された2段目の第2キャビティと、を有し、
前記第1キャビティの開口幅は、前記第2キャビティの開口幅よりも広い、デバイス構造。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイス構造であって、
前記第1キャビティの高さ、及び、前記第2キャビティの高さは、10μm~20μmである、デバイス構造。
【請求項4】
請求項2に記載のデバイス構造であって、
前記第1キャビティ及び前記第2キャビティの少なくとも一方は、40°~60°のテーパーを有する、デバイス構造。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイス構造であって、
前記支持層と前記デバイス層との間に配置された絶縁層をさらに有し、
前記絶縁層の厚みは、前記デバイス層の膜厚×1/1000以上である、デバイス構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のデバイス構造であって、
前記デバイス層を加工して形成された可動体を有する、デバイス構造。
【請求項7】
支持層を形成する工程と、
前記支持層の第1面に、テーパーを有する1段目の第1キャビティを形成する工程と、
前記第1キャビティに、前記第1キャビティの開口幅よりも小さい開口幅、かつ、テーパーを有する2段目の第2キャビティを形成して、2段のキャビティ構造を形成する工程と、
前記2段のキャビティ構造の表面に絶縁層を埋め込む工程と、
前記支持層とデバイス層とを接合する工程と、
を有する、デバイス構造の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のデバイス構造の製造方法であって、
前記支持層と前記デバイス層とを接合する前に、前記デバイス層に可動体を形成する工程を含む、デバイス構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス構造、デバイス構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可動電極として機能する第1電極と、第1電極と隣り合い固定電極として機能する第2電極と、第1電極と第2電極との間の静電容量の変化を検出して、外力などを計測するMEMS構造型のセンサーが開示されている。第2電極は、下方に配置された絶縁部に保持されている。絶縁部には、第1電極が可動することが可能な領域であるギャップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ギャップにおける、可動する第1電極の可動範囲が狭いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
デバイス構造は、支持層と、前記支持層に支持されたデバイス層と、を備え、前記支持層と前記デバイス層との間に、少なくとも2段のキャビティ構造を有する。
【0006】
デバイス構造の製造方法は、支持層を形成する工程と、前記支持層の第1面に、テーパーを有する1段目の第1キャビティを形成する工程と、前記第1キャビティに、前記第1キャビティの開口幅よりも小さい開口幅、かつ、テーパーを有する2段目の第2キャビティを形成して、2段のキャビティ構造を形成する工程と、前記2段のキャビティ構造の表面に絶縁層を埋め込む工程と、前記支持層とデバイス層とを接合する工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】デバイス構造を有する振動発電素子の構成を示す平面図。
【
図18】変形例の加速度センサーの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の各図においては、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸、及びZ軸として説明する。X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」とし、矢印の方向が+方向であり、+方向と反対の方向を-方向とする。なお、+Z方向を「上」又は「上方」、-Z方向を「下」又は「下方」ということもあり、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的ともいう。また、Z方向+側の面を上面、これと反対側となるZ方向-側の面を下面として説明する。
【0009】
まず、
図1を参照しながら、振動発電素子1の構成を説明する。
【0010】
図1に示すように、振動発電素子1は、静電誘導型の振動発電素子であり、外力によって駆動し発電する。このような振動発電素子1は、SOI(Silicon On Insulator)基板2を半導体プロセスによってパターニングすることにより製造されている。SOI基板2は、一対のシリコン層2A、2Cの間に、酸化シリコンなどからなる絶縁層2Bを挿入してなるSOI構造の基板である(
図4参照)。以下、下側のシリコン層2Aを支持層2Aと称し、上側のシリコン層2Cをデバイス層2Cと称する。
【0011】
振動発電素子1は、支持部3と、支持部3に接続されているバネ部4と、バネ部4を介して支持部3に接続され、バネ部4を弾性変形させつつ支持部3に対して第1方向であるX軸方向に変位する可動体6と、支持部3に接続されている固定電極7と、を有する。
【0012】
このような構成の振動発電素子1では、X軸方向の外力を受けると可動体6がバネ部4を弾性変形させつつX軸方向に振動する。この振動によって、可動体6と、固定電極7との間の容量が変化することにより発電が行われる。
【0013】
支持部3は、支持層2A、絶縁層2B、及びデバイス層2Cの積層体から形成されており、Z軸方向からの平面視で枠状をなしている。そして、この支持部3の内側にその他の各部が配置されている。
【0014】
支持部3のデバイス層2Cは、固定電極7aが接続された第1固定電極接続領域31と、固定電極7bが接続された第2固定電極接続領域32と、に分割されており、互いに絶縁されている。第1固定電極接続領域31には、固定電極7aと電気的に接続された端子T1が配置されており、第2固定電極接続領域32には、固定電極7bと電気的に接続された端子T2が配置されている。
【0015】
次に、
図2及び
図3を参照しながら、振動発電素子1のうち一部の構成であると共に、デバイス構造としてのMEMS構造200の構成を説明する。
【0016】
図2に示すように、MEMS構造200は、支持層2Aと、支持層2Aの上に配置されたデバイス層2Cと、を有する。支持層2Aの第1面2A1の側には、空洞の領域である2段のキャビティ構造120が設けられている。言い換えれば、支持層2Aとデバイス層2Cとの間に、2段のキャビティ構造120を有する。
【0017】
キャビティ構造120の役割としては、キャビティ上の構造体の駆動領域を確保するためである。デバイス層2Cは、例えば、デバイス層2Cを加工して形成された可動体6と、デバイス層2Cを加工して形成された固定電極7と、を有する。
【0018】
具体的には、キャビティ構造120は、
図3に示すように、支持層2Aにおけるデバイス層2Cの側に配置された1段目の第1キャビティ121と、デバイス層2Cから離れる側に配置された2段目の第2キャビティ122と、を有する。
【0019】
第1キャビティ121の開口幅W1は、第2キャビティ122の開口幅W2よりも広くなるように形成されている。このように、2段のキャビティ構造120は、デバイス層2Cの側に広く開口しているので、キャビティ構造120内において、可動体6を可動しやすくすることができる。
【0020】
第1キャビティ121の高さH1は、例えば、10μm~20μmである。第2キャビティ122の高さH2は、例えば、10μm~20μmである。このような高さにすることにより、可動体6を十分に可動させることができる。
【0021】
第1キャビティ121の側面の角度Aは、例えば、40°~60°である。第2キャビティ122の側面の角度Bは、例えば、40°~60°である。角度A,Bは、好ましくは、42°~48°、又は、52°~58°である。第1キャビティ121及び第2キャビティ122の側面をこのような角度にすることにより、可動体6側が広がるテーパー形状にすることでき、可動体6を可動させやすくすることができる。
【0022】
支持層2Aの第1面2A1の結晶面方位は、(100)面である。また、キャビティ構造120において、第1面2A1と平行な面の結晶面方位も同様に、(100)面である。第1キャビティ121及び第2キャビティ122の側面の結晶面方位は、(111)面である。
【0023】
次に、
図4を参照しながら、デバイス構造100の構成を説明する。具体的には、デバイス構造100は、デバイス層2Cに可動体6や固定電極7を形成する前の状態である。
【0024】
図4に示すように、デバイス構造100は、支持層2Aと、支持層2Aの上に配置されたデバイス層2Cと、支持層2Aとデバイス層2Cとの間に配置された2段のキャビティ構造120と、支持層2Aとデバイス層2Cとの間、即ち、キャビティ構造120の表面に配置された絶縁層2Bと、を備えている。なお、キャビティ構造120の構成は、
図3において説明した内容と同様である。
【0025】
絶縁層2Bの厚みは、支持層2Aを保護する場合、デバイス層2Cの厚みの1/1000以上の膜厚であることが好ましく、例えば、10μmである。このように、キャビティ構造120における支持層2Aの表面全体に、絶縁層2Bを略均一な厚みに形成することにより、デバイス層2Cに可動体6を形成する際、絶縁層2Bの下の支持層2Aを保護することができる。即ち、デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0026】
また、
図4に示すデバイス構造100は、例えば、2段のキャビティ構造120に加えて、1段のキャビティ構造を備えている。1段のキャビティ構造の部分を、第3キャビティ123と称する。第3キャビティ123にも同様に、絶縁層2Bが設けられている。
【0027】
次に、
図5~
図16を参照しながら、2段のキャビティ構造120を有するデバイス構造100の製造方法を説明する。
【0028】
まず、
図5に示す工程では、第1面2A1の結晶面方位が(100)面のシリコンウエハからなる支持層2Aに、熱酸化処理を施す。これにより、支持層2Aの全周に酸化シリコン(SiO
2)からなる酸化膜131が形成される。次に、支持層2Aの上面側に、フォトリソグラフィ法を用いて、第1キャビティ121及び第3キャビティ123に相当する部分が開口するレジストパターン132を形成する。
【0029】
次に、
図6に示す工程では、レジストパターン132をマスクとして、酸化膜131にエッチング処理を施す。エッチング処理は、ドライエッチングやウェットエッチングである。これにより、酸化膜131のうち、支持層2Aにおけるキャビティ構造120,123となる部分の酸化膜131が除去される。その後、レジストパターン132を除去する。
【0030】
次に、一部の酸化膜131が除去された支持層2Aに、残った酸化膜131をマスクとし、アルカリ性水溶液(KOHやTMAH)を用いて、シリコン(Si)の異方性ウェットエッチング処理を行う。これにより、結晶面方位の(111)面が析出し、(111)面に沿った、54.7°の角度Aのテーパー形状を有する、1段目の第1キャビティ121、及び第3キャビティ123が形成される。
【0031】
また、支持層2Aにウェットエッチング処理を施すことにより、キャビティ121,123の開口幅の大きさに起因する、キャビティ121,123の深さがばらつくことを抑えることができる。具体的には、ドライエッチングではキャビティ121,123の大きさに起因するローディング効果により深さがばらつくが、ウェットエッチング処理ではこのローディング効果が抑制されるため深さのばらつきを抑えることができる。
【0032】
なお、一般的に、アルカリ性水溶液(KOHやTMAH)を用いた単結晶シリコンのウェットエッチングでは、結晶面方位によってエッチング速度が異なり、(100)面や(110)面と比較して(111)面は、ほとんどエッチングされないので、異方性加工となる。
【0033】
次に、
図7に示す工程では、支持層2Aに熱酸化処理を施す。これにより、残っていた酸化膜131を含む酸化膜131aが、支持層2Aの全周に形成される。第1キャビティ121におけるテーパー形状の酸化膜131aの角度は、
図14に示すように、例えば、55°である。
【0034】
次に、
図8に示す工程では、支持層2Aにおける第2キャビティ122に相当する部分が開口するレジストパターン132を形成する。その後、レジストパターン132をマスクとして、酸化膜131aにエッチング処理を施す。これにより、酸化膜131aのうち、支持層2Aにおける第2キャビティ122となる部分の酸化膜131aが除去される。その後、レジストパターン132を除去する。
【0035】
なお、第1キャビティ121をテーパー形状に形成したため、支持層2Aの上面から第1キャビティ121の表面に亘って、均一な厚みのレジスト膜を塗布することができる。即ち、テーパー形状になっていることにより、レジスト膜の付きまわり性が向上する。例えば、10μmの厚みのレジスト膜でも、容易に成膜することができる。
【0036】
次に、
図9に示す工程では、残った酸化膜131aをマスクとし、支持層2Aに、アルカリ性水溶液(KOHやTMAH)を用いて異方性ウェットエッチング処理を施す。これにより、結晶面方位の(111)面に沿った、54.7°のテーパー形状を有する、2段目の第2キャビティ122が形成される。
【0037】
次に、
図10に示す工程では、支持層2Aの外周に形成された酸化膜131aを除去する。除去する方法としては、例えば、ウェットエッチング処理が挙げられる。これにより、第1キャビティ121及び第2キャビティ122を有する2段のキャビティ構造120、及び1段の第3キャビティ123、が設けられた支持層2Aが完成する。
【0038】
次に、
図11に示す工程では、支持層2Aの第1面2A1側の表面に、絶縁層2Bとなるポリシリコン膜133を成膜する。ポリシリコン膜133の成膜方法としては、例えば、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)が挙げられる。なお、絶縁層2Bは、酸化シリコン膜に限定されず、例えば、窒化シリコン(SiN)膜などでもよい。
【0039】
ポリシリコン膜133の膜厚としては、上記したように、支持層2Aを保護する場合、デバイス層2Cの厚みの1/1000以上の膜厚であることが好ましく、例えば、10μmである。具体的には、デバイス層2Cの加工において、例えば、10%のオーバーエッチに加え、デバイス層2Cと絶縁層2Bとの選択比が、凡そ100:1であるためである。
【0040】
キャビティ構造120及び第3キャビティ123の形状が、テーパー形状を有しているので、テーパー形状の部分のポリシリコン膜133においても、底面の膜厚と同等の膜厚を形成することができる。
【0041】
次に、
図12に示す工程では、キャビティ構造120及び第3キャビティ123のポリシリコン膜133を残して、それ以外の部分のポリシリコン膜133を除去する。具体的には、キャビティ構造120及び第3キャビティ123の部分に、図示しないレジストパターンを成膜し、レジストパターンをマスクとして、それ以外の部分のポリシリコン膜133を、例えば、ドライエッチングやウェットエッチングで除去する。
【0042】
レジストパターンとなる前のレジスト膜134は、例えば、
図15及び
図16に示すように、付きまわりも良く、十分な膜厚を確保することが可能となっている。エッチング後、アッシングでレジストパターンを除去する。
【0043】
次に、
図13に示す工程では、支持層2Aとデバイス層2Cとを接合し、所望の厚みになるまで、デバイス層2Cを研磨することにより、デバイス構造100が完成する。
【0044】
なお、
図2に示すMEMS構造200の製造方法は、上記に記載のデバイス構造100の製造方法を有し、支持層2Aとデバイス層2Cとを接合する前に、デバイス層2Cに可動体6を形成する工程を加えることで形成することができる。なお、支持層2Aとデバイス層2Cとを接合した後に、固定電極7を形成するようにしてもよい。また、固定電極7を形成した後に、フッ酸などを用いて、支持層2Aの保護膜として用いた絶縁層2Bを取り除くようにしてもよい。
【0045】
以上述べたように、本実施形態のデバイス構造100は、支持層2Aと、支持層2Aに支持されたデバイス層2Cと、を備え、支持層2Aとデバイス層2Cとの間に、少なくとも2段のキャビティ構造120を有する。
【0046】
この構成によれば、支持層2Aとデバイス層2Cとの間に少なくとも2段のキャビティ構造120を有するので、例えば、デバイス層2Cに可動体6を形成した場合、キャビティ構造120内における可動体6の可動範囲を大きくすることができる。
【0047】
また、本実施形態のデバイス構造100において、2段のキャビティ構造120は、支持層2Aにおけるデバイス層2Cの側に配置された1段目の第1キャビティ121と、デバイス層2Cから離れる側に配置された2段目の第2キャビティ122と、を有し、第1キャビティ121の開口幅W1は、第2キャビティ122の開口幅W2よりも広いことが好ましい。この構成によれば、第1キャビティ121の開口幅W1の方が広い、言い換えれば、2段のキャビティ構造120は、デバイス層2Cの側に広く開口しているので、例えば、デバイス層2Cに可動体6を形成した場合、キャビティ構造120内において、可動体6を可動しやすくすることができる。
【0048】
また、本実施形態のデバイス構造100において、第1キャビティ121の高さH1、及び、第2キャビティ122の高さH2は、10μm~20μmであることが好ましい。この構成によれば、上記の高さを有するので、例えば、デバイス層2Cに可動体6を形成した場合、可動体6を十分に可動させることができる。
【0049】
また、本実施形態のデバイス構造100において、第1キャビティ121及び第2キャビティ122の少なくとも一方は、40°~60°のテーパー、即ちテーパーの角度A,Bを有することが好ましい。この構成によれば、上記角度のテーパーを有するので、第1キャビティ121の開口側、及び、第2キャビティ122の開口側を広くすることが可能となり、例えば、デバイス層2Cに可動体6を形成した場合、可動体6を可動させやすくすることができる。
【0050】
また、本実施形態のデバイス構造100において、支持層2Aとデバイス層2Cとの間に配置された絶縁層2Bをさらに有し、絶縁層2Bの厚みは、デバイス層2Cの膜厚×1/1000以上であることが好ましい。この構成によれば、上記厚みの絶縁層2Bが配置されているので、デバイス層2Cに可動体6を形成する際、絶縁層2Bの下の支持層2Aを保護することができる。即ち、デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態のデバイス構造100は、デバイス層2Cを加工して形成された可動体6と、を有する。この構成によれば、支持層2Aとデバイス層2Cとの間に2段のキャビティ構造120を有するので、キャビティ構造120内における可動体6の可動範囲を大きくすることができる。
【0052】
また、本実施形態のデバイス構造100の製造方法は、支持層2Aを形成する工程と、支持層2Aの第1面2A1に、テーパーを有する1段目の第1キャビティ121を形成する工程と、第1キャビティ121に、第1キャビティ121の開口幅W1よりも小さい開口幅W2、かつ、テーパーを有する2段目の第2キャビティ122を形成して、2段のキャビティ構造120を形成する工程と、2段のキャビティ構造120の表面に絶縁層2Bを埋め込む工程と、支持層2Aとデバイス層2Cとを接合する工程と、を有する。
【0053】
この方法によれば、テーパーを有する2段のキャビティ構造120を形成するので、絶縁層2Bを埋め込む工程において、絶縁性を確保することが可能な膜厚の絶縁層2Bを、2段のキャビティ構造120の表面に均一に埋め込むことができる。
【0054】
また、本実施形態のデバイス構造100の製造方法は、支持層2Aとデバイス層2Cとを接合する前に、デバイス層2Cに可動体6を形成する工程を含む。この方法によれば、テーパーを有する2段のキャビティ構造120を形成するので、絶縁層2Bを埋め込む工程において、可動体6の絶縁性を確保することが可能な膜厚の絶縁層2Bを、2段のキャビティ構造120の表面に均一に埋め込むことができる。
【0055】
以下、上記した実施形態の変形例を説明する。
【0056】
上記したように、2段のキャビティ構造120は、第1キャビティ121及び第2キャビティ122の両方にテーパーを有することに限定されず、第1キャビティ121又は第2キャビティ122のどちらか一方にテーパーを有し、その他はテーパーが無い構成であってもよい。更に、2段のキャビティ構造120は、第1キャビティ121及び第2キャビティ122の両方にテーパーが無い構成であってもよい。
【0057】
上記したように、2段のキャビティ構造120の角度A,Bは、結晶面方位(111)面に沿った54.7°であることに限定されず、例えば、結晶面方位(110)面に沿った45°であってもよい。
【0058】
上記したように、デバイス構造100及びMEMS構造200は、2段のキャビティ構造120を備えていることに限定されず、3段以上のキャビティ構造を備えていてもよい。
【0059】
上記したように、キャビティ構造120の表面のみに絶縁層2Bを配置することに限定されず、例えば、支持層2Aの表面全体に絶縁層2Bが配置されていてもよい。このような構造は、例えば、支持層2Aとデバイス層2Cとを異電位にする場合に用いられる。
【0060】
上記したように、支持層2Aの表面にキャビティ構造120を配置することに限定されず、例えば、
図17に示すように、2層構造のデバイス層2Cのうち、下側のデバイス層2Cにキャビティ構造120を配置するようにしてもよい。
【0061】
具体的には、変形例のデバイス構造101は、下側のデバイス層2Cに、2段のキャビティ構造120と1段の第3キャビティ123が配置されている。支持層2Aの表面には、絶縁層2B2が配置されている。絶縁層2B2は、例えば、2段のキャビティ構造120の絶縁層2B1と接続されている。キャビティ構造120の絶縁層2B1は、例えば、PECVD法で成膜した膜である。支持層2Aの表面に配置された絶縁層2B2は、例えば、熱酸化膜で形成されたものである。
【0062】
上記したように、デバイス構造100及びMEMS構造200を適用するものとして、振動発電素子1に限定されず、例えば、加速度センサー、波長可変フィルター、マイクロミラーなどに適用するようにしてもよい。
【0063】
具体的には、加速度センサー1001は、
図18に示すように、例えば、センサー部1021の主面と直交する+Z方向に加速度Gが印加されると、慣性力によって、センサー部1021が軸線B回りにシーソー状に回転(回動)し、ベース基板1010に対して傾斜する。詳述すると、加速度センサー1001は、センサー部21の第1部分21Aが固定電極部12から離れるとともに、センサー部1021の第2部分1021Bが固定電極部1013に近づく。このとき、固定電極部1012とセンサー部1021の第1部分1021A(可動電極部)との空隙S1は大きくなり、固定電極部1013とセンサー部1021の第2部分1021B(可動電極部)との空隙S2は小さくなることから、第1部分1021A及び固定電極部1012間の静電容量は小さくなり、第2部分1021B及び固定電極部1013間の静電容量は大きくなる。
【0064】
従って、加速度センサー1001は、センサー部1021の第1部分1021Aと固定電極部1012との空隙S1で発生する静電容量と、センサー部1021の第2部分1021Bと固定電極部1013との空隙S2で発生する静電容量との違い(差動容量)から、C-V変換することで得られる電圧波形を求めることにより、加速度センサー1001に加わる加速度を検出することができる。
【0065】
このとき、センサー部1021の複数の貫通孔1024の内部空間は、それぞれ、センサー部1021の回動に際し、空隙S1または空隙S2に存在する気体(例えば、空気、または窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス)を流動させる流路となる。これにより、加速度センサー1001は、センサー部1021の回動に際し、空隙S1または空隙S2に存在する気体を複数の貫通孔1024を通じて逃すことができる。
【0066】
加えて、加速度センサー1001は、ベース基板1010における固定電極部1013よりもセンサー部1021の第2部分1021Bの先端寄り(+X方向)であって、センサー部1021の第2部分1021Bの先端側に対向する部分に、第1凹部1011よりも深い第2凹部1014が設けられている。これにより、加速度センサー1001は、センサー部1021の回動に際し、センサー部1021の第2部分1021Bの先端側と第2凹部1014の底面1014aとの間に存在する気体の圧縮の度合いが、第2凹部1014がない場合(第1凹部1011のみの場合)と比較して緩和される(低くなる)。これらにより、加速度センサー1001は、センサー部1021の第2部分1021Bの先端側と第2凹部1014の底面1014aとの間に存在する気体の流動抵抗が低減される。この結果、加速度センサー1001は、加速度の印加によるセンサー部1021の変位(回動)がスムーズとなる。
【0067】
また、上述した加速度センサー1001に、キャビティ構造120を適用することにより、センサー部1021の可動範囲を大きくすることができる。
【0068】
また、波長変換フィルターに、キャビティ構造120を適用することにより、可動体を駆動電極側に自由に変位させることが可能となり、光学ギャップを変更すると、透過する光の波長を選択することができる。
【0069】
また、マイクロミラーに、キャビティ構造120を適用することにより、ミラーを大きく可動させることが可能となり、所望の方向にレーザー光を照射させることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…振動発電素子、2…SOI基板、2A1…第1面、2A…支持層、2B…絶縁層、2C…デバイス層、3…支持部、4…バネ部、6…可動体、7…固定電極、7a…固定電極、7b…固定電極、31…第1固定電極接続領域、32…第2固定電極接続領域、100…デバイス構造、120…キャビティ構造、121…第1キャビティ、122…第2キャビティ、123…第3キャビティ、131…酸化膜、131a…酸化膜、132…レジストパターン、133…ポリシリコン膜、134…レジスト膜、200…デバイス構造としてのMEMS構造。