(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018341
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用圧力解放弁
(51)【国際特許分類】
H01M 50/317 20210101AFI20230201BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20230201BHJP
H01M 50/333 20210101ALI20230201BHJP
【FI】
H01M50/317 201
H01G11/78
H01M50/333
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122393
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮前 仁志
【テーマコード(参考)】
5E078
5H012
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078HA23
5E078HA24
5H012BB01
5H012GG07
(57)【要約】
【課題】ケース内部空間の気体をケース外部空間へとスムーズに排気できると共に、シール性も確保できる蓄電デバイス用圧力解放弁を提供する。
【解決手段】この蓄電デバイス用圧力解放弁10は、通気孔27,35及び弁座33を有するベース部材20と、弁座33に接離して通気孔27,35を開閉する弁部材50と、弁部材50を弁座33に近接する方向に付勢する付勢手段とを有し、ベース部材20は、ケース開口3の周縁に、ケース内部空間R1側からシール部80を介して当接する当接部21を有し、弁座33は、ケース外部空間R2側に配置されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスが収容されるケースに取付けられる、蓄電デバイス用圧力解放弁であって、
前記ケースに固定され、前記ケースに形成されたケース開口と共に、ケース内部空間及びケース外部空間を連通させる通気孔、及び、該通気孔の周縁部に設けられた弁座を有する、ベース部材と、
前記ベース部材にスライド可能に支持され、前記弁座に接離して前記通気孔を開閉する弁部材と、
該弁部材を前記弁座に近接する方向に付勢して、常時は前記通気孔を閉じる付勢手段とを有しており、
前記ベース部材は、前記ケース開口の周縁に、前記ケース内部空間側からシール部を介して当接する当接部を有し、前記弁座は、前記ケース外部空間側に配置されていることを特徴とする蓄電デバイス用圧力解放弁。
【請求項2】
前記ベース部材は、前記ケース内部空間側から前記ケース開口に挿入され、前記ケース外部空間側へ突出する挿入部を有しており、
前記弁座は、前記挿入部の挿入方向先端側に設けられている、請求項1記載の蓄電デバイス用圧力解放弁。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記通気孔を介して延びる筒状部を有しており、
前記弁部材は、前記弁座に接離する弁体と、該弁体から突出し前記筒状部に挿入される軸部と、該軸部の外周に形成された複数のリブとを有し、該リブと前記筒状部との間に通気路が形成されている、請求項1又は2記載の蓄電デバイス用圧力解放弁。
【請求項4】
前記ベース部材の外周には、軟質樹脂からなるシール部材が設けられており、該シール部材に前記シール部及び前記弁座が形成されている、請求項1~3のいずれか1つ記載の蓄電デバイス用圧力解放弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスが収容されるケースに取付けられて、ケース内圧が所定値以上に高まった際に、ケース内の圧力を解放する、蓄電デバイス用圧力解放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド車や電気自動車には、バッテリーやコンデンサ等の蓄電デバイスが用いられるが、これらの蓄電デバイスは、車両内に設置されたケース内に収容配置される。そして、蓄電デバイスが、例えば、リチウムイオン電池等のバッテリーの場合、電解液の化学反応でガスが生じて、ケース内の圧力が上昇する場合がある。この場合、ケース内の圧力を低下させるための圧力解放弁が、ケース開口に取付けられることがあった。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、正極板と負極板とを有してなる電極体が、ケースの内方に収納され、当該ケースの開口部が蓋で封口され、蓋に安全弁が取り付けられてなる密閉二次電池が記載されている。前記安全弁は、筒状をなした弁本体と、該弁本体の下端部に設けられたが半球状に膨出した膨出部と、該膨出部に貫通して形成された通気孔と、膨出部内側であって、前記通気孔の外周縁に形成された弁座と、弁本体内に収容され前記弁座に接離するゴム弁体と、該ゴム弁体を弁座に向けて付勢するスプリングと、該スプリングの上端部を支持する弁蓋体とを有している。また、二次電池は、内部にセル室が形成され上方が開口したケースと、該ケースの上方開口部に装着される外装蓋とを有しており、外装壁には安全弁取付け用の取付孔が形成されている。そして、安全弁は、弁本体の膨出部側が、ケースのセル室内に配置されるように、取付孔に取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1における安全弁は、ケース内側から外側へ向かってケースへ取り付けるように構成されており、弁本体とケースとのシール部がケースのセル内側に設けられているため、シール部には内圧がかかりシール性は確保しやすいが、弁本体の、弁座や通気孔を形成した膨出部自体も、ケースのセル室内に配置されているので、膨出部を大きく形成して、通気孔の流路面積を大きく確保しにくい。そのため、スプリングの付勢力に抗して、ゴム弁体が弁座から離反して、通気孔が開口しても、セル室内の気体を、ケース外部側へ排気しにくくなるおそれがあった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ケース内部空間の気体を、ケース外部空間へとスムーズに排気できると共に、シール性も確保できる、蓄電デバイス用圧力解放弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、蓄電デバイスが収容されるケースに取付けられる、蓄電デバイス用圧力解放弁であって、前記ケースに固定され、前記ケースに形成されたケース開口と共に、ケース内部空間及びケース外部空間を連通させる通気孔、及び、該通気孔の周縁部に設けられた弁座を有する、ベース部材と、前記ベース部材にスライド可能に支持され、前記弁座に接離して前記通気孔を開閉する弁部材と、該弁部材を前記弁座に近接する方向に付勢して、常時は前記通気孔を閉じる付勢手段とを有しており、前記ベース部材は、前記ケース開口の周縁に、前記ケース内部空間側からシール部を介して当接する当接部を有し、前記弁座は、前記ケース外部空間側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベース部材は、ケース開口の周縁に、ケース内部空間側からシール部を介して当接する当接部を有しているので、ベース部材とケース開口の周縁との間に、シール部が配置され、且つ、このシール部が、ケース内部空間に配置されることになり、シール部に、ベース部材の当接部からの押圧力に加え、ケース内部空間側の圧力が加わることになるため、ベース部材とケース開口の周縁との間のシール性を向上させることができると共に、弁座が、ケース外部空間側に配置されているので、弁体を大きく形成することに支障が生じにくく、それによって通気孔の開口面積を大きく確保することができ、弁本体が開いたときに、ケース内部空間の気体を、ケース外部空間側へスムーズに排気することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第1実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】同蓄電デバイス用圧力解放弁の、各部材を組付けた状態の斜視図である。
【
図3】同蓄電デバイス用圧力解放弁の、各部材を組付けた状態の正面図である。
【
図4】同蓄電デバイス用圧力解放弁を構成するベース部材の正面図である。
【
図7】同蓄電デバイス用圧力解放弁を構成する弁部材の平面図である。
【
図8】同蓄電デバイス用圧力解放弁を構成する抜け止め部材の平面図である。
【
図9】同蓄電デバイス用圧力解放弁をケースに取付けるべく、ケース内部空間側からケース開口にベース部材を挿入した状態の、断面説明図である。
【
図10】同蓄電デバイス用圧力解放弁において、弁部材が閉じた状態の断面説明図である。
【
図11】
図10に示す状態から、弁部材が開いた際の断面説明図である。
【
図12】本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第2実施形態を示しており、弁部材が閉じた状態の断面説明図である。
【
図13】
図12に示す状態から、弁部材が開いた際の断面説明図である。
【
図14】本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第3実施形態を示しており、弁部材が閉じた状態の断面説明図である。
【
図15】
図14に示す状態から、弁部材が開いた際の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(蓄電デバイス用圧力解放弁の第1実施形態)
以下、
図1~11を参照して、本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第1実施形態について説明する。
【0011】
図10,11に示すように、この蓄電デバイス用圧力解放弁10(以下、単に「解放弁10」ともいう)は、図示しない蓄電デバイスが収容されるケース1に取付けられて、ケース内の圧力が上昇したときに、その圧力を解放(低下)させるためのものである。
【0012】
上記蓄電デバイスとしては、例えば、プラグインハイブリッド車を含むハイブリッド車や、電気自動車等に用いられる、バッテリー(リチウムイオンバッテリー等)、コンデンサ、キャパシタなどが挙げられるが、蓄電可能なデバイスであれば、特に限定されない。
【0013】
また、
図10,11に示すように、ケース1には、円形孔状をなしたケース開口3が形成されている。このケース1の内部空間が、ケース内部空間R1をなしており(図中、上方の空間)、ケース1の外部空間が、ケース外部空間R2をなしている(図中、下方の空間)。
【0014】
図1や
図10に示すように、この実施形態における解放弁10は、ケース1に固定され、ケース1に形成されたケース開口3と共に、ケース内部空間R1及びケース外部空間R2を連通させる通気孔27,35、及び、該通気孔27,35の周縁部に設けられた弁座33を有する、ベース部材20と、該ベース部材20にスライド可能に支持され、弁座33に接離して通気孔27を開閉する弁部材50と、該弁部材50を弁座33に近接する方向に付勢して、常時は第1通気孔27及び第2通気孔35を閉じる付勢手段とから、主として構成されている。
【0015】
なお、この実施形態における付勢手段は、所定径の線材が所定ピッチを空けて巻回してなる、コイルばね65となっている。また、弁部材50は、弁体51と、該弁体51から突出し、ベース部材20の筒状部37(
図1参照)に挿入される軸部53とを有している。更に、弁部材50は、付勢手段の抜け止め用の、抜け止め部材70を有しており、該抜け止め部材70は、軸部53の軸方向先端部に装着されるようになっている。
【0016】
更に、ベース部材20は、ケース開口3の周縁に、ケース内部空間R1側からシール部80を介して当接する当接部を有し、弁座33は、ケース外部空間R2側に配置されている。
【0017】
この実施形態の場合、ベース部材20は、軟質樹脂からなる第1シール部80を有しており、弁部材50も、軟質樹脂からなる第2シール部85を有している。なお、第1シール部80が本発明における「シール部」をなしている。各シール部80,85は、例えば、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料から形成されるものであり、薄肉の環状板形状となっている。なお、第1シール部80の方が、第2シール部85よりも、外径及び内径が大きい。また、
図10に示すように、第1シール部80は、ベース部材20の当接部21と、ケース開口3の、ケース内部空間R1側の周縁(以下、単に「ケース開口3の内部側周縁」ともいう)との隙間に配置され、同隙間をシールする。また、第2シール部85は、弁部材50の弁体51と弁座33との間に配置されて、シール性を高める部分となっている。
【0018】
まず、
図1,4~6,9等を参照して、ベース部材20について説明する。
【0019】
この実施形態のベース部材20は、ケース開口3の周縁に、ケース内部空間R1側から当接する当接部21と、ケース内部空間R1側からケース開口3に挿入され、ケース外部空間R2側へ突出する挿入部23とを有している。
【0020】
この実施形態の当接部21は、略環状をなしたフランジ形状となっており、
図10に示すように、第1シール部80の表面側に当接して、同第1シール部80を介して、ケース開口3の内部側周縁に、間接的に当接するようになっている。また、当接部21は、ケース内部空間R1に圧力が付与されている場合、同ケース内部空間R1からの圧力によって押圧されて、ケース開口3の内部側周縁に当接した状態に維持されるので、ケース開口3からのベース部材20の外れが防止される。すなわち、ベース部材20は、当接部21及び第1シール部80を介して、ケース内部空間R1側から、ケース1に固定されるようになっている。
【0021】
また、
図10に示すように、当接部21の裏側(ケース1に向く側)の外周縁部には、環状突起状をなした環状突部21аが突設されている。この環状突部21aは、第1シール部80の表面に当接部21が当接する際に、第1シール部80の表面側の外周縁部に食い込むようになっており(
図10参照)、第1シール部80の径方向の位置ずれが規制されるようになっている。
【0022】
なお、以下の説明において、「表側」や「表面側」とは、ケース内部空間R1側に配置される部分については、ケース1から離反する側を意味し、ケース外部空間R2側に配置される部分については、ケース1に近接する側を意味する。また、「裏側」や「裏面側」とは、上記の「表側」や「表面側」とは反対側であって、ケース内部空間R1側に配置される部分については、ケース1に近接する側を意味し、ケース外部空間R2側に配置される部分については、ケース1から離反する側を意味する。これらは後述する他の部材(弁部材や抜け止め部材等)においても同様である。
【0023】
また、前記挿入部23は、当接部21の内周縁部から、ケース外部空間R2側へ向けて所定長さで延びる略円筒状の周壁24と、該周壁24の軸方向先端(延出方向先端)に配置された底壁25とからなる有底筒状をなしている。なお、上記当接部21は、挿入部23の軸方向(延出方向)の基端外周に配置されている、とも言える。
【0024】
前記周壁24の外径は、ケース開口3の内径に適合する寸法となっており、ケース開口3に挿入可能となっている。また、この周壁24は、当接部21を介してベース部材20がケース1に固定された状態で、ケース内部空間R1及びケース外部空間R2に亘って配置される。
【0025】
また、挿入部23を構成する底壁25は、周壁24を介して、前記当接部21に対してケース外部空間R2側に位置ずれして配置されている(
図10参照)。
図10に示すように、この底壁25に、前記第1通気孔27が貫通して形成されている。
図5や
図6を併せて参照すると、この第1通気孔27は、底壁25の周方向に沿って所定幅で広がる略扇状をなしており、所定間隔を空けて複数形成されている(この実施形態では、3個の第1通気孔27が形成されている)。また、底壁25の径方向中央部に、円形孔状をなした第2通気孔35が形成されている。
【0026】
そして、
図10に示すように、底壁25は、その厚さ方向の一端面に、ケース外部空間R1側に面する第1面29が設けられ、厚さ方向の他端面に、ケース内部空間R1側に面する第2面31が設けられている。すなわち、挿入部23の底壁25の、ケース外部空間R2側に位置する面が、第1面29をなし、底壁25の、第1面29とは反対側の面であって、ケース開口3を介してケース内部空間R1に臨む面(ケース開口3を通してケース内部空間R1に露出する面)が、第2面31をなしている。なお、弁部材に挿入部23が存在しない場合(基部が板状等の場合)は、ケース開口3を介してケース外部空間R2に臨む面が第1面をなし、その反対側の面が第2面をなす。
【0027】
そして、
図6,10,11に示すように、挿入部23の底壁25に設けた第1面29であって、第1通気孔27及び第2通気孔35の外周縁部に、弁部材50の弁体51が接離する弁座33が形成されている。この実施形態の弁座33は、
図6に示すように、ベース部材20を軸方向から見たときに、第1通気孔27の径方向外径側の周縁部に形成された第1弁座33aと、第2通気孔35の径方向外径側の周縁部に形成された(第1通気孔27の径方向内径側の周縁部に形成された、とも言える)第2弁座33bとからなる。
【0028】
ところで、
図1の矢印は、ベース部材20の挿入部23が、ケース内部空間R1側からケース開口3に挿入される際の、挿入部23の挿入方向を示している。上述したように、弁座33はケース外部空間R2側に配置されているが、更に、この弁座33は、挿入部23の挿入方向との関係で、
図9に示すように、挿入部23の挿入方向先端に設けられている(挿入方向を示す矢印の先端側であって、ケース内部空間R1側からケース開口3に挿入部23が挿入される際に、最初に挿入される部位に設けられている)。
【0029】
また、
図10に示すように、底壁25の径方向中央部、すなわち、弁座33の径方向内径側に位置する第2通気孔35の、第2面31側の外周縁部からは、略円筒状をなした筒状部37が、ケース内部空間R1側に向けて所定長さで突出している。この筒状部37は、当接部21を介してベース部材20がケース1に固定された状態で、ケース内部空間R1及びケース外部空間R2に亘って配置され、両空間R1,R2どうしを互いに連通させるものとなっており、その内部空間は、第2通気孔35と連通している。そして、第2通気孔35の、第1面29側の開口から、筒状部37内に弁部材50の軸部53が挿入され、同軸部53は筒状部37内にてスライド可能に支持される(
図10,11参照)。
【0030】
更に
図1,5,10に示すように、挿入部23の底壁25に設けた第2面31の、第2通気孔35の外周縁部に、付勢手段を支持する付勢手段支持部39が形成されている。そして、
図10に示すように、付勢手段であるコイルばね65は、筒状部37の外周に配置されると共に、その軸方向の一端部が、底壁25の第2面31に形成した付勢手段支持部39に当接して支持されるようになっている。
【0031】
また、
図1,5,10に示すように、挿入部23の底壁25の第2面31側であって、周方向に隣接配置された通気孔27,27の間の幅狭部分からは、薄肉板状をなしたリブ41がそれぞれ立設されている。各リブ41の幅方向一側部は、挿入部23の内周面に連結され、幅方向の他側部は、コイルばね65の外側に配置されるようになっており(
図10参照)、挿入部23の剛性を高めると共に、コイルばね65の傾きや倒れを抑制して、安定した姿勢で支持する。
【0032】
更に
図1や
図10に示すように、前記当接部21の、表面側の外周縁部からは、環状をなした環状壁43が突出している。また、この環状壁43の突出方向先端面からは、周方向に均等な間隔を空けて複数のカバー壁45が延出している(この実施形態では、3個のカバー壁45が延出している)。各カバー壁45は、周方向に沿って略円弧状をなすように所定幅で延び、且つ、挿入部23の軸方向に沿って延びる板状をなしており、挿入部23に対して同心状に配置されていると共に、筒状部37の突出方向先端よりも長く延びている。また、隣接するカバー壁45,45の隙間は、弁部材50を構成する抜け止め部材70の外径よりも幅広に形成されており、同隙間から、抜け止め部材70を挿入可能となっている。なお、カバー壁45は、コイルばね65や、弁部材50の軸部53、弁部材50の抜け止め部材70を、外力から保護するものとなっている。
【0033】
また、
図1や
図4に示すように、挿入部23を構成する周壁24の外周には、一対の係合部ガイド片47,47が、挿入部23の周方向に沿って均等な間隔を空けて複数対設けられている(この実施形態では、3対の係合部ガイド片が設けられている)。各係合部ガイド片47は、その軸方向の基端部が、当接部21の裏面側に連結されていると共に、当接部21から離反する方向に向けて延びており、更に、挿入部23の底壁25の先端面よりも長く突出している。また、係合部ガイド片47は、ケース開口3内に挿入可能な外径で形成されており、更に、係合部ガイド片47の外周面は、円形孔状のケース開口3の内径に適合する円弧状をなしている(
図6参照)。
【0034】
そして、
図2や
図3に示すように、上記の一対の係合部ガイド片47,47の間には、弁部材50の係合部55がスライド可能に挿入配置され、係合部55のスライド動作をガイドすると共に、同係合部55を外力から保護するようになっている。
【0035】
次に、
図1,7,10等を参照して、ベース部材20にスライド可能に支持される、弁部材50について説明する。
【0036】
この実施形態の弁部材50は、ケース内部空間R1側からのガス等の気体の圧力を受け止める、略円形板状をなした弁体51を有している。この弁体51の、内面側(弁座33に向く面側)の径方向中央部からは、外周が円形状をなしたシール部材挿入部51аが隆起している。
図10に示すように、このシール部材挿入部51аが、第2シール部85の径方向内部に挿入されることで、弁体51に第2シール部85が装着されて一体化される。なお、シール部材挿入部51аが、第2シール部85の内部に挿入された状態では、シール部材挿入部51аの内面と、第2シール部85の表面とは、段差のない面一状態となる(
図10参照)。
【0037】
また、弁体51の内面側であって、外周縁よりもやや内径側からは、環状突起状をなした環状突部51bが突設されている。
図10に示すように、弁体51に第2シール部85が装着された状態では、第2シール部85の裏面側の外周縁部に、上記環状突部51bが食い込むようになっており、第2シール部85の径方向の位置ずれが規制されるようになっている。
【0038】
また、弁部材50は、弁座33に当接して通気孔27,35を閉じたときに、ケース開口3の、ケース外部空間R2側の周縁(以下、単に「ケース開口3の外部側周縁」ともいう)に係合する係合部55を有している(
図10参照)。
【0039】
図1に示すように、この実施形態の係合部55は、弁体51の外周に連設され、弁座33に向けて、軸部53の軸方向に沿って延出した板状壁部を有している。この板状壁部には、軸部53の軸方向に沿って互いに平行に延びる一対のスリット56,56が形成されていると共に(
図1参照)、弁体51の外周縁に、弁体51を厚さ方向に貫通する切欠き57が形成されており(
図7,10参照)、これらのスリット56及び切欠き57によって、撓み変形可能な、弾性片58が設けられている。また、
図10に示すように、この弾性片58の軸方向の基端部58а(自由端部)が、基端部58аよりも軸方向先端部側の部分に対して、外方に屈曲した形状となっている。
【0040】
そして、この弾性片58の基端部58аが、弁部材50のスライド動作に伴って、ケース開口3の外部側周縁に対して接離して係脱するようになっている(
図10,11参照)。すなわち、
図10に示すように、弁部材50の弁体51が弁座33に当接して通気孔27を閉じたときには、係合部55の弾性片58の基端部58аが、ケース開口3の外部側周縁に係合する。一方、
図11に示すように、弁部材50の弁体51が弁座33から離反して通気孔27を開いたときには、係合部55の弾性片58の基端部58аが、ケース開口3の外部側周縁から離脱するようになっている。また、
図9に示すように、ケース内部空間R1側から、ケース開口3に弁部材50を挿入した際に、基端部58аがケース開口3の内周に押圧されて、弾性片58が内方に撓み変形するようになっている。
【0041】
更に
図2や
図3に示すように、係合部55は、ベース部材20に設けた一対の係合部ガイド片47,47の間に配置されており、弁部材50のスライド時に、係合部55も一対の係合部ガイド片47,47によってスライドガイドされるようになっている。また、係合部55は、弾性片58の基端部58aを除いて、その外周面が、係合部ガイド片47の外周形状に適合する円弧状をなしており、一対の係合部ガイド片47,47の間に挿入配置されたときに、係合部ガイド片47に対して段差のない面一形状となっている(
図2参照)。
【0042】
更に
図10に示すように、弁体51の径方向中央には、軸孔53аが形成されており、弁体51の隆起部51аの内面側周縁から、略円筒状をなした軸部53が延出している。この軸部53が、ベース部材20の筒状部37に挿入されることで、ベース部材20に対して、弁部材50がスライド可能に支持される。なお、軸部53の軸方向(延出方向)の基端側は、天井壁53bによって閉塞されている。
【0043】
また、軸部53の外周には、軸方向に沿って延びるリブ60が、軸部53の周方向に均等な間隔を空けて設けられている(この実施形態では、3個のリブ60が延出している)。このようなリブ60を設けたことで、
図10,11に示すように、軸部53がベース部材20の筒状部37に挿入された状態で、筒状部37の内周と、複数のリブ60との間に、ケース内部空間R1及びケース外部空間R2を互いに連通させる通気路R3が形成されるようになっている。なお、通気路R3は、ベース部材20に設けた第2通気孔35に連通している。
【0044】
また、
図10に示すように、軸部53の天井壁53bからは、円筒状をなした突出部61が突出しており、その突出方向先端からは、フランジ部62が広がっている。このフランジ部62と、軸部53の天井壁53bと、突出部61との間には、抜け止め部材70の装着用の、装着溝63が形成されている。
【0045】
次に、
図1,8,10等を参照して、弁部材50の一部をなし、同弁部材50の軸部53の軸方向先端部に装着される、抜け止め部材70について説明する。
【0046】
この実施形態の抜け止め部材70は、外周が円形状をなし、内部に所定幅の切欠き部71а設けた、略C字形の板状をなした基部71を有している。この基部71の切欠き部71аの内面からは、基部71よりも薄肉で、且つ、切欠き部71аの内周形状にほぼ沿った形状をなした、装着突部73が設けられている。この装着突部73の内側には、一定幅の挿入溝73аと、それよりも奥側であって挿入溝73аよりも拡径した拡径溝73bとを有している。
【0047】
そして、弁部材50の軸部53の装着溝63に、抜け止め部材70の装着突部73を、挿入溝73а側から差し込んで押し込むことで、挿入溝73aを介して拡径溝73b内に、軸部53の突出部61が挿入されて、装着突部73が装着溝63に抜け止め保持され、軸部53に抜け止め部材70が装着される。
【0048】
また、
図10に示すように、付勢手段であるコイルばね65は、その軸方向の一端部がベース部材20の付勢手段支持部39に当接して支持されると共に、軸方向の他端部が、抜け止め部材70の裏面側に当接して支持されて、ベース部材20と、抜け止め部材70を含む弁部材50との間で、コイルばね65が圧縮状態で介装される。その結果、弁部材50の弁体51が、ベース部材20の弁座33に向けて付勢されて、弁体51が弁座33に常時当接する、すなわち、弁体51に装着された第2シール部85が第1弁座33aに当接し、弁体51が第2弁座33bに当接して、第1通気孔27及び第2通気孔35を閉じるようになっている。
【0049】
(変形例)
以上説明した実施形態では、ケース開口3は丸穴状をなしているが、ケース開口としては、矩形や、角形、楕円形等をなしていてもよく、解放弁を取付け可能な形状であればよい。
【0050】
また、圧力解放弁を構成する、ベース部材、弁部材、シール部材、抜け止め部材等の、形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。
【0051】
例えば、挿入部23の周壁24は略円筒状をなしているが、この周壁は、楕円筒状や角筒状等であってもよい。また、シール部材80,85は円環状をなしているが、楕円環状や角形環状等であってもよい。更に、弁体51は、ベース部材20の周壁24の形状に対応して、その外周が円形状をなしているが、弁体としては、例えば、楕円形状や角形状等であってもよく、弁座に接離して、通気孔を開閉可能な形状であればよい。
【0052】
更に、この実施形態では、ベース部材20及び第1シール部80は別体で、弁部材50及び第2シール部85も別体となっているが、これらのシール部を二色成形等によって一体形成して、1つのシール部材としてもよい(これについては、後述の第2実施形態で説明する)。
【0053】
また、ベース部材20は、挿入部23を有する有底筒状をなしているが、例えば、板状等であってもよく、少なくとも、ケース開口の周縁に、ケース内部空間側からシール部を介して当接する当接部を有し、弁座がケース外部空間R2側に配置されている構成であればよい。また、ケース外部空間R2側に面する第1面に、弁座が形成され、ケース内部空間R1側に面する第2面に、付勢手段支持部が形成されていることが好ましい。なお、ベース部材が板状である場合には、弁部材の弁体を筒状として、その筒状部先端が、ベース部材の弁座に接離可能とすればよい。
【0054】
更に、この実施形態では、弁部材50側に係合部55を設けて、ケース開口3の外部側周縁に係脱するように構成されているが、例えば、ベース部材側にケース開口に係合可能な係合部を形成してもよい(これについては第3実施形態で説明する)。
【0055】
また、この実施形態では、第1通気孔27及び第2通気孔35の形状の異なる2種類の通気孔を有しているが、1種類や3種類以上の通気孔を形成してもよい。なお、第1通気孔27は3個となっているが、1個や2個、4個以上であってもよい。
【0056】
また、この実施形態では、ベース部材20側に一対の係合部ガイド片47,47を3組設け、これに対応して弁部材50側に3個の係合部55を設けたが、一対の係合部ガイド片は1組や2組、4組以上であってもよく、係合部も1個や2個、4個以上であってもよい。
【0057】
更に、この実施形態では、弁部材50の軸部53が、ベース部材20の筒状部37の先端開口から挿出されて、同軸部53の先端に装着された抜け止め部材70によって、軸部53が抜け止めされて、弁部材50がベース部材20にスライド支持されるようになっているが(ベース部材20側に筒状部37、弁部材50側に軸部53を有する構造)、弁部材をベース部材にスライド支持させる構造としては、この態様に限定されない。例えば、ベース部材側にケース外部空間R2側に延びる軸部を設け、弁部材側に軸部が挿入される筒状部を設けてもよい。
【0058】
また、この実施形態では、付勢手段は、その一端が、ベース部材20側の付勢手段支持部39に支持され、他端が、軸部53の先端部に装着された抜け止め部材70に支持されているが、付勢手段の支持構造としては特に限定されない。
【0059】
(作用効果)
次に、上記構成からなる本発明に係る解放弁10の作用効果について説明する。
【0060】
まず、解放弁10の組付け工程について説明する。
【0061】
すなわち、ベース部材20の一対の係合部ガイド片47,47の間に、弁部材50の対応する係合部55を位置決めした状態で、第2シール部85を装着した弁部材50の軸部53を、ベース部材20の第2通気孔35から筒状部37内に挿入して押し込んでいく。そして、一対の係合部ガイド片47,47の間に、係合部55を挿入配置すると共に、筒状部37の先端開口から、軸部53の突出部61を挿出させる。また、ベース部材20の筒状部37の外周に、コイルばね65を配置して、その軸方向一端部をベース部材20の付勢手段支持部39に当接支持させる。この状態で、ベース部材20の所定のカバー壁45,45の間から、抜け止め部材70を、弁部材50の軸部53の軸方向に直交する方向(横方向)から差し込んで、抜け止め部材70の装着突部73を、軸部53の装着溝63に抜け止め保持した状態で、軸部53に抜け止め部材70を装着する。その結果、コイルばね65の他端部が、抜け止め部材70に支持されて圧縮状態で介装され、解放弁10を組立てることができる(
図2,3参照)。
【0062】
こうして組立てた解放弁10の挿入部23を、
図1の矢印に示すように、ケース内部空間R1側からケース開口3に挿入していき、同ケース開口3を介して、ケース外部空間R2側へと挿出させていく。そして、ケース開口3の内部側周縁に、当接部21が第1シール部80を介して間接的に当接するまで押し込んでいく。すると、
図9に示すように、弾性片58の基端部58aが、ケース開口3の内周によって押圧されて、弾性片58が内方に撓み変形する。その後、更に解放弁10を押し込んで、弾性片58の基端部58aが、ケース開口3の外部側周縁を抜け出ると、弾性片58が弾性復帰して、基端部58aが、ケース開口3の外部側周縁に係合する。それと共に、ケース開口3の内部側周縁に、ベース部材20の当接部21が、第1シール部80を介して間接的に当接する。その結果、
図10に示すように、ケース開口3にベース部材20が固定され、ひいてはケース1に解放弁10全体を取付けることができる。
【0063】
そして、
図10に示す状態では、ベース部材20の当接部21が、第1シール部80を介して間接的に、ケース開口3の内部側周縁に当接すると共に、弁部材50の弁体51が、ベース部材20の弁座33に向けて付勢されて、弁体51に装着された第2シール部85及び弁体51が、弁座33a,33bにそれぞれ当接して、通気孔27,35が閉塞されている。この状態で、蓄電デバイスによる、駆動源や電装部品への電力供給や、蓄電デバイスが収容されたケースの外部環境や内部環境等によって、蓄電デバイスを起因として、ケース内に気体が生じる(例えば、リチウムイオンバッテリー等の蓄電デバイスが、モータ等の駆動によって電力を供給すると、電解液の化学反応でガスが生じる)と、以下のように動作する。
【0064】
すなわち、ケース1の内部空間R1の圧力が上昇して、付勢手段であるコイルばね65の付勢力を超えると、
図11に示すように、付勢手段の付勢力に抗して、第2シール部85や弁体51が、弁座33a,33bから離反する方向にスライドして、通気孔27,35が開口する。それにより、通気孔27,35や、筒状部37内に挿入された軸部53の複数のリブ60間に形成された通気路R3を通じて、ケース1の内部空間R1と外部空間R2とが連通する。
【0065】
その結果、
図11の矢印に示すように、ケース1の内部空間R1の気体が、通気孔27,35や通気路R3を通過して、ケース1の外部空間R2へと排気されるため、ケース1内の圧力を解放することができる(低減することができる)。
【0066】
そして、この解放弁10においては、ベース部材20は、ケース開口3の周縁に、ケース内部空間R1側からシール部(第1シール部80)を介して当接する当接部21を有しているので、ベース部材20とケース開口3の周縁との間に、第1シール部80が配置され、且つ、この第1シール部80が、ケース内部空間R2に配置されることになる。したがって、第1シール部80には、ベース部材20の当接部21からの押圧力に加え、ケース内部空間R1側の圧力が加わることになるため、ベース部材20とケース開口3の周縁との間のシール性を向上させることができる。それと共に、第1弁座33aや第2弁座33bからなる弁座33が、ケース外部空間R2側に配置されているので、弁体51を大きく形成することに支障が生じにくく、それによって通気孔27,35の開口面積を大きく確保することができ、弁体51が開いたときに、ケース内部空間R1側の気体を、ケース外部空間R2側へスムーズに排気することができる(
図11参照)。
【0067】
また、
図11に示すように、ケース内部空間R1側の圧力が上昇して、弁部材50の弁体51が弁座33から離反して、通気孔27,35を開いた状態では、係合部55の弾性片58の基端部58aが、ケース開口3の外部側周縁から外れるが、この場合であっても、ケース開口3から解放弁10が外れることはない。すなわち、この解放弁10においては、
図10に示すように、ケース開口3の周縁に、ケース内部空間R1側から、ベース部材20の当接部21が当接して、ベース部材20がケース1に固定されて、ケース1に解放弁10が取付けられるようになっている。そのため、ケース内部空間R1の圧力が上昇しても、ベース部材20の当接部21がその内圧で押圧されて、ケース開口3の内部側周縁に当接した状態が維持されるため、ベース部材20がケース開口3から外れることを防止して、ケース1から解放弁10が脱落することを確実に防止することができる。
【0068】
また、この実施形態においては、ベース部材20は、ケース内部空間R1側からケース開口3に挿入され、ケース外部空間R2側へ突出する挿入部23を有しており、弁座33は、挿入部23の挿入方向先端側に設けられている。
【0069】
上記態様によれば、弁座33が、挿入部23の挿入方向先端側に設けられているので、弁座33の形状やレイアウトの自由度が高まり、通気孔27,35の開口面積をより大きく確保することができ、ケース内部空間R1側の気体を、ケース外部空間R2側へ、よりスムーズに排気することができる。
【0070】
更に、この実施形態においては、弁部材50は、弁座33に当接して通気孔27,35を閉じたときに、ケース開口3の、ケース外部空間R2側の周縁に係合する、係合部55を有している。
【0071】
上記態様によれば、ケース内部空間R1の圧力が上昇する際は、ケース開口3の内部側周縁に、ベース部材20の当接部21が当接して、ケース開口3からのベース部材20の外れを防止できる一方、弁部材50の弁体51が弁座33に当接して通気孔27,35を閉じたときには、係合部55が、ケース開口3の外部側周縁に係合して、ケース開口3からのベース部材20の外れが防止される。したがって、弁部材50の弁体51の開き時や閉じ時のいずれにおいても、ケース開口3に対してベース部材20を、ガタツキを抑制しながら、しっかりと固定することができる。また、弁部材50側に係合部55を設けたので、係合部55を作りやすい(ベース部材側に係合部を設けた場合、型抜き等の関係で作りにくい)。
【0072】
また、この実施形態においては、ベース部材20は、通気孔(第2通気孔35)を介して延びる筒状部37を有しており、弁部材50は、弁座33に接離する弁体51と、該弁体51から突出し筒状部37に挿入される軸部53と、該軸部53の外周に形成された複数のリブ60とを有し、該リブ60と筒状部37との間に通気路R3が形成されている。
【0073】
上記態様によれば、ベース部材20に、第1通気孔27とは、別の第2通気孔35を形成したので、ベース部材20全体の通気孔の開口面積を、より大きく確保することができる。また、第2通気孔35を介して延びる筒状部37内に挿入される、弁部材50の軸部53が挿入された複態で、複数のリブ60と筒状部37との間に通気路R3が形成されているので、弁部材50のスライド動作を確保することができると共に、ケース内部空間R1側の気体を、通気路R3を通して筒状部37内で流通させて、通気路R3に連通する第2通気孔35を通して、ケース外部空間R2へと排気することができ、弁部材50のガイド性及び通気性を確保することができる。
【0074】
(蓄電デバイス用圧力解放弁の第2実施形態)
図12及び
図13には、本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0075】
この実施形態の蓄電デバイス用圧力解放弁10A(以下、単に「解放弁10A」ともいう)は、シール部材の構造が前記実施形態と異なっている。
【0076】
すなわち、この実施形態の解放弁10Aでは、前記実施形態の解放弁10のように、第1シール部80及び第2シール部85を備えるものではなく、ベース部材20Aの外周に配置された1個のシール部材90を有している。そして、このシール部材90に、ケース開口3の周縁に当接すると共に、当接部21に当接してケース開口3の周縁との間で挟持されるシール部91と、弁部材50の弁体51が接離する弁座95とが、設けられている。
【0077】
より具体的に説明すると、この実施形態におけるシール部材90は、ケース開口3の内部側周縁に弾性的に当接する、環状のフランジ状をなしたシール部91と、該シール部91の内周縁から延出し、外周にテーパ面を設けた略円筒状をなした周壁93とを有している。なお、周壁93は、ベース部材20Aの挿入部23と同様に、ケース開口3に、ケース内部空間R1側から挿入されるようになっている。また、周壁93の先端面から、環状の弁座95が突設されていると共に、周壁93の先端部側の内周から、装着突部97が突設されている。すなわち、このシール部材90は、周壁93の基端側にシール部91が設けられ、周壁93の先端側に弁座95が設けられており、周壁93を介してシール部91及び弁座95が一体的に形成されていると共に、前記周壁93はケース開口3の内周に配置される構成となっている。更に、周壁93の基端部側外周には、ケース開口3の外部側周縁に係合する、係合段部99が形成されている。
【0078】
また、ベース部材20Aの挿入部23の周壁24の先端部側外周には、上記シール部材90の装着突部97が係合する、装着溝24aが形成されている。したがって、ベース部材20Aの挿入部23を、シール部材90の周壁93内に挿入し、装着突部97を装着溝24aに係合させることで、ベース部材20Aの挿入部23の外周に、シール部材90が装着されるようになっている。
【0079】
この解放弁10Aは、
図12に示すように、常時は、ベース部材20Аの当接部21が、シール部材90のシール部91を介して、ケース開口3の内部側周縁に当接し、弁部材50の弁体51が、ベース部材20の弁座33に向けて付勢されて、ベース部材20Aに装着されたシール部材90の弁座95や、ベース部材20側の弁座33にそれぞれ当接して、通気孔27,35が閉塞されている。そして、ケース1の内部空間R1の圧力が上昇して、付勢手段であるコイルばね65の付勢力を超えると、
図13に示すように、弁体51が、弁座95,33から離反して、通気孔27,35が開口するので、ケース内部空間R1側の気体を、ケース外部空間R2へと排気することができる。
【0080】
そして、この実施形態の解放弁10Аにおいては、前記実施形態の解放弁10のような2つのシール部80,85は不要で、1個のシール部材90のみで構成されており、このシール部材90に、シール部91と弁座95とが設けられているので、部品点数を削減して製造コストを低減することができる。また、シール部91と弁座95とを一体形成した周壁93が、ケース開口3の内周に配置されるようになっているので(
図12参照)、ケース開口3とベース部材20Aとのシール性をより向上させることができる。
【0081】
(蓄電デバイス用圧力解放弁の第3実施形態)
図14及び
図15には、本発明に係る蓄電デバイス用圧力解放弁の、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0082】
この実施形態の蓄電デバイス用圧力解放弁10B(以下、単に「解放弁10B」ともいう)は、係合部の構造が、前記実施形態と異なっている。
【0083】
すなわち、この解放弁10Bにおいては、弁部材50Bに係合部は設けられておらず、ベース部材20B側に係合部46が設けられている。
図14に示すように、ベース部材20Bの挿入部23を構成する周壁24の外側には、軸方向に延びる空隙48を介して、撓み壁49が撓み変形可能に形成されている。この撓み壁49は、周壁24に軸方向に沿って延びており、その基端側が当接部21の内周縁裏側に連結されている。また、撓み壁49の基端部寄りの外周には、ケース開口3の外部側周縁に係合する、係合突部49aが突設されている。
【0084】
そして、この解放弁10Bは、ケース1に取付ける際には、挿入部23を、ケース内部空間R1側からケース開口3に挿入していくが、この際、撓み壁49は、その自由端部側からケース開口3に挿入されていく。このとき、ケース開口3の内周に、撓み壁49の係合突部49aが押圧されて、撓み壁49が内方に撓み変形し、係合突部49aが、ケース開口3の外部側周縁を抜け出ると、撓み壁49が弾性復帰して、係合突部49aが、ケース開口3の外部側周縁に係合する。それと共に、ケース開口3の内部側周縁に、ベース部材20Bの当接部21が、第1シール部80を介して間接的に当接する。その結果、
図14に示すように、ケース開口3にベース部材20Bが固定され、ひいてはケース1に解放弁10B全体を取付けることができる。
【0085】
また、この解放弁10Bは、常時は、弁部材50Bの弁体51が、ベース部材20の弁座33に向けて付勢され、通気孔27,35が閉塞されており(
図14参照)、ケース1の内部空間R1の圧力が上昇して、付勢手段であるコイルばね65の付勢力を超えると、
図15に示すように、弁体51が、弁座33から離反して、通気孔27,35が開口するので、ケース内部空間R1側の気体を、ケース外部空間R2へと排気することができる。
【0086】
そして、この実施形態の解放弁10Аにおいては、前記実施形態の解放弁10のように、弁部材側に係合部が設けられておらず、ベース部材20B側に係合部46を設けた構成となっているので、弁部材50B側の形状やレイアウトの自由度を高めることができる。
【0087】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 ケース
3 ケース開口
10,10А,10B 蓄電デバイス用圧力解放弁(解放弁)
20,20A,20B ベース部材
21 当接部
23 挿入部
27 第1通気孔
29 第1面
31 第2面
33 弁座
35 第2通気孔
39 付勢手段支持部
46 係合部
50,50B 弁部材
51 弁体
53 軸部
60 リブ
65 コイルばね(付勢手段)
70 抜け止め部材
80 第1シール部(シール部)
85 第2シール部
90 シール部材
R1 ケース内部空間
R2 ケース外部空間
R3 通気路