(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018401
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】エアクリーナ
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20230201BHJP
F02M 35/16 20060101ALI20230201BHJP
B62J 40/00 20200101ALI20230201BHJP
【FI】
F02M35/10 101D
F02M35/10 101L
F02M35/10 101M
F02M35/16 L
F02M35/16 M
B62J40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122506
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】福井 章仁
(72)【発明者】
【氏名】八木 慎太郎
(57)【要約】
【課題】エンジン後方に配置された場合でも、エンジンの低回転時から高回転時までの出力を向上させる。
【解決手段】エアクリーナ(50)は、エンジンの後方で車体フレームの内側に配置されている。エアクリーナは、吸気室(56)が形成されたエアクリーナケース(51)と、吸気室(56)をダーティサイド(58)とクリーンサイド(59)に分けるエアフィルタ(57)と、車両後方からダーティサイドに空気を取り込むインレットチューブ(62)と、クリーンサイドからエンジンに空気を送るアウトレットチューブ(64)と、を備えている。エアクリーナケースの上側にはインレットチューブとアウトレットチューブが取り付けられ、エアクリーナケースの下側にはダーティサイドよりもクリーンサイドを下方に拡張させた拡張部(65)が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの後方で車体フレームの内側に配置されたエアクリーナであって、
吸気室が形成されたエアクリーナケースと、
前記吸気室をダーティサイドとクリーンサイドに分けるエアフィルタと、
車両後方から前記ダーティサイドに空気を取り込むインレットチューブと、
前記クリーンサイドから前記エンジンに空気を送るアウトレットチューブと、を備え、
前記エアクリーナケースの上側には前記インレットチューブと前記アウトレットチューブが取り付けられ、前記エアクリーナケースの下側には前記ダーティサイドよりも前記クリーンサイドを下方に拡張させた拡張部が形成されていることを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
前記インレットチューブの下流端と前記アウトレットチューブの上流端が略同じ高さに位置していることを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項3】
前記アウトレットチューブの上流端が前記拡張部に向けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエアクリーナ。
【請求項4】
側面視にて前記エアフィルタの上部が下部よりも前方になるように傾いており、
側面視にて前記インレットチューブの下流端が前記エアフィルタの表面中央に対向し、
側面視にて前記アウトレットチューブの上流端が前記エアフィルタの裏面上部に対向していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【請求項5】
前記エンジンが2気筒エンジンであり、前記アウトレットチューブの長さが異なる一対のアウトレットチューブであり、
前記一対のアウトレットチューブには上流端に向かって広がる傘部が形成されており、
前記一対のアウトレットチューブの上流端が前記エアフィルタの中央に向けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【請求項6】
前記インレットチューブが前記エアクリーナケースから車両後方に延びており、
前記拡張部が前記インレットチューブよりも下方で車両後方に延びていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【請求項7】
前記車体フレームは、シートを下方から支持するシートレールを有しており、
前記エアフィルタが前記シートレールの下端よりも上方に位置し、前記拡張部が前記シートレールの下方で前記エアフィルタよりも車両後方に延びていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエアクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両として、エンジン後方にエアクリーナが配置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のエアクリーナは、エアクリーナケースの後面にインレットチューブが取り付けられ、エアクリーナケースの前面にアウトレットチューブが取り付けられている。インレットチューブからエアクリーナケースに空気が取り込まれ、エアクリーナ内に配置されたフィルタによって空気が濾過される。そして、エアクリーナからアウトレットチューブにクリーンな空気が入り込み、アウトレットチューブを通じてクリーンな空気がスロットルボディに送り出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエアクリーナはシート下方で車体フレームの内側の狭いスペースに配置されている。このため、エンジンの要求出力を満足するエアクリーナの容積を確保することが難しい。特に、スロットル急開時に空気量が不足するという問題がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、エンジン後方に配置された場合でも、エンジンの低回転時から高回転時までの出力を向上させることができるエアクリーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のエアクリーナは、エンジンの後方で車体フレームの内側に配置されたエアクリーナであって、吸気室が形成されたエアクリーナケースと、前記吸気室をダーティサイドとクリーンサイドに分けるエアフィルタと、車両後方から前記ダーティサイドに空気を取り込むインレットチューブと、前記クリーンサイドから前記エンジンに空気を送るアウトレットチューブと、を備え、前記エアクリーナケースの上側には前記インレットチューブと前記アウトレットチューブが取り付けられ、前記エアクリーナケースの下側には前記ダーティサイドよりも前記クリーンサイドを下方に拡張させた拡張部が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のエアクリーナによれば、エアクリーナケースの上側にインレットチューブとアウトレットチューブが取り付けられているため、インレットチューブからアウトレットチューブにダイレクトに空気が流れ易くなる。よって、エンジンの低回転時から高回転時まではエンジンに向けて空気がスムーズに流れてエンジン出力が向上される。エアクリーナケースにはダーティサイドよりも下方にクリーンサイドを拡張された拡張部が形成されているため、車体フレームの内側の狭いスペースであってもクリーンサイドの容積が十分に確保されている。よって、スロットル急開時でも、拡張部の内側の空気が利用されてエンジン出力が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図7】
図6のエアクリーナからフィルタカバーを外した上面図である。
【
図8】
図7のエアクリーナからアッパーケースを外した上面図である。
【
図9】本実施例のエアクリーナ内の空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のエアクリーナはエンジンの後方で車体フレームの内側に配置されている。エアクリーナのエアクリーナケースには吸気室が形成されており、吸気室はエアフィルタによってダーティサイドとクリーンサイドに分けられている。ダーティサイドにはインレットチューブを通じて車両後方から空気が取り込まれ、クリーンサイドからアウトレットチューブを通じてエンジンに空気が送られている。エアクリーナケースの上側にはインレットチューブとアウトレットチューブが取り付けられており、インレットチューブからアウトレットチューブにダイレクトに空気が流れ易くなる。このため、エンジンの低回転時から高回転時まではエンジンに向けて空気がスムーズに流れてエンジン出力が向上される。エアクリーナケースの下側にはダーティサイドよりもクリーンサイドを下方に拡張させた拡張部が形成され、車体フレームの内側の狭いスペースであってもクリーンサイドの容積が十分に確保されている。このため、スロットル急開時でも、拡張部の内側の空気が利用されてエンジン出力が向上される。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、パイプ・板金によって形成されるダイヤモンド型の車体フレーム10に、エンジン40や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ11から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム13とを有している。一対のメインフレーム12によってエンジン40の後部が支持され、一対のダウンフレーム13によってエンジン40の前部が支持されている。エンジン40が車体フレーム10に支持されることで車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム12の前側部分はエンジン40の上方に位置するタンクレール14になっており、タンクレール14によって燃料タンク31が下方から支持されている。メインフレーム12の後側部分はエンジン40の後方に位置するボディフレーム15になっており、ボディフレーム15の下半部にはスイングアーム25が揺動可能に支持されている。ボディフレーム15の上半部にはアッパーレール22及びロアレール23から成るシートレール21が取り付けられている。アッパーレール22の上部には、燃料タンク31の後方においてライダーシート32及びピリオンシート33が支持されている。
【0013】
ヘッドパイプ11には、ステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク34が操舵可能に支持されている。フロントフォーク34の下部には前輪35が回転可能に支持されており、前輪35の上部はフロントフェンダ(不図示)に覆われている。スイングアーム25はボディフレーム15から後方に向かって延びている。スイングアーム25の後端には後輪36が回転可能に支持され、後輪36の上方はリアフェンダ(不図示)に覆われている。後輪36にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン40が連結されており、変速機構を介してエンジン40からの動力が後輪36に伝達されている。
【0014】
ところで、2気筒エンジンを搭載した車幅が狭い機種で、かつ高回転時でも出力が求められる機種に有効なエアクリーナが求められている。エンジンの後方にエアクリーナが配置される機種の場合、メインフレームのフレーム幅やシートレールのレール幅によってエアクリーナの配置スペースが制限される。このため、エアクリーナの容積を確保することが難しく、特にスロットル急開時では吸入空気量が不足する。そこで、本実施例の鞍乗型車両1では、シートレール21にエアクリーナ50が干渉しないように、エアクリーナ50の下部を下方に拡張させて容積を確保している。
【0015】
図2から
図8を参照して、エンジンの周辺構成及びエアクリーナについて説明する。
図2は本実施例のエンジン周辺の左側面図である。
図3は本実施例のエンジン周辺の上面図である。
図4は本実施例のエアクリーナの側面図である。
図5は本実施例のエアクリーナの断面図である。
図6は本実施例のエアクリーナの上面図である。
図7は
図6のエアクリーナからフィルタカバーを外した上面図である。
図8は
図7のエアクリーナからアッパーケースを外した上面図である。
【0016】
図2及び
図3に示すように、エンジン40は、2気筒エンジンであり、上下割構造のクランクケース41を有している。クランクケース41の上部にはシリンダ42、シリンダヘッド43、シリンダヘッドカバー44が取り付けられている。クランクケース41の左側面には、マグネト(不図示)を側方から覆うマグネトカバー45が取り付けられている。マグネトカバー45の後方には、ドライブスプロケット(不図示)を側方から覆うスプロケットカバー46が取り付けられている。クランクケース41の右側面にはクラッチ(不図示)を側方から覆うクラッチカバー47が取り付けられている。
【0017】
シリンダヘッド43の後面にはスロットルボディ48が接続され、スロットルボディ48の上流(後側)にはエアクリーナ50が接続されている。エアクリーナ50は、エンジン40の後方で一対のメインフレーム12及び一対のシートレール21の内側に配置されている。上記したように、一対のメインフレーム12の後部は一対のボディフレーム15になっており、この一対のボディフレーム15の内側にエアクリーナ50の前端部が位置付けられている。ボディフレーム15の上半部は後方に向かって斜め下方に傾いており、ボディフレーム15の後方のエアクリーナケース51も斜め下方に傾けられている。
【0018】
ボディフレーム15の上半部の後縁には上側ブラケット16及び下側ブラケット17が形成されている。上側ブラケット16にはシートレール21のアッパーレール22が接続され、下側ブラケット17にはシートレール21のロアレール23が接続されている。アッパーレール22はエアクリーナケース51の上半部の側方を横切って後方に延びており、ロアレール23はエアクリーナケース51の下半部の側方を横切って斜め後方に延びている。アッパーレール22及びロアレール23の前側はブリッジ24を介して連結され、アッパーレール22及びロアレール23の後側は車両後部にて連結されている。
【0019】
エアクリーナケース51の前部はアッパーレール22から上方にはみ出しており、前部のはみ出し部分はライダーシート32(
図1参照)の内側の空間に収容されている。エアクリーナケース51の後部はロアレール23から下方にはみ出しており、後部のはみ出し部分はエアクリーナケース51内の吸気室を拡張させる拡張部65になっている。エアクリーナケース51の拡張部65はスイングアーム25(
図1参照)の上方に位置付けられ、スイングアーム25の揺動範囲を避けるように拡張部65が後方に延びている。このように、シートレール21の下側スペースを利用してエアクリーナケース51の容積が拡張されている。
【0020】
図4及び
図5に示すように、エアクリーナ50のエアクリーナケース51は、上下割りのアッパーケース52及びロアケース53と、アッパーケース52の後面に取り付けられたフィルタカバー54とを有している。アッパーケース52及びロアケース53は前方から後方に向かって斜め下方に広がっており、フィルタカバー54はアッパーケース52の後側でドーム状に膨出している。アッパーケース52の後面に形成された開口55を通じて、アッパーケース52及びロアケース53の内部空間とフィルタカバー54の内部空間が連なって、エアクリーナ50の内側に吸気室56が形成されている。
【0021】
アッパーケース52の後面の開口55にはエアフィルタ57が配置されており、フィルタカバー54によってエアフィルタ57が後方から覆われている。エアフィルタ57の上部が下部よりも車両前方になるように、アッパーケース52の上面に沿ってエアフィルタ57が傾けられている。エアフィルタ57によって空気が浄化されることで、吸気室56がダーティサイド58とクリーンサイド59に分けられている。すなわち、エアフィルタ57よりも上流側のフィルタカバー54によってダーティサイド58が形成され、エアフィルタ57よりも下流側のアッパーケース52及びロアケース53によってクリーンサイド59が形成されている。
【0022】
フィルタカバー54の左右側面61には一対のインレットチューブ62が取り付けられている。一対のインレットチューブ62はフィルタカバー54の左右側面61から車両後方に延びており、一対のインレットチューブ62によって車両後方からダーティサイド58に空気が取り込まれる。ロアケース53の前面63には一対のアウトレットチューブ64が取り付けられている。一対のアウトレットチューブ64はロアケース53の前面63を貫通して前後に延びており、一対のアウトレットチューブ64によってクリーンサイド59からエンジン40(
図1参照)に空気が送られている。
【0023】
インレットチューブ62及びアウトレットチューブ64はエアクリーナケース51の上側に取り付けられている。上記したように、インレットチューブ62がフィルタカバー54に取り付けられ、アウトレットチューブ64がロアケース53の前面63に取り付けられ、側面視にてフィルタカバー54とロアケース53の前面63がエアフィルタ57を介して前後方向で対向している。インレットチューブ62の下流端とアウトレットチューブ64の上流端が略同じ高さに位置しているため、インレットチューブ62からアウトレットチューブ64にダイレクトに空気が流れ易くなる。
【0024】
アッパーケース52及びロアケース53がフィルタカバー54よりも下方に突き出して、エアクリーナケース51の下側に拡張部65が形成されている。また、拡張部65はインレットチューブ62よりも車両後方に延びている。拡張部65によってダーティサイド58よりもクリーンサイド59が下方かつ車両後方に拡張され、スロットル急開時で空気量が不足しないようにクリーンサイド59の容積が十分に確保されている。また、拡張部65は吸気脈動による騒音を抑制するボリュームになっている。インレットチューブ62の下方に拡張部65が位置付けられているため、拡張部65が壁になってインレットチューブ62の砂塵等の吸い込みが抑えられる。
【0025】
アウトレットチューブ64の上流端(後端)は、エアフィルタ57の上部と略同じ高さに位置付けられている。また、アウトレットチューブ64の上流端は拡張部65に向けられている。このため、エアフィルタ57を介してダーティサイドからアウトレットチューブ64に空気が入り込み易くなると共に、クリーンサイド59の拡張部65からアウトレットチューブ64に空気が入り込み易くなっている。
【0026】
また、アッパーケース52の前部にはブリーザニップル67が形成されており、ブリーザニップル67にはエンジン40から延びるブリーザホース(不図示)が接続される。ロアケース53の前部には二次エアニップル69が形成されており、二次エアニップル69には排気系へ延びる二次エアホース(不図示)が接続されている。ロアケース53の底部にはドレンプラグ71が設けられており、ドレンプラグ71からエアクリーナケース51内の水が排出される。
【0027】
図6及び
図7に示すように、エアフィルタ57はフィルタカバー54によって上方から全体的に覆われている。上記したようにフィルタカバー54には一対のインレットチューブ62が取り付けられており、上面視にて一対のインレットチューブ62がアッパーケース52よりも左右方向の外側に位置している。一対のインレットチューブ62の上流側(後側)はシートレール21(
図3参照)に沿って車両後方に延びており、一対のインレットチューブ62の下流側(前側)はエアフィルタ57の中央に向けられている。一対のインレットチューブ62からエアフィルタ57の中央に向かって空気が流れ易くなっている。
【0028】
図7及び
図8に示すように、ロアケース53の前面には左右に離間して一対のアウトレットチューブ64が取り付けられている。一対のアウトレットチューブ64の上流側(後側)はエアフィルタ57に向かって延びており、一対のアウトレットチューブ64の下流側(前側)はスロットルボディ48(
図3参照)に接続されている。一対のアウトレットチューブ64の長さが異なっており、右側のアウトレットチューブ64よりも左側のアウトレットチューブ64が長く形成されている。一対のアウトレットチューブ64の長さの違いによってエンジン40の出力特性が調整されている。
【0029】
一対のアウトレットチューブ64の上流側はエアフィルタ57の中央に向けられているため、一対のインレットチューブ62からエアフィルタ57の中央を通って一対のアウトレットチューブ64に空気が流れ易くなっている。一対のアウトレットチューブ64には上流端に向かって広がる傘部72が形成されており、傘部72によってアウトレットチューブ64に空気が流れ込み易くなっている。一対のアウトレットチューブ64の長さが異なり、一対のアウトレットチューブ64の傘部72が前後にずれているため、エアフィルタ57の中央で一対の傘部72が干渉することがない。
【0030】
図9を参照して、エアクリーナと車体フレームの位置関係及びエアクリーナの空気の流れについて説明する。
図9は本実施例のエアクリーナ内の空気の流れを示す図である。
【0031】
図9に示すように、エアクリーナケース51の後側はシートレール21に支持されており、エアクリーナケース51の前側は一対のアウトレットチューブ64を介してスロットルボディ48(
図2参照)に支持されている。一対のアウトレットチューブ64は一対のボディフレーム15の間に位置付けられ、一対のインレットチューブ62は一対のシートレール21の間に位置付けられている。各シートレール21のアッパーレール22からはエアクリーナケース51の前部が前斜め上方にはみ出しており、各シートレール21のロアレール23からはエアクリーナケース51の下部の拡張部65が後斜め下方にはみ出している。
【0032】
上記したように、側面視にてエアフィルタ57の上部が下部よりも車両前方になるように傾いている。エアフィルタ57の上部がアッパーレール22よりも上方に位置しており、エアフィルタ57がロアレール23よりも上方に位置している。インレットチューブ62の下流端(前端)がエアフィルタ57の表面中央に対向しており、アウトレットチューブ64の上流端(後端)がエアフィルタ57の裏面上部に対向している。傾いたエアフィルタ57の表面中央と裏面上部が略同じ高さであるため、エアフィルタ57を挟んでインレットチューブ62の下流端とアウトレットチューブ64の上流端が対向している。
【0033】
エアフィルタ57の下方には、クリーンサイド59を拡張させた拡張部65が位置している。拡張部65はロアレール23の下方でエアフィルタ57よりも車両後方に延びており、ダーティサイド58よりもクリーンサイド59を下方及び車両後方に拡張させている。拡張部65によってクリーンサイド59が下方及び車両後方に拡張されるため、2気筒エンジンを搭載した車幅が狭い機種であってもクリーンサイド59の容積が十分に確保されている。拡張部65がエアフィルタ57の下方に位置しているため、拡張部65によってインレットチューブ62からアウトレットチューブ64への空気の流れが阻害されることがない。
【0034】
エンジン40の低回転時から高回転時には、インレットチューブ62からダーティサイド58に空気が取り込まれ、矢印A1に示すようにエアフィルタ57の表面中央から裏面上部に向かって空気が車両前方に流れている。エアフィルタ57の裏面上部からクリーンサイド59のアウトレットチューブ64に空気が入り込み、アウトレットチューブ64を通じてエンジン40に空気が送り出されている。このように、主にエアクリーナ50の上側を前方に空気が流れて、エアフィルタ57を挟んでインレットチューブ62からアウトレットチューブ64に空気が流れ易くなってエンジン出力が向上されている。
【0035】
スロットル急開時には、矢印A1に示すようにインレットチューブ62からダーティサイド58に空気が流れ込む他、矢印A2に示すように拡張部65からアウトレットチューブ64にも空気が流れ込んでいる。アウトレットチューブ64の上流端(後端)が後斜め下方を向いているため、拡張部65からアウトレットチューブ64に向かって空気が流れ易くなっている。このように、インレットチューブ62からアウトレットチューブ64へのダイレクトな空気の流れに加え、拡張部65の内側の空気溜まりからアウトレットチューブ64に空気が吸い出されて、吸気脈動効果が高められてエンジン出力が向上されている。
【0036】
以上、本実施例によれば、エアクリーナケース51の上側にインレットチューブ62とアウトレットチューブ64が取り付けられているため、インレットチューブ62からアウトレットチューブ64にダイレクトに空気が流れ易くなる。よって、エンジン40の低回転時から高回転時まではエンジン40に向けて空気がスムーズに流れてエンジン出力が向上される。エアクリーナケース51にはダーティサイド58よりも後斜め下方にクリーンサイド59を拡張された拡張部65が形成されているため、車体フレーム10の内側の狭いスペースであってもクリーンサイド59の容積が十分に確保されている。よって、スロットル急開時でも、拡張部65の内側の空気が利用されてエンジン出力が向上される。
【0037】
なお、本実施例では、拡張部がダーティサイドよりもクリーンサイドを後斜め下方に拡張させているが、拡張部は少なくともダーティサイドよりもクリーンサイドを下方に拡張させていればよい。
【0038】
また、本実施例では、エンジンとして2気筒エンジンを例示したが、エンジンの種類は特に限定されない。
【0039】
また、本実施例では、インレットチューブの下流端とアウトレットチューブの上流端が略同じ高さに位置付けられているが、少なくともエアクリーナケースの上側にインレットチューブとアウトレットチューブが取り付けられていればよい。インレットチューブからアウトレットチューブへのダイレクトな空気の流れが作り出されれば、インレットチューブとアウトレットチューブが上下方向にズレが有ってもよい。
【0040】
また、本実施例では、アウトレットチューブの上流端が拡張部に向けられているが、拡張部からアウトレットチューブに空気が入り込まれるのであれば、アウトレットチューブの上流端の向きは特に限定されない。
【0041】
また、本実施例では、エアフィルタが傾けられて配置されているが、エアフィルタは傾けられていなくてもよい。例えば、エアフィルタが縦向きに配置されていてもよい。
【0042】
また、本実施例では、一対のアウトレットチューブが異なる長さに形成されているが、一対のアウトレットチューブが同じ長さに形成されていてもよい。
【0043】
また、エアクリーナは、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0044】
以上の通り、本実施例のエアクリーナ(50)は、エンジン(40)の後方で車体フレーム(10)の内側に配置されたエアクリーナであって、吸気室(56)が形成されたエアクリーナケース(51)と、吸気室をダーティサイド(58)とクリーンサイド(59)に分けるエアフィルタ(57)と、車両後方からダーティサイドに空気を取り込むインレットチューブ(62)と、クリーンサイドからエンジンに空気を送るアウトレットチューブ(64)と、を備え、エアクリーナケースの上側にはインレットチューブとアウトレットチューブが取り付けられ、エアクリーナケースの下側にはダーティサイドよりもクリーンサイドを下方に拡張させた拡張部(65)が形成されている。この構成によれば、エアクリーナケースの上側にインレットチューブとアウトレットチューブが取り付けられているため、インレットチューブからアウトレットチューブにダイレクトに空気が流れ易くなる。よって、エンジンの低回転時から高回転時まではエンジンに向けて空気がスムーズに流れてエンジン出力が向上される。エアクリーナケースにはダーティサイドよりも下方にクリーンサイドを拡張された拡張部が形成されているため、車体フレームの内側の狭いスペースであってもクリーンサイドの容積が十分に確保されている。よって、スロットル急開時でも、拡張部の内側の空気が利用されてエンジン出力が向上される。
【0045】
本実施例のエアクリーナにおいて、インレットチューブの下流端とアウトレットチューブの上流端が略同じ高さに位置している。この構成によれば、インレットチューブからアウトレットチューブに空気がより流れ易くなる。
【0046】
本実施例のエアクリーナにおいて、アウトレットチューブの上流端が拡張部に向けられている。この構成によれば、スロットル急開時で拡張部からアウトレットチューブに空気が入り易くなってエンジン出力が向上される。
【0047】
本実施例のエアクリーナにおいて、側面視にてエアフィルタの上部が下部よりも前方になるように傾いており、側面視にてインレットチューブの下流端がエアフィルタの表面中央に対向し、側面視にてアウトレットチューブの上流端がエアフィルタの裏面上部に対向している。この構成によれば、エアフィルタを挟んでインレットチューブからアウトレットチューブに空気が流れ易くなってエンジン出力が向上される。
【0048】
本実施例のエアクリーナにおいて、エンジンが2気筒エンジンであり、アウトレットチューブの長さが異なる一対のアウトレットチューブであり、一対のアウトレットチューブには上流端に向かって広がる傘部(72)が形成されており、一対のアウトレットチューブの上流端がエアフィルタの中央に向けられている。この構成によれば、2本のアウトレットチューブの長さ異なるため、2本のアウトレットチューブに傘部が形成されていても、エアフィルタの中央で2本のアウトレットチューブの傘部が干渉することがない。また、2本のアウトレットチューブの長さを変えることでエンジンの出力特性を調整することができる。
【0049】
本実施例のエアクリーナにおいて、インレットチューブがエアクリーナケースから車両後方に延びており、拡張部がインレットチューブよりも下方で車両後方に延びている。この構成によれば、拡張部によってエアクリーナケースのクリーンサイドがダーティサイドよりも下方かつ後方に拡張されてクリーンサイドの容積が十分に確保される。また、インレットチューブの下方に拡張部が位置付けられているため、拡張部が壁になってインレットチューブの砂塵等の吸い込みが抑えられる。
【0050】
本実施例のエアクリーナにおいて、車体フレームは、シートを下方から支持するシートレールを有しており、エアフィルタがシートレールの下端よりも上方に位置し、拡張部がシートレールの下方でエアフィルタよりも車両後方に延びている。この構成によれば、シートレールの内側の狭いスペースであっても、拡張部によってエアクリーナケースのクリーンサイドの容積が十分に確保される。また、インレットチューブからアウトレットチューブへのダイレクトな空気の流れが阻害されることがない。
【0051】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0052】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。