(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184317
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】フォトグラメトリー測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098387
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野津 正人
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065CC11
2F065DD03
2F065FF04
2F065HH07
2F065JJ05
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065MM24
(57)【要約】
【課題】移動が容易で、モデルの3D形状データを精度良く生成できるフォトグラメトリー測定装置を得る。
【解決手段】高さ方向の異なる位置にそれぞれ被写体を撮影可能な複数のカメラ24が配設され、任意の水平方向に移動可能な撮影ユニット12と、カメラ24による被写体の撮影時に被写体にパターン模様を投射する投射ユニット14と、カメラ24により撮像された画像を基に、フォトグラメトリー計算を行う撮影制御・画像処理装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向の異なる位置にそれぞれ被写体を撮影可能な複数のカメラが配設され、任意の水平方向に移動可能な被写体撮影部と、
前記カメラによる前記被写体の撮影時に前記被写体にパターン模様を投射する投射部と、
前記カメラにより撮像された画像を基に、フォトグラメトリー計算を行う算出部と、
を備えるフォトグラメトリー測定装置。
【請求項2】
前記投射部は、前記カメラのシャッタ信号を基に、前記パターン模様を前記被写体に投射する請求項1記載のフォトグラメトリー測定装置。
【請求項3】
前記被写体撮影部は、上下方向に伸縮可能なロッドを有し、前記ロッドの高さ方向の異なる位置に前記複数のカメラがそれぞれ取り付けられている請求項1又は2記載のフォトグラメトリー測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトグラメトリー測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体の三次元画像を取得するために、被写体の周囲に配置した複数のカメラで被写体を撮影する手法が提案されている。
【0003】
例えば、モデルの周囲に複数の支柱を配置し、各支柱に複数のX形開脚リンクを設け、隣接する支柱の同一高さの二つのX形開脚リンク同士を連結する複数の昇降フレームに複数のデジタルカメラが支持されたフォトグラメトリー用撮影装置が提案されている。このフォトグラメトリー用撮影装置では、ワイヤー操作等により、複数のX形開脚リンクが作動し、昇降フレームが昇降することによって、モデル等の被写体の高さに応じて簡単にカメラの高さを調整できるとされている(特許文献1参照)。
【0004】
あるいは、モデルの周囲に配置される複数の支柱には、それぞれ複数の撮影デバイスが取り付けられ、複数の支柱がスライドレールによって中心に対して進退自在とされているフォトグラメトリ用撮影装置が提案されている。被写体を精度良く捉えるために、被写体に対して各支柱を安定して進退させることができ、被写体を適切に撮影できるとされている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-32226号公報
【特許文献2】特開2021-32636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の装置では、被写体の周囲に複数の支柱が配置されており、支柱相互が連結されているため、移動させることが困難である。すなわち、被写体が自動車のクレイモデル等、移動させることが困難であるモデルの場合には適用することが困難であるという不都合があった。
【0007】
また、フォトグラメトリー計算処理では、撮像画像のテクスチャ(模様)の細やかさに応じて3D形状データを生成するため、モデルにおいて変化の乏しい部分に生成されるデータは粗くなる。すなわち、モデルに忠実に3D形状データを生成できないという不都合があった。
【0008】
本発明は上記事実を考慮し、移動が容易で、モデルの3D形状データを精度良く生成できるフォトグラメトリー測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係るフォトグラメトリー測定装置は、高さ方向の異なる位置にそれぞれ被写体を撮影可能な複数のカメラが配設され、任意の水平方向に移動可能な被写体撮影部と、前記カメラによる前記被写体の撮影時に前記被写体にパターン模様を投射する投射部と、前記カメラにより撮像された画像を基に、フォトグラメトリー計算を行う算出部と、を備える。
【0010】
このフォトグラメトリー測定装置では、被写体撮影部は、任意の水平方向に移動可能であるため、被写体(モデル)に対する所定位置まで移動し、高さ方向の異なる位置に配設された複数のカメラで同時に被写体を撮影する。次に、被写体の周囲で周方向において異なる位置に被写体撮影部を移動し、再び複数のカメラで被写体を撮影する。このようにして、被写体の周囲を所定間隔で移動し、各位置において被写体撮影部で被写体を撮影し、被写体全体を撮影することができる。
【0011】
なお、カメラによる被写体の撮影時に、投射部が被写体にパターン模様を投射するため、カメラはパターン模様が投射された被写体を撮影する。
【0012】
このようにして被写体撮影部で撮影された被写体の画像に基づいて、算出部がフォトグラメトリー計算によって被写体の3D形状データを生成する。
【0013】
このように、被写体撮影部は、任意の水平方向に移動可能とされているため、被写体の周囲において異なる位置に移動して順次被写体を撮影していくことができる。
【0014】
したがって、被写体撮影部に必要とされるカメラの数を低減することができると共に、被写体撮影部を移動することができるため、自動車のクレイモデル等、移動の困難な被写体の周囲を被写体撮影部が移動しながら被写体全体を撮影することができる。
【0015】
また、カメラによる被写体の撮影時に、投射部によって被写体にパターン模様を投射するため、算出部によるフォトグラメトリー計算によって被写体の3D形状データが精度良く生成される。
【0016】
第2の態様に係るフォトグラメトリー測定装置は、第1の態様に係るフォトグラメトリー測定装置において、前記投射部は、前記カメラのシャッタ信号を基に、前記パターン模様を前記被写体に投射する。
【0017】
このフォトグラメトリー測定装置では、投射部は、カメラのシャッタ信号を基にパターン模様を被写体に投射しているため、カメラによる被写体の撮影時に同期してパターン模様を被写体に投射することができる。
【0018】
第3の態様に係るフォトグラメトリー測定装置は、第1又は第2の態様に係るフォトグラメトリー測定装置において、前記被写体撮影部は、上下方向に伸縮可能なロッドを有し、前記ロッドの高さ方向の異なる位置に前記複数のカメラがそれぞれ取り付けられている。
【0019】
フォトグラメトリー測定装置の被写体撮影部は、複数のカメラが取り付けられた上下方向に伸縮自在のロッドを有する。したがって、被写体撮影部を移動させる場合、又は収納する場合には、ロッドを短縮させてをコンパクトにすることが可能であると共に、移動時に転倒することを防止できる。
【0020】
一方、被写体を撮影する場合には、ロッドを伸長させて上下方向の所定位置(異なる高さ)に複数のカメラをそれぞれ配置することができる。なお、撮影のために被写体の周囲を移動する場合には、移動距離が短いため、ロッドを伸ばしたままでも転倒することを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示のフォトグラメトリー測定装置は、移動が容易で、被写体の3D形状データを精度良く生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係るフォトグラメトリー測定装置の撮影状態を示す全体斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る撮影ユニットの伸長状態を示す模式図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
【
図3】一実施形態に係る撮影ユニットの収縮状態を示す模式図であり、(A)は正面図であり、(B)は側面図である。
【
図4】一実施形態に係る投射ユニットを示す模式図であり、(A)は伸長状態、(B)は収縮状態を示す。
【
図5】一実施形態に係る被写体撮影時における被写体(モデル)に対する撮影ユニット及び投射ユニットの配置を示す平面図である。
【
図6】一実施形態におけるフォトグラメトリー測定装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図7】一実施形態におけるフォトグラメトリー測定装置における撮影手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一実施形態に係るフォトグラメトリー測定装置について説明する。なお、各図は、説明の便宜のために構成を模式的に示しており、具体的構成と一致しているものではない。
【0024】
フォトグラメトリー測定装置10は、
図1に示すように、撮影ユニット12と、三個の投射ユニット14と、を有する。なお、撮影ユニット12が「被写体撮影部」に相当し、投射ユニット14が「投射部」に相当する。
【0025】
撮影ユニット12は、
図2(A)、
図2(B)に示すように、フレーム体20と、ロッド22と、複数(ここでは6個)のカメラ24と、モニタ26と、後述する撮影制御・画像処理装置70及びバッテリが収納された筐体28と、を有する。
【0026】
フレーム体20は、略矩形であり底部に配設された台30と、図示しないキーボードやマウス等が配置される操作台32と、を有する。台30の下面には、4個のキャスター34が設けられており、フレーム体20が任意の(水平)方向に移動可能とされている。また、フレーム体20には、
図2(B)に示すように、把手36が設けられている。したがって、ユーザが把手36を持って操作することにより、フレーム体20(撮影ユニット12)を任意の方向に移動させることができる構成である。
【0027】
ロッド22は、台30の上に設置されている。ロッド22は、
図2(A)、
図2(B)及び
図3(A)、
図3(B)に示すように、上下方向に延在するものである。フレーム体20の上部に配設されたウインチ38を操作することでロッド22を上下方向に伸縮可能とされている。なお、ウインチ38は、手動でも電動でも良い。
【0028】
ロッド22の側面には、上下方向の異なる位置に六個のカメラ24が取り付けられている。
図2(A)、
図2(B)に示すように、ロッド22が伸長状態で六個のカメラ24は、それぞれ上下方向の異なる撮影位置に配置される。なお、
図3(A)、
図3(B)に示すように、ロッド22は、収縮した状態において、伸長状態と比較して1/2程度の高さとされる。
【0029】
次に投射ユニット14の構成について説明する。
【0030】
投射ユニット14は、スタンド40と、プロジェクタ42と、後述するシャッタ連動装置72及びバッテリが収納された筐体44と、を有する。
【0031】
スタンド40は、
図4(A)、
図4(B)、
図5に示すように、三本の脚部50と、ロッド52と、を有する。三本の脚部50は、それぞれ脚部50の一端が他の脚部50の一端と連結され、各脚部50の他端が接地されるように構成されている。なお、各脚部50の他端には、キャスター51が取り付けられており、スタンド40(投射ユニット14)が任意の方向に移動可能とされている。
【0032】
ロッド52は、
図4(A)、
図4(B)に示すように、三本の脚部50が一端が連結された連結部上に配設されている。ロッド52は、基部54と、基部54に対して伸縮を行う伸縮部56と、を有する。
【0033】
伸縮部56は、
図4(B)に示すように、基部54の内部に収納可能である。
図4(A)に示すように、伸縮部56が基部54から上方に延ばされた状態では、伸縮部56の下端部が基部54の上端部にロック部58で固定される構成である。
【0034】
ロッド52には、基部54の所定位置(高さ)に一個のプロジェクタ42が配置されている。また、ロッド52には、伸縮部56の上端に一個のプロジェクタ42が配置されている。
【0035】
三個の投射ユニット14は、
図5に示すように、左右対称に作成されたクレイモデルMの左半分に対して万遍なくプロジェクタ42からパターン模様を投射可能なように、クレイモデルMの外周側に所定間隔で配置される。なお、クレイモデルMが「被写体」に相当する。
【0036】
なお、投射ユニット14の個数、配置は一例であり、モデルの形状等に応じて個数、配置位置等適宜変更して良い。
【0037】
筐体44は、
図4(A)、
図4(B)に示すように、スタンド40の脚部50間をつなぐ連結棒60に支持されている。
【0038】
続いて、撮影ユニット12の撮影制御・画像処理装置70と、投射ユニット14のシャッタ連動装置72について
図6を参照して説明する。撮影制御・画像処理装置70が「算出部」に相当する。
【0039】
撮影制御・画像処理装置70は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)70A、ROM(Read Only MeMory)70B、RAM(RandoM Access MeMory)70C、ストレージ70D、入出力I/F70E、及び通信I/F70Fを含んで構成されている。各構成は、バス70Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0040】
CPU70Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実施したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU70Aは、ROM70B又はストレージ70Dからプログラムを読み出し、RAM70Cを作業領域としてプログラムを実施する。CPU70Aは、ROM70B又はストレージ70Dに記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0041】
ROM70Bは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM70Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0042】
ストレージ70Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。特に、本実施形態では、大量のビックデータを格納するためのデータベースとして機能するものである。なお、ストレージ70Dとは、別にビックデータを格納するためのデータベースを設けても良い。
【0043】
本実施形態のストレージ70Dには、プログラムが格納されている。このプログラムは、ROM70Bに格納されていても良い。
【0044】
通信I/F70Fは、無線通信等を用いてシャッタ連動装置72と通信する。
【0045】
なお、入出力I/F70Eは、操作部80と、カメラ24、モニタ26と接続されている。操作部80は、操作台32上に配置された図示しないキーボードやマウス等によって構成される。操作部80から操作信号が入力されると、カメラ24とシャッタ連動装置72にシャッタ信号が出力される構成である。また、カメラ24の撮像画像がモニタ26に表示されると共に、撮像画像データがストレージ70Dに格納される構成である。
【0046】
一方、投射ユニット14のシャッタ連動装置72は、入出力I/F72E、通信I/F72F、バス72Gを有する。
【0047】
通信I/F72Fは、撮影制御・画像処理装置70(通信I/F70F)と通信可能に設定されている。
入出力I/F72Eは、プロジェクタ42と接続されている。
【0048】
シャッタ連動装置72は、撮影制御・画像処理装置70からシャッタ信号が入力されると、通信I/F72F、入出力I/F72Eを介してプロジェクタ42にシャッタ信号を出力する構成である。すなわち、シャッタ連動装置72は、シャッタ信号に同期してプロジェクタ42を駆動させる構成である。
【0049】
(作用)
このように構成されたフォトグラメトリー測定装置10の作用について説明する。なお、一連の作業(処理)の流れを
図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0050】
先ず、収納スペースにおいて、収縮状態とされた撮影ユニット12(
図3(A)、
図3(B)参照)をクレイモデルMが設置されている場所までキャスター34を転動させながら移動させる。また、収縮状態とされた投射ユニット14(
図4(B)参照)をクレイモデルMが設置されている場所までキャスター51を転動させながら移動させる。
【0051】
次に、
図1及び
図5に示すように、クレイモデルM(ここでは、自動車の1/1のクレイモデル)の周囲に三台の投射ユニット14を配置する(
図7、ステップS10(以下、「
図7」を省略する)。ここで、自動車のクレイモデルの場合には左右対称であるため、平面視でクレイモデルMの左半分全域にパターン模様を照射できるように、クレイモデルMの左側で周方向に沿って所定間隔に配置される。この際、各投射ユニット14のプロジェクタ42がクレイモデルMの中心側を向くように配置される。
【0052】
この状態で投射ユニット14のスタンド40のロック部58を緩め、基部54に対して伸縮部56を上方に最大限引き出し、ロック部58を締める。すなわち、
図4(A)に示すように、スタンド40を伸長状態とする。これにより、各投射ユニット14のプロジェクタ42が所定位置(所定高さ)に配置され、クレイモデルMの左半分全域に投射可能とされる。
【0053】
次に、
図1及び
図5に示すように、ユーザがカメラ24の撮像画像を表示するモニタ26を見ながらクレイモデルMの左側で投射ユニット14の外側の所定位置に撮影ユニット12を配置する(ステップS12)。例えば、撮影ユニット12をクレイモデルMの後方側で投射ユニット14の外側(後側(
図5に一転鎖線で示す位置(参照符号12A参照)))に配置する。この際、
図5に示すように、撮影ユニット12のカメラ24が平面視でクレイモデルMの中心を向くように、撮影ユニット12を配置する。
【0054】
この状態で、ユーザがウインチ38を操作することにより、ロッド22が収縮状態(
図3(A)、
図3(B)参照)から伸長状態(
図2(A)、
図2(B)参照)にされ、ロッド22に取り付けられた各カメラ24が撮影位置である所定高さに配設される。
【0055】
このようにして、フォトグラメトリー測定装置10の撮影準備が整うと、ユーザが撮影ユニット12の操作部80を操作することにより、撮影制御・画像処理装置70からカメラ24にシャッタ信号が送信されると共に、シャッタ連動装置72にもシャッタ信号が送信される(ステップS14)。
【0056】
シャッタ連動装置72では、受信したシャッタ信号を複数のプロジェクタ42に出力することにより、シャッタ信号に同期して複数のプロジェクタ42を駆動させる。
【0057】
これにより、クレイモデルMの左側の異なる位置に配置された3つの投射ユニット14のそれぞれ上下2個のプロジェクタ42からクレイモデルMの左半分の全領域にパターン模様が投射される(ステップS16)。
【0058】
また、パターン模様が投射されたクレイモデルM(の左半分)を撮影ユニット12の各カメラ24で撮影する(ステップS18)。
【0059】
各カメラ24で撮影された画像は、撮影制御・画像処理装置70のストレージ70Dに格納される(ステップS20)。
【0060】
クレイモデルM(の左半分)の全領域を撮影終了していない場合(ステップS22でNO)には、ユーザは、モニタ26を見ながら把手36を掴んで撮影ユニット12を押すことにより、平面視でクレイモデルMを中心とした略楕円軌道に沿って撮影ユニット12を所定距離(平面視でクレイモデルMを中心とした周方向で所定角度)だけ移動させる(ステップS12)。
【0061】
続いて、先程と同様に、ユーザが操作部80を操作することにより、投射ユニット14のプロジェクタ42からクレイモデルMにパターン模様を投射し、撮影ユニット12の各カメラ24で撮影する(ステップS14~S20)。
【0062】
撮影ユニット12をクレイモデルMの左側でクレイモデルMを中心とする軌道、例えば、略楕円軌道上を変位させながら、平面視で所定角度毎に停止して撮影することにより、クレイモデルMの左半分の全領域の撮影を行う。
【0063】
このようにしてクレイモデルMの左半分の全領域の撮影が終了すると(ステップS22でYES)、撮影制御・画像処理装置70は、その全画像データに基づいてフォトグラメトリー計算処理により、クレイモデルMの3D形状データを生成する。
【0064】
これにより、フォトグラメトリー計算処理が終了する。
【0065】
撮影が終了すると、撮影ユニット12はロッド22を伸長状態(
図2(A)、
図2(B)参照)から収縮状態(
図3(A)、
図3(B)参照)にされる。また、各投射ユニット14も伸長状態(
図4(A)参照)から収縮状態(
図4(B)参照)とされる。
【0066】
この状態で、撮影ユニット12は、撮影場所(クレイモデルMの周囲)から収納場所にキャスター34を転動させながら移動させる。また、投射ユニット14も撮影場所から収納場所にキャスター51を転動させながら移動させる。
【0067】
(効果)
このように構成されたフォトグラメトリー測定装置10の効果について説明する。
【0068】
先ず、フォトグラメトリー測定装置10を構成する撮影ユニット12は、キャスター34が取り付けられており、任意の方向に移動可能である。また、投射ユニット14も、キャスター51が取り付けられており、任意の方向に移動可能である。したがって、移動が困難なクレイモデルMの位置まで撮影ユニット12及び投射ユニット14を容易に移動させて、クレイモデルMの周囲に配置することができる。
【0069】
すなわち、撮影対象であるモデルが大型である場合等、モデルが移動困難な場合でも、フォトグラメトリー測定装置10をモデルの周囲に容易に配置でき、撮影することができる。
【0070】
特に、撮影ユニット12は、上下方向に延在するロッド22の異なる高さ(位置)に複数のカメラ24が配設され、平面視でクレイモデルMの外周に沿って移動しては異なる位置で撮影を繰り返すことで、クレイモデルM(の左半分)の全領域を隈なく撮影することができる。したがって、クレイモデルMを周囲を囲むように配置されるフォトグラメトリー測定装置と比較して、フォトグラメトリー用の撮影のために必要とされるカメラ数を低減することができる。
【0071】
また、フォトグラメトリー測定装置10は、撮影ユニット12のカメラ24におけるクレイモデルMの撮影時に、投射ユニット14のプロジェクタ42からパターン模様をクレイモデルM(の左半分)の全領域に投射している。フォトグラメトリー計算処理では、撮像画像のテクスチャの細かさに応じて3D形状データを生成しているため、クレイモデルMの変化に乏しい部分でも精度良く3D形状データが生成される。
【0072】
特に、投射ユニット14は、撮影ユニット12からカメラ24のシャッタ信号を受信し、このシャッタ信号に基づいてプロジェクタ42からパターン模様をクレイモデルMに投射している。したがって、カメラ24の撮影タイミングに同期して、プロジェクタ42がクレイモデルMにパターン模様を投射することができる。
【0073】
さらに、撮影ユニット12と投射ユニット14は、それぞれカメラ24、プロジェクタ42が取り付けられたロッド22、52が伸縮可能とされている。したがって、撮影ユニット12と投射ユニット14は、移動時及び収納時に収縮状態とすることにより、移動時の転倒を防止又は抑制すると共に、収納スペースを小さくすることができる。
【0074】
一方、撮影ユニット12と投射ユニット14は、撮影時には、ロッド22、52を伸長させることにより、クレイモデルMに対して各カメラ24と各プロジェクタ42を所定位置(高さ)に配置することができる。
【0075】
(その他)
本実施形態では、撮影ユニット12のロッド22の異なる位置(高さ)に6個のカメラ24が取り付けられていたが、この数は任意である。投射ユニット14のプロジェクタ42の数も任意である。
【0076】
また、撮影ユニット12は、ロッド22の伸縮をウインチ38で行う構成としたが、ウインチ38以外により伸縮する構成でも良い。
【0077】
さらに、投射ユニット14のスタンド40の脚部50の下端にも、キャスターを取り付け、任意の方向に移動可能としても良い。
【符号の説明】
【0078】
10 フォトグラメトリー測定装置
12 撮影ユニット(被写体撮影部)
14 投射ユニット(投射部)
22 ロッド
24 カメラ
70 撮影制御・画像処理装置(算出部)
M クレイモデル(被写体)