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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184376
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20231221BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20231221BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20231221BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20231221BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20231221BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20231221BHJP
   F16H 59/04 20060101ALI20231221BHJP
   F16H 59/66 20060101ALI20231221BHJP
   F16H 59/72 20060101ALI20231221BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20231221BHJP
   B60W 10/115 20120101ALI20231221BHJP
   B60W 30/16 20200101ALI20231221BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20231221BHJP
   B60K 6/48 20071001ALN20231221BHJP
【FI】
B60W10/00 110
B60L50/16 ZHV
B60L15/20 K
B60K6/547
B60W10/10 900
B60W20/00 900
F16H59/04
F16H59/66
F16H59/72
B60W10/08
B60W10/115
B60W30/16
B60W40/04
B60K6/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098500
(22)【出願日】2022-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】山本 真史
(72)【発明者】
【氏名】関口 慶人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 有記
【テーマコード(参考)】
3D202
3D241
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB32
3D202DD00
3D202DD36
3D202FF07
3D241AA51
3D241AC15
3D241AD30
3D241AE31
3D241BA02
3D241CC03
3D241CC11
3D241DA21Z
3D241DC02Z
3J552MA02
3J552NA01
3J552NB08
3J552PA51
3J552RA30
3J552SB02
3J552SB22
3J552VA32Z
3J552VA37Z
3J552VA74W
3J552VB01Z
3J552VB12W
3J552VB13W
3J552VD02Z
3J552VE04W
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125BE05
5H125CA14
5H125CA18
5H125EE66
5H125EE70
(57)【要約】
【課題】追従走行時に先行車両の存在による通気風量の減少で冷却性能が低下し、自動変速機の油温が過度に上昇することを抑制する。
【解決手段】追従走行制御の実行中に、通気風量に影響する先行車両に関する情報(車間距離Dis、投影面積Apr)に基づいて高油温判定値THs を可変設定する一方、変速部の油温THoil を検出し、高油温判定値THs 以上の場合は高油温時変速マップM2が選択され、高速側ギヤ段が多用されるようになる。これにより、入力回転速度を含む変速部(自動変速機)の各部の回転速度が低下し、油の攪拌による発熱が抑制されるため、追従走行時に通気風量の減少による冷却性能の低下に起因して油温THoil が上昇することが抑制される。すなわち、追従走行時に先行車両が風よけとなって走行抵抗が減少することによる燃費向上効果を享受しつつ、通気風量の減少による油温THoil の過度の上昇を抑制することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源と、変速比を変更可能な自動変速機と、を有する車両に関し、
運転者の加減速操作を必要とすることなく、先行車両に対して所定の目標車間距離だけ隔てて追従走行するように、前記駆動力源の出力を制御する追従走行制御部と、
予め定められた変速条件に従って前記自動変速機の変速比を変化させる変速制御部と、
を有する車両の制御装置において、
前記変速制御部は、前記追従走行制御部による追従走行制御の実行中に、通気風量に影響する前記先行車両に関する情報に基づいて高油温判定値を可変設定する一方、前記自動変速機の油温を検出し、該油温が前記高油温判定値以上の場合は該高油温判定値よりも低い場合に比較して前記変速比が小さい高速側変速比が多用されるように、該油温に基づいて前記変速条件を変更する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記先行車両に関する情報は、前記車両から前記先行車両までの車間距離であり、
前記変速制御部は、前記車間距離が小さい場合は大きい場合に比較して前記高油温判定値が低くなるように、該車間距離に応じて前記高油温判定値を可変設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記先行車両に関する情報は、前記先行車両の後部の幅寸法であり、
前記変速制御部は、前記幅寸法が大きい場合は小さい場合に比較して前記高油温判定値が低くなるように、該幅寸法に応じて前記高油温判定値を可変設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記先行車両に関する情報は、前記先行車両の後部側から見た投影面積であり、
前記変速制御部は、前記投影面積が大きい場合は小さい場合に比較して前記高油温判定値が低くなるように、該投影面積に応じて前記高油温判定値を可変設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記変速制御部は、前記車両の今後の予想される走行負荷である予想負荷が大きい場合は小さい場合に比較して前記高油温判定値が低くなるように、前記先行車両に関する情報に加えて前記予想負荷に基づいて前記高油温判定値を可変設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記予想負荷は予め定められた走行ルートに基づいて求められる
ことを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記追従走行制御部は、前記追従走行制御の実行中に、前記変速制御部によって前記高速側変速比が多用されるように前記変速条件が変更された場合に、前記追従走行制御の継続が適当か否かを判断し、継続が不適と判断した場合には前記追従走行制御を制限する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記変速制御部は、前記油温が前記高油温判定値以上の場合に、通常の変速条件から前記高速側変速比が多用される高油温時変速条件に切り替えるもので、前記油温が前記高油温判定値よりも低い復帰判定値以下になったことを条件として、前記高油温時変速条件から前記通常の変速条件に復帰する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御装置に係り、特に、先行車両に対して所定の目標車間距離だけ隔てて追従走行する追従走行制御が可能な車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転者の加減速操作を必要とすることなく、先行車両に対して所定の目標車間距離だけ隔てて追従走行するように、駆動力源の出力を制御する追従走行制御部を有する車両の制御装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例であり、先行車両が風よけとなって走行抵抗が低減される反面、ラジエータなどの冷却システムに対する通気風量が減少して冷却性能が低下することから、所定の通気風量が得られるように車間距離等を調節する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-201133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、変速比を変更可能な自動変速機を有する車両においても、追従走行時に先行車両の存在による通気風量の減少で自動変速機の油温が過度に上昇する可能性があり、特許文献1に記載の技術を適用して所定の冷却性能が得られるように車間距離を調節することが考えられる。しかしながら、車間距離を調節すると走行抵抗が大きくなって燃費が悪化する可能性があるなど、改善の余地があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、追従走行時に先行車両の存在による通気風量の減少で冷却性能が低下し、自動変速機の油温が過度に上昇することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 駆動力源と、変速比を変更可能な自動変速機と、を有する車両に関し、(b) 運転者の加減速操作を必要とすることなく、先行車両に対して所定の目標車間距離だけ隔てて追従走行するように、前記駆動力源の出力を制御する追従走行制御部と、(c) 予め定められた変速条件に従って前記自動変速機の変速比を変化させる変速制御部と、を有する車両の制御装置において、(d) 前記変速制御部は、前記追従走行制御部による追従走行制御の実行中に、通気風量に影響する前記先行車両に関する情報に基づいて高油温判定値を可変設定する一方、前記自動変速機の油温を検出し、その油温が前記高油温判定値以上の場合はその高油温判定値よりも低い場合に比較して前記変速比が小さい高速側変速比が多用されるように、その油温に基づいて前記変速条件を変更することを特徴とする。
なお、油温に対応して変化する他の温度、例えば自動変速機そのものの温度など、を検出して本発明を実施することもできる。また、変速比は、自動変速機の出力回転速度に対する入力回転速度の比(=入力回転速度/出力回転速度)で、変速比が小さい程入力回転速度が低くなる。
【0007】
第2発明は、第1発明の車両の制御装置において、(a) 前記先行車両に関する情報は、前記車両から前記先行車両までの車間距離であり、(b) 前記変速制御部は、前記車間距離が小さい場合は大きい場合に比較して前記高油温判定値が低くなるように、その車間距離に応じて前記高油温判定値を可変設定することを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第1発明の車両の制御装置において、(a) 前記先行車両に関する情報は、前記先行車両の後部の幅寸法であり、(b) 前記変速制御部は、前記幅寸法が大きい場合は小さい場合に比較して前記高油温判定値が低くなるように、その幅寸法に応じて前記高油温判定値を可変設定することを特徴とする。
【0009】
第4発明は、第1発明の車両の制御装置において、(a) 前記先行車両に関する情報は、前記先行車両の後部側から見た投影面積であり、(b) 前記変速制御部は、前記投影面積が大きい場合は小さい場合に比較して前記高油温判定値が低くなるように、その投影面積に応じて前記高油温判定値を可変設定することを特徴とする。
【0010】
第5発明は、第1発明の車両の制御装置において、前記変速制御部は、前記車両の今後の予想される走行負荷である予想負荷が大きい場合は小さい場合に比較して前記高油温判定値が低くなるように、前記先行車両に関する情報に加えて前記予想負荷に基づいて前記高油温判定値を可変設定することを特徴とする。
【0011】
第6発明は、第5発明の車両の制御装置において、前記予想負荷は予め定められた走行ルートに基づいて求められることを特徴とする。
【0012】
第7発明は、第1発明の車両の制御装置において、前記追従走行制御部は、前記追従走行制御の実行中に、前記変速制御部によって前記高速側変速比が多用されるように前記変速条件が変更された場合に、前記追従走行制御の継続が適当か否かを判断し、継続が不適と判断した場合には前記追従走行制御を制限することを特徴とする。
【0013】
第8発明は、第1発明の車両の制御装置において、前記変速制御部は、前記油温が前記高油温判定値以上の場合に、通常の変速条件から前記高速側変速比が多用される高油温時変速条件に切り替えるもので、前記油温が前記高油温判定値よりも低い復帰判定値以下になったことを条件として、前記高油温時変速条件から前記通常の変速条件に復帰することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような車両の制御装置においては、追従走行制御の実行中に、通気風量に影響する先行車両に関する情報に基づいて高油温判定値を可変設定する一方、自動変速機の油温を検出し、その油温が高油温判定値以上の場合は高油温判定値よりも低い場合に比較して高速側変速比が多用されるように変速条件が変更される。このように高速側変速比が多用されるようになると、入力回転速度を含む自動変速機の各部の回転速度が低下し、油の攪拌による発熱が抑制されるため、追従走行時に通気風量の減少による冷却性能の低下に起因して油温が上昇することが抑制される。特に、変速条件を変更するか否かを判断する高油温判定値が、通気風量に影響する先行車両に関する情報に基づいて可変設定されるため、追従走行時の通気風量の減少に起因する油温の上昇を適切に抑制することができる。これにより、追従走行時に先行車両が風よけとなって走行抵抗が減少することによる燃費向上効果を享受しつつ、通気風量の減少による油温の過度の上昇を抑制することができる。
【0015】
第2発明では、通気風量に影響する先行車両に関する情報として、先行車両までの車間距離が用いられ、車間距離が小さい場合は大きい場合に比較して高油温判定値が低くなるように、その車間距離に応じて高油温判定値が可変設定されるため、油温の上昇が適切に抑制される。すなわち、車間距離が小さい場合は、先行車両に起因する通気風量の減少による冷却性能の低下が顕著になるため、高油温判定値を低下させてより低い油温から高速側変速比が多用されるようにすることで、冷却性能の低下に拘らず油温の上昇を適切に抑制することができる。
【0016】
第3発明では、通気風量に影響する先行車両に関する情報として、先行車両の後部の幅寸法が用いられ、幅寸法が大きい場合は小さい場合に比較して高油温判定値が低くなるように、その幅寸法に応じて高油温判定値が可変設定されるため、油温の上昇が適切に抑制される。すなわち、先行車両の幅寸法が大きい場合は、先行車両に起因する通気風量の減少による冷却性能の低下が顕著になるため、高油温判定値を低下させてより低い油温から高速側変速比が多用されるようにすることで、冷却性能の低下に拘らず油温の上昇を適切に抑制することができる。
【0017】
第4発明では、通気風量に影響する先行車両に関する情報として、先行車両の後部側から見た投影面積が用いられ、投影面積が大きい場合は小さい場合に比較して高油温判定値が低くなるように、その投影面積に応じて高油温判定値が可変設定されるため、油温の上昇が適切に抑制される。すなわち、先行車両の投影面積が大きい場合は、先行車両に起因する通気風量の減少による冷却性能の低下が顕著になるため、高油温判定値を低下させてより低い油温から高速側変速比が多用されるようにすることで、冷却性能の低下に拘らず油温の上昇を適切に抑制することができる。
【0018】
第5発明では、予想負荷が大きい場合は小さい場合に比較して高油温判定値が低くなるように、通気風量に影響する先行車両に関する情報に加えて予想負荷に基づいて高油温判定値が可変設定されるため、油温の上昇が一層適切に抑制される。すなわち、予想負荷が大きい場合は、変速比が大きい低速側変速比が多用されるようになって油温が上昇し易いため、高油温判定値を低下させてより低い油温から高速側変速比が多用されるようにすることで、走行負荷が大きいことに起因する油温の上昇を適切に抑制することができる。
【0019】
第6発明では、上記予想負荷が予め定められた走行ルートに基づいて求められるため、予想負荷を適切に予測して高油温判定値を低下させることにより、油温の上昇を適切に抑制することができる。
【0020】
第7発明では、追従走行制御の実行中に変速制御部によって変速条件が変更された場合に追従走行制御の継続が適当か否かを判断し、継続が不適と判断した場合には追従走行制御を制限するため、無理な追従走行制御の継続により先行車両との間の車間距離の変化が大きくなったり、駆動力源トルクの変化が大きくなったりして、運転者に違和感を生じさせることが抑制される。
【0021】
第8発明は、油温に基づいて通常の変速条件と高速側変速比が多用される高油温時変速条件とを切り替える場合で、油温が高油温判定値以上になると高油温時変速条件に切り替えられる一方、油温が高油温判定値よりも低い復帰判定値以下になったことを条件として高油温時変速条件から通常の変速条件に復帰するため、油温の僅かな上下変化で変速条件が頻繁に切り替わることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例である制御装置として車載制御装置を備えているハイブリッド式電動車両の一例を説明する図で、駆動系統の概略図と共に各種制御の為の制御機能および制御系統の要部を示した図である。
図2図1のHEV用伝動装置の具体例を説明する骨子図である。
図3図2のHEV用伝動装置が備えている変速部の複数のギヤ段と、それを成立させるための係合装置の係合開放状態と、の関係を示した係合作動表である。
図4図1の車載制御装置が機能的に備えている変速制御部が、図2の変速部の変速制御で用いる通常時変速マップM1の一例を説明する図である。
図5】高油温時に図4の通常時変速マップM1に代えて用いられる高油温時変速マップM2の一例を説明する図である。
図6図1の車載制御装置が機能的に備えている変速制御部が、変速制御を行なう際に図4図5の何れの変速マップを用いるかを選択する際の作動を説明するフローチャートである。
図7図1の車載制御装置が機能的に備えているオートクルーズ制御部が、高油温時変速マップM2を用いた変速制御が行なわれる際に一定の条件下で追従走行制御を終了する際の作動を説明するフローチャートである。
図8図6のステップS6で高油温判定値THs を設定する際に、車間距離Disに応じて求められる高油温判定基準値THsst を説明する図である。
図9図6のステップS6で高油温判定値THs を設定する際に、投影面積Aprに応じて求められる補正係数Ka を説明する図である。
図10図6のステップS6で高油温判定値THs を設定する際に、予想負荷Lexに応じて求められる補正係数Kl を説明する図である。
図11図6のステップS6で幅寸法Wprを考慮して高油温判定値THs を設定する場合に、幅寸法Wprに応じて求められる補正係数Kw を説明する図である。
図12図6のフローチャートに従って通常時変速マップM1と高油温時変速マップM2とを変更して変速制御が行なわれた場合に、油温THoil の変化を示したタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、例えば複数の貨物車両やバスなどが高速道路や自動車専用道路等を比較的長い距離に亘って追従走行する隊列走行が行なわれる場合に好適に適用されるが、乗用車等の一般車両を含めて隊列走行を行なうことなく高速道路や一般道を追従走行する場合にも適用され得る。本発明は、エンジン駆動車両や電気自動車、或いは駆動力源としてエンジンおよび回転機を備えているハイブリッド式電動車両など、従来から使用されている各種の車両に適用できる。車両には運転者が乗車していることが望ましいが、予め定められた走行ルートに従って追従走行することができる自動操舵システム等を備えている無人走行車両にも適用できる。自動変速機は、例えば遊星歯車式や2軸噛合い式等の複数の摩擦係合装置の係合開放状態に応じてギヤ段が切り替えられる有段変速機の場合に本発明は好適に適用されるが、変速比を連続的に変化させるベルト式等の無段変速機を備えた車両にも適用され得る。
【0024】
追従走行制御部は、先行車両との間の車間距離が予め定められた目標車間距離に維持されるように追従走行するのに必要な駆動要求量を算出し、その駆動要求量が得られるように駆動力源の出力を制御することにより、目標車間距離で追従走行する追従走行制御を実行する。追従走行制御に加えて、予め定められた目標車速で走行するのに必要な駆動要求量を算出し、その駆動要求量が得られるように駆動力源の出力を制御することにより、所定の目標車速で走行する自律走行制御を実行できるものでも良い。自律走行制御は、一定の目標車速で走行する定速走行を行なうものでも良いが、走行ルートに従って逐次可変設定される目標車速に従って車速を変更しながら自動走行するものでも良い。追従走行制御および自律走行制御における駆動力源の出力制御は、エンジンブレーキや回転機の回生制御等による負トルクを含んで制御することが望ましく、自動ブレーキシステムを介して制動力制御を行なうことも可能である。
【0025】
変速制御部は、例えば油温が所定の高油温判定値以上になった場合に、通常よりも高速側ギヤ段等の高速側変速比が多用されるように定められた高油温時変速条件に変更するように構成され、例えば通常時および高油温時の2種類の変速条件が予め定められても良いし、通常時の変速条件を低車速側へずらすように補正するだけでも良い。また、高油温判定値以上か否かの2段階で変速条件を変更するだけでなく、油温に応じて変速条件を連続的に変更したり3段階以上の多段階で変更したりすることも可能である。高油温判定値は、通気風量に影響する先行車両に関する情報に基づいて可変設定される。通気風量に影響する先行車両に関する情報は、例えば先行車両との間の車間距離や、先行車両の後部の幅寸法、後部側から見た投影面積などで、何れか1つの情報に基づいて高油温判定値が可変設定されても良いが、複数の情報を用いて可変設定することもできる。通気風量に影響する先行車両に関する情報に加えて、予想負荷など油温に影響する他の要素を考慮して高油温判定値を可変設定しても良い。また、変速条件の変更に加えて、例えば特許文献1に記載のように車間距離を調整するなど、他の制御を併用して油温の上昇を抑制することも可能である。
【実施例0026】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の形状や寸法比、角度等は必ずしも正確に描かれていない。
【0027】
図1は、本発明の一実施例である制御装置として車載制御装置130を備えている車両10の一例を説明する図で、駆動系統の概略図と共に各種制御の為の制御機能および制御系統の要部を示した図である。この車両10は、隊列走行にも用いられる貨物車両等で、前置エンジン後輪駆動方式(FR)のハイブリッド式電動車両であり、エンジン32と、エンジン32に連結されたHEV(Hybrid Electric Vehicle )用伝動装置34と、を備えている。HEV用伝動装置34にはプロペラシャフト46が接続されており、ディファレンシャルギヤ48および左右のドライブシャフト50を介して左右の後輪52が回転駆動される。エンジン32は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関で、走行用の駆動力源として用いられる。エンジン32は、スロットルアクチュエータや燃料噴射装置、点火装置等を有する図示しないエンジン制御機器が車載制御装置130によって制御されることにより、エンジン32の出力トルクであるエンジントルクTe が制御される。
【0028】
図2は、HEV用伝動装置34の具体例を説明する骨子図である。図2において、HEV用伝動装置34は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース60(以下、ケース60と言う。)内に配設された回転機MGと、その回転機MGおよび前記エンジン32に、トルクコンバータ62を介して連結された変速部64と、を備えている。これ等の回転機MG、トルクコンバータ62、変速部64は中心線に対して略対称的に構成されており、図2の骨子図では中心線の下側半分が省略されている。回転機MGは、電力から機械的な動力を発生させる電動機としての機能および機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有するモータジェネレータで、例えば三相交流同期モータ等である。回転機MGは、車載制御装置130によって回転機MGのトルクであるMGトルクTmgや回転機MGの回転速度であるMG回転速度Nmgが制御される。回転機MGは駆動力源として用いられ、エンジン32に替えて或いはエンジン32に加えて、走行用の駆動力を発生する。回転機MGはまた、エンジン32の動力や後輪52側から入力される被駆動力により回転駆動される際に、発電機として機能するように回生制御されることにより発電を行なうとともに、後輪52に回生ブレーキを加える。回転機MGは、エンジン32のクランク軸に直接に或いは図示しないダンパー等を介して連結されている。回転機MGとエンジン32との間に動力伝達を接続遮断するエンジン断接クラッチ等が設けられても良い。
【0029】
トルクコンバータ62は、MG連結軸66を介して回転機MGに連結されたポンプ翼車62a、および変速部64の入力軸68に連結されたタービン翼車62bを備えている。トルクコンバータ62は、ポンプ翼車62aとタービン翼車62bとを連結するLU(ロックアップ)クラッチ70を備えている。LUクラッチ70は、車載制御装置130によってLU油圧PRluが制御されることにより、LUクラッチ70のトルク容量であるLUクラッチトルクTluが変化させられ、作動状態つまり制御状態が切り替えられる。LUクラッチ70の作動状態としては、LUクラッチ70が開放された状態である開放状態、LUクラッチ70が滑りを伴って係合させられる状態であるスリップ状態、およびLUクラッチ70が完全に係合させられた状態であるロックアップ状態がある。LUクラッチ70が開放状態とされることにより、トルクコンバータ62によるトルク増幅作用が得られるトルクコンバータ状態となる。また、LUクラッチ70がロックアップ状態とされることにより、トルクコンバータ62はポンプ翼車62aおよびタービン翼車62bが一体回転させられる直結状態とされる。
【0030】
変速部64は、入力軸68の回転速度である入力回転速度Ni を段階的に変化させて出力軸72に伝達するもので、出力軸72から前記プロペラシャフト46に動力伝達される。変速部64は、何れもシングルピニオン型の第1遊星歯車装置74および第2遊星歯車装置76を備えており、変速比γ〔=入力回転速度Ni /出力軸72の回転速度(出力回転速度)No 〕が異なる複数のギヤ段が機械的に成立させられる、遊星歯車式の有段の自動変速機である。入力回転速度Ni は、トルクコンバータ62の出力回転速度であるタービン回転速度Nt と同値であり、出力回転速度No は車速Vに対応する。第1遊星歯車装置74は、第1サンギヤS1、第1ピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持している第1キャリアCA1、および第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1の3つの回転要素を備えている。第2遊星歯車装置76は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持している第2キャリアCA2、および第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2の3つの回転要素を備えている。
【0031】
上記第1遊星歯車装置74および第2遊星歯車装置76において、第1サンギヤS1は、第1ブレーキB1を介してケース60に選択的に連結される。第1キャリアCA1は第2リングギヤR2と一体的に連結されており、その第1キャリアCA1および第2リングギヤR2は、第2クラッチC2を介して入力軸68に選択的に連結されると共に、第2ブレーキB2を介してケース60に選択的に連結される。第1キャリアCA1および第2リングギヤR2はまた、一方向クラッチF1を介して非回転部材であるケース60に連結されており、エンジン32と同方向の回転が許容され逆方向の回転が禁止されている。第1リングギヤR1は第2キャリアCA2と一体的に連結されており、その第1リングギヤR1および第2キャリアCA2は出力軸72に連結されている。第2サンギヤS2は、第1クラッチC1を介して入力軸68に選択的に連結される。第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2(以下、特に区別しない場合は係合装置CBと言う。)は、油圧アクチュエータによって係合させられる油圧式摩擦係合装置であり、図3に示す係合作動表に従って各クラッチCおよびブレーキBが係合させられることにより、複数のギヤ段として、第1速ギヤ段「1st」~第4速ギヤ段「4th」の前進4速が成立させられる。また、係合装置CBが総て開放されることにより、動力伝達を遮断するニュートラル「N」になる。図3のカッコ付きの「(○)」は、エンジンブレーキを効かせる際の係合を意味している。すなわち、上記変速部64は、複数の係合装置CBの係合開放状態に応じて複数の前進ギヤ段が成立させられる有段変速機である。
【0032】
図1に戻って、車両10は、各種の制御を実行する制御装置として車載制御装置130を備えている。車載制御装置130は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている電子制御装置で、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことにより車両10の各種制御を実行する。車載制御装置130は、必要に応じてエンジン制御用、MG制御用、油圧制御用等の複数の電子制御装置を備えて構成される。
【0033】
車載制御装置130には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ90、タービン回転速度センサ92、出力回転速度センサ94、MG回転速度センサ96、アクセル開度センサ98、スロットル弁開度センサ100、路面勾配センサ102、油温センサ104、車両前方撮影カメラ106、ミリ波レーダー等の車間距離センサ108、オートクルーズ設定装置110、レバーポジションセンサ120など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン32の回転速度であるエンジン回転速度Ne 、入力回転速度Ni と同値であるタービン回転速度Nt 、車速Vに対応する出力回転速度No 、回転機MGの回転速度であるMG回転速度Nmg、アクセルペダル等のアクセル操作部材の操作量で運転者の出力要求量を表すアクセル開度θacc 、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、路面勾配Φ、変速部64の油温THoil 、車両前方のビデオ映像Vfr、先行車両56までの車間距離Dis、オートクルーズ設定情報Acrui、シフトレバー122の操作ポジションPOSshを表す信号など)が、それぞれ供給される。油温THoil は、変速部64を潤滑する潤滑油等の温度である。
【0034】
シフトレバー122は運転席の近傍に配置され、変速部64の動力伝達状態であるシフトレンジを切り替えるために運転者によって操作されるシフト操作部材で、複数の操作ポジションPOSshを備えている。操作ポジションPOSshとして、例えばP、R、N、Dの複数のポジションが設けられている。Pポジションは、変速部64が動力伝達を遮断するニュートラル状態とされ且つ機械的に出力軸72の回転が阻止される駐車用のP(パーキング)レンジを選択する操作ポジションである。ニュートラル状態は、例えば変速部64の総ての係合装置CBが開放された状態である。Rポジションは、後進走行用のR(リバース)レンジを選択する操作ポジションである。Nポジションは、Pポジションと同様に変速部64がニュートラル状態とされるN(ニュートラル)レンジを選択する操作ポジションである。Dポジションは、例えば車速Vや要求駆動トルクTrdem等の走行状態を変数として予め定められた変速条件に従って、変速部64の複数の前進ギヤ段「1st」~「4th」を自動的に切り替えて走行する、前進走行用のD(ドライブ)レンジを選択する操作ポジションである。
【0035】
オートクルーズ設定装置110は、運転者の加減速操作を必要とすることなく予め定められた目標走行状態で走行するように、駆動力源であるエンジン32および回転機MGを自動的に制御する自動運転として、定速走行および追従走行を行うオートクルーズ走行を選択する装置である。すなわち、本実施例の車両10は、アクセルペダル等による運転者の加減速操作に従ってエンジン32や回転機MGが制御される手動運転の他に、それ等のエンジン32や回転機MGを目標車速Vt 等に従って自動的に制御するオートクルーズ走行が可能である。オートクルーズ設定装置110は、オートクルーズ走行を選択する他、目標車速Vt の設定、その目標車速Vt の増減、先行車両に追従して走行する追従走行時の目標車間距離Dt の設定などを行う装置で、例えばステアリングホイール等に配設され、その目標車速Vt 、目標車間距離Dt 等が、オートクルーズ設定情報Acruiとして運転者により入力される。
【0036】
車載制御装置130からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン32、回転機MG、LUクラッチ70、変速部64など)を制御するための各種指令信号(例えばエンジン32を制御するためのエンジン制御指令信号Se 、回転機MGを制御するためのMG制御指令信号Smg、LUクラッチ70を制御するためのLU制御指令信号Slu、変速部64のギヤ段を切り替えるための変速制御指令信号Sshなど)が、それぞれ出力される。車両10はまた、前記オートクルーズ走行に関連して自動ブレーキシステム80を備えている。自動ブレーキシステム80は、後輪52および前輪54に設けられた各ホイールブレーキ82のブレーキ力すなわちブレーキ油圧を、車載制御装置130から供給される自動ブレーキ制御指令信号Sbrに従って電気的に制御する。ホイールブレーキ82にはまた、図示しないブレーキペダルが足踏み操作されることにより、ブレーキマスターシリンダを介してブレーキ油圧が供給されるようになっており、そのブレーキ油圧すなわちブレーキ操作力に応じたブレーキ力を機械的に発生する。
【0037】
車載制御装置130は、車両10における各種制御を実現するために、ハイブリッド制御部132、変速制御部134、オートクルーズ制御部136を機能的に備えている。
【0038】
ハイブリッド制御部132は、エンジン32および回転機MGの作動を協調して制御する。ハイブリッド制御部132は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc および車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量を算出する。駆動要求量は、例えば後輪52における要求駆動力Frdemや要求駆動トルクTrdem等である。ハイブリッド制御部132は、伝達損失、補機負荷、変速部64の変速比γ、トルクコンバータ62のトルク比等を考慮して、例えば上記要求駆動トルクTrdemを実現するために必要なトルクコンバータ62の入力トルクである要求TC入力トルクTtcdem を求め、その要求TC入力トルクTtcdem が得られるように、エンジン32を制御するエンジン制御指令信号Se を出力するとともに、回転機MGを制御するMG制御指令信号Smgを出力する。
【0039】
ハイブリッド制御部132は、回転機MGの出力のみで要求TC入力トルクTtcdem を賄える場合には、回転機MGを駆動して走行するモータ走行モードであるBEV(Battery Electric Vehicle)走行モードとする。BEV走行モードでは、エンジン32の運転を停止し、回転機MGのみを駆動力源として用いて走行するBEV走行を行なう。回転機MGとエンジン32との間にエンジン断接装置が設けられている場合には、そのエンジン断接装置を開放し、エンジン32を動力伝達経路から切り離して連れ廻りを防止することが望ましい。このBEV走行モードにおいては、要求TC入力トルクTtcdem を実現するようにMGトルクTmgを制御する。一方で、ハイブリッド制御部132は、少なくともエンジン32の出力を用いないと要求TC入力トルクTtcdem を賄えない場合には、エンジン走行モードであるHEV(Hybrid Electric Vehicle )走行モードとする。HEV走行モードでは、少なくともエンジン32を駆動力源として用いて走行するエンジン走行すなわちHEV走行を行なう。このHEV走行モードにおいては、要求TC入力トルクTtcdem の全部または一部を実現するようにエンジントルクTe を制御し、要求TC入力トルクTtcdem に対してエンジントルクTe では不足するトルク分を補うようにMGトルクTmgを制御する。他方で、ハイブリッド制御部132は、回転機MGの出力のみで要求TC入力トルクTtcdem を賄える場合であっても、エンジン32等の暖機が必要な場合などには、HEV走行モードを成立させる。このように、ハイブリッド制御部132は、要求TC入力トルクTtcdem 等に基づいて、HEV走行中にエンジン32を自動停止したり、そのエンジン停止後にエンジン32を再始動したり、BEV走行中にエンジン32を始動したり、停車中にエンジン32を自動停止したり、エンジン32を始動したりして、BEV走行モードとHEV走行モードとを切り替える。
【0040】
変速制御部134は、Dレンジが選択された場合に、例えば車速Vや要求駆動トルクTrdem等の走行状態を変数として予め定められた変速マップ等の変速条件に従って変速部64の変速判断を行ない、必要に応じて変速部64の複数の前進ギヤ段を自動的に切り替えるための変速制御指令信号Sshを出力する自動変速制御を実行する。図4は、変速部64として図2の4段変速機を備えている場合の変速マップの一例で、要求駆動トルクTrdemおよび車速Vを変数として定められており、実線はアップシフトの判断を行なうためのアップシフト線で、破線はダウンシフトの判断を行なうためのダウンシフト線である。この変速マップは、要求駆動トルクTrdemおよび車速Vに応じて駆動力源(エンジン32および回転機MG)が適切な作動領域、例えばトルク領域や回転速度領域で作動させられるように定められる。具体的には、車速Vが高くなる程、或いは要求駆動トルクTrdemが低くなる程、変速比γが小さくなる高速側のギヤ段になり、車速Vが低くなる程、或いは要求駆動トルクTrdemが大きくなる程、変速比γが大きくなる低速側のギヤ段になるように定められている。図4の数字「1」~「4」は、第1速ギヤ段「1st」~第4速ギヤ段「4th」を意味している。上記要求駆動トルクTrdemは駆動要求量に相当し、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θacc などを用いても良い。また、車速Vに替えて出力回転速度No などを用いても良い。
【0041】
変速制御部134はまた、シフトレバー122または運転席の近傍に設けられたマニュアル変速操作部材が運転者によって操作され、変速指示信号が供給された場合には、その変速指示に従って変速部64の前進ギヤ段を切り替えるマニュアル変速制御を実行する。
【0042】
オートクルーズ制御部136は、自動運転としてオートクルーズ走行を実行する。オートクルーズ走行は、運転者の加減速操作を必要とすることなく自律走行するもので、オートクルーズ設定装置110により設定された目標車速Vt で定速走行する定速走行制御、およびオートクルーズ設定装置110により設定された目標車間距離Dtを保持しつつ追従走行する追従走行制御を実行する。定速走行制御では、目標車速Vt で走行するのに必要な要求駆動トルクTrdemを算出するとともに、伝達損失や補機負荷、変速部64の変速比γ、トルクコンバータ62のトルク比等を考慮して、上記要求駆動トルクTrdemを実現するために必要な要求TC入力トルクTtcdem を求める。そして、その要求TC入力トルクTtcdem が得られるように、エンジン32を制御するエンジン制御指令信号Se を出力するとともに、回転機MGを制御するMG制御指令信号Smgを出力する。ここでの要求駆動トルクTrdemは、例えば目標車速Vt と実車速Vとの差などに基づいてフィードバック制御やフィードフォワード制御等によって求められる。一方、先行車両56に対して目標車間距離Dtを保持しつつ追従走行する追従走行制御では、車間距離Disが目標車間距離Dt となる状態で追従走行するのに必要な要求駆動トルクTrdemを算出し、その要求駆動トルクTrdemが得られるようにエンジントルクTe やMGトルクTmgを制御する。目標車間距離Dtは、例えば車速Vに応じて可変設定される。また、先行車両56の減速時など要求駆動トルクTrdemが負(マイナス)の場合は、エンジンブレーキや回転機MGによる回生ブレーキを発生させたり、必要な場合は自動ブレーキシステム80によって制御されるホイールブレーキ82のブレーキ力と合わせて負の要求駆動トルクTrdemが得られるようにする。本実施例では、このオートクルーズ制御部136が追従走行制御を実行する追従走行制御部に相当する。
【0043】
上記オートクルーズ走行時には、前記変速制御部134によるマニュアル変速制御が禁止され、図4に示すような予め定められた通常時変速マップM1に従って前進4速のギヤ段を自動的に切り替える自動変速制御が行なわれる。その場合に、先行車両56に追従して走行する追従走行時、特に高速道路や自動車専用道路等を比較的長い距離に亘って追従走行する隊列走行時には、先行車両56の存在で通気風量が減少して油温THoil が過度に上昇する可能性がある。このため、本実施例では図4に示す通常時変速マップM1とは別に、図5に示す高油温時変速マップM2が用意され、変速制御部134は、追従走行時にそれ等の変速マップM1、M2を油温THoil に応じて変更しながら、変速部64の自動変速制御を行なうようになっている。図5の高油温時変速マップM2は、図4の通常時変速マップM1に比較してギヤ段が低車速側で切り替えられるように、すなわち高速側のギヤ段が多用されるように、変速線(アップシフト線およびダウンシフト線)を低車速側へ移動させたものである。図5は総ての変速線を低車速側へ平行移動させただけであるが、アップシフト線およびダウンシフト線の何れか一方を低車速側へ移動させるだけでも良いし、それ等の変速線の一部(例えば要求駆動トルクTrdemが高い側)を低車速側へ移動させるだけでも良いし、一部のギヤ段の変速線(例えば第3速ギヤ段「3rd」と第4速ギヤ段「4th」との間の変速線)を低車速側へ移動させるだけでも良いなど、種々の態様が可能である。通常時変速マップM1は通常の変速条件に相当し、高油温時変速マップM2は高油温時変速条件に相当する。
【0044】
変速制御部134は、図6のフローチャートのステップS1~S10(以下、ステップを省略して単にS1~S10と言う。他のフローチャートも同じ。)に従って変速マップを選択し、その選択した変速マップを用いて自動変速制御を実行する。フローチャートにおいて菱形で示した判断ステップのYESは肯定を意味し、NOは否定を意味する。
【0045】
図6のS1では、オートクルーズ制御部136が追従走行制御を実行している追従走行中か否かを判断する。追従走行中か否かは、例えばオートクルーズ設定装置110の操作状態や車両10の走行状態、或いはオートクルーズ制御部136の作動状態などから判断できるし、追従走行制御を実行中か否かによってON、OFFが切り替えられる追従走行フラグの状態から判断しても良い。そして、追従走行中でなければ、S10を実行して図4の通常時変速マップM1を選択し、追従走行中の場合はS2以下を実行する。S2では、通常時変速マップM1を選択中か否かを判断し、通常時変速マップM1を選択中であればS3以下を実行し、通常時変速マップM1を選択中でない場合すなわち高油温時変速マップM2を選択中の場合はS9を実行する。
【0046】
S9では、通常時変速マップM1への復帰条件を満たすか否かを判断し、復帰条件を満たさなければS8を実行して高油温時変速マップM2の選択状態を維持するが、復帰条件を満たした場合にはS10で通常時変速マップM1を選択する。高油温時変速マップM2は、油温THoil が高油温判定値THs 以上でS7の判断がYESになった場合にS8で選択されるため、復帰条件として油温THoil が高油温判定値THs 未満であることが定められても良いが、変速マップM1、M2が頻繁に切り替わることを防止するため、本実施例では高油温判定値THs よりも低い復帰判定値THre以下であることが復帰条件として定められている。復帰判定値THreは、高油温判定値THs よりも予め定められた一定温度だけ低い値、或いは一定割合だけ低い値が定められる。また、油温THoil に関する復帰条件とは別に、例えば通常時変速マップM1以外の変速条件で自動変速制御を継続することが適当でないような場合も、通常時変速マップM1に戻すことが望ましい。例えば変速に関与するソレノイドバルブや回転速度センサ等が故障した場合には、自動変速制御そのものが適当に実施されない可能性があり、そのような故障発生時には通常時変速マップM1に従って変速制御が行なわれることを前提として各種の制御が行なわれるため、変速に関与する部品の故障が検出された場合も復帰条件として規定し、S9の判断がYESになってS10で通常時変速マップM1が選択されるようにしても良い。
【0047】
S2の判断がYESの場合、すなわち通常時変速マップM1を選択中の場合には、先行車両56との間の車間距離DisをS3で読み込み、先行車両56の後部側から見た投影面積AprをS4で算出し、車両10の今後の予想される走行負荷である予想負荷LexをS5で算出する。車間距離Disは車間距離センサ108によって検出されたもので、瞬間値でも良いが、例えば予め定められた一定走行時間或いは一定走行距離の平均値を用いることもできる。投影面積Aprは、例えば車両前方撮影カメラ106で撮影されたビデオ映像Vfrから求めることができるが、先行車両56の後部の幅寸法Wprや高さ寸法Hprをセンサにより計測して投影面積Aprを算出することもできる。また、隊列走行で先行車両56の種類や識別番号等と共に投影面積Aprを予め記憶しておけば、識別番号等から投影面積Aprを読み出すこともできるし、先行車両56との間の車車間通信で投影面積Aprを読み込むこともできるなど、種々の態様が可能である。予想負荷Lexは、例えば高度を含む道路情報を有するナビゲーションシステム84に予め設定された走行ルートから算出することができる。具体的には、例えば走行に必要な総エネルギー〔J〕、エンジン32や回転機MGに対する要求出力の平均出力〔W〕、空気抵抗や動力伝達ロス、ころがり抵抗などの走行抵抗〔N〕、総走行距離〔km〕、累積高低差〔m〕などを、予想負荷Lexとして用いることができる。また、予想負荷Lexは、例えば現在地から数km~数十km程度先までの間の移動平均等を用いても良い。同じ走行ルートにおける過去の走行負荷データなどを記憶しておいて読み込むようにしても良い。走行負荷データを隊列管理センタ等のサーバに蓄積しておき、無線通信回線を介してサーバから読み込むようにしても良い。
【0048】
上記車間距離Dis、投影面積Apr、および予想負荷Lexは、何れも追従走行時に油温THoil に影響する油温影響因子である。これ等の油温影響因子のうち車間距離Disおよび投影面積Aprは、車両10の通気風量に影響する先行車両56に関する情報に相当する。そして、次のS6では、その車間距離Dis、投影面積Apr、および予想負荷Lexに基づいて高油温判定値THs を算出する。例えば、図8に示すように予め定められたマップや関係式から車間距離Disに基づいて高油温判定基準値THsst を求め、図9に示すように予め定められたマップや関係式から投影面積Aprに基づいて補正係数Ka を求め、図10に示すように予め定められたマップや関係式から予想負荷Lexに基づいて補正係数Kl を求め、次式(1) に示すようにそれ等の高油温判定基準値THsst 、補正係数Ka 、および補正係数Kl を掛け算して高油温判定値THs を算出する。すなわち、車間距離Disについては、車間距離Disが小さい程通気風量が減少して油温THoil は上昇し易くなるため、図8では車間距離Disが小さい程高油温判定基準値THsst が低くなるように定められている。投影面積Aprについては、投影面積Aprが大きい程通気風量が減少して油温THoil は上昇し易くなるため、図9では投影面積Aprが大きい程補正係数Ka が1.0よりも小さくなり、高油温判定値THs が低くなるように定められている。予想負荷Lexについては、予想負荷Lexが大きい程低速側ギヤ段が多用されるようになって変速部64の各部の回転速度やトルクコンバータ62の回転速度が速くなり、油の攪拌などで油温THoil が上昇し易くなるため、図10では予想負荷Lexが大きい程補正係数Kl が1.0よりも小さくなり、高油温判定値THs が低くなるように定められている。
THs =THsst ×Ka ×Kl ・・・(1)
【0049】
上記図8では、車間距離Disに応じて高油温判定基準値THsst が求められるが、予め一定の高油温判定基準値THsst を定めておいて、車間距離Disについても投影面積Aprや予想負荷Lexと同様に補正係数Kd を求め、その補正係数Kd を高油温判定基準値THsst に掛け算して高油温判定値THs を算出するようにしても良い。投影面積Aprまたは予想負荷Lexから高油温判定基準値THsst が求められるようにしても良い。また、通気風量に影響する先行車両56に関する情報である車間距離Disおよび投影面積Aprの何れか一方のみを変数として高油温判定値THs を可変設定しても良い。車間距離Dis、投影面積Apr、および予想負荷Lexの代わりに、或いはそれ等に加えて、通気風量に影響する先行車両56に関する他の情報を考慮して高油温判定値THs を算出しても良い。例えば、ビデオ映像Vfrなどから先行車両56の後部の幅寸法Wprや高さ寸法Hprを算出し、予め定められたマップ等から補正係数Kw 、Kh を求めて、その補正係数Kw 、Kh を高油温判定基準値THsst に掛け算して高油温判定値THs を算出しても良い。図11は、幅寸法Wprに基づいて補正係数Kw を求めるマップや演算式の一例で、投影面積Aprの場合と同様に幅寸法Wprが大きい程通気風量が減少して油温THoil は上昇し易くなるため、幅寸法Wprが大きい程補正係数Kw が1.0よりも小さくなり、高油温判定値THs が低くなるように定められている。高さ寸法Hprについても、高さ寸法Hprが大きい程通気風量が減少して油温THoil は上昇し易くなるため、高さ寸法Hprが大きい程補正係数Kh が1.0よりも小さくなるように、図11と同様に定められる。なお、図9図11では、補正係数Ka 、Kl 、Kw がそれぞれ1.0を跨いで変化しているが、高油温判定基準値THsst の決め方によってはそれ等の補正係数Ka 、Kl 、Kw を何れも1.0以下の範囲で変化させるだけでも良い。また、図8図11のマップ乃至は演算式は、高油温判定基準値THsst や補正係数Ka 、Kl 、Kw が、何れも車間距離Dis等の変数に対して直線的に変化しているが、折れ線或いは曲線で変化させても良いし、2段階或いは3段階以上の多段階で変化させても良いなど、種々の態様が可能である。
【0050】
図6のS7では、油温THoil がS6で求められた高油温判定値THs 以上か否かを判断し、THoil ≧THs であればS8を実行して図5の高油温時変速マップM2を選択する。また、THoil <THs の場合は、S10を実行して図4の通常時変速マップM1を選択する。
【0051】
図12は、追従走行中に図6のフローチャートに従って変速マップM1、M2が変更された場合の油温THoil および変速マップM1、M2の変化を示したタイムチャートの一例である。図12の時間t1は、油温THoil が高油温判定値THs 以上になってS7の判断がYESになり、S8が実行されて高油温時変速マップM2が選択された時間である。このように高油温時変速マップM2に変更されると、高速側のギヤ段が多用されるようになるため、変速部64の各部の回転速度やトルクコンバータ62の回転速度が低下して油の攪拌による温度上昇が抑制される。また、変速部64のギヤ段が通常時よりも低車速で切り替えられるため、車速Vが低い分だけ変速時に係合させられる係合装置CBの変速時の回転速度変化が小さくなり、その係合時の負荷(発熱量)が低減されて油温THoil の上昇が抑制される。この結果、油温THoil が低下させられるようになり、時間t2で復帰判定値THre以下になると、S9の判断がYESになってS10が実行され、通常時変速マップM1に復帰する。
【0052】
一方、このように高油温時変速マップM2に従って変速制御が行なわれると、高速側ギヤ段が多用されるようになるため、その分だけ駆動力源であるエンジン32や回転機MGが高トルク領域で作動させられるようになり、要求駆動トルクTrdemに対する応答性が悪くなる可能性がある。これにより、追従走行時における車間距離Disの変化が大きくなる一方、その車間距離Disの変化を抑制するために要求駆動トルクTrdemの変化が大きくなるとともに、その要求駆動トルクTrdemの変化でギヤ段が頻繁に切り替えられるビジーシフトが発生し易くなり、運転者に違和感を生じさせる可能性がある。このため、本実施例のオートクルーズ制御部136は、図7のフローチャートに従って信号処理を実行し、高油温時変速マップM2が選択されている場合に一定の条件下で追従走行を制限するようになっている。
【0053】
図7のSS1では、高油温時変速マップM2が選択されているか否かを判断し、高油温時変速マップM2が選択されている場合はSS2以下を実行し、高油温時変速マップM2が選択されていない場合すなわち通常時変速マップM1が選択されている場合はそのまま終了する。SS2では、追従走行制御の継続が適当か否か、本実施例では追従走行を中止すべき追従走行不可条件を満たすか否かを判断する。追従走行不可条件は、例えば車間距離Disが目標車間距離Dt から大きく離脱した場合や、一定値以上離れた状態が一定時間以上継続した場合、一定値以上離れる頻度が高い場合、或いはエンジントルクTe やMGトルクTmgの駆動力源トルクの変化幅が大きい場合、駆動力源トルクの変化頻度が高い場合など、運転者に違和感を生じさせるような車両状態で、予め定められる。そして、追従走行不可条件を満たした場合はSS3以下を実行し、追従走行不可条件を満たしていない場合はそのまま終了する。
【0054】
SS3では、追従走行を中止すべき追従走行不可情報を、運転席近傍の表示器等により音や画像等で運転者に報知する。SS4では、運転者がオートクルーズ設定装置110を用いて追従走行の終了操作を行なったか否かを判断し、終了操作が行なわれた場合にはSS5を実行して追従走行制御を終了するが、終了操作が行なわれない場合は追従走行制御をそのまま継続する。SS5で追従走行制御の終了処理が行なわれると、図6のS1の判断がNOとなってS10で通常時変速マップM1が選択され、その通常時変速マップM1を用いて変速部64の変速制御が行なわれるようになる。このように、追従走行不可情報を運転者に報知し、運転者の終了操作を条件として追従走行制御を終了する場合も、追従走行制御を制限する一態様である。なお、SS4を省略して追従走行制御を強制的に終了することも可能である。
【0055】
このように本実施例の車両10の車載制御装置130が機能的に備えている変速制御部134によれば、追従走行制御の実行中に、通気風量に影響する先行車両56に関する情報(車間距離Dis、投影面積Apr)に基づいて高油温判定値THs を可変設定する一方、変速部64の油温THoil を検出し、その油温THoil が高油温判定値THs 以上の場合はギヤ段が低車速側で切り替えられる高油温時変速マップM2が選択され(S7、S8)、変速比γが小さい高速側のギヤ段が多用されるようになる。このように高速側ギヤ段が多用されるようになると、入力回転速度Ni を含む変速部64の各部の回転速度やトルクコンバータ62の回転速度が低下し、油の攪拌による発熱が抑制されるため、追従走行時に通気風量の減少による冷却性能の低下に起因して油温THoil が上昇することが抑制される。特に、変速マップM1、M2を変更するか否かを判断する高油温判定値THs が、通気風量に影響する先行車両56に関する情報に基づいて可変設定されるため、追従走行時の通気風量の減少に起因する油温THoil の上昇を適切に抑制することができる。これにより、追従走行時に先行車両56が風よけとなって走行抵抗が減少することによる燃費向上効果を享受しつつ、通気風量の減少による油温の過度の上昇を抑制することができる。
【0056】
また、変速部64は、複数の係合装置CBの係合開放状態が変更されることによってギヤ段が切り替えられる有段変速機であり、高油温時変速マップM2が選択されてギヤ段が低車速側で切り替えられるようになると、車速Vが低い分だけ変速時に係合させられる係合装置CBの変速時の回転速度変化が小さくなるため、その係合時の負荷(発熱量)が低減され、この点でも油温THoil の上昇が抑制される。
【0057】
また、油温THoil が、S6で設定された高油温判定値THs 以上になったか否かを判断し、高油温判定値THs 以上になった場合に高油温時変速マップM2に変更されるため、変速部64の各部の回転速度を低下させて油温THoil の上昇を抑制する、という本発明を簡便に実施できる。
【0058】
また、通気風量に影響する先行車両56に関する情報として、先行車両56までの車間距離Disが用いられ、車間距離Disが小さい場合は大きい場合に比較して高油温判定値THs が低くなるように、その車間距離Disに応じて高油温判定値THs が可変設定されるため、油温THoil の上昇が適切に抑制される。すなわち、車間距離Disが小さい場合は、先行車両56に起因する通気風量の減少による冷却性能の低下が顕著になるため、高油温判定値THs を低下させてより低い油温THoil で高油温時変速マップM2に変更されるようにすることで、冷却性能の低下に拘らず油温THoil の上昇を適切に抑制することができる。
【0059】
また、通気風量に影響する先行車両56に関する情報として、先行車両56の後部側から見た投影面積Aprが用いられ、投影面積Aprが大きい場合は小さい場合に比較して高油温判定値THs が低くなるように、その投影面積Aprに応じて高油温判定値THs が可変設定されるため、油温THoil の上昇が適切に抑制される。すなわち、先行車両56の投影面積Aprが大きい場合は、先行車両56に起因する通気風量の減少による冷却性能の低下が顕著になるため、高油温判定値THs を低下させてより低い油温THoil で高油温時変速マップM2に変更されるようにすることで、冷却性能の低下に拘らず油温THoil の上昇を適切に抑制することができる。
【0060】
また、予想負荷Lexが大きい場合は小さい場合に比較して高油温判定値THs が低くなるように、通気風量に影響する先行車両56に関する情報に加えて予想負荷Lexに基づいて高油温判定値THs が可変設定されるため、油温THoil の上昇が一層適切に抑制される。すなわち、予想負荷Lexが大きい場合は、車速Vの低下により変速比γが大きい低速側のギヤ段が多用されるようになって油温THoil が上昇し易くなるため、高油温判定値THs を低下させてより低い油温THoil で高油温時変速マップM2に変更されるようにすることで、走行負荷が大きいことに起因する油温THoil の上昇を適切に抑制することができる。
【0061】
また、上記予想負荷Lexが予め定められた走行ルートに基づいて求められるため、予想負荷Lexを適切に予測して高油温判定値THs を低下させることにより、油温THoil の上昇を適切に抑制することができる。
【0062】
また、オートクルーズ制御部136は、追従走行制御の実行中に変速制御部134によって高油温時変速マップM2に変更された場合に、追従走行を継続可能か否かを判断し(SS2)、継続不可と判断した場合にはその追従走行不可情報を運転者に報知する(SS3)。そして、運転者の終了操作を条件として追従走行制御を終了するため(SS4、SS5)、無理な追従走行制御の継続により、先行車両56との間の車間距離Disの変化が大きくなったり、駆動力源トルクの変化が大きくなったり、ビジーシフトが発生したりして、運転者に違和感を生じさせることが抑制される。
【0063】
また、油温THoil が高油温判定値THs 以上になると高油温時変速マップM2に切り替えられる一方、油温THoil が高油温判定値THs よりも低い復帰判定値THre以下になったことを条件として高油温時変速マップM2から通常時変速マップM1に復帰するため、油温THoil の僅かな上下変化で変速マップM1、M2が頻繁に切り替わることが抑制される。
【0064】
また、S6で高油温判定値THs を設定する際に、通気風量に影響する先行車両56に関する情報として、先行車両56の後部の幅寸法Wprを考慮し、図11に示されるように幅寸法Wprが大きい程1.0よりも小さくなる補正係数Kw を高油温判定基準値THsst に掛け算して高油温判定値THs を算出するようにすれば、油温THoil の上昇を適切に抑制できる。すなわち、先行車両56の幅寸法Wprが大きい場合は、先行車両56に起因する通気風量の減少による冷却性能の低下が顕著になるため、高油温判定値THs を低下させてより低い油温THoil で高油温時変速マップM2に変更されるようにすることで、冷却性能の低下に拘らず油温THoil の上昇を適切に抑制することができる。先行車両56の後部の高さ寸法Hprを考慮し、幅寸法Wprと同様に補正係数Kh を求めて高油温判定値THs を設定しても、同様の作用効果が得られる。
【0065】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
10:車両 32:エンジン(駆動力源) 56:先行車両 64:変速部(自動変速機) 130:車載制御装置(制御装置) 134:変速制御部 136:オートクルーズ制御部(追従走行制御部) MG:回転機(駆動力源) M1:通常時変速マップ(通常の変速条件) M2:高油温時変速マップ(高油温時変速条件) THoil :油温 THs :高油温判定値 THre:復帰判定値 Dis:車間距離 Apr:投影面積 Wpr:幅寸法 Lex:予想負荷
図1
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図12