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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184771
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】統合分析デバイスのアレイ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20231221BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/03 Z
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023192926
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2022112554の分割
【原出願日】2015-08-26
(31)【優先権主張番号】62/042,793
(32)【優先日】2014-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】311002665
【氏名又は名称】パシフィック・バイオサイエンシズ・オブ・カリフォルニア・インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アネット グロット
(72)【発明者】
【氏名】ラビ サクセナ
(72)【発明者】
【氏名】ポール ランドクイスト
(57)【要約】
【課題】統合分析デバイスのアレイを提供すること
【解決手段】統合分析デバイスのアレイおよびそれらの生産のための方法が、提供される。これらのアレイは、核酸シークエンシング反応等の生化学反応を含む、高密度における高度に多重化された光学反応の分析において有用である。本デバイスは、スペクトル、振幅、および時間分解能、またはそれらの組み合わせ等の特徴を使用する、光学信号の高感度判別を可能にする。これらのデバイスは、光学反応から発せられる光の空間的分離を提供する、統合回折ビーム成形要素を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
統合分析デバイスのアレイであって、各デバイスは、
ナノスケール発光容量と、
前記ナノスケール発光容量に光学的に結合された検出器層と、
前記ナノスケール発光容量と前記検出器層との間に配置されたレーザ拒否フィルタ層と、
前記ナノスケール発光容量に光学的に結合された励起源と
を備え、
光が、前記ナノスケール発光容量内の複数の放射体によって前記発光容量から発せられ、
前記検出器層は、複数の感知領域を備え、
前記レーザ拒否フィルタは、誘電体干渉フィルタ層と低屈折率全内部反射層とを備える多層フィルタ要素、または、吸収染料層と誘電体干渉スタック層とを備えるハイブリッドレーザ拒否フィルタ要素を備える、アレイ。
【請求項2】
前記レーザ拒否フィルタ層は、前記多層フィルタ要素を備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項3】
前記レーザ拒否フィルタ層は、前記ハイブリッドレーザ拒否フィルタ要素を備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項4】
前記吸収染料層は、約532nmの波長を有する光を吸収し、かつ、約620nmを上回る波長を有する光を透過する材料を備える、請求項3に記載のアレイ。
【請求項5】
前記誘電体干渉スタック層は、高屈折率材料および低屈折率材料を備える、請求項3に記載のアレイ。
【請求項6】
前記誘電体干渉スタック層は、SiO 、SiO、Si 、Al 、BeO、MgO、CeF 、LiF、NaF、MgF 、CaF 、TiO 、Ta 、ZrO 、HfO 、Sb 、Y 、CeO 、PbCl 、ZnS、およびGaPから成る群から選択される2つの材料の交互の層を備える、請求項3に記載のアレイ。
【請求項7】
前記誘電体干渉スタック層は、GaPおよびTiO 、TiO およびAl 、または、TiO およびSiO の交互の層を備える、請求項6に記載のアレイ。
【請求項8】
前記レーザ拒否フィルタ層は、5μm以下の合計厚さを有する、請求項3に記載のアレイ。
【請求項9】
前記アレイは、前記ナノスケール発光容量と前記レーザ拒否フィルタ層との間に配置された回折ビーム成形要素をさらに備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項10】
前記回折ビーム成形要素は、フレネルレンズを備える、請求項9に記載のアレイ。
【請求項11】
前記回折ビーム成形要素は、非晶質シリコンを含む、請求項9に記載のアレイ。
【請求項12】
前記回折ビーム成形要素は、前記発光容量から発せられる光を平行にする、請求項9に記載のアレイ。
【請求項13】
前記アレイは、前記回折ビーム成形要素と前記レーザ拒否フィルタ層との間に配置された色濾過層をさらに備える、請求項9に記載のアレイ。
【請求項14】
前記色濾過層は、複数の色濾過要素を備え、各色濾過要素は、1つの検出器層感知領域に光学的に結合され、光波長の範囲に対して特異的である、請求項13に記載のアレイ。
【請求項15】
前記回折ビーム成形要素は、前記ナノスケール発光容量から発せられる前記光を空間的に分離して複数のビームにし、前記空間的に分離された光ビームを前記色濾過要素を通して前記感知領域上に指向する、請求項14に記載のアレイ。
【請求項16】
各デバイスは、2つの色濾過層と、2つの感知領域と、2つの空間的に分離された光ビームとを備える、請求項15に記載のアレイ。
【請求項17】
各デバイスは、前記発光容量内に2つの放射体を備える、請求項15に記載のアレイ。
【請求項18】
前記励起源と前記検出器層との間に配置された少なくとも1つの開口層をさらに備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項19】
前記開口層は、窒化チタンを含む、請求項18に記載のアレイ。
【請求項20】
前記励起源は、導波路励起源である、請求項1に記載のアレイ。
【請求項21】
前記ナノスケール発光容量は、前記導波路励起源の直接上方で整合させられる、請求項20に記載のアレイ。
【請求項22】
前記検出器層は、前記デバイスに統合されている、請求項1に記載のアレイ。
【請求項23】
前記検出器層は、前記デバイスに統合されていない、請求項1に記載のアレイ。
【請求項24】
前記感知領域は、長方形である、請求項1に記載のアレイ。
【請求項25】
前記検出器層は、CMOSセンサの一部である、請求項1に記載のアレイ。
【請求項26】
前記ナノスケール発光容量内に配置される被分析物をさらに備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項27】
前記被分析物は、生物学的サンプルを含む、請求項26に記載のアレイ。
【請求項28】
前記生物学的サンプルは、核酸を含む、請求項27に記載のアレイ。
【請求項29】
前記生物学的サンプルは、ポリメラーゼ酵素を含む、請求項27に記載のアレイ。
【請求項30】
前記アレイは、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個のナノスケール発光容量を備える、請求項1に記載のアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2014年8月27日に出願された米国仮出願番号第62/042,793号の利益を主張しており、その開示は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
分析システムでは、所与のシステムによって任意の所与の時間に実行されている分析の数を増加させる能力が、有用性を増加させ、そのようなシステムの耐用期間を延長することの主要な要素となっている。具体的には、所与のシステムを用いた分析の多重化要因を増加させることによって、システムの全体的スループットを増加させ、それによって、その使用と関連付けられる費用を減少させながら、その有用性を増加させることができる。
【0003】
光学分析では、多重化を増加させることは、多くの場合、より複雑な光学システム、増加した照射および検出能力、ならびに新しい反応格納方略を必要とし得るため、困難の増加を引き起こす。ある場合には、システムは、多重化を何倍も、何桁もの大きささえも増加させようとし、これらの考慮事項をさらに複雑にする。同様に、ある場合において、システムが使用されるべき分析環境は、非常に高感度であるため、所与のシステム内の異なる分析の間の変動が耐えられない場合がある。そのようなステップが、多くの場合、例えば、反応間クロストークにおいて、さらに優れた結果、より低い信号およびより高い雑音のいずれか一方または両方に起因する、減少した信号対雑音比、ならびに同等物を生じさせるため、これらの目標は、多くの場合、単純にシステムをより大きくして高出力にするという強引なアプローチに反する。したがって、それらの所望の分析のために、具体的には、高感度反応分析で使用するために、実質的に増加した多重化を有する、分析システムを提供すること、および多くの場合に、そのような増加した多重化の悪影響を最小限にしながらそうすることが望ましいであろう。
【0004】
同時に、分析システムの性能を増加させ、システムを製造および使用することと関連付けられる費用を削減する継続的必要性がある。具体的には、分析システムのスループットを増加させる継続的必要性がある。分析システムのサイズおよび複雑性を削減する継続的必要性がある。柔軟な構成を有し、容易に拡張可能である、分析システムの継続的必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、一側面では、統合分析デバイスのアレイを提供することによって、これらおよび他の問題に対処し、各デバイスは、
ナノスケール発光容量と、
ナノスケール発光容量に光学的に結合される、検出器層と、
ナノスケール発光容量と検出器層との間に配置される、回折ビーム成形要素と、
回折ビーム成形要素と検出器層との間に配置される、色濾過層と、
を備え、
光は、ナノスケール発光容量内で複数の放射体によって発光容量から発せられ、
検出器層は、複数の感知領域を備え、
回折ビーム成形要素は、ナノスケール発光容量から発せられる光を空間的に分離し、色濾過層を通して空間的に分離された光を複数の感知領域に指向する。
【0006】
別の側面では、本発明は、統合分析デバイスのアレイを提供し、各デバイスは、
ナノスケール発光容量と、
ナノスケール発光容量に光学的に結合される、検出器層と、
ナノスケール発光容量と検出器層との間に配置される、回折ビーム成形要素と、
回折ビーム成形要素と検出器層との間に配置される、色濾過層であって、色濾過層は、各色濾過要素が光波長の範囲に対して特異的である、2~9個の色濾過要素を備える、色濾過層と、
を備え、
光は、発光容量内で複数の放射体によってナノスケール発光容量から発せられ、
検出器層は、複数の感知領域を備え、感知領域は、色濾過要素に光学的に結合され、
回折ビーム成形要素は、ナノスケール発光容量から発せられる光を複数のビームに空間的に分離し、色濾過層を通して空間的に分離された光ビームを感知領域上に指向する。
【0007】
いくつかの実施形態では、上記のアレイはさらに、ナノスケール発光容量内に配置される被分析物を備える。具体的実施形態では、被分析物は、生物学的サンプルを含み、より具体的な実施形態では、生物学的サンプルは、核酸を含み、さらに具体的な実施形態では、生物学的サンプルは、ポリメラーゼ酵素を含む。
【0008】
上記のアレイは、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個のナノスケール発光容量さえも備えることができる。
【0009】
別の側面では、本発明は、本明細書に開示される統合分析デバイスのアレイを生産するための方法を提供する。
本願明細書は、以下の項目を提供する。
(項目1)
統合分析デバイスのアレイであって、各デバイスは、
ナノスケール発光容量と、
上記ナノスケール発光容量に光学的に結合される、検出器層と、
上記ナノスケール発光容量と上記検出器層との間に配置される、回折ビーム成形要素と、
上記回折ビーム成形要素と上記検出器層との間に配置される、色濾過層と、
を備え、
光は、上記ナノスケール発光容量内で複数の放射体によって上記発光容量から発せられ、
上記検出器層は、複数の感知領域を備え、
上記回折ビーム成形要素は、上記ナノスケール発光容量から発せられる上記光を空間的に分離し、上記色濾過層を通して上記空間的に分離された光を上記複数の感知領域に指向する、
アレイ。
(項目2)
上記回折ビーム成形要素は、ハイブリッドレンズである、項目1に記載のアレイ。
(項目3)
上記回折ビーム成形要素は、フレネルレンズを備える、項目1に記載のアレイ。
(項目4)
上記回折ビーム成形要素は、非晶質シリコンを含む、項目1に記載のアレイ。
(項目5)
上記色濾過層は、複数の色濾過要素を備え、各色濾過要素は、1つの検出器層感知領域に光学的に結合され、光波長の範囲に対して特異的である、項目1に記載のアレイ。
(項目6)
上記色濾過要素は、ダイクロイックフィルタである、項目5に記載のアレイ。
(項目7)
上記色濾過要素は、薄膜干渉フィルタである、項目5に記載のアレイ。
(項目8)
上記色濾過要素は、非晶質シリコンと、酸化ケイ素とを含む、項目5に記載のアレイ。(項目9)
上記色濾過要素は、吸収フィルタである、項目5に記載のアレイ。
(項目10)
上記ナノスケール発光容量に光学的に結合される励起源をさらに備える、項目1に記載のアレイ。
(項目11)
上記励起源と上記検出器層との間に配置される、少なくとも1つの開口層をさらに備える、項目10に記載のアレイ。
(項目12)
上記開口層は、上記励起源と上記回折ビーム成形要素との間に配置される、項目11に記載のアレイ。
(項目13)
上記開口層は、上記回折ビーム成形要素と上記検出器層との間に配置される、項目11に記載のアレイ。
(項目14)
上記開口層は、窒化チタンを含む、項目11に記載のアレイ。
(項目15)
上記励起源と上記検出器層との間に配置される、少なくとも2つの開口層を備える、項目11に記載のアレイ。
(項目16)
上記励起源と上記検出器層との間に配置される、少なくとも3つの開口層を備える、項目15に記載のアレイ。
(項目17)
上記励起源と上記検出器層との間に配置される、レーザ拒否フィルタ層をさらに備える、項目10に記載のアレイ。
(項目18)
上記レーザ拒否フィルタ層は、上記色濾過層と上記検出器層との間に配置される、項目17に記載のアレイ。
(項目19)
上記検出器層は、2つの感知領域を備える、項目1に記載のアレイ。
(項目20)
上記ナノスケール発光容量に光学的に結合される、導波路励起源をさらに備える、項目19に記載のアレイ。
(項目21)
上記ナノスケール発光容量は、上記導波路励起源の直接上方で整合させられる、項目20に記載のアレイ。
(項目22)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して同一線上にある、項目21に記載のアレイ。
(項目23)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して同一線上にない、項目21に記載のアレイ。
(項目24)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して斜めにある、項目21に記載のアレイ。
(項目25)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して垂直である、項目21に記載のアレイ。
(項目26)
複数のナノスケール発光容量に光学的に結合される、複数の導波路励起源を備える、項目20に記載のアレイ。
(項目27)
上記複数の導波路励起源は、相互と平行に配向される、項目26に記載のアレイ。
(項目28)
上記複数のナノスケール発光容量は、上記複数の導波路励起源の直接上方で整合させられる、項目27に記載のアレイ。
(項目29)
上記ナノスケール発光容量は、規則的グリッドパターンで配列される、項目28に記載のアレイ。
(項目30)
上記ナノスケール発光容量は、オフセットグリッドパターンで配列される、項目28に記載のアレイ。
(項目31)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して同一線上にある、項目28に記載のアレイ。
(項目32)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して同一線上にない、項目28に記載のアレイ。
(項目33)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して斜めにある、項目32に記載のアレイ。
(項目34)
第1の導波路励起源と関連付けられる上記感知領域は、上記第1の導波路励起源に対して+45°の対角線上にあり、隣接する第2の導波路励起源と関連付けられる上記検出器感知領域は、上記隣接する第2の導波路励起源に対して-45°の対角線上にある、項目32に記載のアレイ。
(項目35)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して垂直である、項目32に記載のアレイ。
(項目36)
上記検出器層は、上記デバイスに統合されている、項目1に記載のアレイ。
(項目37)
上記検出器層は、上記デバイスに統合されていない、項目1に記載のアレイ。
(項目38)
上記色濾過層と上記検出器層との間に配置される、屈折レンズ要素をさらに備える、項目37に記載のアレイ。
(項目39)
上記回折ビーム成形要素は、上記発光容量から発せられる光を平行にする、項目1に記載のアレイ。
(項目40)
上記感知領域は、長方形である、項目1に記載のアレイ。
(項目41)
上記感知領域は、正方形である、項目40に記載のアレイ。
(項目42)
上記回折ビーム成形要素の光学効率は、少なくとも40%である、項目1に記載のアレイ。
(項目43)
上記検出器層は、CMOSセンサの一部である、項目1に記載のアレイ。
(項目44)
統合分析デバイスのアレイであって、各デバイスは、
ナノスケール発光容量と、
上記ナノスケール発光容量に光学的に結合される、検出器層と、
上記ナノスケール発光容量と上記検出器層との間に配置される、回折ビーム成形要素と、
上記回折ビーム成形要素と上記検出器層との間に配置される、色濾過層であって、上記色濾過層は、各色濾過要素が光波長の範囲に対して特異的である、2~9個の色濾過要素を備える、色濾過層と、
を備え、
光は、上記ナノスケール発光容量内で複数の放射体によって上記発光容量から発せられ、
上記検出器層は、複数の感知領域を備え、上記感知領域は、上記色濾過要素に光学的に結合され、
上記回折ビーム成形要素は、上記ナノスケール発光容量から発せられる上記光を複数のビームに空間的に分離し、上記色濾過層を通して上記空間的に分離された光ビームを上記感知領域上に指向する、
アレイ。
(項目45)
統合分析デバイスあたりの色濾過要素、感知領域、および分離されたビームの数は、2である、項目44に記載のアレイ。
(項目46)
放射体の数は、4である、項目44に記載のアレイ。
(項目47)
上記回折ビーム成形要素は、ハイブリッドレンズである、項目44に記載のアレイ。
(項目48)
上記回折ビーム成形要素は、フレネルレンズを備える、項目44に記載のアレイ。
(項目49)
上記回折ビーム成形要素は、非晶質シリコンを含む、項目44に記載のアレイ。
(項目50)
上記色濾過要素は、ダイクロイックフィルタである、項目44に記載のアレイ。
(項目51)
上記色濾過要素は、薄膜干渉フィルタである、項目44に記載のアレイ。
(項目52)
上記色濾過要素は、非晶質シリコンと、酸化ケイ素とを含む、項目44に記載のアレイ。
(項目53)
上記色濾過要素は、吸収フィルタである、項目44に記載のアレイ。
(項目54)
上記ナノスケール発光容量に光学的に結合される励起源をさらに備える、項目44に記載のアレイ。
(項目55)
上記励起源と上記検出器層との間に配置される、少なくとも1つの開口層をさらに備える、項目54に記載のアレイ。
(項目56)
上記開口層は、上記励起源と上記回折ビーム成形要素との間に配置される、項目55に記載のアレイ。
(項目57)
上記開口層は、上記回折ビーム成形要素と上記検出器層との間に配置される、項目55に記載のアレイ。
(項目58)
上記開口層は、窒化チタンを含む、項目55に記載のアレイ。
(項目59)
上記励起源と上記検出器層との間に配置される、少なくとも2つの開口層を備える、項目55に記載のアレイ。
(項目60)
上記励起源と上記検出器層との間に配置される、少なくとも3つの開口層を備える、項目59に記載のアレイ。
(項目61)
上記励起源と上記検出器層との間に配置される、レーザ拒否フィルタ層をさらに備える、項目54に記載のアレイ。
(項目62)
上記レーザ拒否フィルタ層は、上記色濾過層と上記検出器層との間に配置される、項目61に記載のアレイ。
(項目63)
統合分析デバイスあたりの色濾過要素、感知領域、および分離されたビームの数は、2である、項目54に記載のアレイ。
(項目64)
上記ナノスケール発光容量は、上記励起源の直接上方で整合させられる、項目63に記載のアレイ。
(項目65)
上記励起源は、導波路励起源であり、上記感知領域は、上記導波路励起源に対して同一線上にある、項目63に記載のアレイ。
(項目66)
上記励起源は、導波路励起源であり、上記感知領域は、上記導波路励起源に対して同一線上にない、項目63に記載のアレイ。
(項目67)
上記励起源は、導波路励起源であり、上記感知領域は、上記導波路励起源に対して斜めにある、項目63に記載のアレイ。
(項目68)
上記励起源は、導波路励起源であり、上記感知領域は、上記導波路励起源に対して垂直である、項目63に記載のアレイ。
(項目69)
複数のナノスケール発光容量に光学的に結合される、複数の導波路励起源を備える、項目63に記載のアレイ。
(項目70)
上記複数の導波路励起源は、相互と平行に配向される、項目69に記載のアレイ。
(項目71)
上記複数のナノスケール発光容量は、上記複数の導波路励起源の直接上方で整合させられる、項目70に記載のアレイ。
(項目72)
上記ナノスケール発光容量は、規則的グリッドパターンで配列される、項目71に記載のアレイ。
(項目73)
上記ナノスケール発光容量は、オフセットグリッドパターンで配列される、項目71に記載のアレイ。
(項目74)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して同一線上にある、項目71に記載のアレイ。
(項目75)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して同一線上にない、項目71に記載のアレイ。
(項目76)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して斜めにある、項目75に記載のアレイ。
(項目77)
第1の導波路励起源と関連付けられる上記感知領域は、上記第1の導波路励起源に対して+45°の対角線上にあり、隣接する第2の導波路励起源と関連付けられる上記検出器感知領域は、上記隣接する第2の導波路励起源に対して-45°の対角線上にある、項目75に記載のアレイ。
(項目78)
上記感知領域は、上記導波路励起源に対して垂直である、項目75に記載のアレイ。
(項目79)
上記検出器層は、上記デバイスに統合されている、項目44に記載のアレイ。
(項目80)
上記検出器層は、上記デバイスに統合されていない、項目44に記載のアレイ。
(項目81)
上記色濾過層と上記検出器層との間に配置される、屈折レンズ要素をさらに備える、項目80に記載のアレイ。
(項目82)
上記回折ビーム成形要素は、上記発光容量から発せられる光を平行にする、項目44に記載のアレイ。
(項目83)
上記感知領域は、長方形である、項目44に記載のアレイ。
(項目84)
上記感知領域は、正方形である、項目83に記載のアレイ。
(項目85)
上記回折ビーム成形要素の光学効率は、少なくとも40%である、項目44に記載のアレイ。
(項目86)
上記検出器層は、CMOSセンサの一部である、項目44に記載のアレイ。
(項目87)
上記ナノスケール発光容量内に配置される被分析物をさらに備える、項目1~86のいずれか1項に記載のアレイ。
(項目88)
上記被分析物は、生物学的サンプルを含む、項目87に記載のアレイ。
(項目89)
上記生物学的サンプルは、核酸を含む、項目88に記載のアレイ。
(項目90)
上記生物学的サンプルは、ポリメラーゼ酵素を含む、項目89に記載のアレイ。
(項目91)
上記アレイは、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個、少なくとも100,000個、少なくとも1,000,000個、または少なくとも10,000,000個のナノスケール発光容量を備える、項目1~86のいずれか1項に記載のアレイ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A-Bは、統合分析デバイスの開示されるアレイを使用して実行されることができる、例示的核酸配列決定プロセスを概略的に図示する。
図2図2は、統合分析デバイスの概略ブロック図を提供する。
図3図3Aが、2つの信号事象の励起スペクトルおよび示された狭帯域励起照射の概略図を提供する一方で、図3Bは、2つの信号事象の狭帯域照射に基づいて、結果として生じる検出された信号を概略的に図示する。
図4図4は、2つの異なる色フィルタプロファイルのそれぞれと重ね合わせられた、4つの蛍光標識基のそれぞれの信号プロファイルを概略的に図示する。
図5図5は、レンズ要素が反応セルから発せられる光を空間的に分離し、色濾過層を通して光を検出器層上に指向する、配列決定反応から信号を検出するための統合分析デバイスを概略的に図示する。
図6図6は、2色、2振幅の合成によるシーケンス毎の反応の信号トレースを概略的に図示する。
図7図7は、放射光の空間的分離のための回折ビーム成形要素を含む、簡略化された統合分析デバイスの2つの図を図示する。
図8図8は、例えば、回折ビーム成形要素と検出器層との間の間隔に対する回折ビーム成形要素設計の修正の影響を図示する。
図9図9は、代表的回折ビーム成形要素設計を通したZMW/ナノウェルからの放射光の透過を表す。
図10図10は、色フィルタがない場合の双回折ビーム成形要素を通した発光通過に対する波長の効率および影響を図示する。
図11図11は、発光容量から透過させられる光の空間的分離のための回折ビーム成形要素を含む、代表的ナノスケールデバイスの設計、構築、および分析を図示する。
図12図12Aは、誘電体干渉フィルタによる光学拒否の入射角への依存性を図示する。図12Bおよび12Cは、光学拒否の効率を増加させるために統合デバイス内の種々の場所における低屈折率層の包含を概略的に示す。
図13図13は、例示的吸収染料層の光学的性質を図示する。
図14図14は、例示的誘電体スタックの光学的性質を図示する。
図15図15は、例示的ハイブリッドレーザ拒否フィルタの構造およびフィルタの光学的性質を概略的に図示する。
図16A図16は、例示的誘電体スタックの物理的性質、およびスタック層の数と光透過との間の関係を図示する。
図16B図16は、例示的誘電体スタックの物理的性質、およびスタック層の数と光透過との間の関係を図示する。
図17図17は、TiO/Al誘電体スタックと、Aptina red1吸収層とを備える、ハイブリッドフィルタの光学的性質を図示する。
図18図18は、TiO/SiO誘電体スタックと、Aptina red1吸収層とを備える、ハイブリッドフィルタの光学的性質を図示する。
図19図19は、2つの例示的な暗色鏡面コーティングによって達成される、減少した反射率を図示する。
図20図20は、本開示の例示的アレイ内の統合デバイスのレイアウトを図示する。
図21図21は、本発明の例示的デバイスのアレイ内の統合分析デバイスの具体的特徴を図示する。
図22-1】図22は、本デバイスの例示的単位セルの構成要素およびそれらの一般特徴を図示する。
図22-2】図22は、本デバイスの例示的単位セルの構成要素およびそれらの一般特徴を図示する。
図22-3】図22は、本デバイスの例示的単位セルの構成要素およびそれらの一般特徴を図示する。
図23図23は、図22の構成要素の組立図を図示する。
図24図24は、本開示の例示的単位セルの断面図を提供する。
図25図25は、本開示に従って製作された例示的統合デバイスの断面SEM顕微鏡写真を図示する。
図26A図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26B図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26C図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26D図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26E図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26F図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26G図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26H図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26I図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26J図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26K図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26L図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26M図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26N図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26O図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26P図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26Q図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
図26R図26は、回折ビーム成形要素を備える統合分析デバイスのアレイの製作のための例示的プロセスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
(統合分析デバイス)
多重化光学分析システムは、多種多様の異なる用途で使用される。そのような用途は、単一分子の分析を含むことができ、それらは、反応を実行するにつれて例えばリアルタイムで単一生体分子を観察することを伴うことができる。議論を用意にするために、そのような多重化システムは、本明細書では、好ましい用途、すなわち、核酸配列情報の分析、具体的には、単一分子核酸配列分析に関して議論される。特定の用途に関して説明されるが、本明細書に説明されるデバイスおよびシステムの用途は、より広い用途であることを理解されたい。
【0012】
単一分子核酸配列決定分析との関連で、ポリメラーゼ酵素と、その配列を解明しようとしているテンプレート核酸と、テンプレート配列の一部と相補的であるプライマ配列とを含む、単一の固定化核酸合成複合体が、伸長プライマ配列に組み込まれる際に個々のヌクレオチドを識別するように観察される。組み込みは、典型的には、その組み込みに先立って、その間に、またはその後に、ヌクレオチド上の光学的に検出可能な標識を観察することによって監視される。ある場合には、そのような単一分子分析は、それによって、単一のタイプの標識ヌクレオチドが、一度に複合体に導入され、それと接触させられる、「一度に1つの塩基アプローチ」を採用する。組み込みの際に、組み込まれていないヌクレオチドは、複合体から洗い流され、標識化され組み込まれたヌクレオチドは、固定化複合体の一部として検出される。
【0013】
ある場合には、単一のタイプのヌクレオチドのみが、組み込みを検出するように添加される。次いで、これらの方法は、テンプレートの配列を判定することができるように、種々の異なるタイプのヌクレオチド(例えば、A、T、G、およびC)を通した循環を必要とする。単一のタイプのヌクレオチドのみが、任意の所与の時間に複合体と接触させられるため、任意の組み込み事象は、定義によって、接触したヌクレオチドの組み込みである。これらの方法は、若干効果的であるが、単一組み込み事象から区別ができない複数の塩基が組み込まれ得るため、テンプレート配列が複数の反復ヌクレオチドを含むときに、概して、困難に悩まされる。ある場合には、本問題に対する提案された解決策は、単一組み込み事象が動力学的に好まれることを確実にするように、存在するヌクレオチドの濃度を調節することを含む。
【0014】
他の場合において、複数のタイプのヌクレオチドが同時に添加されるが、ヌクレオチドは、各タイプのヌクレオチド上の異なる光学標識の存在によって区別可能である。したがって、そのような方法は、配列中の所与の塩基を識別するために単一のステップを使用することができる。具体的には、それぞれ区別可能な標識を持つ、4つ全てのヌクレオチドが、固定化複合体に添加される。次いで、複合体は、どのタイプの塩基が組み込まれたか、したがって、テンプレート配列中の次の塩基を識別するように調査される。
【0015】
ある場合には、これらの方法は、一度に1つの塩基の添加のみを監視するのみであり、したがって、それら(ある場合には、単一ヌクレオチド接触方法)は、複数の塩基が任意の所与のステップで添加されること、したがって、検出システムによって見逃されることを回避するために、付加的コントロールを必要とする。典型的には、そのような方法は、いったん1つのヌクレオチドが組み込まれると、プライマのさらなる伸長を防止する、ヌクレオチド上のターミネータ基を採用する。これらのターミネータ基は、典型的には、除去可能であり、検出された組み込み事象後に、制御された再伸長を可能にする。同様に、以前に組み込まれたヌクレオチドからの標識を混同することを回避するために、これらのヌクレオチド上の標識基は、典型的には、除去可能または別様に不活性化可能であるように構成される。
【0016】
別のプロセスでは、単一分子プライマ伸長反応が、伸長生成物中のヌクレオチドの継続的組み込みを識別して、基礎的テンプレート配列を解明するように、リアルタイムで監視される。そのような単一分子リアルタイム(またはSMRTTM)配列決定では、ポリメラーゼ介在テンプレート依存性プライマ伸長反応におけるヌクレオチドの組み込みのプロセスが、起こるにつれて監視される。好ましい側面では、テンプレート/ポリメラーゼプライマ複合体が提供され、典型的には、ゼロモード導波路(ZMW)等の光学的拘束領域内で、または透明基板、光学導波路、もしくは同等物の表面の近位で、固定化される(例えば、その開示全体が、あらゆる目的で参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,917,726号および第7,170,050号、ならびに米国特許出願公開第2007/0134128号参照)。光学的拘束領域は、使用される蛍光標識ヌクレオチドのための適切な励起放射線で照射される。複合体が、光学的拘束領域、または非常に小さい照射容量内にあるため、複合体を直接取り囲む反応容量のみが、励起放射線を受ける。したがって、例えば、組み込み事象中に複合体と相互作用している、これらの蛍光標識ヌクレオチドは、それらを組み込まれているものとして識別するために十分な時間にわたって照射容量内に存在する。本明細書に開示されるデバイス中の着目被分析物は、蛍光標識ヌクレオチドを組み込んでいるテンプレート/ポリメラーゼプライマ複合体であるが、他の着目被分析物、具体的には、着目蛍光被分析物が、本開示のデバイスを使用して監視され得ることを理解されたい。
【0017】
本配列決定プロセスの概略図が、図1に示されている。図1Aに示されるように、ポリメラーゼ酵素、テンプレート核酸、およびプライマ配列の固定化複合体102が、例えば、ゼロモード導波路106の光学的閉じ込めの(鎖線104によって示されるような)観察容量内で提供される。適切なヌクレオチド類似体、例えば、ヌクレオチド108が、新生核酸鎖に組み込まれると、その保持と関連付けられる信号、例えば、図1BのAトレースによって示されるような信号パルス112を生成する組み込み中に、観察容量内の標識ヌクレオチド類似体の滞留時間に対応する長期時間周期にわたって照射される。いったん組み込まれると、標識ヌクレオチド類似体のポリリン酸塩成分に付着された標識が放出される。次の適切なヌクレオチド類似体、例えば、ヌクレオチド110が複合体と接触させられるとき、それも組み込まれ、図1BのTトレース内の対応する信号114を生じさせる。テンプレート配列の基礎的相補性によって決定付けられるような新生鎖への塩基の組み込みを監視することによって、テンプレートの長いストレッチの配列情報が得られることができる。
【0018】
上記の配列決定反応は、デバイス、典型的には、理想的にはリアルタイムで、複数の配列決定反応の同時観察を提供する、統合分析デバイスに組み込まれることができる。各デバイスの構成要素およびシステム内のデバイスの構成は、変動し得るが、各統合分析デバイスは、典型的には、少なくとも部分的に、図2にブロック図として示される一般構造を備える。示されるように、統合分析デバイス200は、典型的には、被分析物(すなわち、ポリメラーゼ・テンプレート複合体および関連蛍光反応体)が配置され、光学信号が発散する、反応セル202を含む。分析システムはさらに、反応セル202と光学連通して配置される、検出器要素220を含む。反応セル202と検出器要素220との間の光学連通は、信号を反応セル202から検出器220に効率的に指向するために、概して、206、208、210、および212と指定される、1つまたはそれを上回る光学要素を含む光学列204によって提供される。これらの光学要素は、概して、用途の詳細に応じて、レンズ、フィルタ、格子、鏡、プリズム、屈折性材料、開口、または同等物、もしくはこれらの種々の組み合わせ等の任意の数の要素を備える。これらの要素を単一のデバイスアーキテクチャに組み込むことによって、反応セルと検出器との間の光学的結合の効率が向上させられる。反応セルを照射し、反応セルから発せられる光学信号を検出するための種々のアプローチを含む、統合分析システムの例は、それぞれ、あらゆる目的で参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0014837号、第2012/0019828号、および第2012/0021525号で説明される。
【0019】
上記のように、反応セル(例えば、図2の要素202)内に配置され、または別様にデバイスの表面上で固定化される、被分析物(例えば、関連蛍光反応物を伴うポリメラーゼ・テンプレート複合体)は、検出器要素(例えば、図2の要素220)に透過させられる光を発する。蛍光被分析物に関して、被分析物が、励起光源によって照射される一方で、化学発光または他のそのような被分析物等の他の被分析物に関して、励起光源は、必要でなくてもよい。反応セル容量の少なくとも一部、すなわち、発光容量は、本容量内の被分析物から発せられる光が検出器要素によって測定されるように、検出器要素に光学的に結合される。同時に測定される被分析物の数を最大限にするために、本分析デバイスのサイズは、各デバイス内の発光容量がナノスケール発光容量であるように、可能な限り縮小される。理想的には、ナノスケール発光容量と検出器要素との間の光学的結合は、デバイスの感度を最大限にし、信号出力を最大限にするために、高度に効率的である。以下でさらに詳細に説明されるように、ナノスケール発光容量から発せられる光は、例えば、検出器要素に達することに先立って、レンズ要素および色濾過層によってさらに操作されることができる。
【0020】
従来の分析システムは、典型的には、複数のスペクトル的に明確に異なる信号または信号事象を測定し、したがって、これらの異なる信号事象を分離し、明確に検出するために、複合光学システムを利用しなければならない。しかしながら、統合デバイスの光学経路は、検出されるスペクトル的に区別可能な信号の量または数の削減によって簡略化されることができる。しかしながら、そのような削減は、理想的には、検出されることができる明確に異なる反応事象の数を削減せずに達成される。例えば、4つの異なる検出可能な信号事象に基づいて、4つの異なる反応を区別する、分析システムでは、典型的システムが、異なる信号スペクトルを各異なる反応に割り当て、それによって、代替的アプローチで各信号事象を検出して区別するであろう場合において、4つの異なる信号事象が、4つよりも少ない異なる信号スペクトルによって表され、代わりに、少なくとも部分的に、信号事象の間の他の非スペクトル区別に依拠するであろう。
【0021】
例えば、4つの異なるヌクレオチドのそれぞれの組み込みを識別して特性評価するために、従来、4つのスペクトル的に区別可能な信号、例えば、「4色」配列決定システムを採用するであろう、配列決定動作は、代替的構成との関連で、例えば、1つだけ、または2つの明確に異なる、もしくは区別されたスペクトル信号を有する、信号に依拠する、1色または2色分析を採用し得る。しかしながら、そのような代替的構成では、信号スペクトル複雑性への依拠の本低減は、複数、すなわち、より多数の異なる信号生成反応事象からの信号を区別する能力を犠牲にして成り立たない。具体的には、反応事象を区別するように信号スペクトルのみに依拠する代わりに、そのような代替的構成は、信号事象を相互と区別するように、例えば、信号強度、励起スペクトル、もしくは両方を含む、発光スペクトル以外の1つまたはそれを上回る信号特性に依拠することができる。
【0022】
1つの特定の代替的構成では、したがって、2つまたはそれを上回る信号事象の間の際立った特徴として信号強度を利用することによって、統合分析デバイス内の光学経路が簡略化されることができる。その最も単純な反復では、そして例示的配列決定プロセスを参照すると、2つの異なるタイプのヌクレオチドは、同一の励起照射下にある、すなわち、同一または実質的に重複するスペクトル帯を有する、蛍光をそれぞれ発する、蛍光標識を持ち、したがって、単一の励起源を使用して励起されるという利益を提供するであろう。各蛍光標識からの結果として生じる信号は、その同一の照射下で明確に異なる信号強度または振幅を有し、したがって、それぞれの信号振幅によって区別可能であろう。これらの2つの信号は、部分的または完全に重複する発光スペクトルを有し得るが、発光スペクトルの任意の差異に基づく信号の分離は、不必要であろう。
【0023】
したがって、信号振幅が異なる2つまたはそれを上回る信号事象を使用する、分析システムに関して、そのようなシステムの統合分析デバイスは、複数の励起源およびそれらの関連光学列等のスペクトル的に明確に異なる信号を分離するために通常使用されるであろう、これらの構成要素のうちのいくつかまたは全て、ならびに多くの場合、各スペクトル的に明確に異なる信号のために少なくとも部分的に別個の光学列および検出器を必要とする、信号事象のための色分離光学部、例えば、フィルタおよびダイクロイックの除去を通して、容易に利益を得ることができる。結果として、これらの統合分析デバイスのための光学経路は、大いに簡略化され、反応セルに近接近している検出器要素の配置を可能にし、これらのデバイスのための検出プロセスの全体的性能を向上させる。
【0024】
特定の励起照射プロファイル下で異なる信号振幅を生成し得る、信号生成被分析物の提供は、いくつかの方法で達成されることができる。例えば、重複するが異なる最大値を含む、励起スペクトルプロファイルを提示する、異なる蛍光標識が使用されることができる。したがって、狭い波長における励起が、典型的には、各蛍光基のための異なる信号強度を生じ得る。これは、2つの異なる蛍光標識基の励起スペクトル(それぞれ、実線および鎖線302ならびに304)を示す、図3Aに図示されている。垂直線306によって示される波長範囲における励起照射を受けるとき、各蛍光標識は、対応する振幅における信号を発し得る。次いで、所与の励起波長における結果として生じる信号強度は、それぞれ、実線および鎖線棒として図3Bの棒グラフに示されている。所与の励起波長におけるこれら2つの信号生成標識の強度の差異は、2つの信号事象を区別するために容易に使用される。理解されるように、そのようなスペクトル的に明確に異なる信号は、以下で議論されるように、そのようなスペクトル的に明確に異なる信号がスペクトル的に明確に異なる励起波長に起因しない限り、付加重複信号をもたらすであろうため、同時に発生するときに容易に区別可能ではないであろう。理解されるように、本同一アプローチは、所与の励起スペクトルにおける結果として生じる発光が区別可能な強度または振幅を有する、2つより多くの標識基とともに使用されることができる。
【0025】
同様に、2つの異なる蛍光標識基は、同一または実質的に類似する励起スペクトルを有するが、これらの標識基の量子収量により、異なる区別可能な信号発信強度を提供することができる。
【0026】
さらに、2つの明確に異なる蛍光染料に関して説明されるが、各異なる標識基はそれぞれ、複数の標識分子を含むことができると理解されるであろう。例えば、各反応体は、単一の照射源を用いた励起時に異なる強度の発光を生じさせる、エネルギー移動染料ペアを含むことができる。例えば、標識基は、所与の励起波長において励起させられるドナーフルオロフォアと、アクセプタへのエネルギー移動をもたらす、ドナーの発光波長において励起させられるアクセプタフルオロフォアとを含む。励起スペクトルがドナーの発光スペクトルに異なる程度まで重複する、異なるアクセプタを使用することによって、そのようなアプローチは、所与の励起波長およびレベルに対して異なる信号振幅において発光する、全体的標識基を生成することができる。同様に、ドナーとアクセプタとの間のエネルギー移動効率を調節することは、所与の励起照射における異なる信号強度を同様にもたらし得る。
【0027】
代替として、例えば、1つの反応物上に単一の標識分子を置く一方で、異なる反応物上に2つ、3つ、4つ、またはそれを上回る個々の標識分子を置く、所与の反応物上の信号生成標識基の異なる倍数によって、異なる信号振幅が提供されることができる。結果として生じる発信された信号は、反応物上に存在する標識の数を反映し、したがって、その反応物の同一性を示し得る。
【0028】
上記の目的で有用なヌクレオチド類似体等の蛍光試薬に関する例示的組成物おおよび方法は、例えば、それぞれ、あらゆる目的で参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2012/0058473号、第2012/0077189号、第2012/0052506号、第2012/0058469号、第2012/0058482号、第2010/0255488号、第2009/0208957号で説明される。
【0029】
上記で説明されるように、そのようなアプローチを利用する統合分析デバイスは、例えば、信号振幅また他の非スペクトル特性を信号判別の根拠として使用する、スペクトル判別要件の排除によって、複雑性の低減を受ける。そのような非スペクトル判別アプローチをより一般的なスペクトル判別アプローチと組み合わせる、統合分析デバイスはまた、より複雑なスペクトル判別システムと比べて利点を提供することもできる。「4色」判別システムから、信号強度および色に基づいて信号を区別するシステムに移行することによって、依然として、従来の4色分離方式に対して全体的光学システムの複雑性を低減させることができる。例えば、4つの離散反応事象を検出する分析動作では、例えば、核酸配列決定分析では、2つの信号事象が、所与の発光/検出スペクトル内で提供されることができ、すなわち、同一のスペクトル窓内で信号を発し、他の2つの事象が、明確に異なる発光/検出スペクトル内で提供されることができる。各スペクトル窓内で、一対の信号事象は、相互に対して区別可能な信号強度を生成する。
【0030】
議論を容易にするために、本概念は、各グループの構成要素が蛍光強度によって異なり、グループがそれらの発光スペクトルにより異なる、蛍光信号事象の2つのグループに関して説明される。理解されるように、簡略化された光学システムの使用、例えば、2つの明確に異なる発光スペクトルのための2つの検出チャネルを使用することは、信号の2つのグループの発光プロファイルが重複しないこと、または各グループの構成要素の発光スペクトルが完全に重複することを要求しない。代わりに、多くの好ましい側面では、各異なる信号事象が一意の発光スペクトルを保有する、より複雑な信号プロファイルが使用されることができるが、ある意味、各信号は、各チャネル内の信号強度に基づいて、一意である2つの検出チャネル内の信号プロファイルを提示し得る。
【0031】
本デバイスで使用するために、したがって、サンプル中の各「放射体」は、適切に識別されるために、上記で説明されるような一意の信号プロファイルを有するはずである。したがって、複数の放射体を含有するサンプルは、本デバイスを使用して容易に区別されることができる。いくつかの実施形態では、デバイスは、4~18個の放射体、4~12個の放射体、または4~8個の放射体さえも区別する。具体的実施形態では、デバイスは、4つの放射体、例えば、核酸配列決定反応の4つの異なる塩基を区別する。
【0032】
図4は、2つの異なる色フィルタプロファイルのそれぞれと重ね合わせられた、4つの蛍光標識基のそれぞれの信号プロファイルを概略的に図示する。示されるように、4つの標識基は、それぞれ、発光スペクトル402、404、406、および408を生じる。これら4つの基からの信号は、部分的に相互に重複するが、それぞれ異なる最大値を有することができる。通過フィルタ線410および412によって示されるように、2チャネルフィルタ方式を受けるとき、各標識からの信号は、2つの検出チャネルの間で一意の信号プロファイルを生成し得る。具体的には、信号は、示されるスペクトルプロファイルに従ってフィルタ処理される2つの経路を含む、光学列を通して送られる。各信号に関して、異なるレベルの放射光が、各経路を通過し、関連検出器上で検出されるであろう。各フィルタ経路を通過する信号の量は、信号のスペクトル特性によって決定付けられ得る。
【0033】
上記の混合モード方式の場合、各検出チャネルが、相互のチャネルと異なるスペクトル内の光を通過させる、少なくとも2つの明確に異なる検出チャネルを含む、検出システムが提供されることができる。そのようなシステムはまた、検出チャネルの光学連通内の反応混合物も含み、反応混合物は、他の光学信号と比較して、2つの検出チャネル内で一意の信号パターンをそれぞれ生成する、少なくとも3つの異なる光学信号を生成する。
【0034】
全ての場合において、各信号生成反応物が、信号強度および信号チャネルのうちの少なくとも1つにおいて相互の信号と完全に明確に異なる信号を提供するように選択される。上記のように、所与のチャネル内の信号強度は、部分的に、光学信号の性質、例えば、その発光スペクトル、ならびに信号が通過させられるフィルタ、例えば、所与のチャネル内の検出器に到達することを許可される、そのスペクトルの部分によって決定付けられる。しかしながら、信号強度はまた、信号を発しているときの標識基の配向、または特定の反応の他の変数等のランダムな変数によって変調されることもできる。したがって、信号の強度が、所与のチャネル内の別の信号の強度と完全に異なることを確実にするために、好ましい側面では、本変動が考慮される。
【0035】
削減した数のスペクトル的に明確に異なる信号事象があると、統合デバイスのための光学経路の複雑性も低減させられる。図5は、光学分析を行うためのスケール通りではない例示的デバイスアーキテクチャ、例えば、部分的に、異なる信号の非スペクトル判別、随意に、部分的にスペクトル区別に依拠する、核酸配列決定プロセスを図示する。示されるように、統合分析デバイス500は、デバイスの表面層上で画定される反応セル502を含むことができる。本図面に示されるように、反応セルは、表面層内に配置されるナノウェルを備える。そのようなナノウェルは、例えば、ゼロモード導波路(ZMW)アレイで使用されるような、下層の透明基板まで付加的基板層を通して配置される、基板表面または開口内のくぼみを構成することができる(例えば、米国特許第7,181,122号および第7,907,800号、ならびに以下も参照)。また、しかしながら、いくつかの実施形態では、着目サンプルは、他の方法で閉じ込められることができ、これらの実施形態におけるナノスケール反応セルは、分析デバイスから省略され得ることを理解されたい。例えば、着目標的が、別個の反応セルが欠けているデバイスの表面上にパターンで固定化される場合、サンプルの物理的分離を必要とすることなく、結合事象、または他の着目事象が、これらの場所で観察され得る。例えば、固定化核酸とそれらの相補配列との間のハイブリダイゼーション反応、または、例えば、結合ペアのいずれか一方の構成要素がデバイスの表面上の特定の場所で固定化されることができる、抗体とそれらのリガンドとの間の結合反応は、当業者によって理解されるように、そのようなアプローチを使用して好適に監視され得る。
【0036】
励起照射は、基板から分離し、またはそれに組み込まれることもできる、励起光源(図示せず)から、反応セルもしくは固定化標的に送達される。示されるように、光学導波路(または導波路層)505が、励起光(1つの方向への矢印によって示されるが、光は、所望に応じていずれか一方の方向または両方向に伝搬させられることができる)を反応セル502または別様に固定化標的に伝達するために使用されることができ、そこで、導波路505から発散するエバネセント場が、照射容量内の反応物を照射する。反応セルを照射するための光学導波路の使用は、それぞれ、あらゆる目的で参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第7,820,983号および米国特許出願公開第2012/0085894号で説明される。ナノスケール反応セル(本明細書では「ナノウェル」または「ZMW」とも称される)は、デバイスの中への下向きの蛍光の発光を増進し、上向きに散乱させられる光の量を制限するように作用することができる。
【0037】
放射光は、ナノスケール反応セルに由来するか、もしくは固定化標的に由来するかどうかにかかわらず、1つまたはそれを上回る光学要素を備える統合光学列504を通して検出器に指向される。光学列は、反応セル内の発光容量から反応セルの下に配置される検出器層512に放射光を指向するように、レンズ要素層508を含む。以下でさらに詳細に説明されるように、本開示の統合分析デバイス内のレンズ要素層は、好ましくは、色濾過層510を通した通過のために、高い効率で放射光を少なくとも2つのビームに分離する役割を果たす、回折ビーム成形要素を備える。回折ビーム成形要素は、例えば、放射光を、検出器層上に指向される、2つ、3つ、4つ、またはさらに多くの少なくとも部分的に分離されたビームに分離してもよい。回折ビーム成形要素の構成に応じて、分割ビームは、直線的に組織化されることができ、またはアレイで、例えば、2×2ビームアレイもしくは同等物で配列されることができる。そのような配列は、典型的には、検出器層の感知領域の構成によって決定付けられ得る。
【0038】
検出器層は、典型的には、1つ、または好ましくは複数の感知領域512a-b、例えば、回折ビーム成形要素を通して所与の分析デバイス内の発光容量に光学的に結合される、アレイ検出器、例えば、CMOS検出器内のピクセルを備える。ピクセル512a-bの直線状配列として図示されるが、そのようなピクセルは、グリッド、n×n正方形、n×m長方形、環状アレイ、または任意の他の利便的な配向で配列され得ることが理解されるであろう。例示的配列は、以下でさらに詳細に説明される。
【0039】
本開示との関連で、デバイス内の2つの構成要素の「光学的結合」は、結合への指向性を示唆することを意図していないと理解されたい。換言すると、光学デバイスを通した光学エネルギーの伝達が完全に可逆的であるため、第2の構成要素への第1の構成要素の光学的結合は、第1の構成要素への第2の構成要素の光学的結合と同等と見なされるはずである。
【0040】
次いで、検出器層のピクセルに衝突する反応セル502からの発信された信号が検出され、記録される。上記のように、様々なスペクトル的に明確に異なる信号が、検出器層512内の異なる関連感知領域512aおよび512bまで進行することを可能にするように、色濾過層510が、好ましくは、検出器層とナノスケール発光容量との間に配置される。例えば、フィルタ層510の部分510aは、明確に異なる第1の発光スペクトルを有する信号のみが、その関連感知領域512aに到達することを可能にする一方で、フィルタ層510のフィルタ部分510bは、明確に異なる第2のスペクトルを有する信号のみが、その関連感知領域512bに到達することを可能にする。
【0041】
そのような構成を活用する配列決定システムとの関連で、4つのヌクレオチドのうちの2つの組み込みが、感知領域512aまでフィルタ部分510aを通過させられ、フィルタ部分510bによって遮断されるであろう、信号を生成するであろう。これら2つの信号の間で、一方の信号は、検出器層512内の感知領域512aが、そのような異なる信号強度を示す信号応答を生成することができるように、他方より高い信号強度を有するであろう。同様に、4つのヌクレオチドのうちの他方の2つの組み込みが、感知領域512bまでフィルタ部分510bを通過させられ、フィルタ部分510aによって遮断されるであろう、信号を生成するであろう。これら2つの信号の間で、一方の信号は、検出器層512内の感知領域51bが、そのような異なる信号強度を示す信号応答を生成することができるように、他方より高い信号強度を有するであろう。
【0042】
検出器層は、随意に、同一のデバイス構造内に統合され、または別個であるが検出器層および関連回路に電子的に結合される、プロセッサへの信号応答を提供するために、典型的には基板に組み込まれる、適切な回路に動作可能に結合される。回路のタイプの例は、米国特許出願公開第2012/0019828号で説明される。
【0043】
前述の開示および図5から理解されるように、本明細書に説明される統合分析デバイスは、ある場合には、過剰な信号分離光学部、ダイクロイック、プリズム、またはフィルタ層の必要性を排除する、従来の4色光学部を利用するシステムで必要である、より複雑な光学経路を必要としない。具体的には、記述されるように、単一の濾過層とともに示されるが、随意の側面では、濾過層は、排除され得、または反応セルからの異なる発光信号を区別するのではなく、励起源から迷光を遮断する濾過層、例えば、レーザ拒否フィルタ層(以下参照)と置換され得る。濾過層510を含むことさえも、典型的には、感知領域の各サブセットにわたってハイブリッド層または複合アプローチを必要とし、したがって、信号が任意の所与の発光波長において感知領域サブセットのうちの1つまたはそれを上回るものに達することを阻止し、各信号事象からのはるかに少ない光子の検出をもたらす、多層フィルタもしくは狭帯域通過フィルタのいずれか一方を必要とする、従来の4色システムと比較して、簡略化されたおよび/またはより効率的な光学部をもたらす。一方で、図5に示される光学部構成は、全体的信号光のより小さい部分が検出器に到達することのみを阻止する。代替として、そのような従来のシステムは、スペクトル分離を達成するように、付加的光学要素、例えば、プリズムまたは格子の包含をもたらす、4つ全ての異なる信号タイプの分離および差分方向を必要とするであろう。スペクトル転換要素(すなわち、色に基づいて光を空間的に分離する光学要素)を含む、ナノスケール統合分析デバイスの例は、米国特許出願公開第2012/0021525号で提供される。
【0044】
図6は、一方のトレース(鎖線)が、A(高強度信号)およびT(低強度信号)塩基の組み込みと関連付けられる信号を表す一方で、他方の信号トレース(実線)が、G(高)およびC(低)塩基と関連付けられる異なる発光スペクトルの信号を表す、本発明の統合システムから設定される2色/2振幅信号を使用する、リアルタイム配列決定動作のための概略的な例示的信号出力を示す。次いで、信号の色チャネルおよび強度から導出されるような、組み込みのタイミングならびに組み込まれる塩基の同一性が、塩基配列を解釈するために使用される。
(放射光の空間的分離のためのレンズ要素)
【0045】
上記のように、本開示のナノスケール統合分析デバイスは、ナノスケール発光容量と検出器層との間に配置されるレンズ要素層を含む。そのような層のレンズ要素は、高い効率で2つまたはそれを上回る空間的に分離された光学経路に沿ってナノスケール発光容量から発せられる光を指向する役割を果たす。発信された光学信号を別個の光学経路に分割することに加えて、レンズ要素は、加えて、放射光を平行にし、および/または集束することができる。具体的には、そのようなレンズ要素は、理想的には、ほぼ軸上の光線で放射光を平行にすること、ならびに、例えば、色濾過層による色分離に先立って、放射光を分割することが可能である。加えて、そのようなレンズ要素は、標準技法を使用して容易に製作される。
【0046】
本デバイスの統合光学レンズ要素は、当業者によって理解されるように、所望される光学的および物理的性質に応じて、屈折レンズまたは回折レンズのいずれか一方であり得る。回折レンズは、ある状況では、向上した画質を提供し、より容易に小型化され、および/または同等の屈折レンズより製作することが安価であり得る。ある場合には、レンズは、別個の屈折および回折構成要素を含むことができ、または単一のレンズ要素の中で両方の特徴を組み合わせるハイブリッドレンズであり得る。
【0047】
好ましい実施形態では、本分析デバイスのレンズ要素は、回折ビーム成形要素またはその改変型である。そのような要素は、典型的には、フレネル様レンズ特徴を含む。屈折または反射ではなく回折によって機能するときに、ゾーンプレートもしくはフレネルゾーンプレートとしても公知である、フレネルレンズは、具体的先細形状を伴う、または入射照射に対して交互の透明および不透明ゾーン(フレネルゾーンとも呼ばれる)を伴うか、一連の同心円状リングから成る。これらの構造は、選択的吸収または選択的シフトによって、デバイスを通過する光の集束をもたらし、したがって、デバイスがレンズとして機能することを可能にする。具体的レンズ設計は、当技術分野で周知であるように、集束させられる放射線、レンズを構築するために使用される材料の屈折率、および所望の焦点距離に依存する。いくつかの実施形態では、本デバイスのレンズ要素は、回折アレイ集束要素として機能する、修正フレネルレンズである。本ハイブリッドレンズ要素は、放射光を複数のスポットに空間的に分離するその能力に起因して、回折ビーム成形要素と称されることができる。本開示の統合分析デバイスは、種々の実施形態では、回折ビーム成形要素を含むものとして説明され得るが、これらは、デバイスの好ましい実施形態であり、他のレンズ要素が制限なく本分析デバイスに含まれ得ることを理解されたい。
【0048】
種々の材料および方法が、当業者によって理解されるように、本デバイスのレンズ要素を製作するために使用されることができる。例えば、レンズ要素は、着目光に対して透明な材料の平面内のゾーンのエッチング、およびエッチングされたゾーンの中への吸収または位相シフト材料の後続の堆積によって、形成されることができる。例えば、位相フレネルゾーンプレートは、位相フレネルレンズの階段近似である。位相フレネルゾーンプレートの効率は、レベルの数が増加させられると増加する。具体的には、2相フレネルゾーンプレートは、40.5%の最大回折効率を有することが示され得る一方で、4相フレネルゾーンプレートは、81%の最大回折効率を有する。したがって、回折ビーム成形要素等のレンズ要素の光学効率は、いくつかの実施形態では、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、またはさらに高い。好ましい実施形態では、光学効率は、少なくとも40%である。所望の空間的分離能力を伴うレンズ要素を設計するための技法が、当技術分野で公知である。例えば、レーザビームの操作のための(例えば、レーザビームを分割して組み合わせるための)光学要素の設計におけるバイナリオプティクス技術の用途が、Leger et al.(1988) The Lincoln Laboratory Journal 1(2):225によって説明される。光学設計プログラムZemax等の光線追跡ソフトウェアが、そのような要素を設計するために使用されることができる。
【0049】
フレネルレンズおよびその改変型は、例えば、照射システム内(例えば、米国特許第6,002,520号参照)、発光デバイス内(例えば、米国特許第6,987,613号参照)、ソリッドステート撮像デバイス内(例えば、米国特許第7,499,094号参照)、画像センサ内(例えば、米国特許第8,411,375号参照)、および統合赤外線センサ内(例えば、米国特許出願公開第2013/0043552号参照)の撮像光学部として、種々の技法を使用して、高度光学デバイスに組み込まれている。本開示のレンズ要素の設計および本分析デバイスアレイへのそれらの統合は、類似アプローチを使用して達成されることができる。
【0050】
本デバイスの検出経路内の光の空間的分離のための回折ビーム成形要素の使用は、反射コーンまたは放物面鏡等の従来の光学要素と比べて、いくつかの利点を提供する。具体的には、そのような回折ビーム成形要素は、発光容量から発せられる光の軸外集束を提供する。そのような要素はさらに、最小限の面積、最小限のピッチを必要とし、隣接する検出器要素の間の最小限のクロストークをもたらす。典型的にはナノスケール統合分析デバイスで使用されるような反射コーンまたは放物面鏡、もしくは従来の屈折レンズ要素と異なり、本開示の回折ビーム成形要素は、高い効率で発光容量から発せられる光を同時に平行にして分割することができる。さらに、本回折ビーム成形要素は、標準マイクロチップ製作技法を使用して、例えば、標準堆積、除去、およびパターン化技法を使用して、容易に製造される。
【0051】
放射光の空間的分離のための回折ビーム成形要素を含む、簡略化された例示的統合分析デバイスの2つの図が、図7に示されている。図7Aは、ZMW/ナノウェル702が2つの感知領域712aおよび712bの間の境界の上方に位置付けられる、2ピクセルデバイス(すなわち、検出器層に2つの感知領域を含むデバイス)の上から見下ろした図を示す。デバイスの介在する回折ビーム成形要素、色濾過層、および他の特徴は、図7Aの図から省略されていることに留意されたい。図7Bは、ZMW/ナノウェルから発せられる光がどのようにして、検出器層の感知領域712aおよび712bに到達するように回折ビーム成形要素708ならびに色濾過要素710aおよび710bを通過するであろうかを示す、同一デバイスの側面図を示す。
【0052】
本デバイスの回折ビーム成形要素の設計は、要素を通過する放射光の所望の空間的分離、コリメーション、および/または集束を得るように、所望に応じて変動させられることができる。例えば、図8に示されるように、公称設計(パネルA)は、例えば、レーザ拒否干渉フィルタ層(以下参照)または他の光学特徴の包含を可能にするために、回折ビーム成形要素と検出器層との間に十分な空間を含むことができる。ある状況では、回折ビーム成形要素と検出器層との間の側方間隔を増大させることが有利であり得る(パネルB)一方で、他の状況では、回折ビーム成形要素と検出器層との間の側方間隔を減少させることによって、よりコンパクトな構造を構築することが有利であり得る(パネルC)。回折ビーム成形要素の光学的性質の改変は、当業者によって理解されるように、回折ビーム成形要素の設計の修正によって容易に達成される。
【0053】
図9は、代表的な回折ビーム成形要素設計を通したZMW/ナノウェルの発光容量からの放射光の模擬透過を実証する。ZMW/ナノウェル902、回折ビーム成形要素908、および色濾過層910の位置を含む、模擬デバイスの基本設計が、図9Aで概略的に示されている。図9Bに示されるように、図9Aに示されるように設計される回折ビーム成形要素を通して透過させられる光の強度は、回折ビーム成形要素の回折効果によって空間的に分離される。図9Aに示されるような回折ビーム成形要素908の組成および構造は、ZEMAX光線追跡ソフトウェアを使用して設計され、図9Bに示されるような回折ビーム成形要素を通した光の透過性質は、Lumerical FDTD(有限差分時間領域)マクスウェル方程式電磁伝搬ソフトウェアを使用してモデル化された。
【0054】
本回折ビーム成形要素は、色に基づいて光を分離することを意図していないことに留意されたい。むしろ、全てのスペクトルの透過の最大効率を提供すること、および色区別が色濾過層によって提供されることが、これらの回折ビーム成形要素の特徴である。この点に関して、図10は、色フィルタがない場合の双回折ビーム成形要素を通した発光通過への波長の効率および影響を示す。上方から視認されるような回折ビーム成形要素の位相パターンが、図10Aに示されている。630nm発光の検出器レベルにおける電磁場プロファイルが、図10Bに示されている。発光波長の関数としての回折ビーム成形要素の効率が、いかなるレンズパターン化も伴わないが、a-Si堆積を伴う収集経路について、図10Cに示されている。2μm酸化物線は、a-Si層から2μm離れた検出器を伴うデバイスに対し、4μm酸化物線は、a-Si層から4μmに検出器を伴うデバイスに対するものである。これらのデバイスでは、ピクセルは、比較的大きい(約8μm×10μm)。デバイスの焦点への波長の影響が、図10Dに示されている。
【0055】
図11は、発光容量から透過させられる光の空間的分離のための回折ビーム成形要素を含む、本開示に従って製作されたナノスケールデバイスの設計、構築、および分析を図示する。図11Aは、ZMW/ナノウェル1102、回折ビーム成形要素1108、および色濾過層1110を含む、デバイスの設計特徴を示す。デバイスはさらに、ZMW/ナノウェルへの励起光の送達のための導波路(WG)と、デバイスの表面上の金属(Al)および反射防止(TiN)コーティングと、回折ビーム成形要素の上方ならびに下方の酸化ケイ素スペーサ層と、回折ビーム成形要素の表面上の開口層とを含む。種々の特徴の近似寸法が、図面中で提供される。図11Bは、図11Aで概説される設計に従って構築されたデバイスに対応する、SEM顕微鏡写真を示す。
開口層
【0056】
本開示の統合分析デバイスは、随意に、1つまたはそれを上回る開口層を含むことができる。開口層は、ナノスケール分析デバイスの他の層の間に、例えば、ZMW/ナノウェル層と回折ビーム成形要素層との間に、回折ビーム成形要素層と色濾過層との間に、および/または色濾過層と検出器層との間に製作される。開口は、同時に、励起源(例えば、導波路)から、デバイス内の自己蛍光から、または隣接する単位セルの間のクロストークからのいずれかの光の背景透過を最小限にしながら、ZMW/ナノウェルから所与の単位セル内の検出器要素の感知領域への放射光の最大透過を可能にするように、開口部を提供する。開口層は、典型的には、光の透過が望ましくない光遮断材料、および光の透過が所望される透明材料で構築される。開口層で使用するための好適な光遮断料は、例えば、窒化チタン、クロム等の金属、または任意の他の適切な光遮断材料を含む。光遮断材料は、好ましくは、窒化チタンである。開口層で使用するための好適な透明材料は、例えば、SiO、Si、Al、TiO、GaP、および同等物を含む。好ましい実施形態では、開口層は、厚さ約100nmである。
(レーザ拒否フィルタ要素および色濾過要素)
【0057】
本開示の統合分析デバイスは、加えて、他の光の波長を有意に減少させ、または遮断しながら、ある光の波長を透過させるように設計される特徴を含む。具体的には、可能な限り多くの信号関連光を検出器の適切な領域に透過させること、および全てまたは少なくとも殆どの雑音関連光を遮断することが望ましい。さらに、本デバイスのレンズ要素は、被分析物から発せられる全ての光の波長を透過させるように設計されるため、典型的には、被分析物中の異なる放射体を区別するために、レンズ要素と検出器層の異なる感知領域との間で色濾過要素を採用することが必要である。
【0058】
したがって、デバイスは、レンズ要素層と検出器層との間に配置される色濾過層を含む。色濾過層内の異なる色濾過要素は、典型的には、レンズ要素を通して透過させられる、空間的に分離されたビームのそれぞれに使用される。空間的に分離された光は、典型的には、検出器層内の対応する感知領域によって検出される前に色濾過層を通過する。本発明のいくつかの実施形態では、色濾過層は、各色濾過要素が光波長の範囲に対して特異的である、複数の色濾過要素を備える。より具体的な実施形態では、色濾過層は、2~9個の色濾過要素を備える。さらに具体的な実施形態では、色濾過層は、2つの色濾過要素、感知領域、および分離されたビームを備える。
【0059】
デバイスは、加えて、かつ随意に、レーザ拒否フィルタ層内に1つまたはそれを上回るレーザ拒否フィルタ要素を含むことができる。レーザ拒否フィルタ層は、励起源と検出器層との間に、典型的には、色濾過層と統合デバイスの検出器層との間に配置される。そのようなレーザ拒否フィルタ要素(「ポンプ」拒否要素としても公知である)は、本開示のデバイス等の完全統合分析デバイスの場合、これらのデバイスの統合性質が、全ての層の総厚さに制約を加え得、また、拒否が確実にされなければならない角度帯域幅を超えて増加させ得るため、特に重要である。非統合検出器デバイスに関して、非信号光の拒否に責任がある堆積層は、(加わるいくつかのフィルタを合計して)厚さが何十ミクロンもあり得るが、典型的には、(視野(「FOV」)およびフィルタ傾転の両方を含む)<10度の角度範囲にわたって光を拒否する必要しかない。しかしながら、本明細書で例示されるデバイス等の統合デバイスに関して、ポンプ拒否のための層は、5ミクロンほども薄く、またはさらに小さくなる必要があり得る。
【0060】
統合デバイスのさらなる考慮事項は、拒否された非信号光が効果的に終了させられる(すなわち、例えば、吸収によってそれを熱に変換することによって、光学システムから効率的に除去される)ことを確実にすることである。非統合デバイスに関して、そのような終了が、概して、重要ではない一方で、統合デバイスに関して、反射光は、数回の(原則として1回の)反射を伴って別の検出器部位に到達することができ、さらに、拒否された光がデバイスから脱出するための局所出口ポートがない。これらの理由で、散乱光が、理想的には1回の反射で、効率的に熱に変換されることを確実にすることが重要である。本統合デバイスで使用するために好適な2つのタイプのレーザ拒否フィルタ要素の詳細な性質は、本開示の後続の節で説明される。
【0061】
色濾過要素およびレーザ拒否フィルタ要素は、他の光の波長を遮断しながら、ある光の波長を透過させるように両方とも設計されるという点で、相互と共通する特徴を有する。しかしながら、色濾過要素が、被分析物中の異なる放射体から発せられる光の波長間を区別する役割を果たす一方で、レーザ拒否フィルタ要素は、散乱または他の手段によって、導波路もしくは他の励起源から生じる背景雑音を遮断するように設計される。したがって、異なる色濾過要素が、典型的には、レンズ要素からの空間的に分離された光と検出器層内の複数の感知領域との間に配置され、単一のレーザ拒否フィルタ要素、または類似性質を伴う複数のレーザ拒否フィルタ要素が、典型的には、レンズ要素と検出器層との間に、好ましくは、色濾過層と検出器層との間に配置される。本デバイスの色濾過およびレーザ拒否フィルタ要素で使用するための好適な材料は、例えば、非晶質シリコン/酸化ケイ素干渉スタック、ポリマー様レジスト、ドープされたPECVD酸化物、吸収染料を伴う有機シリコーン、および同等物を含む。好ましい実施形態では、色濾過およびレーザ拒否フィルタ要素は、薄膜干渉フィルタである。より好ましい実施形態では、色濾過およびレーザ拒否フィルタ要素は、非晶質シリコンおよび酸化ケイ素の層から調製される。他の好ましい実施形態では、レーザ拒否要素は、色濾過層と検出器層との間に配置される。
(多層およびハイブリッドレーザ拒否フィルタ要素)
【0062】
理想的なレーザ拒否フィルタは、サンプル励起の波長において光学エネルギーの強度な拒否を提供し(例えば、典型的なレーザ照射源については532nmにおいてOD>=6)、サンプル発光の波長において広い高透過窓を示し、さらに、着目波長の間のわずかなストークス偏移(シフト)を示す。加えて、レーザ拒否フィルタが、角度および偏光を伴う最小限の分散、最小限の厚さ、および制御された終了を示すことが望ましい。さらに、フィルタスタックは、好ましくは、安価であり、統合デバイスの他の構成要素の製造のために好適な条件(例えば、温度)下で容易に製造可能である。
【0063】
誘電体薄膜レーザ拒否フィルタの場合、ある時は、そのようなスタックの設計において、非信号光の入射角の広い範囲にわたって適切なフィルタ性能を得ることは困難であり得る。例えば、規定波長範囲を考慮すると、エッジフィルタが、(典型的には、公称入射からある値までの)入射角の特定の範囲内のみであるが、高い反射効率を提供することができる。本明細書に説明される統合デバイス設計のうちのいくつかでは、励起源の散乱光子が検出器に到達することを防ぐために、広い角度スペクトルにわたる拒否が、特に、典型的薄膜スタックが適切にサポートし得るよりも高い入射角を伴う光子を遮断するように、望ましくあり得る。
【0064】
本開示は、一側面では、高角度散乱光の透過を低減させるために、低屈折率全内部反射(TIR)層を備える、多層レーザ拒否フィルタを提供することによって、本問題に対処する。具体的には、低屈折率層は、背景信号を最小限にするために、励起源と検出器層との間のデバイススタックに含まれる。例えば、図12Aの左パネルに示されるような従来の誘電体ロングパスフィルタは、より高い入射角を伴う光線(例えば、図面中の外側の光線)よりも効率的に、より低い入射角を伴う光線(例えば、図面中の中央の光線)を反射する。図12Aの右パネルに示されるように、本フィルタ設計が統合デバイスに組み込まれるとき、導波路からの高角度散乱光は、フィルタスタックを通して透過させられ、センサに到達することの比較的高い機会を有する。しかしながら、例えば、図12Bの左パネルに示される構造における本開示の設計解決策では、低屈折率TIR層が、統合励起導波路と誘電体フィルタスタック等の低角度拒否フィルタとの間に追加される。高角度散乱光は、低屈折率TIR層に遭遇すると全内部反射を被り、複数の跳ね返りの後に、側面から統合デバイスを出射する。同時に、低角度散乱光は、低屈折率TIR層を通して透過させられるが、誘電体フィルタスタックによって拒否される。したがって、TIR層およびフィルタスタックの複合効果は、広い角度スペクトルを伴う散乱光を遮断する、障壁フィルタをもたらす。
【0065】
対象多層フィルタスタックの低屈折率TIR層のための1つの候補材料は、殆どゼロの分散および低い屈折率を伴う空気であるが、低い屈折率および他の好適な性質を有する、他の気体、液体、ならびに固体を含む、他の低屈折率材料も好適である。低屈折率TIR層のための材料の具体的選択は、当業者によって理解されるように、隣接する層の屈折率および他の物理的性質に依存するであろう。
【0066】
散乱光を収集し、多重散乱の機会を低減させることに役立つために、吸収層またはパッチが、随意に、図12Bの右パネルに示されるように、デバイスに追加されることができる。そのような吸収層で使用するための材料は、それらの吸収の波長、光学エネルギーを放散させるそれらの能力、および統合デバイスの製作におけるそれらの適合性に基づいて選定される。
【0067】
場所、厚さ、材料選択、および低屈折率層の層数に応じて、上記の広い角度スペクトル多層エッジフィルタの種々の構成が可能である。上記で説明されるように、低屈折率層は、励起導波路クラッディングの直接下方に配置されることができ、したがって、最短の共振空洞長を作成し、したがって、二次散乱の機会を制限する。しかしながら、低屈折率層は、代替として、図12Cの左パネルに図示されるように、薄膜スタック内に、または図12Cの右パネルに図示されるように、薄膜スタックと検出層との間に配置されてもよい。これらの構成は、共振空洞長を増加させ、したがって、二次散乱の機会を増加させることができるが、この構成は、有利なこととして、デバイスの製造を促進することができる。これらの実施例では、レーザ拒否フィルタ要素の上方または下方のいずれかにあり得るが、好ましくは、レーザ拒否フィルタの上方にある、レンズ要素層が示されていない。
【0068】
いずれの場合も、レーザ拒否フィルタ設計の中への付加的なTIR設計制約の組み込みは、低屈折率層への付加価値を生成する。例えば、レーザ拒否フィルタ設計に一体構成要素として低屈折率層(または複数の層)を組み込むことによって、例えば、フィルタが、薄膜スタックにもはや限定されなくなるが、励起導波路から検出層までの層を含むことができるため、統合デバイス性能は、完全に最適化されることができる。
【0069】
本開示はさらに、別の側面では、誘電体スタックおよび吸収層の組み合わせを備える、レーザ拒否フィルタ要素を提供する。そのようなハイブリッドフィルタは、干渉コーティングおよび吸収層の入射角に対する相補的依存性を利用する。具体的には、上記のように、拒否のための干渉コーティングが、典型的には、干渉薄膜内の角度の余弦として性能に影響を及ぼす分散を伴って、垂直入射を中心とする円錐にとって最も良く機能する一方で、吸収拒否層の性能は、吸収層内の角度の余弦として性能に影響を及ぼす分散を伴って、入射角とともに増加する傾向がある。本相補的性質により、最小厚さにおいて、広い角度範囲にわたる標的最小値の拒否を伴って、ハイブリッドコーティングが達成されることができる。本厚さは、より高い屈折率の薄膜について、およびより低い屈折率の吸収層について低減させられる。非信号光のための吸収を伴う(しかし信号光の最小限の吸収である)薄膜が、ハイブリッド拒否フィルタで効果的に使用され得ることに留意されたい。
【0070】
誘電体フィルタスタックと組み合わせて使用するために好適な吸収染料の例として、Aptina red1は、600nmを上回る高い透過を伴う吸収スペクトルを有する。例えば、Pang et al.(2011)Lab Chip 11:3698の図2を参照されたい。本出版物で使用された厚さは、比較的大きかった(8μm)が、より薄い層が、デバイスのレーザ励起の波長に応じて使用されることができる。例えば、5μm層は、532nmにおいてOD>6を提供し、4.7μm層は、540nmにおいてOD>6を提供し、2.8μm層は、562nmにおいてOD>6を提供する。本ハイブリッドフィルタスタックで使用するために好適な他の吸収染料および色素は、当業者によって容易に識別可能である。
【0071】
具体的には、Aptina red1染料の層による等、吸収染料層によるレーザ拒否は、有利なこととして、非信号光の偏光分散、弱い角度分散、および制御された終了を示さない。加えて、角度的に非一様な分散が、吸収染料層のさらなる菲薄化を可能にし得る。半球のある部分が、拒否されるべき、より低い強度の非信号光を有する場合、または強度がいくらかの角度において公知の偏光依存性を有する場合、本情報は、(所与の拒否標的について)ハイブリッド拒否フィルタ厚さをさらに低減させるために使用されることができる。吸収拒否フィルタ、例えば、Aptina red1染料の層の不利点は、適度に大きい減衰係数、比較的大きい厚さ(5μm)、およびかなり大きいストークス偏移(532nm~約620nm)を伴うサンプル染料を使用する必要性を含む。しかしながら、これらの不利点は、本ハイブリッド拒否フィルタ内の誘電体スタックとの吸収層の組み合わせによって、大いに相殺されることができる。図13は、吸収染料層の弱い角度分散(左パネル)および偏光分散の欠如(右パネル)を図示する。
【0072】
ハイブリッド拒否フィルタの誘電体スタック構成要素に関して、特に有利な拒否フィルタ(特に、角度への低い依存性を伴うもの)が、フィルタの干渉部分のための非常に高い屈折率の材料の使用を通して可能である。532nmポンプを用いたこれらの目的のための有用性を見出す、例示的材料は、高屈折率材料としてのGaP(ガリウムリン)および低屈折率材料としてのTiOであるが、以下で説明されるように、かつ当業者によって理解されるように、他の好適な材料が利用され得る。着目すべきは、TiOが、典型的には、一般的に生産されているコーティングのための高屈折率材料として使用されることである。図14は、n/nGaP/TiO誘電体スタックの有利な性質、具体的には、(下向きの矢印によって示される)532nmポンプ源の領域中の減衰係数、および制御可能なストークス偏移を図示する。しかしながら、材料はまた、0~45度の(青方偏移を伴う)有意な角度分散、およびp偏光光学信号(570nm付近の上トレース)とs偏光光学信号(570nm付近の中央トレース)との間の有意な偏光分散(分割)も示す。
【0073】
単一のハイブリッドレーザ拒否フィルタの中で吸収染料層および誘電体干渉スタックを組み合わせることの利点が、図15に図示されている。具体的には、図15Aは、下層がGaP/TiO薄膜スタックであり、上層がAptina red1染料である、そのようなハイブリッドフィルタの例示的概略設計を示す。ハイブリッドフィルタは、OD=2が吸収層によって提供され、OD=4が干渉層によって提供される、3μmの合計厚さを伴ってOD=6拒否を達成する。偏光分散および角度分散は、フィルタ要素の設計によって補償されることができる。図15Bおよび15Cに図示されるように、透過率に対する入射角の影響は、p偏光された光(上トレース)およびs偏光された光(下トレース)について図15Bに示され、透過率に対する波長の影響は、45度入射光(左トレース、p偏光およびs偏光)について、ならびに0度入射光(右トレース)について、図15Cに示されている。吸収層は、透過光の終了を制御し、全体的設計は、耐えられるストークス偏移、妥当な厚さ、およびサンプル発光波長における良好な透過を提供する。
【0074】
ハイブリッド拒否フィルタの誘電体スタック構成要素の光学的性質は、スタックを構築するために使用される材料の選択によって、各層の厚さによって、および層の数によって、所望に応じて変調されることができる。干渉フィルタを製作するために利用される誘電体材料は、略非伝導性材料であり、典型的には、具体的屈折率を有する、金属塩および金属酸化物である。例示的材料は、SiO、SiO、Si、Al、BeO、MgO、CeF、LiF、NaF、MgF、CaF、TiO、Ta、ZrO、HfO、Sb、Y、CeO、PbCl、およびZnSを含む。また、その極めて高い屈折率により、GaPも有用である。誘電体スタックは、好ましくは、H層が比較的高い屈折率を伴う第1の材料であり、L層が比較的低い屈折率を伴う第2の材料である、全体的構造(H/2LH/2)を伴って設計される。スタック内の各層の物理的厚さは、当技術分野で理解されるように、所望の光学的性質に基づいて選択される。値「N」は、括弧内の構造の反復単位の数であり、整数である。阻止帯域内の透過は、全体的な厚さが増加するとともに(例えば、Nが増加するにつれて)(所与の入射角について)ゼロになる傾向がある。図16Aは、Nの種々の値を伴うGaP/TiOスタックの物理的および光学的性質を図示する。図16Bは、異なるHならびにLペアを使用する、干渉スタックの物理的および光学的性質のさらなる比較を図示する。
【0075】
図17および18は、他の従来の誘電体スタック材料の使用と比較した、ハイブリッド拒否フィルタ内のGaP/TiOスタックの利点を強調表示する。GaP/TiO誘電体スタックと、Aptina red1吸収層とを備える、ハイブリッド拒否フィルタの光学的性質は、上記ならびに図15Bおよび15Cで説明される。比較のために、TiO/Al誘電体スタックと、Aptina red1吸収層とを備える、ハイブリッド拒否フィルタの光学的性質は、図17Aおよび17Bに示され、TiO/SiO誘電体スタックと、Aptina red1吸収層とを備える、ハイブリッド拒否フィルタの光学的性質は、図18Aおよび18Bに示される。重要なこととして、TiO/AlおよびTiO/SiOスタックの有効屈折率は、GaP/TiOスタックのものより低く、したがって、これらのフィルタを用いて、さらなる角度および偏光分散をもたらす。TiO/Alハイブリッド拒否フィルタの分散補償は、4.7μmの厚さ(吸収層について約3.6μmおよび誘電体スタックについて約1.1μm)を必要とする。TiO/SiOハイブリッド拒否フィルタの分散補償は、4.5μmの厚さ(吸収層について約3.6μmおよび誘電体スタックについて約0.9μm)を必要とする。図17Bから明白であるように、TiO/Alハイブリッド拒否フィルタは、理想的には、比較的大きいストークス偏移(例えば、532nm励起および>635nm発光)を有する蛍光染料とともに利用され、TiO/SiOハイブリッド拒否フィルタは、さらに大きいストークス偏移を有する染料とともに最も良好に使用されるであろう。
【0076】
コーティングの順序は、ハイブリッドレーザ拒否フィルタ要素の最適な性能を達成するために変動させられ得ることを理解されたい。例えば、これらの層は、第1に吸収コーティング、第2に干渉コーティングを伴って、または逆も同様に、順序付けられることができる。吸収性材料は、PMMA等のホスト材料の中で担持されることができ、限定容量内に嵌合するように、またはより単純な統合を可能にするように、成形もしくはパターン化されることができる。
【0077】
コーティングは、当業者によって理解されるように、異なるプロセスステップで作成され、アセンブリに継合されることができる。
【0078】
したがって、本開示は、本側面では、
統合分析デバイスのアレイを提供し、各デバイスは、
ナノスケール発光容量と、
ナノスケール発光容量に光学的に結合される、検出器層と、
ナノスケール発光容量と検出器層との間に配置される、回折ビーム成形要素と、
回折ビーム成形要素と検出器層との間に配置される、色濾過層と、
ナノスケール発光容量に光学的に結合される、励起源と、
励起源と検出器層との間に配置される、レーザ拒否フィルタ要素と、
を備え、
光は、発光容量内で複数の放射体によってナノスケール発光容量から発せられ、
検出器層は、複数の感知領域を備え、
回折ビーム成形要素は、ナノスケール発光容量から発せられる光を空間的に分離し、色濾過層を通して空間的に分離された光を複数の感知領域に指向する。
【0079】
いくつかの実施形態では、レーザ拒否フィルタ要素は、多層またはハイブリッド拒否フィルタ要素である。
【0080】
具体的実施形態では、レーザ拒否フィルタ要素は、誘電体干渉フィルタ層と、低屈折率全内部反射層とを備える、多層フィルタ要素である。より具体的な実施形態では、デバイスのそれぞれはさらに、吸収層を備える。
【0081】
他の具体的実施形態では、レーザ拒否フィルタ要素は、吸収層と、誘電体スタック層とを備える、ハイブリッド拒否フィルタ要素である。
【0082】
いくつかの実施形態では、レーザ拒否フィルタ要素は、532nmにおける低い光透過、および620nmを上回る高い光透過を示す。
(暗色鏡面要素)
【0083】
別の側面では、本開示の統合分析デバイスはさらに、暗色鏡面要素を備える。暗色鏡面という用語は、典型的には、本質的に光を散乱させることなく、入射光を吸収する傾向があるコーティングを伴う表面、そしてまた低い透過も有するものを表すために使用される。光源の近傍に非サンプル蛍光材料のリザーバを有する統合デバイスでは、蛍光材料のリザーバの中への非信号光の透過は、付加雑音背景をもたらし得、回避されるべきである。信号(または照射)光を通過させることに直接活発ではないデバイスの面積上に暗色鏡面コーティングを配置することは、拒否された非信号光が別のデバイス部位に衝突し得る前に、非信号光を効率的に終了させる統合デバイスの全体的能力を向上させる。
【0084】
例示的暗色鏡面コーティングの光学的性質は、図19に図示され、図19Aは、反射率の有意な低減が、Crでコーティングされた誘電体スタック上で達成され得ることを示す。代替的コーティング、例えば、TaNのコーティングを用いると、図19Bに図示されるように、さらに低い反射率が可能である。当業者によって理解されるように、他の材料が、暗色鏡面コーティングとして好適に使用される。
【0085】
暗色鏡面コーティングは、信号角度帯域内で別のデバイス部位に衝打する確率を減少させるように、または別のデバイス部位に到達する前に吸収のために経路長を増加させるように、散乱表面上に配置されることができる。
【0086】
角度感受性および/または偏光感受性である暗色鏡面コーティングは、非信号光の吸収のある標的レベルを達成しながら、信号光の高度に効率的な透過を可能にするために使用されることができる。
【0087】
したがって、本開示は、本側面では、
統合分析デバイスのアレイを提供し、各デバイスは、
ナノスケール発光容量と、
ナノスケール発光容量に光学的に結合される、検出器層と、
ナノスケール発光容量と検出器層との間に配置される、回折ビーム成形要素と、
回折ビーム成形要素と検出器層との間に配置される、色濾過層と、
暗色鏡面フィルタ要素と、
を備え、光は、発光容量内で複数の放射体によってナノスケール発光容量から発せられ、
検出器層は、複数の感知領域を備え、
回折ビーム成形要素は、ナノスケール発光容量から発せられる光を空間的に分離し、色濾過層を通して空間的に分離された光を複数の感知領域に指向する。
【0088】
実施形態では、暗色鏡面要素は、散乱表面上に暗色鏡面コーティングを備える。
(統合分析デバイスのアレイ)
【0089】
例えば、研究および診断において、遺伝子配列決定の幅広い用途のために所望され得る、配列情報の量を得るために、高スループットシステムが所望される。上記のように、一例として、システムの配列決定スループットを増進するために、複数の複合体が、典型的には監視され、各複合体は、別個のテンプレート配列を配列決定している。ゲノム配列決定または他の大型DNA成分の配列決定の場合、これらのテンプレートは、典型的には、ゲノムDNAの重複断片を含むであろう。各断片を配列決定することによって、次いで、断片からの重複配列データから連続配列を組み立てることができる。
【0090】
上記で説明され、図1に示されるように、そのような配列決定システムのテンプレート/DNAポリメラーゼプライマ複合体が提供され、典型的には、ゼロモード導波路(ZMW)またはナノウェル等の光学的拘束領域内で、もしくは透明基板、光学導波路、または同等物の表面の近位で、固定化される。好ましくは、そのような反応セルは、ゲノムまたは他の大規模DNA配列決定アプローチのために必要な規模を達成するために、基板上に多数で配列される。そのようなアレイは、好ましくは、例えば、図2および5のブロック図に示されるデバイス等の完全統合分析デバイスを備える。光学分析デバイスのアレイを備える、統合システムの例が、米国特許出願公開第2012/0014837号、第2012/0019828号、および第2012/0021525号内で提供される。
【0091】
ZMW/ナノウェルを備えるデバイスのアレイ等の統合分析デバイスのアレイは、超高密度で製作されることができ、1cmにつき1000個のZMW~1cmにつき1,000,000個のZMWまたはそれを上回る範囲を提供する。したがって、任意の所与の時間に、100、1000、3000、5000、10,000、20,000、50,000、100,000、100万、1000万、またはさらに多くのナノスケール発光容量で、もしくは単一の分析システム内またはさらに単一の基板上の他の反応領域で起こる反応を分析することが可能であり得る。
【0092】
前述のシステムを使用して、アレイ内の何千または何万ものZMW/ナノウェルの同時標的照射が説明されている。しかしながら、多重化の所望が増加するにつれて、ZMWクロストーク(アレイから出射するにつれて相互を汚染する隣接ZMWからの信号)、より高レベルのより高密度の照射から生じる、減少した信号対雑音比、および同等物の問題が増加するため、アレイ上のZMWの密度、およびそのようなアレイの標的照射を提供する能力が困難を増加させる。本発明のアレイおよび方法は、これらの問題のうちのいくつかに対処する。
【0093】
所与の信号が入射する検出器上の位置は、(1)アレイの中のZMW/ナノウェル内の発生発光容量、および(2)例えば、伸長反応に取り込まれる蛍光標識ヌクレオチド類似体のタイプを識別するために使用される、信号構成要素の発光特性を示す。上記のように、検出器は、ある場合には、それぞれ、発光容量から検出器層まで回折ビーム成形要素および色濾過層を通過させられる光を検出するための複数の感知領域を含むことができる。例えば、配列決定の場合、各反応セルのためのセンサは、4つの塩基のそれぞれに1つずつ、4つの要素を有することができる。ある場合には、感知領域は、色判別を提供することができるが、色濾過層が、好ましくは、適切な感知領域のための光の適切な色を区別するために使用される。これらの実施形態では、感知領域は、色を判別することなく、信号の強度のみを検出する。ある場合には、センサ要素は、発光特性の組み合わせを使用して、取り込まれたヌクレオチドを識別する。
【0094】
図20は、本開示のアレイで有用に採用される、例示的デバイスレイアウトを図示する。各場合において、アレイは、上方から視認され、黒い丸がZMW/ナノウェルを表す。示されるように、ZMW/ナノウェルは、幅広い矢印として識別される導波路の直接上方に位置付けられる。図20Aおよび20Cに示されるアレイの場合、導波路の「ピッチ」が、2列である(すなわち、導波路は、感知領域/ピクセルの2つの列の幅によって分離される)一方で、図20Bおよび20Dのアレイに関して、導波路のピッチは、1列である(すなわち、導波路は、感知領域/ピクセルの1つの列の幅によって分離される)。アレイのそれぞれの中の回折ビーム成形要素によって達成される放射光の空間的分離は、ZMW/ナノウェルのうちのいくつかと関連付けられる2つの細い矢印によって示される。例えば、図20Aのデバイスでは、回折ビーム成形要素は、放射光を、導波路に垂直に(すなわち、90°で)整合させられる2つの感知領域上に指向する。図20Bのデバイスでは、回折ビーム成形要素は、放射光を、導波路と同一線上にある(すなわち、0°にある)2つの感知領域上に指向する。図20Cおよび20Dのデバイスに関して、回折ビーム成形要素は、放射光を、導波路に対して斜めにある(すなわち、45°にある)2つの感知領域上に指向する。図面から明白であるように、図20Cおよび20Dのデバイスは、それぞれの導波路のピッチに関して異なる。
【0095】
図21は、具体的単位セル内の例示的回折ビーム成形要素2108の設計がさらに詳細に示される、上方から視認されるようなデバイスのアレイを図示する。また、単位セル内で、ZMW/ナノウェル2102、導波路2105、および検出層の感知領域を覆って位置付けられるであろう2つの色濾過領域2110のうちの1つも標識される。これらのデバイスでは、感知領域が、導波路と同一線上にあり、導波路ピッチは、1列であろう。本図面では、第2の色濾過領域、および上記で説明されているデバイスの種々の他の特徴、例えば、開口要素、レーザ拒否要素、金属および反射防止表面層、導波路クラッディング層、電子回路等が示されていない。
【0096】
図22は、本デバイスの例示的単位セルを構築するために使用される種々の典型的要素およびそれらの一般特徴を示す。これらの要素は、単位セルの面の上方から視認される。具体的には、図22Aは、回折ビーム成形要素の寸法が(および単位セル自体も)およそ10μm×15μmである、回折ビーム成形要素を図示する。図22Bは、ZMW/ナノウェル(小さい正方形として示される)およびその関連導波路を図示する。示されるように、導波路の幅は、およそ0.3~0.7μmであり、これは、約9μmの幅のトレンチに製作される。図22Cは、半径2.8μmおよび3.0μmの2つの円形色濾過領域を図示する。しかしながら、デバイス内で組み立てられると、色濾過領域のそれぞれは、ZMW/ナノウェルに対して約3.0μmオフセットされるであろう。図22Dは、ZMW/ナノウェル(小さい正方形として示される)と、各場合において2つのオフセットされた透明な円に対応する、2つの関連開口要素とを図示する。約2.5μmの直径を有する円を伴い、ZMW/ナノウェルに対して約+/-2.7μmオフセットされる、大きい方の開口要素層は、典型的には、検出器層とレーザ拒否層/色濾過層との間に配置されるであろう。約2.0μmの直径を有する円を伴い、ZMW/ナノウェルに対して約+/-1.6μmオフセットされる、小さい方の開口要素層は、典型的には、色濾過層と回折ビーム成形要素層との間に配置されるであろう。図22Eは、ZMW/ナノウェル(小さい正方形として示される)と、2つのオフセットされた透明な円に対応する、第3の関連開口要素とを図示する。これらの円は、約1.5μmの直径を有し、ZMW/ナノウェルに対して約+/-1.0μmオフセットされる。本開口要素は、典型的には、回折ビーム成形要素層と導波路との間に配置されるであろう。
【0097】
図23は、本発明の例示的統合単位セルデバイスへの図22の構成要素のアセンブリの概略図を図示する。ZMW/ナノウェルは、単位セルの中心の小さい正方形として見え、導波路は、ZMW/ナノウェルを跨ぐ垂直平行線として示される。例示的デバイスは、上から下に以下の順序で、ZMW/ナノウェルと、導波路と、第3の開口要素と、回折ビーム成形要素と、第2の開口要素と、色濾過層と、第1の開口要素と、検出器層とを含む。例示的デバイスは、随意に、色濾過層と第1の開口要素との間に、またはデバイス内の他の場所に、レーザ拒否層を含むことができる。ナノスケール統合分析デバイスの本実施形態における回折ビーム成形要素は、導波路と垂直なZMW/ナノウェルから発せられる光を指向するであろう。換言すると、本例示的デバイスは、図20Aに示されるアレイレイアウトに対応するであろう。
【0098】
図24は、寸法および例示的材料を含む、図23に説明されるデバイスのより詳細な概略断面図を提供する。図24の設計に従って製作されるデバイスの断面SEM顕微鏡写真が、図25に示されている。
(統合分析デバイスのアレイを生産するための方法)
【0099】
別の側面では、本開示は、統合分析デバイスのアレイを生産するための方法を提供する。上記で説明されるように、そのようなアレイは、例えば、具体的には、ゲノム配列決定を含む、核酸の大規模配列決定において有用である。そのようなアレイは、種々の方法によって生産されることができる。本アレイを生産するための1つの好ましいアプローチは、集積回路の生産のために高度に開発されている、半導体またはMEMS処理方法等の微細製作方法の使用を伴う。類似プロセスが、インクジェットプリンタ、加速度計、圧力変換器、およびディスプレイ(デジタルマイクロミラーディスプレイ(DMD)等)を含む、種々の用途のためのMEMS(微小電気機械システム)を作成するために使用されている。微細製作方法は、後に多くのデバイスに切られ得る、ウエハ等の大型基板に適用されることができ、一度に多くのデバイスの生産を可能にする。
【0100】
本発明の方法は、例えば、基板または他の層上に構造要素を画定するように、フォトレジスト等のレジストプロセスを適用してもよい。エッチングプロセスが、統合分析デバイス内の構成要素構造を含む、3次元構造を生産するために使用されることができる。堆積プロセスが、デバイス上に層を追加するために使用されることができる。アッシング、研磨、解放、リフトオフ、および湿式洗浄等の他の半導体プロセスもまた、以下でさらに詳細に説明されるように、本発明の構造を作成するために採用されることができる。
【0101】
例えば、リソグラフィック技法が、例えば、従来のリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、または同等物を使用して、フォトレジスト等のポリマー材料からマスク層を画定するために使用されることができる。代替として、リソグラフィック技法は、例えば、アルミニウム、金、白金、クロム、または他の従来的に使用されている金属を使用する、金属マスク層、もしくは他の無機マスク層、例えば、シリコン、SiO、または同等物等のシリカ系基板を堆積させるように、層堆積方法と併せて適用されることができる。代替として、ネガティブトーンプロセスが、例えば、ナノウェルに対応する、レジストの支柱を画定するために採用されることができる。例えば、あらゆる目的で参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第7,170,050号を参照されたい。次いで、マスク層は、レジスト支柱を覆って堆積させられることができ、支柱は、後に除去される。特に好ましい側面では、下層の基板およびマスク層は両方とも、特に好ましい側面では、ガラス、石英、または溶融石英等のSiO系基板等の透明基板材料である、同一の材料から製作される。同一の材料のマスクおよび下層の基板を提供することによって、2つの層が、それらが暴露される環境と同一の双方向性を有し、したがって、いかなるハイブリッド表面相互作用も最小限にすることを確実にすることができる。
【0102】
SiO系基板およびマスク層の場合、従来の製作プロセスが採用されることができる。例えば、導波路等の表面露出特徴を持つガラス基板は、その表面を覆って堆積させられたレジストの層を有することができる。次いで、マスク層のネガ型が、下層の特徴へのアクセスを保持することを希望するレジスト島を提供するように、レジスト層の適切な露出および現像によって画定される。次いで、マスク層は、表面を覆って堆積させられ、残りのレジスト島は、下層の特徴への開口部を提供するように、例えば、リフトオフプロセスを通して除去される。金属層の場合、堆積は、蒸発、スパッタリング、または同等物を含む、いくつかの手段を通して達成されることができる。そのようなプロセスは、例えば、米国特許第7,170,050号で説明される。シリカ系マスク層の場合、化学蒸着(CVD)プロセスが、表面上にシリコン層を堆積させるために採用されることができる。レジスト層のリフトオフに続いて、熱酸化プロセスが、マスク層をSiOに変換することができる。代替として、エッチング方法が、従来のプロセスを使用して、下位層へのアクセス点をエッチングするために使用されることができる。例えば、シリコン層が、下層の基板を覆って堆積させられる。次いで、レジスト層が、シリコン層の表面を覆って堆積させられ、マスクのパターンを画定するように露出および現像させられる。次いで、アクセス点が、下層のSiO基板ではなくシリコンを除去するように、適切な差分エッチングを使用して、シリコン層からエッチングされる。いったんマスク層が画定されると、シリコン層は、例えば、熱酸化プロセスを使用して、再度、SiOに変換される。
【0103】
本発明の一側面は、CMOSセンサ層、CCD層、または同等物等の感光性検出器層であり得る、基板層を提供するステップと、レーザ拒否フィルタ要素層を基板層上に堆積させるステップと、色濾過層をレーザ拒否フィルタ要素層上に堆積させるステップと、レンズ要素層、具体的には、回折ビーム成形要素を含む層を色濾過層上に堆積させるステップと、励起導波路層をレンズ要素層上に堆積させ、ZMW層をレンズ要素層上に堆積させるステップと、ZMW層の上クラッディングに貫通するナノウェルのアレイを画定するように、ZMW材料をパターン化してエッチングするステップとを含む、統合分析デバイスのアレイを生産するためのプロセスに関する。具体的に説明されない限り、本明細書に説明されるプロセスのステップの順序は、好適である場合、改変されることができる。いくつかの実施形態では、付加的ステップ、具体的には、デバイスの他の層の間の1つまたはそれを上回る開口層の堆積およびパターン化が、追加されることができる。そのような製作プロセスの具体的実施例は、以下で詳細に提供される。統合分析デバイスのアレイの生産において有用なプロセスのさらなる例は、あらゆる目的で参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願第13/920,037号で見出されることができる。
【0104】
上記の例示的微細製作技法のそれぞれでは、プロセスは、清浄な基板層を用いて始まる。本方法で使用される基板層は、任意の好適な剛性材料であり得る。基板層材料は、例えば、シリカ等の無機酸化物材料を含むことができる。好ましい基板層材料は、例えば、CMOSウエハ、すなわち、CMOSセンサまたはCCDアレイで構成されたウエハ等の検出器層を備える。例えば、CMOS Imagers From Phototransduction to Image Processing(2004)Yadid-Pecht and Etienne-Cummings,eds.;Springer、CMOS/CCD Sensors and Camera Systems(2007)Holst and Lomheim;SPIE Pressを参照されたい。
【0105】
上記のように、本発明の方法は、ある場合には、リソグラフィを用いて構造を画定して生産するためのレジストを使用する。これらのレジストは、例えば、フォトレジストまたは電子ビームレジストであり得る。フォトレジストは、紫外線、深紫外線、G線、H線、I線、または他の好適な波長もしくは波長のセットを使用して、現像されることができる。使用されるレジストのタイプ、したがって、処理に採用される計装のタイプは、作成される特徴の寸法に依存し得る。本明細書に説明される多くのプロセスでは、より高い分解能のレジストおよび機器が、反応容量に対応するナノウェルの生産に使用され、ナノウェルのサイズは、約10nm~500nmであり得、より低い分解能のレジストおよび関連計装は、1ミクロン~20ミクロンの寸法上に特徴を有することができる、統合分析デバイスの残りの部分の作成に使用される。多くのレジストが当技術分野で公知であり、多くは、Rohm and HaasおよびShipleyなどの会社から市販されている。本発明のプロセスで使用されるレジストは、ネガティブまたはポジティブフォトレジストであり得る。ネガティブフォトレジストを使用して、プロセスが本明細書に説明される場合、好適なポジティブフォトレジストもまた、実用的である場合に採用されることができ、逆も同様であることを理解されたい。適切である場合、化学増幅もまた、レジストの感度を増加させるために採用されることができる。レジストの除去、基板の清掃、洗浄、アッシング、および乾燥が、適宜、当技術分野で教示され、公知であるように行われることができる。
【0106】
ある場合には、ナノウェルのフォトリソグラフィに使用されるツールは、約10nm~約100nmの特徴サイズを有する構造を作成することが可能なフォトリソグラフィ露出ツールを使用する。そのようなシステムは、例えば、AMSL XT1250露出ツールを含む。
【0107】
エッチングプロセスが、本発明のいくつかの側面では、例えば、光学要素またはレンズ、もしくはナノウェル等の反応容量を形作るように、基板内または他の層内に3次元特徴を生成するために使用される。使用されるエッチングプロセスは、使用される材料のタイプ、特徴の寸法、およびレジストシステムに依存し得る。ある場合には、ウェットエッチングまたはウェット化学エッチングが採用される。電気化学エッチングも採用されることができる。いくつかの実施形態では、プラズマエッチングまたは反応性イオンエッチング(RIE)が、エッチングプロセスとして使用される。例えば、高いアスペクト比を有する構造が所望される、深部反応性イオンエッチング(DRIE)も採用されることができる。例えば、二フッ化キセノンを用いた、乾式気相エッチングも使用されることができる。バルク微細機械製作または表面微細機械製作が、適宜、本開示のデバイス構造を作成するために使用されることができる。本開示の方法で使用されるエッチングは、グレースケールエッチングであり得る。レジスト形成およびエッチングの条件は、所望の側壁角度を有する等の所望の幾何学形状を有する、側壁を生成するように制御される。
【0108】
本発明のいくつかのプロセスは、反射層またはクラッディング層の堆積を伴う。これらの反射層の堆積は、溶液から層上にスピンすることを含む湿式プロセスによって、または気相プロセスによって、達成されることができる。好適なプロセスは、電気めっき、スパッタ堆積、物理蒸着、蒸発、分子ビームエピタキシ、原子層堆積、および化学蒸着を含む。金属が、反射層およびクラッディング層として使用されることができる。好適な金属は、金、ニッケル、アルミニウム、クロム、チタン、白金、および銀を含む。反射および/またはクラッディング層は、例えば、CVC、Novellus、またはMRCから入手可能な市販のスパッタツールを使用する、スパッタリングによって堆積させられ得る、アルミニウムを含むことができる。
【0109】
層が本発明のプロセス中に堆積させられる場合、いくつかの場合には、これらの層は、プロセスにおける次のステップに進む前に処置される。例えば、堆積層は、その性質を向上させるために、焼鈍され、平坦化され、清掃され、不動態化され、または軽くエッチングされることができる。
【0110】
本発明のいくつかの方法では、保護層または犠牲層が堆積させられる。保護層は、ポリマー層であり得、または無機層であり得る。好適な保護または犠牲層は、ゲルマニウム(Ge)と、非晶質シリコン(a-Si)とを含む。保護層は、本明細書に説明されるような特徴を生成するために使用されることができる。保護または犠牲層のための材料のタイプは、例えば、湿式化学エッチング液へのその選択的反応性のために選定されることができる。例えば、ある場合には、二酸化ケイ素およびアルミニウムの存在下で、加熱された過酸化水素を用いてゲルマニウムを選択的にエッチングする能力は、ナノウェルと組み合わせられる光学構造を生成するためにそれが利用される結果となる。
【0111】
いくつかのプロセスでは、プルバックプロセスが採用されることができる。プルバックプロセスは、概して、特徴の寸法を縮小するために、層内の特徴の縁からのエッチングを伴う。プルバックは、露出縁を有する層と選択的に反応する湿式化学試薬を使用して行われることができる。いくつかの場合には、ゲルマニウム層が、過酸化水素を使用してプルバックされる。
【0112】
いくつかの方法は、表面から表面領域を除去するために研磨ステップを採用する。好適な方法は、化学・機械的研磨または化学・機械的平坦化(CMP)を含む。
【0113】
本発明のいくつかの方法は、平坦化層を組み込む。平坦化層を堆積させるための方法は、使用される材料のタイプに依存する。平坦化層は、無機材料、例えば、窒化ケイ素等の硬質材料であり得、アルミニウム等の金属材料であり得、またはポリマー材料、例えば、有機もしくはシリコン系ポリマー等の軟質材料であり得る。平坦化層は、二酸化ケイ素材料等のガラスであり得る。いくつかの場合には、平坦化層は、ケイ酸塩、リンケイ酸塩、またはシロキサン材料などのスピンオンガラスを含む。好適なスピンオンガラス材料は、例えば、Honeywell Corporationから入手可能である。平坦化層は、例えば、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)等のその融解性質を制御する他の作用物質でドープされたガラスを含むことができる。好適なポリマー平坦化材料は、例えば、ポリイミドを含む。
【0114】
例えば、以下の実施例のプロセスフローに従うことによって等、本開示のアレイが完成した後、アレイは、例えば、アレイを個々のチップに分離し、それらを配列決定のために準備することによって等、さらに処理されることができる。さらなる処理ステップは、状況に依存するであろうが、典型的には、以下の処置、すなわち、表面処置(DNAポリメラーゼ酵素をナノウェルの底部に引き付ける特異的表面を下に置く一連の湿式/気相処置)、スタッキング(表面処置デバイスウエハの頂面を保護し、ある場合には、配列決定混合物のためのウェルを作成するプロセス)、菲薄化(研削ラッピング、研磨、または他の処置を含む、複合上部めっきおよび表面処置デバイスウエハが菲薄化され得るプロセス)、ダイシング(複合ウエハが標準半導体ダイシングソーを使用して個々のチップに分割されるプロセス)、および包装(基板上にチップを搭載し、データ収集のための電気/光学出力を作成するように、標準ピックアンドプレースツールを伴うプロセス)を含むことができる。これらのさらなる処理ステップは、当業者に公知であるか、またはあらゆる目的で参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2008/0176769号および第2011/0183409号等の参考文献で開示されるかのいずれかである。
【0115】
上記のように、本発明のアレイは、アレイのナノウェルで起こる複数の反応を分析するための分析システムに組み込まれることができる。本明細書に説明されるアレイは、典型的には、最上部から流体にアクセス可能であり、底部から光学分析のためにアクセス可能である、ナノウェルを有する。したがって、アレイは、概して、着目反応混合物が導入される容器に組み込まれる。ある場合には、個々のナノウェルは全て、例えば、分析され得る複数の核酸テンプレート分子を有し得、かつヌクレオチド、補因子、および分析される反応を実行するための他の添加剤を有し得る、ある量の流体と接触している。
【0116】
アレイを備える容器は、適切な光学構成要素、コンピュータ制御、およびデータ分析システムを有する、器具内に配置されることができる。アレイを備える容器は、容器温度および容器大気条件等の反応条件が制御され得るように、器具内に保持されることができる。容器大気条件は、サンプルの上方のガスの構成、例えば、湿度、および酸素等の他のガス種のレベルを含むことができる。
【0117】
本発明またはその任意の実施形態の範囲から逸脱することなく、本明細書に説明される方法および用途への他の好適な修正ならびに適応が行われ得ることが、当業者に容易に明白となるであろう。本発明を詳細に説明してきたが、同内容は、例証の目的のみで本明細書に含まれ、本発明の限定であることを意図していない、以下の実施例を参照することによって、より明確に理解されるであろう。
【実施例0118】
本発明の一側面による例示的半導体製作プロセスは、ナノスケール発光容量から発せられる光を空間的に分離し、複数の色フィルタを通して空間的に分離された光を検出器層内の複数の感知領域に指向する、回折ビーム成形要素を備える、統合分析デバイスのアレイの製作を図示する、図26に示されている。
【0119】
例示的方法では、プロセスは、清浄な半導体基板層、好ましくは、統合CMOS検出器層を用いて始まるが、アレイは、別個の検出器デバイスに取り付けられるように設計され得る。したがって、基板層は、反応ウェルから発せられる光に対する十分な透明度を伴う任意の好適な剛性材料であり得る。適切な検出器層の例については、CMOS Imagers From Phototransduction to Image Processing (2004) Yadid-Pecht and Etienne-Cummings, eds.; Springer、CMOS/CCD Sensors and Camera Systems (2007) Holst and Lomheim; SPIE Pressを参照されたい。
【0120】
基板の表面は、例えば、湿式ストリッププロセスまたは他の好適な清掃ステップによって、堆積のために準備されることができる。図26Aのステップ1-3に示されるように、結合パッドは、SiN層の不動態化を通して開放され、表面は、酸化物で充填されて平坦化される。
【0121】
センサ基板層が、次に、図26Aのステップ4-6に示されるように、パターンゼロ層整合マークを生成するように酸化物でパターン化される。パターン化は、CMOS上部金属整合マークに整合し、ゼロは、後続のスタックパターン化に使用される最低レベル整合層を印付ける。開口1は、図26Aのステップ7-12に示されるように堆積させられる。上記でさらに詳細に記述されるように、本層は、回折ビーム成形要素から低い角度信号雑音を排除するために使用される。加えて、開口1層はまた、後続の整合のためにそれをより容易に可視的にするように、ゼロマークを装飾することもできる。本実施例では、開口層は、窒化チタンを含み、厚さ約100nmである。センサ基板および開口1層の図式的表現が、図26Bに示されている。
【0122】
レーザ拒否フィルタ層が、次に、図26Cのステップ13-15に示されるように堆積させられる。フィルタは、示されるように堆積させられる、非晶質シリコンおよび二酸化ケイ素の交互の層を備える。センサ基板、開口1層、およびレーザ拒否層の図式的表現が、図26Dに示されている。次に、ステップ14もまた、CF1、すなわち、色濾過層の第1の部分の堆積を含むことに留意されたい。本層は、図26Dに示されていない。
【0123】
色濾過層は、図26Eのステップ16-26に示されるように、レーザ拒否フィルタの上部上で調製される。本実施例に関して、アレイの各デバイスのために検出器層上に2つの別個の感知領域があるため、各デバイス内の色濾過層は、図26Fで図式的に示されるように、2つの異なる色フィルタ、すなわち、CF1およびCF2を備える。フィルタ自体は、示されるように堆積させられる、非晶質シリコンおよび二酸化ケイ素の交互の層を備える。色フィルタCF1は、レーザ拒否フィルタ堆積の一部として堆積させられる。これは、プロセスのステップ16-19においてパターン化され、エッチングされる。色フィルタCF2は、プロセスのステップ20において堆積させられ、ステップ22-25においてパターン化されてエッチングされる。センサ基板、開口1層、レーザ拒否フィルタ層、および色濾過層の図式的表現が、図26Fに示されている。本実施例では、フィルタCF1およびCF2は、2つの酸化物層内のみで厚さが異なる。
【0124】
本実施例における第2の開口層、すなわち、開口2は、図26Gのステップ27-32において示されるように調製され、レンズスペーサ酸化物層は、ステップ33-36に示されるように、本層の上部上に調製される。センサ基板、開口1層、レーザ拒否層、色濾過層、開口2層、およびレンズスペーサ酸化物層の図式的表現が、図26Hに示されている。
【0125】
回折ビーム成形要素を備えるレンズ要素層は、図26Iのステップ37-46に示されるようなレンズスペーサ酸化物層のリソグラフィックパターン化、次いで、図26Iのステップ47-48に示されるような炭素が豊富な非晶質シリコンの堆積および研磨によって、調製される。レンズスペーサ酸化物層のリソグラフィックパターン化の後、および炭素が豊富な非晶質シリコンの堆積の前に形成される、中間基板の図式的説明図が、26Jで提供される。
【0126】
パターン化、充填、および研磨されたレンズ層が、次に、図26Kのステップ49-56に図示されるように、パターン化され、窒化チタンを堆積させられ、開口3を形成するように再度パターン化される。センサ基板、開口1層、レーザ拒否フィルタ層、色濾過層、開口2層、レンズスペーサ酸化物層、レンズ層、および開口3層を含む、結果として生じた基板が、図26Lで図式的に図示される。
【0127】
図26Mで提供されるような後続のステップ57-68は、反射体酸化物層の堆積を表す。本堆積の結果は、図26Nに図示されている。
【0128】
励起導波路層が、図26Oのステップ69-78に示されるように、基板に追加される。本実施例では、窒化ケイ素導波路を含む材料が、ステップ69で堆積させられ、導波路が、ステップ71および74でエッチングされ、酸化物クラッディングが、ステップ76および78で堆積させられる。これらのプロセスステップの結果は、センサ基板、開口1層、レーザ拒否フィルタ層、色濾過層、開口2層、レンズスペーサ酸化物層、レンズ層、開口3層、および導波路層を含む、図26Pで図式的に図示されている。
【0129】
ゼロモード導波路(ZMW)層の製作が、図26Qのステップ79-91において示されている。具体的には、本図は、ステップ79におけるアルミニウム/窒化チタン表面層の堆積、およびステップ86におけるZMW孔の後続のリソグラフィック開放を示す。本層の追加の結果は、上記の層の全て、また、ZMW/ナノウェル層も含む、図26Rで図式的に図示されている。図26の図のうちのいずれかに示される寸法は、例証目的のためにすぎず、いかようにも限定的と解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0130】
全ての他のプロセスフローステップが完了した後、アレイは、清掃プロセスステップを使用して、全ての残留物を除去するように処置される。付加的ステップは、例えば、CMOS接着パッドへの接触を生成し、アレイをデバイスの他の構成要素に結合するように、深部エッチングステップを含むことができる。
【0131】
本明細書に記述される全ての特許、特許公開、および他の公開参考文献は、それぞれが参照することによって個別かつ具体的に本明細書に組み込まれた場合のように、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0132】
具体的実施例が提供されているが、上記の説明は、制限的ではなく例証的である。以前に説明された実施形態の特徴のうちのいずれか1つまたはそれを上回るものは、本発明の任意の他の実施形態の1つまたはそれを上回る特徴と任意の様式で組み合わせられることができる。さらに、本発明の多くの変形例が、本明細書を再検討すると、当業者に明白となるであろう。したがって、本発明の範囲は、それらの均等物の完全な範囲とともに、添付の請求項を参照することによって判定されるはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
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図16A
図16B
図17
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図19
図20
図21
図22-1】
図22-2】
図22-3】
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図26F
図26G
図26H
図26I
図26J
図26K
図26L
図26M
図26N
図26O
図26P
図26Q
図26R
【外国語明細書】