(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018699
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】半導体発光素子、露光装置、画像形成装置、及び半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/14 20100101AFI20230202BHJP
H01L 33/30 20100101ALI20230202BHJP
B41J 2/447 20060101ALI20230202BHJP
B41J 2/45 20060101ALI20230202BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H01L33/14
H01L33/30
B41J2/447 101A
B41J2/45
G03G15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122878
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123375
【弁理士】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鷺森 友彦
【テーマコード(参考)】
2C162
2H076
5F241
【Fターム(参考)】
2C162FA04
2C162FA17
2C162FA23
2H076AB42
2H076AB53
5F241AA03
5F241CA04
5F241CA12
5F241CA22
5F241CA36
5F241CA62
5F241CA72
5F241CB03
5F241FF13
(57)【要約】
【課題】光を効率的に外部に取り出すことができる半導体発光素子を提供する。
【解決手段】半導体発光素子(1)は、第1導電型の電極(18)と、電極(18)と接する第1の面を有する第2導電型の半導体積層部(10)とを備え、半導体積層部(10)は、第1の半導体層(10a)と、第1の半導体層(10a)に接する発光層(14)とを有し、半導体積層部(10)には、第1の面(10b)から第1の半導体層(10a)を介して発光層(14)内に達し、第1導電型の不純物が拡散されている不純物拡散領域(17a、17b)が形成されており、電極(18)は、第1の半導体層(10a)と発光層(14)との積層方向において、発光層(14)と不純物拡散領域(17a、17b)との接合によって形成された発光領域(17a1、17b1)と重ならない領域に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の電極と、
前記電極と接する第1の面を有し、前記第1導電型と異なる第2導電型の半導体積層部と、
を備え、
前記半導体積層部は、
第1の半導体層と、
前記第1の半導体層に接する発光層と、
を有し、
前記半導体積層部には、前記第1の面から前記第1の半導体層を介して前記発光層内に達し、前記第1導電型の不純物が拡散されている不純物拡散領域が形成されており、
前記電極は、前記第1の半導体層と前記発光層との積層方向において、前記発光層と前記不純物拡散領域との接合によって形成された発光領域と重ならない領域に配置された
ことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記不純物拡散領域は、
前記第1の面から前記第1の半導体層を介して前記発光層内に達する第1の不純物拡散領域と、
前記第1の面から前記第1の半導体層を介して前記発光層内に達する第2の不純物拡散領域と、
を有し、
前記発光領域は、
前記発光層と前記第1の不純物拡散領域との接合によって形成された第1の発光領域と、
前記発光層と前記第2の不純物拡散領域との接合によって形成された第2の発光領域と、
を有し、
前記電極は、前記第1の発光領域と前記第2の発光領域との間であって、前記積層方向において、前記第1の発光領域と前記第2の発光領域のいずれにも重ならない領域に配置された
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1の不純物拡散領域と前記第2の不純物拡散領域とが、前記第1の半導体層内において部分的に重なっている
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1の不純物拡散領域と前記第2の不純物拡散領域とが、前記第1の半導体層内において離れており、
前記半導体積層部には、前記第1の不純物拡散領域と前記第2の不純物拡散領域との間に、前記第1の不純物拡散領域と前記第2の不純物拡散領域とを繋ぎ、前記第1の面から前記第1の半導体層内に形成されており、前記発光層に達しない第3の不純物拡散領域が形成されており、
前記電極は、前記積層方向において、前記第3の不純物拡散領域に重なる領域に配置された
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記発光層のバンドギャップは、前記第1の半導体層のバンドギャップよりも小さい
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1導電型は、p型であり、
前記第2導電型は、n型である
ことを特徴とする1から5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記不純物拡散領域に拡散されている不純物はZnであることを特徴とする1から6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体発光素子を有することを特徴とする露光装置。
【請求項9】
像担持体と、
前記像担持体を露光する、請求項8に記載の露光装置と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
第1の面を含む第1の半導体層と、前記第1の半導体層に接する発光層とを有する、第2導電型の半導体積層部を形成するステップと、
前記半導体積層部の前記第1の面上に、拡散窓を有するマスクを形成するステップと、
前記拡散窓内を含む領域に不純物材料層を形成するステップと、
前記不純物材料層から前記拡散窓を通して前記半導体積層部内に不純物を拡散させて、前記第1の面から前記発光層内に達し、前記第2導電型と異なる第1導電型の不純物が拡散されている不純物拡散領域を形成するステップと、
前記第1の半導体層と前記発光層との積層方向において、前記発光層と前記不純物拡散領域との接合によって形成された発光領域と重ならない領域に電極を形成するステップと、
を有することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子、露光装置、画像形成装置、及び半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)又は半導体レーザなどの半導体発光素子において、発光効率を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の半導体発光素子では、内部で発生した光が電極で遮られて、外部へ効率的に光を取り出すことができない可能性がある。
【0005】
本発明は、発生した光を効率的に外部に取り出すことができる半導体発光素子及びその製造方法、並びに、前記半導体発光素子が適用された露光装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体発光素子は、第1導電型の電極と、前記電極と接する第1の面を有し、前記第1導電型と異なる第2導電型の半導体積層部と、を備え、前記半導体積層部は、第1の半導体層と、前記第1の半導体層に接する発光層と、を有し、前記半導体積層部には、前記第1の面から前記第1の半導体層を介して前記発光層内に達し、前記第1導電型の不純物が拡散されている不純物拡散領域が形成されており、前記電極は、前記第1の半導体層と前記発光層との積層方向において、前記発光層と前記不純物拡散領域との接合によって形成された発光領域と重ならない領域に配置されたことを特徴とする。
【0007】
本発明の他の態様に係る半導体発光素子の製造方法は、第1の面を含む第1の半導体層と、前記第1の半導体層に接する発光層とを有する、第2導電型の半導体積層部を形成するステップと、前記半導体積層部の前記第1の面上に、拡散窓を有するマスクを形成するステップと、前記拡散窓内を含む領域に不純物材料層を形成するステップと、前記不純物材料層から前記拡散窓を通して前記半導体積層部内に不純物を拡散させて、前記第1の面から前記発光層内に達し、前記第2導電型と異なる第1導電型の不純物が拡散されている不純物拡散領域を形成するステップと、前記第1の半導体層と前記発光層との積層方向において、前記発光層と前記不純物拡散領域との接合によって形成された発光領域と重ならない領域に電極を形成するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体発光素子によれば、発生した光を効率的に外部に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施の形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る半導体発光素子の発光領域とp側電極との位置関係を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】(A)及び(B)は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子のZn拡散領域の形成に用いるマスクを示す平面図及び斜視図である。
【
図5】(A)及び(B)は、半導体発光素子の固相拡散工程を示す断面図である。
【
図6】Zn拡散領域の形成後に形成された電極を示す斜視図である。
【
図7】比較例の半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図9】(A)及び(B)は、第2の実施の形態に係る半導体発光素子のZn拡散領域の形成に用いるマスクを示す平面図及び斜視図である。
【
図10】第3の実施の形態に係る露光装置の発光素子アレイを示す平面図である。
【
図11】第3の実施の形態に係る露光装置を示す断面図である。
【
図12】第4の実施の形態に係る画像形成装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態に係る半導体発光素子、露光装置、画像形成装置、及び半導体発光素子の製造方法を、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。なお、図において、同一又は対応する構成には、同じ符号が付されている。
【0011】
《1》第1の実施の形態
《1-1》構造
図1は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子1の構成を概略的に示す断面図である。
図2は、半導体発光素子1の発光領域とp側電極18との位置関係を示す図である。半導体発光素子1は、発光ダイオード(LED)である。半導体発光素子1は、第1導電型の電極としてのp側電極18と、p側電極18と接する面(図では、上面)である第1の面10bを有し、第1導電型と異なる第2導電型の半導体積層部であるn型の半導体積層部10と、n-GaAs基板などの半導体基板16と、n側電極19とを備えている。
【0012】
半導体積層部10は、例えば、複数のn型半導体層からなるエピタキシャル成長層である。半導体積層部10は、半導体基板16上でエピタキシャル成長させたエピタキシャル成長層、又は、成長基板(図示せず)上でエピタキシャル成長させて半導体基板16上に移動したエピタキシャル成長層のいずれであってもよい。
【0013】
半導体積層部10は、例えば、第1の面10b側から順に、n-GaAs層であるコンタクト層11と、n-Al0.4Ga0.6As層である横方向電流拡散層(「電流拡散層」ともいう。)12と、n-Al0.6Ga0.4As層である逆方向拡散電流阻止層(「拡散電流素子層」ともいう。)13と、n-Al0.22Ga0.22As層である発光層(「活性層」ともいう。)14と、n-Al0.4Ga0.6As層である電流拡散阻止層15とを備えている。コンタクト層11、電流拡散層12、及び拡散電流阻止層13は、発光層14とp側電極18との間に挟まれた半導体層である第1の半導体層10aを構成している。また、発光層14のバンドギャップは、第1の半導体層10aを構成する各層のバンドギャップよりも小さい。
【0014】
半導体積層部10には、第1の面10bから第1の半導体層10aを介して発光層14内に達し、p型不純物(ここでは、p型ドーパント)としてZn(亜鉛)が拡散されている不純物拡散領域として第1のZn拡散領域17aと第2のZn拡散領域17bとが形成されている。第1のZn拡散領域17aと第2のZn拡散領域17bとは、第1の半導体層10a内において部分的に重なっている。
【0015】
第1のZn拡散領域17aと第2のZn拡散領域17bとは、p型ドーパントであるZnの拡散処理によって形成されている。Znの拡散処理は、例えば、固相拡散によって行われる。固相拡散は、不純物を多量に含んだ固体薄膜を半導体層上に堆積させ、加熱することにより、不純物を半導体層内に拡散(熱拡散)させる方法である。
【0016】
固相拡散では、厳密には半導体材料の組成及び不純物の濃度などの各種条件によって拡散速度が変化するが、概ね等方的に同じ速度で不純物の拡散が進行する。また、LEDでは、発光領域は、一般的に、表面から1μm程度の深さの位置に形成される。したがって、拡散処理によって、1μm程度の深さの不純物拡散領域を形成した場合、深さ方向(すなわち、厚み方向)に直交する横方向の拡散も1μm程度発生する。
【0017】
このような理由から、
図1及び
図2に示されるように、第1のZn拡散領域17a及び第2のZn拡散領域17bは、第1の面10bの位置では広いが、第1の半導体層10a及び発光層14に向かうにしたがって狭くなっている。このように、拡散処理によって第1のZn拡散領域17a及び第2のZn拡散領域17bを形成することで、第1のZn拡散領域17a及び第2のZn拡散領域17bと発光層14との境界面(すなわち、pn接合)の近傍に形成される第1の発光領域17a1及び第2の発光領域17b1の大きさを制限することができる。言い換えれば、拡散処理によって第1のZn拡散領域17a及び第2のZn拡散領域17bを形成することで、第1の発光領域17a1及び第2の発光領域17b1の位置及び大きさを所望の位置及び大きさにすることができる。このため、第1の発光領域17a1と第2の発光領域17b1との間に、非発光領域17c1を設けることができる。つまり、p側電極18は、積層方向において(すなわち、半導体発光素子1を真上から見た場合に)、第1の発光領域17a1と第2の発光領域17b1のいずれにも重ならない領域に配置されている。
図1及び
図2では、p側電極18は、積層方向において、第1の発光領域17a1と第2の発光領域17b1のいずれにも重ならない領域であって、第1のZn拡散領域17a及び第2のZn拡散領域17b上に配置されている。
【0018】
図1及び
図2では、p側電極18は、第1の発光領域17a1及び第2の発光領域17b1以外の領域である非発光領域17c1の真上に配置する。このような構造では、p側電極18から流れる主要な電流Iは、
図1に矢印で示されるように流れ、発光は、主に、p側電極18の直下以外の領域である、第1の発光領域17a1と第2の発光領域17b1で生じることになる。
【0019】
《1-2》製造方法
図3は、半導体発光素子1の製造工程を示すフローチャートである。
図4(A)及び(B)は、半導体発光素子1のZn拡散領域の形成に用いるマスク110を示す平面図及び斜視図である。
図4(B)は、
図4(A)の構造の3B-3B線に沿う断面図である。
図5(A)及び(B)は、半導体発光素子1の固相拡散工程を示す断面図である。
【0020】
まず、エピタキシャル成長層である半導体積層部10を形成し、n-GaAs基板である半導体基板16上に配置する(
図3のステップS1、S2)。半導体積層部10は、半導体基板16上で成長させてもよい。
【0021】
次に、エピタキシャル成長層である半導体積層部10上に、拡散窓110a及び110bを有するマスク110を形成する(
図3のステップS3)。ここでは、拡散窓110aと110bとは、同じ形状である。
【0022】
次に、拡散窓110a、110b内を含む領域に不純物材料層120を形成する(
図3のステップS4)。不純物材料層120は、Znを含有するZnO・SiO
2混合膜層であり、例えば、スパッタ法で形成される。その後、加熱(アニール)することで不純物の固相拡散を行う(
図3のステップS5)。不純物材料層120から拡散窓110a、110bを通して半導体積層部10内にZnを拡散させて、第1の面10bから発光層14内に達し、p型の不純物が拡散されている第1のZn拡散領域17aと第2のZn拡散領域17bとを形成する。なお、加熱前に不純物材料層120上をアニーリングキャップ膜で被覆してもよい。また、固相拡散では、pn接合面が、0.5~2μmの範囲内の深さの位置に形成されることが望ましい。
【0023】
次に、不純物材料層120及びマスク110を除去する(
図3のステップS6)。
【0024】
次に、p側電極18を、発光層14と第1及び第2のZn拡散領域17a、17bとの接合によって形成された第1及び第2の発光領域17a1、17b1に重ならない領域であって、第1及び第2のZn拡散領域17a、17bに電気的に接続された領域、すなわち、第1及び第2のZn拡散領域17a、17b上に形成する(
図3のステップS7)。以上の工程によって、
図6の斜視図に示されるような、半導体発光素子1が形成される。
【0025】
《1-3》効果
図7は、比較例の半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
図7の半導体発光素子では、不純物拡散層17と発光層14との接合面の近傍の発光領域の真上にp側電極18が形成されている。この場合には、発光領域で発生した光の一部がp側電極18で遮光されているので、光の取り出し効率が低下する。したがって、発光効率は低い。
【0026】
これに対し、第1の実施の形態に係る半導体発光素子1によれば、p側電極18を第1及び第2の発光領域17a1、17b1からずらした位置に配置しているので、光の遮光による光の取り出し効率の低下は発生しにくい。したがって、発光効率を向上させることができる。
【0027】
なお、上記説明では、2つの発光領域が存在する場合を例示したが、発光領域は2つに限定されない。発光領域の数は、1つであってもよい。
【0028】
また、上記説明では、第1導電型がp型であり、第2導電型がn型である例を説明したが、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型である半導体発光素子にも本発明を適用可能である。
【0029】
また、半導体積層部10を構成する半導体材料、組成の比率、は上記例に限定されず、種々の変更が可能である。
【0030】
《2》第2の実施の形態
《2-1》構造
図8は、第2の実施の形態に係る半導体発光素子2の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子2では、第1の不純物拡散領域としての第1のZn拡散領域27aと第2の不純物拡散領域としての第2のZn拡散領域27bとが、第1の半導体層10a内において離れており、半導体積層部20には、第1のZn拡散領域27aと第2のZn拡散領域27bとの間に、第1のZn拡散領域27aと第2のZn拡散領域27bとを繋ぎ、第1の面20bから第1の半導体層20a内に形成されており、発光層14に達しない第3の不純物拡散領域としての第3のZn拡散領域27cが形成されている。また、p側電極18は、積層方向において、第3のZn拡散領域27cに重なる領域に配置されている。上記以外の点に関し、第2の実施の形態の半導体発光素子2の構造は、第1の実施の形態のものと同じである。
【0031】
《2-2》製造方法
図9(A)及び(B)は、第2の実施の形態に係る半導体発光素子2のZn拡散領域の形成に用いるマスクを示す平面図及び斜視図である。第2の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法は、マスク210が拡散窓210a、210bに加えて、複数の小型の拡散窓である微小窓210cを有する点において、第1の実施の形態における製造方法と異なる。
【0032】
第2の実施の形態では、Znの拡散時に
図9(A)及び(B)のような複数の微小窓210cを設けた構造を用いる。
図9に示すように微小窓210cからのZn拡散は、大きな拡散窓210a、210bに比べて拡散するZnの量が少なくなる。これは、Znの供給量が少ないために生じる。微小窓210cにおいても横方向への拡散は、生じることから、設計を適切に行えば、隣接する微小窓210cから形成された隣接するZn拡散領域が互いに結合することができる。マスク210は、Zn拡散後に除去し、
図8のようにZn拡散が発光層14に到達していない領域にp側電極18を形成する。
【0033】
上記以外の点に関し、第2の実施の形態の半導体発光素子2の製造方法は、第1の実施の形態のものと同じである。
【0034】
《2-3》効果
第1の実施の形態では、p側電極18の形成位置が横方向拡散部分の上部という制限があった。一方、第2の実施の形態では、より明確に発光領域と電極位置の分離が可能となっている。言い換えれば、発光は、360度等方的に生じるものであり、斜め方向へ進む光も生じている。第2の実施の形態では、第1の実施の形態よりも更に光の遮光を減らすことが可能であり、発光効率を更に向上させることができる。
【0035】
《3》第3の実施の形態
図10は、第3の実施の形態に係る光プリントヘッドの半導体発光素子アレイ31を示す概略平面図である。半導体発光素子アレイ31は、基材部310上に規則的に配置された複数の半導体発光素子1を有する。基材部310内又は基材部310上には、複数の半導体発光素子1を駆動する駆動回路310aが備えられている。したがって、基材部310は、プリント配線板である。半導体発光素子アレイ31の半導体発光素子1としては、第1又は第2の実施の形態に係る半導体発光素子1又は2を使用することができる。
【0036】
図11は、第3の実施の形態に係る光プリントヘッド30の構造を概略的に示す断面図である。光プリントヘッド30は、電子写真プロセスを用いる画像形成装置としての電子写真プリンタの露光装置である。
図11に示されるように、光プリントヘッド30は、ベース部材311と、基材部310と、半導体発光素子アレイ31(
図10に示される)と、複数の正立等倍結像レンズを含むレンズアレイ313と、レンズホルダ314と、バネ部材であるクランパ315とを備えている。ベース部材311は、基材部310を固定するための部材である。ベース部材311の側面には、クランパ315を用いて、基材部310及びレンズホルダ314をベース部材311に固定するための開口部312が設けられている。レンズアレイ313は、発光素子チップである半導体発光素子アレイ31から出射された光を像担持体としての感光体ドラム上に結像させる光学レンズ群である。レンズホルダ314は、レンズアレイ313の所定の位置に保持する。クランパ315は、ベース部材311の開口部312及びレンズホルダ314の開口部を介して、各構成部品を挟み付けて保持する。
【0037】
光プリントヘッド30では、印刷データに応じて、複数の半導体発光素子1のいずれかが発光し、半導体発光素子1から出射された光はレンズアレイ313により像担持体としての感光体ドラム(後述の
図12に示される)上で結像される。これにより、感光体ドラムに静電潜像が形成され、その後、現像工程、転写工程、定着工程を経て、記録媒体(例えば、用紙)上に現像剤からなる画像が形成される。
【0038】
第3の実施の形態に係る光プリントヘッド30は、光取り出し効率の高い第1又は第2の実施の形態のいずれかの半導体発光素子を備えているので、これを画像形成装置に搭載することで、印字品質を向上させることができる。
【0039】
《4》第4の実施の形態
図12は、第4の実施の形態に係る画像形成装置40の構造を概略的に示す断面図である。画像形成装置40は、露光装置として光プリントヘッド30を用いた電子写真式プリンタである。
図12に示されるように、画像形成装置40は、記録媒体405の搬送経路に沿って順に配置された、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の各色の画像を電子写真方式を用いて形成する4つのプロセスユニット(「画像形成ユニット」又は「イメージドラムユニット」とも言う)401Y、401M、401C、401Kと、記録媒体405を収納する記録媒体カセット406と、記録媒体405を1枚ずつ分離して搬送するためのホッピングローラ407と、記録媒体405の搬送方向においてホッピングローラ407の下流に配置されたピンチローラ408、409と、ピンチローラ408と共に記録媒体405を挟み込んで記録媒体405を搬送する搬送ローラ410と、記録媒体405の斜行を修正してプロセスユニット401Y、401M、401C、401Kに搬送するレジストローラ411とを有している。また、画像形成装置40は、プロセスユニット401Y、401M、401C、401Kに対向して配置され、半導電性のゴム等からなり、感光体ドラム402に形成された画像(「トナー像」又は「現像剤像」とも言う)を記録媒体405に転写する転写手段としての転写ローラ412を有している。また、画像形成装置40は、記録媒体405上のトナー像を加熱・加圧して定着させる定着装置413と、排出ローラ414、415と、排出部のピンチローラ416、417と、用紙スタッカ部418とを有する。
【0040】
プロセスユニット401Y、401M、401C、401Kは、トナーの色以外については、互いに同じ構成を有している。各プロセスユニット401Y、401M、401C、401Kは、静電潜像を担持する像担持体としての感光体ドラム402と、この感光体ドラム402の周囲に配置され、感光体ドラム402の表面を一様帯電させる帯電装置403と、帯電された感光体ドラム402の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置としての光プリントヘッド30と、感光体ドラム402の表面に形成された静電潜像にトナー(現像剤)を供給して現像する現像手段としての現像装置420とを有している。また、各プロセスユニット401Y、401M、401C、401Kは、感光体ドラム402上に現像された画像を記録媒体405に転写した後に感光体ドラム402に残留したトナーを除去するクリーニング装置419を有している。なお、画像形成装置40は、記録媒体405の印刷面を反転させる反転経路を含む反転部430を有してもよい。
【0041】
第4の実施の形態に係る画像形成装置40は、露光装置として光プリントヘッド30を用いているので、印字品質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1、2 半導体発光素子、 18 p側電極(電極)、 10、20 半導体積層部、 10a、20a 第1の半導体層、 10b、20b 第1の面、 11 n-GaAs層(第1層)、 12 n-Al0.4Ga0.6As層(電流拡散層)、 13 n-Al0.6Ga0.4As層(逆方向電流拡散阻止層)、 14 n-Al0.22Ga0.22As層(発光層)、 15 n-Al0.4Ga0.6As層(電流拡散阻止層)、 16 n-GaAs基板、 17a、27a 第1のZn拡散領域(第1の不純物拡散領域)、 17b、27b 第2のZn拡散領域(第2の不純物拡散領域)、 27c 第3のZn拡散領域(第3の不純物拡散領域)、 17a1、27a1 発光領域(第1の発光領域)、 17b1、27b1 発光領域(第2の発光領域)、 18 p側電極、 19 n側電極、 30 光プリントヘッド(露光装置)、 40 画像形成装置、 110、210 マスク、 110a、110b、210a、210b 拡散窓、 210c 微小窓、 120 不純物材料層。