(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001999
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】情報システムを管理する管理システム及び管理方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/07 20060101AFI20221227BHJP
G06F 11/34 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G06F11/07 193
G06F11/07 140A
G06F11/34 147
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102964
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】日下部 優貴
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042KK13
5B042KK15
5B042KK17
5B042MA08
5B042MC40
(57)【要約】
【課題】情報システムの設定エラーに対する対処方法を効率的に決定する。
【解決手段】過去構成情報は、情報システムの異なる過去構成事例それぞれから得られる過去構成事例情報を示す。現構成情報及び過去構成事例情報は、それぞれ複数の項目で構成される。複数の項目の各項目に割り当てられるビットの値は、各項目において定義されている二つの状態の一方を示す。対処方法情報は、現構成情報のビット列と過去構成事例情報のビット列との関係と設定エラーに対する対処方法とを関連付ける。管理システムは、過去構成情報から過去構成事例情報を選択し、過去構成事例情報のビット列と現構成情報のビット列との関係に応じた対処方法を対処方法情報から選択し、選択した前記対処方法を提示する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報システムを管理する、管理システムであって、
1以上の演算装置と、
1以上の記憶装置と、を含み、
前記1以上の演算装置は、情報システムの現構成から得られる現構成情報を取得し、
前記1以上の記憶装置は、過去構成情報と、対処方法情報と、を格納し、
前記過去構成情報は、情報システムの異なる過去構成事例それぞれから得られる過去構成事例情報を示し、
前記現構成情報及び前記過去構成事例情報は、それぞれ複数の項目で構成され、
前記複数の項目それぞれに対してビットが割り当てられ、
前記複数の項目の各項目に割り当てられるビットの値は、各項目において定義されている二つの状態の一方を示し、
前記対処方法情報は、前記現構成情報のビット列と前記過去構成事例情報のビット列との関係と設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記1以上の演算装置は、
前記過去構成情報から過去構成事例情報を選択し、
前記過去構成事例情報のビット列と前記現構成情報のビット列との関係に応じた対処方法を、前記対処方法情報から選択し、
選択した前記対処方法を提示する、管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記過去構成事例情報は、失敗構成事例の構成から得られる失敗構成事例情報であり、
前記対処方法情報は、前記失敗構成事例情報のビット列と設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記1以上の演算装置は、
前記過去構成情報から、前記現構成情報のビット列と一致するビット列を有する失敗構成事例情報を選択し、
前記現構成情報のビット列と一致するビット列に関連付けられれている対処方法を、前記対処方法情報から選択する、管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記過去構成事例情報は、成功構成事例の構成から得られる成功構成事例情報であり、
前記対処方法情報は、前記現構成情報のビット列と前記成功構成事例情報のビット列との間でビット値が異なるビットと設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記1以上の演算装置は、
前記現構成情報のビット列と前記選択された成功構成事例情報のビット列との間においてビット値が異なるビットを特定し、
前記異なるビットに関連付けられれている対処方法を、前記対処方法情報から選択する、管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の管理システムであって、
前記1以上の演算装置は、前記現構成情報のビット列と類似度が最も高い成功構成事例情報を前記過去構成情報から選択する、管理システム。
【請求項5】
請求項2に記載の管理システムであって、
前記1以上の記憶装置は、第2過去構成事例情報と、第2対処方法情報と、をさらに格納し、
前記第2過去構成事例情報は、情報システムの成功構成事例それぞれの構成から得られる成功構成情報を示し、
前記第2対処方法情報は、前記現構成情報のビット列と前記成功構成事例情報のビット列との間でビット値が異なるビットと設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記1以上の演算装置は、
前記現構成情報のビット列と一致するビット列を有する失敗構成事例情報が前記構成事例情報において検出されない場合、
前記現構成情報のビット列と類似度が最も高い成功構成事例情報を、前記第2過去構成情報から選択し、
前記現構成情報のビット列と前記選択された成功構成事例情報のビット列との間においてビット値が異なるビットを特定し、
前記異なるビットに関連付けられれている対処方法を、前記第2対処方法情報から選択する、管理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記1以上の記憶装置は、情報システムの構成に基づく入力データに対して設定エラーの有無を推定するモデルを、格納し、
前記1以上の演算装置は、
前記モデルに前記現構成情報のビット列を含む入力データを入力することで、前記現構成における設定エラーの有無を判定し、
前記設定エラーがあると判定した場合に、前記過去構成情報から過去構成事例情報を選択する、管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記複数の項目は、
1以上のソフトウェア製品それぞれの導入の有無を示す項目と、
前記1以上のソフトウェア製品の一つのソフトウェア製品の操作実行の成否を示す項目と、を含む、管理システム。
【請求項8】
管理システムにより実行される、情報システムの管理方法であって、
前記管理システムは、過去構成情報と、対処方法情報と、情報システムの現構成から得られる現構成情報と、を保持し、
前記過去構成情報は、情報システムの異なる過去構成事例それぞれから得られる過去構成事例情報を示し、
前記現構成情報及び前記過去構成事例情報は、それぞれ複数の項目 で構成され、
前記複数の項目それぞれに対してビットが割り当てられ、
前記複数の項目の各項目に割り当てられるビットの値は、各項目において定義されている二つの状態の一方を示し、
前記対処方法情報は、前記現構成情報のビット列と前記過去構成事例情報のビット列との関係と 設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記管理方法は、
前記管理システムが、前記過去構成情報から過去構成事例情報を選択し、
前記管理システムが、前記過去構成事例情報のビット列と前記現構成情報のビット列との関係 に応じた対処方法を、前記対処方法情報から選択し、
前記管理システムが、選択した前記対処方法を提示する、ことを含む管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報システムの管理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、仮想化技術やクラウドの導入、また、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)に代表されるように、小規模のシステム構成から開始することができ、機器の追加により大規模のシステム構成まで対応可能なスケールアップ型のITシステムの伸長により、ITシステムの大規模化・複雑化が進行している。
【0003】
ITシステムが小規模であれば、ITシステム動作に必要なソフトウェアに関する設定をシステム設計に基づき少数のエンジニアで行えばよいため、ソフトウェアに関する設定エラーが生じにくく、設定エラーがあっても、その原因特定に時間も要しない。
【0004】
しかし、ITシステムの大規模化・複雑化により、ITシステム動作に必要なソフトウェアの構成やソフトウェア間の依存関係が複雑化・煩雑化する。また、多数のエンジニアがそれぞれの担当箇所に応じて個別にソフトウェアに関する設定を行うケースが多くなってきている。自分の担当箇所はチェックできても他人の箇所はチェックできないため、システムが大規模化し関係者が増えると設定エラーも多くなる。
【0005】
このため、ITシステム全体を通して、ソフトウェアに関する設定間での依存関係の定義不整合や、既存ソフトウェアと追加ソフトウェアとのバージョン不整合といった、ソフトウェアに関する設定エラーによるITシステム不具合の頻度が増加している。さらに、ソフトウェアの設定エラーの原因特定にも時間を要している。
【0006】
従来技術として、例えば、特開2017-111486号公報がある。この文献は、学習データを用いて障害の予兆検知を行い、その障害がソフトウェア構成に依存するか否かを判定した上で、学習時と検知時とで、システムのソフトウェア構成が類似する場合に、該当の予兆検知結果を出力する。これにより、ソフトウェア構成が変更されている場合でも、設定エラーを検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
情報システムの管理において、運用時の設定変更や新規導入時の初期設定についてエラーを検知する他に、検知された設定エラーに対する対処方法を効率的に決定及び提示することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、情報システムを管理する、管理システムであって、1以上の演算装置と、1以上の記憶装置と、を含む。前記1以上の演算装置は、情報システムの現構成から得られる現構成情報を取得する。前記1以上の記憶装置は、過去構成情報と、対処方法情報と、を格納する。前記過去構成情報は、情報システムの異なる過去構成事例それぞれから得られる過去構成事例情報を示す。前記現構成情報及び前記過去構成事例情報は、それぞれ複数の項目で構成される。前記複数の項目それぞれに対してビットが割り当てられる。前記複数の項目の各項目に割り当てられるビットの値は、各項目において定義されている二つの状態の一方を示す。前記対処方法情報は、前記現構成情報のビット列と前記過去構成事例情報のビット列との関係と設定エラーに対する対処方法とを関連付ける。前記1以上の演算装置は、前記過去構成情報から過去構成事例情報を選択し、前記過去構成事例情報のビット列と前記現構成情報のビット列との関係に応じた対処方法を、前記対処方法情報から選択し、選択した前記対処方法を提示する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、情報システムにおける設定エラーに対する対処方法を効率的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本明細書の一実施形態に係る計算機システムの構成例を示す。
【
図8】情報システムの設定エラーを検知する学習モデルを生成する処理例のフローチャートを示す。
【
図9】設定エラー検知処理例のフローチャートを示す。
【
図11】失敗構成ビット列テーブルを参照して設定エラーの原因を特定する処理例のフローチャートを示す。
【
図12】成功構成ビット列テーブル及び差異提示テーブルを参照して、提示する対処方法を決定する処理例のフローチャートを示す。
【
図13】現在の情報システムの構成情報の例と、対処方法提示テーブルとの関係を示す。
【
図14】ユーザに検査結果及び対処方法を提示するためのGUI画像の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
本システムは、物理的な計算機システム(一つ以上の物理的な計算機)でもよいし、クラウド基盤のような計算リソース群(複数の計算リソース)上に構築されたシステムでもよい。計算機システムあるいは計算リソース群は、1以上のインターフェイス装置(例えば通信装置及び入出力装置を含む)、1以上の記憶装置(例えば、メモリ(主記憶)及び補助記憶装置を含む)、及び、1以上の演算装置を含む。
【0014】
プログラムが演算装置によって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/またはインターフェイス装置等を用いながら行われるため、機能は演算装置の少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、演算装置を有するシステムが行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機または計算機が読み取り可能な記憶媒体(例えば計算機読み取り可能な非一過性記憶媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0015】
以下において、情報処理(IT)システムにおける設定エラーを検知し、それに対する対処方法を提示する手法を説明する。本明細書の一実施形態に係る管理システムは、情報システムの構成から得られる、構成に関する情報(構成情報)を入力として、その情報システムにおける障害発生の有無を推定する。障害が発生すると推定されることは、情報システムにおいて障害を引き起こす設定エラーが存在すると推定されることを意味する。
【0016】
情報システムの構成情報は、静的なハードウェア構成及びソフトウェア構成を示す項目に加えて、情報システムにおけるソフトウェア操作の実行結果についての項目を含むことができる。
【0017】
本明細書の一実施形態に係る管理システムは、障害が発生すると推定すると、その障害に対する対処方法を決定する。管理システムは、過去構成情報及び対処方法情報を保持する。過去構成情報は、異なる過去構成事例から得られる構成情報を保持している。構成情報は複数の項目で構成され、各項目に対してビットが割り当てられる。ビットは、対応する項目の二つ状態の一方を示す。
【0018】
管理システムは、検査対象の情報システムの現構成から現構成情報を取得し、現構成情報に対して、ビット列を割り当てる。管理システムは、過去構成情報の過去構成事例それぞれのビット列と、現構成情報のビット列とを比較して、類似するビット列を特定する。
【0019】
対処方法情報は、現構成情報のビット列と過去構成事例のビット列との関係の応じた対処方法を示す。管理システムは、現構成情報のビット列と上記類似するビット列との関係に応じた対処方法を、対処方法情報から取得する。
【0020】
本明細書の一実施形態に係る管理システムは、情報システムの運用時の設定変更に加えて、新規導入時の初期設定についても過去の類似構成データを基に設定エラーを検知し、それに対する対処を提示することで、設定エラーによるシステム障害を防ぐことができる。また、情報システムの構成から得られる構成情報にビット列を割り当てることで、効率的に対処方法を決定することができる。
【0021】
<システム構成>
図1は、本明細書の一実施形態に係る計算機システムの構成例を示す。計算機システムは、ネットワーク27を介して通信可能に接続された、管理システム10、問い合わせシステム20及びユーザ端末25を含む。ユーザは、ユーザ端末25を操作して、目的の情報システムの設定の検査を管理システム10に要求することができる。
【0022】
各問い合わせシステム20は、設定履歴情報201を保持している。設定履歴情報201は、様々な情報システムの構成の情報及びそれら情報システムにおける障害発生の有無を示す。設定履歴情報201には、随時新しい情報が蓄積される。設定履歴情報201は、例えば、実際に運用されている又は運用された情報システムから取得できる他、情報システムユーザからの障害についての問い合わせから取得することができる。
【0023】
管理システム10は、ユーザからの要求に応じて、ユーザにより指定された情報システムの構成を分析し、設定エラーによる障害発生の有無を推定する。障害が発生すると推定されると、管理システム10は、ユーザ端末25に対して、その情報を送信する。これにより、情報システムのユーザは、新たな情報システムの構築又は既存情報システムの更新における設定エラーを知り、システム障害を未然に防ぐことができる。
【0024】
管理システム10は、サーバシステムの他、パーソナルコンピュータやクラウド上の仮想情報処理装置などを使用できる。管理システム10は、RAMなど揮発性記憶素子で構成されるメモリ(主記憶装置)101、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される補助記憶装置102を含む。管理システム10は、さらに、補助記憶装置102に保持されるプログラムをメモリ101に読み出すなどして実行し装置事態の統括制御を行うとともに、各種判定、演算及び制御処理を行うCPUなどの演算装置104を含む。
【0025】
管理システム10の機能は、演算装置104が、プログラムを実行することにより実装される。
図1は、演算装置104が実行するためにメモリ101にロードされているプログラム111~114を示す。具体的には、演算装置104は、構成情報取得部111、モデル生成部112、設定エラー検知部113、原因特定部114、学習モデル115を実行する。演算装置104は、これらプログラムを実行することで、対応する機能部として動作する。これらプログラムの動作の詳細は後述する。
【0026】
さらに、管理システム10は、適宜なネットワークに接続しデータをやり取りするための通信装置107を備えている。管理システム10は、ユーザからの入力動作を受け付けるキーボードやマウス、タッチパネルなどの入力装置105、ユーザに対して処理結果を表示するディスプレイなどの出力装置106を含んでもよい。なお、管理システム10がスタンドアロンマシンとして稼働する場合、通信装置107は不要である。
【0027】
補助記憶装置102内は、管理システム10として必要な機能を実装するための上記プログラムの他、各種処理に必要なデータが格納される。具体的には、補助記憶装置102は、構成情報テーブル(TL)300、ビット列変換テーブル320、失敗構成ビット列テーブル340、対処方法提示テーブル360、成功構成ビット列テーブル380、差異提示テーブル400、及び検査結果テーブル420を格納している。
【0028】
失敗構成ビット列テーブル340及び成功構成ビット列テーブル380は、過去構成情報の例であり、対処方法提示テーブル360及び差異提示テーブル400は、対処方法情報の例である。後述するように、構成情報は、情報システムの異なる過去構成事例それぞれから得られる過去構成事例情報を示す。対処方法情報は、検査対象システムの構成情報のビット列と過去構成事例情報のビット列との関係と、設定エラーに対する対処方法とを、関連付ける。
【0029】
補助記憶装置102は、管理システム10の内部装置あってもよし、また企業や組織内で運用されているNAS(Network Attached Storage)などのネットワークストレージや、ウェブストレージなどに含まれていてもよい。
【0030】
ユーザ端末25及び問い合わせシステム20は、管理システム10のように、計算機構成を有してよい。つまり、ユーザ端末25及び問い合わせシステム20は、1以上の演算装置、1以上の記憶装置に加え、入力装置、出力装置及び通信装置を含むことができる。一部の構成要素は、省略されていてもよい。ユーザ端末25は、例えば、パーソナルコンピュータ又はウェアラブルコンピュータであり、問い合わせシステム20は、サーバシステムであってよい。
【0031】
<管理情報>
以下において、管理システム10に格納されている管理情報を具体的に説明する。以下において、ストレージシステムにおける障害検知のための管理情報の例を説明する。なお、本明細書の管理システムは、ストレージシステムと異なる情報システムに適用することができる。
【0032】
図2は、構成情報テーブル300の構成例を示す。後述するように、構成情報テーブル300は、情報システムにおける障害発生を推定する学習モデル115(機械学習モデル又はモデルとも呼ぶ)の訓練データを格納する。構成情報テーブル300は、複数の実際の情報システムそれぞれの構成についての情報及び障害発生の有無を示す。管理システム10は、問い合わせシステム20の設定履歴情報28から情報を取得して、構成情報テーブル300に含めることができる。
【0033】
構成情報テーブル300は、情報システムの構成を表す情報又は構成から得られる情報を示す。
図2の例において、構成情報テーブル300は、物理構成欄301、ソフトウェア構成欄302、ソフトウェア操作欄303、及び教師データ欄304を有する。構成情報テーブル300における各レコードは、一つの情報システムの構成を示す情報及び障害発生の有無を示す。
図2の例において、複数のレコードが、一つの情報システムの異なる操作の情報を示し得る。
【0034】
一つのレコードは、障害発生推定のモデル115の1回の推定処理の、教師付きデータである。教師付きデータは、モデル115への入力データ及び教師データの組み合わせである。物理構成欄301、ソフトウェア構成欄302、ソフトウェア操作欄303の値が、障害発生推定モデル115の訓練における入力データであり、教師データ欄304の値が、教師データである。
【0035】
物理構成欄301は、情報システムの物理構成の情報を示す。
図2の例において、物理構成欄301は、情報システム内の装置間の疎通の有無を示す。情報システムが多くの装置を含む場合、例えば、全ての装置間で通信可能である場合に疎通有りと判定され、いずれかの装置ペアにおいて通信不可である場合に疎通無しと判定される。疎通有無は他の判定方法に従ってもよい。
【0036】
ソフトウェア構成欄302は、情報システムのソフトウェア構成の情報を示す。
図2の例において、ソフトウェア構成欄302は、特定のソフトウェア製品(プログラム)が、情報システムに導入されているか否か、又、製品のバージョンが指定されている条件を満たしているかを示す。
【0037】
図2の例において、ソフトウェア構成欄302は、バージョン欄305、自動化製品欄306、監視製品欄307、構成管理製品欄308、データ保護製品欄309、エントリポイント製品欄310、及びAPI製品欄311を含む。
【0038】
バージョン欄305は、情報システムに実装されてるソフトウェア製品のバージョンの組み合わせが、予め設定されている組み合わせのいずれかと一致しているか否かを示す。例えば、実装される全てのソフトウェア製品は、最新のバージョンであることが求められ得る。自動化製品欄306、監視製品欄307、構成管理製品欄308、データ保護製品欄309、エントリポイント製品欄310、及びAPI製品欄311は、それぞれ、対応するソフトウェア製品が実装されているか否かを示す。
【0039】
自動化製品は、テンプレートを作成して、ソフトウェア設定を自動化する。監視製品は、情報システムの状態を監視する。構成管理製品は、ユーザが初期設定を行うことを可能とする。データ保護製品は、情報システムのデータを保護する。エントリポイント製品は、他のソフトウェア製品を統合して、他のソフトウェア製品の入り口となる。エントリポイント製品は、シングルサインオンの設定を可能とする。
【0040】
ソフトウェア操作欄303は、ソフトウェア構成欄302が示すソフトウェア製品の操作についての情報を示す。具体的には、ソフトウェア操作欄303は、特定のソフトウェア操作の実行の有無、ソフトウェア操作実行の成否、及びソフトウェア操作実行に対する情報システムのレスポンスタイムを示す。
【0041】
図2の例において、ソフトウェア操作欄303は、ホスト設定欄312、新規割り当て欄313、データ移行欄314、データ削除欄315、成否欄316及びレスポンスタイム欄317を有する。ホスト設定欄312、新規割り当て欄313、データ移行欄314、データ削除欄315は、それぞれ、対応するソフトウェア操作の実行の有無を示す。
【0042】
ホスト設定欄312は、例えば、シングルサインオンが設定されているか否かを示す。シングルサインオンが設定されている場合、一回の認証処理で全てのソフトウェア製品の操作が可能となる。新規割り当て欄313、データ移行欄314、データ削除欄315は、それぞれ、新規ボリュームの割り当て、ボリュームに格納されているデータの移行、ボリューム内データの削除、の操作それぞれの実行の有無を示す。
【0043】
成否欄316は、新規割り当て欄313、データ移行欄314、データ削除欄315のいずれか一つにおいて実行されたソフトウェア操作の成否を示す。レスポンスタイム欄317は、新規割り当て欄313、データ移行欄314、データ削除欄315のいずれか一つにおいて実行されたソフトウェア操作に対する、情報システムのレスポンスタイムを示す。
【0044】
教師データ欄304は、各レコードが示す状態において、障害が発生したか否かを示す。後述するように、物理構成欄301、ソフトウェア構成欄302及びソフトウェア操作欄303の値は、障害発生推定モデル115の訓練における入力として使用され、教師データ欄304の値は、訓練の教師データとして使用される。
【0045】
情報システムにおける障害は、情報システムの設定エラーにより発生し得る。情報システムにおける障害発生を正確に推定するためには、その原因となる設定エラーを示す項目を参照することが重要である。また、このような項目を参照することで、障害の原因をより正確に推定することが可能となる。
【0046】
例えば、情報システムの新規導入において、装置の物理的な接続において設定エラーが発生し得る。起こり得る設定エラーは、例えば、ケーブル接触不良や結線ミスである。このような設定エラーを検知するための観点は、装置間の疎通の有無や、レスポンスタイムである。
【0047】
また、ソフトウェア操作において、設定エラーが発生し得る。起こり得る設定エラーは、例えば、ソフトウェア製品間連携の事前設定の不備である。このような設定エラーを検知するための観点は、シングルサインオンの設定、実装されているソフトウェア製品種別、ソフトウェア製品バージョンである。
【0048】
運用中の情報システムにおいても、装置の物理的な接続においてエラーが発生し得る。起こえり得る設定エラーは、例えば、追加で機器を導入した際の物理的な接続ミスである。このような設定エラーを検知するための観点は、装置間の疎通の有無や、レスポンスタイムである。
【0049】
また、ソフトウェア操作において、エラーが発生し得る。起こり得る設定エラーは、例えば、製品の連携不備、タスクの入力(設定)ミスである。このような設定エラーを検知するための観点は、実装されているソフトウェア製品種別、ソフトエア操作種別、ソフトウェア操作実行の成否である。
【0050】
構成情報テーブル300の項目は、上述のような観点から設定されている。上述のように、複数のチェック項目を組み合わせることで、ユーザ運用を踏まえた設定エラー有無の判定が可能となる。具体的には、物理構成及びソフトウェア構成の項目を含むことで、複数の装置においてソフトウェアを実行する情報システムの設定エラーを適切に判定することができる。さらに、ソフトウェア操作の項目は、より適切な設定エラーの判定を可能とする。なお、
図2が示す構成情報の項目は一例であり、一部の項目が省略され、他の項目が追加されてよい。
【0051】
図3は、ビット列変換テーブル320の構成例を示す。ビット列変換テーブル320は、構成情報テーブル300が示す欄それぞれの値と、ビット値(0又は1)とを対応付ける。各ビットの値は、各項目において定義されている二つの状態の一方を示す。これにより、情報システムの構成情報をビット列で表すことが可能となる。後述するように、これにより、障害の原因を効率的に推定することが可能となる。
【0052】
図3の例において、ビット列変換テーブル320は、物理構成欄321、ソフトウェア構成欄322、及びソフトウェア操作欄323を含む。これらは、それぞれ、構成情報テーブル300の物理構成欄301、ソフトウェア構成欄302、及びソフトウェア操作欄303に対応する。
【0053】
物理構成欄321は、装置間の「疎通あり」及び「疎通無し」に対して、それぞれ、「0」及び「1」を割り当てる。ソフトウェア構成欄322は、ソフトウェア製品のバージョン組み合わせの規定の組み合わせとの「同一」及び「不同」に対して、それぞれ、「0」及び「1」を割り当てる。ソフトウェア構成欄322は、ソフトウェア製品の「導入済」及び「未導入」に対して、それぞれ、「0」及び「1」を割り当てる。ソフトウェア操作欄323は、操作の「実行」及び「未実行」に対して、それぞれ、「0」及び「1」を割り当てる。
【0054】
図4は、失敗構成ビット列テーブル340の構成例を示す。失敗構成ビット列テーブル340は、過去に障害が発生した情報システムの構成情報を示す。つまり、過去の失敗構成事例の情報を示す。管理システム10は、構成情報テーブル300から、障害が発生したレコードを抽出し、失敗構成ビット列テーブル340に格納する。後述するように、失敗構成ビット列テーブル340は、検査対象の現在の情報システムにおいて障害が検知された場合、それに対してユーザに提示する情報を決定するために参照される。
【0055】
失敗構成ビット列テーブル340のレコードは、構成情報テーブル300のレコードからレスポンスタイム及び教師データが省略され、ビット列が追加された構成を有している。具体的には、失敗構成ビット列テーブル340は、物理構成欄341、ソフトウェア構成欄342、ソフトウェア操作欄343、及びビット列欄344を有する。
【0056】
ソフトウェア構成欄342は、バージョン欄345、自動化製品欄346、監視製品欄347、構成管理製品欄348、データ保護製品欄349、エントリポイント製品欄350、及びAPI製品欄351を含む。ソフトウェア操作欄343は、ホスト設定欄352、新規割り当て欄353、データ移行欄354、データ削除欄355、及び成否欄356を有する。
【0057】
上述のように、失敗構成ビット列テーブル340において、レスポンスタイムは省略されている。レスポンスタイムは1ビットではなく複数ビットで表される数値であるためである。これにより、障害原因をより適切に推定し、適切な対処方法を提示できる。他の例において、レスポンスタイムが閾値を超えるか否かを1ビットで表し、失敗構成ビット列テーブル340に含めてもよい。
【0058】
ビット列欄344は、レコードそれぞれの物理構成欄341、ソフトウェア構成欄342及びソフトウェア操作欄343の項目の内容を表すビット列を格納している。管理システム10は、ビット列変換テーブル320を参照して、各情報システム構成レコードの項目それぞれのビット値を決定し、それらビット値で構成されるビット列をビット列欄344に格納する。
【0059】
図5は、対処方法提示テーブル360の構成例を示す。対処方法提示テーブル360は、失敗構成ビット列テーブル340の各レコードに対する、障害原因及び提示内容対象方法を示す。対処方法提示テーブル360は、原因欄361、提示内容欄362及びビット列欄363を有している。原因欄361は検知(推定)された障害の原因を示し、提示内容欄362は、その原因を除去するためにユーザに提示する情報を示す。ビット列欄363は、失敗構成ビット列テーブル340のビット列欄344内のビット列を示す。
【0060】
管理システム10は、検査対象の現在の情報システムの構成(現構成)のビット列を、失敗構成ビット列テーブル340において検索する。同一ビット列が失敗構成ビット列テーブル340で検出されると、管理システム10は、そのビット列に対応する原因及び対処方法を取得して、ユーザに提示する。なお、障害原因は省略されてもよい。
【0061】
図6は、成功構成ビット列テーブル380の構成例を示す。成功構成ビット列テーブル380は、過去に障害が発生しなかった情報システムの構成情報を示す。つまり、過去の成功構成事例の情報を示す。管理システム10は、構成情報テーブル300から、障害が発生しなかったレコードを抽出し、成功構成ビット列テーブル380に格納する。後述するように、成功構成ビット列テーブル380は、検査対象の現在の情報システムにおいて障害が検知された場合、それに対する対処原因を推定するために参照される。
【0062】
成功構成ビット列テーブル380のレコードは、構成情報テーブル300のレコードからレスポンスタイム及び教師データが省略され、ビット列が追加された構成を有している。具体的には、成功構成ビット列テーブル380は、物理構成欄381、ソフトウェア構成欄382、ソフトウェア操作欄383、及びビット列欄384を有する。
【0063】
ソフトウェア構成欄382は、バージョン欄385、自動化製品欄386、監視製品欄347、構成管理製品欄388、データ保護製品欄389、エントリポイント製品欄390、及びAPI製品欄391を含む。ソフトウェア操作欄383は、ホスト設定欄392、新規割り当て欄393、データ移行欄394、データ削除欄395、及び成否欄396を有する。
【0064】
上述のように、成功構成ビット列テーブル380において、レスポンスタイムは省略されている。レスポンスタイムは1ビットではなく複数ビットで表される数値であるためである。これにより、障害原因をより適切に推定し、適切な対処方法を提示できる。他の例において、レスポンスタイムが閾値を超えるか否かを1ビットで表し、成功構成ビット列テーブル380に含めてもよい。
【0065】
ビット列欄384は、レコードそれぞれの物理構成欄381、ソフトウェア構成欄382及びソフトウェア操作欄383の項目の内容を表すビット列を格納している。管理システム10は、ビット列変換テーブル320を参照して、各情報システム構成レコードの項目それぞれのビット値を決定し、それらビット値で構成されるビット列をビット列欄384に格納する。
【0066】
管理システム10は、障害が検知された現在の情報システムと同一の構成情報が、失敗構成ビット列テーブル340に存在しない場合、成功構成ビット列テーブル380を参照する。管理システム10は、成功構成ビット列テーブル380において、現在の情報システムの構成情報と類似するレコードを抽出する。一例において、最も類似するレコードが選択される。
【0067】
図7は、差異提示テーブル400の構成例を示す。差異提示テーブル400は、成功構成ビット列テーブル380から選択された過去の成功構成との差異に対応する、対処方法を示す。差異提示テーブル400は、物理構成欄401、ソフトウェア構成欄402を有する。ソフトウェア構成欄402は、バージョン欄403及び製品欄404を有する。
【0068】
物理構成欄401は、差異が「疎通有り」又は「疎通無し」である場合に提示する内容を示す。バージョン欄403が、差異が「同一」又は「不同」である場合に提示する内容を示す。製品欄404は、差異がソフトウェア製品の「導入済」又は「未導入」である場合に提示する内容を示す。
【0069】
「疎通有り」、バージョン「同一」又は製品「導入済」の場合、対処方法の提示は不要であり、ユーザに対処方法は提示されない。「疎通無し」、バージョン「不同」又は製品「未導入」の場合、それらに対応する対処方法が提示される。
【0070】
本明細書の一実施形態において、障害検知された現在の情報システムの構成情報と同一の構成情報が失敗構成ビット列テーブル340において見つからない場合に、管理システム10は、最も類似する構成情報を、成功構成ビット列テーブル380から選択する。管理システム10は、現在の情報システムの構成情報のビット列と選択された構成情報のビット列を比較し、現在の情報システムの構成情報のビット列の、選択された構成情報のビット列に対する相違点を検出する。
【0071】
上述のように、現在の情報システムのビット列が「疎通無し」を示し、選択された構成情報のビット列が「疎通有り」を示す場合、物理構成欄401における「疎通無し」の対処方法が選択される。または、現在の情報システムのビット列が、あるソフトウェア製品の「未導入」を示し、選択された構成情報のビット列がその製品の「導入済」を示す場合、製品欄404における「未導入」の対処方法が選択される。複数のビットにおいて相違が存在する場合、例えば、全ての対処方法が選択及び提示されてよい。
【0072】
<管理システムによる処理>
以下において管理システム10による処理例を説明する。管理システム10は、情報システムの設定エラーによる障害発生の有無を推定し、障害発生が推定された場合に、それに対する対処方法をユーザに提示する。これにより、情報システムのユーザは、設定エラーを修復して、設定エラーの存在しない情報システムを構築することができる。
【0073】
まず、障害発生推定モデル115の生成を説明する。モデル115の生成は、既存の訓練済みモデルをさらに訓練することで更新することを含む。
図8は、情報システムの設定エラーを検知する学習モデル115を生成する処理例のフローチャートを示す。管理システム10は、構成情報テーブル300に格納されている訓練データによる訓練によって学習モデル115のパラメータを更新することで、学習モデル115を生成する。
【0074】
図8に示すように、構成情報取得部111は、定期的に問い合わせシステム20の設定履歴情報28から新規情報を取得して(S11)、構成情報テーブル300に格納する(S12)。
【0075】
モデル生成部112は、構成情報テーブル300に格納されている訓練データによって、学習モデル115を訓練する(S13)。例えば、モデル生成部112は、構成情報テーブル300に追加されたデータ量が規定値に達すると、学習モデル115の新たな訓練を実行してもよい。または、新たなデータが追加される毎に、学習モデル115が訓練されてもよい。本明細書の一実施形態において、学習モデル115は以下の数式で表すことができる回帰式である。
【0076】
【0077】
yは、学習モデル115の出力値(目的変数)であり、右辺は学習モデル115による演算である。β0及びβkは訓練により更新されるパラメータ(係数)であり、xkは入力される説明変数であって、情報システムの構成を示すビット列のk番目のビット値(0又は1)である。kは自然数である。モデル生成部112は、構成情報テーブル300の各レコードを、ビット列変換テーブル320を参照して、ビット列に変換する。
【0078】
上述のように、ビット列変換テーブル320は、構成情報レコードの各項目の値に対して、0又は1を定義する。例えば、
図4に示す失敗構成ビット列テーブル340の、一番上のレコードを参照する。物理構成欄341は「疎通無し」を示すので、先頭ビットは1である。バージョン欄345は「同一」を示すので、二番目のビットは0である。
【0079】
全てのソフトウェア製品が導入済みであるので、対応するビットは全て0である。ソフトウェア操作において、ホスト設定欄352及びデータ移行欄354が「実行済」を示すので、対応するビットは0である。新規割り当て欄353及びデータ削除欄355は「未実行」を示すので、対応するビットは1である。最後に、成否欄356は「未完了」を示すので、対応する最後のビットは1である。
【0080】
学習モデル115は、入力されたビット列と、パラメータとの積和Σβkxkを計算し、それにバイアスβ0を加算する。モデル生成部112は、例えば、障害が起きていない成功構成事例の出力値yが小さくなり、障害が発生した失敗構成事例の出力値yが大きくなるように、学習モデル115のパラメータを更新する。
【0081】
モデル生成部112は、さらに、出力値yに対する閾値を決定する。出力値が閾値を超える場合、その情報システムにおいて設定エラーが存在し、障害が発生すると判定される。モデル生成部112は、訓練データの教師データを参照し、学習モデル115を使用した判定結果が最も高い正答率を示すように、出力値yの閾値を決定する。なお、この回帰式は一例であって、他の回帰式が使用されてもよく、学習モデル115が回帰式と異なる構成を有してもよい。
【0082】
次に、管理システム10による、現在の情報システムにおける設定エラー検知処理を説明する。
図9は、設定エラー検知処理例のフローチャートを示す。管理システム10は、ユーザに指定された現在の情報システムの構成情報を学習モデル115に入力することで、設定エラーを検知する。管理システム10は、設定エラーを検知すると、その設定エラーに対しる対処方法を決定し、ユーザに提示する。
【0083】
図9を参照して、構成情報取得部111は、定期的に問い合わせシステム20の設定履歴情報28から新規情報を取得する。(S21)。構成情報取得部111は、ビット列変換テーブル320を参照して、取得した事例それぞれに対してビット列を生成し、事例それぞれに割り当てる。構成情報取得部111は、新規情報における失敗構成事例を失敗構成ビット列テーブル340に格納し、成功構成事例を成功構成ビット列テーブル380に格納する(S22)。
【0084】
構成情報取得部111は、検査対象の現在の情報システムの構成情報を取得する(S23)。構成情報取得部111は、例えば、ユーザ端末25から情報システムの指定を受け付ける。構成情報取得部111は、該当する情報システム内のソフトウェア製品から、情報システムの構成情報を取得する。他の例において、構成情報取得部111は、構成情報を入力するためのGUI画像をユーザ端末25の表示装置において表示してもよい。
【0085】
構成情報取得部111は、検査対象システムの構成情報を取得して、補助記憶装置102に格納する。このとき、構成情報取得部111は、ビット列変換テーブル320を参照して入力された構成情報に対するビット列を生成して、割り当てる。
【0086】
ユーザからの指示を受けて、管理システム10は、指定された情報システムの検査を実行する(S24)。具体的には、設定エラー検知部113は、ユーザに指定された検査対象システムの構成情報のビット列を取得し、訓練済み学習モデル115に入力する。学習モデル115は、入力された構成情報のビット列に応じた値を出力する。設定エラー検知部113は、出力値と閾値とを比較して、対象の情報システムにおける障害発生の有無を推定する。値が閾値を超える場合、障害が発生すると推定される、つまり、障害を引き起こす設定エラーが存在すると判定される。
【0087】
設定エラー検知部113は、検査結果を、検査結果テーブル420に格納する。
図10は、検査結果テーブル420の構成例を示す。検査結果テーブル420は、検査対象の情報システムの構成情報に加えて、学習モデル115の出力値及び判定結果を格納している。
【0088】
具体的には、検査結果テーブル420は、物理構成欄421、ソフトウェア構成欄422、ソフトウェア操作欄423、レスポンスタイム欄424、y値欄437、及び判定欄438を有する。
【0089】
ソフトウェア構成欄422は、バージョン欄425、自動化製品欄426、監視製品欄427、構成管理製品欄428、データ保護製品欄429、エントリポイント製品欄430、及びAPI製品欄431を含む。ソフトウェア操作欄423は、ホスト設定欄432、新規割り当て欄433、データ移行欄434、データ削除欄435、及び成否欄436を有する。
【0090】
物理構成欄421、ソフトウェア構成欄422、ソフトウェア操作欄423は、それぞれ、各項目の値をビット値(0又は1)で示す。レスポンスタイム欄424は、数値(ミリ秒)によりソフトウェア操作に対するレスポンスタイムを示す。y値欄437は、構成情報レコードそれぞれに対する学習モデル115の出力値を示す。判定欄438は、構成情報レコードそれぞれに対する障害発生(設定エラー)の有無の判定結果を示す。
【0091】
図9に戻って、学習モデル115の出力値が閾値以下である場合、設定エラーが存在しないと判定される。設定エラー検知部113は、それを示す情報をユーザ端末25に送信する。一方、設定エラーが検知されると、設定エラー検知部113は、それを示すアラートをユーザ端末25に通知する(S25)。
【0092】
さらに、原因特定部114は、障害を引き起こすと推定され原因を特定し、その対象方法を決定する。原因特定部114は、該当する対処方法をユーザ端末25に出力して、ユーザに提示する(S26)。ユーザは、提示された対処方法に従って情報システムの設定を修正する(S27)。これにより、設定エラーの内正常構成を有する情報システムが得られる。
【0093】
以下において、管理システム10が、設定エラーが検知されたシステム構成において、その原因を特定し、その対処方法を決定及び提示する処理を説明する。原因特定部114は、失敗構成ビット列テーブル340又は成功構成ビット列テーブル380を参照して、エラー原因を特定し、その対処方法を決定する。原因特定部114は、失敗構成ビット列テーブル340からエラー原因を特定できない場合に、成功構成ビット列テーブル380を参照する。
【0094】
まず、失敗構成ビット列テーブル340に基づく原因特定処理を説明する。
図11は、失敗構成ビット列テーブル340を参照して設定エラーの原因を特定する処理例のフローチャートを示す。原因特定部114は、失敗構成ビット列テーブル340において、現在情報システムと同一の構成を有する失敗構成事例を特定する(S31)。
【0095】
具体的には、原因特定部114は、現在の情報システムの構成情報ビット列と同一のビット列を、失敗構成ビット列テーブル340において検索する。同一のビット列は、類似度が最も高いビット列である。同一のビット列が存在しない場合、本フローは終了する。同一ビット列が失敗構成ビット列テーブル340に存在する場合、原因特定部114は次のステップS32に進む。
【0096】
ステップS32において、原因特定部114は、対処方法提示テーブル360から、該当する対処方法を取得して、それをユーザに提示する。具体的には、原因特定部114は、現在情報システムの構成ビット列を、対処方法提示テーブル360において検索し、同一ビット列のレコードを取得する。当該レコードは、設定エラーの原因と対処方法を示している。原因特定部114は、取得してレコードが示す原因及び対処方法の説明を、ユーザ端末25に送信して、表示装置において表示させる。
【0097】
上述のように、過去の失敗構成事例において、現在構成と同一構成の事例を特定し、それに対応付けられた対処方法を提示することで、より適切な対処方法を提示することができる。また、情報システムの構成情報を、ビット列で表すことで、効率的に同一ビット列の失敗構成事例を見つけることができる。なお、本例は、原因と対処方法とを分けていているが、提示される対処方法の内容は限定されない。例えば、本例における対処方法提示テーブル360の原因欄361で示されている情報が、対処方法としてユーザに提示されてもよい。
【0098】
現在構成ビット列が、失敗構成ビット列テーブル340に存在しない場合、原因特定部114は、成功構成ビット列テーブル380及び差異提示テーブル400を参照して、提示する対処方法を決定する。
図12は、成功構成ビット列テーブル380及び差異提示テーブル400を参照して、提示する対処方法を決定する処理例のフローチャートを示す。
【0099】
原因特定部114は、成功構成ビット列テーブル380から、現在情報システムと類似する成功構成事例を取得する(S41)。類似度は、例えば、現在情報システム構成のビット列において、成功構成ビット列と一致するビットの割合(一致率)で表すことができる。原因特定部114は、類似度が最も高い成功構成事例を選択する。他の例において、類似度が閾値を超える成功構成事例が選択されてもよく、最も高い一致率(類似度)を示す複数の成功構成事例が存在する場合、それら全てが選択されてよい。
【0100】
次に、原因特定部114は、取得した成功構成事例のビット列と現構成のビット列との差異部分(ビット)に基づき、差異提示テーブル400から対応する対処方法の情報を選択し、それをユーザに提示する(S42)。具体的には、原因特定部114は、現構成のビット列において、選択した成功構成事例のビット列と、値が異なるビットを特定する。原因特定部114は特定されたビットの項目及びその値が示す対処方法の情報を、差異提示テーブル400から取得する。
【0101】
例えば、相違ビットが物理構成のビットであり、かつ、現構成のビット値が1である場合、物理構成欄401が示す「疎通無し」の対処方法が選択される。相違ビットがソフトウェア構成のいずれかのソフトウェア製品の導入の有無を示すビットであり、かつ、そのビット値が1である場合、製品欄404が示す「未導入」の対処方法が選択される。異なる相違ビットが異なる対処方法を示す場合、例えば、全ての対処方法が選択されてよい。原因特定部114は、取得した対処方法の情報を、ユーザ端末25に送信し、表示装置において表示させる。
【0102】
上述のように、現構成と類似する成功構成事例を特定し、それとの差異に基づき対処方法を決定することで、現構成と一致する失敗構成事例が存在しない場合でも、対処方法を特定及び提示することが可能となる。失敗構成事例を先に参照することで、より適切な対処方法を提示することが可能となる。なお、本明細書の一実施形態において、失敗構成ビット列テーブル340又は成功構成ビット列テーブル380の一方が省略されてもよい。
【0103】
以下においてより具体的な例を説明する。
図13は、現在の情報システムの構成情報450の例と、対処方法提示テーブル360との関係を示す。構成情報450において、物理構成は「疎通有り」、バージョンは「不同」、自動化製品からAPI製品の全製品が「導入済」、ホスト設定は「実行済」、新規割り当ては「未実行」、データ移行は「実行済」、データ削除は「未実行」、成否は「未完了」を示す。ビット列変換テーブル320を参照して、これら項目の値に対応するビット列は、「0100000001011」である。
【0104】
上記ビット列「0100000001011」は、対処方法提示テーブル360の上から2番目のレコードのビット列と一致している。そのため、このレコードが示す対処方法「バージョン互換が無い可能性があります。バージョンを見直してください。」が提示される。
【0105】
図14は、ユーザに検査結果及び対処方法を提示するためのGUI画像の例を示す。GUI画像は、例えば、ユーザ端末25の表示装置に表示される。ユーザは、セクション501において、検査対象の情報システムを指定する。管理システム10は、指定された情報システムに問い合わせを送信して、構成情報を取得する。
【0106】
ユーザが検査実行ボタン502を選択すると、管理システム10は、指定された情報システムの検査を実行する。設定エラーが検知されると、管理システム10は、それを示すアラートをセクション503において表示する。さらに、管理システム10は、上述のように、設定エラーが検知された現構成に対する対処方法を特定して、GUI画像において表示する。
【0107】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0108】
また、上記の各構成・機能・処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード等の記録媒体に置くことができる。
【0109】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0110】
10 管理システム
101 メモリ
102 補助記憶装置
104 演算装置
111 構成情報取得部
112 モデル生成部
113 設定エラー検知部
114 原因特定部
300 構成情報テーブル
320 ビット列変換テーブル
340 失敗構成ビット列テーブル
360 対処方法提示テーブル
380 成功構成ビット列テーブル
400 差異提示テーブル
420 検査結果テーブル
【手続補正書】
【提出日】2022-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報システムを管理する、管理システムであって、
1以上の演算装置と、
1以上の記憶装置と、を含み、
前記1以上の演算装置は、情報システムの現構成から得られる現構成情報を取得し、
前記1以上の記憶装置は、過去構成情報と、対処方法情報と、を格納し、
前記過去構成情報は、情報システムの異なる過去構成事例それぞれから得られる過去構成事例情報を示し、
前記現構成情報及び前記過去構成事例情報は、それぞれ複数の項目で構成され、
前記複数の項目それぞれに対してビットが割り当てられ、
前記複数の項目の各項目に割り当てられるビットの値は、各項目において定義されている二つの状態の一方を示し、
前記対処方法情報は、前記現構成情報のビット列と前記過去構成事例情報のビット列との関係と設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記1以上の演算装置は、
前記過去構成情報から過去構成事例情報を選択し、
前記過去構成事例情報のビット列と前記現構成情報のビット列との関係に応じた対処方法を、前記対処方法情報から選択し、
選択した前記対処方法を提示する、管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記過去構成事例情報は、失敗構成事例の構成から得られる失敗構成事例情報であり、
前記対処方法情報は、前記失敗構成事例情報のビット列と設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記1以上の演算装置は、
前記過去構成情報から、前記現構成情報のビット列と一致するビット列を有する失敗構成事例情報を選択し、
前記現構成情報のビット列と一致するビット列に関連付けられれている対処方法を、前記対処方法情報から選択する、管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記過去構成事例情報は、成功構成事例の構成から得られる成功構成事例情報であり、
前記対処方法情報は、前記現構成情報のビット列と前記成功構成事例情報のビット列との間でビット値が異なるビットと設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記1以上の演算装置は、
前記現構成情報のビット列と前記選択された成功構成事例情報のビット列との間においてビット値が異なるビットを特定し、
前記異なるビットに関連付けられれている対処方法を、前記対処方法情報から選択する、管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の管理システムであって、
前記1以上の演算装置は、前記現構成情報のビット列と類似度が最も高い成功構成事例情報を前記過去構成情報から選択する、管理システム。
【請求項5】
請求項2に記載の管理システムであって、
前記1以上の記憶装置は、第2過去構成情報と、第2対処方法情報と、をさらに格納し、
前記第2過去構成情報は、情報システムの成功構成事例それぞれの構成から得られる成功構成事例情報を示し、
前記第2対処方法情報は、前記現構成情報のビット列と前記成功構成事例情報のビット列との間でビット値が異なるビットと設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記1以上の演算装置は、
前記現構成情報のビット列と一致するビット列を有する失敗構成事例情報が前記過去構成事例情報において検出されない場合、
前記現構成情報のビット列と類似度が最も高い成功構成事例情報を、前記第2過去構成情報から選択し、
前記現構成情報のビット列と前記選択された成功構成事例情報のビット列との間においてビット値が異なるビットを特定し、
前記異なるビットに関連付けられれている対処方法を、前記第2対処方法情報から選択する、管理システム。
【請求項6】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記1以上の記憶装置は、情報システムの構成に基づく入力データに対して設定エラーの有無を推定するモデルを、格納し、
前記1以上の演算装置は、
前記モデルに前記現構成情報のビット列を含む入力データを入力することで、前記現構成における設定エラーの有無を判定し、
前記設定エラーがあると判定した場合に、前記過去構成情報から過去構成事例情報を選択する、管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記複数の項目は、
1以上のソフトウェア製品それぞれの導入の有無を示す項目と、
前記1以上のソフトウェア製品の一つのソフトウェア製品の操作実行の成否を示す項目と、を含む、管理システム。
【請求項8】
管理システムにより実行される、情報システムの管理方法であって、
前記管理システムは、過去構成情報と、対処方法情報と、情報システムの現構成から得られる現構成情報と、を保持し、
前記過去構成情報は、情報システムの異なる過去構成事例それぞれから得られる過去構成事例情報を示し、
前記現構成情報及び前記過去構成事例情報は、それぞれ複数の項目で構成され、
前記複数の項目それぞれに対してビットが割り当てられ、
前記複数の項目の各項目に割り当てられるビットの値は、各項目において定義されている二つの状態の一方を示し、
前記対処方法情報は、前記現構成情報のビット列と前記過去構成事例情報のビット列との関係と設定エラーに対する対処方法とを関連付け、
前記管理方法は、
前記管理システムが、前記過去構成情報から過去構成事例情報を選択し、
前記管理システムが、前記過去構成事例情報のビット列と前記現構成情報のビット列との関係に応じた対処方法を、前記対処方法情報から選択し、
前記管理システムが、選択した前記対処方法を提示する、ことを含む管理方法。