IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図1
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図2
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図3
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図4
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図5
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図6
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図7
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図8
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図9
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図10
  • 特開-移動式トイレ及び収納式トイレ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020289
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】移動式トイレ及び収納式トイレ
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/00 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
E03D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125565
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】亀田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039CC00
(57)【要約】
【課題】便座への着座時の安定性を確保しつつ、汚れの付着を回避できるようにする。
【解決手段】移動式トイレ11は、便座19を備えた便器装置12と、便器装置12を載置した状態で支持するベースプレート21と、ベースプレート21を床面66から浮かせた状態で支持する支持部材としての前側キャスター31とを備え、前側キャスター31の少なくとも一部が、平面視において便座19の外周縁19Eで囲まれた範囲内に配置されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座を備えた便器装置と、
前記便器装置を載置した状態で支持するベースプレートと、
前記ベースプレートを床面から浮かせた状態で支持する支持部材とを備え、
前記支持部材の少なくとも一部が、平面視において前記便座の外周縁で囲まれた範囲内に配置されている移動式トイレ。
【請求項2】
前記便器装置は、便鉢部が形成された便器本体を有し、
前記支持部材の少なくとも一部が、平面視において前記便器本体の下端の外周縁で囲まれた範囲内に配置されている請求項1記載の移動式トイレ。
【請求項3】
前記支持部材の高さ方向における一部が、前記便器装置内に収容されている請求項1から請求項2のいずれか1項に記載の移動式トイレ。
【請求項4】
前記支持部材は、第1支持部材であり、
前記ベースプレートを前記床面から浮かせた状態で支持する一対の第2支持部材を備え、
前記一対の第2支持部材が、前記第1支持部材よりも後方で、かつ前記第1支持部材よりも右方の位置と前記第1支持部材よりも左方の位置とに分かれて配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移動式トイレ。
【請求項5】
前記一対の第2支持部材が、前記便座の開口における前後方向中央位置よりも後方に配置されている請求項4に記載の移動式トイレ。
【請求項6】
前記ベースプレートのうち前記便座の開口の後端よりも前方の部位の最大幅寸法が、前記ベースプレートのうち前記便座の開口の後端よりも後方の部位の最大幅寸法よりも小さい請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の移動式トイレ。
【請求項7】
前記ベースプレートのうち前記便座の開口の後端よりも前方の部位が、平面視において前記便座の外周縁の範囲内に配置されている請求項6に記載の移動式トイレ。
【請求項8】
前記ベースプレートに設けられ、水平方向への押し引き操作が可能な移動用操作部材を備え、
前記移動用操作部材は、前記ベースプレートから上方へ延出した支柱と、前記支柱に取り付けられたグリップとを有し、
前記支柱が、前記便座の開口の後端よりも後方に配置されている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の移動式トイレ。
【請求項9】
前記ベースプレートの左右両側縁に形成され、前記便座の開口の後端よりも後方に配置された一対の補強部を備え、
前記ベースプレートのうち前記一対の補強部で挟まれた領域に、前記便器装置が固定されている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の移動式トイレ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載された前記移動式トイレと、
キャビネットと、
前記移動式トイレを、前記キャビネット内に収納された収納位置と、前記便器装置を前記キャビネット外に配置する使用位置との間で回転移動し得るように支持する回転軸とを備え、
前記回転軸が前記キャビネット内に収納されている収納式トイレ。
【請求項11】
前記移動式トイレを前記使用位置に保持するロック装置を備えており、
前記ロック装置が前記キャビネット内に収納されている請求項10に記載の収納式トイレ。
【請求項12】
前記キャビネットは、前記移動式トイレが前記収納位置と前記使用位置との間で移動する過程で通過する連通口を有し、
前記ロック装置は、ロック操作とロック解除操作を行うためのロック用操作部を備えており、
前記ロック用操作部は、前記キャビネットの連通口における上下方向中央高さよりも上方に配置されている請求項11に記載の収納式トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動式トイレ及び収納式トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、台車板に便器を載置した移動式トイレが開示されている。この移動式トイレは、台車板に取り付けた前後一対ずつのキャスターによって、使用者の近く等、任意の位置へ移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-43091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものでは、台車板が便器の前端部から前方及び左右両側方へ張り出しているため、台車板の張出し部分に小用時の汚れが付着し易い。この対策としては、台車板の前端を便器前端よりも後方の位置まで後退させることが考えられる。この場合、前側のキャスターが便座中央位置よりも後方に配置されることになるため、使用者が便座に着座したときに移動式トイレの姿勢が不安定になる。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便座への着座時の安定性を確保しつつ、汚れの付着を回避できるようにすることを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の移動式トイレは、便座を備えた便器装置と、前記便器装置を載置した状態で支持するベースプレートと、前記ベースプレートを床面から浮かせた状態で支持する支持部材とを備え、前記支持部材の少なくとも一部が、平面視において前記便座の外周縁で囲まれた範囲内に配置されている。本開示における「載置」は、単に上面に載せるという意味である。本開示における「支持する」は、位置ずれしない状態に支えるという意味であり、浮き上がらないように固定する形態と、浮き上がらないように固定しない形態の両形態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1において移動式トイレが使用位置にある状態の平面図
図2】移動式トイレが使用位置ある状態の側面図
図3】移動式トイレが収納位置にある状態の平面図
図4】移動式トイレが収納位置にある状態の正面図
図5図1の部分拡大平面図
図6】移動式トイレが使用位置にある状態の側面図
図7】移動式トイレの部分拡大側断面図
図8】移動式トイレが使用位置にある状態の正面図
図9】使用位置にある状態の台車の平面図
図10】収納位置にある状態の台車の側面図
図11】使用位置にある状態の台車の正面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本開示を具体化した実施形態1を図1図11を参照して説明する。本開示の収納式トイレ10は、図1~4に示すように、移動式トイレ11とキャビネット50とを備えている。移動式トイレ11は、便器装置12と台車20とを備えて構成されている。
【0009】
以下の説明において、移動式トイレ11の前後方向については、便器装置12の便座19に通常通りに着座した使用者の正面側(図1~7,9,10におけるX軸の正方向側)を前側、使用者の背中側を後側と定義する。移動式トイレ11の上下の方向については、図2,4,6~8,10,11におけるZ軸の正方向を上側と定義する。移動式トイレ11の左右の方向については、便座19に着座した使用者の身体の向きを基準とする。図1,3,5,8,9,11におけるY軸の正方向を、左側と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。
【0010】
<便器装置12>
図5~8に示すように、便器装置12は、便器本体13と、便器本体13の上面に載置される便座19とを有する。便器装置12を上から見たときの平面視形状は、略砲弾形である。便器装置12の前端部は略半円弧形をなしている。便器装置12の前後方向中央部と後端部は、略長方形をなしている。便器装置12の平面視形状は、便座19と機器収容部18とによって構成されている。便器装置12の前後寸法は、便器装置12の幅寸法よりも長い。幅寸法は、左右方向の寸法である。
【0011】
図7に示すように、便器本体13は、便器本体13の外周面を構成する外壁部14と、外壁部14の内部に配置された便鉢部15とを有している。便器本体13の内部には、外壁部14によって包囲され、便鉢部15よりも下方に確保された収容室16が形成されている。収容室16は、便器本体13の下面に開放されている。図6,9に示すように、便器本体13の後端部外面には、左右一対の固定部17が突出形成されている。固定部17は、便器本体13の後面から後方へ突出した底面部と、底面部から上方へ突出した突部とを有する形状をなす。
【0012】
図9に示すように、便器本体13の下端の外周縁13Eの形状は、便器装置12の平面視形状と同様、略砲弾形をなしている。図8に示すように、便器本体13を前方から見たときの正面視形状は、幅寸法が上方に向かって次第に大きくなるような形状である。便器本体13の幅寸法は、便器本体13の上端において最大であり、便器本体13の下端において最小である。
【0013】
図6に示すように、便器本体13を右方から見たときの側面視形状は、前後寸法が上方に向かって次第に大きくなるような形状である。便器本体13の前後寸法は、便器本体13の上端において最大であり、便器本体13の下端において最小である。側面視において、便器本体13の上下方向の前端縁は、前方に向かって傾くようにオーバーハング状に傾いている。便器本体13の前端縁の上端は、便器本体13の前端縁の下端よりも前方に位置している。
【0014】
便器本体13の上面後端部には、便器装置12の使用感を向上させるための機能機器(図示省略)を収容する機器収容部18が取り付けられている。機能機器としては、人体の臀部を洗浄する局部洗浄装置、便器洗浄装置、擬音装置、便座開閉装置、便座暖房装置、温風装置、及び消臭装置等がある。
【0015】
便座19は、便器本体13の上面のうち、機器収容部18よりも前方の領域を上から覆うように配置されている。便座19の平面視形状は、砲弾形をなし、左右対称な形状である。便座19には、便座19の上面と下面とを連通させる開口19Hが形成されている。開口19Hは左右対称な形状である。図6に示すように、開口19Hの前後方向中央位置19Cは、便器本体13の下端の前端13Fよりも後方に位置する。使用者が便座19に着座したときに、使用者の重心は、平面視において、開口19Hの前後方向中央位置19Cと同じ位置と、前後方向中央位置19Cに近い位置との何れかに配置される。
【0016】
<台車20>
図5,9~11に示すように、台車20は、1つのベースプレート21と、第1~第3支持部材31,35,38と、1つの移動用操作部材39と、1つの軸受部42とを備えている。台車20は、便器装置12と後述する排水装置46を支持する部材である。台車20に、便器装置12と排水装置46を取り付けることによって移動式トイレ11が構成される。移動式トイレ11の前後寸法は、移動式トイレ11の左右寸法よりも大きく設定されている。移動式トイレ11の平面視形状は、軸受部42、移動用操作部材39、ロック装置61等を除き、全体として左右対称である。
【0017】
ベースプレート21は、金属製の板材からなり、左右対称な平面視形状を有する。ベースプレート21は、載置部22と、設置部25と、左右一対の補強部26とを有する。載置部22は、水平な平板状をなす。図9に示すように、載置部22の平面視形状は、便器装置12の平面視形状と同様、略砲弾形である。載置部22は、略長方形の後側板状部24と、後側板状部24の前端から前方へ突出した略半楕円形の前側板状部23とから構成されている。前側板状部23と後側板状部24の前後方向における境界は、後述する補強部26の前端と同じ位置である。前側板状部23と後側板状部24を併せた載置部22の全体が、略砲弾形をなす。図8に示すように、後側板状部24の幅寸法W1は、便器装置12の最大幅寸法W2よりも小さく、便器本体13の下端の最大幅寸法W3よりも大きい。図9に示すように、前側板状部23の最大幅寸法W4は後側板状部24の幅寸法W1よりも小さい。
【0018】
図10に示すように、設置部25は、水平な平板状をなす。設置部25は、後側板状部24の後端縁部から後方へ水平に延出している。設置部25の前端縁部と後側板状部24の後端縁部は段差をなして連なっている。設置部25は後側板状部24に対して僅かに低い高さに設定されている。設置部25は、前後寸法に比べて幅寸法の大きい略長方形をなす。設置部25の幅寸法は、載置部22の幅寸法よりも大きい。
【0019】
図8~11に示すように、一対の補強部26は、左右一対の側板部27と、左右一対の上板部28と、左右一対の後板部29とを有する。一対の側板部27は、後側板状部24の左右両側縁から上方へ直角に立ち上がり、前後方向に細長く壁状に延びている。側板部27の前後方向の形成領域は、後側板状部24の前端から後側板状部24の後端に至る範囲である。一対の上板部28は、側板部27の上端縁から幅方向外方へ延出し、載置部22及び設置部25よりも高い位置に配置されている。一対の上板部28は、前後方向に細長く、水平な平板状をなす。上板部28の前後方向の形成領域は、後側板状部24及び側板部27と同じ範囲である。一対の後板部29は、設置部25の前端縁における左右両端縁から上方へ立ち上がった平板状の部位である。後板部29は、側板部27の後端縁と上板部28の後端縁の両方に対し、直角をなして繋がっている。後板部29は、側板部27と上板部28の剛性を高める。ベースプレート21のうち後側板状部24と一対の補強部26を併せた領域は、補強領域30を構成する。
【0020】
図9~11に示すように、第1支持部材は、ベースプレート21の前側板状部23に取り付けた1つの前側キャスター31によって構成されている。図9,10に示すように、前側板状部23の左右方向中央部には、前側板状部23を上下に貫通した平面視方形の切欠部32が形成されている。前側板状部23の上面には、ハット型断面の金属板材からなるブラケット33が、切欠部32を上から覆うように固定されている。ブラケット33は、載置部22よりも高い位置に配置された水平な支持板部34を有する。支持板部34の下面には、前側キャスター31が鉛直軸31A回りに自在に回転し得るように固定されている。前側キャスター31は切欠部32を貫通しており、前側キャスター31のうち上側の大部分の部位は、前側板状部23よりも上方に配置されている。前側キャスター31の下端部は、載置部22の下面から僅かに下方へ突出し、床面66上を転動し得るようになっている。前側キャスター31の鉛直軸31Aは、ベースプレート21の左右方向中央位置に配置されている。
【0021】
第2支持部材は、左右対称な一対の支持脚35によって構成されている。図9~11に示すように、一対の支持脚35は、左右両補強部26の前端部に取り付けられている。支持脚35は、前側キャスター31よりも僅かに後方の位置に配置されている。一対の支持脚35は、左右方向において、前側キャスター31から左方へ離隔した位置と、前側キャスター31から右方へ離隔した位置とに分かれて配置されている。支持脚35は、上下方向に細長い昇降脚36と、昇降脚36を昇降させるための昇降用操作部37とを有する。昇降用操作部37を斜め上向きとなるように操作して昇降脚36を上昇位置に保持した状態では、昇降脚36の下端が床面66から浮いた位置にある。
【0022】
図2,5,6,8~11に示すように、昇降用操作部37を斜め下向きとなるように操作して昇降脚36を下降位置に保持した態では、昇降脚36の下端が床面66に当接して、ベースプレート21のうち支持脚35が固定されている部位が上昇する。前側キャスター31と支持脚35は、前後方向において概ね同じ位置に配置されているので、昇降脚36を下降位置に保持すると、前側キャスター31が床面66から少し浮き上がる。支持脚35の下端面は、ゴム等の滑り止め機能を有する部材で構成され、床面66に対して面当たり状態で載置されている。支持脚35は床面66上で滑り難くなっている。昇降用操作部37の高さは、便座19よりも低い位置に設定されている。
【0023】
第3支持部材は、左右対称な一対の後側キャスター38によって構成されている。一対の後側キャスター38は、左右両補強部26の後端部に取り付けられている。一対の後側キャスター38は、前側キャスター31及び支持脚35よりも後方の位置に配置されている。一対の後側キャスター38は、左右方向において、前側キャスター31から左方へ離隔した位置と、前側キャスター31から右方へ離隔した位置とに分かれて配置されている。後側キャスター38は、載置部22よりも高い位置に配置された水平な上板部28の下面に、鉛直軸38A回りに自在に回転し得るように固定されている。後側キャスター38の下端部は、載置部22の下面から僅かに下方へ突出し、床面66上を転動し得るようになっている。
【0024】
支持脚35は、前後方向において、前側キャスター31と後側キャスター38との間に配置されている。支持脚35は、前後方向において、後側キャスター38よりも前側キャスター31に近い位置に配置されている。後側キャスター38と支持脚35は前後方向に大きく離隔している。支持脚35の昇降脚36を下降位置に保持し、ベースプレート21のうち支持脚35が固定されている部位を僅かに上昇させた状態でも、ベースプレート21のうち後側キャスター38が取り付けられている部位は上昇せず、一対の後側キャスター38は床面66に載置された状態に保持される。
【0025】
図5,6,9,10に示すように、移動用操作部材39は、ベースプレート21に取り付けられている。移動用操作部材39は、支柱40とグリップ41とを有する。支柱40は、上下方向に細長い形状であり、支柱40の下端部が右側の補強部26の前端部に固定されている。図5に示すように、支柱40とグリップ41は、便座19の開口19Hの後端19Rよりも後方に配置されている。図6に示すように、グリップ41は、支柱40の上端部から後方へ水平に突出している。支柱40とグリップ41の高さは、便器装置12の最上端よりも少し低い位置に設定されている。グリップ41の高さは、便座19と同じ高さに設定されている。
【0026】
軸受部42は、軸線を上下方向に向けた筒状をなしている。図5,6,9,10に示すように、軸受部42は、右側の上板部28の後端部に取り付けられている。軸受部42の取付け位置は、上板部28の後端部である。前後方向において、軸受部42は、ベースプレート21の後端部、即ち台車20の前後方向中央部よりも後方であり、且つ後側キャスター38よりも後方の位置に配置されている。左右方向において、軸受部42は、載置部22の右側縁よりも更に右方の位置に配置されている。後側板状部24には、後述するロック装置61と嵌合するロック孔43が形成されている。図3に示すように、ロック孔43は、軸受部42の斜め左前方の位置に配置されている。図9に示すように、載置部22には、左右一対の取付孔44が形成されている。一対の取付孔44は、左右方向において一対の補強部26の近傍位置に配置されている。
【0027】
ベースプレート21には便器装置12が取り付けられている。便器装置12を取り付けた状態では、便器本体13が、載置部22のうち前側板状部23のほぼ全領域と、後側板状部24の前半領域とに載置される。便器本体13の後端部の固定部17を、ベースプレート21の取付孔44に位置合わせし、固定部17に貫通したボルト45を取付孔44に貫通させる。ベースプレート21の下方において、ボルト45にナット(図示省略)を締め付けることによって、便器装置12がベースプレート21に固定される。固定部17及び取付孔44は、一対の補強部26の後端部の近傍位置に配置されている。図7に示すように、ベースプレート21の上面から上方へ突出したブラケット33と前側キャスター31は、便器本体13の収容室16内に収容される。
【0028】
図9に示すように、便器本体13の下端の外周縁13Eのうち曲線で構成されている前端側領域と、前側板状部23の外周縁23Eは相似形の関係にある。便器本体13の下端の外周縁13Eは前側板状部23の外周縁23Eよりも一回り小さい。便器本体13の下端の外周縁13Eは、前側板状部23の外周縁23Eに対し、平面視において一定の間隔を空けて内側へオフセットされている。便器本体13は陶器製であるため、便器本体13の下端の外周縁13Eの寸法公差が比較的大きい。オフセットの設定によって、便器本体13の全領域を前側板状部23の上面の範囲内に確実に配置することができる。便器本体13の寸法のバラツキによっては、便器本体13の下端の外周縁13Eと前側板状部23の外周縁23Eとの径方向のオフセット量が、周方向において不均一になり得る。
【0029】
図5に示すように、便座19の開口19Hの前後方向中央位置19Cは、ベースプレート21の前端21Fよりも後方に位置する。平面視において、前側キャスター31の鉛直軸31Aは、便座19の開口19Hの範囲内に位置し、開口19Hの前後方向中央位置19Cよりも後方に配置されている。平面視において、一対の支持脚35は、便器装置12を左右両側から挟むように配置されている。一対の支持脚35は、前後方向において便座19の開口19Hの後端19Rと同じ位置か、開口19Hの後端19Rよりも後方の位置に配置されている。一対の後側キャスター38の鉛直軸38Aは、便器装置12の後端よりも後方の位置に配置されている。支持脚35は、前後方向において、前側キャスター31の鉛直軸31Aと後側キャスター38の鉛直軸38Aとの間に配置されている。支持脚35は、前後方向において、後側キャスター38の鉛直軸38Aよりも前側キャスター31の鉛直軸31Aに近い位置に配置されている。
【0030】
図6に示すように、ベースプレート21には、排水装置46が取り付けられている。排水装置46は、便器装置12の排水を行う機能を有する装置であり、設置部25に載置された状態でベースプレート21に固定されている。排水装置46は便器装置12に対し後方へ離隔して配置されている。排水装置46の前面と便器装置12の後面との間には、便器装置12の排水を行うための排水管47が配索されている。前後方向において、排水装置46は、後側キャスター38及び軸受部42よりも後方に配置される。便器装置12への給水は、排水装置46とは別に、図示しない給水装置を用いて行われる。給水装置は、建物に配管された上水設備でもよく、可搬式の給水タンクでもよい。台車20に便器装置12と排水装置46を取り付けることによって、移動式トイレ11が構成される。
【0031】
<キャビネット50>
キャビネット50は、医療施設の病室、介護施設や一般住宅の居室等に設置されるものである。図1~3に示すように、キャビネット50は、室内の壁面に沿うように配置されている。図1,3,4に示すように、キャビネット50の正面に向かって左側の端部には、洗面ボウル51と水栓金具52が設けられている。キャビネット50内には収納スペース53が設けられている。収納スペース53は、移動式トイレ11を使用しないときに移動式トイレ11の全体を格納するためのスペースである。キャビネット50内のうち収納スペース53内において移動式トイレ11を格納する位置を、収納位置と定義する。
【0032】
図2,4に示すように、キャビネット50を構成する正面板54には、キャビネット50の外部と内部(収納スペース53)とを連通させる連通口55が形成されている。連通口55の正面視形状は、幅寸法が高さ寸法よりも大きい長方形である。連通口55の開口領域における下端部は、床面66に臨むように開放されている。図4に示すように、連通口55の高さ寸法、即ち床面66から、連通口55の上端縁までの開口寸法Hは、移動式トイレ11の高さ寸法よりも少し大きい寸法に設定されている。換言すると、連通口55の高さ寸法Hは、移動式トイレ11が連通口55を通過するために必要最小の寸法に設定されている。連通口55は、折戸からなる開閉部材56によって開閉できるようになっている。連通口55は、常に開放された状態としてもよい。開閉部材56には、ペーパーホルダ57と取っ手58が取り付けられている。正面板54のうち連通口55よりも上方の位置には、不使用時に上方へ跳ね上げることが可能な一対の手摺り59が設けられている。
【0033】
図1~4に示すように、収納スペース53の内部には、軸線を上下方向に向けた回転軸60が設置されている。回転軸60には、移動式トイレ11の軸受部42が相対回転可能に嵌合されている。図5,6に示すように、回転軸60には、リング状のストッパ67が固定されている。ストッパ67は、軸受部42の上面に対して当接する位置と、軸受部42の上面に対して近接して対向する位置のいずれかの位置に配置されている。収納スペース53の奥行き方向における回転軸60の設置位置は、連通口55に近い位置である。収納スペース53の幅方向における回転軸60の設置位置は、連通口55の開口領域のうちキャビネット50に向かって左側の端部に近い位置である。移動式トイレ11における回転軸60の位置は、台車20の右側縁部のうちの後端に近い位置である。回転軸60は、便器装置12の右端よりも右左方へ離隔した位置に配置され、便器装置12の後端よりも後方へ離隔した位置に配置されている。
【0034】
図1~4に示すように、収納スペース53内には、ロック装置61が設置されている。図6,10,11に示すように、ロック装置61は、ガイド部材62と、ロックピン63と、ロック用操作部64とを有する。ガイド部材62は、上下方向に細長い柱状をなす。ロックピン63は、上下方向に細長い形状であり、ガイド部材62によって昇降可能にガイドされている。ロック用操作部64は、ガイド部材62の上端部に配置され、ロックピン63をロック解除位置と、ロック解除位置よりも下方のロック位置との間で昇降させるための操作部材である。
【0035】
図1~3に示すように、収納スペース53の奥行き方向において、ロック装置61は、回転軸60と連通口55との間に配置されている。図1,3,4に示すように、収納スペース53の幅方向において、ロック装置61は、回転軸60と同様、連通口55の左端部に近い位置に配置されている。図4に示すように、ロック用操作部64は、連通口55の高さ方向中央位置55Cよりも上方の位置に配置されている。
【0036】
<実施形態1の作用及び効果>
移動式トイレ11は、回転軸60を中心として90°の角度範囲で水平に回転することによって、図3,4に示す収納位置と図1,2に示す使用位置との間で移動する。移動式トイレ11が収納位置にある状態では、移動式トイレ11の全体がキャビネット50の収納スペース53内に収容される。移動式トイレ11の前後の向きは、キャビネット50の正面板54と平行な向きである。回転軸60とロック装置61は、キャビネット50の内部に配置されている。開閉部材56によって連通口55を閉じると、移動式トイレ11だけでなく、回転軸60とロック装置61も開閉部材56によって覆い隠される。移動式トイレ11を使用しないときには、キャビネット50の美観が良好に保たれる。
【0037】
移動式トイレ11を使用するときには、移動式トイレ11が収納位置にある状態で、支持脚35の昇降脚36を上昇位置に保持しておく。次に、移動用操作部材39のグリップ41を掴んでキャビネット50の外方に向けて引っ張ることによって、収納位置の移動式トイレ11を使用位置へ移動させる。このとき、前側キャスター31と一対の後側キャスター38を床面66上で転動させながら、移動式トイレ11を、平面視において回転軸60を中心として時計回り方向へ90°回転させる。
【0038】
前側キャスター31と一対の後側キャスター38を頂点とする三角形の領域を、非使用時の支持基底面と定義する。移動式トイレ11の重心は、平面視において非使用時の支持基底面の範囲内に位置するので、移動式トイレ11は移動中に傾く虞はない。移動式トイレ11が収納位置や使用位置で停止している状態でも、移動式トイレ11が傾く虞はない。
【0039】
移動式トイレ11を収納位置と使用位置との間で移動させる過程では、便器装置12が連通口55を通過する。移動式トイレ11が使用位置へ移動すると、便器装置12の全体がキャビネット50の外部に配置される。台車20の後端部と排水装置46は、使用位置と収納位置のいずれにおいても、収納スペース53内に収容された状態に保たれる。便器装置12の前後の向きは、キャビネット50の正面板54に対して直角の方向を向く。便器装置12の左右両側には、使用者を手助けする介助者が立ったり動いたりするためのスペースが確保される。
【0040】
移動式トイレ11を使用位置へ移動させた後は、ロック装置61のロック操作部64を操作してロックピン63を台車20のロック孔43に差し込む。ロックピン63とロック孔43の嵌合によって、移動式トイレ11が使用位置に固定される。ロック装置61の操作と前後して、左右両支持脚35の昇降用操作部37を操作して昇降脚36を下降させる。この操作によって、ベースプレート21の前端側部分が左右一対の昇降脚36によって支持される。ベースプレート21は、左右一対の昇降脚36と一対の後側キャスター38とを併せた4カ所において支えられる。以上より、便器装置12が使用可能な状態になる。
【0041】
便座19に使用者が着座すると、使用者の重心が便座19の開口19Hの範囲内に位置する。移動式トイレ11自体の重心は、便座19の開口19Hの後端19Rよりも後方に位置する。左右一対の支持脚35と左右一対の後側キャスター38を頂点とする四角形の領域を、使用時の支持基底面と定義する。使用者が便座19に着座したときの移動式トイレ11と使用者の重心は、平面視において使用時の支持基底面の範囲内に位置するので、移動式トイレ11が傾くことはない。使用者が便座19の前端部側に着座した場合には、移動式トイレ11と使用者の重心が、平面視において使用時の支持基底面の範囲から前方へ外れる可能性がある。このとき、軸受部42が回転軸60のストッパ67に対して下から当接するので、移動式トイレ11の後端側が床面66から浮き上がることはない。
【0042】
図1,5に示すように、移動式トイレ11は、便器装置12に対して左右外側方へ張り出すように配置された一対の張出部65を有する。張出部65は、補強部26と、左右一対の支持脚35と、左右一対の後側キャスター38と、移動用操作部材39とを含む。一対の張出部65は、便座19の開口19Hの前後方向中央位置19Cよりも後方に配置されている。使用者が、便座19に着座するとき、便座19に着座している最中、及び便座19から立ち上がるときに、使用者の脚が張出部65に当たることはない。ベースプレート21のうち張出部65よりも前方の領域である前側板状部23は、平面視において便器装置12の外周縁12Eよりも内側の領域のみに配置されている。使用者の足が前側板状部23に当たることはない。
【0043】
前側キャスター31は、ベースプレート21のうち便器装置12が載置されている載置部22よりも高い位置に配置された支持板部34に取り付けられている。後側キャスター38も、載置部22よりも高い位置に配置された上板部28に取り付けられている。載置部22及び便器装置12の高さが低く抑えられ、使用者が便座19に着座したときに、足裏を床面66に安定して付けることができ、着座時の使用感が良好である。
【0044】
便器装置12の使用後に使用者が便座19から離座した後は、移動式トイレ11を収納位置へ移動させる。このとき、支持脚35の昇降脚36を上昇させるとともに、ロック装置61のロックピン63を上昇させてロック孔43から外す。この後、移動用操作部材39のグリップ41を掴んで、移動式トイレ11を収納位置まで押し動かせばよい。
【0045】
本実施形態1の移動式トイレ11は、便座19を備えた便器装置12と、便器装置12を載置した状態で支持するベースプレート21と、ベースプレート21を床面66から浮かせた状態で支持する前側キャスター31とを備えている。便器装置12は、便鉢部15が形成された便器本体13を有する。
【0046】
前側キャスター31の少なくとも一部は、平面視において便座19の外周縁19Eで囲まれた範囲内に配置され、平面視において便器本体13の下端の外周縁13Eで囲まれた範囲内に配置されている。使用者が便座19に着座したときに、使用者の体重を前側キャスター31が真下から支えるので、移動式トイレ11の姿勢は安定した状態に保たれる。便座19に着座した使用者の体重を支えるために、ベースプレート21を便器装置12の前端部から前方や左右両側方へ張り出させる必要がない。便器装置12の前方に立って小用を足したときに、ベースプレート21が尿によって汚れることを回避できる。
【0047】
移動式トイレ11は、ベースプレート21を床面66から浮かせた状態で支持する一対の支持脚35を備えている。一対の支持脚35は、前側キャスター31よりも後方で、かつ前側キャスター31よりも右方の位置と前側キャスター31よりも左方の位置とに分かれて配置されている。前側キャスター31と一対の支持脚35とによって、移動式トイレ11の姿勢を更に安定させることができる。
【0048】
一対の支持脚35は、便座19の開口19Hにおける前後方向中央位置19Cよりも後方に配置されている。支持脚35よりも前方の領域においては、支持脚35を配置するための手段として、便器装置12の左右両側方にベースプレート21を存在させる必要がない。よって、便座19に着座した使用者の足がベースプレート21に当たることを回避できる。
【0049】
特開平10-42991号公報に記載された移動式便器は、台車板が便器の前端部から前方及び左右両側方へ張り出しているため、台車板の張出し部分に小用時の尿汚れが付着し易い。これに対し、本開示の移動式トイレ11の台車20は、ベースプレート21に尿汚れが付着し難くなっている。台車20は、便器装置12を載置した状態で支持するベースプレート21を有する。便器装置12は便座19を有している。ベースプレート21は、前側板状部23と後側板状部24とを有する。前側板状部23は、ベースプレート21のうち便座19の開口19Hの後端19Rよりも前方の領域を構成している。後側板状部24は、ベースプレート21のうち便座19の開口19Hの後端19Rよりも後方の領域を構成している。
【0050】
ベースプレート21の補強領域30は、ベースプレート21のうち便座19の開口19Hの後端19Rよりも後方の領域である。前側板状部23の最大幅寸法W4を、補強領域30の最大幅寸法W5よりも小さく設定した。この構成によれば、便器装置12の前方に立って小用を足したときに、ベースプレート21に尿汚れが付着し難い。便座19に着座した使用者の足がベースプレート21に当たることを回避できる。ベースプレート21の前側板状部23は、平面視において便座19の外周縁19Eの範囲内に配置されているので、便器装置12の前方に立って小用を足したときに、ベースプレート21に尿汚れが付着し難い。便座19に着座した使用者の足がベースプレート21に当たることを、確実に回避できる。
【0051】
前側キャスター31の高さ方向における一部、即ち前側キャスター31における上端側領域は、便器本体13の収容室16内に収容されている。前側キャスター31がベースプレート21の下面に取り付けられ、前側キャスター31の全体がベースプレート21の下面よりも下方に配置されている場合に比べると、本実施形態1の移動式トイレ11は、床面66からの便器装置12の高さを低く抑えることができる。
【0052】
特開平10-42991号公報に記載された移動式便器は、手すりを有しており、この手すりを把持することによって、移動式便器を移動させることができる。しかし、この手すりは、便座19を左右から挟むように配置されているため、使用者が便座に着座したときに、使用者の衣服が手すりに引っ掛かる虞がある。これに対し、本実施形態1の移動式トイレ11は、便座19に着座した使用者の衣服が引っ掛かり難い移動用操作部材39を備えている。移動式トイレ11は、便器装置12を載置するベースプレート21を有し、ベースプレート21には、水平方向への押し引き操作が可能な移動用操作部材39が設けられている。
【0053】
移動用操作部材39は、ベースプレート21から上方へ延出した支柱40と、前記支柱40に取り付けられたグリップ41とを有する。支柱40は、便座19の開口19Hの後端19Rよりも後方に配置されている。グリップ41も、支柱40と同様、便座19の開口19Hの後端19Rよりも後方に配置されている。使用者が便座19に着座するときや、使用者が便座19から離座するときに、使用者の身体が支柱40やグリップ41に触れたり、使用者の衣服が支柱40やグリップ41に引っ掛かったりする虞がない。
【0054】
ベースプレート21の左右両側縁には、便座19の開口19Hの後端19Rよりも後方に配置された一対の補強部26が形成されている。ベースプレート21のうち一対の補強部26で挟まれた領域には取付孔44が形成されている。取付孔44に、便器装置12の固定部17が固定されている。ベースプレート21のうち固定部17が固定される領域は、補強部26によって剛性が高められているので、便器装置12を安定してベースプレート21に固定することができる。
【0055】
特開平10-42991号公報に記載された移動式便器は、キャビネット50内の収納位置とキャビネット50外の使用位置との間で移動させることが可能である。この場合、移動式トイレ11を上下方向の回転軸を中心として床面66上で回転移動させるようにすれば、移動式便器の移動軌跡を安定させることができる。移動式トイレ11を使用位置へ移動させたときには、ロック装置によって、移動式便器が移動しないようにロックすることが好ましい。しかし、回転軸とロック装置がキャビネット50の外部に露出したままであると、意匠性が良くない。
【0056】
これに対し、本実施形態1の収納式トイレ10は、意匠性を高めることができる。収納式トイレ10は、移動式トイレ11とキャビネット50と鉛直方向の回転軸60とを有する。移動式トイレ11は、前側キャスター31及び後側キャスター38を有する台車20と、台車20に載置した便器装置12とを有する。回転軸60は、移動式トイレ11を、収納位置と使用位置との間で床面66上を回転移動し得るように支持する。移動式トイレ11が収納位置にある状態では、移動式トイレ11がキャビネット50内に収納される。移動式トイレ11を収納位置へ移動させたときには、左右一対の支持脚35のうちキャビネット50の正面側に位置する支持脚35の昇降用操作部37を操作し、昇降脚36を下降させて床面66に載置する。これにより、移動式トイレ11が収納位置から位置ずれすることを防止できる。移動式トイレ11が使用位置にある状態では、便器装置12がキャビネット50外に配置される。使用位置へ移動させた移動式トイレ11は、ロック装置61のロック機能によって使用位置に保持される。回転軸60とロック装置61は、キャビネット50の内部に収納されている。キャビネット50内には、移動式トイレ11だけでなく、回転軸60とロック装置61も収納されるので、意匠性に優れている。
【0057】
キャビネット50は正面板54を有し、正面板54には、移動式トイレ11が収納位置と使用位置との間で移動する過程で通過する連通口55が形成されている。ロック装置61は、ロック操作とロック解除操作を行うためのロック用操作部64を備えている。図4に示すように、ロック用操作部64は、キャビネット50の連通口55における上下方向中央高さ55Cよりも上方に配置されている。ロック用操作部64を操作するときに、操作者が腰を屈める角度が浅くなるので、操作者への負担が軽減される。
【0058】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0059】
第1支持部材である前側キャスター:前側キャスターを複数個設けてもよい。平面視において、前側キャスターの一部が便座の外周縁の範囲外へはみ出してもよい。平面視において、前側キャスターの全体が便座の外周縁の範囲外に配置されていてもよい。平面視において、前側キャスターの全体が便座の外周縁の範囲内に配置され、前側キャスターの一部が便器本体の下端の外周縁の範囲外にはみ出すようにしてもよい。前側キャスターの全体が、ベースプレートの下面よりも下方に配置されていてもよい。前側キャスターは、鉛直軸回りに回転しない固定キャスターでもよい。
【0060】
第2支持部材である支持脚:支持脚は、前後方向において前側キャスターと同じ位置に配置してもよく、便座の開口における前後方向中央位置に配置してもよく、便座の開口における前後方向中央位置よりも前方に配置してもよい。前後方向において、第1支持部材と第3支持部材の間に第2支持部材を設けない構成としてもよい。
【0061】
第3支持部材である後側キャスター:回転軸によってベースプレートを支持するようにした上で、左右一対の後側キャスターのうち回転軸に近い側の後側キャスターを外してもよい。後側キャスターは、鉛直軸回りに回転しない回転不能な固定キャスターでもよい。
【0062】
移動式トイレを移動可能に支持する形態:上記実施形態1の形態に限らず、回転軸と2つのキャスターとによってベースプレートを支持する形態や、回転軸を設けずに少なくとも3つのキャスターでベースプレートを支持する形態としてもよい。
【0063】
移動用操作部材:移動用操作部材の支柱は、前後方向において便座の開口の後端と同じ位置に配置されていてもよく、便座の開口の後端よりも前方に配置されていてもよい。移動用操作部材のグリップは、支柱から前方及び側方の何れかへ延びていてもよい。移動用操作部材のグリップは、使用しないときに、支柱に沿う向きに畳めるようになっていてもよい。移動用操作部材は、曲げ加工したパイプ等によって支柱とグリップを一体化したものでもよい。グリップの高さは、便座と同じ高さでもよい。
【0064】
回転軸:回転軸をキャビネットの外部に配置してもよい。回転軸は、ベースプレートの左右方向中央部に配置してもよく、ベースプレートの左右方向中央位置よりも左方に配置してもよい。
【0065】
ロック装置:ロック装置をキャビネットの外部に配置してもよい。ロック装置のロック用操作部を、キャビネットの連通口における上下方向中央高さよりも下方に配置してもよい。
【0066】
ベースプレート:ベースプレートにおいて最大幅寸法が異なる前側部位と後側部位との境界は、便座の開口の後端位置でもよく、便座の開口の後端よりも前方の位置でもよい。ベースプレートの前端側領域の外周縁形状は、便器装置の下端の外周縁形状と同一の砲弾形としてもよく、便器装置の下端の外周縁形状よりも小さい砲弾形としてもよい。
【0067】
便器装置の固定構造:ベースプレートに上向きのボルトを設け、ボルトを便器装置の固定部の取付孔に貫通させ、固定部の上方へ突出したボルトにナットを締め付けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…収納式トイレ、11…移動式トイレ、12…便器装置、13…便器本体、15…便鉢部、13E…便器本体の下端の外周縁、19…便座、19E…便座の外周縁、19H…便座の開口、19C…便座の開口における前後方向中央位置、19R…便座の開口の後端、21…ベースプレート、23…前側板状部(ベースプレートのうち便座の開口の後端よりも前方の部位)、24…後側板状部(ベースプレートのうち便座の開口の後端よりも後方の部位)、27…補強部、31…前側キャスター(第1支持部材)、35…支持脚(第2支持部材)、39…移動用操作部材、40…支柱、41…グリップ、50…キャビネット、55…連通口、55C…連通口における上下方向中央高さ、60…回転軸、61…ロック装置、64…ロック用操作部、66…床面、W4…ベースプレートのうち便座の開口の後端よりも前方の部位の最大幅寸法、W5…ベースプレートのうち便座の開口の後端よりも後方の部位の最大幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11